Title
機能性膜としてのバクテリアセルロース膜の製造と特性評
価( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
知久, 達哉
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第601号
Issue Date
2013-03-13
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/47984
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 知 久 達 哉 (静岡県) 博士(農学) 農博甲第601号 平成25年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 静岡大学 機能性膜としてのバクテリアセルロース膜の 製造と特性評価 主査 静岡大学 副査 静岡大学 副査 岐阜大学 授 授 授 教 教 教 志 治 徹 保 恭 谷 木 永 釜 鈴 光 論 文 の 内 容 の 要 旨 セルロースは主に高等植物によって生産されるが、Acefoム8Cねr属、Agroあ∂C一色r血刀属、 此ゴzoム山田属、鮎rc血8属、鳥eロゐ瓜0月08ぶ属、Ac血Ⅷ0ム∂Cfer属、Ajc∂Jゴge乃eぶ属、Aeroム8Cねr 属、Azoね由cねr属のようにセルロースを生産する多くの微生物が存在する。本研究ではそ れらの微生物の代表格である酢酸菌(Aceね由cf訂即j血皿)が生産するバクテリアセルロ ースに着目し、その機能化と極薄シートの製造を試みた。 セルロースは自然界で最も豊富に存在する有扱高分子であり、再生産可能なバイオマス 資源であるが、植物繊維のようにリグニンやヘミセルロースと共存している場合が多い。 一方、バクテリアセルロースは非常に純粋なセルロースであり、重合度や結晶化度も高い 特徴を有している。またナノレベルの繊維幅をもつ極細繊維でありことから木質等の植物 繊維とは異なった種々の特性を有する。 まず槻能化を目的としてバクテリアセルロースのN-クロル化誘導体を調製するとともに、 その侍れた強度特性を利用して極洋シートの作製を検討した。N-クロル化バクテリアセル ロースはアクリロニトリルをマイケル付加するシアノエチル化、過酸化水素添加によるカ ルバモイルエチル化、次亜塩素酸ナトリウム添加によるN-クロル化の3段階で調製された。 反応経路を以下に示した。 第1段階 BCell-OH +・CH.,=CHCN→ BCell-0-CH.,C軋CN 第2段階 BCell-0-CH・,CH・,CN + H=02 → BCell-0-CH・,CH・.CONH2
帝3段階 BCel卜0-CH2CH2CONH2 + NaClO → BCell-0-CH・.CH・.CON-Cl
ここでBCelトORはバクテリアセルロースの水酸基を示す。
これらの反応を経て得られた厚さ10〃mのN-クロル化シートは、未反応のバクテリアセ ルロースから調製したシートの約1.7倍の乾燥引張強度と約3.6倍の湿潤引張強度を有し
-60-ていた。またバクテリアセルロースをN-クロル化することにより、厚さ3〃mの極滞シー トの作製に成功した。 N-クロル化バクテリアセルロースシートの引張強度向上はⅣ-クロル化による繊維間結合 の強化とシートの地合い向上によるものと考えられた。なお前段のシアノエチル化バクテ リアセルロースシートとカルバモイルエチル化バクテリアセルロースシートでほ未反応の バクテリアセルロースシートと大きな強度特性の違いは見られなかった。 未反応のバクテリアセルロースシートとN-クロル化バクテリアセルロースシートの寸法 安定性を比較するため乾燥湿潤繰り返し試験を行った結果、N-クロル化バクテリアセルロ ースシートは未反応に比べ約1/2の寸法変化率であることが分かった。これらN一クロル基 による繊維間結合の強化によるものと推察した。 更なる機能化としてバクテリアセルロースのカチオン化を検討した。カルバモイルエチ ル化バクテリアセルロースをホフマン分解することによりアミノエチル化バクテリアセル ロースが得られた。反応の確認はFTIR分析と染色法で行った。ホフマン分解反応の適正な 水酸化ナトリウム礁度は1mol/Lであった。アミノエチル化バクテリアセルロースシートは N-クロル化シートと同様湿潤引張強度に優れていると同時に速乾性にも摩れていた。 次にN一クロル化バクテリアセルロース繊維を広葉樹から得た晒クラフトパルプと混抄し た場合の強度特性変化を検討した。晒クラフトパルプにⅣ-クロル化バクテリアセルロース 繊維を1%加えることにより乾燥引張強度は30%向上した。また混抄率を上げることによ り湿潤引張強度も向上した。これらの強度向上は反応性を有するⅣ-クロル化バクテリアセ ルロースがクラフトパルプ級維間の結合に寄与し、紙力増強剤ポリマーの役割を担ったと 考えられる。 以上から、バクテリアセルロースをN-クロル化あるいはアミノエチル化することにより 耐水性並びにカチオン性を付与することができた。特にN-クロル化においてはバクテリア セルロース繊維の分散状態を向上させることにより地合いが向上し極めて薄いシートの製 造が可能となり、極薄機能性傾が製造できた。 したがって本研究で調製したN-クロル化バクテリアセルロース並びにアミノエチル化バ クテリアセルロースは、今後耐水機能性膵あるいは耐水性複合材としての利用が大いに期 待できる。 審 査 結 果 の 要 旨 本論文は微生物が生産するバクテリアセルロースに着目し、その機能化と極滞シー トの製造を試みたものである。 セルロースは自然界で最も豊富に存在する有機高分子であり、再生産可能なバイオ マス資源であるが、木質バイオマスのようにリグニンやヘミセルロースと共存してい る場合が多い。一方、バクテリアセルロースは非常に純粋なセルロースであり、重合 度や結晶化度も高い特徴を有している。またナノレベルの繊維幅をもつ極細繊維であ りことから木質等の植物繊維とは異なった種々の特性を有する。 木研究では圭ずバクテリアセルロースのN・クロル化誘草体を調製するとともに、 その儀れた強度特性を利用して極雑シートの作製を検討した。N-クロル化バクテリ アセルロースはアクリロニトリルをマイケル付加するシアノエチル化、過酸化水素添 加によるカルバモイルエチノレ化、次亜塩素酸ナトリウム添加によるN・クロル化の3
-61-段階で調製された。得られた厚さ10〃mシートは未反応のバクテリアセルロースの 約1.7倍の乾燥引張強度と約3.6倍の湿潤引張強度を有していた。圭たバクテリアセ ルロースをN一クロル化することにより、厚さ3〃mの極薄シートの作句捌こ成功した。 N一クロル化バクテリアセルロースシートの引張強度向上はN-クロル化による繊維 間結合の強化とシートの地合い向上によるものと考えられた。なお前段のシアノエチ ル化バクテリアセルロースシートとカルバモイルエチル化バクテリアセルロースシ ートでは未反応のバクテリアセルロースシートと大きな強度特性の違いは見られな かった。 未反応のバクテリアセルロースシートとN-クロル化バクテリアセルロースシート の寸法安定性を比較するため乾燥湿潤繰り返し試験を行った結果、N・クロル化バク テリアセルロースシートは未反応に比べ約1/2の寸法変化率であることが分かった。 これもN-クロル基による繊維間結合の強化によるものと推察した。 更なる機能化としてバクテリアセルロースのカチオン化を検討した。カルバモイル エチル化バクテリアセルロースをホフマン分解することによりアミノエチル化バク テリアセルロースが得られた。反応の確認はFTIR分析と染色法で行った。ホフマン 分解反応の適正な水酸化ナトリウム濃度は1mol瓜であった。アミノエチル化バクテ リアセルロースシートはN・クロル化シートと同様湿潤引張強度に優れていると同時 に速乾性にも優れていた。 次にN-クロル化バクテリアセルロース繊維を広葉樹から得た晒クラフトパルプと 混抄した場合の強度特性変化を検討した。晒クラフトパルプにN-クロル化バクテリ アセルロース繊維を1%加えることにより乾燥引張強度は30%向上した。また混抄 率を上げることにより湿潤引張強度も向上した。これらの強度向上は反応性を有する N-クロル化バクテリアセルロースがクラフトパルプ繊維間の結合に寄与し、紙力増 強剤ポリマーの役割を担ったと考えられる。 以上の結果から、バクテリアセルロースをN一クロル化あるいはアミノエチル化す ることにより耐水性並びにカチオン性を付与することができ、特にN一クロル化にお いてはバクテリアセルロース繊維の分散状態を向上させることにより極薄シートの 製造が可能となり、機能性膜が製造できた。したがって本研究で調製したN・クロル 化バクテリアセルロース並びにアミノエチル化バクテリアセルロースは、今後耐水機 能性膜あるいは耐水性複合材としての利用が期待される。 以上について、審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位 論文として十分価値のあるものと認めた。 【学位論文の基礎となる学術論文】 知久達観綺木葉治,特出一戸チ,叶クロル化バクテリアセルロースの調製とその極薄 シート化、高分子論文壌 印刷中(2013年2月掲範子定) 知久達哉,鈴木恭治,鮫島一彦,N一クロルバクテリアセルロースシートの耐水性評 価、日本包装学会誌 印刷中(2013年4月掲載予定) 知久達鼓,村田 淳,鈴木恭治,鮫島一象アミノエチル化バクテリアセルロースシ ートの製造とその強度特性、高分子論文集 印刷中(2013年4月掲載予定)