1.はじめに 原子力発電プラントの運営においては,世界的な原子力発 電に対する重要性の再認識の中で,さらなる安全性確保と, そのうえでの稼働率向上が大きな課題となっている。 このような背景の下,日立製作所は,中国電力株式会社 島根原子力発電所納め「作業管理システム」や「設備管理シ ステム」の構築・運用で培ったノウハウを生かし,次世代の高 度な保守業務に適応し,保守業務を総合的に支援する「現 場保守支援ソリューション」の検討に着手した。 ここでは,現行の「作業管理システム」の特徴と,「現場保 守支援ソリューション」の概要,および現場保守管理業務の将 来動向について述べる(図1参照)。 2.「作業管理システム」の特徴 1995年度に運用開始した中国電力島根原子力発電所納 め「作業管理システム」は,今では同発電所の定期点検業務
原子力発電所向け
「作業管理システム」
と
現場保守管理システムの将来動向
Work Management System for Nuclear Power Station and Prospects for Maintenance Support System
安田 大輔
Daisuke Yasuda陳 静
Chin Sei湯藤 芳裕
Yoshihiro Yuto藤戸 直喜
Naoki Fujito図1 原子力発電所向け「作業管理システム」におけるCAD画面と操作禁止札
パソコンに表示したP&ID(Piping and Instrumentation Diagram),または単線結線図上で点検機器・隔離範囲を設定し,定期点検の保守業務を支援する。
50 Vol.89 No.02 196-197 2007.02 電力・エネルギー分野の最新開発技術 B C B C MB RMS FD01 MB RMS RMS FD01 B C MB FD01 B C B C F103 11 VGL系 C系 リークオ処理系へ リークオ処理系へ 蒸気加減弁 高圧タービン N31-C001 主蒸気止弁 原子炉より 復水器へ A-4 3 H11-P801 H22-P220 H11-P601 H11-P220 P1 604 PS 601 C P1 004 P1 605 PT 005 PT 001 C F755B F751B F755A F751A 51 SAM 系 F201B F201A 0001 TE 006 RO D004 RO D005 C TE 007 M01 M02 M03 C TE 007 TSP 4.5 mBq/cm3 4.5 mBq/cm3 D003 27.0atg & V a c. 230 ℃ D006 F756A F756B 50A 201 A RT01 F754A F754B F753B F753A LS 003 VGL系 復水器A N61-B001A 0.5atg & Vac. 110℃ 給水加熱器 N21-B010 F104 F003 F004 D002 (F0) (FC) (ND) (FO) (N0) 3 B-4 AB T FD05 AB F102 B C RMS AB F002 H22-P220 H11-P601
27.0atg & Vac. 230℃ 38mBq/cm3 40
点検機器・隔離範囲のビジュアルな設定・状態表示
操作禁止札発行・印刷管理
点検機器・隔離範囲設定
51 の中核を成すものとして欠かせないシステムとなっている。 点検対象機器をコンピュータの画面に表示した配管計装 線図や単線結線図上から指定し,隔離範囲をコンピュータの ガイドに沿って設定する方式は,当時では画期的なものであ り,2005年度には機能・性能は維持したうえで,UNIX※)サー バ2台構成をパソコンサーバ1台の構成に集約し,ランニング コストの削減を図っている。 このシステムの特徴は次のとおりである(図2参照)。 (1)点検対象機器設定
点検対象機器,および,点検内容をCAD(Computer Aided Design)化した配管計装線図(P&ID)や単線結線図上から 設定可能である。 (2)隔離範囲の自動的設定 CAD図面上で点検機器を指定すると,そこを基点として隔 離範囲が配管の接続をたどり,自動的に伝播し,バルブに到 達するとシステムが会話形式でバルブ状態の設定をユーザー に問い合わせ,「開」が設定されると再び隔離範囲伝播が進 み,「閉」が設定されるとそこで伝播は止まる。 最近の原子力発電所運営を取り巻く社会環境は,電力自由化に伴う経営上の観点や世界的な原油価格の 高騰および地球温暖化により,原子力発電に対する再評価と稼働率向上へのニーズが高まってきている。 また,2008年度に予定されている新検査制度導入により,運転情報管理・点検作業情報管理のさらなる高度化が必要になると 予想される。これらの社会情勢に伴い,保守業務はこれまで以上に,効率性・安全性および高度化が求められる。 日立製作所は,中国電力株式会社島根原子力発電所において1995年度に運用開始し,2005年度にシステム更新した 「作業管理システム」による約10年にわたる豊富な実績をベースに,次世代の高度な保守業務に適応した 「現場保守支援ソリューション」構想を検討中である。 Feature Article
※)UNIXは,X/Open Company Limitedが独占的にライセンスしてい る米国ならびに他の国における登録商標である。 点検機器・隔離範囲のビジュアルな設定・状態表示 点検対象機器設定 隔離範囲の自動的設定 干渉機器の自動認識とビジュアル表示 表形式画面−CAD画面との相互連係 操作禁止札発行管理 B01 A01 A01 B01 B01 A01 図2 作業管理システムの機能と特徴 点検・隔離の計画から実績を図面上および表形式画面で管理することができる。
52 Vol.89 No.02 198-199 2007.02 電力・エネルギー分野の最新開発技術 (3)干渉機器の自動認識とビジュアル表示 隔離範囲設定においてバルブ状態が同一期間で異なる状 態に設定された場合,CAD図面上の当該バルブを赤色に点 滅表示し,干渉状態を解除するまで点滅し続ける。 これにより,誤操作を未然に防ぐことができる。 (4)表形式画面―CAD画面との相互連係 点検機器・隔離機器のデータを表形式画面―CAD画面の 相互に連係し,表示可能である。 (5)操作禁止札発行管理 登録した隔離機器のデータは,操作禁止札として自動的 に印刷し,管理できる。 3.「現場保守支援ソリューション」 3.1「現場保守支援ソリューション」の概要 日立製作所は,「作業管理システム」の実績を基にして, 保守業務全体を管理し,安全性・作業効率向上を目的とした 「現場保守支援ソリューション」の検討に着手した。 そのポイントは次のとおりである。 (1)ソリューションの基盤 人的管理,設備保全管理,運転データ管理の各業務デー タを有機的に結び付け,また,事務系システムや外部システ ムとのインタフェースを司(つかさど)る総合的な管理体系とし て,現場保守支援ソリューションの確立を図る。 (2)人的管理 管理区域における作業者の動態管理,および線量管理シ ステムを核とした作業者管理DB(Database)の一元化を図る。 (3)設備保全管理 現場保守業務において,作業管理システムを核として,要 領書・報告書データおよび点検記録データを総合的に管理し, 設備DB・保全管理DBの一元化を図る。 主な特長としては,定期点検報告書の一部として作成す る取り替え部品一覧情報により,設備データベースの更新を 自動的に行うものである。これにより設備データベースのメンテ ナンス工数が大幅に削減でき,また,メンテナンスミスも防げる こととなる。 (4)運転データ管理 プロセスコンピュータからの運転データ,センサネットからの 状態監視データ,モニタリングポストからの環境データを収集 し,総合的なDBの構築を図る(図3参照)。 注 : 現場系システムDB 作業者DB 設備DB 保全管理DB 運転/環境データDB
現場保守支援ソリューション
設備保全管理 人的管理 運転データ管理 事務系システムDB 経理・調達DB 設備図書DB 教育管理DB 設備管理システム 作業管理システム データ収集 システム 動態・線量管理 システム 外部情報公開 (官公庁 など) モニタリング ポスト プロセス 計算機 センサネット 点検記録 動態管理 RFID 管理区域入出退 点検業務 要領書・報告書 編集管理業務 注:略語説明 DB(Database),RFID(Radio-Frequency Identification) 図3 現場保守支援ソリューションの概要 人的管理業務,設備保全管理業務,運転データ管理業務を有機的に結び付け,一元管理する。53 3.2現場保守管理業務の将来動向 原子力発電所における検査制度の改訂が2008年度に予 定されている。 改訂の詳細内容については,法案が未確定のため現段階 では不明であるが,昨今の社会情勢からするとプラント運転 情報や定期点検情報について,さらに高度,かつきめ細かな 管理が必要になると予想される。 人的管理業務・設備保全管理業務・運転データ管理業務 を一元管理する「現場保守支援ソリューション」は,次世代の 高度な保守業務に柔軟に適応可能と考える。 現在検討中であるこの「現場保守支援ソリューション」を今 後,各電力会社へ提案していく所存である。 4.おわりに ここでは,中国電力株式会社島根原子力発電所納め「作 業管理システム」の特徴,および今後,各電力会社へ提案しよ うとする「現場保守支援ソリューション」の構想について述べた。 日立製作所は,将来にわたり改良を加え,いっそうの作業 効率・使い勝手向上をめざし,次世代の原子力プラント保守 業務管理技術の確立を図っていく考えである。 終わりに,作業管理システムを開発するにあたってご指導 いただいた中国電力株式会社島根原子力発電所をはじめと する関係各位に,深く感謝の意を表する次第である。 1)森田,外:高度情報化を目指した業務支援システム,日立評論,81,2, 155∼160(1999.2) 参考文献 Feature Article 執筆者紹介 安田 大輔 1985年日立製作所入社,情報・通信グループ 情報制御 システム事業部 原子力制御システム設計部 所属 現在,原子力発電所の情報システム開発に従事 湯藤 芳裕 1982年日立製作所入社,情報・通信グループ 情報制御 システム事業部 原子力制御システム設計部 所属 現在,原子力発電所の監視・制御用計算機システムの設 計に従事 陳 静 2005年日立製作所入社,情報・通信グループ 情報制御 システム事業部 原子力制御システム設計部 所属 現在,原子力発電所の情報システム開発に従事 藤戸 直喜 1987年日立中国ソフトウェア株式会社(現 株式会社日立 中国ソリューションズ)入社,社会事業部 電力ソリューショ ン部 所属 現在,原子力発電所の情報システム開発に従事