白鴎大学論集 第26巻 第2号
論文
「ゆれ」と「かげり」から見た
Chopinの「前奏曲集作品28」
一楽曲構造とピアニズムの分析一
福 田 由紀子
Analysis ofStructure and Pianism ofChopin’s“24Preludes op.28” based onTheories of“Yhre”and“Kageri”FUKUDA YUkiko
1 はじめに II Chopinのピアニズムについて III 「前奏曲集作品28」より楽曲分析第1番:ハ長調・第4番:ホ短調・第7番:イ長調
第8番:嬰へ短調・第13番:嬰へ長調
第14番:変ホ短調 ・第15番:変二長調 IV 結び1 はじめに 「ピアノの詩人」とも云われるFr6d6ric Frangois Chopin(1810∼1849・ ポーランド→仏)のピアノ作品は、聴く者の心を虜にさせる。 彼のピアノ曲は、愁いを帯びた旋律の一方で、繊細で煤びやかな音の世 界を繰り広げている。ピアノという楽器を縦横無尽に操り、絢燗豪華な 響きを生み出している。この響きの素晴らしさこそがChopinの魅力であ り、ピアノ音楽の新様式を開いたと云われる所以である。 そこで、Chopinのピアノ曲の魅力を理論的に解明するために、彼の作 品とピアニズムの分析に取り組むことにした。 ピアニズムとは、ピアノの機能(効果)を最大限に生かす工夫のことで ある。これは、作曲と演奏の両面でかかわっている。作品がピアニズムに 則って書かれているから、ピアニズムに則った演奏が出来るのである。 理論的な面から云うと、テクスチャー(縦糸と横糸から成る織り地・音 楽的に云うと音の組み合わせや構造)の問題である。このテクスチャーこ そがChopin独自の世界を作り出している。 今回は、研究曲目を「前奏曲集Op.28」に設定した。その理由は、ノク ターン風やマズルカ風や、エチュード風など、性格の異なった小品が盛り 込まれており、研究に適していると考えたからである。 II Chopinのピアニズムについて 「テクスチャーの多様化が起こるのは、器楽の勃興とともに非声部様式 が発達してからです。非声部様式(器楽様式)の一番の特徴は「分散和 音」の使用にあります。つまり、1個の「同時和音」をタテ・ヨコめ音群 に分けて奏する技術です。』と島岡先生は「テクスチャーとゆれ」の文章 に書いておられる。 Chopinのピアニズムは、この分散和音を何オクターブにも広げ、ピァ ノの鍵盤全体から絢燗豪華な響きを生み出している。典型的な分散和音の 作品例一練習曲Op.10,No.1を載せる(譜1)。
「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 (譜1) 練習曲作品10−1
繍弱
、.貿7環ミ1二}…華藝
岡一オクターブ域+ への集約1 同時化 1奪… C:1 (譜1)はBach(Johann Sebastian Bach1685∼1750・独)の平均律第 1巻1番ハ長調のプレリュード(譜2)を手本にしていることが分かる。 (譜2)亨h
亨♪一浸 さらに、Chopinは分散和音の中にゆれ(例えば長大な音階や半音階等) を組み込んで複雑な分散和音にしている。例としてスケルツォNo.3を載 せる(譜3)。この曲の第5小節以下はDes−durの1の下行分散和音であ るが、その中の最上声にゆれが組み込まれている。その結果、この声部だ けが全音階で下行し、1拍ごとに碕音を繰り返すことになる。そして、煤 めくような輝かしい効果を生み出しているのである。 (譜3) scherzo3番作品39,\載8一・一
ノ讐.
Des:▽I W▽王 (島岡先生の「テクスチャーとゆれ」より部分的抜粋)分散和音の中にゆれを組み込む手法もすでにBachが行っている。例と して、平均律第1巻2番ハ短調のプレリュードを挙げる(譜4)。 (譜4) Chopinのピアニズムは、分散和音を基本として、縦横にゆれを組み込 んだテクスチャーで書かれているが、源流はBachであると云える。 これから分析する「前奏曲集Op.28」にもChopinのピアニズムの素晴 しい例は沢山見られる。 皿 「前奏曲集作品28」より楽曲分析 分析をするにあたり、一般原則を書き示しておく。 ※記号()の説明 どの和音のどの構成音も隣接音度へ一時的にゆれることがある。上にゆ れれば上方転位で(と表し、下にゆれれば下方転位で)と表す。椅音、 経過音、刺繍音などの形態とは関係なく上下にゆれる有様を示す。 ※変位のルール 下方転位はいつも上方変位する。それ以外の音が変位されている場合は 転調(借用、変位和音も含む)である。碕音は下に解決する方が自然で あり、上に解決する場合は半音上がる。 ※調示和音 ▽,、丑,、ヤ昌の和音は調を示す決め手になる。D2も調示和音であり、 D2→Dの進行も決め手になる。転位音も下方転位音以外の上変は調示 音である。 尚、音楽辞典に載っていない記号や概念は、『総合和声』(島岡譲執筆 責任・音楽の友社発行)に則っているので参照していただきたい。
「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 第1番分析楽譜を載せる。以下、全てPADEREWSKI版を用いる。
7
囚Agitat.( (
き
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一 一 げ V 一 匹 ( ︸ 一働 一 蟻 3一 一 一 一 轍駒}. 堪鋤,溺旗∼¢ ( (囚
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28
▽7 1D1
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l I▽l s l I▽l S I N lS
)あっという間に終わってしまう短い曲だが、ロマン漂う素敵な曲であ る。まず、テクスチャー分解譜を載せる。縦糸、横糸がどのように織りな されているか、いわゆるピアニズムヘの実施である。 テクスチャー分解譜 旋律
き
同
低音 −’ A9甑atO 州 3−r }、《
﹃[[1ガ
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一﹄一3 一 一3r 門3r r−」一r三厚
亨口
r−3r 一一3r亨己_∫
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書 1 rJ一 ● ㎜ 一 一一 一シ 一 一 r一一3馬r 讐 r一3r 門3r 一」r r−3』r 亨 一3rr −3’門 亨亨しJ
r−3r r一一3r亨口
r−3r一3r亨口
r−3r一3r込醸
r−3r r−3一「 r−3’一1 r−3’「 r−3一「 r3一「 ノ 」一3 r−3r ン 」一3 一3r 一3r 一一3r r−3r r−3r 以下同様「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 次に還元譜を載せる。音域が低いため、1オクターブ上げて書いた。ま た、リズムも簡単に付点音符で表した。 個々の和音に分析記号を書き込む縦割り分析では、ゆれは見えてこない が、バスから曲全体の大きな流れを捉えると曲の構成がはっきり分かる。 還元譜
囚 ( ( (
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C:1 ▽l I I1 瑚 廿l V7 ▽9
T D2 D ( iiI ▽l I エ1 瑠 廿子 斑1 12
T D2 ) ( (1
即 vl I+6 熔 11 鵡 12 ▽フ
D T D2 D唖
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」 1 !︸ 9凶 ( ( ( ) ) ) )」
」
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) )眞月
( 謎帯 一丑
斐
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Tこの曲は囚、國、[亟で構成されている。大きな機能関係で捉える と、このようになる(図1)。
(図1)囚 囮 幽
: 一 lTLD2−D−T−D2−DイーD2−D‘『
塵」 L墨」
囚(第1∼8小節)
冒頭のバスは、ドーシードでゆれているので、2小節のシを刺繍音と捉 えると、第4小節までは、機能はTになる(譜1)。第5、6小節はD2、第7、8小節がDである。
(譜1)囚 ( ( (
きC:1 ▽l I II El 悔 ▽ア 恥
T D2 D 膿」 ) ( ( ( ( ●」
」
」
旦一 、ン この曲の旋律の特徴は、短い休符で切断されている点にある(譜2)。 次いで、主旋律を追いかける旋律が、3連符のずれたリズムで、オクター ブ関係で畳み掛けている点である。主旋律のリズムは3連符なので(後で 5連符も出てくるが)、正確には亨望のよう曙くべきだが、ここで LJJし戸は付点音鮒Llで書く・
(譜2) 追いかける旋律+ [」r r3r } r3r 」’」鷹1葬3r r・3一 r3r旋律準」
亨Fず亨籍
」亨口亨
● ● 亨1 亨 轟 第8小節のソプラノのシラは、どちらもVgに含まれる音であるが、シ が導音でラを経過音と捉えるか、シが碕音でラを第9音と捉えるか、2通「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 りの解釈が可能である(譜3)。 ここでは、第5∼7小節間、ずっと椅音が続いているので、その流れを 汲んで、第8小節もシを椅音、ラを第9音と捉えることにする。 またシを碕音と捉えない場合は導音が重複してしまうので、この点も考 慮して、シが椅音でラを第9音と捉える。 (譜3)
一一!一
5 イ イ イ前と版て⑦
き カとも解釈 出来るが 導音の重複 o 。/戸軽 /イ角Ψ
カ 壮 工 = 璃 D2悔
▽7D
▽9 匹](第9∼24小節) 第9∼12小節は第1∼4小節と同様である(譜4)。次のフレーズの第 13∼17小節まではD2と捉える。 バスを見ると、ファーソーラーソーラとなっており、第14小節のソは 経過音、物は1▽・への経過和音でD2の中のつなぎと捉える。第16小節の バスのソは刺繍音、12はN1に挟まれた刺繍和音である。ゆえに5小節間 全てをD2とする。 (譜4) ( き I Vl 工 r 駕 鞠 ∬プ 12 1▽1 T D29囚 ( 一 (一 13一
) )) 」 」 」 」 皇 シ シ 以 第18∼20小節はDの機能になる(譜5)。バスのシドレのドは経過音と 捉える。第21小節で機能はTになり、次の・偽でD2、これはクリスタル 和音【注1】である。後はDの機能である。(譜5) 一 ) ( 一 一 き
▽重 1牽6 罵 r 鵜
12 脇
D T D2 D この曲は、冒頭から休符のある3連符で書かれているので切迫した印象 を受ける。第18小節から続けて出てくる3回の5連符は、S舵蜘で盛り上 がっていく個所に書かれている(譜6)。ここでは休符のない5連符の1 拍目の碕音を鳴らすことで、切迫感を増大させている。これに対して、第 23、25、26小節の5連符は4珈.や∫の箇所に書かれている。ここでは、 休符のない5連符を用いることで、逆に切迫感を漸減させたと考える。こ のように、この曲の5連符は曲想と併せて使われていて、それぞれ、使わ れる場所により目的が異なる。 (譜6) 5連符 5連符 切迫感漸増 丁頁 切迫感漸減 . 点16疹 ・ 冷盗 、_6
) )8
)眞自
( 星 盛力 」 』 浸 ﹂二︳ 魂 ”2 τ1 善1 , 鶉“・:’:州:::_:_: 伽1 ,μ」÷ ノ3フ12π1▽11rvl I1端12▽,Y(1諦,
D2 D T D2 D T ID i
第22小節の和音はエンハーモニックで書かれてあるので、Dis音をEs 音と読み替えると分析は・れになる(譜7)。 (譜7) イ1壁憲噂…距
毒6 毒る 麗き換え D222
冷
Es 磁脚置き換二
Esに「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 匡亟](第25∼34小節) 第24、26小節のソプラノのレがドに解決するのは第29小節である。そ れまでは一種の解決延引である(譜8)。その間、第25小節からは[Yの保 続音上の1−V7−1一▽7にソプラノのソラミレがゆれている。 この曲には、ドが経過的には出てくるが、安定した形で旋律に現れるの は第29小節からである。ここからは[Yの保続音上に1▽がゆれる。▽の3 階建て和音である。 (譜8)
塵
’ 24 (幽
( 主音ド2
爪 ( ( 5一肖一“徐
( l l ヨ壬1 1一
)‘翅 一3 ノ 3ソ 一t 一脅 } 一 一 一 穿 一 1 伽. V7D
¥(1 ▽70
1
▽7 1D 1牌1 1酬S I I▽l S i I▽l S ≡〕 T S 最後に、旋律の動きと和声の機能関係を表したグラフを載せる(図2)。 (図2) 囚 シンメトり一 小アーチ(唾カデンツ)(繍ヤ/峠
(小節)T一
∬ 、.頂点\大猶チ(2カデンツ)固
ノノ ち ノ ヤ ‘re3σ/ 丁 伽D D2’ヂ囲
(旋律線) P2 D (( (機能)T l Tゆれ!謝く9 13 18 212325 29 34
(小節) 22 囚はシンメトリーである。D2−D−Tのカデンツを含んだ小アーチ を形成している。囚は囚の倍の長さがあり、正確ではないが拡大形に なっている。D2が旋律線の上行と一緒になって曲を盛り上げていること が分かる。 第25小節からは、終止まで一定の線を保っが、小さなゆれがある。第4番
囚槻ツ_5ニヲ
き
e: 11 ▽多一
フーソハ
ラ_ソ5ノ
{ 一 ( ( (∼
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’v鱒多 罵』▽急▽.)17着巷5
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一
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} 上、___一 『㎜一一 一甲、 、惜 鞘} 1 , 』 瞥 惜 (\
( 低音の半音下行(半音階的経過和音) ソーファ ノ〉7ア∬7多 ∬亨 聯§ 廿7 鎗 輪
一 ミファソシラドファレ 1▽『D2
ラソ▽7
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∬琴一
ファ レ ’フ V7 _『r シラソ ソファミレ7ソシレ只3一 ∬多 V7囚
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コ マ ロ ドシラシシドミソシラドドファレ一
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二・ 一 『 r一二 4 ファレ ファ レ へ ) ’ ( ) ( } 柵 孟耀 ψ /“ 一= ( P︵ 暑 } 珊 }一¶ ( 胴 ) 』 ソ 艶の.轡 『置 ソ 21き
▽9異7書 1・ D 一「 偽終止 1▽1皿手D2−D
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( まく ト (一 妙
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一 一 ¶ 一5 , 4 5 33
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毒多1▽1+12D2 D
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全終止 号 一ノ、こノ I T「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 この曲は、かなり陰った悲しげな音楽である。右手の旋律は常にラソ、 ソファにゆれ、左手は半音下行している。囚、國の2部構成である。
囚(第1∼12小節)
旋律は、アウフタクトのリズム「1「’で表情的なラを伴ったラーソの ゆれが3回繰り返される(譜1)。左手の和声は半音階的に下行(ラメン ト音型)して悲しみを表している。 第4小節のB音は本来はAis音であるので、そのように置き換えて読む とファ(#)一ファ(均)である。しかし、読みやすさ、弾きやすさのため にエンハーモニックでB音に書き替えられたと考える。d−mollのラーソに 見せかけている。第5小節からはソーファのゆれが3回繰り返される。 第1小節から続く半音下行を全て1(T)の半音経過パッセージとして 捉えてしまうのは少々荒いが、そうすることで分析が非常に簡単になる。 (譜1)囚ツ.昇_5_ヌ天量1,罵ア_日_冒
e・11 ▽1轡碍1蝋▽,)!7櫃瑚 瑞鵬 鎗聡
τ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
低音の半音下行(半音階的経過和音) 第9小節の右手は、表情的なシラのゆれを頂点に置いた、うねりの旋律 である(譜2)。第10小節で冒頭から続いた低音の半音下行は、ようやく Vに到達する。 第9∼12小節までの低音はラーソのゆれを2回繰り返す(ゆれの部分 の碑は刺繍和音)。この間、右手はファーレを3回繰り返すが、3回目は イ奇音を伴って書かれている。 第12小節の右手は2回目のうねりの旋律であるが、ここにはDis音(導 音)とD音(固有w)の潜在的な同時対斜がある。クリスタル音に近い 魅力的な響きである。3連符のシ(短調の陰ったシ)は”椅音の椅音”で あるので緊張感が非常に強い。うねりの旋律1 一 うねりの旋律2
τヲァソ鍔ド刃 _r _てr殉囚
9一 巧 ンみミレヌソシレズ飴ソ
(譜2)1、, 1▽1 ラソ▽. ∬琴フソ▽, ∬多ラソ▽7 11!〆一!!’船
D2 D T 國(第13∼25小節)第13∼16小節の右手は、冒頭の囚と同概ラソのゆれを3回繰り返す
が、その直後に第16小節からの3回目の大きなうねりに入る(譜3)。こ こは、この曲のクライマックスになっている。第18∼20小節は、第10∼ 12小節と同様に、バスはラソでゆれ、右手はファーレを3回繰り返す。 うねりの旋律316r㌘揮異・摩・曝畢鏡レ筑
(言齢)1.議一一灘一㎜一=皿’藍、≡..≡i這
様,1,着覇痘1竃聡11耽忌n輪五号ラ》 罵
ノ!’恥!/恥 T D2 D T D2 D 第21小節で偽終止する(譜4)。3拍目のB音はエンハーモニックで Ais音に置き換えて分析すると晦である。右手は、レードとドがゆれて いる。第23小節にもう一度、偽終止があり中断されるが、フェルマータ の後、改めて全終止する。第23小節のD2は刺繍和音である。 第21小節以降の低音も、更に大きく見れば、Vのソ(第20小節)がいっ たんラ(M)にゆれ、ラ→ソ→#ファ→ソと上下にゆれつつ最終安定1 (ド)に到達したと見ることが出来る。圃 __ 響一め終止一園
21 一北 ド
画,
▽1 購N・+12 12 身も サ ー)
1T D2D∼窯督)T
「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 次に、還元譜を載せる。 ラ ソ ラ ソ ラ ソ
ゆれ一 rr rr
囚
ii d珊o日のラソに見せかけるr
ラ ソ) フアフア ソ フア ソ ファ ソ フア ミー一r一
( ( ( ( ( ( E揺でBをAisに書き替え 令 ︵豊浸 翌
且
金 令 ︵尋 一 lV e: 工1T
▽1IV噂1翻▽了)瑚踏
▽1サ7 艶 塊き
9
I l ) ( ( l l( ︵︵ ( 1一
一
9
ファソシラド フア ) レ ファ し 3レー 、 _ ツソソレシフソ ソ フア ミ、 ( ( ( 一フ 静 一 ソ ソ フ ソ1 フ9亭翼音の半音下行(
1▽l D2 うねり2/一一
図13
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ラ ソ ▽7 罵 ▽7 El V7D〆!駆/!駆
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合低音が▽に到達 ラ ソー
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ラ ソ うねり3 「一一1「「 13 1︵ 1 1︵ 1 1︵ 1)㍗o
( 1︶ 卜 13 ファ ミ レド ドシラシシドミソ 砂 9一 (旦」
提貼 11T
▽l I協瑞▽,)1,榊lw1
D2一
低音の楽音下行(半音階的経過和音)▽9刷r
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ド フア ソファ レ 」 掛留音 ( ( ( 解決音 、 ソ ︸フ ソ 一フ ソ 一一一「 3N El ▽ 罵
ゆれ D2 D レ ド一
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( ( 畠 ( 冷 21 ド F−durのファに見せかける レ ド ( ( 、 EHでBをA耐書き督え ( 輔 ソフ ムL, フア 研w 購圃+12
T D2 D 12賜
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I
曲全体を図で表すと次のようになる(図1)。右手は、ゆれとうねりの 旋律、左手は半音階的経過和音とゆれで出来ていることが分かる。 (図1)囚 囚
i男舅舅帰帰帰聯冗椀男劣 刃罪㌶鑑調甲
右手i ゆれ うね瞬うねり2iゆれ うねり3ゆれ ゆれ1 ’ 1
ノ」、節 1 9 13 16 21 2325左手 半龍的経過糖勢禦む半音階欄和音寧2助2召.ド
ロ ロ ロ機能T D2D一τ一D2DTD2D−TD2DD2DT
囚と國のラソが対応、ファレが対応、うねり1とうねり3はアンバラ ンスな対応、囚のソファは國ではカットされている. 次に、島岡先生の書かれた文章があるので載せさせていただく。 上に見るように、この曲の低音はミ(11)から始まり、半音下行を続けて ソ(V7)に到達し、このソが何回もゆれる(ソラソ∼)。あたかも、上方か ら投げ落とされた小石が、池の面に小さな波紋を描くように(囚)。同じ「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 プロセスが変化リピートされ(國)、更に大きく波紋を広げた末に(ソラ ソ↑ファソ)、初めて真の安定和音(〈基〉1一低音ド)に到達する。 こうしてみると、この曲全体の和声は、1個の「大きなゆれ」(碕音→ 解決)を表している。ゆれの解決は終結1で初めて達成される。それまで の和声全体は、いわば「1個の長大なイ奇音」であって、何度も解決を先送 りしながら(この間に現れる1はどれも11)、安定(解決)を求めてさま よい歩く。このような「満たされない憧憬の持続」は、何か「トリスタン 和声」を連想させるものがある。
1個の長大な椅膏一叢
囚眠一一一一一一一ゾー一一一一一「終 1 解 決 } ゆれ 1 和 e土T D l 音固・.鐘毒箕套…紳
同様の視点から、旋律における3回の「うねり音型」の位置と機能に注 目してみると、「うねり1」と「うねり2」は、池に小石が落ちる瞬間の バウンドを表している。因みに「うねり3」での落下時点は、低音が∫で 低いオクターブのソを打ち鳴らす第17小節冒頭であり、そこからv保続低 音として第19小節冒頭のソにつながっていくと考えられる。そうなれば、 この部分の和声は、すべて上部和声とみなされることになる(大きなレベ ルではカウント外)。他方、「うねり2」は、囚のゴールV7(半終止)か ら國冒頭の11に復帰する際の「つなぎのうねり」である。、ノ馳 _饗
旋律 一 易 料 ・冒・ 低音’ ゆれ一一⊥/ っなぎ 落下点 』 ソ …_半督下行
卜
16 D2 D うねり3 [繭\T
ラ ソ 万レ 万レ ファ レ フ 、一目フ 、 D2 落下点 v保D
ゆれ/
最後に分割譜を載せる。 →臼
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ゆ りゆ厚
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「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」
第7番
囚
An{iant血o 5 茎/ ). 32 垂 2 \ 騒 ( P40’σε ) 恥 (帯恥) 巌 A: 恥. (帯鋤.)罵
D
崇 ぬヨI
T
(帯恥.) 騒9
5 ) 毒 5 34 ) ぬ」( 52︵ ) ) (‘ 伽 (崇5沁) 帯 励 帳伽」 崇馬
艶, 1纐.)I
T
囚
藁D
罵D
9
1 茎録ま ・
て無茎蓼 (3
) ) (帰 伽. 1帯伽」崇 伽.崇 知.雛 免 礪I
T
ぬう蛎一五
D/D2
ぬ ぬ ン7▽も一I
D−T
同じリズムパターン(J I月JJIJ)の繰り返しから成る、わずか16小 節の曲だが、さまざまなゆれが感じられる。囚、國の2区分構造である。 一般に、曲の始まりは1であることが多いが、この曲はV7から始ま り、V→1(椅和音から原和音へ解決する和声のゆれ)の進行を3回繰り 返している。その後、第12小節ではIl調からの借用和音の寸,を用いて 和声的に盛り上がり、終止を導く構造になっている。分析記号に書いた D/は副▽の機能を単純化して表す便法である。機能的には解決するII (D2)の方が重要であるが表情的にはウ,の方が強い。この曲でも、ここ が頂点になる。 次に、旋律の上下、転位の方向を記入した分割譜を載せる。分割譜 頂点1 旋律の上下線
囚辮聖
解決 − 妻/〆)2
1
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この曲の旋律ラインは、2個の大きなアーチから成る。それぞれのアー チの頂点の位置はそろっているが、2回目の方が頂点も高いし、強い表現 である。 2小節1フレーズの同じリズムで書かれているが、和音や音程や運動方 向の組み合わせが少しずつ異なる。第1、第2小節と第9、第10小節だ けは同じである。 奇数小節の第1拍目は、全て椅音でゆれている。ここで使われている碕 音は同時椅音である。 第1、第9小節の椅音はファを経過してレに下行解決している。第3、 第5、第7、第11、第13小節は上行解決であり、第7小節は導音から主 音への解決である。第15小節はレドと主音に下行解決している。 旋律の上下線を見ると、第1小節は上方にゆれて下方に解決する形であ る。これに対して第3小節は、下方にゆれて上方に解決する形なので、反「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 行形のように感じられるが、旋律の形(第1小節のミーファ、第3小節の ファーソ)が共に上行なので正確な反行形ではない。 第3小節と第11小節の1拍目の碕和音の減7の響きは魅力的である。 また、第3小節の1拍目裏拍から2拍目にかけては、4度跳躍で盛り上が るが、第11小節では6度跳躍でさらに盛り上がる。第15小節は8度跳躍 で曲を締めている。 次に連続椅音のような響きに聞こえるゆれを挙げる。 第2小節の3拍目の▽gは、第7音、第9音が下に解決する椅音的な性 格を持っているので、第3小節の1拍目の碕音と並んで、我々の耳には連 続椅音のような響きに聞こえる(譜1)。 また、第4小節の3拍目は、分析上は1で、碕音ではないが、次の第5 小節の1拍目の俺音と並んで、ここも連続椅音のように聞こえる。何故な ら、フレーズの最初が、右手だけのアウフタクトで書かれていることや、 前のフレーズの最後が2分音符の止まった音型で書かれているためであ る。厳密な分析からは出てこないゆれであるが、非常に魅力的である。 (譜1)
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▽◎ 1 ▽も D τ D ▽→1のゆれ、碕音のゆれ、連続碕音のようなゆれなどの、さまざま なゆれが、弾むような3拍子のリズムと相侯って、この曲に舞曲(マズル カ風)の印象を与える。 第8番 繁雑さを避けるために和声分析と転位音だけを書き込み、機能は還元譜 に載せる。分析譜面の最後に全体区分図を載せておく。囚M。lt。agiし8t。ρ
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「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」
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(小節)12345678610旧21314151617181920212223242526272829303マ323334 この曲は、Chopinのピアニズムがよく分かる曲である。左手の分散和 音の上に、右手はレベルの異なる大小の2つのゆれを組み込んだテクス チャーで書かれている。形式は3部形式+Codaである。「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 一・見、複雑そうな譜面だが、音型はパターン化されている(譜1)。1 段目は原曲、2段目はテクスチャーの各部分を分けて記した。右手は付点 リズムμの大きな旋律と32分音符の装飾部分に分解できる。3段目は細 かいゆれを取り除き、付点リズムの大きなゆれを残した。4段目はテクス チャー全体を単純な4声体に還元したものである。 (譜1)
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a b cのパターン化された音型からChopinもBachと同じように音型 操作をしていることが分かる。囚(第1∼8小節)
全曲通してであるが、右手には大きなゆれと小さなゆれがある(譜 1)。演奏では、小さなゆれは早い動きで聞き取りにくいが、キラキラ光っ た金粉効果【注2】の印象を生ずる。 ゆれについて、島岡先生は次のように述べておられる。 『Chopinにしても他のどの作曲家にしても、一々規則に照らしてゆれ を書いているわけではなく、半ば無意識で即興的に書いているのである が、それでも決してルールから外れることはない。これは「ゆれのルール の必然」と、それが作曲者の頭の中に「言語コード」として埋め込まれ、 無意識のうちに作動するからに他ならない。』 第3小節からは、一時的にcis−moll、h−mo11、a−mollに転調し、反復進行に近 い形でD2→Dが取り入れられている。各反復のバスは、各調のラ→ソである。 (譜1) 罰S:D
ソ ソ 王1瑞 葛 v(瑚瑞)鵬 璃騰 )瑞 脇D D2D D2D D2D
第7小節の3拍目からは属7の響きが半音下行で続いているが、増6 (D2)→属7(D)の進行のエンハーモニック書き替えである。「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 (譜2) 7.糞蛙
曜鍵蕪蟻選剛
燭.‘vqタ 燭
(鰐 脇)期(晦 脇 )(瑠 脇 )(矯 脇 ) D2 D D2 D D2 D一 一 一
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第9小節からB−durに転調するが、これは第8小節の4拍目のCes−dur のV7をエンハーモニック転換したのである(譜3)。 (譜3) Ces:▽ヲ == B:蟻各 第9、10小節はバスの属音の上に借用和音(ウ7、サ7)を含む反復進行 が行われている(譜4)。 (譜4)一副▽を含む反復進行一r
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豊、 砺 五 ∬ 崖』『心’1心、 翫 筋 皿 ) 第13、14小節はCes−durの終止である(譜5)。 (譜5) 13 rξCes・,諦、
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第15小節からはes−mollに転調して皿7→Vを繰り返している(譜6)。 典型的なD2→Dの進行である。小さなゆれの中に連続碕音がないため、 響きが変わる。微妙な響きの変化に注意したい。 (譜6)
違睡霧,鍵霧鞠霧li懇麟
1 丁畿蕃繕
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D2 D D2 D D2 D D2 D
匹](第19∼26小節)國(第27∼34小節)第29小節で陽転して、第32小節で再び陰って終
止する(譜7)。 (譜7)27囲 、縄転
薩嚢嚢馨馨
邸 S ÷1 30 r再び陰り丁 寸 一 +1▽ +I I 皿浬罵 I S T D2D T この曲には、ロマン派の特徴であるD2→Dのゆれが多く取り入れられ ている。なお、第1小節後半の平各→V7は、機能上D→Dとなるが、低 音はラ→ソでD2→Dに近いゆれの形である。同様の形は、第2、第5、 第6、第19、第20、第21小節にも見られる。これらをD2→Dに準ずるゆ れとみなせば、D2→Dのゆれは更に増えることになる。 次に分割譜を載せる。「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 ぐ 回
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長調で書かれているが憂いを帯びた曲である。まず、テクスチャー分解 テクスチャー分解譜 享囚 李[ Fis:1 ’『 4 ( ) (∼
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書・ ッきき 』 28 次のぺ一ジより4段譜になります。D2D
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左手には、第8番の細かいゆれと同じ連続碕音(てス)が使われてい て、内声が表情豊かな旋律に変わる(譜1)。囚と國の全体にわたっ て、左手上段の旋律と右手の最上声とが美しいDuoを形作る。尚、ゆれ が上行して到達する4分音符(矢印\)をつなぐと、それ自体が滑らかな 旋律ラインを形作り、別個の声部を形成していることがわかる。 (譜1)声部1
纏
キ 1声部2の還元 ∠ \ ∠ ・声部2 \)
\︶ ( \)( _ ) ( \ 〔 \ \ 皿 1 一 ( 一 一 低音 Fis:音
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( ( ( ( 一 一 ▽、 エ v(∬ 12 D T D2 D 第8小節の左手は、左手の音型の後半をつなぎ合わせている(譜2)。 第7小節後半はCis−durの1であるが、主調のFis−durから見れば▽で ある。この▽は第8小節のFis−durの1▽、IIIに経過的に続く。この間、 バスにCisの保続音が延びていると考える。第8小節の左手最後のGis音 は第9小節の右手の装飾音Ais音につながる。「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 (譜2) ピアノ譜 テクスチャー分解譜
7(αs−dur
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(し量Sαur Fls−dur 圓 、 ント ) ( ) (「一
」一「「一一( ( )( )( ) ︵Cis音 が延びていると考える 菩・ 葛 )vσ▽ Fis:▽ D 圓 班 ▽7 〕1 T [!i](第21∼28小節) 匡i]の4声体は、そのまま4重唱(奏)を形作る。各声部は代わる代わ る出番を待って美声を聞かせる(譜3)。 Cis−durで書かれている第21、22小節は、第23、24小節でH−durに移調 されている。第25小節でFis−durに戻る。第25小節の12は経過和音なの で、第25∼26小節(最後の11を除く)は全てD2である。第26小節の後半 の内声のゆれで刷の響きが生じ、それが11への解決をスムーズに聴かせ る。 (譜3)客1陽
Cis−dur ) H−dur ) ) } ㎜ ㎜ ツ 垂 } ツ ) ㎜ ㎜ ㎜ ㎜ } 品 ㎜ 』 一 ㎜ ㎜(/“
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経過和膏 甥が偶戒’ 匹] 区] (第29∼38小節) 匡]に似ているが、國の冒頭部分(第9∼12小節)が省かれている。 テクスチャー分解譜の最上段の音符を少し遅らせて書いたのは、主旋律と 区別するためである(譜4)。 (譜4) 補足欝部固圖 ひ
29 L巳」圓 } } ㎜ 一 一 一 一 一 略 主旋律 ◎ ( ( , ) ( ) ( ) ( ) ( ( ) ( 一) ( =︸ρ ザ lv(▽l D V7し 丁1
) 第37小節のW1はゆれとして現れた偶成Wである(譜6)。刺繍和音と して使われている。回の始めの響きと同様、陰った響きで美しい。第6 拍の不協和音は、一寸かすった感じが洒落ている。「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 (譜6) 36 一 一 ㎜ 皿 苓. ツ亡 一㎜㎜ 一三戸工 璽 ∼ 不協和膏
ツ}㎜琵廊
▽11 1 苓章 辱. 丁 次に、全体区分図を載せる。原曲と照合していただきたい。 匹]は頭部が省かれていて國の第13小節と[詞の第29小節が対応してい る。 回の頭部と終結の第37小節は、素材も動きもよく似ている。[固はv調 のII、つまり主調から見るとV1調の感じがして、その後V調に転調する。 一方、第37小節は突然のWが主和音化して、一瞬v1調の印象を醸し出し て1に終止する。囚
回
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aノ lV Il4689 確3 18
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駄
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l i25 23 ※一過性の調は(で表す vレ團の名残り3738
Chopinは分散和音にゆれを入れているだけでなく、ゆれを組み込んだ 旋律を作っていることが分かる。右手の動きを抑えて左手の中に組み込ま れた旋律を聞かせたいという意図が窺える。第14番
き
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)「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 厳格な3声で書かれている。右手と左手が同じ3声和声をオクターブで 重ねるが、全体が低音域で暗く重い響きのする曲である。 まず、テクスチャー分解譜を載せる。3段譜にすると、3声体がジグザ グになるように作曲されていたことがよく分かる。 原耀 響 器 3 虚 戸 へ の 分 か ち 書 き
躊
重 ’ 1 齢 〆 es: I T ▽1D
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▽1 D 以下同様 次に、声部様式への還元譜を載せる。3つのパートはそれぞれリズムが 食い違って書かれていることが分かる。原曲は4分の4拍子であるが、見 やすいように4分の6拍子に直した。囚 ((( ((( )(_
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「ゆれ」と「かげり」から見たChopinの「前奏曲集作品28」 次に、3声の原型であり、上声のゆれを残した還元譜を載せる。 の フ