1価-1価電解質水溶液におけるイオンの部分モル容
積の決定法
著者
平川 廣満
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
26
ページ
155-162
別言語のタイトル
Determination of ionic partial molar volume
for 1-1 electrolytes
1価-1価電解質水溶液におけるイオンの部分モル容
積の決定法
著者
平川 廣満
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
26
ページ
155-162
別言語のタイトル
Determination of ionic partial molar volume
for 1-1 electrolytes
l価−1価電解質水溶液におけるイオンの
部分モル容積の決定法
平 川 庚 満
(受理昭和59年5月31日)
DETERMINATIONOFIONICPARTIALMOLARVOLUME
FOR1−1ELECTROLYTES HiromitsuHIRAKAWAA
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1 . 緒 言電解質を水に溶かすと電解質は電離して正負のイオ
ンとなる。この場合これらのイオンはその近傍に強い
電場を作るのでイオンとそ水分子間に相互作用が働く。
この作用はイオンに近い程強くなりイオン周辺の水の
液体構造に大きな影響を及ぼす。イオン周辺にある水
分子の状態がどのような構造になるかモデル' 2'が示
され,研究がなされているが明確な結論は得られていない。しかしイオン間の相互作用を考慮する必要のな
い無限希釈溶液で電解質の部分モル容積を明らかにで
きればイオンと水分子間の相互作用を知る一つの手が
かりを与えてくれると思われる。無限希釈溶液での電
解質の部分モル容積はいくつか報告されているが3-5)これらはいずれも一つの仮定に基づきイオンの部分モ
ル容積を求めたもので確定したものではない。また水
素イオンの部分モル容積についても正確な値は明らか
でない。 ところで電解質水溶液を加速度場におくと溶液中に微小な沈降電圧が発生する6'・沈降電圧は水溶液中に
電離するイオンの部分モル容積に関係するので,沈降
電圧を高い精度で測定できれば測定結果からイオンの部分モル容積を求めることが可能となる。しかし沈降
電圧を測定し,測定結果から各イオンの部分モル溶液を求めた報告はあまり見当らない7)。これは沈降電圧
が微小なためこの電圧検出し,高い精度で測定するに
はかなりの困難を伴っていたためである。しかも報告された論文71によると沈降電圧は電解質水溶液の濃度
を1Nから0.001Nの無限希釈溶液まで変化させても156 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 6 号 ( 1 9 8 4 )
ず正確趣測定が困難であった。これは電解質水溶液を
振動させる加振器の加振力が1k9重と小さいことと,
検出増幅器の入力端子でS/Nを最良にする条件8)に
適合するよう測定容器の形状寸法を設計していなかっ
たことに原因があった。それ故,従来使用していた沈
降電圧発生装置8,91の加振器の能力を,0倍に強力にし
た加振器を使用して発生装置の改良を試みた。この装
置を図1に示す○図1に示すように,加振力10kg
濃度による変化はみられず,もちろん沈降電圧の収束も観測されていない。このことは後述するように沈降
電圧が正確に測定されていないことを意味している。この沈降電圧の測定値からイオンの部分モル容積を計
算する場合,LiClの沈降電圧は発生しないことと, LiClの濃度変化による溶液の体積変化からCl‐の部 分モル容積が求められている。しかも塩化物イオン Cl‐の部分モル容積Vc1-1を基準として沈降電圧の測 定値から他のイオンの部分モル容積を求める場合,沈 降電圧の収束値ではなく沈降電圧は0.1Nの値を採用 している。この場合沈降電圧は0.1Nの測定値を採用 するのが妥当かどうか疑問が残る。また上記で述べた LiClの沈降電圧が0になるという根拠はない。後述 するように,著者の測定ではかなり大きな沈降電圧が 観測された。 著者は電解質水溶液を動電型加振器(以降加振器と いう)により振動させ,溶液中に発生する沈降電圧を 安定して検出し測定出来る沈降電圧測定装置を製作し た。この装置を使用することにより今まで測定が困難 であった式量の小さい電解質や測定されていなかった 電解質について測定を行い満足すべき結果を得た。こ れらの測定結果から沈降電圧は濃度の高い状態から無 限希釈溶液に近い状態まで変化させたとき,一定値に 収束(以降この収束値を沈降電圧という)することお よび沈降電圧は各式量に対して直線上を変化することを明らかにした8)。
本研究ではイオンの部分モル容積を求める場合,特 定イオンの部分モル容積を一つの仮定から求める従来 の方法によらず,沈降電圧が各式量に対して直線上を 変化する事実に着目し,この直線と直線の傾きからイ オンの部分モル容積が求められることを理論的に明ら かにしている。この理論に基づき直線と直線の傾きか ら9種類のイオンの部分モル容積を求めた。また水 素イオンH+,アンモニウムイオンNH4、の部分モル 容積は塩化物イオンCl‐の部分モル容積の値を基準 にして沈降電圧の測定値から求めた。こけらの値を今 まで報告された値と比較し検討を加え,得られた値が 信頼できることが確かめられたので報告する。1
:
、
了
2.沈降電圧発生装置の改良 電解質水溶液を振動させたとき溶液中に発生する沈 降電圧は式量の小さい電解質では発生沈降電圧がほぼ 雑音電圧に等しいか,これより小さな電圧しか発生せ 41llllllllloOo−llllllllllv 1.土台(Lアングル(鉄)) 2.真ちゅう板7.可動シールド(円筒真ちゅう板) 3 . 加 振 器 8 . 白 金 電 極 4.アクリル棒9.同軸ケーブル 5.固定シールド(円筒真ちゅう板) 6.測定容器 図 1 沈 降 電 圧 発 生 装 置 重 の 能 力 を も つ 加 振 器 3 で 電 解 質 水 溶 液 を 注 入 し た 測定容器6を振動させる。このとき溶液中に発生す る沈降電圧を白金電極8(間隔20mm)により検出 し,この電圧を同軸ケーブル9を通して検出回路に 導いている。この場合,測定容器6(の9mm×38 m m × 厚 み 2 m m ) の シ ー ル ド を 可 動 シ ー ル ド 7 (d21mm×80mm厚み0.2mmの円筒真ちゅう板) と固定シールド5(‘40mm×110mm厚み0.4mm の 円 筒 真 ち ゅ う 板 ) に 分 離 し て 可 動 部 分 の 軽 量 化 を は かっている。この結果,測定容器の振動振幅を従来の 0.56mm(p-p)から1.87mm(p-p)へ向上させるこ とができた。また測定容器についてもS/Nを最良に する条件にできるだけ適合するよう容器を改良した。 この装置を使用することにより式量の小さい電解質水 溶液を振動させたとき溶解中に発生する沈降電圧を大 きくして高い精度(±0.07W)の測定が可能となっ た。 2157 ⑥ られた。またNH4ClとHClの沈降電圧は測定され ていなかった。このため改良した沈降電圧発生装置を
使用し,上記に述べた7種類の電解質について再度
測定を行い,HCl,NH4Clについても測定を行った。 これらの測定結果をすでに報告している結果と合せて 表1に示す。 この場合問題になるのは無限希釈溶液での沈降電圧の測定値だから表1には濃度を0.05Nから無限希釈
溶液に近い状態まで変化させたときの沈降電圧の値し か示していない。これらの測定で濃度の比較的高いと ころではイオン間の相互作用により発生電圧は小さく なったと考えられるが,濃度が低くなるに従い沈降電 圧は次第に大きくなり一定値に収束することがわかる。 表1より各電解質水溶液の沈降電圧の収束値を求め, 各式量に対する沈降電圧の関係を示すと図3のよう になる。図3より,陰イオンを固定し,陽イオンと の組合せをかえた場合の各式量に対する電解質水溶液 の沈降電圧変化は直線1∼4になる。すなわち,直線 1は陰イオンF‐を固定し,陽イオンとの組合せを Li+からNa+,K+およびRb+へとかえたときの各 式量に対する沈降電圧の変化をあらわしている。同様 3.装置の構成沈降電圧発生装置と検出回路の構成を図2に示す。
図2に示すように測定装置は交流電位差計法を採用した。可変周波発振器の出力を駆動増幅器に導き,そ
の出力により沈降電圧発生装置の加振器を駆動し,電
解質水溶液を注入した測定容器を振動(100Hz,加
速度26.5×103cm/sec2)させ,正弦波の沈降電圧を 発生させる。発生した電圧を白金電極により検出して 変成器の一次側a端子に接続する。別に可変周波発 振器の出力を移相器と減衰器により調整し,標準電圧 として変成器の一次側b端子に加える。変成器の二 次側にロックインアンプを接続し,出力をシンクロス コープおよび電子電圧計により監視している。 移相器と減衰器を調整しロックインアンプの出力指 示が最小で,シンクロスコープ管面上に100Hzの信 号が現われないことが確認できれば標準電圧は沈降電 圧に等しくなったと考えられるので,このとき減衰器 入力の電圧計指示値と減衰量から沈降電圧が求められ る。 変成器 前節で述べた測定要領に従い室温25℃における22 種類の1価−1価電解質水溶液について沈降電圧を 測定した。このうち20種類の電解質水溶液の沈降電圧についてはすでに報告している8)。しかし式量の小
さい電解質水溶液NaF,KELiClおよびNaClに ついては発生電圧が微小なため正確な測定が行われたとは言えず,予想される直線8)から得られる値とはか
なりのずれを示していた。式量の大きな電解質水溶液 ではRbBr,NalおよびLiIに直線からのずれがみ a「 一一−−−1 駆動 増幅器 沈降電圧 発生装置 、11〃 FL鈴
器 ’ 1 発 生 装 置 可変周波 発振器 周波 畠器 rl L −ノ bL−− 1 597〔〕 /)W 移相器 減衰器 3Q 図 2 沈 降 電 圧 測 定 構 成 図 4.実験結果および考察 4.122種類の1価−1価電解質水溶液の沈降 電圧測定 平川:1価−1価電解質水溶液におけるイオンの部分モル容積の決定法 2 1.0言ご出腰逆駕
r1 LJ 式量(9) 1価−1価電解質水溶液の式量に対│する 沈降電圧の関係 図3 1.0 0 ● 300 2.0 0@
0 100 200 I l l l l l l l I I I I I F 1 I 1 − ー ー ー 一 一 一 ー3×10×3 158 2×10-3
表1100Hz,25℃での電解質水溶液の濃度による沈降電圧W4V)変化
1.5×10−3 濃 度 ( N ) 電 解 質 5×10−2 −0.18 0.08 0.10 1.20 1.98 0.30 −0.21 −0.15 0.07 0.26 0.95 2.5×10−2 10-2 5×10−3鹿児島大学工学部研究報告第26号(1984)
1.85 10−338045530792585630083152012022202191833094024
m●●■●●●●■●●●●●●●●●●●●●
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58380962725089958326582012122203101833095024
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一一一
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源狐F研那q肥凡醜qⅢ測曲曲町肥出Ⅱ副IbS
lCl
ll
LNKRCHLN・NKRCLNKRCLNKRC
Li+をそれぞれ固定し,陰イオンとの組合せをF−, Cl−,Br一およびI‐へとかえたときの各式量に対す る 沈 降 電 圧 の 変 化 を あ ら わ し て い る 。 図 3 に 示 す よ うに,各々の直線は互に平行で傾きは一定であること が わ か る 。 直 線 1 ∼ 4 の 傾 き は 理 論 検 討 の 結 果 ほ ぼ0.52αd/107Fに等しく8),直線5∼9の傾きはほぼ
0.48αd/107Fになることを明らかにした8)。
512862359183298491
●●●●●●●●●
100001100
−一一一一一一
0.39 に,Br‐および1−をそれぞれ固定したときの各式量 に 対 す る 沈 降 電 圧 の 変 化 は 直 線 3 お よ び 4 の よ う に なる。またCl‐を固定し,陽イオンとの組合せを Cl−,H+,Li+,NH4+,Na+,K+,Rb+およびCs+ へ と か え た と き の 沈 降 電 圧 変 化 は 直 線 2 の よ う に な る。 つぎに陽イオンを固定し,陰イオンとの組合せをか えた場合の各式量に対する電解質水溶液の沈降電圧変 化は直線5∼9で示される。直線5はCs+,直線6 はRb十,直線7はK+,直線8はNa+,直線9は平川:1価−1価電解質水溶液におけるイオンの部分モル容積の決定法 159 4 . 2 無 限 希 釈 溶 液 に お け る ’ 1 種 類 の イ オ ン の 部分モル容積 一般に正負2種類のイオンから成るl価−1価電
解質水溶液の沈降係数Eは次式で表わされる81。
E=FL祭器-'1A尭器麺'1]赤仙
このとき沈降電圧vは V = E a d ( 2 )と
な
る
9
)
。
た だ し A,:陽イオンの当量導電率 (cm20hm9eq') 4 − : 陰 イ オ ン の 〃 m−:陽イオンの,モルの質量(9) 771−:陰イオンの〃V‐:陽イオンの部分モル容積(cm3/mCl)
V‐:陰イオンの部分モル容積(cm3/mCl)
,。:溶液の密度(g/mCl) α:加速度(CWSeC2) 。:測定容器の白金電極間距離(c、) F : フ ァ ラ デ ー の 電 気 化 学 当 量 (96500coulmb) (,),(2)式より各イオンの当量導電率A±と白金電極間 距離。および溶液に加えられる加速度αの値は明ら かだから,沈降電圧vを正確に測定できればイオン の部分モル容積が求められる。このためには正負イオ ンのどちらか一方のイオンの部分モル容積があらかじ め求められていることが条件となる。4.’で各式量 に対する電解質水溶液の沈降電圧変化は直線になるこ とを述べたが,これらの直線からイオンの部分モル容 積 が 求 め ら れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 図 3 に 示 す 直線,∼4から陰イオンの部分モル容積すなわち直線 ,よりF−,直線2よりCl ,直線3よりBr−およ び直線4より’‐イオンの部分モル容積をそれぞれ求 め る こ と が で き る 。 こ こ で は , 例 と し て 測 定 試 料 の 多い直線2から塩化物イオンCl‐の部分モル容積を 求める要領を示す。 陰イオンcl−を固定したとき,塩化物の各式量に 対する電解質水溶液の沈降電圧の変化は図3の直線2 になることから沈降電圧vは次式で示される。 V = α 、 + + b ( 3 ) た だ しα
=
0
.
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b
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)
α
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(4) A++A‐107F (3)式において陽イオンの、‐を無限に小さくした場 合,沈降電圧Vの収束値V・は V・=limV=b 沈 十 → O (5) となる。 (5)式のV・は図3の直線2からmcl−が約35.5 9(=Cl‐の原子量)に対する沈降電圧(図3の@ 点)として求められる。求めたVoは V・=b=-0,46/αV (6) である。 一方,陽イオンを固定し陰イオンとの組合せをかえた とき,各式量に対する沈降電圧変化は図3の直線5∼ 9となり,直線の傾きはβ=0伽川F毒人生川蒜’71
であることが明らかだから(4),(6),(7)式より塩化物イ オンの部分モル容積を求めると−
0
.
4
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×
1
0
-
6
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−
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m
c
l−
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c
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α
d
A++4−107F 0.46×10-6×9.65×10'1=0.48(、Cl −VCl )αd ここでαd=26.5×103×2=0.53×105を代入して 0.48Vc,‐=9.78 故にVcl−=20.4(cm3/mCl) となる。 ただし,電解質水溶液の濃度は無限希釈溶液だから(4) 式のβは’として計算している。 同様にして,図3の直線1,3および4よりそれぞ れフッ化物イオンF−,臭化物イオンBr‐およびヨ ウ化物イオン1−の部分モル容積Vj(cm3/mCl)を求 め る と VF-=3.5,VBr =27.6,V1-=48.4 となる。 ま た 図 3 の 直 線 5 ∼ 9 か ら 陽 イ オ ン の 部 分 モ ル 容 積 すなわち直線5よりCs+,直線6よりRb+,直線7 よりK+,直線8よりNa+および直線9よりLi+の 部分モル容積がそれぞれ求められる。上記で陰イオン の 部 分 モ ル 容 積 を 求 め る 場 合 具 体 的 に ’ つ の 直 線 (塩化物直線)を選び,この直線から塩化物イオン Cl‐の部分モル容積が得られることを明らかにした。伽一F。町r
160ⅣⅢ肘
表2表1および図3より得られたイオンの部分モル容積,▽j(Cm3/mOl)
陽イオンの部分モル容積を求める場合も同じように,直線5∼9のうち直線7を選びこの直線からカリウ
ムイオンK+の部分モル容積が得られることを次に示
す。 陽イオンK+を固定した場合,各式量に対する電解 質溶液の沈降電圧変化は直線になることから沈降電圧 V は V = − β m 一 十 c ( 9 ) となる。但しβ=0.48αd/107F, A_(mK+−VK+β)αCI C = ( ' 0 1 A十十A‐107F (9)式において陰イオンのm−を無限に小さくした場 合沈降電圧の収束値V・は,V・=limV=C加一→0 (11) (11)式のV・は図3の直線7から?7zK+が399(K+の原 子量)に対する沈降電圧(図3の⑥点)として求め られる。求めたV・は V 。 = c = 1 . 伽 V ( ' 2 ) となる。(10,(12)式から1
.
0
×
,
0
-
6
=
ん
(
m
K
+
−
V
K
+
β
)
α
d
側 A十十A‐107F ただし,無限希釈溶液だからβ=’として計算する。 (13)式からカリウムイオンの部分モル容積VK+を求め ると 9.65×105=0.52(39-VK+)αd 0.52VK+=2.1 故にVK十=4.0(Cm3/mOl) となる。 同様の方法により,図3の直線5,6,8および9 より求めた各々の部分モル容積Vj(cm3/mCl)の値は それぞれ次のようになる。 Vcs+=20.3,VRb+=11.2,VNa+=−3.5, VLi+=−7.0 つぎに(8)式から塩化物イオンの部分モル容積が明らか となったので,表1に示すHClとNH‘Clの沈降電圧の収束値および(1),(2)式より無限希釈溶液での水素
イオンH+とアンモニウムイオンNH‘+の部分モル容
積を塩化物イオンの部分モル容積Vcl−=20.4を基準
にして求めた。得られたH+とNH4+の部分モル容積 Vj(cm3/mCl)は次のようになる。 VH+=−3.2,VNH4+=20.7 以上得られた’1種類のイオンの部分モル容積を表2 に示す。皿附ⅣⅢ
vj −3.2 20.7 20.3VjlllonlVjlllon
鹿児島大学工学部研究報告第26号(1984)
3.5 20.4 27.6 48.8 −7.0 −3.5 4.0 11.2 表2に示す11種類のイオンの部分モル容積をすで に報告されている値と比較したものを表3に示して いる。 表3よりRb+,Cs+,Br+,I‐およびCl‐という比較的原子量の大きいイオンの部分モル容積は著者と
他の研究者3.4.7)との間に違いはみられない。しかし原
子量の小さいLi十,NH4+,Na+,K+の部分モル容積 の値にはその大きさにばらつきがみられる。NH4+とNa+については著者の部分モル容積はFajans31らの
測定値に近く,Li+とK+の値は逆にR・Zana7)ら
の測定値にほぼ等しい。これは著者と他の研究者との 間に部分モル容積を求める方法のちがいや測定精度に原因があると思われる。R・Zana7)らは超音波振動
方式により電解質水溶液の沈降電圧を測定し,この結 果からイオンの部分モル容積を求めている。この方法 は測定精度が±0.3Wcm−lsecと低く,小さな原 子量をもつ電解質水溶液では発生電圧が小さいため正 確な測定が行えなかったことが予想される。その結果 小さな原子量をもつイオンの部分モル容積の代きさに違いが生じる原因になったと思われる。しかもR・
Zanaらによる測定では濃度による沈降電圧の収束が みられないので,電解質水溶液の濃度が0.1Nのとき 発生する電圧を沈降電圧として各イオンの部分モル容積が求められている。このことも著者とR・Zanaら
との間に部分モル容積の大きさに違いが生ずる結果になっている。またFajansらはNH‘+とCl‐のイ
オンの部分モル容積が等しいと仮定して他のイオンの部分モル容積を求め,Mukerjeeは水素イオンH+
の結晶半径から水素イオンの部分モル容積を経験的に
計算し,この値を基準にして他のイオンの部分モル容
積を求めている。これらの方法はいずれも一つの仮定
に基ずきイオンの部分モル容積が得られたもので,こ れらの仮定が正当かどうか疑問が残る。しかし著者は高い精度で沈降電圧を測定する方法を確立し,測定結
果から各式量に対する電解質水溶液の沈降電圧変化がM4) −4.5 −5.2 161
20750235464
●B●●●●●●●●●
37034103078
’−2’12224
直線になることを明らかにし,理論検討の結果このことが正しいことをすでに報告している8)。これらの直
線と直線の傾きから各イオンの部分モル容積を求めた もので,上記に述べたように一つの仮定に基ずき得ら れたものでない。このことが著者とFajansやMukerjeeとの間に違いが生ずる原因になったと考
えられる。 つぎにF−の部分モル容積では著者とRZanaら の値は正となり,大きさもほぼ同じであるがFajansらの値だけが負となっている。専門害等'0'''''2)ではフ
ッ化物イオンの部分モル容積は負の値を採用している が検討を要するものと思われる。 また水素イオンH+の部分モル容積はFajansら の値をのぞき大きさに違いはみられない。著者の計算 ではVH+=−3.2(Cm3/mOl)を得た。この値は多くの研究者'2)により報告されている値の平均値にほぼ等し
い。 表3いろいろな方法により得られたイオンの部分モル容積(Cm3/mOl)の比較
1)陰イオンを固定した場合,4つの直線からフ ッ化物イオンF−,塩化物イオンCl−,臭化物イオン Br‐およびヨウ化物イオン1−の部分モル容積 Vj(Cm3/m01)が求められそれぞれ VF =3.5,Vc,‐=20.4,VBr =27.6,VI‐=48.4 が得られた。 2)陽イオンを固定した場合,5つの直線からLi+, Na+,K+,Rb十およびCs+の部分モル容積 Vj(cm3/mCl)が求められそれぞれ VLi+=−7.0,VNa+=−3.5,VK+=4.0,VRb+=11.2, Vcs+=20.3 が得られた。 3 ) 塩 化 物 イ オ ン の 部 分 モ ル 容 積 Vc, =20.4(cm3/mCl)を基準にして得られた水素イオ ンH+とアンモニウムイオンNH4+の部分モル容積 Vj(cm3/mCl)は VH+=−3.2,VNH4+=20.7 であること。 4)11種類のイオンの部分モル容積の値を報告さ れている値と比較した場合,原子量の大きいイオンの 部分モル容積はほぼ同じであるが,小さな原子量をも つイオンの部分モル容積にばらつきがみられること。 5)フッ化物イオンF‐の部分モル容積は負の値に なることが定説となっているが,沈降電圧の測定結果 から得られた値は VF-=3.5(cm3/mCl) と正の値をもつことが明らかとなった。このことにつ いては今後検討を要すること。 最後に本研究を進めるに当り有益な助言を頂く本学 電子工学科教授武石泰亮先生に感謝の意を表します。 −5.4 −11.2 10.5 −7.4 3.4 9.1 15.5 3.3 23.7 30.2 41.4 仲一W平川:1価−1価電解質水溶液におけるイオンの部分モル容積の決定法
−5.7 4.5 9.5 16.9 2.1 22.3 29.2 40.8 828074718017
●●●●●●●●●●■
00818311856
’1−12−123
Li+川附r町肘Fd町r
22種類の1価−1価電解質水溶液について沈降電 圧を測定し,測定結果から各式量に対する沈降電圧変 化 は 固 定 イ オ ン の 種 類 に よ り 9 つ の 直 線 と な る 。 こ れらの直線と直線の傾きからイオンの部分モル容積か ら得らりることを明らかにし,次の結果を得た。 文 献llH.S・FrankandWY,Wen,Disc・
FaradaySoc.,24,133(1957).
21J.O、BlockrisandP.p・Salujua,J・
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