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子どもの言語獲得と人間形成に関する研究-S.ピンカーの言語本能論を手がかりにして-

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Academic year: 2021

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(1)             子どもの言語獲得と人間形成に関する研究             一S.ピンカーの言語本能論を手がかりにして一.                              専攻  学校教育学                              コース  教育コミュニケーション.                              学籍番号 M08004J                              氏 名  石井 正幸 1.問題の所在と研究の目的          いき、言語活動を行い始める幼児期に注目する。  新学習指導要領(平成20年度版)では、「言語    そして、子どもにとって言語の獲得が、その後 活動の充実」という表記が増えており、学校教育    の入間形成にどのような意味を与えるのかを考. 全体で言語能力の向上に取り組む大きな目標と   察する。言語獲得と人間形成について考察する されている。r言語活動の充実」という表記が増    にあたり、心理学者S.ピンカー(Pinker,S.,1954・). えた理由について、間中(2007)は、次のように   の言語本能論に注目して、子どもの言語獲得か 述べている。21世紀社会では、環境問題を初め    ら人間形成についての新たなプロセスを探って としたさまざまな問題が山積みになっているこ   いく。 とから、「論理的な思考や感性を働かせながら問. 題解決の方法を探り、自分の考えを自分の言葉    2.論文構成 で表現する能力が大切である1」という。さらに    序 章 間中(2007)は・自己実現や社会参加のための重    第一章 現代言語学におけるピンカーの位置 要な道具として、言語を活用できる能力を獲得                           第二章 ピンカーの言語本能論 することが不可欠であるとしている。心理学者                           第三章 ピンカーの教育論 のヴィゴツキー(1962)も、「言語はコミュニケー.                           終章 ピンカーの言語本能論の教育学的意義 ション機能であり、社会的コミュニケーション の手段である2」と述べている。このことからも 言語は、人間と社会とを結ぶための大切な機能    3・論文概要. であるといえる。                第一章では・ピンカーの言語本能論の基礎と  子どもが言語活動を行う場面は、学校の場だ   なる現代言語学の歴史を見ていく。現代言語学 けでなく、生活全般で見ることができる。子ど   の創始者であるソシュールが・歴史言語学から もは、さまざまな場面で言語を用いてコミュニ   身近な日常の言語現象に着目したことから現代 ケーションを行っている。それは、就学前の幼    言語学が始まったソシュールの言語学では・ 児であっても同様である。幼児は、就学以前か   分析する対象を細かく決めていき・特に重点を. ら既に言語を用いて親やきょうだいなどさまざ   置いた対象は単語であっれソシュールは・単 まな社会との関わりを自然に行っていると考え   語から言語の本質を見出そうとしていたしか られる。                   し・ソシュールの理論に不十分さを感じていた  そこで本研究では、子どもが言語を獲得して   チョムスキーによって・語順や文の構造を明ら                          かにするr生成文法」が誕生した。チョムスキ 1田中博之r言語活動の充実で育まれる21世紀型学力_言葉   一は・これまで自然科学とは縁遠い感じのあつ の力の育成を学校現場でどう図っていくカ』」・BeneSSe教育   た言語学に、物理学や数学のような自然科学分 開発センター編『BERD』Vo1,12.2007年、8頁。. 2L.ヴィゴッキー(柴田義松訳)r思考と言語上』、明治図書   野の方法論を導入した研究方法により、仮説を 出版、1962年、23頁。. 14一.

(2) 立てて検証する方法を確立させた。そして、生. 現代社会において、相対主義とは違った視点か. 成文法から人間には生得的に備わっている普遍. ら子どもを見るようにしている。さらに子ども. 文法の存在についても仮説をたてた。普遍文法. が成長するなかで重要とされる環境は、子ども. があるからこそ、人間の言語獲得が可能である. が一人の人間として、大.人や社会から認められ、. とチョムスキーは示したのであった。チョムス. 信頼される、良好な人間関係のある集団社会が. キー理論の流れを受けてピンカーは、言語本能. 重要だとした。そのような集団社会で育つこと. 論を展開していった。その背景には、チョムス. が、子どもにとって望ましいとされた。さらに、. キー理論だけでなく、時代背景も大きく影響し. 集団社会のなかで子どもは、ことばによるコミ. ていた。ピンカーが研究を行い始めた1970・. ュニケーションを活発に行い、他者を理解する. 80年代は、「人間の本性」や「言語の獲得」などが. ために、一緒に思考するコミュニケーションを. アメリカで注目された時代であった。その時代. 行うことで、より良い人間形成を目指すことが. にピンカーは、言語学の研究へと向かっていき、. できると示した。. 相対主義を批判する形で言語本能諭の完成を目 指し研究していく。. 4.結語.  第二章では、ピンカーの言語本能論について.  ピンカーの言語本能論は、言語の獲得から人. 説明する。そのなかでもピンカーは特に、言語. 問の心の本質を表してきた。心の本質とは、普. の誕生と現在までの変化を脳のどこかに存在す. 遍的で共通した響き合う心の存在であり、ピン. る言語を司る部位の探索について整理して述べ. カーの言語本能論とピンカーの考える教育論と. てきた。しかし、ピンカーの言語本能論に対し. をまとめることで教育学的意義を探ってきた。. て批判的なトマセロの意見を紹介した。トマセ.  ピンカーにとって教育とは、人間の直観的思. ロによると言語は本能ではなく、経験により言. 考にある欠点を補うことであった。響き合う心. 語獲得が成されるとピンカーとは、対立的な関. を持つ存在であると人間それぞれが認識するこ. 係にあるが、言語は生得的な部分と経験的な部. と、大人や社会が子どもの存在を人間関係のパ. 分を有しながら獲得していくものとして、ピン. ートナーであると改めて認識すること、この2. カー、トマセロ両者共に、言語の生得的・経験. 点を合わせて行うことができれば、子どもの人. 的な部分を有すると理解することが今後の言語. 間形成によい影響を与えることができるであろ. 研究には必要であると提言している。さらに言. う。. 語を獲得してく子どもが、親の発話を真似るの ではなく、独自に新たな文章をつくり、親と同 一の文章を話さないとして、学習メカニズムに. 主任指導教員 杉尾 宏. 組み込まれた普遍文法のおかげであるとされた。. 指導教員大関達也. さらに学習メ.カニズムによって、人間はさまざ まな文化環境に適応できると述べた。.  第三章では、ピンカーの教育論を整理して述 べた。ピンカーにとって教育とは、人聞の直観 的思考の欠点を補うことであった。それは、人 間に標準装備された心的モジュールが教育を成 功させるとした。それは、相対主義が浸透した. 15一.

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