和国ランプン州バンダルランプン市の事例から――
著者
金子 正徳
著者別名
KANEKO Masanori
雑誌名
白山人類学
巻
20
ページ
29-56
発行年
2017-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00008980/
生活用品をめぐる「モノ」語り
――インドネシア共和国ランプン州バンダルランプン市の事例から――
金
子 正 徳
*Stories about Household Goods of Indonesian People:
A Case Study of Bandar Lampung City, Lampung Province, Indonesia
KANEKO Masanori Abstract
In the midst of globalization and growth in the Indonesian economy, it is often said that consumption by the middle class is propelling economic growth. Lifestyles are rapidly changing nationwide, including in Bandar Lampung city, Lampung Province. People in this city are becoming modernized. Though they are not yet highly dependent on modern goods and services such as electric appliances and electronic commerce, they use them in a supplementary way. The modernization process might appear to be unilinearly driven by modern rational thought; however, stories from three households in Bandar Lampung city show that various motivations, such as customary norms, social relationships, and personal sentiments, are important for installing modern goods and electronic appliances. Sometimes, for socio-cultural reasons, useless, even broken items are kept in the home. To see the diversity of individual reasons and reasoning behind the change, the middle class, defined by per-capita expenditures, was not collectively observed; instead, "middle-class-like" people, chosen based on their household goods and practices, were observed.
Stories of multiple goods from individual households in a small Indonesian city will become clues in further discussions meant to unravel the flat "middle-class" view so that the diversities and dynamics of the material culture among Indonesian people and other developing countries can be revealed.
キーワード:インドネシア,地方,ミドルクラス,ライフスタイル,消費 Keywords: Indonesia, Provincial Area, Middle Class, Lifestyle, Consumption
* 東洋大学アジア文化研究所;Asian Cultures Research Institute, Toyo University, 5-28-20, Hakusan, Bunkyo, Tokyo, 112-8606/ [email protected]
はじめに
インドネシアは,1997 年からはじまったアジア金融危機の影響を受け,それまで32 年に渡って中央集 権的に開発を推進したスハルト新秩序体制は,深刻な経済的な停滞と政治的混乱が続くなかで,世界銀行 の管理下に置かれ,瓦解した。しかし,2000 年以降の経済は,6%前後の国内総生産(GNP)の成長を続 けた。ストラウス等による個人・世帯・共同体の消費に関する統計を分析した研究でも,同金融危機によ る家計の消費支出は一時的な落ち込みにとどまり,2000 年末には同金融危機以前の,1997 年初の状態に 回復していたことが示された[John Strauss et al. 2004: 386]。佐藤は,2010 年の時点で都市人口とミドルクラスが50%を超えたと述べている。2030 年半ばまで人口 拡大期が続き,予測では約3 億人に増加し,その63.4%が都市人口になるとみられる(政府統計等)こと から1),人口の拡大に伴い継続的に消費が拡大することを意味する「人口ボーナス」を享受しながら親米 的な経済政策の奏功による経済拡大が続くと予測した[佐藤2012]。同時に,急速に市場経済に依存/従 属する構造が拡大し,いわゆる先進国諸国が経験した近代化のプロセスが時間軸を圧縮した形で進行し, 人びとの物質的な生活環境が大きく変化している。 インドネシアの経済や消費,生活様式の変化に関する研究では,全人口の4%しかいないのにもかかわ
らず[Badan Pusat Statistik 2016a: 84],インドネシアの貨幣流通高の70%以上が流通している[detik
記事(オンライン)2013]という首都ジャカルタにおける動向が注目されることになるが,むしろ本稿の 関心は,貨幣流通量30%弱でありながら人口の96%が居住する地方にある。 本稿はランプン州バンダルランプン市における生活用品とライフスタイルをめぐる諸事例に注目するこ とで,グローバル化やナショナル化のなかで,ミドルクラスと括られる消費意欲が旺盛な人々の増加に伴 って,フラット化あるいは近代化が単系的かつ普遍的に進行するかのように捉えるのではなく,むしろ, その選択・導入の理由や動機にみられる多様性を検討していくことにある。この目的から,本稿では,世 帯支出に基づいて量的・集合的に捉えることはせず,生活用品や家屋,消費しているものや消費する場所 など外的に確認しうる物質的な生活に基づけばいわゆるミドルクラスにカテゴライズされるだろう人々を 「ミドルクラス的」という表現で取り上げ,その消費や意味づけの多様性の分析を試みていく。
I インドネシア地方社会における「ミドルクラス」と消費
インドネシアは,オランダ植民地期,日本軍政期を経て,近代国家の原型が形作られた。建国後70 年 余を経た国民国家の枠組みの中で,行政制度や教育制度,金融・経済ネットワーク,交通網,メディア・ 1) 都市化が進む一方では,農業人口の急激な減少と高齢化が進んでいる。サンケイ・ビズの記事によれば「同国の農業 人口は2003~13 年の10 年間で500 万人減少した。若年層を中心とする急激な農業人口減少や農業従事者の高齢化な どが今後の農産物生産に影響を及ぼすことも懸念される状況」である[SankeiBiz 記事(online) 2016]。ネットワークが全国に作り上げられてきた。この過程で,「国民文化」[関本・船曳編1994]と呼ぶべきも のが形成され,生活水準・生活意識向上を目指す全国的な村づくり競争(Lomba Desa)や,学校教育な ど,国内の遠く離れた場所でも共通の経験として語りうるものが登場してきた。 過去10 年ほどの間に,インドネシアの新聞記事やニュース番組などでは,大都市の公共交通拡充や都 市間高速鉄道網整備,ゴミ処理の問題,浄水へのアクセスの問題など,現代都市を機能させる上で重要な 問題が多く取り上げられるようになった。個人の生活も,食品の消費期限偽装問題,電力供給不足,天然 ガス価格の高騰など,市場経済に包摂された事で生まれている現代的な諸課題に晒されている。 図1 貧しい住居とモダンな職場の対比(Indonesia Banget!からの引用(1)) 図2 待合室における過去と現在の対比(Indonesia Banget!からの引用(2))
図1,2 は,コンパス紙日曜版に掲載されている,首都ジャカルタの人々を風刺した一コママンガを引 用したものである[Leo Tigor ed. 2014: 92-93]。図1 は,板状に加工した竹を編んだ壁(geribik)で囲わ れたトタン屋根の簡素な家に住みながら,超高層ビルが並ぶビジネス街で働く女性の,生活環境と職場環 境とのギャップを示したものである。女性の職場はグローバル企業なのかもしれないし,もしかしたら, これらビル群の谷間のスーパーや小商店かもしれない。図2 は歯医者の待合室を舞台に,過去と現在の対 比している。左側の過去を描く場面では,住んでいる場所や家族構成など個人情報を公共の場所で居合わ せた初対面の人とあからさまに話すのが当たり前であった様子を描く一方で,右側の現在を描く場面では, それぞれがスマートフォンなどのデジタル機器に夢中で,お互いに顔すら合わせない様子が描かれている。 いずれもジャカルタの人々を風刺したものであるが,程度の差はあれ,これらは現在のインドネシアにお ける大都市に暮らす人々の様子にも当てはまるように思われる。しかし,同じ「ミドルクラス」であれば, 国内他地域・国外の「ミドルクラス」とも消費動向やライフスタイルの差がなくなっていくのだろうか。 もちろん,インドネシアの各地でも,かつてのように自分たちで地域内の資源を活用して加工,あるい は単に拾ったものを用いるような,ミクロレベルの現地調達は廃れて,生活用品の中には,中国産のプラ スチック製品や,インドや東南アジア他地域産の布製品,海外製の携帯電話といった,グローバル市場を 介して流通する日常的な生活用品が溢れている。従来は木や竹や籐,川石など身の回りの素材で自作する ことも多かったカゴやザル,あるいは中国産や国産のホウロウ(琺瑯)びきのブリキで作られていた大タ ライや皿そしてボウルなどの生活用品は,国内外でつくられたより安価なプラスチック製品に置換えられ ていった。水浴や洗濯といったみずまわりについても,公共空間である河川の利用から,世帯ごとに掘っ た私有の井戸から得られる水の利用へ,あるいは水道公社と契約した上水道の利用へと置き換えられてい る。エネルギー源についても,薪やヤシの殻・葉軸といった有機燃料が占める割合は都市を中心として減 少し,かわりに,近年は石油から天然ガスへ転換が進む化石燃料や,火力・水力を電源とする電気が,農 村地域を含む多くの家庭で利用されつつある。このような変化はまた,市場経済/貨幣経済へ,これまで 以上にひとびとが取り込まれていく過程としても捉えうるだろう。 電子決済(FuzzCard,M-kios など)が徐々に浸透していることからも,消費や経済の意識変化が見ら れる。変化が遅いイメージのある宗教分野においても,犠牲祭(イドゥル・アドハ,Idul Adha)の際に 必要とされるヤギや牛などの犠牲獣(kurban)は生きたまま市場(いちば)や臨時の仮設販売所で買うの が従来的な方法であるが,例えば1頭分や8分の1頭分など,予算にあった金額をグラメディア(Gramedia) 書店チェーンなどの提供店で,POS システムで繋がれたレジで支払って証明書をもらう(このため,現物 のヤギや牛と接触することはない),などといった新たな商業サービスが登場している。また,旅行に適し ていると謳う電子版のコーランや,詠唱練習用の電子教材なども売られている。 しかし,このようなモダンな消費様式が普遍化していくプロセスを合理性・利便性をだけに求めるとす れば,どうやってモノを購う金を稼いでいるのか,どういう動機や理由で購入するのか,どういう用途で 利用あるいは消費するのか,あるいは,なんのために金を稼ぐのか,といった社会的・文化的側面,ある
いは情動的な側面の多様性が抜け落ちてしまう。
一般的な例をいくつか挙げよう。どうやって金を稼いでいるのかとみれば,公務員・軍人・会社員とい った定給を得る仕事や,自営業,あるいは農業,漁業,林業,鉱業といった一次産品を作る分野での仕事 のほか,数年ほど首都や大都市郊外地域にある国際企業の工場で働いたのち出身村へと戻る人々,TKI (tenaga kerja Indonesia)という略称でしばしば示されるインドネシア人海外労働者のように,お手伝 いや建築労働者,港湾労働者,船員といった労働者として,中東,東南アジア他地域,東アジアで働いて いる人々もいる。帰国後にはこうして稼いだ金を元手にバイクを買ってオジェック(ojek)と呼ばれるバ イク・タクシーを始める人々や,揚げせんべい製造などの各種の小商い(usaha kecil)の原資とする人々 もいる。 どういう動機や理由で買うのか,については,例えば本稿の日本人読者の大半にとって冷蔵庫はいまや 生活の一部となっているごく当たり前のモノであるが,1980 年代にインドネシア陸軍将校の妻としてカリ マンタン島に赴任した経験があるジャワ人女性に聞き取りをした際には,当時その赴任地で唯一の家庭用 冷蔵庫を買った理由は,同地で入手しづらかった氷を売って家計を助けるために製氷したいからであった。 インドネシアは国籍別で最大のfacebook ユーザー数を抱えているというが,日本語のフェースブック疲 れに相当するような,高価なものを買い,ゴージャスな場所で休暇を過ごしている写真をSNS に掲載し 続ける顕示欲が消費の強い動機の一つともいえるが,こういったトレンドへの倦怠感も同時に見られる。 適切な葬儀をあげてもらうためには頻繁に出身村の儀礼に参加しなければならないため,時間的に融通 のきく職や出身村に近い場所を選んで暮らしている,とあるバリ人の生き方も[中谷 2012],筆者および 読者が全く想定しない「合理的」な理由に基づくものである。 インドネシアは今,国全体の経済力が増し,いわゆる「ミドルクラス」と呼ばれる,旺盛な消費意欲を 満たすだけの可処分所得を持つ消費者層の広がりがみられ,また,資本主義的なグローバル市場のなかで 消費の選択肢が多様化した。そのなかで,伝統的な生活用品や生活様式が消滅し続けている。とはいえ, 理由や動機といった部分は,個別の文化や社会関係といったものに依存し,いまだ多様であるようだ。
II ランプン州における開発と消費動態の変化
本稿が考察の対象とするランプン州は,胡椒やロブスタ種のコーヒー豆の世界的な産地のひとつとして 長い歴史を持つ。農業人口がインドネシア他地域と同様に減り続けているとはいえ,いまも農業が主たる 産業で,水稲,キャッサバ芋,バナナ,パイナップル,砂糖キビ,トウモロコシなどのさまざまな換金作 物・食用作物が広大な農地で栽培されており,ジャカルタ首都圏の食を支え,また,輸出されるものも多 い。 ランプン地域にオランダ植民地統治が浸透した19 世紀半ばから現代に至る約 160 年に渡り,近代国家 の諸制度に組み込まれてきた。ランプン州は政策によってインドネシアの他地域からさまざまな民族出身の人びとが多数移り住んだ地域としても知られる。古くは1905 年にオランダ植民地政府のもとでジャワ 島中部からランプン州ヘの,最初の政策移民が送られた。1965 年から1990 年代半ばにいたる,インドネ シア全土で開発が推し進められた時期に,もっとも集中的かつ大規模に移民政策が進められた。この結果 として,およそ730 万人の州人口の約 60%をジャワ人が占め,約 30%は他の民族,そして残り 10 数% を先住のランプン人が占める。 図3 ランプン州とバンダルランプン市の位置 ランプン州では,大規模な国内移民を安定して受け入れ,定住させるための急激な開発もまた同時に進 んだ。森林開墾,道路整備,潅漑整備,電気敷設といったインフラストラクチュア整備や,学校や行政な どの社会基盤整備は,州内では,州都バンダルランプン市を中心とする一帯とその他地域との地域間格差, 移民村とランプン人村との間の格差を生みながら短期間に進んだ。人口構成だけでなく生活様式全般に及 ぶ大きな変化は,移民の流入と関連づけられ,その移民の大多数であるジャワ人やジャワ島西部に位置す る首都ジャカルタを意識し,ジャワニサシ(Javanisasi,ジャワ化)として捉えられてもいる。
2016 年11 月末に発表された2017 年州別法定最低月給(upah minimum provinsi: UMP)を見ると,
ランプン州の最低法定月給は190 万8,447 ルピアである。ジャカルタ首都特別州の最低法定月給(335 万
5,750 ルピア)の57%相当で,両者の格差は大きく,ランプン州とジャカルタの「ミドルクラス」を単純 に比較することはできない。
地域内の格差について,ジニ係数は,2002 年には 0.25 と格差が小さい状況が見られたが,2005 年に 0.38 を記録して以降,0.35 から0.39 の間を推移している。2002 年以降に経済的な格差が拡大したといえ るが,ジャカルタや,インドネシア全体のジニ係数よりはやや低い数値である[Badan Pusat Statistik 2016b]。
費をしている人々をミドルクラスとして設定した。インドネシアの消費統計は月単位で出されているので, 一月あたり30 日として試算すると,ひと月当たり78 万3,900 から783 万9,000 ルピア/人程度となるだ ろうか。 インドネシア中央統計局の統計によれば,ランプン州の場合,一日2ドル以上の消費をしている人口割 合は,州人口のおよそ27%に相当する。2015 年の州人口は810 万9,601 人であったので,この基準では 約220 万人がミドルクラス以上,と概算できるだろうか。また,バンダルランプン市は同市人口の 56% に相当する。2015 年の同市人口は 97 万 9,287 人であったので,約 54 万 7,000 人である。つまり,上記 に算出した州内のミドルクラス相当の四分の一がバンダルランプン市に集まっている概算となる。ついで ミドルクラスの割合が高いメトロ市だと同市人口15 万8,415 人のうちの40%,つまり6 万3,699 人であ
り,州内ミドルクラスの3%弱が集まっている概算となる[Badan Pusat Statistik 2015]。これらの数値 からは,ミドルクラスとされる消費意欲の旺盛な人々が都市に集中する傾向は読み取ることができる。 ただし,これも数字の遊びに近いものがある。アジア開発銀行が設定したこの指標はあくまで生活環境 も社会事情も異なる国々の状況を量的に捉え,比較するために仮に設定した目安値に過ぎないが,同銀行 のレポートでも述べられている前提を外して,それだけで独り歩きしているところがある。だから,ラン プン州のような地方の状況を見ると,この定義による「ミドルクラス」が「アッパークラス」相当であっ たりする。このため,上記の数値レベルを絶対的な基準としながら地域間の比較をすることは無益だろう。 また,「ミドルクラス」は,ライフスタイルと密接に関わるし,地域社会における相対的なものでもある。 また,統計上は「ミドルクラス」に入らない人でも,消費傾向・消費対象からは実質的には「ミドルク ラス」かもしれない。あるいは,統計上はミドルクラスに入る人でも,実態として「ミドルクラス」と言 いがたい人もいるのではないだろうか。もしくは,統計では「ミドルクラス」に入ってしまうが,実質的 にもっと収入が多く「アッパークラス」に属する人や,あるいは実質的には少ない人などもいるのだろう。 こんなことを述べているのは,調査の経験上,下記のようなことも考えられるからだ。 信用払い(kredit)や分割払い(cicilan)などで将来の予定収入を食いつぶしながら,現在収入 以上の生活レベルを維持している場合もある。消費額が多いことが必ずしも「ミドルクラス」の 指標にはならない。 農村に農地を持っており,米や野菜などへの支出が非常に少ないが,その分,可処分所得が多い 人もいる 公務員をしていても子ども名義の会社や店舗などがあり,世帯収入が結果として多い場合もある。 ランプン人の場合,まだ親族システムが強いため,婚姻関係を通じた,取妻者から与妻者への一 方向的な物品・金銭・サービスのフローもある。 都市の方が家屋等の賃貸や交通手段の確保/交通費など,生活を支えるための経常費が村落地帯 よりも高いため,結果として可処分所得が少ない場合も考えられる。
周辺の農業県に居住しているが,公務員など,実質的にはバンダルランプン市が経済活動の基盤 である「ミドルクラス」,「アッパークラス」などもいる。 現在高騰している土地を売却したことにより,一時的に収入があがって消費が増えている人もい る。 お手伝いや,工場労働者など,首都圏で蓄財して戻ってきている人々も多い。インドネシアの場 合は「オジェック」というバイク・タクシーがあるが,個人事業用に「バイク」を購入すること もあるし,その時点の消費額は大きく増えていることとなる。 このように,ランプン州やバンダルランプン市における実質的なミドルクラスはもっと多いのかも知れ ないし,あるいは,もっと少ないのかも知れない。所有する現代的な消費財の多寡や,消費額に基づき, あたかも実体がある集団のように「ミドルクラス」と括ってしまうと見えなくなるものが多い。消費傾向・ 消費対象の共通性はあるが,「集団」として見る場合,それ以上の共通性はないからだ。 図4 バンダルランプン市の都市景観(筆者撮影) 消費動態についてみると,ランプン州のなかでは特にバンダルランプン市が可視的に変化している。図 4 は,ランプン州の州都であるバンダルランプン市を,市内の高台にある新しいレストランから眺望した 写真である。上記のようにランプン州の中心的な都市であるが,多くは平屋や2 階建て,あるいは3 階建 ての低層の建物が並んでいることが分かる2)。いくつか中層のビルが見られるが,これらは近年増えてい るホテルである。眺望の良い沿岸部には,古くからあるシェラトンの他,ノボテルをはじめとする外資系 2) 今後は,インドネシア政府が推進する低価格住宅や,地方自治体による貧困層向けの公営賃貸集合住宅などが増えて いくだろう。
のホテルも相次いで開業している。
2011 年には,ジャカルタで導入された専用路線を用いた公共バス運行システムであるトランスジャカル タ(Trans Jakarta)を模した,民営のトランスバンダルランプン(Trans Bandarlampung)が,2011 年11 月に導入されている。また,2013 年には,交通渋滞の解消を目的とする立体交差道路が出現し,増 加し続けている3)。2015 年には市内初の高層アパート建設が開始された。2016 年現在,バンダルランプ ン市郊外地域にある主要空港のラディン・インテンII 世空港はメッカ巡礼の出発空港に認定されるように 国際空港への格上げを目指し,増改修が進んでいる。 インドネシア銀行のレポートによると,2016 年の第 3 四半期には,バンダルランプン市内の 102.4 万 世帯がインドネシア電力公社(PLN)から4 億2,753 万Kwh の電力供給を受けている[Bank Indonesia 2016]。一世帯1 月当たり約138.7kwh 平均であるので,2013 年の日本の一世帯当たり電力消費量の半分 程度である4)。また,インドネシア中央統計局ランプン支局の統計に見られる電力販売額からは,全州の
31.8%がバンダルランプン市において販売されている[Badan Pusat Statistik (online) 2016c: 155]。筆者
は1998 年に初めて夜行バスでバンダルランプン市へ行った時,夜明け前の市内がジャカルタと比べてあ まりに暗いことに驚いた記憶があるが,現在では,上記の立体交差道路の夜間照明をはじめとして,こん な夜中でも明るくなったのかと,逆に驚くことがある。とはいえ,同市街に夜間出ると,主要道以外の暗 さをまだまだ痛感する。バンダルランプン市のみに注目すれば,大きな変化も,開発が進んだジャカルタ と比較すればささやかな変化であるし,州内他地域と比べれば,まだまだ大きな地域差があるのだ。 バンダルランプン市を中心としてみるとき,消費動態の可視的な変化の代表的な例は,インドネシア他 地域でも増えている「トコ・モデルン(toko modern)」の増加だろう。トコ・モデルンには,各種ショッ
ピング・モールやスーパーマーケット(Hero,Giant,Giant Ekspres,あるいは地元資本の Chandra superstore など)のような大規模店舗のほか(図5),ミニ・マルケット(mini market,インドネシア製
英語)と総称される日本のコンビニエンスストアに相当する形態の小売チェーンなどが含まれ,2000 年以
降増加を続けている。バンダルランプン市の場合,2015 年時点で 191 店舗のミニ・マーケットがある。 ただし,違法営業も多い。Radar Lampung 紙の記事によれば,中ランプン県にある 60 軒のアルファマ
ートのうち,1 軒が無許可営業,また,67 軒あるインドマレットのうち 41 軒が無許可営業という状況も
あった[Radar Lampung (online) 2016]。「トコ・モデルン」は,無制限に許可されているのではなく, 既存の小規模商店などの保護のために立地等の要件があり,容易に建設できない。このため,従来型店舗
として許可を取得し,営業しているような違法な事例もみられ,頻繁に営業停止処分を受けてもいる5)。
3) 英語由来の「フライ・オーヴェル(fly over)」あるいはインドネシア語で「ジュンバタン・ラヤン(jembatan layang)」 と呼ばれる。
4) 電気事業連合会(オンライン)の「一世帯あたり電力消費量の推移」によれば,2013 年の時点で,日本の1 世帯当た り電力消費量は271.2kwh/月であった。
5) 「トコ・モデルン」規制の根拠法は,大統領決定1998 年第99 号(Keputusan Presiden RI no. 99 tahun 1998)であ る。UKM:(usaha kecil dan menengah),もしくはUMKM:(usaha mikro, kecil dan menengah)と総称される 中小零細店舗を守る,という目的で制定された。UKM/UMKM の定義は,単体の事業体であり,最大2 億ルピア(約
こういった事情から,一気に「トコ・モデルン」が席巻していくわけでもなさそうだし,例えば西スマト ラ州が進めているミナン・マート(Minang Mart)の例のように,自治体が中心となって,参加希望の従 来店舗をミナン・マート認証店として登録してブランド化を進めているが[西スマトラ州プレスリリース (オンライン) 2016],このような対策が各地で練られていくのだろうとも思う。 図5:バンダルランプン市における大型商業施設の分布 これまで存在しなかったものが新たに出現することは劇的な変化であり,看過できないものである。し かし,こういった目につきやすい変化は時にバイアスがかかり,過大に評価されてしまうことがある。 Antara 紙の記事によると,ランプン州全体で,テンペや豆腐,揚げせんべい,ウスス刺繍,干し雑魚(ikan teri)や塩漬けの干し魚(ikan asin)などが主たる事業内容である中小零細店舗は,2015 年の時点で37 万5,415 店舗にのぼる。内訳は,零細:27 万 6,662 店舗,小規模:7 万 8,827 店舗,中規模:1 万 9,926 158 万円)の純資産(土地含まず),最大10 億ルピア(約789 万円)の年商,インドネシア人所有などの規定がある。 伝統的な商店の多くはこの範疇に入るだろう。こういった保護政策のため,「トコ・モデルン」は村落部(wilayah pedesaan)においては営業許可が下りない。
店舗である6)。これらの数に比べれば,まだごく少数のモダンな店舗が登場したばかりで,過大評価しな いことが重要だろう7)。
III 生活用品に見るライフスタイルの変化
1 概要 ランプン州における生活用品の変化は,ランプン人であれ,国内移民であれ,それほど大差はないよう に見える。鍋・かご,包丁・まな板など,伝統的に用いていたものの場合,民族ごとにそれぞれの呼称が 異なり,圧力鍋のような新たな形状のモノはそれを継承した名称で呼ばれることもあるが,近年入ってき たもの,例えば冷蔵庫はクルカス(kulkas),洗濯機はムシン・チュチ(mesin cuci),炊飯器は英語名称 をインドネシア語風に発音したライス・クッケル(rice cocker)あるいは銘柄名のひとつでマジコム (magicom)と呼ぶなど,どの民族でもほぼ同じ傾向がみられる。 生活用品の購入場所も,伝統的な市場や店舗そして行商人だけではなく,用途や価格に応じて,スーパ ーマーケットやショッピング・モール,近年増加しているコンビニエンスストアなどの店舗を使い分け, 購入することが当たり前となっている8)。 生活用品が家庭の中に入ってくるプロセスは購入だけではない。商業的なキャンペーンやプロモーショ ン,イベントを通じた景品のスプーンやグラス,あるいは選挙の際に各陣営から提供される候補者のスロ ーガンや政党名が記載されたシャツや帽子などがこともある9。都市のミドルクラスは,洗濯機,冷蔵庫,エアコン(アーセー:AC),大型テレビ(テレフィシ:televisi),スマートフォン(ponsel pintar やponsel cerdas というインドネシア語表記もあるが,英語のまま smart phone との表記が多いだろう)といった ものを,契約のハードルが低くなって手軽に利用可能となったクレジットカードや分割払いを用いて,積 極的に買い揃えていく。なお都市域だけではなく,2000 年に調査していたランプン州プサワラン県の農村 地帯では,冷蔵庫や洗濯機などが結婚時に羨望される高価な持参財として普及しはじめていたことが思い 出される。まだ,消費財というよりは,実際には使わない威信財的な意味も大きかった。 ランプンの(そしてインドネシアの)一般家庭に訪問するとまず目につくのは玄関先のゴム草履である が,1960 年代まで,一般庶民の多くはゴム草履などの履物はほとんど使っていなかったようである。同様 の時期に,ベッド(ranjang/tempat tidur),マットレス(kasur),毛布(blanket)といった個人ごとの 6) 平均で,4,160 万ルピア/年の売上高(約34 万円/年,月平均では2 万8,330 円)。
7) ランプン人の伝統的な汁物料理ピンダンのチェーン店「Pindang Meranjat Riu」の食事エリアは,竹などを建材とし た東屋的な個室が多数設けられていて一見「伝統的」に見えるが,営業形態からはモダンな店舗のひとつに含むこと ができるだろう。ランプン人女性と結婚した日本人が経営する新興のチェーン店である。 8) 行商人にしても,都市・農村で,野菜や魚などを自転車やバイク,手押しカートで売り歩く行商人は「従来型」と括 ることができるのかもしれないが,大学出でタオル等の行商をするような「セールスマン」の登場,あるいは,イン ドネシア版のヤクルト・レディなどは,新たな「行商人」といえるだろうか。 9) インドネシアの選挙法では一定額のキャンペーングッズ提供は合法である。
寝具も導入されている。聞き取りをしていると,革靴やシャツといった履物や衣類も第二次世界大戦後し ばらくたってから一般化してきた様子が見える。都市居住者の結婚式などに参加する際には,革靴もしく は革製のサンダルを履くよう勧められ,突然の招待に合わせて慌てて買ったこともあったが,このような ドレスコードの確立も,この30 年ほどのことではないかと思われる。2,3 世代前からの新たな生活習慣 が根付いてきている過程である。 2 伝統家屋と現代家屋 ランプン人の,高床式の伝統家屋は拡大家族での利用が前提であったが,核家族志向が強まる中で,若 い世代の夫婦は伝統家屋の周辺に新たに建てた平床の一戸建てに住み,伝統家屋には高齢の父母,祖父母 などが住むというパターンがまず見られた。ついで,離れた地域にも住むようになると,伝統家屋に住む ものがなくなり,儀礼など親族の集まりにのみ用いられるような場ともなっていった。ただし,かつては 周辺の森林で入手可能だった木材は,開発によって森林がなくなり,専門業者から購入するものとなった ことで,木造の伝統家屋を維持するには高額の費用が必要となること,また,慣習によれば伝統家屋を補 修しない場合には慣習上の罰金が科せられること,そして,ランプン人はこういった罰金も含めて体面(ラ ンプン語であればピール:piil)を傷つけられることを嫌って早い段階で取り壊して現代的な家屋に建て替 えることを選ぶ,など様々な要因から急速に消滅している。なお,慣習によれば,家の立て替えや改築の 際には村民の合意を得なければならず,この手順を無視すると罰金が科せられる10)。 ランプンにおける現代家屋は,都市においても農村においても,改築が延々と続くという,もう一つの 特徴がある。現代日本であれば,住宅ローンを前提として建築し,基本的には内装・外装・配線・配管ま で完了した住居に住み始めるのが普通である。しかし,ランプンにおける現代家屋では,家の外構がある 程度できたら住み始め,ペンキを塗る,タイルを貼る,作りかけの部屋を仕上げる,外壁を新たに作る, 竹を編んだ壁からレンガとモルタルで出来た壁に変える,壁を取り除いて部屋のレイアウトを変える,時 には自営用の店舗スペースを新たにつけるなどといった改築が,世代をまたいで終わることなく進められ ることが多い。このため,訪れるたびに内部の様子が違って驚くことや,本当にここだっただろうかとた めらうことも多々ある。このように,かつては慣習で縛られていた家屋の新築・増改築の自由さは現代的 な消費の特徴とも言える。 3 見栄,対面,奢侈,情動 いろいろな聞き取り調査をしながらランプンという地域に生きる人々の人生を眺めると,要職について いる間は豪奢な邸宅,大型の自動車,海外旅行など奢侈な消費生活を送りながらも引退後は収入が激減し 10) 筆者の限られた理解では,板の腐食による床や壁の損傷など外観や構造を損なうものは直さねばならない。罰金は慣 習村に対して支払われる。罰金は現地の生活水準からしてもわずかな額であるが,罰金を支払うことは公の場で「恥」 をかくことを意味しており,避けるべき行いと認識されている。社会・経済・自然環境の変化に伴い,こういった家 屋の適切な修繕を求める慣習の規則そのものが伝統家屋の存続を困難にさせる側面が生まれてきたともいえる。
て親子ともに人生を狂わす人々や,華やかな婚姻儀礼のために土地を売って困窮する人々,親の遺産を巡 って兄弟で争う人々など,富やその顕示の情動が激しい印象がある。1999 年から2000 年にかけてランプ ン人の準集団であるプビアン人社会において長期調査していた頃,4 人兄弟の全てが同じ儀礼を経ること で,慣習における社会階梯の最高位スンタン(suntan)についた話を聞いたことがある。スンタンは慣習 上,親族集団における意思決定者である。本来は,長兄がスンタンになれば,次兄はその下のプンゲラン (pengekhan)といったような兄弟の序列に従った社会階梯にとどまるものであったのが,経済力にもの を言わせてこのような,4 人兄弟の全てがスンタンとなることが実現したのだという。体面をめぐる意識 が端的に表されている例であるとともに,経済力を伝統的な社会階梯を上昇するために用いる指向性が存 在することがわかる。また,それまで伝統的な社会階梯で上位にいたものの嫉妬を買うという,社会的な 相克もしばしば生じる。体面を重視する過剰な例としては,過去に公共のバスに乗った際に数百ルピア多 くとられたと怒り,バスが通りかかるのを都度待ち構え,運賃係を殴っている男の姿を見たこともある。 そこまで極端でなくても,生計を長期的に維持するうえで必要十分な収入のあるランプン人の場合,近 年は大型家電や高価な家具などに代わりつつあるものの,応接スペースに置かれた陶製の食器などを飾る ガラス張りの棚に見られるように,持ち物を見せる習慣がある。この棚の中に入っている絵皿やカップ・ ソーサーのセットなどは,伝統的な市場ではまず売られてはいないが,近隣のスーパーマーケット等では 購入できるような,転写で模様を焼き付けた大量生産品であることも多い。資産価値が高いわけではない と思うのだが,実際に接客で用いられることは稀である。用途等を尋ねてみても,実用的な用途で置かれ ているわけではなく,また,しばしば埃をかぶっている状態であるため,装飾としても積極的な意味があ るわけではない。 4 世帯事例 この項では,バンダルランプン市郊外地域に位置する3 つの世帯の事例を取り上げ,世帯ごとの生活用 品とのかかわり方を見ていく。 (1) 事例1 調査地:バンダルランプン 調査年:2011 年。以後,2015 年まで追跡調査。 民族:ランプン人(夫),ミナンカバウ人(妻),子(基本的にランプン人だが,父母 の民族を状況に応じて提示する11) 生業:公務員(夫),大学教員(妻) 家族類型:核家族(3 人) 11) ランプン人は父系親族体系を,ミナンカバウ人は母系親族体系を有している。このため,子どもは, 父方ではラン プン人として,母方ではミナンカバウ人としてふるまう。
夫はランプン人で州政府の公務員,妻はミナンカバウ人で国立大学の教員である。ジャカルタでインド ネシア大学在学時に交際し,結婚,2006 年に夫の父から生前贈与された土地に新築の家を建てた。娘が一 人いて3 人家族,家庭内の主たる言語はインドネシア語である。公務員と大学教員という安定した就業形 態で,まだまだ給与水準が低いながらも定収入がある(日本円に換算すると年40 万円程度)。ライフスタ イル的にも,前述のアジア開発銀行の統計用設定値的にも,インドネシアの「ミドルクラス」に適合する だろう。 家屋の構造は,鉄筋コンクリートによる現代的な構造である。大型タイルを張った床,天井,各部屋の エアコン,ケーブルテレビや,インターネットへの高速接続,水道設備を備えている12)。夫婦と娘の個室 にはそれぞれ浴室・トイレがついているほか,来客共用の浴室・トイレも別途あり,水周りの充実に驚か される。豊富な浄水の利用は,ミドルクラス的な特徴の一つといえる。また,住み込みのお手伝いの部屋 があることも,もう一つのインドネシアならではの「ミドルクラス的」な特徴である13)。食事スペースに は,住宅雑誌を見るのが好きな夫の趣味で,バーのようなカウンターが設けられている。 多様な家電も「ミドルクラス的」な特徴と言える。先述のエアコンのほか,大型液晶テレビ,洗濯機, 冷蔵庫,電気炊飯器,ブレンダー,トースターなどが見られるほか14),夫妻それぞれが仕事のためにスマ ートフォンやノートブックパソコンを活用し,よく買い換えている。調理には,インドネシア政府が2008 年に天然ガス普及政策を進める前からガステーブルを用いており,これが上記の調理家電を除けば日常的 に用いている唯一の熱源で,薪を用いるカマドなどは設けられていない。 低所得層の家には見られない化粧台が夫妻の寝室に置かれていることも「ミドルクラス的」な特徴とい えるだろうか。立派な衣装ダンスも,必要なものである15)。また,妻の趣味がカバン収集なので,大きな ガラス製の収納棚があること,妻専用の仕事スペースがあることも特徴的である。妻の父からもらった中 古車から乗り換えて,日本メーカー製の大型自家用車を最近新車で購入しており,妻の通勤,買い物,娘 の通学の送り迎え,あるいは市内のドライブなどに用いている。 外食・中食も頻繁であるが,ショッピング・モールのフードコートやカフェ,値が張るレストランなど だけでなく,食べたいものやその時の予算にも応じて,屋台(warung)などもしばしば利用している。 家庭で利用するケチャップ・ソース等の調味料はABC 社やBango 社などインドネシアの大手メーカー製 12) 井戸水を利用し,電動ポンプで給水している。 13) もっとも,近年の高学歴化の流れの中で,中学卒業後にお手伝いとして働く若者がランプン州内でも減っている。い たとしても,バンダルランプン市で働くよりももっと給与がよく,小さい子供のお友達的な役割で負担の軽いジャカ ルタ首都圏でのお手伝い業に流れてしまうため,見つかっても定着してもらえなくて困る,との愚痴がしばしば聞か れるようになった。今後,さらなる生活家電が導入されていく,あるいは託児所のようなサービスが増えていく一要 因となるのだろう。 14) 調理家電についてみれば,海外からの来客用に買ったブレンダーやトースターなどはほとんど用いていない一方で, 電気炊飯器は常用している。 15) スチールフレームなどで作られた簡易な感じの衣装棚は「下宿学生(anak kos)が使うもの」なので,自分たちには 適さないという意識も聞かれた。
品を買うことが主である16)。これは日用品や食品の買い物についても同様で,例えば食用油や米,白砂糖 は近くにできたミニ・マーケットで購入する方が伝統的な市場で購入するよりも安価だから,という理由 で伝統的な市場を利用しないが,野菜や肉類などは同様に価格的な面からスーパーマーケットよりも伝統 的な市場を選択したり,あるいはヤシ砂糖などのように伝統的な市場の方が入手しやすかったり,野菜の ように伝統的な市場の方が鮮度が高いものについては伝統的な市場を選ぶという。もちろん,野菜等は他 の買い物のついでにスーパーで買うこともある。 生活用水は井戸水であるが,キッチンでは,マレーシアでの生活体験から浄水器を用い,煮沸した水を シロップの空き瓶などを活用して冷蔵庫に保存しているほか,ミネラルウォーターのタンクを替えるタイ プのウォーターサーバーを利用している。買い物を担当するのがお手伝いの場合には伝統的な市場の割合 が増える傾向もあるが,雇い主側が必要に応じて買う場所を指定することもあるように,モノごとに,価 格・販売状況・品質・用途に応じて,購入場所を選択,あるいは自給している。 図6 事例1 の家の外観(2011 年当時,筆者撮影) 2011 年当時は予算の関係から塗装をせずにいたが,現在は塗装されている。 家庭にモノが入ってくる経路は,このような財・サービスの購入だけではない。例えば,お土産でもら ったT シャツや,商品をスーパーマーケット等で買った時についていた販売促進用のスプーンやフォーク といったものもある。日常よく使う香辛料植物などは,裏庭にも植えられている。あるいは,キッチンテ ーブルや,応接セットなどのように夫の親からもらったものや,1 台目の車のように妻の親からもらった 中古車,子供の誕生にともなう贈り物,誰かが亡くなった際にもらったもの(一例は,コーランのヤシン 章を冊子としたヤシナン(yasinan)の本)など,社会関係に基づくモノの導入もある(表1 参照)。 16) 調味料のうち,食酢は,屋台で買った食品などについてくるものを使うぐらいで,基本的に家庭では常備しておらず, 酸味が必要な料理にはアサム・ジャワ(asam jawa あるいはasem jawa)という現地名で知られる,酸味の強いタ マリンドの実のペーストを用いる。
図7 事例1 の応接スペース(玄関を入ったところ,筆者撮影) 図8 事例1 の台所(筆者撮影) 表1 事例1 の世帯におけるモノの名称とその入り方(一部抜粋) 品名 名称 備考 靴 sepatu(靴)/sepatu kerja ( 仕 事 用 靴 )/sepatu olahraga(運動靴) 妻(ミナンカバウ人)の父からの伝聞では,1950 年代のパダン(西スマトラ州)はサンダルも使 っていなかった。1960 年代からは使っている。 パーティ用ドレス baju kaftan 2011 年ごろ流行していたパーティ用衣装。 包丁 pisau 市場,スーパーで購入。日本,中国その他の製 品。 まな板 papan motong 自家製および市場で購入。
石製のすり鉢 cobek 市場で購入。 石製のすりこぎ batu ulekan 市場で購入。 かご/ざる keranjang もらいもの。 フードプロセッサー/ミ キサー blender フィリップス製を什器専門店で,2007,8 年ごろ に購入。 フライパン/中華鍋 kuali pengorengan 市場で購入。鉄,アルミ製のもの複数あり。 蒸し器 panci kukus 市場で購入。インドネシア製。ステンレス製, アルミ製。 鍋 panci rebus 市場で購入。ステンレス製。2008 年ごろ購入。 皿 piring makan 市場で購入や,贈答品としてもらったもの。陶 器,ガラス器。 スプーン sendok 市場で購入や,景品として入手。インドネシア 製,中国製。 フォーク garpu 市場で購入や,景品として入手。インドネシア 製,中国製。 箸 sempit 屋台でテイクアウトの麺類を注文した時に入 手。日常ではほとんど使わない。 ウォーターサーバー/飲 料水入れ dispenser ミネラルウォーターは2000 年ごろから飲用し ているが,学生の一人暮らしの習慣から。 水切りカゴ(食器用) tempat pengeringan piring つくりつけ。2006 年に家を建築した時に設置。 水切りカゴのかわりにプラスチックの桶(panci plastik)を使うこともある。 食卓 meja makan 家を建築した時に夫の親から贈られた。妻の祖 母のころは,ゴザ(tikar)を敷いた床の上での 食事が普通だった。 食品カバー(食品にかぶせ るもの) tudung 市場で購入。籐製のもののほか,針金と糸で作 られたもの。 電気炊飯器 magic jar 電気保温炊飯器。2006 年。 ガステーブル kompor gas 子供のころは,石油コンロやかまどを用いてい た。 塩 garam 屋台で購入。 グラニュー糖 gula pasir アルファマートで購入。市場より安いため。赤
いヤシ砂糖(gura merah)の場合は,市場や屋 台で購入。 調理油 minyak manis/minyak sayur 大手メーカー製のパームオイル(minyak sawit)をスーパーなどで購入。ただし,昔は自 家製だった。西スマトラ州パダンで妻の祖母は 自家製(minyak arau),妻の母は市場で量り売 りの油を買っていたという。 圧力釜 panci presto 2008 年ごろ購入。 おかず鉢 mangkok sayur 大きなガラス器や陶器を用いて家族で取り分け て食べる。 トースター pemangan roti 欧米からの来客用。 (2) 事例2 調査地:バンダルランプン 調査年:2011 年 民族:ランプン人 生業:頻繁に転職 家族類型:直系家族(6 人) 事例2 は,事例 1 の向かいの家を取り上げている。夫婦および子ども 3 名(女子 2 名,男子 1 名),そ して夫の母の,ランプン人の世帯である。夫1966 年生まれ,妻 1973 年生まれで,事例 1 の夫婦よりも 少し上の世代である。 調査以前は,農家,商人などなんでもしていた。2011 年の調査時点では不動産業であったが,2015 年 に事例1 の世帯を訪問した際には,事例 2 の世帯は,屋外に設けていたバドミントン・コートを潰して, 小さな旅行会社を始めるために店舗スペースを増築し終えたばかりであった。 1989 年に家を建てた(調査時点で建築後 30 年ほど経過)。事例 1 とは異なり,木材とレンガで作られ ている。玄関前にはベンチが置かれ,簡単な接客などにも用いる。玄関を入ると接客スペースがあり,応 接セットが置かれている。その奥には飾り棚があって,さらに奥の居間との境となっている。居間にはテ レビ,冷蔵庫,ソファーなどがあるが,この辺りまでは何か集まりがあれば家族以外のものが普通に入る スペースである。この居間や接客スペースの横に夫妻の部屋,子供の部屋などの個室が計4 室ある。 台所に入っていくと,食器棚(lak piring)があり,洗った食器などが干されている。使われている皿や 鉢は,中国製やインドネシア製などがみられる。アルミ鍋やプラスチック製のかごのほか,まだ竹製のザ ルやカゴなども常用されている。コメは事例1 の家と同様にプラスチックのバケツに保存されている。
調理スペースは,図9 のようにしっかりとした壁はなく,まばらな柱で外と区切られた小屋掛けで土間 のスペースである。調理には日常的にガスを用いているが,同時にカマドも2 つ設置して併用している。 以前使っていた石油コンロもあるが,こちらはもはや使われておらず,中華鍋などを置く物置がわりとな っている。このような半屋外でかまども設置している調理スペースは,バンダルランプン市の都市域でも 一般的に見られるものである。 井戸端には二槽式洗濯機が設置されている。普及価格帯の商品が豊富なことで知られるインドネシアの 国内家電メーカーCosmos 社製である。洗濯機はあっても電気代節約や節水のため,洗濯板で手洗いをす ることも多い。乾期には井戸水が枯れてしまうこともある。 なお,飲み水には,煮沸した井戸水や,ミネラルウォーターが併用されている。 事例1 の場合,生活用品はインドネシア語や外来語で呼ぶことが普通であったが,事例2 の場合は,例 えば,lunan(まくら)や,pok(部屋),nuoh(家),cubik(グラス/カップ),belangsou(鍋類),irik/tengguk (小さなザル/大きなザル)など,旧来からあるものと同カテゴリのものについては,ランプン語がしば しば登場する。各種電化製品のほか,1970 年代から用いるようになったkaos obrong(T シャツ)やrak piring(食器用ラック)といった,比較的新たに生活の中に入ってきたモノの呼称には,インドネシア語 や,外来語が用いられている。
図10 事例2 の井戸と洗濯機(筆者撮影)
図11 事例2 の客間(筆者撮影) 部屋の中央に飾り棚がある
(3) 事例3 調査地:バンダルランプン 調査年:2011 年。以後,2015 年まで追跡調査。 民族:ジャワ人 生業:農業その他(仕出し等) 家族類型:直系家族(4 人) 事例3 は政策移民として移住してきた女性の事例である。1955 年ごろに東ジャワで生まれた17)。1965 年に両親に連れられてランプンへと移住してきた。1969 年に10 歳ほど年上の夫と結婚し,五人の子供(男 2 人,女 3 人)を生んだ。1970 年ごろは竹を編んだ壁の家だったが,1980 年代に増改築して現在の家を 建てた。1997 年に農業や建築労働者をしていた夫が死去したため,以後はこの女性が農業に加え,夫が生 きていた頃にタイミングよく購入した土地を切り売りした他,仕出し,間貸しなどさまざまなことをしな がら子供を育てた。最初の調査を行なった2011 年時点では,母と末息子の二人暮らしであったが,2015 年に再訪した際には,末息子とその妻子を含む4 人暮らしで,仕出し業は基本的にはやめていた。 平屋建ての家は白く塗られ,瓦ぶきの屋根である。屋敷地は生垣に囲まれ,庭は毎朝綺麗に掃き清めら れている。窓には遮光性の高い窓ガラスが使われていて,熱帯特有の日中の強烈な日差しを和らげる。家 の周りにはサボテンなどの観葉植物も見られるが,さまざまな薬用植物も植えられている。家の中に入る と,ピンクのプラスチック製の椅子と,青い小さなテーブルが接客用に置かれている。テーブルは近所の 人が捨てたものをもらってきて活用している。窓にかかるピンクの鶴柄のカーテンは,わりとよくランプ ン州のいろいろな家庭で用いられている一般的なものである。客間から奥に入った居間では,飾り棚,拾 ってきた古いソファー,亡くなった夫が作ったテーブル,といったものが目につく。客間・居間に接する 形で,母と子の部屋がそれぞれ1 室ある。 家電製品としては,壊れて使えない扇風機や,使っていない白黒テレビ,息子のラジカセ,電気炊飯器 などがみられる。子供たちが独立してそれぞれ仕事や家庭を持つようになり,電気炊飯器,扇風機など, この10 年弱の間にさまざまなモノを T さんの家にもたらすようになった。ただし,現在そういったモノ の多くは「壊れて」使っていないか,物入れとして通電していない炊飯器を使うような,アナログな用い 方をしている。時には,「壊れて」というのはある種,外向きの方便である。例えば2008 年には政府の政 策によって,ガスコンロが無償配布されたが,「壊れて」使っていないコンロも別の時にはごく普通に調理 に使われていたこともある。快活な人だがこういう点は口ごもるので明確には聞けていないが,小さな金 のイヤリングを売るほど経済的に苦かった時期であり,ガスの購入費が出ないため,壊れていることにし て伝統的なヤシガラなどで調理していたようだ。 この女性の家にある生活用品を見ると,この家が出来てから30 年以上かけて蓄積されてきたモノの変 化がわかって面白い。例えば,かつて水浴びなどに使っていた素焼きのツボは,いまでは使われなくなっ 17) インドネシアの高齢者の場合,生まれ年が定かでないことが多い。
て,裏庭の片隅に放置されている。台所に入れば,今は多くの家庭で見かけることがなくなった琺瑯びき の大きなたらいが目につく。主食であるお米の容器には,かつてペンキが入っていたプラスチック製の大 型容器が転用されている。 この女性は,2010 年ごろに井戸を掘り,電動ポンプで汲み上げた水を,炊事・洗濯・入浴・排泄などに 用いるようになった。井戸水を使うよりも川で水浴びや洗濯をする方が気持ちいいので本当は続けたい, というが,先に生活様式を変えていった近所の人々のからかいなどから,井戸の設置を決めたのだった。 近隣でいまも日常的に河川水を利用している一軒は,本当に貧しい家庭であるとみなされている。 図12 事例3 の家の外観(筆者撮影) 図13 事例3 の応接スペース(筆者撮影)
図14 みずまわり(筆者撮影) 奥に井戸があり,電動ポンプでくみ上げている。 ここで洗濯や米をとぐなどの作業を行う。
IV なにが変化しているのか
本稿は,ランプン州バンダルランプン市におけるライフスタイルの変化に注目しながらいくつかの事例 を追った。 本稿で見てきた「ミドルクラス的」な人々の特徴は,衣食住に通常は困ることがなく,世帯によっては 住み込みのお手伝いの雇用や,家電・家具・通信機器・旅行・教育などの財・サービス購入に可処分所得 を割く余裕がある人々である。近年の経済成長の中で,こういった人々が増えていることは疑う余地がな いが,世帯支出のような基準で集合的に捉え,あたかも実態がある集団として分析するならば,利便性や 合理性などといった論点先取的な説明に終始するしかなくなってしまうのではないか18)。むしろ,社会関 係や顕示といった文化的・社会的要因に注目することが必要だろう。 既述したように,ランプン州においてもバンダルランプン市を中心として,インフラストラクチャや都 市景観は大きな変化が続いている。情報テクノロジーの進化によって,多くの人々がスマートフォンやタ ブレット端末を用い,高速インターネット回線を通じて仮想的な社会関係も築いている。生活用品も,国 内外の市場を介して多様な選択肢が生まれ,それぞれの嗜好や用途,価格に応じて選ばれている。 物質的には,生活様式がいわゆる先進国諸国に追随する形で均質化が進んでいるようにも見える。しか 18) このような意味で,本稿では,「疑似ミドルクラス」[倉沢2013: 4]という概念は,倉沢が同著で想定していたより もさらに多様な地域ごとの差異をインドネシアという枠の中で等閑視することにつながると考え,採用していない。しながら,他方で,個別のモノがそれぞれの人の生活の中に入り込んでくる理由,あるいは選択する理由 から見ていくとき,事例3 の水回りのように,時には嘲笑に対する応答として生活様式を大きく変化させ ながら導入されてきたものもある。あるいは導入されたけれども経済的な理由などから使われていない, しかし体面上は持っていることが必要な家電や家具が存在することがわかる。事例2 の家には洗濯機があ るが,しばしば洗濯板で手洗いしてもいるし,調理は家屋の裏にある従来の薪などを用いることが日常で ある。冒頭の風刺画(図1)では近代的な高層ビルが立ち並ぶ地域と,従来的な構造の自宅が対比的に示 されているが,日常の生活用品の中でも,このような伝統と近代が混在しているともいえる19)。 上述した3 事例の中でより近代的な生活をしている事例1 の場合も,利便性・合理性というよりは,さ まざまな人との関係から導入された家具や家電が多いことが特徴である。例えば表1 末尾に挙げたトース ターは自分たちが使うためではなく,アメリカからやってきた妻の父の知人女性を泊める際に,洋式の朝 食を準備するためだけに購入したもので,以後は使っていない。その他,お祝いやお土産等でもらったが 使っていないさまざまなモノが退蔵されてもいる。他方で,すでにかまどを持たないことを前提とする家 の構造からガスコンロは日常生活に必要不可欠なものになっており,事例3 のように「壊れた」ことにし て従来のように薪を用いることはできない。結果として,ガス価格の高騰などの市場の価格動向が時には 生活の質の維持を脅かすこともあり得るだろう。 以上のような見方からすれば,バンダルランプン市の事例にみられる「ミドルクラス的」な人々とは, 伝統的な生活様式と近代的な生活様式が並列的に存在する形で物質的な生活を営みながら,いまだ付加的 なもの,依存度の低いものとして家電その他のモダンなモノやモダンなサービスを受容していることが多 い。その一方で,中長期的には徐々に貨幣経済・市場経済への依存を高め,水浴・排泄など水回りや火を 用いる調理スペースなどが水源や燃料などを含めて家屋の中で完結する閉鎖的な生活空間を築いていくと みられる。また,グローバル市場が提供する製品の選択肢は世界的に材質・形状が同様のものであること から,やがてわれわれ日本人(あるいはその他諸外国)が使っている生活用品とも大差無くなっているが, そのモノの入手経路や購入の理由,生活の中での位置づけ,想定されている文化的な価値は,それぞれの 人の異なる社会関係や文化特性を示しうるものである。「ミドルクラス」として集合的に対象化し,量的な 分析でその共通性を議論するよりも,まずは個別の世帯や地域内でのこういった多様なモノをめぐる質的 な「モノ」語りが,現代のインドネシアや東南アジアにおける物質文化動態を解き明かしていく重要な一 次資料となっていくだろう。
V まとめ
ときには事務用ハサミのようなありふれたものも,それが乳児の髪を切る儀礼に使われる際には,一時 19) このような冗長性が,例えば,ヤシ殻やヤシの葉軸など無料で入手可能な燃料を用いることで市場価格の高騰が続く 天然ガスへの支出を抑え,生活を安定させることもあるだろう。的であれ,本来とは違う存在価値が与えられ,髪を切る側と切られる側の社会的な関係性を象徴するもの となる。現代的なものであっても,社会的・文化的あるいは感情的な意味に注目していく必要があるだろ う。 伝統文化の中では,水牛やヤギなどの供犠獣の数などで表される儀礼的な消費や,伝統家屋などが体面 /世間体あるいは社会的威信の重要な要素であったが,生業や経済階層,社会的関係が多様化する現代社 会では,インターネット上のソーシャルネットワークサービスで高価なものの購入や高額な費用がかかる 旅行,華やかなパーティの様子を見せつけるような風潮もあり,顕示は複雑化し,インドネシア人が日常 で用いるモノの種類や量はともに増加してもいる。 人によっては,こうして買い集めたものを捨てるとレゼキ(rezeki,福や金運など,富の根源となるな にか目に見えないものを指す語)が無くなっていくから捨てない人もいる。鏡味は「生活<不>必需品」 として,壊れたものや不要なほど多く退蔵されていて実用性を欠くものが文化的な志向性・創造性をしめ すものではないかと指摘している[鏡味 2016: 17]。 他者にとってはときに非合理的に見えるが,最低限の体面/世間体を保つために,壊れかけた/壊れた 状態であれ「~があること」を示す行為は,ある意味で,現代消費社会への適応戦略である。 今後生活用品とその意味を,複数の世帯に注目して長期継続的に追跡していく中で,対象となる社会に おける潜在的な意識の変化を分析することが可能となるかもしれない。また,いかに「ミドルクラス」が 増え,社会が「フラット」になっていくかよりも,現在経験されている物質的な変化の中で,どのように 概念的な再編成や選択,あるいは意味の咀嚼がなされていくかに注目していきたい。
付記
本稿は,文部科学省科学研究費補助金: 基盤研究(B)「消費様式から見た国民文化形成の文化人類学的 研究: インドネシア等の生活用品調査から」(研究代表者: 鏡味治也(金沢大学),研究課題/領域番号: 23320191)および,国立民族学博物館共同研究「生活用品から見たライフスタイルの近代化とその国別差 異の研究」(代表者: 鏡味治也(金沢大学)の成果である。参考文献
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