Title 牛白血病ウイルス遺伝子量を指標とした地方病性牛白血病の診断法に関する研究( 内容と審査の要旨(Summary) ) Author(s) 宗村, 佳子 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 甲第446号 Issue Date 2015-09-24 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/53641 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本(国)籍) 宗 村 佳 子(山口県) 主 指 導 教 員 氏 名 東京農工大学 教授 藤 川 浩 学 位 の 種 類 博士(獣医) 学 位 記 番 号 獣医博甲第446号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年9月24日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第2項該当 研 究 科 及 び 専 攻 連合獣医学研究科 獣医学専攻 研究指導を受けた大学 東京農工大学 学 位 論 文 題 目 牛白血病ウイルス遺伝子量を指標とした地方病性牛白血病 の診断法に関する研究 審 査 委 員 主査 岩 手 大 学 教 授 村 上 賢 二 副査 帯広畜産大学 教 授 猪 熊 壽 副査 岩 手 大 学 教 授 佐 藤 繁 副査 東京農工大学 教 授 藤 川 浩 副査 東京農工大学 教 授 白 井 淳 資 副査 岐 阜 大 学 教 授 福 士 秀 人 学位論文の内容の要旨 牛白血病は地方病性牛白血病(EBL)および散発性牛白血病に分類され,その多くは牛白 血病ウイルス(BLV)の感染を原因とする EBL である。牛白血病は 1998 年に家畜伝染病予 防法の届出伝染病に指定された同年には発生頭数は 99 頭と低かったが,2013 年には 2, 300 頭を超えるまでに増加した。牛白血病は,と畜場法においてと畜禁止や全部廃棄となる重 要な疾患であることから,発生頭数の増加は公衆衛生上も大きな問題となっていた。一方, 肥育牛に関しては EBL 発生状況などの基礎的データは少なく,また,類症鑑別に苦慮する 症例もあり,病理学的検査を補助する検査法の開発が求められていたことから、以下の研 究を行なった。 第一章では、肥育牛における EBL 発生状況を明らかにするために,1997~2012 年度の東 京都におけると畜牛の発生状況を調査した。その結果,1997~2004 年度までは,牛白血病 の発生率は 0~0.005%で推移していたが,2005 年度にはその発生率は 0.01%となり,この 年度を境に増加傾向に転じた。その後,発生率はさらに上昇を続け,2012 年度には 0.03% に達したことが明らかになった。EBL 牛 163 頭のうち,生体所見で異常があったものは 14.6% にすぎず,抗 BLV 抗体検査で陰性を指名したものが 1.85%認められた。一方,BLV 遺伝子を 検出するリアルタイム PCR 法では全発症例から BLV 遺伝子を検出したため,本法は EBL 診 断に有効となる可能性が示された。 また,東京都におけると畜牛の抗 BLV 抗体保有状況を調査した。その結果,2005~2007 (4)
年度では 21.2%,2012 年度では 12.7%が陽性であった。また,2 回の調査ともに黒毛和種に 比べて交雑種の陽性率は有意に高かった(p<0.05)。本研究で得られた成績は 2009~2010 年に実施された BLV 全国調査の成績とほぼ一致しており,全国から牛が搬入される東京都 の大規模と畜場を調査することで得られた結果が全国における肥育牛の BLV 感染率の推定 に役立つと推察された。 第二章では,第一章の BLV 遺伝子検出結果を基にと畜検査における EBL 診断への応用を 目的として定量リアルタイム PCR 法(qPCR 法)を検討した。第一章にて得られた EBL 牛 102 頭及び BLV 感染牛 90 頭を供試材料とし,血液,リンパ節,脾臓のそれぞれから DNA を抽出 し,EBL 牛と BLV 感染牛の BLV 遺伝子量を qPCR 法にて定量比較した。その結果,EBL 牛と BLV 感染牛の間に明らかな差が認められた。すなわち,血液中の BLV コピー数の中央値は抽 出 DNA 10 ng あたり EBL 牛で 1,700 コピーとなったのに対し,BLV 感染牛の中央値は 110 コピーであった。リンパ節では EBL 発症牛の中央値は 1,900 コピーであったのに対し,BLV 感染牛では 6.8 コピーであった。脾臓では,EBL 牛は 2,200 コピーに対し,BLV 感染牛で は 61 コピーであった。比較した三部位全てにおいて EBL 発症牛の BLV 遺伝子コピー数は BLV 感染牛のそれを有意に上回っており(p<0.0001),両者の中央値の差が最も大きかった ものはリンパ節であった。また,EBL 牛では,1,000 コピーを超えたものがリンパ節におい ては 70.1%,脾臓では 65.7%みられたが,いずれの部位でも BLV 感染牛では 1,000 コピー を超えたものはなかった。これに対し,血液では,EBL 牛の 65.6%が 1,000 コピーを超えて いたが,BLV 感染牛においても 1,000 コピーを超えたものが 10.8%みられた。また, EBL 牛 の各リンパ節間のコピー数に有意な差は認められなかった。 以上の結果から,qPCR 法を EBL の発症診断として応用する場合の検体として最も適して いる部位は,リンパ節であると考えられた。そのリンパ節において qPCR 法により BLV 遺伝 子コピー数が 1,000 を超えるリンパ節が見いだされた個体は EBL と診断できると考察され た。一方で,BLV 遺伝子コピー数が 1,000 未満ものについては本法単独で EBL と診断する ことは難しく,そのような症例においては,複数部位のリンパ節を検査に供すること,ま た,病理組織検査と併せた総合的判断を行うことなどが必要であると推察された。 以上,本研究により肥育牛における EBL の発生状況及び BLV 浸潤状況の一端が明らかと なり,また,EBL 診断法の一つとして BLV 遺伝子の qPCR 法の有用性を示した。本研究によ り得られた知見が,と畜場における EBL 診断に役立つ有益な情報となることが切望される。 審 査 結 果 の 要 旨 牛白血病は地方病性牛白血病(EBL)および散発性牛白血病に分類され,その多くは牛 白血病ウイルス(BLV)の感染を原因とする EBL である。牛白血病は,と畜場法において と畜禁止や全部廃棄となる重要な疾患であり,発生頭数の増加は公衆衛生上も大きな問 題となっていた。一方,肥育牛に関しては EBL 発生状況などの基礎的データは少なく, また,と畜検査において類症鑑別に苦慮する症例もあり,病理学的検査を補助する検査 法の開発が求められていた。 本研究は,最初に EBL 発生状況を明らかにするために,1997~2012 年度の東京都にお
けると畜牛の本症発生状況を調査した。その結果,1997~2004 年度までは,牛白血病の 発生率は非常に少なかったが,2005 年度を境に増加傾向に転じた。その後,発生率はさ らに上昇を続け,2012 年度には 0.03%に達したことが明らかになった。EBL 発症牛 163 頭のうち,生体所見で異常があったものは 14.6%にすぎず,抗 BLV 抗体検査で陰性が 1.85% 認められた。一方,BLV 遺伝子を検出するリアルタイム PCR 法では全発症例から BLV 遺伝 子を検出したため,本法は EBL 診断に有効となる可能性が示された。 また,東京都におけると畜牛の抗 BLV 抗体保有状況を調査した。その結果,2005~2007 年度では 21.2%,2012 年度では 12.7%が陽性であった。また,2 回の調査ともに黒毛和種 に比べて交雑種の陽性率は有意に高かった(p<0.05)。本研究で得られた成績は 2009~ 2010 年に実施された BLV 全国調査の成績とほぼ一致していた。 次に,前述した BLV 遺伝子検出結果を基にと畜検査における EBL 診断への応用を目的 として本遺伝子の定量リアルタイム PCR 法(qPCR 法)を検討した。前述した EBL 発症牛 102 頭及び BLV 感染牛 90 頭を供試材料とし,血液,リンパ節,脾臓のそれぞれから DNA を抽 出し,EBL 発症牛と BLV 感染牛の BLV プロウイルス量を qPCR 法にて定量比較した。その 結果,EBL 発症牛と BLV 感染牛の間に明らかな差が認められた。比較した3部位全てにお いて EBL 発症牛の BLV 遺伝子コピー数は BLV 感染牛のそれを有意に上回っていたが (p<0.0001),両者の中央値の差が最も大きかったものはリンパ節であった。最終的に, qPCR 法を EBL 発症診断として用いる場合の検体として最も適しているものは,リンパ節 であると考えられた。ただし, EBL 発症牛の各リンパ節間のコピー数に有意な差は認めら れなかった。また,リンパ節において qPCR 法により BLV 遺伝子コピー数が 1,000 を超え るリンパ節が見いだされた個体は EBL と診断できると考察されたが,診断が難しい個体 においては複数部位のリンパ節を検査に供すること,また病理組織検査結果と併せた総 合的判断を行うことなどが必要であると推察された。 以上,本研究により肥育牛における EBL の発生状況及び BLV 浸潤状況の一端が明らか となり,また,EBL 診断法の一つとして BLV 遺伝子の qPCR 法の有用性を示した。本研究に より得られた知見がと畜場における EBL 診断に役立つ有益な情報となることが切望され る。 以上について, 審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位 論文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1)題 目:東京都におけると蓄牛の地方病性牛白血病発生状況と牛白血病 ウイルス浸潤状況 著 者 名:宗村佳子,小川仁,杉山恵美,藤川浩,村上賢二 学術雑誌名:日本獣医師会雑誌 巻・号・頁・発行年:67(7):523-528,2014
2)題 目:Comparison of the copy numbers of bovine leukemia virus in the lymph nodes of cattle with enzootic bovine leucosis
and cattle with latent infection
著 者 名:Somura,Y., Sugiyama,E., Fujikawa,H. and Murakami,K. 学術雑誌名:Archives of Virology