著者名(日)
清野 絵
雑誌名
東洋大学社会学部紀要
巻
49
号
2
ページ
123-126
発行年
2012-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003122/
研究ノート
社会福祉士実習教育に関する研究の現状
The Status Quo of Research about Practical Education
for Certified Social Workers
清野 絵
Kai SEINO
はじめに 「社会福祉士及び介護福祉士法」(1987)成立による社会福祉士の国家資格化に伴い、社会福祉士養 成のための教育が大学・専門学校等の各養成施設で実施されるようになった。ソーシャルワークや社 会福祉に関する教育は、同法の施行以前から行われているが、同法の成立により社会福祉士という資 格のための養成教育として、その内容が明確に示された。具体的には、「社会福祉士及び介護福祉士 法」により国家試験の試験科目13科目が規定された。また、厚生省(当時)が「社会福祉士介護福祉 士学校職業訓練等養成施設指定規則」を定め、その指定基準により17科目を定めた。さらに、「社会 福祉士養成施設等における授業科目の目標及び内容並びに介護福祉士養成施設等における授業科目の 目標及び内容について」によりその科目の目標、内容が示された。それにより、養成施設においては 一定の教育カリキュラムの実施が求められることとなった。 その後、2007年の「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正に伴い、試験科目を規定する施行規則が 2009年から施行された。これに伴い2009年度から新しい社会福祉士の教育カリキュラムが現在実施さ れている(以下、新カリキュラムとする)。同法改正後の試験科目は19科目であり、指定科目は22科 目となった。 このような社会福祉士養成の教育において、実習教育は社会福祉やソーシャルワークの知識、価 値、倫理、技術等を実践的に習得する重要な位置を占めている。(なお、ここでいう実習教育とは新 カリキュラムの相談援助実習指導、相談援助実習のことと定義する。)そのため、実習教育の方法論1 .目的 社会福祉士の実習教育について、実習教育自体を対象とした研究の現状を概観する。それにより、 実習教育の持つ課題や今後の在り方を検討する。 2 .方法 国立情報学研究所の論文情報データベース(CiNii)を使用し、日本語の論文について以下のキー ワードについて検索を行った。キーワードは、「実習教育」、「社会福祉」と「実習教育」、「社会福 祉」と「実習教育」と「研究」の 3 つである。検索は、タイトル検索と全文検索を行った。 3 .結果 結果を表 1 に示す(2011年11月27日時点)。 「実習教育」をキーワードとして検索した結果には、社会福祉士だけではなく看護師や教員、精神 保健福祉士や介護福祉士の実習教育についての論文も含まれた。次に、「社会福祉」と「実習教育」 をキーワードとして論文名検索した結果には、学会誌や専門誌に掲載された論文が96件中19件であっ た。具体的な掲載誌名は、「日本の地域福祉」、「大学教育学会誌」、「福祉研究」、「医療福祉研究」、 「評論・社会科学」、「社会福祉研究」、「総合福祉研究」、「人間の福祉」、「社會問題研究」、「社会福 祉」、「ソーシャルワーク研究」であった。このうち、「日本の地域福祉」に掲載された論文は特集で 地域福祉実習教育に関する一連の論文であった。その他の論文は、実習教育の課題に関する特集論文 や、対人能力やソーシャルワークマインド、自己決定等を学ぶために方法論に関する論文、実習教育 の歴史に関する論文、また障害学生への実習教育支援といった内容であった。 それ以外の論文は大学や研究所の紀要や雑誌(月刊福祉)に掲載されていた。紀要や雑誌に掲載さ れた論文は、実習教育の現状や課題についての報告、学生のマナーや気づき、能力等を育成するため の教育の方法論、実習システムや評価法、学生や実習指導者へのアンケート結果を分析したものなど であった。 次に、「社会福祉」と「実習教育」と「研究」をキーワードとして論文名検索した結果には、学会 誌に掲載された論文は 1 件であった。具体的な掲載誌名は、社会福祉研究であった。それ以外の論文 は大学の紀要であった。 表 1 検索結果 論文名検索 全文検索 実習教育 511件 1158件 社会福祉 実習教育 96件 189件 社会福祉 実習教育 研究 12件 167件
【参考文献】 1 .厚生労働省:社会福祉士及び介護福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて、2008 2 .厚生労働省福祉部会:介護福祉士制度及び社会福祉士制度の在り方に関する意見、2006 3 .社会福祉法規研究会(編):社会福祉六法 平成23年度版、新日本法規、名古屋、2010 4 .社団法人日本社会福祉士養成校協会(編):相談援助実習指導・現場実習 教員テキスト、中央法規、東 京、2009 5 .志村健一:ソーシャルワーク実践としてのリサーチ(調査)の位置づけと体系的整理、ソーシャルワーク研 究、ソーシャルワーク研究所、35( 4 )、2010 6 .白澤政和・米本秀仁(編):社会福祉士相談援助実習、中央法規、東京、2009 7 .戸塚法子:ソーシャルワークにおける演習教育、ソーシャルワーク研究、ソーシャルワーク研究所、36 ( 2 )、2010 8 .中村佐織:ソーシャルワークにおける演習教育の課題、ソーシャルワーク研究、ソーシャルワーク研究所、 36( 2 )、2010 9 .横山豊治:社会福祉資格がソーシャルワークにもたらしたもの、ソーシャルワーク研究、相川書房、37 ( 2 )、2011 4 .考察 紀要を除くと「社会福祉」と「実習教育」をキーワードとした論文名検索の結果は19件であった。 「社会福祉」と「実習教育」と「研究」をキーワードとした論文名検索の結果は 1 件のみであった。 これらの結果は、特別企画や報告が含まれているため、実際に実習教育を研究対象とした論文はさら に少ない。今回の結果は、論文名のみでの結果であるが実習教育そのものを研究対象としている思わ れる論文は、紀要等を除くとその数が限られている可能性が示されたと考える。 紀要や雑誌に掲載された論文には、実習教育のより実践的な知見の蓄積が見られ貴重な報告や研究 結果があると思われるが、今後、社会福祉やソーシャルワークが実証に基づいたエビデンスベースド (根拠のある)の実践を行っていくうえでは、それらの内容を学会誌や専門誌、学術誌に掲載してい くことで、各養成機関を越えて研究者、教育者、実践家が議論していくことで社会福祉分野での実践 の向上や、実習教育分野の発展に寄与していくことが期待される。