高出力半導体発光素子による植物栽培の研究
著者
岡井 善四郎
雑誌名
技術報告集
巻
6 (2000年度)
ページ
73-78
発行年
2001-04
URL
http://hdl.handle.net/10098/7542
高出力半導体発光素子による植物栽培の研究
第三技術室システム制御技術班 岡井善四郎1
.はじめに 過去二年間、土壌栽培にて半導体発光素子を栽培用光源として用い、太陽光や現在大半の植物工 場で使用されている高圧ナトリウムランプ、植物育成用蛍光ランプ等を照射しなくても、適当な赤 色と青色の光を与えることによって、これまで栽培した 5 種の葉菜類は遜色なく生育することが確 認できた。ただし栄養価の点ついては、まだサンプル不足で今後の課題である。 本年度は、①種まき植付けが簡単、②やさしくできて省力的、③施肥管理が有効に行える、④水 と肥料を効率よく使える、⑤清潔で環境にやさしい、⑥栽植密度を高くできる、⑦高い栄養価があ る、⑧連作障害がない、⑨無農薬で有機栽培である、⑮収穫量が多いといった、特徴を有している 水耕栽培を取り入れ閥、ステムレタス(レタスとセルリの用途をもっ、作りやすい茎レタス)の 栽培を行った。そして、昨年製作した LED パネルを光源としてて連続光とパノレス光照射で、の生 育の違いを乾物重量測定で調べた。このように、両者の生育を調べるに際して、主に③、⑥の特徴 を生かした水耕栽培は、土壌栽培より有利で正確な生育比較が可能である。また、使用した赤色 L ED パネルの光出力の変動を測定し、栽培実験に影響があるかどうかも調べた。2
.
し ED パネル光源の光出力測定 LED を何らかの方法で冷却しなかった場合、 LED の温度上昇をきたし、光出力の低下が報 告されている九そこで実験に使用した赤色 LED パネルの光出力の変動を、 イ)連続光照射のとき、ファンで冷却した場合、冷却しなかった場合 ロ)パルス照射で明期比率 0.1 、 0.2 に設定し、同じくファンで冷却した場合、しなかった場合 について調べた。このときの室温は 19 "Cで、測定方法としては、フォトダイオード(浜松フォト ニクス S-1337) を LED パネルの真下に設置し、その出力を、デ、ジタルマルチメータ (sanwaP
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から、コンビュータに取り組み、栽培の日長時間に合わせ、 12 時間モニターした。同時にデジタ ル温度計を LED の聞に設置し測定した。またデ、ジタルマルチメータで (iwatsu VOAC86) 、 1 F (順 方向電流)も測定した。図1.は各々の条件での LED パネノレの光出力の時間変化を示している。
イ)の冷却しなかった場合 LED の温度上昇(1 9
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1133mAであった。 冷却した場合は、温度上昇(1 9o
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5cm
の穴をあけ、ここに栽培する植物を植え 付けた。養液に光が当たると藻が発生す るので、アルミホイルで、遮光した。 肥料は大塚化学株式会社から、水耕栽 培用肥料として f 大塚ハウス 1 号、 2 号」 が市販されており、それを適当な濃度に 薄めて使用した。 光源の条件として町B 比を 10: 1 に すること以外に、赤色を連続光とパノレス 光(明期比率 0.2) を照射した(連続光 と比べると光量的には 1/5 になったと 考えられる)。この場合連続光とパルス 光の尖頭値を同ーとした。 今回の実験のように赤色と青色 LED で植物を栽培する場合、 RIB 比が 10 もあれば、強い赤色1
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図 2. 水耕栽培装置 照射だけで光合成の飽和領域に達しているはずあり、青色は飽和領域に達していない。よってこの ような条件下では赤色光のみパルス光が有効で、青色光は連続光でもよいといえる 7)。 4. 実験方法・結果 今回の栽培実験でも種まきからはじめた。 11 月にもなると寒い日は実験室の室温も 10 "cも下回 るようになり、発芽には好条件とはいえない。そこで発砲スチロールの保冷庫で簡単な発芽装置を 製作した。発砲スチロールの箱の中 に、 2"
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3cm の高さに切った牛乳パ ックに水に溶けやすい紙を敷き、紙 に湿り気を与えその中に種を置い た。次にポリタンクに水を入れ、サ ーモスタット付きヒーターで 20 0 C 位に水温を維持した。この方法によ り、品種によっても異なるが、 4'""5 日で確実な発芽が得られた。 発芽して子葉が聞きかけた頃、幅 10cm 高さ 3cm 厚さ 3mm 程度のス ポンジで巻き(このときスポンジに 根の通り道をつけておく必要があ 図 3. リーフレタスの定植 F 可る)今度は数 cm の高さに切った牛乳パックを用意し、濃度 1000 倍以上の薄い養液に浸した。 4 """"5 日後、細い根がスポンジの下から 2"""" 3cm 伸びた頃を見計らって、先ほど述べた水耕栽培装 置に、 6 本定植した。図 3. にその状態を示す。 栽培条件として、以下の 6 項目を定め栽培実験をはじめた。 養液の濃度:定植 3 週間目迄は 1000 倍液、生育が進み 4 週間目から 800 倍液。 養液の温度 照射光源 照射時間 室温 湿度 大塚ハウス 1 号 225g を 1500cc に溶かす。 2 号は 150g を 1500cc に溶 かす。これを原液として使用。 サーモスタット付きヒーターで 18 "cに保った。 連続照射とパルス(明期比率 0.2 パルス幅 2msec) 照射 タイマーで制御し、朝 6 時から夕方 6 時までの 12 時間 昼間で 18""""
2
3
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昼間 30%前後、夜間 50%前後.
・・ーーー司ーーー司・ー・ー"・ーーーーー・ー・・ーーーーーーーーーーーーーーーー'ーーーーーー事ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・ーーー・ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・ーーーーーーーーーー・ 次に定植を行ってから一週目から 5 週固まで一週間ごとに生育を調べた。具体的には乾物重量測 定といい、栽培植物を根等を切らないように完全に抜き取り、完全に乾燥させた後、デジタル天秤 定植 1 週後 定植4週後 図 4. リーフレタスの生育状態 -76 ー 定植3週後 定植5週後で、 mg 単位まで測定した。図 4. に定植時から一週目、 2、 4、 5 週目までの生育の状態を示す。 また図 5. に連続光照射とパ ノレス光照射の場合の生育の違い を乾物重量で表した。まだ 1 回 の栽培実験しか行っていないの で確実とはいえないが、 このグ ラフを見る限りは、両者の生育 状態は若干の差は見受けられた が、測定誤差の範囲であり、ほ ぼ閉じような生育を示した。こ れは連続光とパルス光の尖頭値 を閉じに設定したためと思われ る。すなわち光合成は光のエネ
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ルギーを利用し、チラコイドで 行われる明反応とストロマでプ 乾物重量測定 図 5. ドウ糖などを合成している炭酸 固定反応から成り立っている。明反応には水晶O から水素 H+を取り出し NADPH (還元剤)をっ くり、またそのときにできるエネノレギーを使って、 ATP (化学エネルギー)を合成する。これらの 二つの機能を備えている。炭酸固定反応では、明反応で作られた NADPH と ATP を用いてカルピ ン回路を通し、二酸化炭素や水が取り入れられ糖が合成される帆,10)。強い光が照射されれば、明反 応は 1mse 程度で光化学系の反応が進む。そのため照射する光は 1 msec 程度でよい。これに対し て炭酸固定反応は光がまったくといってよいほど関与せず、 10ms郎程度の時間を要して反応が進 これらのことから鑑みて、連続光のほとんどは光合成にとって意味のない光である。つま りこの間、光は照射されても光合成には作用せず無効な光となる。この栽培実験に使用した LED パネルは、(1個 15,000mcd、波長 644nm) の LED 450 個から成っており、パネル面下 30cm での 有効光量子東密度 (PPFD) は 480μmol/m2 ・s で、 む 11),へ2
msec のパルス幅で、十分明反応が行われた ものと思う。まとめ
水耕栽培を取り入れたところ、思った以上に生育が良かった。そして昨年の土壌栽培よりいくつ かの点で栽培管理の省力化ができた。なによりもメリットがあったことは、栽植密度を高くするこ とができたので、実験のサンプルが土壌栽培より 3 倍以上多く栽培できた長である。地下部の温度 も養液なのでサーモスタット付きヒーターの使用により、温度管理もたやすく、生育状態の比較の5.
精度向上に役立てることが出来た。 栽培植物に与える光をパルス光で、も、連続照射と同じように生育することが、今回の栽培実験 でほぼ確認できた。すなわち、明期比率 0.2 から 0.1 にした場合でも連続照射と閉じ生育が行われるとすれば、光量、消費電力とも少なくすることが可能で、省エネにつながる。また LED をはじ めとする半導体発光素子の長寿命化にも貢献できるとともに、 j頓電流を連続の時より何倍も多く流 すことが可能なので、パルスの尖頭値を高くでき、光合成の効率が高まり生育を早めることができ る。これらは半導体発光素子が他の光源にはない特徴といえる。また、青色の LED も昨年までは 1 個 200 円していたのが、需要の増加により、今年度は 95 円と値下がりしてきており、これらの点 も植物工場にとって非常に有利な点で、ある。
6. 今後の課題
( 1 )照射光源(赤色 LED) の明期比率をパラメータとして、リーフレタスの生育状態を連続 光の場合と比較し、生育と明期比率の関係を詳しく調べる。また日長時間を 12 時聞からそれ以上 に増加して生育状態調べ、最適栽培条件を見出す。 (2) 光量の増大を図り、まだ栽培報告がなされていない果菜類(トマト・ナス・ピーマン)の 栽培を試み、最適栽培条件を見出す。 (3) 栽培数量を増加して、ビタミン等栄養価の点に重点をおき、露地栽培との比較を行う。7. 謝辞
この研修を行うにあたって深いご理解を賜り、また快く実験室の一部を提供していただいた 量子エレクトロニクス研究室の北嶋巌教授、仁木秀明助教授のお二人に深く感謝したします。8. 参考文献
1) 矢野謙介;水栽培野菜づく りの愉しみ,グラフィックス社 (1999) 2) 並木隆和訳;野菜の水耕栽培(1 993) 3) 岡井善四郎; (日常研修)半導体レーザーの応用技術 (ll) ,福井大学技術部技術報告集,5
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9
9
)
4) 田中逸夫,石井征亜 ;LED の温度上昇が光合成有効光量子束に及ぼす影響 および送風による除熱の試み,植物工場学会誌 12(
4
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5) 谷善平;改定オプトデバイス応用のテクニック, CQ 出版社(1 992) 6) 清水当;光エレクトロニクスの基礎と活用法, CQ 出版社 (1999) 7) 高辻正基,山中正宣;レーザー植物工場の可能性(JOURNALOF SHITA) 6 (
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9) 賀来章輔,他 7 名;植物生理学,放送大学教育振興会 (1997).
10) 伊藤道也,他 5 名;光と物質,放送大学教育振興会 (2000)11) 田中史宏,渡辺博之; LED の植物栽培への適用,
OPTRONICS. No12 1
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12) 高辻正基;植物工場ノ、ンドブック,東海大学出版会 (1997)