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医療的ケア児の発達支援における合意形成に関する研究―養育者へのインタビューを通じて―

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Academic year: 2021

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(1)公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2018年度(後期) 一般公募「在宅医療研究への助成」完了報告書. 「医療的ケア児の発達支援における合意形成に関する研究 −養育者へのインタビューを通じて−」. 申請者:佐々木 千穂 所属機関:熊本保健科学大学 地域包括連携医療教育研究センター 提出年月日:2020 年 6 月 8 日.

(2) 目次. はじめに. 3. 研究の目的と方法. 4. 結果. 5. 研究1の結果:日本難病医療ネットワーク学会第 7 回学術集会の報告. 6. 研究2の結果:医療的ケア児の発達支援における合意形成に関するワークショップ 17. おわりに. 30. 別資料 「合意形成のショコラティエ -医療的ケア児の発達支援における合意形成に関するワー クショップ報告集- 全 68 ぺージ」. 2.

(3) 【はじめに】 昨今、障害児の重症化が言われている。背景には新生児・周産期医療の高度化により、重 症児の生命維持技術が発展したことも関係し、たんの吸引や経管栄養の必要ないわゆる医 療的ケアが必要な児の数の推計は 1.7 万人にものぼるといわれている (厚生労働省・2017) 。 特に、脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy: SMA)Ⅰ型児など、生後早期の気管切 開等による音声喪失を伴う医療的ケアが必要な重度の肢体不自由児(医療的ケア児)らの在 宅生活の割合も、国が在宅療養を推進する中増加傾向にある。一方で医療的ケア児の在宅を 中心とした療育のモデルはまだ発展途中であり、施設中心型の支援からの移行期にあると 考えられる。このため支援者側にも経験が乏しく十分な支援を受けられないことも多く、養 育者がどのようにコミュニケーション発達支援を進めていったらよいのか思い悩み、「SMA 家族の会」の医療アドバイザーという立場で継続的な支援を行ってきた申請者らのもとに 多くの相談が寄せられるようになった。 コミュニケーション発達支援を行う中で当事者側で問題になるのが、リハビリテーショ ン(リハ)を中心とする支援者らとの関係性である。対象児を支援する専門職の中には、小 児の発達支援の経験がない者や、制度や背景状況について詳しくない者も多い。一方で、養 育者らは日々、家族会が発する情報や、web にアクセスして得られる知識やネットワークを 駆使し、我が子の養育に対して多くの情報を持ち、就学を含む社会参加についてもモチベー ションが高いことも多い。このようなギャップを背景として、児の将来像や療育方針の決定 に関し意見の食い違いが生じる場面に直面してきた。 また、医療的ケア児を養育する親らに対し支援者が、高額な医療費及び医療資源の分配 等に関する諸問題を直接伝えることで、養育者らが非常にナーバスな気持ちを持つ場面も 多く、療育に際しマイナスの影響を与えることが多いと感じていた。就学支援においても同 様であり、養育者が「支援者に頼りたいが、頼れないジレンマ」を抱え、苦しんでいる局面 を目にする機会が多く、また、このことに関連した直接的な相談も増加傾向にあった。 医療的ケア児に限らず、訪問リハの人的資源は限られており、担当者との関係性を壊すこ とで支援を受けられなくなるのではないかという不安から、思っていることや希望を話せ ない養育者も多く、また支援者側も、十分なサポートを行いたいという気持ちと、マンパワ ー不足からくる余裕のなさによりジレンマを抱える場面が散見され、SMA 家族のアドバイザ ーという立場の申請者へ、養育者および支援者双方から相談を持ちかけられることが増え ていることを日々実感してきた。 このような背景のもと、医療的ケア児の発達支援における合意形成に関する諸問題につい ての研究を行うことを思い立った。. 3.

(4) 【研究の目的と方法】 研究1 医療的ケア児の養育者5名に対し、対面によるインタビューを行った。地域性による差や、 対象児の年齢についても比較検討を行う。今回、インタビュー調査に際しては、正確で行き 届いた信用あるデータを得るため、レイニンガー(1995)の「見知らぬ人―友人モデル」を 採用し、申請者がその社会生活状況を把握し、当該研究前から十分な関係性をもっていた支 援対象児の養育者に対し非構造化インタビューを行い質的な検討を行うことにより、より 当事者を中心とした視座から問題点を明らかにすることを目的とした。 本研究に着手する前までに申請者が支援を継続的に行ってきた対象児の中で、全国に居 住する各1名ずつの養育者に対して対面によるインタビューを行った。時間は 1 回 60 分か ら 90 分程度であった。インタビュー内容は、就学を含む社会参加の各場面において経験し た発達支援上の支援者との合意形成上の困難感、医療資源の分配や養育者自身の生き方に 関する言動により心理的負担が生じた経験、あるいは、上記に関して受けた有効なサポート 等についてである。 研究2 2名の医療的ケア児の養育者、および専門職の立場から在宅医療に携わっている医師1 名、医療コミュニケーションの専門職1名、合意形成についての専門家1名を招聘し、研究 1、のインタビュー結果を交えた討議を行う。当事者の講師 2 名(1 名講師、1 名は指定発 言)についてはオンラインによる参加を求めた。. 4.

(5) 【結果】 研究1 インタビューを通じた研究については、学会発表(次ページより)を行った。これまでに 発表したのは、 「日本難病医療ネットワーク学会第 7 回学術集会」 (九州大学 2019 年 11 月) であるが、今後他の学会等でも発表に向けた準備を進めている。 研究2 研究1,2をまとめた冊子については P30 以降の「合意形成のショコラティエ-医療的 ケア児の発達支援の合意形成に関するワークショップ報告集―」 (合意形成のショコラティ エ)をもって報告に替えさせていただく。 研究1の成果報告として行った日本難病医療ネットワーク学会第 7 回学術集会において は、優秀口演賞をいただき、発表内容を依頼原稿として現在投稿中であることを申し添える。 研究1、2の成果物である「合意形成のショコラティエ」についても PDF や冊子媒体として 順次関係各所に公開あるいは配布中である。. 5.

(6) 研究1の結果:日本難病医療ネットワーク学会第 7 回学術集会の報告 (優秀口演賞受賞) (抄録) 医療的ケアを必要とする重症難病児の発達支援に関する合意形成における諸問題について の研究–養育者へのインタビューを通じて− ○佐々木千穂1 1. 熊本保健科学大学. 地域包括連携医療教育研究センター. 【目的】医療的ケアを必要とする重症難病児(難病児)の在宅を中心とした療育のモデルは まだ発展途上であり、十分な支援を受けられないことについて養育者が思い悩んでいる現 状がある。本報告では、インタビューを通じて得られた難病児の養育者らが抱えている、医 療・福祉あるいは教育に関わる支援者らとの関係性の構築についての悩みや諸問題を明ら かにし、効果的な発達支援についての示唆を得ることを目的とする。 【方法】 療育や就学などの社会参加等の各場面において経験した、主に発達支援における支援者ら との合意形成における困難さ等について、レイニンガーの「見知らぬ人–友人モデル」を参 考に、事前に報告者と十分な関係性を持っていた未就学期から学齢期までの脊髄性筋萎縮 症などの難病児の養育者 5 名に対し、個別に非構造化面接を行い、録音した内容から逐語録 を作成したのち質的検討を行った。 【結果】 養育者らは家庭での療育、就学準備、学校生活などの意思決定の各場面において、専門領域 の異なる複数の支援者らの意見を取りまとめる実質的なコーディネーター役を担う必要が あり、痰の吸引などをはじめとする絶え間ない高度な医療的ケアも行いながらの生活の中 で負担感が大きいことが共通していた。また様々な意思決定が当該地域で「初のケース」と なることも多く、説明の機会や啓発についても養育者自身がその役割を担っていることも 多く負担の一因となっていた。さらに義務教育を終えた後の社会参加の場や親なき後の児 の居場所探しに関しても、前例や情報が少ない中で暗中模索している状況も窺えた。 【考察】 まずは養育者らが抱えている日々の困難感を顕在化させることが必要であり、養育者らの 本質的なニーズを明らかにすることを通じて、単なる介護に留まらない発達支援における 専門職の役割や本来の「療育」という用語の意味に沿った支援の方向性を希求することが重 要と考える。. ・次ページより発表スライド資料。 6.

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(17) 【研究2の結果】 :医療的ケア児の発達支援における合意形成に関するワークショップ (開催日時および場所) 日 時:2019 年 8 月 31 日(土)13:00~15:00 会 場:熊本保健科学大学 1 号館 キャンパステラス (主な内容) 講 師:. 大泉 えり 氏(高度医療ケアラー・介護当事者) 岡部 勉 氏(放送大学熊本学習センター所長) 河添 博幸 氏(放送大学熊本学習センター客員准教授) 松本 武敏 氏(まつもと在宅クリニック院長・ちいき楽暮客員教授) 佐々木 千穂. 指定発言: 鈴木浩子(養育者、元教員),大取望美(NPO 法人 ことリ) 参加者人数: 熊本会場 29 名 オンライン参加 14 名 合計 53 名 内 容: 全国に居住する医療的ケア児の養育者 5 名にインタビューを行い、事前にその内容を 講師と共有した上で、当日は各立場から医療的ケア児の発達支援における合意形成上の 諸問題について発言をいただき、指定発言を踏まえた上で総合討議を行った。この問題に 関心のある医療的ケア児の養育者や専門家らもオンライン会議システム(Zoom)を使用し 参加した。また、聴覚に障害のある参加者のために、UD トーク(アプリ)を使用した簡易 的な情報保障も併用した。意思決定支援や、合意形成という用語は一般的に高齢者や終末 期医療等に使用されることが多いが、在宅生活を送る上で日常的に高度医療が必要な児 らに対する発達支援については、日常的に合意形成を通じた問題解決が必要なことが多 く、当事者側も支援者側双方が解決への糸口を見つけるための模索を行っている状況が うかがえ、その状況について一般の方々とも共有する機会となった。. 次ページより講師の当日資料 17.

(18) (大泉えり氏の講演資料). 18.

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(22) (松本武敏氏の講演資料). 22.

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(26) (岡部勉氏の講演資料). 26.

(27) < 参加者の感想 > . 当事者ご家族の思いを聞き、自分が気を使っていたことで合意形成できていなかった ことに気づき、コミュニケーションがとても大切だと思いました。また、 「その人の為 に」ではなく、 「その人にとって」ということを念頭に置いて今後の支援に関わってい きたいと思います。. . 行政のセラピストとして参加したが、立場上なかなかはみ出すことが難しかったり、柔 軟に対応することが難しいが、とても勉強になった。支援を求める側がどういうニーズ があるのか、何を求めているのかをしっかり聞き出すことは気を付けていこうと思っ た。. . 本人や保護者の想いに寄り添ったことが、みんなの力になることがわかりました。つい ついケア側の思いが先になってしまっていることが多いです。学校はいつも上から目 線です。制度・組織に対して不満を言うことより、はみ出す力が新しいことを生み出す 力になることも感じました。. . ケアラーの方々の率直な意見を聞けて、とても考えることがありました。 “ズレ”をな くすべく、コミュニケーションを大切にしていこうと改めて感じました。. . 当事者の方の話や制度についての話はリアルなことを聞くことができ、大変勉強にな った。関わっていく人間としての必要なことを教えていただけて良かった。. . 相談員として響いた言葉で、 「察する能力」 「共感する能力」を高めていければと考えま す。サービスを入れ込むだけではなく、クライアントの言葉を引き出しているのか考え させられました。参加させていただき、スキルが上がった気がいたします。. . 医療的ケア児のお母さんたちの思いや状態を詳しく知ることができました。教育に関 わる者として、深く受け止め、私自身の専門性を高めていかなければと考えました。. . 医療や福祉との共通事項について深めることができた。当事者をパネリストにするの は相当の力を持つ方たちになる。実態と本音はケアの過程で変化していくので、そのあ たりをもっとアピールしてもらえばとも感じた。さらに力を持てるようになった要因 を差し支えない範囲で検討するのもありと感じた。. . 様々な立場のパネリストの話があった中、当事者であるお母さま方の話から、役割の多 さ、責任の大きさ、先々の不安、支援者を求める思い等々を改めて知ることができまし た。自分も家族を介護する立場の一人として思うことの共通点はたくさんありますが、 しかし、療育という視点での問題はまだまだハードルが高いだろうと想像に難しくな い中、最後の女の子自ら「ケーキ屋さんの工場を作りたい」と語ってくれましたが、将 来の夢を持てる環境を作っていらっしゃるお母さま方の努力には感嘆するばかりでし た。. . オンラインシステムで全国各地の方々の様子やお母さま方の日頃の生の声を聞くこと ができ、大変参考になりました。きっと私たちのすぐそばにも同じような環境にある 方々がいらっしゃるのだろうと感じました。そのような方々とのつながりがまだまだ. 27.

(28) の段階にあることも実感しましたが、今回のような機会を増やしていただくことによ って、徐々につながっていけたらと感じます。合意形成は難しい課題です。 . 各地域がネットで繋がって、こういった研修会ができるのは、自宅にいて参加できるの で同じ時間を共有できて良いと思いました。誰のための支援なのか?インフォームド コンセントとは?という点で自分自身の振り返りにもなりました。. . 時間がなく、フロアからの意見を聞く機会がなかったのが残念です。NICU にも支援に 行った経験から、児童発達支援の中に訪問療育を位置付けてほしいと、何度も厚労省に 要望を出したことがあるがとてもハードルが高いです。. (ワークショップ会場の様子). 会場では 3 台のプラズマディスプレイを配置し、事前に数回 Zoom でのオンライン参加用 の事前シミュレーションを行った。聴覚障害を有するオンライン参加者用に、UD トークを 使用した簡易的な情報保障を提供した。また、ディスプレイ前に事前に送付いただいた参加 者の写真と氏名を掲載したパネルボードを配置し、オンライン参加者と熊本会場の参加者 が可能な限り双方向でのやりとりがしやすい環境を心掛けた。. 次ページ、ワークショップのチラシ。 28.

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(30) 【おわりに】 医療的ケアが必要な障害児への支援の充実に向けて(H29 年・厚生労働省)の会議録 や、小児等在宅医療地域コア人材養成講習会(H27 年度・国立研究開発法人. 国立成育医. 療研究センター)の資料においても、養育者らがカンファレンスに参加し意見を述べるこ とや、当事者側のエンパワメントなどに関する記載は少なく、筆者が日々経験することと 照らし合わせても、これからの課題であるという印象をもってきた。 一方で高齢者支援や、終末期医療においてはいわゆる ACP:Advance Care Planning 、あ るいは、いわゆる「人生会議」開催の重要性が謳われている。しかしながら、現時点ではい ずれも国民への浸透はまだまだこれからである。地域包括ケアシステムの構築や地域共生 社会の実現に際し、全ての国民に対して医療や福祉に対する主体的な関わりが求められて いる中で、医療的ケア児の支援も例外ではない。 日々必要なケアに追われ、意見を発する機会の少ない養育者らから今回のように直接意 見を聴取し、今後の医療・福祉・教育の関係者に必要な提言を行なっていくことは重要であ り、地域共生社会の実現には必須のことと考える。 今回学会にて優秀口演賞をいただくなど高く評価いただいたこと、多くの方にご協力い ただいて完成した次ページからの報告集が多くの方の目にふれて、医療的ケア児の発達支 援に追い風が吹くことを強く希望する。 最後になるが、助成いただいた在宅医療助成 勇美記念財団、および本取り組みにご協力 いただいた全ての皆様に感謝申し上げる。. 30.

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参照

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