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リチウムイオン電池による電池電源ソリューション

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Academic year: 2021

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26 2010.12

リチウムイオン電池による

電池電源ソリ

ーシ

Energy Storage Solutions Utilizing Lithium-ion Batteries

2. 電池電源ソリューションに向けた日立グループの総合力 セル電圧約

3.7 V

のリチウムイオン電池を,各種負荷装 置・システムが要求する電圧・電流に持ち上げるためには, 複数のセルを直列・並列化し,組み電池として構成する。 この際に,電池の特性と負荷システムの特性・挙動が設計 上の重要な要素となる。日立グループは,リチウムイオン 電池の材料・電極から,各種セル,電池パック,電池電源 制御システム,負荷となる各種システム・ソリューション の設計・製造を行っており,電池電源ソリューションを最 適に設計するうえで有利な環境を有している(図1参照)。 3. リチウムイオン電池の使いこなし リチウムイオン電池セルを,単純に直並列を重ねて所定 の電圧と電流・電力に持ち上げても,組み電池としてその 性能と寿命は容易には確保できない。負荷となる装置・シ ステムの挙動と,それに伴って生ずる充放電の挙動を把握 し,その目的に応じた設計をすることが,電池システムと 創業

100

周年記念特集シリーズ

電池・電動コンポーネント

feature article

地球環境への配慮,エネルギー利用の効率化の観点から,リチウム イオン電池を民生品・自動車向け以外の産業用に利用するニーズ が高まっている。産業分野でのリチウムイオン電池の活用には,その 「使いこなし」の技術力が必要である。使いこなすにはリチウムイオ ン電池そのものに加え,負荷となる装置・システムの知見が必須と なる。 日立グループは,電池本体はもちろんのこと,発電プラントをはじめ とする数多くの負荷の対象となる製品・システムを幅広く手がけて いる。この技術的背景により、産業用として世界に先がけたシステ ムの実用化を実現させている。 1. はじめに 地球気候変動対策に端を発する

CO

2排出量削減の取り 組み,すなわち化石エネルギー資源の効率的利用や,太陽 光・風力など新エネルギーの導入が進み,電気自動車の普 及の兆しも見られるようになってきた。こうした背景を受 け,電力貯蔵が大きな効果を持つとの期待や,ニーズが高 まってきている。 電力は生産(発電)と消費が同時に行われ,貯蔵が難し く電力搬送線も必要とするなど,その利用には時間的・空 間的な制約が大きい。こうした制約を取り払うのが電池の 大きな機能であり,最近のリチウムイオン電池の出力・容 量面での改善は,これらのニーズへ十分に応えられる水準 へと進化してきている。実用化の際に必要となるのが,リ チウムイオン電池を上記の社会的要請に応える電源ソ リューションとして組み上げていく技術である。 ここでは,電池電源ソリューションの実現に際し,負荷 側のシステム・装置の知見・経験の重要性,リチウムイオ ン電池にかかわる保有関連要素技術,およびこれらが結実 した実例について述べる。

柴田 敏郎

須藤 一徳

金澤 義一

Shibata Toshiro Sudo Kazunori Kanazawa Yoshikazu

負荷システム 電池電源制御 電池電源 トータル ソリュー ション パック セル 材料 図1│電池電源トータルソリューションへ 電池電源制御は電池セルと負荷システムの中間に位置し,その両方の知見 が最適設計には必要である。

(2)

27 featur e ar ticle Vol.92 No.12 908-909 電池・電動コンポーネント しての性能と寿命を大きく左右する。リチウムイオン電池 によるシステムはアナログ的であり,「使いこなし」には 豊富な経験とノウハウが必要である。 産業用に要求される電池電源の出力,電圧,電流などの 規模は,携帯電話などの民生用機器に比べて非常に大きく, 産業用電池電源の開発の難易度はきわめて高い。設計する うえで重要なことは,負荷側のシステムの理解であり,こ れが最適設計の最重要点かつ出発点である。 日立グループは総合電機メーカーとして,さまざまな電 機機器・システム・ソリューションを提供してきており, 機器の開発・設計・製造を通して負荷側システムを熟知し ている。この知見を集約して最適な電池システムを提供し ていくことができる(図2図3参照)。 4. 電池電源ソリューションを支える日立グループの技術 リチウムイオン電池電源の最適設計に負荷システムの知 見を欠くことはできないが,リチウムイオン電池を構成す る要素技術もその製品力に大きな影響を与える。主な要素 技術について以下に述べる。 4.1 材料技術 リチウムイオン電池の電極材料の合成から試作評価ま で,一貫したプロセスによる材料開発を行っている。また 電極界面反応,劣化メカニズムの総合解析基盤を駆使し, 新規開発材料の評価を行うとともに,より高い性能を持つ リチウムイオン電池セルの開発を進めている。 4.2 リチウムイオン電池 出力重視のハイブリッド自動車用から,容量重視のバッ クアップ電源向けフロート用など,産業用途に向けた種々 のリチウムイオン電池を有している(図4参照)。 4.3 リチウムイオン電池制御IC リチウムイオン電池は過電流・過充電・過放電から電池 セルを守る保護回路が必要である。保護回路は制御

IC

Integrated Circuit

)として,単セル用から複数のセルを直 列にしたノート

PC

用,電動工具用などの電池セルの監視

IC

を開発している(図5参照)。 また,多数のセルを直列構成して,ハイブリッド自動車 の電動パワートレインに要求される,高電圧を発生するリ チウムイオン電池パック用の専用

IC

も開発している。 4.4 バッテリコントローラ 産業用電池は,負荷側システム所要の電力,電圧電流を 実現するために複数のセルを直列接続した電池パックを構 成し,さらにその電池パックを直列・並列化してシステム 負荷システム分析 ・ 要件整理 安全性 ・ 法的適合性 ・ 寿命設計 セルおよび電池パックの選定 ・ 設計 電池パックの構成 ・ ・ 直列 ・ 並列構成 ・ ・ 熱設計 など バッテリコントローラ設計 ・ ・ 充放電運用設計 ・ ・ コントローラ設計 ・ ・ ソフトウェア製作 など システムインテグレーション ・ ・ 負荷システムへの実装 ・ ・ システム総合試験 ・ ・ システムの運用 ・ 保守 図3│電池電源エンジニアリングのフロー 一般的なエンジニアリングフローであるが,安全性・法的適合性・寿命設 計は一貫して行われる。 セルL セル2 セル1 セルL BC セル2 セル1 セルL セル2 セル1 セルL 断路機 主回路 電池システム 負荷システム 制御線 制御I/F 保護用 遮断機 負荷 あるいは 電源 制御盤 統合 B C イン バ ー タ BC セル2 セル1 セルL セルL セルL セルL セル2 セル2 セル2 セル2 セル1 セル1 セル1 セル1 BC BC 図2│概念的負荷システムおよび電池システム インバータを介して接続される負荷(あるいは電源)の理解のうえに電池シ ステムと制御スキームが決定される。 注:略語説明 BC(Battery Controller),I/F(Interface) 図4│リチウムイオン電池の例 日立グループの各種産業用途向けリチウムイオン電池の例を示す。 (d)ラミネート形リチウムイオン電池 (電動2輪車・無人搬送車などの用途向け) 日立マクセル株式会社 (e)フロート用角型リチウムイオン電池 新神戸電機株式会社 (a)ハイブリッド自動車用 角形リチウムイオン電池 日立ビークルエナジー株式会社 (b)プラグインハイブリッド用 角形リチウムイオン電池 日立ビークルエナジー株式会社 (c)サイクル用円筒型リチウムイオン電池 (50 Ah,90 Ah) 新神戸電機株式会社

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28 2010.12 とし,負荷となる鉄道車両,ビルシステム,ハイブリッド 自動車機器など,さまざまな製品・システムを手がけてき た知識と経験が,最適な電池電源ソリューションを実現す る技術力の源泉となっている。これらのシステム・製品は 日立グループの各関連部署で分担されているが,研究部門・ 事業部門・営業部門が有機的に連携し,必要な知識・経験 が課題解決に向かって収斂(れん)し,大きなナレッジベー スとなっている(図8参照)。 5. 電池電源ソリューション事例 5.1 ハイブリッド自動車用電池システム 日立グループは,

2004

年に自動車用リチウムイオン電 池の開発製造を行う日立ビークルエナジー株式会社を設立 し,材料からバッテリコントローラまでの一貫した技術開 発とモノづくりを進め,世界に先駆けてハイブリッド自動 車用のリチウムイオン電池を市場に投入した。現在は第二 世代と称される製品が主力である。これは,正極にマンガ ン系を,負極には非晶質炭素を使用したセルを組み電池と したもので,累計販売数は

120

万セル以上に達し,高信頼 性・長寿命を実証している〔図9

a

)参照〕。 日立ビークルエナジー株式会社のリチウムイオン電池 は,自動車だけにとどまらず,ハイブリッド自動車同様の 高信頼性・長寿命を要求され,力行,制動(電力回生)を 短周期で繰り返す点も類似する鉄道システムにも応用され ている。 5.2 ハイブリッド気動車 鉄道車両においてもエネルギーの効率化,高い環境性能 が求められる。非電化区間を走るディーゼルカーでは,制 動エネルギーの回生とエンジンの高効率回転領域運転のた めに,ハイブリッド化が進められた。日立製作所は,東日 本旅客鉄道株式会社の「キハ

E200

形一般気動車用ハイブ を構成する。個々のセルの充放電状況を監視し,バランス を維持する制御が重要である。またそれを負荷側のシステ ムに表示し,システムの適切な運転が可能なように,その 状況を表示する必要もある。これを担うのが,バッテリコ ントローラである(図6図7参照)。 日立グループは,ハイブリッド自動車用の個々の電池 パックを管理するバッテリコントローラを基本に,複数の 直列・並列化された電池パック郡全体を管理する統合バッ テリコントローラに発展させ,種々のアプリケーションに 対応している。 4.5 ナレッジベースとしてのアプリケーション群 原子力・火力・水力・風力などの発電プラントをはじめ 図5│制御IC(Integrated Circuit)の例(株式会社日立超LSIシステムズ製) MD1471 1セル直列用2 in 1〔監視IC+FET(Field Effect Transistor)〕を(a) に,MD1101 3,4セル直列用(重荷PC用電池パック用途)を(b)に示す。 (a) (b) 図6│ハイブリッド自動車電池パック用バッテリコントローラの例 複数のセルを直列接続して構成した電池パック単体を管理するバッテリコ ントローラの例を示す。専用制御ICを用いており,単電池電圧検出・温度 検出・過充電,過放電,過温度検出・バランシング・通信機能を有する。 図7│ハイブリッド自動車電池システム用統合バッテリコントローラの例 電池パックを複数接続して構成した電池パック群を管理する統合バッテリ コントローラの例を示す。総電圧,電流,温度検出・残量,劣化度,許容 電流演算・監視,保護(電圧,電流,温度,漏電)・温度管理・充電器制御・ 履歴管理・通信機能を有する。 図8│電池電源ソリューションを支える日立グループの総合力 日立グループの製品は電力の発生から消費までをカバーしている。電力の 貯蔵はこれらの多くの局面で要求され,リチウムイオン電池を使いこなす 場が存在する。

(4)

29 featur e ar ticle Vol.92 No.12 910-911 電池・電動コンポーネント リッド駆動システム」を受注・納入し,世界初の実用化を 達成した。 リチウムイオン電池は,日立ビークルエナジーの第二世 代電池を搭載している。単に搭載するだけではなく,事前 に気動車に搭載した場合の力行,惰行,制動(回生)の電 池を含むパワートレインの挙動を十分に評価・検証したう えで実装を行っている。鉄道システムの知見と経験がきわ めて重要であることの実例だと言える〔図9

b

)参照〕。 5.3 電力貯蔵鉄道用変電システム 都市近郊の電気鉄道は駅間が短く,力行,制動が頻繁で あるため,従来より制動時の電力回生が行われている。こ の回生運転時にその負荷となる力行列車が周辺に存在しな い場合にも回生を有効にし,き電線電圧を安定化させるこ とを目的として,リチウムイオン電池を適用した蓄電池式 回生電力吸収装置

B-CHOP

を開発し納入した。開発にあ たっては日立製作所が持つ鉄道総合電力シミュレータ 「

New-Jumps

」を活用し,電力貯蔵ができる電力回生の有 効性を事前に十分に評価して最適なシステム設計を行っ た。電気鉄道車両,鉄道運行管理,き電変電所システムな どさまざまな技術を持ち,系として電力供給全体の知見を 有することが,ここでも実用化の欠くことのできない要素 となっている〔図9

c

)参照〕。 5.4 バッテリミニショベル 建設機械においては,工事現場の周囲環境保全の要請か ら,騒音,排気ガスの問題に対する対策が強く求められる 場合がある。また,施主の方針として

CO

2排出削減努力 を具体的に工事請負者に求めることもある。このような ニーズに応え,日立建機株式会社は,エンジンの替わりに アクチュエータの動力を本体内蔵のリチウムイオン電池か ら供給するリチウムイオンバッテリショベルを開発・製品 化している。

2006

年から

7 t

5 t

クラスを納入してきてお り,

2010

年度末より,長時間運転が可能な

3.5 t

クラスを 市場に投入する。バッテリ関連は日立建機と新神戸電機 株式会社が共同開発した(図9

d

)参照)。 6. おわりに ここでは,電池電源ソリューションの実現に際し,負荷 側のシステム・装置の知見・経験の重要性,リチウムイオ ン電池にかかわる保有関連要素技術,およびこれらが結実 した実例について述べた。 今後リチウムイオン電池の電源システムへの応用は,前 述したアプリケーションに限らず,幅広く展開されること が予想される。そのときに重要なことは,リチウムイオン 電池を使いこなす幅広い総合技術力である。日立製作所電 池システム社では,

2010

8

1

日付で「エンジニアリン グ本部」を設置した。リチウムイオン電池を日立グループ の総合力で「使いこなし」,顧客へソリューションとして 提供することをミッションとしている。今後は同本部を中 心に関連部門と連携し,顧客のニーズに合致するさまざま なソリューションの開拓を強化していく。 1) 丸山,外:自動車用リチウムイオン二次電池,日立評論,91,10,772∼775 (2009.10) 2) 徳山,外:環境負荷を低減するハイブリッド駆動システムの実用化,日立評論, 89,11,830∼833(2007.11) 3)高橋,外:電力貯蔵鉄道用変電システム,日立評論,89,11,834∼837(2007.11) 4)日立建機株式会社プレスリリース, http://www.hitachi-kenki.co.jp/news/press/PR20100616142717876.html 参考文献など 柴田敏郎 1975年日立製作所入社,電池システム社事業統括本部所属 現在,産業用電池電源ソリューション事業開発に従事 中小企業診断士 IEEE会員 須藤一徳 1985年日立製作所入社,電池システム社事業統括本部所属 現在,産業用電池電源ソリューション事業開発に従事 金澤義一 2007年日立製作所入社,電池システム社事業統括本部所属 現在,産業用電池電源ソリューション事業開発に従事 執筆者紹介 図9│リチウムイオン電池の産業向け応用事例 日立グループのリチウムイオン電池を産業向け用途に応用した事例を示す。 (a)ハイブリッド自動車用電池パック (48セル直列,定格170 V,5.5 Ah) (b)ハイブリッド自動車用電池パック (4直列,定格680 V)を2並列化, 2セ ッ ト 搭 載 し た ハ イ ブ リ ッ ド 気動車 (d)サイクル用円筒型リチウムイオン 電池搭載のリチウムイオンバッテ リミニショベル (c)ハイブリッド自動車用電池パック (4直列,定格680 V)を必要容量 に合わせて並列化している電力貯 蔵鉄道用変電システム

図 5 │制御 IC ( Integrated Circuit ) の例 (株式会社日立超 LSI システムズ製)

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