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コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察 ― 「ふるさと学習」を通じた地域社会の一員としての子どもの育成事例から ―

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(1)Title. コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察 ― 「ふ るさと学習」を通じた地域社会の一員としての子どもの育成事例から ―. Author(s). 安井, 智恵. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 9: 109-119. Issue Date. 2019-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10435. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第9号. 自由投稿論文. コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察 ― 「ふるさと学習」を通じた地域社会の一員としての子どもの育成事例から ― 安 井 智 恵*. 概 要 本研究では、学校と地域が連携・協働して地域人材育成に先進的に取り組んでいる「地域創造型」 コミュニティ・スクールを事例として取り上げ、地域社会の一員としての子どもを育む教育の実態を 明らかにした。事例校では、コミュニティ・スクール制度を活用し、学校・家庭・地域が一体となっ て地域人材を育成する「ふるさと学習」を実施しており、その結果、ふるさとが好きで、将来ふるさ とに暮らし、社会の形成に参加・参画していく子どもが育まれる可能性が示唆された。. 1.問題の所在 ⑴ 学校の新たな役割「地域人材育成」 我が国では少子高齢化が進み、多くの地方地域社会は近い将来存続の危機を迎えると言われてい る。これまでの学校は、中央に出ていく地方の人材を輩出する「地域を捨てる学力」をつける側面が 強かった。しかし、地方創生の時代を迎え、学校には、地域社会の存続のために「地域人材の育成」 という本来的で根源的な役割が期待されるようになってきている1。都市部においても、地方におい ても地域社会の教育力が低下し、地縁的な地域社会自体が解体の危機にある中で、これからの教育は 画一化された知識の伝達にとどまらず、持続可能な地域づくりに向けて、地域独自の価値や文化を創 造していくための手段として位置づけられる必要がある。 学校・家庭・地域の連携・協働は、2000年の学校評議員制度、2004年の学校運営協議会制度(コ ミュニティ・スクール)の導入、2006年の教育基本法の改訂と、近年制度的にも量的にも進展してき ている。しかし、保護者や地域住民等が、一定の権限と責任を持って学校運営に参画する新しいタイ プの学校「コミュニティ・スクール」 (学校運営協議会制度)においてさえ、多くは地域資源を活用 した学校支援にとどまっている現状がある。学校が地域とともにある学校づくりを実質化し、 「地域 人材育成」という新たな役割を果たしていくためには、従来の学校観からの脱却と転換が必要である。 ⑵ 「地域とともにある学校づくり」の3類型と「地域創造型」学校 学校・家庭・地域の連携・協働の在り方については、コミュニティ・スクール先進校の8年間の経 緯を調査した事例から、導入期において「地域活用型」であったものが、導入から数年を経た活動充 実期では「地域活用・参加型」へ、さらに再評価と改善展開期の「地域創造型」と変容していくこと が明らかになった2。そこから、学校と家庭・地域が連携しコミュニティ・スクールを核とした「地 ───────────────────── *. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)釧路. 109.

(3) 安 井 智 恵. 域とともにある学校づくり」が進展する段階を、①学校支援・地域活用型②学校支援・地域参加型③ 地域創造型の3つに類型化した (表1) 。学校が地域を資源として活用する① 「学校支援・地域活用型」 から、学校が地域参加し相互に信頼を構築していく②「学校支援・地域参加型」を経て、地域の課題 意識を学校と地域が共有し、学校を核とした地域づくりが進む③「地域創造型」へと進展していく。 本研究は、これからの学校は「地域創造型」へと発展・転換し、学校だけにとどまらず「学校を核 とした地域づくり」を視野に、地域人材の育成を保護者・地域と連携・協働していく必要があるとの 課題意識のもと、先進的に地域人材育成に取り組む「地域創造型学校」の在り方を明らかにする研究 課題の一環である3。 (表1)地域とともにある学校づくりの3類型 類型・方向性 ①学校支援・地域活用型 学校. 地域. ②学校支援・地域参加型 学校. 地域. ③地域創造型 . 学校. 地域. 価値観・意識・取り組み. 背景にある理論モデル. ・学校資源としての地域. 学校・家庭・地域の連携. ・学校と地域の情報共有. 開かれた学校づくり論. ・地域人材の活用 ・学校資源としての地域. 教育コミュニティ論. ・地域参加による信頼構築. 学社連携・融合論. ・地域教育力の再構築 ・地域資源としての学校. 地域教育計画論. ・学校を核とした地域づくり. 地域とともにある学校づく. ・地域の教育力の向上. り論. ・子どもの学力向上 ・地域の課題意識を学校と地域が共有 ・地方創生 ・地域人材育成. また、2017年3月には地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部が改正され、コミュニ ティ・スクールの設置が努力義務化された。これに伴いコミュニティ・スクールの設置数は2018年4 月現在5432校4と、この1年間で1.5倍にその数を増やしており、コミュニティ・スクールにおける地 域と協働した地域人材育成は喫緊の課題である。しかし、高校魅力化や大学における地域人材育成に ついての先行研究5はあるものの、コミュニティ・スクールを対象とする地域人材育成に関する先行 研究は管見の限り無かった。 ⑶ 研究目的と研究方法 そこで、本研究では、学校と地域が連携・協働して地域人材育成に先進的に取り組んでいる「地域 創造型」コミュニティ・スクールを事例として取り上げ、地域社会の一員としての子どもを育む教育 の実態と、学校と地域の連携・協働の在り方を明らかにすることを目的とする。 研究方法としては、まず学校と地域の連携について学校に新たな役割が求められていることを政策 動向等から纏めた。次に、コミュニティ・スクールに指定されて10年目を迎え、学校と地域連携の盛 んなⅩ市立G小学校を事例校に、2009年度から2017年度にかけて継続的に学校運営協議会や授業への 参与観察、インタビュー調査、資料収集を行った。また2015年には、地域住民及び児童を対象に質問 110.

(4) コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察. 紙調査を実施した。. 2.学校と地域の連携に関する政策動向 ⑴ コミュニティ・スクールとは何か 保護者や地域住民が、一定の権限と責任を持って学校運営に参画する「学校運営協議会」制度は、 2004年に制定された。この「学校運営協議会」のある学校を、わが国ではいわゆる「コミュニティ・ スクール」と呼んでいる。これは、2000年に導入された学校評議員制度による学校と地域の連携を更 に一歩進め、地域の力を学校運営に生かす発想からくるものである。 文部科学省によれば、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、 「学校と地域住民等が 力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる『地域とともにある学校』への転換を図るため の有効な仕組み」であり、 「コミュニティ・スクールでは、学校運営に地域の声を積極的に生かし、 地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができる6」としている。学校運営協議会 の主な役割としては、以下の3点を挙げている。 ・校長が作成する学校運営の基本方針を承認する ・学校運営に関する意見を教育委員会又は校長に述べることができる ・教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べること ができる コミュニティ・スクールの仕組みを(図1)に示す。. (図1)コミュニティ・スクールの仕組み7. コミュニティ・スクールの成果としては、2015年度に実施したコミュニティ・スクールの実態に関 する調査によれば、 「学校と地域が情報を共有するようになった」 「地域が学校に協力的になった」 「特 色ある学校づくりが進んだ」といった点が挙げられている8。 111.

(5) 安 井 智 恵. ⑵ 地域とともにある学校づくり 2015年にとりまとめられた中央教育審議会『新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地 域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申) 』では、これからの学校と地域の目指す べき連携・協働の姿として、次のように地域とともにある学校への転換を提起している9。 「社会総掛かりで教育の実現を図る上で、学校は、地域社会の中でその役割を果たし、地域と共に 発展していくことが重要であり、とりわけ、これからの公立学校は『開かれた学校』から更に一歩踏 み出し、地域でどのような子供たちを育てるのか、何を実現していくのかという目標やビジョンを地 域住民等と共有し、地域と一体となって子供たちを育む『地域とともにある学校』へと転換していく ことを目指して、取組を推進していくことが必要である」と述べ、 「開かれた学校」から「地域とと もにある学校」への転換を提言している。 また、同答申は、コミュニティ・スクールの仕組みの方向性として、従来の学校運営協議会制度が 学校の管理運営の改善を図るというガバナンス強化を目的に導入されたものであることから、ややも すれば、学校が地域住民や保護者等の批判の的になるのではないかといった印象を持たれてしまうこ とがある点を指摘し、 「学校運営協議会制度について、これまでの役割を重視しつつ、学校運営の最 高責任者である校長を支え、学校を応援することで、地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを推 進するという役割を明確化する必要がある」と提唱している10。 ところで、コミュニティ・スクールの設置は、子どもたちにとってどのような利点や魅力があるの だろうか。同答申の中では「コミュニティ・スクールをはじめとした地域とともにある学校づくりの 「子供にとっての魅力」として、以下の4点を挙げている。 魅力11」の中で、 ・学校に多様な人々が関わっていくことで、多くの大人の専門性や地域の力を生かした教育活動等 が実施され、学校での学びがより豊かに、広がりをもったものとなり、子供たちの学びが充実す る。 ・信頼できる大人と多くの関わりを持ち、愛情を注がれることにより、自己肯定感や他人を思いや る心など、豊かな心が育まれる。 ・地域の人々に支えられ学んでいくことで、地域への愛着が芽生え、地域の担い手としての自覚が 育まれる。 ・防災・防犯等の観点からも、平素からの学校と地域の人々との関係づくりが、子供たちの命や安 全を守ることにつながる。 ここでは、子供たちの学びの充実とともに、自己肯定感や豊かな心が育まれること、さらに地域へ の愛着が芽生え、地域の担い手としての自覚が育まれる点に着目したい。コミュニティ・スクールで 学ぶことにより、子どもたちには地域への愛着と地域の担い手としての自覚を持つ、地域人材として 育まれていくのである。 ⑶ 社会に開かれた教育課程 今回の学習指導要領の改訂では、社会の変化に目を向け、社会の変化を柔軟に受け止めていく「社 会に開かれた教育課程」の実現が求められている12。これからの教育課程の理念として、よりよい学 校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、 必要な教育内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明確に しながら、社会との連携・協働によりその実現を図っていく13。 「社会に開かれた教育課程」では、 「①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育 112.

(6) コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察. を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこ と。②これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自分の人生 を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこ と。③教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用し た社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・ 14 が重要である。そこでは、地域の課題を学校と地域が共有し、教育 連携しながら実現させること」. 課程を地域に開き、どのような地域人材を育むかといった学校と家庭・地域の目標の共有が重要であ り、これはまさに1章で述べた地域とともにある学校づくりの第3段階の「地域創造型」の学校の姿 と重なる。 ⑷ キャリア教育 地方創生の時代にあっては、キャリア教育の観点からも、地域に戻り、地域を創造する人材、地域 人材を育成することが重要である。2011年の中央教育審議会答申では「キャリア教育」を、 「一人一 人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達 を促す教育」と定義している15。 『小学校キャリア教育 次に、小学校におけるキャリア教育の目標16について、確認しておきたい。 の手引き』によれば、 「キャリア教育は、子ども一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさ わしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」である。全教育活動の 中で6年間を通して意図的・継続的に推進していくものであり、 「自己及び他者への積極的関心の形 成・発達」 「身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上」 「夢や希望、憧れる自己イメージの獲得」 「勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の育成」を目指している。これらを踏まえ、全教育課程 の中で、6年間を通じた計画的な実施が必要である。 また、新学習指導要領では、 「キャリア教育の実施に当たっては、地域との連携・協働を進めてい く必要がある。また、これまでの進路指導の実践をキャリア教育の視点から捉え直していくことが求 17 としている。 められる」. 3.G小学校コミュニティ・スクールの概要 事例校のG小学校は、人口が減少し少子高齢化が進むX市内中心部に位置し、城下町の歴史のある 校区のA小学校と、官公庁のある校区のB小学校という130余年の伝統のある小学校2校の統廃合と ともに、2008年にX市初のコミュニティ・スクールとして新設された学校で、統廃合により児童数 362名の中規模校となった。統廃合の際、コミュニティ・スクールに指定され枠組みが作られたこと によって、新しい学校づくりに、学校、保護者、地域住民の3者が参画する場ができ、相互に話がで きる雰囲気が生まれ、地域住民同士の相互理解が進み、新しい学校づくりがスムーズに進んだことは、 大きな成果である18。 教育目標は、 「心豊かで自ら求め学び合うG小の子」であり、コミュニティ・スクールとして「地 域社会の一員として社会に参画する子どもの育成」を目指して、 「ふるさと大好き」 「あたたかい言葉 をかけ合おう」を合言葉に、学校・家庭・地域が一体となって教育活動に取り組んでいる。 学校運営協議会は、月に1回程度開催され、学校運営方針の承認の他、教育課程の編成、施設の管 理、教育支援活動、学校評価等について協議している。学校運営協議会の下部組織として、 「学び部」 「安全・安心部」 「地域行事部」の3つの専門部会を設け、この専門部会が中心となり、子どもたち 113.

(7) 安 井 智 恵. の教育活動や支援活動を活発に行っている。. 4. 「ふるさと学習」を通じた地域社会の一員としての子どもの育成 ⑴ 「ふるさと学習」の推進 G小学校では、地域社会の一員としての将来を担う子どもたちの育成は、学校の課題であると共に 地域の課題でもあり、学校・家庭・地域が一体となって社会の形成に参加・参画していく子どもを育 成することが必要になっているという課題認識に基づき、学校運営協議会の承認の下、学校運営協議 会制度を活用して2014年度から「ふるさと学習」を中心に据えた教育活動を全校で行っている19。 学校では、地域の教育力を活用しゲストティーチャーを招いて「ふるさととつなぐ」授業や活動を 実施している。「ふるさと学習」では、地域のお寺の住職さんや呉服屋さん等を招いて話を聞いたり、 児童が質問項目を考えて地域のゲストティーチャーに取材し、ふるさとの良さをポスターにまとめて 発表したり(図2)、高学年では、地域の高齢者を招き戦争体験の話を聞く授業(図3)などが行わ れている。 地域においては、児童が学校で学習したことを生かし、地域の祭りや行事に参加・参画する場の提 供や活躍の機会が与えられている。保護者や地域住民も学校内外で主体的、積極的に活動に参加し、 子どもたちにとっては大人の本気の姿を見る良い機会となっている。. . (図2)ふるさとの良さを発表する児童. (図3)戦争体験の話を聞く6年生の授業. ⑵ ふるさと学習のテーマと主な関連教科・単元 「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、子供たちに資質・能力を育んでいくためには、教育課 程を家庭・地域と連携・協働しながら実施し、目の前の子供たちの姿を踏まえながら不断の見直しを 図る「カリキュラム・マネジメント」が求められる20。 G小学校では、1年から6年まですべての学年で、学年ごとに「ふるさと学習」の年間テーマを設 定し、低学年では生活科を、中高学年では社会科や総合的な学習の時間を中心に、国語科や理科、英 語科、道徳など、他教科も関連させて教科横断的に学習を展開している。また、コミュニティ・ス クールの専門部会である「学び部」を活用し、「ふるさと学習」に必要な地域人材や地域資源を効果 的に活用している。G小学校の各学年における「ふるさと学習」のテーマと主な関連教科・単元につ いて、まとめたものを(表2)に示す21。. 114.

(8) コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察. (表2)「ふるさと学習」のテーマと主な関連教科・単元 学年 1年. 2年. 「ふるさと学習」のテーマ. 主な関連教科・単元. 「ふるさとの人やしぜんとあそぼう」. 生活科. ・地域の人に教えていただいたり、いっしょに遊ん. 「みんな いっしょに」. だりして、遊びの楽しさや地域の方のやさしさに. 「あきのおもちゃ だいしゅうごう」. 気づき、自分の思いを発表することができる。. 「もうすぐ 2ねんせい」. 「ふるさとの町やくらしを知ろう」. 生活科. ・G小校区で町探検やお店体験をして、町で生活し. 「どきどきわくわく まちたんけん」. ている人々の様子や場所を知り親しみを持ち、自. 「もっとなかよし まちたんけん」. 分の思いを発表することができる。. 国語科 「かんさつ名人になろう」. 3年. 「G小まちはかせになろう」. 社会科. ・G小校区の町の様子や自慢できるものを探して、. 「わたしたちのまち みんなのまち」. 調べたり地域の方に話を聞いたりして、自分の町. 「のこしたいもの つたえたいもの」. の良さを感じて発表することができる。. 体育科 「鵜飼音頭」 総合的な学習の時間 「K山、G大仏、G公園について調べよう」. 4年. 「みんなで生きるわたしの町」. 社会科. ・町の安全を守る設備や施設を調べたり、盲学校と. 「くらしをまもる」. 交流したりする活動を通して、地域のすばらしい. 「きょうどをひらく」. 人々と共に生きていることに気づき、ふるさとに. 国語科. 生きようとする思いを表現することができる。. 「調べたことを報告する文章を書こう」 総合的な学習の時間 「G公園見学」「盲学校見学」. 5年. 「ふるさとの環境を守ろう」. 国語科「新聞を読もう」. ・N川、K山の環境について調べ、地域の人に聞い. 社会科「わたしたちの生活と工業生産」. たり体験したりして、ふるさとの宝物であるN川、 理科 「流れる川のはたらき」 K山を受け継いでいくために、自分たちのできる. 道徳 「同じ仲間だから」. ことを発信することができる。. 総合的な学習の時間 「N川水質調査」「K山登山」. 6年. 「日本・世界・校区の文化―ふれよう 学ぼう 語. 社会科「日本の歴史」. ろう」. 英語科「英語でふるさと自慢」. ・日本の歴史文化を学び、国際理解をし、Gに根づ. 国語科「平和のとりでを築くために」. く文化を自分たちの誇りとして発信することがで. 道徳 「美しい心」. きる。. 総合的な学習の時間 「校区の文化にふれよう」. ⑶ 「ふるさと学習」の成果 G小学校の「ふるさと学習」の成果としては、次の点が挙げられる。. 115.

(9) 安 井 智 恵. ①実践を通した多様な学びの機会  「ふるさと学習」の一連の活動を通して、子どもたちは、課題の解決の仕方、仲間との関わり方、 お店の人への礼儀、働く喜び等を学んでおり、自ら学ぶ学び方やキャリア教育、道徳性の育成など を実践を通して学ぶ機会となっている。 ②挨拶の増加、コミュニケーション力の向上  地域の人と気持ちの良い挨拶をしたり、目上の人とも自然にコミュニケーションできるように なった。 ③地域の方から生き方を学ぶキャリア教育  地域の方の生き方を実際に見たり聞いたりする中で、生き方を学び、自分もこうなりたいという 尊敬やあこがれの気持ちを持つようになった。 「ふるさと学習」を通じて生き方を学び、夢や希望、 憧れる自己イメージを獲得するキャリア教育の場となっている。 ④思考力・判断力・表現力の育成  6年間を通じて、様々な視点から「ふるさと」について学び、地域の方とふれあい、教科を横断 した「ふるさと」を素材とした学習を通して思考力や判断力、表現力を育成している。 ⑤子どもたちの地域活動への参加の増加  学校教育における成果だけでなく、地域の祭り等の地域活動への子どもたちの参加の増加22、高 学年児童の地域行事のスタッフとしての参加、G小学校を卒業した中学生の、G小コミュニティ行 事へのボランティアスタッフとしての参加の増加等が挙げられる。また、自分たちの意見が取り入 れられるという経験から、地域の一員として地域活動への参画意識も高まっている。 ⑥児童の意識変化  「ふるさと学習」について児童に尋ねたところ、 「ふるさと学習でふるさとを好きになったり自 慢できることが増えたりした」については約97%が、 「ゲストティーチャーと学ぶことが楽しい」 については約95%が「あてはまる」と回答している(5、6年生調査) 。. 5.児童への質問紙調査の結果 「学校生活と地域について」G小学校の5年生の児童74名(男子:42人、女子:34人)を対象に、 2015年12月に質問紙調査を実施した(回収率100%) 。結果の概要は以下の通りである。 ①学校生活について  「学校は楽しいですか」という質問に対し、 「とても楽しい」が42.1%、 「まあ楽しい」50.0%と9 割以上の児童が「楽しい」と回答していた。 「あまり楽しくない」 「全く楽しくない」と答えた児童 は7.9%であった。 ②コミュニティ・スクールを知っているか  「G小学校がコミュニティ・スクールだということを知っていますか」という質問に対して「は い」と答えた児童は77.6%、19.7%が「いいえ」と答えており、自身が通う小学校がコミュニティ・ スクールであることを約2割の児童が知らないという結果であった。 ③ゲストティーチャーの授業について  「ゲストティーチャーの授業は楽しいですか」という質問に対して、 「とても楽しい」 「まあ楽し い」と答えた児童は93.4%、 「あまり楽しくない」 「全く楽しくない」が6.6%であった。また、 「ゲス トティーチャーの授業はためになりますか」という質問に対し、94.7%の児童が「とてもためにな 116.

(10) コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察. る」「ややためになる」と答えており、 「あまりためにならない」 「全くためにならない」と答えた 児童は5.3%であった。このことから、9割以上の児童がゲストティーチャーの授業は楽しく、ため になると感じており、ここから、 「ふるさと学習」の効果の一端が確認できた。 ④学校と地域の人が一緒に行うイベントについて  「学校と地域の人が一緒に行うイベントは楽しいですか」という質問に対しては、 「とても楽し い」と答えた児童が47.4%、 「まあ楽しい」と答えた児童は43.4%と約9割の児童が楽しいと回答し ていた。「あまり楽しくない」は5.3%、 「全く楽しくない」は2.6%であった。 ⑤中学生になってからのG小学校のイベントへのボランティア参加について  「中学生になったら、G小学校のイベントに参加したり手伝いをしたりしたいと思いますか」と いう質問に対しては、 「とてもそう思う」が59.2%、 「まあそう思う」が28.9%、 「あまりそう思わな い」が11.8%、 「全くそう思わない」は0%と、約9割の児童が卒業後のボランティア参加を希望し ていた。数年前から、G小学校のイベントへの中学生のボランティア参加が増加しており、先輩の 姿を見てあこがれ、卒業後はボランティアとして参加するという好循環が生まれている。 ⑥ふるさとは好きか  「ふるさとは好きですか」という質問に対しては、 「とても好き」が61.8%、 「やや好き」が32.9% と合わせて94.7%の児童が「ふるさとは好き」と回答している。 「あまり好きでない」は3.9%、「全 く好きでない」は1.3%であった。 ⑦地域の人とよく話をするか  「地域の人とはよく話をしますか」という質問では、 「よく話す」 「まあ話す」が合わせて 78.9%、「あまり話さない」 「全く話さない」が合わせて21.0%であった。 ⑧将来大人になってから地元で暮らしたいか  「将来大人になってから、地元で暮らしたいですか」の質問については、 「とてもそう思う」が 23.7%、「まあそう思う」が53.9%と、8割近くの児童が将来地元で暮らしたいと回答している。「あ まりそう思わない」は13.2%、 「まったくそう思わない」は6.6%であった。 ⑨将来の目標はあるか  「将来の目標はありますか」の質問については、 「はい」が72.4%、 「いいえ」が27.6%であった。 7割以上の児童が、将来の目標を持っていた。自由記述では「サッカー選手」や「お医者さん」な どと具体的に答えている児童もいれば、 「人の役に立つ仕事がしたい」という回答もあった。. 6.地域住民・保護者への質問紙調査の結果 G小学校における地域住民の意識や参画の実態を把握するため、学校運営協議会とともに質問紙調 査を実施した。調査時期は2015年10月~11月、調査対象はG小学校校区の地域住民及び保護者である。 調査方法は、留置調査(手渡しにより配布・回収) 、回収数は304名(配布数:400枚 回収率: 76%)で、回答者の性別は、男性131名、女性161名であった。 G小学校がコミュニティ・スクールに指定されていることを知っている割合は75.0%で、指定後の 変化については、当てはまると回答した割合の多い順に「地域が学校に協力的になった」66.8%、 「特 色ある学校づくりが進んだ」63.5%、「子どもが地域行事に参加するようになった」63.5%、 「学校と 地域が連携した取組が組織的に行えるようになった」61.8%、 「学校と地域が情報を共有するように なった」61.2%、 「保護者や地域住民が学校に来やすくなった」60.2%、 「学校が活性化した」57.9%、 117.

(11) 安 井 智 恵. 「保護者・地域による学校支援活動が活発になった」57.6%、 「地域住民が学校や子どもに関心をも つようになった」56.6%、「学校に対する保護者や地域の理解が深まった」55.2%、 「子どもが地域に 誇りをもつ教育が行われるようになった」53.3%、 「学校を核とした地域づくりや地域活性化が進ん でいる」48.4%であった。 学校への期待については「児童のしつけや礼儀・生活態度」 、 「児童の社会力の育成」 、 「地域の一員 としての児童の育成」の順であった。 「地域住民は、コミュニティ・スクールの教育活動に参加・貢 献していると思うか」については68.1%が、 「コミュニティ・スクールは、地域づくりに貢献してい ると思うか」については72.1%が「そう思う」と回答し、コミュニティ・スクールの地域づくりへの 貢献を高く評価していた。これは、指定から8年を経て活動が定着し、学校を核とした地域づくりが 進んでいる結果の反映と推察される。. 7.まとめと考察 本事例研究から、G小学校の子どもたちは、コミュニティ・スクールで日常的に地域の人と触れ合 い、学校内外で多くの地域の人と出会う中で、日常的に挨拶を交わす地域の知り合いが増え、地域社 会の一員としての意識が培われていること、また、学校内外の活動で、本気の大人や先輩の中学生が スタッフとして活躍する姿に接することで、次は自分たちだという参画意識が高まっていることが明 らかになった。さらに地域の活動で、地域の大人が高学年の児童にスタッフとしての役割を与えるこ とで、子どもたちに地域での居場所が出来つつあることが確認できた。 また、6年間を通じて、様々な視点から「ふるさと」について学び、地域の方とふれあい、教科を 横断した「ふるさと」を素材とした学習を通して、思考力や判断力、表現力が育まれ、実践を通した 多様な学びの機会となっている。 「ふるさと学習」を通じて、地域の方の生き方を実際に見たり聞い たりする中で、生き方を学び、尊敬やあこがれの気持ちを持つようになり、夢や希望、憧れる自己イ メージを獲得するキャリア教育の場となっていた。 さらに、「ふるさと大好き」の合言葉のとおり、 「ふるさとは好き」な児童が94.7%と「ふるさと大 好き」な子どもたちが育まれており、将来ふるさとで暮らすことを希望する子どもたちは約8割にの ぼることが明らかになった。ここから、6年間を通じた「ふるさと学習」や、コミュニティ・スクー ルにおける地域との触れ合いを通じて、ふるさとが好きな、将来ふるさとに戻ってくる地域人材が育 まれていることが推察される。 本事例から、コミュニティ・スクール制度を活用し、学校・家庭・地域が一体となって地域人材を 育成する「ふるさと学習」を実施することによって、ふるさとが好きで、将来ふるさとに暮らし、社 会の形成に参加・参画していく子どもが育まれる可能性が示唆された。また、学校と地域の共通の課 題である地域人材育成について、共通の目標を掲げ推進することで、地域の教育力も向上し、学校を 核とした地域づくりが進んでいくことが示唆された。 今後は、本事例を継続して調査し、子ども達が地域人材として成長していく様子を検証すること、 さらに多くの事例を収集し比較検討することが本研究の課題である。 <注・引用文献> 1 安井智恵「コミュニティ・スクールを核とした地域創造の可能性―子ども・大人・地域をつなぐ岐阜市のコミュ ニティ・スクールの展開―」宮前耕史・平岡俊一・安井智恵・添田祥史編著『持続可能な地域づくりと学校』ぎょ. 118.

(12) コミュニティ・スクールにおける地域人材育成に関する一考察. うせい,2017年,pp.87–123。 2 安井智恵,前掲書,2017年,pp.118–119。 3 科学研究費(基盤研究C) 『地域とともにある学校づくりの実質化と地域人材育成に関する調査研究』研究代表: 安井智恵。詳細は,安井智恵,前掲書,2017年,pp.87–123を参照。 4 文部科学省「コミュニティ・スクールの導入・推進状況(平成30年4月1日)」,2018年11月30日閲覧,. . http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/shitei/detail/1405722.htm 5 例えば,樋田大二郎・樋田有一郎「社会関係資本と地域資源の利活用による地域人材育成:島根県離島・中山 間地域の高校魅力化・活性化事業の取り組み」青山学院大学教育人間科学部紀要⑹,2015年,pp.1-20,など。 6 文部科学省「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)について」,2018年11月30日閲覧,. . http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/ 7 文部科学省,前掲書より転載,2018年11月30日閲覧,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/ 8 佐藤晴雄『コミュニティ・スクールの全貌―全国調査から実相と成果を探る―』風間書房,2018年,pp.125-128。 9 中央教育審議会「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進 方策について(答申) 」2015(平成27)年12月21日,pp.9-10。 10 中央教育審議会,前掲書,pp.15-16。 11 中央教育審議会,前掲書,pp.30-31。 12 中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方 策等について(答申) 」2016(平成28)年12月21日,pp.19-20。 13 文部科学省「新しい学習指導要領の考え方―中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ―」2017年, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2017/09/28/1396716_1.pdf 14 中央教育審議会,前掲書【概要】 ,2016年,pp.4-5。 15 中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」2011年1月31日,p.17。 16 文部科学省初等中等局児童生徒課『小学校キャリア教育の手引き(改訂版)』2011年,pp.18-21。 17 中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方 策等について(答申) 」 【概要】2016(平成28)年,p.9。 18 安井智恵「学校統廃合の円滑な実施に対するコミュニティ ・スクール制度導入の成果―伝統校統合の事例を中心 に―」岐阜女子大学紀要45号,2016年,pp.97-108。 19 G小学校『G小学校コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)平成26年度 研究紀要』2014年,pp.2-3。 20 こうした「カリキュラム・マネジメント」は,以下の三つの側面から捉えることができるとされる。①各教科 等の教育内容を相互の関係で捉え,学校教育目標を踏まえた教科等横断的な視点で,その目標の達成に必要な教育 の内容を組織的に配列していくこと。②教育内容の質の向上に向けて,子供たちの姿や地域の現状等に関する調査 や各種データ等に基づき,教育課程を編成し,実施し,評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。 ③教育内容と,教育活動に必要な人的・物的資源等を,地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合 わせること(中央教育審議会,前掲書【概要】 ,2016年,p.5) 。G小学校では, 「ふるさと学習」においてカリキュ ラム・マネジメントを実施しており,殊に,①,③の点で,優れた実践である。 21 G小学校校長へのインタビュー調査,およびG小学校,前掲書を参考に筆者が作成。 22 6年生の児童の地域の祭りへの参加率は約80%,地区体育祭は約70%(2015年度)であった。. <付記> 本研究は、JSPS科学研究費(基盤研究(C) ) 『地域とともにある学校づくりの実質化と地域人材育 成に関する調査研究』 (研究代表:安井智恵、課題番号:JP16K04574)による成果の一部である。 <謝辞> 本調査にご協力いただいたG小学校関係者および地域の皆様に深く感謝申し上げます。. 119.

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