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[A Note on Economic Research in Indonesia]

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東 南 アジ ア研 究 8巻2号 1970牛 9月

イン ドネ シ ア経 済 の研究 方 向 に関す る一考 察

予 備 調 査 か ら 帰 っ

て-小

林 Ⅰ は じ め に 現在, わが 国お よび諸外 国にお い て東 南 ア ジアに関す る関心 は急 速 に 高 ま ってい るO な か で もイ ン ドネ シ アに対す る関心 の高 ま りは 「流 行」 とい う言葉 であ らわ され るほ どの症 状 を墨 してい る。 か つ て第二 次大戦 前 イ ン ド ネ シ アは

,

「南洋 の楽 園」 であ り, 第二 次大 戦 後 のス カル ノ統 治下 に お い ては, アジ ア ・ アフ リカに存在 す る低 開発 国諸 国を統 合す る 第三 世界 の代表 的 スポ ー クスマ ンで あ った。 そ して,今 日の ス- ル ト政 権下 にお い て も, このバ ン ドン精

は, 変形 されつ つ も維持 さ れ, 最近 の ア ジア会議 提 唱 と して具 体化 され てい る。 将来 イ ン ドネ シ アが, 国際 舞 台 で ど れ だけ の発言 力 を もっ ことが で きるか は,現 在 の経済 開発 の進 行程 度 に も よるで あ ろ うが, この国が, 相対立す る東 西陣営 の接触 点にあ り, 東南 アジ ア問題 の一 つ の 「核」 で あ る こ とには疑 いが ない。経 済 とい う点 を考 えてみ て も, この国 は, ほ う大 な生 産要素 を所有し て い る。 す なわ ち, 自然資源 は多 く, また人 目 も大 きい。 これ らの基本 的 な生 産要素 が, 人間 に よって作 られ る生産要素- 資本- と有 機 的に結 合 し,現 在 の低 開発 均衡 を うちやぶ った時, この国 の経 済 は, 需 要 ・供 給 両 面 にお い て, 巨大 な市場 を形 成す る こととな ろ う。 イ ン ドネ シアの経 済 的潜在 力は, 正確 に *京都産業大学経済学部 予測す る事 が 困難 であ り, そ の事実 が, 中 共 の場 合 と並 んで, 無気味 な威圧感 さえ与 え て い る。 私は多年 イ ン ドネ シア とい う国に, 興味 と 関心 を いだ い ていたが,今 回京 大東南ア ジア 研 究 セ ンタ-の御 好 意で, は じめ て実際 に イ ン ドネ シアを見, また現地 のい ろい ろな人達 と話 をす る機 会を もっ ことがで きた。今 回 〝) イ ン ドネ シ ア訪 問 の主 目的は,今 後 の本 格 的 な調査 研究 のため の下準備 で あ り,

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カ月 の イ ン ドネ シ ア滞在 の経験 か ら,今 後 にお い て リサ ーチ ャブル な経 済 問 題 を発 掘 し, そ, h-の手 がか りをつか んで くる ことに あ -〕た。 こ の 目的 を遂 行す るため, 私 は主 と して ジ ャカ ル タ市 内に標 をす え, 国 立 社 会 経 済 研 究所 (LEKNAS)を一 つ の拠 点 と して利 用 させ て いただ いたO この他, 庁l央 の研究 機 関 と して は, イ ン ドネ シア大 学経 済学 部, 国家経済 開 発局 (BAPPENAS)等 々とで き得 る限 りの 接 触 を計 ろ うと努 め た。 また

,

期間 の後 半に は, 西部 ジ ャワにあ る三 菱 ビマス計 画 を 視察 す るため, ボ ゴール, ノミン ドンを訪れ, さ らに ガチ ャマ ダ大学 の研究 プ ロジ ェク トを 調査 す るため, 中部 ジ ャワの ジ ョクジ ャカル タを訪れ た。 また, 東都 ジ ャワの ス ラバ ヤ近 郊 にお い ては, 開発輸 入 のため のわが 国技 術 指導 団に よる rと うもろ こ し増 産計画」 を見 る機 会 を も得 た。 スマ トラに関 しては,南 ス マ トラの工 業都市 といわれ るパ レンバ ンを訪

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東 南 アジア研究 間 し, 地 域 開発 の 現状 に 触れ て きた。 最後 に,北 スマ トラの メダ ンを訪れ,北 スマ トラ 大学, ノメ ソセ ソ大学 におけ る研究 プ ロジ ェ ク トにつ い て調査 を行 な った。 これ らの経験 に基 づ い て, 以下, イ ン ドネ シア経 済研究 に 関連す る研究機 関 と研 究 プ ロジ ェク ト, イ ソ ドネ シ ア開発

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カ年計 画 を と りま く諸 問題に つ い て簡単 な考察 を行 ない,結論 的 に, イ ン ドネ シ ア経 済 の離 陸 (テイ ク ・オ フ) の問題 とそれ に 関連す るわれ われ の研究 のあ り方 な どにつ い て私 な りの整 理 を してみ たい と考 え てい る。 ⅠⅠ 研 究機 関 と研 究プ ロジ ェク ト イ ン ドネ シ アにおけ る経 済研究 のため の代 表 的研究機 関 とそ の研 究活動 につ い て, ここ では整理 してみ たい。 1. 国立社 会経済 研究所 (LEKNAS) イ ン ドネ シ ア学術 会議 (LIPI)直 属 の研究 機 関で あ り, イ ン ドネ シ アの社 会, 経済 を総 合 的に研 究す るため の代表 的 な研究機 関で あ る。 政 府 の研究機 関 であ るとい うことか ら, イ ン ドネ シ アにおい て社 会学 的 も し くは経済 学 的研究 をす る外 国人 は好む と好 まざる とに かか わ らず, この研究 所 とは なん らか の接 触 を もた ざ るを得 ないで あ ろ うし, また,持 っ たほ うが有利 であ る。 所 長は最 近 まで高 名な 経済学者 ウ ィジ ョヨ教授 が担 当 していたが, ウ ィジ ョヨが, 国家 開発 計画局-移 ってか ら, -ル シ ャ ・バ クテ ィアー博士 が, ア クテ ィン グ ・デ ィレクター と して研究所 を銃 か つ して い る。 ス タ ッフのなか には,経済学 者,社 会 学 老 のみ で な く,政 治学者,文化 人質学者 等 々も含 まれ, いちお う, イ ンターデ ィシ プ リ ナ リーな総 合研究 が 目標 とされ てい る。 この 線 に沿 って,今 まで

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の研究報 告書 が刊 行 ・ 発表 され てい る。 現 在 この研究所 が企 画 して い る代表 的 な研究計 画 は, 1) イ ン ドネ シ ア (特 に外筒 ) におけ る地 域 的経済 調査,2)人 8巻2号 口問題調査 研究 の二 つ であ る。1)のエ コ ノ ミ ック ・サ ー ヴ ェイほ,従来 とか く無視 され が ちで あ った外債 (特 に, ス マ トラ, ス ラ ウ ェ ジ) の地域経 済 に焦 点をあ て, お のお のの地 域 におけ る主 要 な経済主体 (た とえば,工 場, 銀 行,商店, 農 家 な ど) に おけ る経済活動 の 相互 関係 を追 求す るこ とに よ り, そ の地 域 の 経済 的な全 体像 を把握 しよ うとす る。 この作 業 にあた っては, スマ トラあ るいは ス ラウ ェ ジ等にあ る地 方大学 を有効 に利 用す る よ うに プ ログ ラムが組 まれ てい る。 資金 の多 くは, 政 府 お よび フ ォー ド財 団か らの ものであ るが, 研究計 画 は デス ク ・プ ラ ンの段階 で あ り,莱 際 の 研 究 成 果 は まだ現 われ ていない。 研究 計 画 の責任者 は, い ままで デ ィワ ン ドノ氏で あ ったが,今 後 テ 一 ・キ ア ソ ・ウ ィー博 士 に 引 きつ がれ る との ことで あ った。 この二 人 の 他, プ ロジ ェク トの実務面 を特に シ レガ ー氏 が担 当 し, この三 人 が プ ロジ ェク トの共 同責 任者 の よ うに見受 け られ た。現在 この プ ロジ ェク トが難航 してい る最大 の原 因は,有 能 な 指導 者 の欠如 とい うことで あ る。 そ して, こ の点が レクナ スが京大 との共 同研究 に対 して 期 待 してい る最大 のポイ ン トであ る と考 え ら れ る。 2) の ポ ピ ュ レーシ ョン ・サ ーベ イは,現 在 の ところ, 人 口移動 の問 題 に焦 点をあ てて い る。 都 市 と農村 間に おけ る労 働 力 の移動, ジ ャワ島 と外債 間におけ る人 口の移動 等 が 中 心問題で あ り, それ らの問 題 を, 人 口学 者, 社 会学者,文 化 人類学者 の共 同研究 に よ り, 解 明 しよ うと してい る。 なお この グル ー プは 人 口問題調査 に対す る トレーニ ソグ活動 を開 始 しよ うと してい る。 イ ン ドネ シア大学 に も 人 口問題研究 所 があ るが, イ ン ドネ シ ア大 の 場合 は人 口問題 の経済 的側 面に重 点が おかれ てい るのに対 し, レクナ スの場 合 には,社 会 的 ・文 化 的側 面に重 点をお くとい うことで一 応 の分業体制 が成立 してい る。

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小 林 :イ ン ドネシ ア経 済 の 研究 方 向 に関す る一・考 察 2.国家 開 発計 画 庁 (BAPPENAS) イ ン ドネ シ ア開発5カ年 計 画 の準 備過 程 て , 国家 の経 済 計 画 を担 当す る独 立 の政 府機 関 と して発 足 した のが この ノミペ ナ スで あ り,

在, 外 f-'f導 入 の場 合に お け るイ ン ドネ シ ア側 の窓 日に な って い る。 初 代 所 長 は レクナ スか ら移 -,た ウ ィジ ョヨ教 授 で あ り, 彼 の下 に 多 数 い 有 能 な経 済 学 者 (多 くは , イ ン ドネ シ ア大 学 経 済 学 部 との兼 任 ) が働 い て い る。日本 で い えば , 経 済企 画庁 の よ うな もので あ るが , よ i)華 々 し く, よ り多 くの実 権 を握 って い る Lと ')で あ るO 基 礎 的 な研 究 は こ こで は 行 なわjL ず , 直接 経 済 行政 にか か わ って くる

題 だけ が と りあ げ られ る。 また, 世 界 銀 行 , /、-/ミ ー ド ・ア ドヴ ァイザ リ ・グル ー プな どの -ッ ド ・ク ォ- ター も, この バペ ナ スrJ

j

建 物 の なか に あ る。 :i.イ ン ドネ シ ア大 学 経 済 学 部 イ ン ドネ シ ア大 学 は, イ ン ドネ シ ア最 大 しり 国立総 合 大学 で あ る。 この大学 の経 済 学 部 が イ ン ドネ シ アの 経 済 行 政 に 及 ぼ す 影 響 は 非 常 に大 きい。 現 在 , 貿 易大 臣 で あ り, イ ン ド ネシ ア経 済 閣 僚 の代 表 格 で あ るス ミ トロ博 士 は, 元 経 済 学 部 長 で あ る し, 大 蔵 大 臣 ア リ ・ ワル ドノ教 授 も, この学 部 o)学 部 長 を兼 任し て い る。 そ の他 , サ ドリ, - ミル ・サ リム, ス ブ ロ ト, ア フ ィフな ど, 行 政 府 で 活躍 して い る拝 所 学 者 の多 くは, イ ン ドネ シ ア大 経 済 学 部教 授 を兼 任 して い る。 現 在 Lj)経 済 学 部 長 代

は ス- ジ博 士 で, 実 質 的 に は, この人 が 学 部 L'))責 任者 で あ る。 学 部 は 四つ の学 科 と三 つ の研 究 所 を有 して い る。 四 つ の学 科 とは , 1)経 済学,2)ビ ジネ ス ・ア ドミニ ス トレー シ ョン, 3) パ ブ リ ック ・ア ドミニス トレー シ -=lン,

4

)

会計 学 で あ り, 三 つ L7)研 究 所 と は , 1)社 会 経 済 研 究 所(ⅠIIStituteforSocial andEcoI10micResearch),2)人 口問 題 研 究

(InstittlteOfDemography)右 よび 3)鍾

業 経 営 研 究 所 (instituteoflndustri alMan-agelllent)で あ る。 学 科 は教 育 活 動 のため の 単 位 で あ り, 研 究 所 は研 究 活 動 のため の単 位 で あ り, 両 者 は 相互 に有 機 的 関 連 を有 して い る。 三 つ の研 究 所 の下 に, 学 部 の研 究 プ ロ ジ ェク トが あ るが, 現T J)主 要 プ ロジ ェ ク トは 次 し-)よ うな もので あ る。

A.

長 期 的 プ ロジ ェク ト 1) コ プ ラお よび コ- ヒ-の輸 出予 測 的産 業 とJ汀ヒ較 3)人 口調査 B.短 期 的 プ ロジ ェク ト 1)投 賢 の形 fi+- -ジ ャカル タ地 域 に お け る

2)

東 ジ ャワに お け る肉か ん づ め工 業 3)小 規模 工 業 の立 地 プ ロジ ェク トC))一 般 的傾 向 と しては, や は り中央 の大 学 で あ るため マ ク ロ的 な問 題 - a) 関 心 が,強 い こ と と, 計 屋二的 な方 向 を重 視 して い る とい うこ とが 言え よ う。 また

,

工 業 経 済 学 の分 野 に, 多 くの人 材 を得 て い る よ うで あ る。 な お, イ ン ドネ シ ア大 学 経 済学 部 が 中心 とな って刊 行 して い た 「一ィ ソ ドネ シ アに お け る経 済 と金 融

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は, 長 い期 間 休 刊 され て い た 浴, この度 復 刊

第1

号 が で た。 また, 社 会 経 済 研 究 所 は 「研 究 報 告

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とい う機 関 誌 を発 行 して い る。 イ ン ドネ シ ア 大 学 経 済 学 部 か らの 出版 物 の多 くは, 学 部 付 属 出版 局 に お い て入 手 す る こ とが で きる。 以上 の研 究 機 関 のほ か に, マ ク ロ ・レベ ル の研 究 目的 の ため に は, 4.学 術 会議 (LIPI) 5. イ ン ドネ シ ア中央 銀 行 (i. 中 央 統 計 局 7.ダ フ ソ ・ア ダ ン書店 等 が あ る。 学 術 会議 本

は , そ の管 か つ下 に あ る研 究

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東 南 アジ ア研 究 所 の活動 や蔵 書 の全 貌 を把 握 す るのに大 事 な 場 所 で あ る。 中央 統 計 局 は,政 府 が刊 行す る 統 計 書 類 の セ ンタ-で あ り, 利 用価値 が大 き い。 イ ン ドネ シ ア中央 銀 行, グ ヌ ソ ・ア ダ ン 書 店共 に独 立 の図書 館 を持 ってお り, 有 意 義 な蔵 書 が 多 い。 つ ぎに地 域 的 レベ ルに おけ る研 究機 関 お よ び研究 プ ロジ ェク トに焦 点 を しぼ ってみ よ う。 こ こで は,代 表 的 な地 方大学 で あ るガチ ャマ ダ大 学 の研 究 プ ロジ ェク トと, ボ ゴール農 業 大 学 を 中心 に して行 なわれ た 農 業 経 済 調 査

(Agro-EconomicSurvey)の プ ロジ ェク ト につ い てみ てみ よ う0 8. ガチ ャマ ダ大学 経 済学 部 ガチ ャマ ダ大 学 は, イ ン ドネ シ ア大学 に つ ぐ名門校 で あ り, こ この経 済学 部 は, 1)一 般 経 済学,2)ビジネ ス ・ア ドミニス トレー シ ョ ン,3)農 業 経 済 学 , 4)会計 学 の四つ の学 科 を 有 してい る。 伝 統 的 に農 業 経 済学 に強 く,地 域 研 究 とい う点で は, イ ン ドネ シ アで も っ と も指 導 的 な位 置 に あ る大 学 で あ る。 現 在 ,学 部 長 は ス カ ジ博 士 で あ る。 学 部 の下 に, 経 済 研 究所 (Bureau of Economic Research) が あ り, 少壮 なが ら有 能 な ム ビ ャル ト博 士 が 所 長 をつ とめ てい る。 この研 究所 に お い て, 1966-70年 の期 間 に 企 画 され た プ ロジ ェク ト と してほ, 以下 の ものが あ る。 (この うち, *印 のあ る プ ロジ ェク トは, ア グ ロ ・エ コ ノ ミック ・サ ーベ イ の プ ロジ ェク トと重 複 して い る もので あ る。) * 1) ジ ャワ島に おけ る砂 糖 業 * 2)東 部 ジ ャワに おけ る と うもろ こ しの 流通 3)農 家 の支 出弾 力性 4) 公企 業 の金 融 的側 面 * 5)ジ ャワ島に お け る米穀 統 計 の精 密 度 6)ジ ョクジ ャカル タに おけ るOilDis -tribution 8巻 2号 7)ス マ トラに おけ る小規 模 農 家 の さ と うきび生 産 8)ジ ョクジ ャカル タに おけ る消費 者 の 金 融 調査 9)職 業 調査 10)中部 ジ ャワに おけ る農 村 ク レジ ッ ト →二11)土 地 改革 の評価 12)工 業 に おけ る生 産 関数 13)中郡 ジ ャワお よび ジ ョクジ ャカル タ に おけ る地 域 調査 14)ジ ャワさ らさの消費 構 造 *15)中郡 ジ ャワに おけ る米 作 の価 格 呼応

分析

16)労働力移動調査 17)公企 業 に おけ る意 志 決 定 18)米 作農 家 の意 志 決定 19)グ レシ ック国立 セ メ ン ト工場 に おけ る会計 シス テ ム 20)農 産物 の輸 出予 測 21) ビマス評価 22)貧 困地 域 の調 査 上 記 の プ ロジ ェク トの うち, 完 成 され 刊 行 され た ものは,半 分程 度 で あ るが, 比 較 的優 秀 な ス タ ッフが エ ネル ギ ッシ ュに共 同研究 を 進 め てい る現 状 か ら見 て,今 後 と も種 々注 目 す べ き研 究 成果 が 出て くる もの と期 待 され る。

9.農 業 経 済 調 査 (Agro・EconomicSur一 vey) この調 査 は,1965年 に, イ ン ドネ シ ア農 業 の実情 に 関す るデ ー タを収 集 し, 農業 生 産 , 農 村 社 会 の進歩 を測定 す る とい う目的で 発 足 した。農業 省, 公共 企 業 省, 厚生 省 等 が 関 係 してい る。 実 際 の研 究 は ウ トモ教授 を 中心 と す る大 学 の研 究 者 に よって編 成 され , 主 とし て, ボ ゴール大 , パ ジ ャジ ャラ ン大 , ガチ ャ マ ダ大 , イ ソ ドネ シ ア大 等 々が 中心 とな った。 資金 は 国家 資金 の他 に フ ォー ド財 団,

FÅo

等 々か ら若 干 額 が供 給 され た。農 業 経 済 の ミ

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小 林 :イ ン ドネS/ア経 済 の 研究 方 向に関す る 一考察 ク ロ的分析 を主 目的 とす る この調 査 の プ ロジ ェク トの うち, す で に完 成 し, プ リン トされ た報 告 は下 記 の もので あ る(:, A. ドキ ュメ ソティ シ ョン ・プ ロジ ェク ト 1) ボ ゴールお よび ジ ャカル タに おけ る農 業 そ の他 の研 究機 関, 研究 者 , 研 究 組織 名鑑 2)土 地 区分 ガイ ド 3)イ ソ ドネ シ ア農 業 に関す る文 献 日録

B.

作 物 ,地 域 開発 ,農業 サ ー ビスに 関す f,プ ロジ ェク ト D ジ ャワ島に おけ る農業統 計 2)

中部

ジ ャワの ゴム. タバ コ, エ ステ ー トに おけ る農 業 普及 サ ー-ビス 3)米 作 の増 産 4) もみ 米 の加工 と17- ケ ッテ ィング 5)ジ ャワ島に おけ る砂糖業 と小 規模 農民 との関連 6)イ ン ドネ シ アに おけ る砂糖需 給 ノミラ ン ス 7) ジ ャワ島以外 に おけ る さ と うきび生 産 8)東 部 ジ ャワに おけ る砂糖 生 産 の費 用 9)南 スマ トラお よび 南 カ リマ ンタ ンに 巨 け る小規 模 ゴム生 産 10)エ ス テ - ト・ゴムの生 産

ll)ジ ャワに おけ る種 物 油

1

2)

ジ ャテ ィル フール のか んが い計 画 13)ラ ンプ ソ移 住計 画 14)西 部 ジ ャワに お け る農

業協

合 二の ア グロ ・エ コ ノ ミック ・サ ーベ イは, 現 在 や っと一 段落 つ い た状 態 で あ るo この他 に, お のお の の地 方 大学 は, そ の地 域 の実

に 見合 -つた研 究 プ ロジ ェ ク トを育 成 してい る。 た とえば,筆 者 ノ-)訪 問 したパ レン バ ン〟)スル ビシ ャヤ大 学 におい てほ, 工業 化 〟)地域 社 会に 及 ぼす 影 響

中心 的 な テーマで あ t), メダ ンの北 ス マ トラ大学 にお い ては, プ ラ ンテ - シ ョソ農 産 物 の生 産 と貿 易に最大 (jlr乱し、が 置.か れ てい る よ うで あ -'た。

第 一次 イ ン ドネ シア開 発

5

力年計 画 こ こで は, イ ン ドネ シ ア経済 の研 究方 向に 関連 させ な が ら, 第一 次 5カ年 計 画 につ い て 若 干 の考察 を してみ た い。 イ ン ドネ シ アの第一 次

5

カ年計 画 は, 計 画 し7う目標 が地 味 で 現 実 的で あ る とい う点に お い て, 非常 に ユ ニ ー クで あ る。、い ま まで,

低開

発 国 におけ る開発 計 画 のほ とん どす べ ては, 急速 な工 業 化 を第一 の 目標 と した。 また, 近 代経 済学 の最新 の理論 が, 外 観 を装 う日的 LJつ た裾 こ使 わ

た。 イ ン ドの第二 次

5

カ隼計 画 は, そ の代表 的 な例で あ る。 しか Lなが ら, マ- ラ ノビス教 授 の精 敏 な統 計 モ デノLに もと づ くこの計画 は, モ デル 自身 のなか で, 比 較 的軽 視 され てい た農 業 部 門 の不 調一- それ も 気候 条件 の悪 さに よる不 調- 一に よ -)て非現 実 的 な もの とな った。 以来 , イ ン ドにお い て ち, 開発 計 画 のなか に 占め る農 業 の重要性 が 再 認 識 され て きた のは衆 知 の事実 で あ る。 イ ン ドネ シ アの第一 次 5カ年計 画 に お い て は, こ うした 他 の低 開 発国 の実 例 を見 習 い, また, ス カル ノ時代 に お け る経 済政 策失 敗 の 反省 の上 に もた -〕て, 農 業 の生 産性 上昇 を第 一 目標 にす る とい う,大 変 現 実 的 な方向を採 用 してい る。 農業 部 門 のなか で も,直接 国民 生 活 に影 響 を持 つ米 しっ生 産性 上昇 に最 大 の重 点が おかれ てい る。米 の生 産増 加 は

,

国民 の 栄 養 水 準 の上 昇 とい うことと同時 に, 現在 米 の多編 の輸 入 が 国際収 支 に与 え る負 の影 響 を, な るべ く軽 減 させ る とい う目的 に もつ なが -1 てい る。 と ころが, 米 の増 産 の ため には, 高 収 量 しっ新 品種 の採 用 と同時 に, 肥料 ・農薬 等 のいわ ゆ る近代 的生 産 要素 の投 入 が不 可 欠で あ る。 こ うした新 技 術 体系 の導 入 を政 府 の指 てた のが, い わ ゆ る ビマ ス計 画 で あ る。 この ビマ ス計 画 は,最 初 は 国 内資本 を 中心 に して 行 なわ/いてい たが, 後に外 国企 業 の融 資 に よ

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東南 アジア研 究 る ビマス ・ゴ トソロヨ ソに発展 し, チバ, -キス ト,三 菱等 々の外 国企 業 が, 肥 料 ・種 子 等 の売 り込み を農業技術 指導 と併 用 して進 出 して来 た。 と ころで,5カ年計 画 におけ る米 の増 産 目標 は, 国民 の栄養必要量 か ら割 り出 され た もので あ り, はた して計 画 通 り, イ ン ドネ シアが1973年度 まで に米 を 自給 で きる よ うに な るか ど うか は,むずか しい問題で あ る。 技術 的にそれ だけ の増 産 が可能 な場 合で も, 一 時 的な増 産 は, 米 の価 格 の低落 を うなが し, それ が次期 におけ る生 産 の低落 につ なが る場 合 は 多 い。 同様 に, 米 の増収 に見合 うだけ の 所得 の上昇 が ない場 合 に も, 米 の過 剰 問題が 起 こ り, 米価 は低 落す る。 また, 最近 グ リ-ソ ・レボ リュー シ ョンな どと騒 ぎた て られ て い る よ うに, 東南 アジア地域 におけ る米 の収 量 の増 大 はめ ざ ま し く, イ ン ドネ シアにおけ る米 の需給 の問題 も, こ うした 国際市場 と無 関係 に論ず る ことは 出来 ないで あ ろ う。 ビマス計画 につ いては,新 しい生産要素 の 投 入 が,農 家所 得 の増 大 とな ってあ らわれ て い るか ど うか を科 学 的に吟味す る ことが必要 で あ る。 この分析 をお こな う上 で重要 な変数 は, 米 と肥 料 の相対価 格, 肥料 の増 投 に伴 う 反当 り収量 の増 加 な どであ る。 伝 統 的な農業 のル ーチ ンのなか に, 突 然資本 主義 的な農業 経営 のル ールが入 って きた場 合, 農 民 の側に なん らか のあつれ きが起 きるのは当然で あ り, そ の壁 を破 るため には,権 力 の介入 も時 と し ては必要 で あ ろ うが, 反 面,計 画 の実 施過程 で, 地域 性,農 家 の規模 等に応 じて,弾 力 的 な計 画 の運 用 をす る こと も大 切 だ と考 え られ る。 5カ年計 画 の第 2の重 点は, いわゆ る輸 出 農産 物 の育成 に おかれ てい る。 第二 次大戦前 にお い て, イ ン ドネ シ アは世界 最大 の ゴム輸 出国で あ り, また, キ ューバに つ いで,世 界 第 2の砂糖供給 国で あ った。 しか しなが ら, 現時 点にお い て イ ン ドネ シ ア産 の ゴムは,輸 8巻2号 出面で マ レー シアに大 き く水 をあけ られ,砂 糖 にいた っては, 国内 自給 に も不 足 してい る とい うあ りさまで あ る。 コプラ, タバ コ共 に 生 産性 は上 昇 していな い。5カ年計 画 におい てほ, こ うした伝統 的 な輸 出農 産物 の生 産性 を復 旧 させ て, 外貨獲得 に役 立 たせ よ うと し てい る。 同時 に, と うもろ こ し,水産物,柿 産物等,新 しい輸 出用 の第一 次産業 を も育成 しよ うと してい る。 こ うした輸 出用農 産物 の 再 評価 は, 既存 の資源, 施設 の重要性 を見直 した とい う点で 賢 明で あ るが, 他方需 要 ・供 給両 面で種 々の問題 を含 んで い る。 す なわ ち, これ らの農産物 の多 くは,世 界市場 におい て, 多少 とも過 剰 の傾 向を呈 してお り, それ故 に 国際価格 は低下傾 向に あ る。 また,需 要 の所 得弾 力性 が小 さいか ら, 将来 にお い て も輸 出 需 要 の飛躍 的 な上昇 は期 待で きない。わず か に, と うもろ こ し,木材 等 の需 要が比較 的楽 観 的で あ るが, と うもろ こ しの場合 には, 日 本 の市場 をめ ぐって, タイ との競合 関係が問 題 とな って くる。 供給 面 につ い て言 えば,一 度生 産能 力を低 落 させ た プラ ンテー シ ョンを復 旧 させ るには 多額 の資本 が必要 で あ る。 そ して, 希 少 な資 本 は, オポチ ュニテ ィ- ・コス トとい う観 点 か ら,最 も収益性 の高 い分 野 に投 資 されねば な らな い。 と したな らば, プラ ンテ -シ ョソ 復 旧のため の投 資が, はた して経済 的収益性 とい う観 点か らみ て有 利 で あ るか ど うか は, 改 め て科 学 的に分析 され なければ な らない。 5カ年 計画 は,農業 生 産 の拡大 のつ ぎに く るべ き 目標 こ して, イ ンフ ラス トラ クチ ャ-の整備 をあ げ てい る。 ダム ・か んが い ・道 路 ・港湾 等 の拡充 は, あ らゆ る生産 ・流 通 の近 代化 の基 礎 と して拡充 され ねば な らない のは 当然で あ る。 しか しなが ら, この分野 におけ る投 資 は,金額 が大 きいだけに,投 資順位 の 決定 とい うことが非常 な重要性 を持 つ。 プ ロ ジ ェク トの選定 に当 た っては, 直接 的効果 と

(7)

小 林 :イ ン ドネシ ア経 済 の研究方 向 に関 す る一 考察 派 生 的 効果 との両 面 を含 む, ベ ネ フ ィッ ト・ コス ト・アナ リシスが必 要不 可 欠 で あ る。 第二 次 産業 は, 今 度 の

5

カ年 計 画 で は,副 次 的 なあつ か い を受 け てい る。 しか しなが ら, 計 画 が, 工 業 分 野 で の最優 先 分 野 と して, 宿 用機 会 を増 大 させ るため の軽 工 業 ,農 村工 業 の育 成 に重 点をお い てい るのは, 】型諭 的 に考 え て正 しい。す なわ ち, イ ン ドネ シ アの よ う な労 働 人 口が嗣 密 な 国に お い ては, 相対 的 な 意味 で の過 剰労 働 力 を いか に生 産 的 目的 に動 員す るか とい う点 が, 工 業 化 の成否 の鍵 をに ぎ ってい る。 織 物 産業 ,機 械 の部 品組 立 て等 は, 一 度, そ の技術 が 習得 され たな らば,労 賃 の安 さ とい うことが, 国際 競争 にお い て決 定 的 な意味 を持 って くる。 軽工 業 の重 視 は, また 国 内市場 を徐 々に拡 大 して い くとい う観 点か らも重要 な意 味 を持 ってい る。 ま さに, 低

発 国に お い ては, い まだ に 「供給 はそ,紅 自身 の需 要 を創 出す る」 とい う有 名な 「セ イ の法 則」 が あ ては まる状 況 が支 配 的 な ので あ る○ と ころで, -))が 国は, イ ン ドネ シ アの5カ 年 計 画 /7/,重 視 してい る上 記 の諸 分 野 で, 現 在 援助 も し くは提 携 を行 なお うと してい る。 ビ マ ス計 画 には,三 菱 商事 ,それ に つ づ い て三 井 物 産 , 冒綿実 業 な どの商 社 が進 出 してい る し, と うもろ こ しの開発 輸 入 につ い て も, ス ラバ ヤ近 郊 に, わ が 国か らの技 術 指 導 団が い るほ か,南 ス マ トラの ラ ンボ ンに は, と うもろ こ いノ)聞発 輸 入 の ため三 井 物 産 が入 ってい る。 カ リマ ンタ ンの森 林 資源 開発 に は, ほ とん ど の大 手 商社 が興 味 を示 してい る。 イ ンフ ラス トラ クチ ャーの分 野 で は, 日本 工 営 な どが 中 心 とな -〕て, ジ ャワ島, ス マ トラ等 各地 の ダ ム ・か んが い施設 の プ ロジ ェク トを 開始 また は企 画 の段 階 で あ る。合弁 企 業 等 につ い ては, ス ラバ ヤ近 郊 に味 の素 の建 設 が進 行 して い る ほか , 自動車組 立 て工場 等 の企 画 が各所 にあ ち. いず れ も, 一 両 に お い ては イ ン ドネ シ ア の低賃 金 を利 用す る ことに あ り, 他 面 に お い ては, 都 市 近 郊 におけ る雇 用機 会 の創 造 とい う側 面 を も ってい る。 わ が 国企 業 の イ ン ドネ シ ア進 出は, これ か らもます ます 烈 し くな っ てい くで あ ろ うが, こ うした外 国企 業 進 出の イ ン ドネ シ ア経 済 にお よぼす影 響 は, 客 観 的 な尺 度 か ら, そ の是 非 を問 われ ね ば な らな い で あ ろ う。

む す び む す び と して, イ ン ドネ シ ア経 済 の 離

(テイ ク ・オ フ)が近 い将 来 に可能 で あ るか ど うか, またそれ を可能 な ら しめ る条件 は何 で あ るか につ い て若 干 の考 察 を行 な い, イ ン ドネ シ ア経 済 を研 究 す る場 合 の照 準 を定 め る ため の一助 と した い。 第 1に, は た して将来 , イ ン ドネ シ アにお い て, 自発 的 な 「貯 蓄」 の飛躍 的 な士鉦大が期 待 で きるで あ ろ うか 。 アーサ ー ・ル ウ ィスに よれ ば , 「経 済 発 展 の理 論 に おけ る中心 問 題 は, い ままで 国民所 得 の

4-5%

以下 を貯蓄 し,投 資 して いた社 会 が, 国民所 得 のお よそ

1

2-1

5

%

以上 の水 準 で 自発 的 な貯 蓄 のな され る経 済 に転換 して い く過 程 を理 解す る ことで あ るJ とされ てい る. 経験 的 にみ て も, わ が 国 の 明治 以来 か らの急速 な経 済 発 展 の根 底 に は,農 村 に おけ る高 水 準な貯 蓄 が, 地 租 あ るいは郵 便貯金 等 と して, 政 府財政 に くみ 込 まれ ,継 続 的 な資本形 成 の原 動 力に な った と され て い る。 しか しな が ら, ひ るが え って イ ン ドネ シ アの農村 をみ る と き, そ こに は, そ の 口 ぐら しの行動 様 式 しか存 在 してお らず, 貯 蓄 に関 す る観 念 は, わ が 国農 民 とは大 き く 異 な って い る よ うに 見 受 け られ る。 現 在, イ ン ドネ シ アの平 均貯 蓄 率 につ い て, 信 頼 で き るデ - タは入手 で きな いが, 将来 に お い てル ウ ィス の言 うよ うな高 水準 の 自発 的貯 蓄率 が 達 成 され 得 る とは考 え られ な い。表 面 的 な観 察 か ら, 早 急 な判斬は 許 され な いが, イ ン ド

(8)

東 南 ア ジ ア研 究

ネ シアの庶 民 には, ル ウ ィスが経済成 長 の基 本 的要 因 と して重視す る 「経 済 性- の 意 欲

(TheW illtoEconomize)」が欠如 してい る よ うに思 われ てな らない。入手 した所 得 は 早 急 に費 消 され,現在 と将来 との間に おけ る 消費 の時 間選択 が介在す る余地 が少 な い ので は ないか。 も し,将来 に おいて も, イ ン ドネ シア国 内に お い て貯蓄率 の急速 な増大 がみ ら れず, 外 国資本 の借 か ん のみ に依存 して しま うな らば,真 の意味 に おけ る 自生 的経 済発 展 は起 こ り得 ないだ ろ うし,農業 部 門 と工業 部 門が有機 的に関達 し合 いなが ら,低 開発均 衡 を打破す る とい うよ うな状況 は予想 し難 い。 第2に, はた してイ ソ ドネ シ アに お い て, 内生 的産業 資本 の生成 は可能で あ ろ うか。現 在 イ ン ドネ シ アにお い て最大 の産業 部 門は農 業 で あ り, 工業化 は まだほん の入 口に入 った だけであ る。 そ して, そ の工 業化 もイ ン ドネ シ アに 内在す る産業 資本 家 の リー ダー ・シ ッ プに よって行 なわれ てい るものは少 な く, ほ とん どが, 外 国資本 との合弁 の よ うな形 で行 なわれ てい る。 かつ て, シ ュンペ ー ターは, 伝統 的 な商 業 資本 の時代 か ら, 資本 主義経済 - の転換 を技術革新 を武器 と しつつ, 新 しい 産業社 会 に 向か って危 険 負担 をす る企 業 家 の 出現 に よ り象徴 させ たが, はた して現在 のイ ン ドネ シアにおけ る伝 統 的商業 資本 は, 新 し い近代 的産業 資本家 に変形 され得 るであ ろ う か。 も し,そ うした産業 資本 家が 自生 的に現 われ る可能性 が少 ない と した な ら, 誰 が, シ ュンペ ー ターにおけ る企 業家 の役 割 を分担 す るのか。 ど うや ら, これ には二 つ の可 能性 が あ る よ うで あ る。1)政 府 が企 業者機 能 を代替 す る。2)外 国資本家 が, 内在 的産業 資本家 に 代 替す る。1)の場 合, はた して, イ ン ドネ シ アの よ うな未 成熟 な混 合経済 に お い て,政 府 が本 当 の意味 で の企 業 者 の勇気 と合 理性 とを 代替 で きるか ど うか は大 きな疑 問 で あ る。 も し,第 2の道 を選 んだ場合 には, イ ン ドネ シ 8巻 2号 ア経済 の実権 は外 国資本 家 にに ざ られ,表 面 上 は ど うで あれ,実質 的に は, イ ソ ドネ シア は,植 民地 的形 態 を とる こととな り, 頁 の意 味 で の経済 的独 立 を失 うか の よ うに考 え られ る。 以上, イ ン ドネ シアの経 済 的離 陸 の鍵 を に ぎる二 つ の要 因につ い て考 察 したが, どち らを とってみ て も, イ ン ドネ シア経済 の将来 につ い て,楽観 的 な見通 しは で て こない。 最 後 に,将来 のイ ン ドネ シア経済 の研究 方 向につ い て, 私 な りの整理 を して, この稿 を と じよ う。 イ ン ドネ シア経済 を研究す る方 向 と しては,大 別 してつ ぎの三 つ の方 向が考 え られ る。 1) マ ク ロ的 な第二 次 資料 に依存 し, マ クロ 的 な分析 を試 み る もの, 2)地域 (

, 那 ) レベルで の第二 次 資料 を 利 用 し,地域 経済 の分析 を試 み る もの, 3)地域 につ い て, 聞 き と り調査等 に よ り, 第一 次 デ ー タを収 集 し,それ に も とづ い て, 分析 を行 な うもの。 上 の三 つ の方 法 は,各 々長所 と短 所 を もっ てい る。 1)の マ クロ分析 の場 令,現在 イ ン ド ネ シアにお い ては, 信頼 で きる国民所 得統 計 が作成 され ていない。 また も しデ ー タが あ っ た と して も, 時系列分析 に耐 え る よ うな もの で はない。 こ うした限界 を認 識 した上 で, な おかつ, マ クロ面におい て可能 で必要 な研究 は数 多 い。例 えば, 貿 易 の経 済分析 であ る。 貿 易面にお い てほ比較 的 デ ー タは多 いか ら, 輸 出農産物 の需 要予 測,供給 予 測等 ほ, 重要 でかつ また可 能 な研究 で あ る。 イ ン ドネ シ ア 大学, ガチ ャマ ダ大学 等に お い て も輸 出農産 物 の経済分析 を行 な ってい るが,方法 論 的に 改善 の余地 は多い よ うに見受 け られ た。 また 消費構造 の計量 的分析 等 もタイ ム リ-に家計 調査 の年 にぶ つかれば, ク ロス ・セ クシ ョン で,統計 的分析 が可能 で あ る。 また,財政政 栄,金融政 策 の分野で も現 存 の資料 を十 分 に 生 か して, 国際機 関が行 な う分析 結果 以上 の

(9)

小林 :イ ン ドネジ7経済 の研究方 向に関す る一考察 ものを 出す こ とは可 能 で あ ろ う。 特 に, 最 近 に お け るイ ンフ レ収 束 過程 に お け る金 融政 策 は画 期 的 な もので,興 味 あ る経 済 問 題 で あ る。 不十 分 な統 計 デ - タに も とづ い て ユ ニ - クな 計量 分析 を試 み た パ イ オ ニ ア と して, た とえ ば 福 地 崇夫 氏 に よるイ ン ドネ シ ア経 済 の計量 分析 の仕 事 が あ る。 2)の地域 レベ ルに おけ る統 計 デ ー タの利 用 は, 従来 も っ と も 軽 視 され て きた 部 分 で あ る。 これ まで は, 国民経 済 に関 す るマ クロ ・ デ ー タを見 て, それ が だめ な ら,す ぐに フ ィ ール ドに入 って, 聞 き と E)調査 とい うや り方 が 多か った。 しか しなが ら, 現 在, イ ン ドネ シ アは 5カ年 計 画 に入 ってお り, 各 州等 もオ ペ レー シ ョン ・ル ムを設 け て, 基 本 的 デ -タの収 集 につ とめ てい るか ら, この分 野 は, 軽 視 さ るべ きで は な い。調査 を上 手 に行 な え ば , この段階 で 聞 き取 り調査 以上 の収 穫 をあ げ る こと もで きる。 3)の聞 きと り調 査 に もとづ く ミク ロ的分 析 で あ るが, 依 然 と して この方 法 が, エ リア ・ ス タデ ィーの本 道 で あ る ことに異論 は な いで あ ろ う。 特 に , イ ン ドネ シ アの よ うに東 南 ア ジ アのなか で も発展 段階 の低 い 国 の場 合に は, 信 頼 で きる統 計 デ - タが 非常 に少 な いか ら, 好む と好 まざ る とにか か わ らず , 自分 白身 で デ ー タをつ くらなけれ ば な らな い破 目に追 い や られ る。 先 に問 題 を提 起 した農村 に おけ る 貯蓄 率 に して も,伝 統 的商 業 資本 か ら近代 的 産業 資本 - の転 化 に して も, ケ ース ・ス タデ ィーに よって しか, 正確 な実情 は把 握 で きな い よ うに思 われ る。 もち論 , 聞 きと り調 査 は, ほ う大 な エ ネル ギ ーを必 要 とす る し, 時 に は 生 命 の危 険 にす ら見舞 われ る場 合 が あ る。 ま た, それ だけ のエ ネル ギ -浴, 研究 成 果 と

て うま くま とま らず, 徒労 と化す こと も多 い。 現 地 に お け る人 間 関係 , 現 地語 の問 題等 々, どれ一 つ を と り上 げ てみ て も, なみ 大 抵 の も ので は ない。 で あ るか ら, イ ン ドネ シ アに お い て, これ か ら聞 き取 り調 査 に も とづ くケー ス ・ス タデ ィ-が構想 され た場 合 , 計 画 は不 可避 的 に長期 的 な もの とな らざ るを得 ないで あ ろ う。 そ して,計 画 の中心 に は, 現地 語 に たん の うで, 1年 ない し2年 の フ ィール ド経 験 を有 す る若 い研究 者 が数 人 ど うして も必 要 とな って こ よ う。 こ うした フ ィール ド ・エ キ スパ - トは, もち ろん計 画 の進 行過 程 で養 成 す る こと も可能 で あ る。 -197O年6

参照

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