職能横断癌組織の意義と効率的調整の前提条件について
一水平関係の業績管理会計構築のための予備的考察一
顧
誠
1 研究の背景と本稿の目的
青木(1989)(1992)は,日本企業の組織を 「ヒエラルキーに沿った情報構造に加えて,水 平的コミュニケーションを引き起こすようなメ カニズムが重要な役割を果たしている組織」と して類型化している。けれども,近年,日本企 業のみならず,欧米の企業に関する文献におい ても水平的調整を重視する文献が散見される。 それはたとえば,拙稿(1993ab)(1994a),会 計フロンティア研究会(1994)で指摘したよう に,リエンジニアリングにおけるBPRや価値 連鎖という考え方,リエンジニアリングのため のツールとしてとらえることができるABMや 原価企画,にもみることができる。しかしなが ら,水平関係の業績管理会計については,これ まであまり議論されてこなかった。職能横断的 組織あるいはネットワーク組織を明確に意識 した業績管理会計の枠組みはまだ構築されてい ない。というのも責任会計はもともと職能別組 織を前提として構築された公式的コントロール 技法であったからである。責任会計は拡張ない しパラダイムを転換しなければならない時期に きているのかもしれない。 ここでは,伝統的責任会計が有機的組織を対 象とするに至り意味の変化したものを業績管理 会計と捉えることにする。そして,職能横断的 組織の業績管理会計を構築ずるための予備的考 察として,まず職能横断的組織の意味を明らか にし,それが効率的に機能する条件をあげる。 その条件の中には職能横断的コミュニケーショ ンを盛んにすることが含まれており,管理会計 システムも情報交換を妨げないよう変化しなけ ればならない。 本稿の目的は,主として米国における研究を とりあげ,職能横断的組織(CFT)の意味とク ロス・ファンクショナルな情報の流れを促進す る要因・条件について示されている仮説を提示 し,そのような研究が行われた理由,そのよう な研究の意義日本で行うとすればどのような 実態調査を行うべきであるかを確認することで ある。それらを基礎にして,近い将来,業績管 理会計を改善する可能性を探るための手がかり にしたい。H 職能横断的組織の意味と有効性
1.水平的相互作用に関する研究 第皿節では,部門間の相互作用に関する論文 を選び出し,簡単に紹介することにする。そこ での議論は,水平的相互作用が望ましいという 前提があり,2つの部門に注目した研究が中心 であった。チーム組織では,各職能出身者が集 まってチームをつくり,プロダクト・マネジャー の下でプロジェクトの達成を目指して協働する。 チーム内の個人と個人との情報交換が問題とな り,必ずしも職能別組織での部門間の情報交換 とは同じものではない。 ここでとりあげる研究モデルにしても,それ らの一つ一つは,異なった状況,意図の下での モデルであり,必ずしも日本企業においては問 題にしなくてもよい状況を想定したケースをと り扱っている。けれども,このような研究は, 水平的関係の業績管理会計を考えるためのピンリトを与えてくれる。 さて,Pinto,M.B.&J.K.Pinto(1990)は, 新プロジェクトの成功のためにはコミュニケー ションが重要であり,コミュニケーションと職 能横断的協力のパターンの関係があまり研究さ れてこなかったことに注目した。彼らは病院の プロジェクト・チームについて調査を行い,協 力の程度の高いチームは協力の程度の低いチー ムと比較して,コミュニケーションの理由にお いて差があるだけではなく,非公式なコミュニ ケーション方法の利用が多いことを指摘した。 最後に成功要因として職能横断的協力が重要で あることを指摘した。 このような研究に関連して,彼らは,2つの 研究の流れを示している。 第1の研究の流れは,マーケティング部門と 他の職能部門の相互依存関係を考える研究であ る。しかし,より大きな職能横断的チームにお いて,さまざまな職能の代表者が同時並行的に 他の職能の複数の管理者と相互作用するという 状況を想定していない。例えば,Gupta, et a1. (1985)(1988),Souder(1988),Moenaert, et al. (1990ab)(1994),Parry&Song(1993)等は, こちらの流れに属している。 第2の研究の流れは,行動科学的あるいは組 織的問題を扱っている。例えば,異なる職能部 門のパーソナリティーの違いが,コンフリクト の原因になっていることに注目したLucas and Bush(1988)の研究がある。 Reukert and Walk− er(1987)は, (公式化,調整のパターン,資 源依存を含む)多種類の組織構造が,マーケティ ング部門の他の職能部門との相互作用の質に与 える影響を検討している。彼らの研究は,プロ ジェクトの成功に対してこれらの行動科学的変 数の効果を予測するよりは,むしろ相関分析に よって変数間の関係のパターンを示した研究で ある。Pintoらの研究は,両方のアプローチに 内在する潜在的な限界のいくつかに的を絞り, これら2つの研究の流れを橋渡しすることをめ ラ ざすものである。 第皿節では,この2つの流れに沿っていくつ かの論文をとりあげることにしたい。 その前に,まず,職能横断的組織の意味につ いて検討し,PM等,水平的コミュニケーショ ンの促進要因を解明する必要性について論じる。 2.職能横断的組織の曖昧な意味 Mohrman, et al.(1992)の指摘によれば, 複雑な環境下で相互依存関係にある組織におい ては,目標設定,ヒエラルキー,ルール,計画 による調整メカニズムは,水平的調整手続きに 大きく依存してきた。競争優位のための職能横 断的チームや水平的統合のアプローチ(会合, 情報技術,タスクフォース,一時的チーム,マ トリックス構造等)の重要性は次第に高まって きたにもかかわらず,これらはほとんど統合さ れていない点に問題があるとされる。しかも, 職能的専門化とヒエラルキーによるコントロー ヨラルが,水平的統合を妨げるという。しかし,青 木教授の半水平的コーディネーションの考え方 のように垂直的コントロールは水平的調整の前 提条件であると考え,両者は補完関係にあると みることもできる。公式的コントロール・シス テムは枠組みとして不可欠であろう。 我々が研究対象にする職能横断的組織の意味 は必ずしも明確ではない。職能横断的組織は ネットワーク組織という概念と,しばしば混同 1)広島経済大学の福田講師は, 「多様な職能部門 を巻き込んだクロス・ファンクショナル・チーム による製品開発」の研究との関連で,R&D部門 とマーケティング部門との問で,情報の共有を促 進する要因に関して議論した論文をとりあげてい る(福田(1994))。 2) Pinto,M.B. & J.K.Pinto(1990) pp.200−201. 3) Mohrman, et al.(1992) p.218, p.221. 4)青木(1989)p.36,p,169.
の される。 例えばネットワーク組織の一例として,野中 教授のいうハイパーテキスト型組織をあげるこ とができるが,職能横断的組織は,知識創造の の 組織として,その重要な部分を構成している。 また,3.で紹介するHenkeらによるモデルで は,幾種類かのチーム組織が組合わさって,ネッ トワーク組織を構成している。 その他,日経ビジネス編(1994)では,キャ ノンのタスク・フォース,花王のプロジェクト 制,シャープのコンカレントな研究開発組織等 が,ネットワーク組織の例としてあげられてい ア る。ただし,これらをネットワークと呼ぶなら ば,職能横断的組織との区別は曖昧になる。 いずれにせよ問題なのは,これらの組織がも つべき特性である。部門の壁を取り払うことや 組織のフラット化だけでは,仕事内容が曖昧に なり,指揮命令系統が不明確になるだけである。 そこで,次にHenkeらの研究を検討すること 5)今井e金子(1993)による抽象的表現では,ネッ トワークとは,部分が作られ,それらが相互作用 するうちに全体の情報が作られ,それが部分に影 響することによって変化していく関係をいう。そ して,上下関係のない関係(水平的関係)にある メンバーが,ある特定のメンバーのパワーを承認 する場合,水平的関係は垂直的関係に転化する。 そもそも,重要な情報(技術,資本,市場の情 報)を組織の上層部だけがもっている場合,ヒエ ラルキー型の組織が効率的であり,指揮命令系統 の明確化と適切な情報を上から流すことが望まし いとされる。ところが,社内に分散している異質 の情報の結合,場面情報が重要性をもつようになっ てくると,上下,水平的情報交換を行う必要が出 てくる。それらを集約し解釈する場を設定するこ とが「組織」である。情報を創造するためには, 異なった知識,発想をもった者との交流が重要で ある。そのために,場の設定をし直し,ネットワー ク型の組織へ向かう傾向があるとされる(今井・ 金子(1993)p.265,p.166, pp.144−150)。 6)ハイパーテキスト型組織は,一見するとプロジェ クト型の組織であるが,ピラミッド型の組織が並 存しているという。この組織については,野中他 (1992),野中(1993a, b)を参照。 7)日経ビジネス(1994)p.164. により,職能横断的組織の一種であるチーム組 織が有効な必要条件を確認しよう。職能横断的 な情報交換はその一つであり,それを促進する ような業績管理会計システムを考えることは意 義があると思われる。 3.チーム組織の例とチーム組織が業績向上に 貢献するための必要条件 Henke, Krachenberg&Lyonsは,米国のさ まざまな業種(特に耐久消費財を生産している フォーチュン500社に属する企業および事業部) 数十社についてインタビュー調査を行った。そ の調査に基づき,1970年代後半以来,製品開発 プロセスにおいてチーム組織を利用するケース が増加しているけれども,ほとんどの企業では, チームを効率的に利用していないと指摘してい る。彼らは,システムの特徴,多職能のメンバー からなる製品開発チームの組織の意味について 述べ,コミュニケーション,意思決定プロセス, リーダーシップ・スタイルを含むチームメンバー の問題チームのデザインの現状について議論 し,チームの効率性を高める提案をしている。 (1)チームを利用することによるベネフィット まず,チーム組織がとられる理由について, 確認しておこう。Henkeらによれば,チーム組 織は,ヒエラルキー構造の欠点の克服,意思決 定の分権化,垂直的情報処理負荷の減少,高品 質の意思決定の可能性をもっているという。 すなわち,市場の反応,製品デザインないし 製造上の新技術といった不確実性,より洗練さ れた製品に関する複雑性や動態的な市場の競争 環境の急激な変化に伴う複雑性が増加してきて いる。この状況下で,意思決定を行い,職能間 のコンフリクトを解消し,製品開発プロセスを 調整するには,クロス・ファンクショナル・チー ム(CFT)のような職能横断的組織が適してい る。 CFTは,分権的意思決定と上層部でのヒエ ラルキーに沿った情報処理負荷の削減というべ
ネフィットをもたらす。また,開発プロセスを 迅速化する効果がある。いわゆるサイマルテニ アス・エンジニアリングと呼ばれる方式である。 さらに,チームの方が個人よりも高品質の意思 ラ 決定が行われる可能性があるという。では,チー ムのデザインはどうあるべきか。 (2)チームのデザイン
Henkeらが考えている典型的CFTは,8人
から10人のさまざまな職能部門の代表者である 構成員から構成されている。CFTを構成する 職能領域は,企業によって異なるが,製品デザ イン,材料管理,金融,組立,マーケティング 等が典型的な職能である。 一つの製品は,数十のCFTと関わりがあり, CFTとその支援グループは,製品管理チーム (Product Management Team(PMT))によっ て統合・調整される。各製品管理チームの下にいくつかのCFTがあり,各CFTの下にいくつ
かの支援グループの層があるという階層構造を とっているかもしれない。さらに,オープン・ システム・ネットワーク状になっている場合, 水平的に直接他のCFTや支援グループ間での より柔軟なインターアクションが可能になる。 また,外部のサプライヤーを選択してチーム に参加させ,バイヤーとサプライヤーとの間に 真の信頼関係ができる場合,相互にベネフィッ トのある統合的戦略的計画を策定する機会が生 じる。さらに,ラインで作業経験のある人を CFTに参加させることによって,デザイナー やプロセス・エンジニアに価値のある情報提供 ができるだけでなく,労使関係の改善にもなる。 【システムの統合】 さまざまな職能の代表者,サプライヤー,労 働者代表,CFT, PMT等からなる全体システ ムはオープン・システムである。Henkeらが想 定しているシステム(第1図)は,複数のチー ム組織からなる一種のネットワーク組織である と考えられる。そのインターアクションの効率 性は,チームの成功を左右する。各CFTは, 同一の最終生産物についての各種部品に対して 責任をもっているすべての他のチームに対して も関係をもっている。一人の個人は,そのよう な複数のCFTのメンバーであるかもしれない。 CFT間の情報の流れを促進するために,ファ シリテーター(facilitator)と呼ばれる調整役 が置かれる場合がある。また,ある製品に関連 する複数のCFTすべての活動と情報の流れの調 整を行うために,製品に責任をもっているプロ ダクト・マネジメント・チーム(PMT)が設 定される。PMTの構成員は,全職能領域と製 品に関する複数のCFTの各々を代表している。 同一もしくは共通の部品から構成される数種 類の生産物がある場合,各生産物に関する共通 部品を扱う複数のCFTは,一つのシステム調 整チーム(SCT)によって情報の共有を通じて 調整を行う。SCTは各製品に関係する複数の CFTの代表から成っており,複数のSCTは, 複数の製品に関する共通部品すべてについて存 在している。図1におけるSCT(#1,#2,…#N)は
チーム問の情報交換がない状態,いわゆる「水 平サイロ」を防ぐ役割を果たしていると思われ る。Henkeらは,同じ課題について異なった CFT間で重複した取り組みをすることは,時 間的・経済的に無駄が生じる例を示し,CFT 問での情報交換がこの無駄をなくすために重要 ラな役割を果たすことを指摘している。 (3)チームメンバーとリーダー 以上の組織構造のデザインに加えて,チーム が効率的に機能するためには,そこで協働する チームメンバーの選択およびチームメンバー間 の相互作用およびリーダーシップが重要である。 Hθnkeらがあげている留意点を箇条書きにすれ ば,以下のようになる。 8) Henke, et al.(1993) pp.216−219. 9) lbid., pp.219−222.ゼネラル・マネージャー
製品A
oMT
製品BoMT
製品NoMT
SCT#1 bFT#1製品A bFT#1製品B bFT#1製品N SCT#2 bFT#2製品A bFT#2製品B bFT#2製品N
SCT#N
bFT#N
製品AbFT#N
製品BbFT#N
製品N PMT= Program Management Team SC T == Systems Coordinating Team Henke, et al.(1993) p.222 第1図 クロス・ファンクショナル・チーム,プログラム・マネジメント・チーム,およびシステム調整チーム ①チーム活動の重要性をメンバーに正しく知 覚させたり,業績評価については.個人の業績 を評価しない,ないしその評価を報酬に反映し ない方がよい。 ②チームメンバーの交替は,チームの効率性 の低下につながるのでできるだけ少ない方がよ い。けれども,昇進あるいは転職のために,プ ロジェクトの期問中ずっと同じメンバーを維持 ユの することは困難である。 ③リーダーとメンバーは,タスクの技能とプ ロセス技能の両方を有しているべきである。こ 10)日本のチーム組織では,ある程度,欠員を他の メンバーがカバーできる。また,メンバーの交代 と配置転換は,情報の共有化のためにはよいとも 考えられる。Henkeらの観察の結果,2種類の リーダーがいることがわかった。第1は,独裁的 リーダーであり,第2は,議論を際限なく続ける ことを許すリーダーである。前者の場合は,一人 で決定を行うのとなんら変わりはなく,後者の場 合は,意思決定の質が良くなる代わりに時間がか かり過ぎるという難点がある。Henkeらがあげ ているうまくいった例は,マーケティングの背景 をもった若い女性が議長をした場合。逆に最悪の ケースは,チームの議論と意思決定を支配する傾 向にあった非常に経験のあるエンジニアが議長を した場合である(lbid。 pp223−225)。 れらの技能を使用することによって,リーダー は,不必要な脱線を防止し,意思決定の水準を 高め,コンフリクトを管理し,満足のいく集団 アウトプットを継続的に達成しようと試みなけ ればならない。 ④チームはメンバーに対して適切な「魅力」 と適度の「凝集性」をもっていなければならな い。凝集性の適度に高いチームは,内部統制が とれている。しかし,過度の凝集性は,チーム メンバーが他者と同様に考え行動すること(調 和と満場一致を)重視する傾向があるので,革 新的なアイデアが拒否されるという弊害がでて くる。 (4)コミュニケーションと権限 その他,Henkeらによれば,チームの利用が 企業にとってメリットのあるためには,以下の 点に留意する必要がある。 ①垂直的プロセス(職能別活動)と横のプロ セス(チーム活動)を効率的に統合すること。 CFTにおいて決定された事項で,職能部門の活 動に影響しそうなすべての事項は,その部門の 長にできるだけ速やかに知らされること。②チームメンバーの権限。ある部門出身の
CFTの代表メンバーは,合意のある意思決定 を実行するために必要な出身部門の資源を引き 渡す権限を与えられること。
③チーム内の意思決定。CFTやPMTによる
決定においては,重要な事項に関しては全メン バーの協議の上で決定され,それほど重要でな い事項については,チームリーダーかチームの 一部の者に決定権が与えられていること。 ④チーム問の権限・責任関係。CFTが最:終決定権限をもち,CFTとPMTが協議の上,決定
すること。 以上,Henkeらが挙げているチーム組織が効 率的であるための必要条件を紹介したが,一方 では,チームは職務を遂行するのに時間がかか り,斬新で創造的な意思決定ができないという 理由からチームを廃止すべきであるという見解 もある。チームが歓迎されないケースでは,ま ずチームが管理される方法とチームの意思決定 プロセスを検討するべきであるという。そして, プロセスとデザインがうまくできたとして,次 の段階は,チームによる意思決定活動をチーム の構造的デザインに適切に埋め込むことである。 ところが,多くの米国企業は,職能別組織の ままでチーム組織を採用している。すなわち, 標準的課業,作業のルール,明確な権限の階層 によって特徴づけられる組織のままである。ヒ エラルキー組織の場合は,集権化,トップ・マ ネジメントによるコントロール,直接的干渉を 通じて効率化を進めることから,垂直的コント ロールと水平的調整のバランスが問題となる。 もう一つの企業集団はハイテク企業のケース である。松下,ソニー等は,当初一人の企業家 の原動力やビジョンに頼ることによって成功し たが,今日では,洗練されたマネジメント技術 に依存しなければならなくなった。動態的で急 速に変化するビジネス環境に柔軟に対応できる ために,トップ・ダウンではなく意思決定権限 を現場へ委譲することが必要になったのである。 企業は,一旦チーム組織を利用すれば,一人 の強いリーダーシップによって引っ張っていく 方法をとるのではなく,職能横断的組織形態を とり,絶えずチームメンバーの技能を洗練化す ることとチームの相互作用プロセスを改善する エリ 必要があるというのが,Henkeらの見解である。 先述のことも含めて,Henkeらが述べている 11)Ibid.,pp.225−228.ただし,先述の野中氏のハ イパーテキスト型組織のように,ヒエラルキー組 織とチーム組織の併存という形態も考えられる。 さて,ここで,Henkeらの見解に対して若干 の疑問点を挙げておきたい。 ①メンバー構成がどうあるべきかについては一概 に言えない。専門家が集まれば,当然,セクショ ナリズムに陥りやすい。また,異才がいるに越し たことはないが,異才に頼るのは当たり外れが大 きいというリスクもある。マジメで堅実な努力を 続けることのできる凡才で構成されたチームワー クのとれたチームの方が良いという見方もできる。 ②個人業績を評価しないでチーム業績を評価する ことによってチーム内の協力関係を損なわないで おくという発想はもっともである。しかし,フリー ライダーを出さないようにするためには,チーム 内部での個人に対するなんらかのインセンティブ が必要である。日本企業の場合には,短期的には 協力と情報の共有化を生み出すため,短期的な給 与面での差は小さくするということはあっても, 人事評価の結果が昇進に大きく影響してくること から個人間の長期的競争は存在する。米国に比べ ると,給与に対する業績のウェイトは小さいため, 安定期にはぬるま湯的状況にあったといえよう。 ただし,年俸制の導入や,不況期のリストラのよ うに,個人間の競争も激しくならざるをえない。 また,成果が次におもしろいプロジェクトに参加 できるパスポートとなったり,チームに対し有利 な予算配分を受けられるというインセンティブは, 日米を問わず存在するのではないだろうか。 他方,個人が複数のプロジェクトに同時に参加 していたり,転職が容易な場合,あるいは開発段 階の移行につれてイニシアティブをとる部門メン バーが移行していく新製品開発チームのような場 合,個人の貢献度を測定するのは困難で,従来の 会計上の業績測定とは異なる業績測定が重要にな るだろう。インセンティブの与え方の相違という ことの他に,個人業績の測定上の困難さがチーム 業績の測定を主張する一因となっているのかもし れない。 さらに,製造現場のチームならば,個人の貢献 も測定しやすい。職務の幅が狭い場合はなおさら である。チーム組織が効率的に機能するための条件は, 以下のようにまとめられる。 (1)さまざまな職能の技能と知識をもったメンバー が集まるだけではなく,(2>チーム間の調整役を 置き,CFT間の情報交換を促進すること,(3) チームメンバーにチーム活動の重要性を正しく 知覚させること,(4)チームメンバーの個人業績 の評価しないか,少なくともその結果を報酬に 反映させないこと,(5)チームメンバーの交替を 避けること,(6>リーダーとメンバーがタスクの 技能とプロセス技能の両方を有していること, (7)チームが適度の凝集性と魅力をもっているこ と,その他,コミュニケーションと権限に関す る条件が挙げられている。これらのいくつかに ついては,IV節で孤節の内容と併せて検討する。 皿 過去の研究 第置節では,紙幅の都合もあり,4つの研究 を紹介する。第ll節の最初で述べたように, le 2.と3.4.は別の流れに沿った研究である。 1。Moenaert and Souder(1990a) Moenaertらは,2の研究に先行して少なく とも2つの論文を出している。そこにおける議 論を前提にして統計的分析を行ったのが,後述 のMoenaθrt, et al.(1994)であろう。 その一つであるMoenaert&Souder(1990a) では,プロジェクトにおいて,情報交換がR& D職能とマーケティング職能を統合するために どのような役割を演じているのか,効率的情報 交換を引き起こす要因は何かといった問題に取 ユ う り組んでいる。 以下では,そこで提示されている命題を要約 する。 P1:(a)マーケティング(またはR&D)活 動を行う技量,(b)不確実性の減少は,プロ ジェクトのライフサイクルの期間中にマーケ ティング(またはR&D)のメンバーがR& D(またはマーケティング)部門のメンバー から受け取った情報量と質に正の相関関係が ある。 P2:(a)他部門のメンバーの役割に関する相 互理解の程度が強まるほど,下位グループが 不確実性の減少に集中する程度は高くなる。 (b)この相互理解は,マーケティング部門と R&D部門のメンバー間で交換された情報の 量と質に正の相関関係がある(p.99)。 ここで「不確実性」は,技術的知識,消費者 ニーズや競争相手に関する知識イノベーショ ンを引き起こすために必要な知識に関する情報 不足から生じていると仮定されている。さらに, 情報の入手は意思決定の質を高める可能性があ る。 Moenaertらは,複数の部門間の戦略的決定 と活動を協力関係へと導くことを「統合」と呼 び,この統合のメカニズムを3つの範疇,すな わち「タスクの明確化」「組織構造のデザイン」 「組織風土」に分けて考えている。 特に「組織構造のデザイン」は,Galbraith の視点から,直接的接触,連絡係,タスク・フォー ス,チーム,役割の統合,マトリックス組織の デザイン等の横断的関係の創造を意味している。 「組織風土」に基づく方法では,部門聞の調 整と統合に文化の相違が反映することに注目し ている。例えば,解放性,調和,信頼等の諸要 ヨ 因が部門の統合に有用であるとされる。 マーケティング部門とR&D部門のメンバー の間のコミュニケーションを妨げる要因として 考えられるのは,使用される技術用語の相違, 知覚される障壁,評価システムの差,職能への 忠誠であるという。これに対し,前述の横断的 関係の創造や,後述のプロダクト・マネジャー 12) Moenaert & Souder(1990a) pp.91−92. 13) lbid., pp.91−94, pp.96.
にエンジニア出身者を採用したり,会計数値が 共通言語として機能したり,異なった職能を物 理的に接近させること,管理者の頻繁な配置転 換等の配慮は,コミュニケーションの促進を狙っ ている。 技術的に新しい製品に関するアイデアを伝え る場合の他,無形のものや標準化されていない ものについての情報を伝えるのは困難である。 しかし,情報の移転は,調整と統合を達成する ための重要な手段とされ,先述の統合メカニズ ムは,マーケティングとR&Dのメンバー間の インターアクションを引き起こす。「タスクの 明確化」は公式的ルールの設定を通じて,「組 織風土」の方法は非公式のインターアクション を通じて統合を進め,「組織デザイン」は公式・ 非公式のインターアクションを促進する。 情報交換の決定要因にはいくつかある。一つ には,ある職能がもっていない量的・質的に優 れた情報を他の職能がもっており,それを獲得 することによって不確実性が減少できる場合に, 情報移転が起こる可能性がある。他方,各職能 部門の人員が大きくなり過ぎると,少数の人間 のみが情報の受け手となり,他部門のどのメン バーから情報を入手すれば最適かも不明となる ため,大部分の者は情報交換に参加しなくなる ユへ という。
P3:マーケティング部門からR&D部門へ
の情報の移転は,(a)マーケティング部門の 資源の質,(b)マーケティング部門によって 減少させられる不確実性,(c)R&D部門に よって提供される情報の質と量の正の関数で ある。同様の関係は,R&D部門からマーケ ティング部門への情報の移転についても成立 する。P4:マーケティング部門からR&D部門へ
の情報の移転は,投入されるマーケティング 部門とR&D部門の資源のレベルと量に負の 相関関係をもっている。R&D部門からマー ケティング部門への情報の移転に関しても同 様の関係がある(p.100)。 情報交換を促進するもう一つの重要な要因は 「役割外の行動」である。縦型組織では,予め 決められた範囲の職務のみを果たすことになつ ユらうているので,役割外の行動はとられにくい。 しかし,新製品開発プロジェクトにおいて, チームメンバーは各々の職能の役割を果たすこ とを期待されてはいるが,公式的に役割が定め られているのではなく,流動的状態にある。ま た,情報の移転が高くなるほど,個人は領域を 越えた探索を始める傾向がある。他方,他の職 能部門での経験を積んだ個人は,他の職能領域 で必要としている情報を知っており,見返りを 期待して情報を流す可能性がある。 役割外の行動は,プロジェクトの成功につな がる「職能横断的創造性と問題解決行動」とい う重要な要素とも相関関係をもっている。 最小限の役割外の行動は維持可能で,短期的 情報不足を補足するのに必要でさえあるかもし れない。しかし,過度のそれは有害である。 14) lbid., p.97, pp.99−100.P5:マーケティング部門からR&D部門へ
の情報の移転は,ある中程度のレベルで,マー ケティング部門による役割外の行動を極大化 するであろう。R&D部門からマーケティン グ部門への情報の移転に関しても同様の関係 がある(p.101)。 「組織の特性」も情報移転に影響する。「課 業の明確化」は職能問のインターアクションを 通じて行われる。調和のとれた組織風土では情 15)この命題を業績管理会計と関連づけて考えれば, 例えば各部門が独自の目標設定(例えば売上高予 算)を行い,その目標の達成度のみで業績が評価 されるとすれば,部分最適な意思決定行動がとら れる可能性がある。報交換も起こりやすいとされる。 配置転換を通じて,情報交換を促進するとい う方法もある。技術者を営業へ配置して,監督 者ないしはそれと同等の地位を与えるというよ ユのうなケースが考えられている。 P6:(a)課業が明確になるほど,(b)プロジェ クトの構造が自己充足的になるほど,(c)マー ケティング部門とR&D部門のメンバーの間 の雰囲気がよいほど,マーケティング部門と R&D部門の問で交換される情報の量と質は 高くなる。 P7:R&D部門の教育あるいは経験をもって いる人的資源のマーケティング職能への配分 は,マーケティング職能とR&D職能の問の 情報の流れを増加させるであろう(pp.IO1− 102). 2. Moenaert, Souder, Meyer, and Deschoolmeester(1994) Moenaertらは,ベルギーの製造業40社につ いて,マーケティング部門と研究開発部門 (R&D部門) (以下では,あわせて両部門と 呼ぶ)のインターアクションについて質問票調 査をしている。78のプロジェクトに関して,マー ケティング部門とR&D部門へそれぞれひとつ ずつ合計156の質問票を配布し回答を求めた。 その結果,78のプロジェクトのうち40が成功で あり,38が失敗であることが判明した。どの程 度のプロジェクトの集権化,プロジェクトの公 式化,職能問の雰囲気(climate),役割の柔軟 性が両部門のコミュニケーションに最適なのか, そしてこれらの要因がプロジェクトの成功にイ ンパクトを与えるのかが問題とされた。彼らは, 各要因を以下のように定義している。 「プロジェクトの集権化」は,そのチームの 16) Moenaert & Souder(1990a) pp.100−102. リーダー(top)か組織のトップ・マネジメント に属する少数の個人にプロジェクトに関係する コミュニケーション,意思決定,権力(power) が集中している程度である。集権化の程度が高 いと,情報の共有の質と量にマイナスの効果を ユの 与える可能性がある。 「プロジェクトの公式化」とは,個人の職務 遂行のルールと手続きが重視されていることを 意味する。両部門の管理者は,相互作用のパター ンを形成することは,頻繁な非公式のインター アクションが行われるための重要な基礎になる ことを認めていた。 「職能間の雰囲気」は,両職能問の関心,信 頼,支援の程度を意味する。両職能部門間の良 好な雰囲気は,高い頻度のコミュニケーション を促進すると予想される。 「役割の柔軟1生」とは,プロジェクトの遂行 過程においてメンバーが予定している余分の職 能上の課業である。 例えば,R&D部門が顧客との接触といった 活動を行ったり,マーケティング部門の人間が 研究所のテストを行ったりする場合である。役 割を越えた行動を行うことは,他者の必要とし ている情報を理解するのに役立ち,情報の共有 に良い効果をもたらすであろう。さらに,情報 の共有化は,プロジェクトの成功に貢献すると ユハ 考えられている。 さて,以上の諸点に基づいて,彼らがたてた 仮説は,以下のとおりである。 仮説1:開発段階における両部門の間の情報 交換は,(1)プロジェクトの公式化の程度,(2) 職能間の雰囲気の調和と正の相関関係をもち, (3>プロジェクトの集権化の程度と負の相関関 係をもつ。 17)ここで,分権化とは,どちらの部門の出身者で あれ,自由にプロジェクト・チーム内の他の個人 と対話できる状態を前提とする(p,43)。 18) lbid., pp.32−33.
十 プロジェクト活動の公式化の程度 マーケティング部門がR&D部門 ゥら受けとる情報量 十 プロジェクト フ成功 十 十 ¥ 十 職能間の雰囲気の質 R&D部門がマーケティング部門 ゥら受けとる情報量 + R&D部門の役割の柔軟性 一 一 マーケティング部門の役割の柔軟性 プロジェクトに関連する Rミュニケーションの集権化 第2図 Moenaertらによる分析結果 仮説2:開発段階におけるマーケティング部 門からR&D部門のプロジェクトのメンバー への情報の移転は,R&D部門のプロジェク トのメンバーによって引き受けられた役割の 柔軟性の程度に正の相関関係がある。 仮説3:開発段階におけるプロジェクトの公 式化,職能問の雰囲気,役割の柔軟性という 3つの統合メカニズムは,製品開発プロジェ クトの商業的成功に正の相関関係にある。開 発段階におけるプロジェクトの集権化は,製 品開発プロジェクトの商業的成功に負の相関 関係にある(p.33)。 Moenaertらによれば,以上の仮説のうち, 仮説1および2は支持され,仮説3についても 部分的に支持された。 (分析結果は第2図のよ うに図示できよう) すなわち,第1に,マーケティング部門が R&D部門から受ける情報量は,プロジェクト 活動の公式化の程度,職能問の雰囲気の質, R&D部門の役割の柔軟性と正の相関関係をも ち,プロジェクトに関連するコミュニケーショ ンの集権化と負の相関関係をもっていた。第2 に,R&D部門がマーケティング部門から受け 取る情報量は,プロジェクトの公式化の程度, 職能間の雰囲気の質,マーケティング部門の役 割の柔軟性と正の相関関係をもち,プロジェク トに関連するコミュニケーションの集権化と負 の相関関係にあった。第3に,プロジェクトの 公式化の程度と職能問の雰囲気の質は,プロジェ クトの成功と正の相関関係にある。これは仮説 3を支持している。しかし,プロジェクトの集 権化,R&D部門の役割の柔軟1生,マーケティ ング部門の役割の柔軟性は,プロジェクトの成 功に有意な関係がない。 さて,これらの結果について,Moenaertら が行っている説明は,以下のとおりである。 第1に,製品開発プロジェクトの成功は,不 確実性を効率的に削減できるか,すなわち,開 発が開始される前のプロジェクトのプランニン グおよび評価の段階において,どの程度の情報 が処理されるか,両部門が統合されているかど うかにかかっている。 第2に,プロジェクトの成功は,意思決定や 実行活動によって左右される。集権化は情報交 換には負の効果をもっていても,効率的な意思 決定やその実行を引き起こすきっかけとなるか もしれない。 2つの職能部門の間のコミュニケーションが プロジェクト・リーダーを通して行われるとい う形をとる場合,明確な意思決定構造をとるこ とになる。R&Dおよびマーケティング部門の 役割の柔軟性(換言すれば意思決定権限の曖昧 化)がプロジェクトの成功に有意な関係をもっ ていないのは,この負の効果のためであろうと
第1表 職能間のコミュニケーション,受け取った情報,及びプロジェクトの成功の相関関係 1 2 3 4 5 6 1.プロジェクトの集権化 1.00 2.プロジェクトの公式化 一〇。3G*** 1.00 3.職能問の雰囲気 一〇.60**** 0.42艸ホ* 1.00 4.R&D部門の役割の柔軟性 一〇.06 0.40**** 0.21緋 1.00 5.マーケティング部門の役割の柔
@軟性
一〇.25** 0.12 0.25** 一〇.12 1.00 6.R&D部門がマーケティング部 @門から受け取る情報 一〇.64**** 0.39*** 0。65**** 0,20* 0.28** 1.00 7。マーケティング部門がR&D部 @門から受けとる情報 一〇.50**** 0.57**** 0.60**** 0.45串*** 0.25** 0.31*** 8。イノベーション・プロジェクト @の商業的成功 一〇.05 0.20* 0.29** 0.13 一〇.01 0.39零** **T*o〈O.OOI, ***P〈O.Ol, **P〈O.05, ’P〈O.10. いう。他方, 「役割の柔軟性」は,両部門の情 報交換を促進するとしても,プロジェクトの責 任の所在を曖昧にする。 第3に,R&D部門がマーケティング部門か ら受け取る情報はプロジェクトの成功と有意な 正の相関関係があっても,マーケティング部門 がR&D部門から受け取る情報とプロジェクト の成功の問には有意な関係はなかった。これは, R&D部門の活動は営業サイドの情報に非常に 依存しているが,マーケティング部門はR&D 部門の情報にそれほど依存していないことを意 味している。 さて,Moenaertらは,職能間のコミュニケー ション,受け取った情報,プロジェクト成功の 決定要因間の相関関係を分析している。第1表 は,その数値の一部を抜き出したものである。 それらの結果に基づいて,Moenaertらは以下 のプロジェクト成功のための留意点を導き出し ている。 (1)公式化と分権化の同時達成 上述の分析結果より,プロジェクトの成功に 対し,プロジェクトの公式化は正の相関関係が あり,プロジェクトの集権化は負の相関関係が あった。集権化は,リーダーがチームメンバー に命令するコントロールが行われることを意味 Moenaert, et a1.(1994)p.37の一部 し,公式化は,ここではヒエラルキーによらな い情報伝達プロセスを促進する公式的機構を設 置することを意味しているから,いわば,ヒエ ラルキーによるコントロールと自律的水平的調 整システムとを両立させることが,プロジェク トの成功をもたらすということであろう。しか し,それをどうやって達成すればよいかについ ては詳細に述べられていない。 さらに彼らによれば,新製品開発計画(新製 品開発の開始日と終了日,プロジェクトの進行 をモニターする公式的手続き,活動計画)が重 要であり,計画は,非公式の議論や公式の会合 のきっかけとなる。ある製品の市場におけるポ ジションの再評価,新市場の機会の発見や新技 の 術開発の可能性の探求につながるかもしれない。 (2)効率的雰囲気の維持 職能横断的組織風土は,職能横断的コミュニ ケ・一一ションに非常に強い効果をもっている。 上述の結果では,集権化とプロジェクトの雰 囲気は負の相関関係にあった。しかし,プロジェ クト・リーダーの存在(集権化)は,職能を越 えた統合に重要な役割をはたしている。理想的 なチームリーダーとして,プロジェクトのコン 19) lbid., p.39.トロールをしっかりやり,顧客のニーズに精通 し,30歳から45歳で,技術的諸職能に5年から 12年就いており,マーケティング職能を4年か ら10年経験しているといった人があげられてい る。また,プロダクト・マネジャー(PM)は 重量級が望ましいとされる。重量級のPMは, 「強力な製品フォーカスと広範な技能をもった 人々の多機能的チーム,広範な職能横断的コミュ ニケーションと影響力を支援する構造とシステ ムを伴う組織状況で身につけた技能と経験に応 じた地位と年功をもっている(p.40)」。 (3)新製品開発段階における柔軟性 R&D部門の「役割の柔軟性」は,より公式 化されたプロジェクト・チームにおいて,より 頻繁に発生している。 R&D部門のエンジニアが顧客と直接接触し, 市場の情報を得るというような活動は,自動的 に起こるものではなく,プロジェクト・チーム 活動の公式的なプランニングによって引き起こ されるものである(原価企画におけるラグビー 方式がその例である)。しかし,欧米では継続 的配置転換やチームメンバーが職能を越えた技 能をもっことは,受け入れられ難い。ただし, 後者については,R&D部門が市場テストをや るために顧客と接触したり,しっかりした技術 的経歴をもったマーケティングの人間がR&D の責任を負うという形で,いくつかの企業にお いてみられるという。
さて,Moenaertらは,この論文でR&D部
門とマーケティング部門の研究において,コミュ ニケーションの構造についてはめったにモデル 化されてこなかったこと,両部門の統合がイノ ベーションの成功に大きなインパクトを与える ことを主張している。 プロジェクトの公式化,分権化,職能間の良 好な関係,そして両部門の役割の柔軟性は,両 部門間のコミュニケーションを促進し,プロジェ クトの公式化や職能間の雰囲気は,プロジェク トの成功に重大な効果をもたらすことが明らか の にされた。 3.Ruekert and Walker Jr.(1987) Ruekertらの研究は,なぜ,そしてどのよう にして,マーケティング職能の人間がさまざま なタイプのマーケティング関連の仕事を担当す る他の職能の人間と相互依存関係をもつのか (組織外部と組織内部の各職能との間の調整役 としての役割を果たすのか),そしてその結果 はどうなのか,という問題を解明しようとした 研究である。彼らがこの研究を行った理由の一 つは,垂直的コントロールと職能間の調整の研 究は行われているが,マーケティング部門と他 の職能領域との関係に関する研究が不足してい るとの認識からであった。マーケティング戦略 の重要性は認められているものの,水平的イン ターアクションの多くは非公式のものである点 に彼らは注目している。 サンプルについては,フォーチュン500社の 中の3つの事業部の151人の従業員に対する質 問票調査の結果(有効回答81%)に基づいてい る。とられたアプローチは,上述の1.2.とは 異なり,社会システム理論および資源依存モデ ルを基礎にしている。社会システムは,少なく とも以下の2つの重要な特性をもっているとさ の れる。 1.社会システムのメンバー問の行動は,個 人と集団両方の利害によって動機づけられ る。 2.相互依存のプロセスは専門化と分業のた めに発生する。 【職能間の相互作用】 Ruekertらが考えている部門間の相互作用の 構造およびプロセスの次元は,(1)マーケティン グ部門の人間と他の部門の人間の問のやりとり, (2)2つの領域の人々の間のコミュニケーション, (3にれらの交換を管理するための調整メカニズ 20) lbid., pp.40−41. 21) Ruekert & Walker Jr. (1987) pp.1−3, p.9.ムから成る。 (1)は,資源,労働,技術的援助の交換を含ん でいる。やりとりのためには(2>の情報の流れも 当然必要となる。(3)の調整の側面は,公式的労 働規則,あるメンバーが他のメンバーに及ぼす ことのできる影響の大きさ,両方とも無力な場 合のコンフリクト解決メカニズムから成ってい る。 相互作用の結果は, 「職能的成果」の側面と 「社会心理学的成果」の側面に分類されている。 職能的成果とは,マーケティング部門,他の部 門それぞれの目標および共通目標の達成の程度 を指し,社会心理学的成果とは,他の職能のメ ンバーとの関係に関して知覚される効率性と集 の団間のコンフリクトの程度を意味している。 この「社会心理学的成果」とは,例えば完結 したプロジェクトの結果が将来のプロジェクト についてのチームメンバーの態度や活動に対し てもつプラスの効果であり,動機づけに役立つ という意味での成果(仕事のプロセスが楽しい, 人間関係が良い等)を意味している。 【実証結剰 Ruekertらがたてた11の命題のうち,7つに ついては支持された。この研究は,マーケティ ング部門とそれ以外の3職能(製造部門,R& D部門,経理部門)との相互作用に関するマー ケティング部門の人問の知覚に関するデータに 基づいている。 P2:資源依存は相互依存の流れに正の相関 関係をもっている。 P3:相互依存の流れは領域の類似性に正の 相関関係をもっている。 P4:公式化は相互作用の流れに正の相関関 係をもっている。 P51相互作用の流れは,他のユニットの影 響と他のユニットに対するマーケティング部 門の影響に正の相関関係をもっている。 P6:資源依存は,他のユニットの影響と他 のユニットに対するマーケティング部門の影 響に正の相関関係をもっている。 P7:コミュニケーションの量は,領域の類 似性に正の相関関係をもっている。 P13:コミュニケーションの困難さはコンフ リクトに正の相関関係をもっている。 これらの命題は,相互依存関係のインパクト (P2,P3),調整メカニズム(P4,P5,P6),コ ミュニケーション(P7),職能間の相互依存 関係の結果(P13)という要素に区分できる。 P2は,マーケティング部門の担当者の他の 部門に対する資源依存が大きくなるほど,ある いは他の部門の担当者のマーケティング部門の 担当者に対する依存性が高くなるほど,資源, 情報,労働の流れは大きくなる,という命題で ある。 P3は,マーケティング部門の人品と他の職 能領域の人間とのやりとりの流れの大きさは, 彼らの問の領域の類似性(domain similarity) の程度に正の相関関係をもっている,という命 題である。この「領域の類似性1とは,2人の 個人あるいは2部門が同一の目標,技能,タス クを分かちあっている状態を言う。 これらは,例えば,新製晶開発の責任を上位 の管理者から負わされたマーケティング部門の 担当者が,R&D部門の担当者と目標およびタ スクを共有している状況を意味している。 P4は,マーケティング部門の担当者と別の 職能領域の人々との関係が,非常に公式的なも のであることと,両部門間の資源,労働,支援 の流れの量とは正の相関関係をもっている,と いう命題である。 これは,ルールや標準的業務手続きを利用す ることによって,資源等の流れの不確実性・曖 昧性を減少させ,部門間の相互作用の効率性を 高められるということである。業績管理会計も 22) lbid., p.4. 23) lbid., p.10.
その公式化のための技法の一種と考えられる。 ただし,ここでいうインターアクションは,情 報交換を含む,より広い意味で使用されている。 P5は,マーケティング部門の担当者と別の 部門の人々の資源,労働,支援の流れが大きく なるほど,(A)マーケティング部門へのその部 門の影響力は強くなり,(B)他の部門の意思決 定に対するマーケティング部門の影響は大きく なる,という命題である。 P6は,別の職能領域からの資源に対するマー ケティング部門の担当者の依存レベルが大きく なるほど,マーケティング部門の決定と業務に 対するその職能領域の影響力は大きくなる,と ういう命題である。 P7は,マーケティング部門と他の部門の担 当者間のコミュニケーションの量は,2つの部 門領域の類似性の程度に正の相関関係があると いう命題である。 P13は,コミュニケーションの困難注は,マー ケティング部門の担当者と他の職能領域の担当 者間のコンフリクトに,正の相関関係があると いう命題である。 【研究の意義と問題点】 Ruekertらによれば,これらの発見は,職能 問の相互依存関係を効率化する可能性を示唆し ている。効率化のためには,強い資源依存関係 をもった部門間で,資源の流れをスピードアッ プ化するような組織構造と調整メカニズムを開 発することが必要である。例えば,いくつかの 部門の代表者から構成される「販売チーム」を 作り,情報や資源を入手すると共に,職能間の 調整を行うケースが考えられている。 P7の命題のように,同じタスクや目的をもっ ている2つの部門では,資源を配分し努力を調 整するためにコミュニケーションが盛んに行わ れるかもしれないが,両部門の差をきわだたせ るようなその他の要素があると,コミュニケー ションは抑制される可能性もある。 P13については,コミュニケーションの困難i 性がコンフリクトをもたらすのか,コンフリク トがあるからコミュニケーションが妨げられる のかが明らかでない。 また,マーケティング部門の担当者と他の部 門の担当者との関係の効率性に関しては,首尾 一貫した結果がでていない。例えば,マーケティ ング部門と経理部門の関係が例外的である。コ ミュニケーションの困難性は,マーケティング 部門によって知覚された経理部門との関係の効 率性と正の相関関係がみられた。彼らはこの効 率性はコンフリクトの量とも正の相関関係があ るという。その原因は,交換される資源の質的 な差によるものであろうという。Ruekertらの 説明を解釈すれば以下のようになる。 マーケティング部門とR&D部門および製造 部門とは,職能的タスクの成果と情報の相互交 換を伴う。そのような状況では,コンフリクト やコミュニケーション不足は,調整や協力に負 の効果をもたらす。これに対して,マーケティ ング担当者は有限の資源配分,コスト・アロケー ションの方法,および売上高や利益業績の評価 方法を知らせる情報を経理担当者に依存せざる をえない。しかし,経理部門は職務を遂行する ための情報以外,マーケティング部門にほとん ど何も要求しない。マーケティング部門は,経 理部門からそれらの情報を得て,経理部門が資 源配分や情報のパワーをもちそれを乱用してい ると知覚し,資源配分等をめぐって交渉を行う ことを通じて,経理部門に対して敵対意識をも らう つことになるかもしれない。 4. Pinto and Pinto (1990) Pintoらは,262人のチームメンバー,72の 病院のプロジェクト・チームについて調査を行 い,協力度の高いチームは協力度の低いチーム と比較して,コミュニケーションの理由におい て差があるだけではなく,非公式なコミュニケー 24) lbid., pp.6−8. 25) lbid., pp.13−15.
ション方法の利用が多いことを指摘した。また 成功要因として職能横断的協力が重要であるこ とを指摘した。 以下,彼らのコミュニケーション,職能横断 的協力,プロジェクトの実行の成功に関する概 念および仮説を紹介しよう。 【コミュニケーションの分類】 コミュニケーションといってもいくつかの種 類がある。(1)内部と外部のコミュニケーション, すなわち,プロジェクト・チーム内のチームメ ンバー間か,チームと親組織および予測される 顧客との問のコミュニケーションのパターン, (2)公式的方法(会合,手紙,メモ,報告書等) か非公式の方法(電話,計画的でない面と向かっ ての議論),すなわち前もって規定されたもの かその場限りのものかという情報伝達のやり方, (3>文書によるかあるいは口頭によるコミュニケー ションかという分類である。 Pintoらの第一の研究目的は,協力の程度の より大きなグループほど,公式・非公式のコミュ ニケーションを併用しているという仮説をテス トすることである。第二に,職能横断的グルー プ問におけるプロジェクト問でコミュニケーショ ンを行う理由を検:画し,有意な差があるか確認 することである。 Hl;職能横断的協力の程度が強いプロジェ クト・チームは,協力度の弱いチームよりも 有意に公式的・非公式的コミュニケーション を使用している。 H2:職能横断的協力が強いプロジェクト・ チームと弱いチームとの間には,コミュニケー ションの理由において有意な差がある。 職能横断的協力とは,さまざまな職能領域の 人間が組織的課業を達成するために一緒に働く 場合の課業の質および個人間の関係と定義され の ている。 この職能横断的協力は,仕事のプロセスやテ クノロジーの相互依存性だけではなく,異なっ た単位問の権限及び権力をめぐるコンフリクト から発生している。 H3a:プロジェクトのチームメンバー問で達 成されるクロス・ファンクショナルな協力の 程度が強くなればなるほど,課業の成果につ いての評価は,より一層高くなる。 H3b:プロジェクトのチームメンバー問で達 成されるクロス・ファンクショナルな協力の 程度が強くなればなるほど,社会心理学的成 果の評価は,より一層高くなる(p.204)。 26) Pinto & Pinto (1990) p,202, p.203, p.206, さて,彼らの研究目的は,(1)プロジェクト内 のコミュニケーションと職能横断的協力との関 係を調査することであり,(2)開発の成功と新し いプログラムの導入をめぐる職能横断的強力の 効果を検討することである。 彼らの発見は,第1に上述の仮説H1が部分 的に支持されたことである。すなわち,強い協 力関係にあるプロジェクト・チームは,協力の 程度が弱いチームよりも非公式のコミュニケー ション(電話と非公式の対話)を,よく利用し ている。 第2に仮説H2も支持された。コミュニケー ションの理由について,両チーム問に有意な差 があった。すなわち,協力の程度の強いチーム の方が,ブレイン・ストーミング,プロジェク トに関連する情報の獲得,開発プロセスの進行 のレビュー,彼らの業績に関するフィードバッ ク,のためのコミュニケーションを行う傾向が 強い。 ところが,強い協力関係にあるチームは,チー ムメンバー問に起こった個性の衝突を解決する ための努力をあまりしない。 第3に,課業の成果と社会心理学的成果のど ちらについても,職能横断的協力は重要である ことが確認された。 さて,上述の結果から,プロジェクト・マネ
ジャーにとって,インフォーマルなチームメン バー問の相互作用を促進することは意義がある ことがわかる。換言すれば,他のメンバーとコ ミュニケートしたり接触したりする自由や能力 (accessibility)は,管理者にとって重要である。 現実には,プロジェクト・マネジャーが,チー ムメンバー間のアクセッシビィリティーや非公 式のコミュニケーションを促進する努力をして いる。会議室の設置やチームメンバーを物理的 に近づけること,業績評価や報酬システムの工 夫等はその例である。 さらに,プロジェクトの初期に「信頼関係」 が築かれていないならば,「強い協力関係」の ために必要な「インフォーマルなコミュニケー ション」に関心がもたれる可能性は少なくなる。 彼らによれば,強い協力関係にあるチームは, 公式的会合と同じ位の時問をコンフリクトの解 決に費やしていないことも指摘されている。 要するに,製品開発の成功と新プログラムの 導入のためには,職能横断的協力が重要であり, コミュニケーションを促進する方策が十分にと のられる必要があるというわけである。
IV 研究の意義と問題点
1.米国における上述の研究の意義 諸節の1,2のような研究が行われた理由は, 米国企業の組織は職能間の垣根が高いため,こ れを低くし職能間の情報交換を行う必要に迫ら れているためであろう。とりわけ,R&D部門 とマーケティング部門の垣根を低くして,情報 ユ の共有化をもたらす必要があったのだろう。こ 27) lbid., pp.208−209. 28)下川(1994)による米自動車産業の研究によれ ば,フォードのシカゴ工場では,開発部門と生産 部門の壁をなくす努力を重ねると共に,セクショ ンの壁を越えたチームコンセプトの導入,そして 職務数の縮小と個々の仕事を受け持つ範囲の拡大 が図られているということである(安保(1994) pp.278−279)o れに対し,3の研究は「成果」の意味を「社会 心理学的成果」まで含むことにより広く捉え, 「相互作用」としてコミュニケーション以外の 要素も考慮している。また,マーケティング部 門とR&D部門だけではなくその他の部門との 関係も分析している。4は3の研究の延長線上 にあると思われるが,コミュニケーションと協 力,さらにはそれが成果に及ぼす影響をみよう とした点で評価できる。ただし,知覚に基づい た調査であるという点に限界がある。 チーム組織の設置は,職能横断的な情報の交 換,協力,組織学習が行われ, 「成果」が生み 出されるための一つの方法である。しかし,米 国で採用されているチームは日本国内で運営さ れているチーム組織とは必ずしも同じものでは ないし,うまく機能していない場合が多い。 私は,これらの米国の研究に関して以下のよ うな疑問をもつ。 (1)まず,情報交換があらゆる場合に望ましい かという疑問である。例えば,すでに製品コン セプトが確定している場合に,ゆらぎ・混乱を 引き起こすことは必ずしも望ましくないかもし れない。 (2>初めから部門間の垣根が低い場合や垂直的 コントロールの強い方が適した状況では,この ような考察は必要なくなる。前者については, 例えば岡野浩助教授によれば,日本企業におい ては開発の中にマーケティング職能を置いてい 29)米国の日系企業でさえ,チームシステムが日本 国内と同じように機能しないことが指摘されてい る。では,ボトム・アップの日本企業ではチーム 組織が採用しやすいといえるだろうか。ただし, 安保氏によれば,ボトム・アップと言っても,日 本企業の場合,ミドルを介して現場の意向がトッ プ主導の企画・方針に反映されるのであって,現 場が主導権を握っているわけではない(安保, p.51,p.190)。このことは,野中教授が述べて いるような組織構成員全体がミドル・マネジメン トを機軸として知識創造を行うミドル・アップ・ ダウン型プUセスという概念と類似している(野 中(1994)p.28)。るケースが多いという。また,シャープの事例 では,新規商品の開発に際しては,営業部の担 当者も企画会議に参加する。営業本部と事業部 の営業企画の社員は本社の同じフロアに集まっ ている。このように,両者が連絡をとりやすい ヨの 状況にあるケースがある。後者については,後 述のリーダーシップの問題である。 (3)Ruekertのようなモデルでは,どのような 競争戦略をとるかによって資源依存は変化する。 現在の製品市場を維持するよりも,攻撃的な新 製品開発戦略をとる場合は,マーケティング部 門とR&D部門の相互依存関係はより強くなる。 しかし,さまざまな部門間の関係も調査すべき であろう。また,現実には,水平的情報交換は 複数の部門で同時に行われている。第一次接近 として二つの部門の問の情報交換を扱うのはよ いかもしれないが,今後の課題として複数の部 門聞の同時並行的情報交換のメカニズムの解明 が重要であろう。 ㈲プロジェクトの実行の成功については,何 をもって成果とみるか,効率性が高いとみるか については,えてして測定・数量化しやすい時 間,予算,課業の遂行等に関係づけて理解され てきた。けれども,Ruekertらの研究のように, 実行プロセスについてチームメンバーが価値が あると考える程度,満二度というものも「成果」 とみなすならば,チーム組織のもつ意義は真の チームに近づくかもしれない。米国の企業では, この「実行プロセス」の側面への配慮があまり きユう なされてこなかったのではないか。 では,米国での研究を基礎にして,日本では それをどのような研究に置き換えるべきかとい うことについて次に述べたい。 2.日本で行うべき研究 (1)開発購買 日本企業の場合でも,マーケティング部門と 30)日経ビジネス編(1994)p.19 31) Pinto (1990) p.204. R&D部門の情報交換を促進することは重要で あろう。けれども,購買部門と設計部門,基礎 研究と製品開発の関係を密にすることにも眼を むけるべきであろう。 購買部門と設計部門については,日本企業は 外注の割合が多く,内製の多い米国企業に比べ て,購買が成功するための重要なポイントになつ ヨ ている。メーカーとサプライヤーとの関係も考 える必要がある。 例えばホンダでは,購買部門を設計部門のあ る研究所に集めることにより,開発購買という 一体化を行なっている。購買マンが安い部品に 関する情報を設計に流したり,発注部品をめぐっ て,設計,購買,部品メーカーの3者で相談す る等である。他方,松下は購買を通じて見つけ たマレーシアの地場の電気メーカーに生産を委 託するに際して,設計・品質保証部の人材を派 遣して,生産技術を教え込むといったことを行っ おの ている。 基礎研究と製品開発については,河野(1992) によれば,「研究と開発とは目的も効果も異な り,その原則も異なるというのが通説である。 (p.47)」とされており,両者は分離している。 米国の文献では,R&D部門とその他の部門と いう形で研究が進められているが,RとDの関 係と担当場所も考慮すべきではないだろうか。 (2)日米におけるチーム組織の意味の違い チーム組織の概念は必ずしも一義的ではない。 実態調査をする場合には,組織の性格を吟味す べきであろう。 32)日経ビジネス(1994)pp.11.14:小田切,第6 章。 33)日経ビジネス,Ibid. 34)情報交換あるいは情報の共有化といっても,組 織とリーダーシップの形態によりさまざまである。 配置転換,重量級のプロジェクト・リーダーによ る情報伝達,部門メンバーによる個人的情報伝達. 部門から独立したメンバーから構成されるチーム 内での相互作用等さまざまなケースが考えられる。