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債権譲渡における三角関係型不当利得論 : ドイツ連邦通常裁判所および連邦税務裁判所の諸判決の分析(1)

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(1)債権譲渡における三角関係型不当利得論 : ドイツ 連邦通常裁判所および連邦税務裁判所の諸判決の分 析(1) 著者 雑誌名 巻 号 ページ 発行年 URL. 瀧 久範 法と政治 69 2下 1(793)-31(823) 2018-08-30 http://hdl.handle.net/10236/00027237.

(2) 債権譲渡における 三角関係型不当利得論. 論. ドイツ連邦通常裁判所および連邦税務裁判所の 諸判決の分析. (1). 瀧. Ⅰ. は. じ. め. 久. 範. に. 2017年 5 月26日に, 民法 (債権関係) の改正法案 (「民法の一部を改正 する法律案」) が成立し (平成29年 6 月 2 日法律案第44号), 法律行為が 無効である場合または取り消された場合の効果について, 次のような規定 (1). が設けられた。. 第121条の 2 (原状回復の義務) (1). 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は, 相手方を原. 状に復させる義務を負う。 (2). 前項の規定にかかわらず, 無効な無償行為に基づく債務の履行として. 給付を受けた者は, 給付を受けた当時その行為が無効であること (給付を 受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為 にあっては, 給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであ ること) を知らなかったときは, その行為によって現に利益を受けている. (1). 改正作業の詳細について, 山本敬三「民法の改正と不当利得法の見直. し」論叢180巻 5・6 号 (2017年) 247頁。 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 1( 793 ). 説.

(3) 限度において, 返還の義務を負う。 (3) 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. 第一項の規定にかかわらず, 行為の時に意思能力を有しなかった者は,. その行為によって現に利益を受けている限度において, 返還の義務を負う。 行為の時に制限行為能力者であった者についても, 同様とする。. 他方, 現行法は, 取消しの効果を定める121条ただし書きにおいて, 制 限行為能力者に現存利得の返還のみを認める, すなわち, 利得消滅の抗弁 (2). を与える旨の定めを置くにすぎない。したがって, この場面における不当 利得に基づく返還については, 原則として703条以下が適用されることに なるはずである。しかしこれにつき, 周知のとおり, 法律上の原因を欠く ことについての利得者の主観 (法律上の原因を欠くこと, すなわち, 無効・ 取消し原因の存在につき善意または悪意) を基準に返還範囲を決定する 703条以下を適用するのか, あるいは, いわゆる不当利得類型論のもと不 当利得の類型ごとに妥当な要件効果を設定し, この場面には利得者の主観 (3). にかかわらず給付受領物の返還を原則とするのかが争われてきた。改正法 は, 121条の 2 第 3 項において制限行為能力者 (および意思無能力者) に 利得消滅の抗弁を認めるだけでなく, 第 2 項において無効な無償行為の 場合にも利得消滅の抗弁を認める。そして, それらの前に第 1 項を置い て, 返還義務一般の規定として, 原状回復義務を定めている。したがって, 無効・取消しに基づく法律行為 (契約) の清算については, 原則として利 得消滅の抗弁を認めない, すなわち, 給付受領物の現物返還が不可能なと きには利得債務者は価額償還義務を負うことになると解するのが素直であ. (2). 下級審ではあるが, 仙台地判平成 5 年12月16日判タ864号225頁は, 意. 思無能力無効の場合に同条ただし書きを類推適用する。同条ただし書きに つき, 於保不二雄=奥田昌道編『新版注釈民法 (4)』(有斐閣, 2015年) 506頁以下〔奥田昌道=平田健治 。 (3) 2( 794 ). 藤原正則『不当利得法』(信山社, 2002年) 161頁以下。 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(4) (4). る。これは, 双務契約の利得法上の清算については, 契約の双務性を考慮 しつつ, 無効・取消規範の保護目的によって返還内容を決するという立場 (5). 論. に沿うものである。 さらに, 改正121条の 2 第 1 項は, 給付受領者は,「相手方を原状に復 させる義務を負う」と定め, 解除の効果を定める545条第 1 項本文とその 文言を同じくしている。立案担当者が無効・取消しに基づく清算と解除に 基づく清算との平準化を志向していることは明らかであり, 今後はこのこ (6). とを前提としたうえで, その異同を検討していくことが求められる。この ことは, 主として返還義務の範囲を念頭に議論されているが, 多数当事者 間, とくに, 単に財産移転が連鎖する場合はもちろんのこと, 独立した第 三者が, 少なくとも履行関係当事者の間では給付仲介者として履行関係に 介入するといういわゆる三角関係型の場合における当事者決定の問題にも 影響を及ぼす。すなわち, 無効・取消しに基づく清算と解除に基づく清算 との平準化を貫徹するならば, 前者についても瑕疵ある原因関係の当事者 間で行われるべきことを本則とすることになるのである (契約関係自律性 (7). の原則)。たしかに, 清算の当事者につき, 545条第 1 項本文が「各当事 者」と定めるのに対し, 121条の 2 は「給付を受けた者」と定めており, 上記のことが明示されたわけではないが, 改正により条文上の拠り所を得 (4). 潮見佳男『民法 (債権関係) 改正法の概要』(金融財政事情研究会,. 2017年) 30頁。 (5). 藤原・前掲注(3) 168頁以下。. (6). 給付受領物に生じた利息や果実等の返還 (新545条第 2 項および第 3. 項), 双方が給付されていた場合における同時履行の抗弁 (546条) など, 問題は多岐にわたる。窪田充見編『新注釈民法 (15)』(有斐閣, 2017年) 121頁以下 藤原正則 。 (7). 四宮和夫 「給付利得の当事者決定基準―三者不当利得の場合―」 同. 民法論集 (弘文堂, 1990年) 143頁以下, とくに172頁以下 (初出, 1980∼ 1981年)。 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 3( 795 ). 説.

(5) たということは差し支えないだろう。 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. この当事者決定の問題につき, わが国では, ドイツにおける議論を参考 (8). にして解釈論が行われている。ドイツ法では, これまで指図事例を三角関 係型の典型例として理論が形成され, 指図事例との対比によりその他の三 角関係型における結論が演繹的に提示されてきた。しかし, 今般の支払サー (9). (10). ビス法導入後, 連邦通常裁判所は, 旧法下の判例法理を用いず, ドイツ民 (8). 拙稿「三角関係型不当利得における事実上の受領者の保護―『財産移. 転の対価関係     .  

(6) への効果帰属』の観点から―(一)∼(三・ 完)」法学論叢163巻 4 号104頁, 165巻 4 号117頁, 166巻 1 号146頁 (2008∼ 2009年) (以下, 拙稿①とする), および, そこで引用されている文献を参 照のこと。なお, 私見の要約については, 拙稿「三角関係型不当利得にお ける事実上の受領者の保護」私法74巻 (2012年) 188頁以下。 (9). 平田健治「EU 支払サービス指令とドイツ法―多様な支払手段の統一. ルール創出の試みとその意義」阪大法学61巻 2 号 (2011年) 287頁。 (10). ドイツにおける指図事例に関する旧法下の判例法理は, 以下の通りで. ある。指図が有効な場合 (つまり原因関係のみに瑕疵がある場合) におけ る利得調整を出発点とし, 利得法的給付概念を用いつつ, 瑕疵ある原因関 係 (=給付関係) の当事者間での給付不当利得返還請求権による利得調整 を原則とする, すなわち, ある財産移転が誰の誰に対する給付となるのか については給付者の目的決定によって決まり, 指図が有効な場合には, 被 指図者の指図受領者に対する出捐は, 被指図者の指図者に対する給付, お よび, 指図者の指図受領者に対する給付となり, 瑕疵の存する関係におい て利得調整が行われる, 他方, 指図が有効性を欠く場合を例外的な場合と 位置付け, 与因原則 (Veranlassungsprinzip) を帰責原因とする権利外観法 理を適用し, 指図が有効性を欠く場合であっても, 被指図者の出捐につい て指図者に帰責性が認められ, かつ, 指図受領者が指図の有効性を信頼し て受領した場合に限り, 被指図者の直接請求を遮断し, 指図受領者を保護 する, というものである (したがって, その範囲はともかく, 被指図者の 指図者に対する不当利得返還請求権が成立することになる)。支払サービ ス法導入前の連邦通常裁判所の判例につき, 拙稿「指図が有効性を欠く場 合に関するドイツ判例法理―支払サービス法導入前における枠組みと実質 ―」香川大学法学会編『現代における法と政治の探求』(成文堂, 2012年) 4( 796 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(7) (11)(12). 法 675u 条を解釈することにより判断した。すなわち, 支払人側の支払サー ビス提供者 (被指図者) による支払人 (指図者) に対する費用償還請求権. 論. ならびに (ありうる) 不当利得返還請求権を認めず, その帰結として, 常 に支払サービス提供者の振込受領者 (指図受領者) に対する不当利得返還 (13). 請求権を認め, 利得消滅の抗弁 (ドイツ民法818条第 3 項) を除き振込受 (14). 領者を保護しないとの判断を行うに至ったのである。たしかに, ドイツで (15). は783条以下に指図に関する規定があり, 理念型として指図事例を議論の 135頁, とくに152頁以下 (以下, 拙稿②とする)。 ドイツ民法 675u 条:[無権限支払処理における支払サービス提供者の. (11). 責任] 無権限支払処理の場合には, 支払人の支払サービス提供者は, 支払人に 対して自己の費用償還請求権を有しない。支払サービス提供者は, 支払人 に対して支払金額を遅滞なく返還し, その金額が支払口座に借方記帳され たかぎりで, この支払口座を, 無権限支払処理による借方記帳がなければ 存したであろう状態に回復する義務を負う。 (訳は, 平田・前掲注(9) 385頁を参考にした。) (12). 以下, 単に条文番号のみを挙げるときは, ドイツ民法を指すこととす. る。 (13). ドイツ民法818条第 3 項:[不当利得返還請求権の範囲] 受領者は, 利得が現存していない限度において, 返還又は価額賠償の義. 務を免れる。 (訳は, 椿寿夫=右近健男編『注釈ドイツ不当利得・不法行為法』(日本評 論社, 1990年) 32頁〔赤松秀岳〕による。) (14). 拙稿「三角関係型不当利得とドイツ民法 675u 条」田井義信編『民法. 学の現在と近未来』(日本評論社, 2012年) 215頁 (以下, 拙稿③とする), 拙稿「続・三角関係型不当利得とドイツ民法 675u 条」法と政治68巻 2 号 (2017年) 317頁 (以下, 拙稿④とする)。 (15). ドイツ民法783条:[指図に基づく権利] ある者が金銭, 有価証券その他の代替物を第三者に対して給付すること. を指図する証書をその第三者に交付したとき, その第三者は, 被指図者か ら自己の名において給付を取り立てる権限を有する;被指図者は, 指図者 の計算において指図受領者に対して給付する権限を有する。 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 5( 797 ). 説.

(8) 出発点に置くことはできるが, 今後もなお指図事例を議論の出発点とする 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. のか, あるいは, 他の事例群から出発するのか, そもそも統一的な視点の 構築を放棄し, 事例群ごとに個別の解決を図っていくのか, 重要な岐路に 立っているといえる。そこで, 本稿は, ドイツにおいて振込事例と並んで 議論の蓄積のある, 債権譲渡事例に関する判例学説を分析し, 上記問題に 対して示唆を得ること目的とする。この問題については, すでに一部検討 (16). したところであるが, 後述のように, その後連邦通常裁判所が, 譲渡債権 が法定債権 (不法行為に基づく損害賠償請求権) の場合にも, 契約に基づ く債権の譲渡と同様の判断を下したこと, 通説と異なり譲受人説を主張す る論者から連邦税務裁判所における諸判決の存在を根拠の 1 つとされて (17). いることから, さらに分析を進める意義が認められる。後者につき, 若 (18). 干敷衍すると, 日本と同様ドイツでも, 租税債務者の財政官署に対する 租税還付請求権 (Steuererstattungsanspruch ; ドイツ租税通則法 (Abgaben(19). (20). ordnung=AO) 37条) を譲渡することができる。財政官署が譲受人に対し (訳は, 右近健男編『注釈ドイツ契約法』(日本評論社, 1995年) 697頁以 下 床谷文雄〕を参考にした。) (16). 拙稿①165巻 4 号125頁以下。. (17). Peter Mankowski, Zum Bereicherungsausgleich bei der Zession einer. nicht bestehenden Forderung, ZIP 1993, 1214 ; Klaus Tiedtke, Bereicherungsschuldner bei der Sicherungsabtretung einer nur vermeintlich bestehenden Forderung, WM 1999, 517 ; Chris Thomale, Leistung als Freiheit (Mohr Siebeck, 2012), S. 351. (18). 還付請求権は, 私法上の債権と同様, 譲渡, 質入れ, 差押えが可能で. ある。 (19). ドイツ租税通則法37条:[租税債務関係に基づく請求権]. (1). 租税債務関係より生じる請求権は, 租税請求権 (Steueranspruch),. 租税払戻し請求権 (        .

(9).   )責任請求権 (Haftungsanspruch), 租税付帯給付請求権 (steuerliche Nebenleistung), 第 2 項に 基づく還付請求権 (Erstattungsanspruch) ならびに個別の租税 法 律 に お 6( 798 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(10) て支払った後に, 還付請求権が存在していなかった, あるいは, 過払い であった場合に, 財政官署の過誤還 付 金 等 返 還 請 求 権 (   . 

(11)  . 論. 

(12)    ) が譲受人に対して向けられるのか, それとも, 譲渡人 (還付権 者) に対して向けられるのかが, 私法上の債権の場合と同様に問題となる。 いて規定されている租税還付請求権 (Steuererstattungsanspruch) とす る。 (2). 租税, 租税払戻し, 責任金額, もしくは租税附帯給付が, 法 律 上 の. 原因なく支払われ, 又は返還されたときは, 自己の計算において支払っ た者が, 給付受領者に対し, 支払われた金額又は返還された金額につい て還付請求権を有する。支払い又は返還に対する法律上の原因が後に消 滅する場合も同じとする。債権譲渡, 債権質又は差押えの場合には, 還 付請求権は, 債権譲渡人, 質権設定者又は差押債務者に対しても向けら れる。 (訳は, 中川一郎「77年 AO 邦訳 (3)」(税法学514号 (1993年) 28頁) を 参考にした。) (20). ドイツ租税通則法46条:[譲渡, 質入れ, 差押え]. (1). 租税, 責任金額および租税付帯給付に基づく還付請求権ならびに租. 税払戻し請求権は, これを譲渡, 質入れおよび差押えをすることができ る。 (2). ただし, 譲渡は, 債権者が請求権発生後に第 3 項に基づき定められ. た形式で所轄の財務官署に通知して初めてその効力を有する。 (3). 譲渡は, 所轄の財務官署に対して, 譲渡人, 譲受人ならびに譲渡請. 求権の種類および金額, 譲渡原因について公的な書式に記入して通知さ れなければならない。 (4). 自己の計算において取立てその他の換価のために, 還付請求権また. は租税払戻し請求権を業として取得することはできない。譲渡担保の場 合にはこの限りではない。譲渡担保の設定を受けた請求権を業として取 得および取立てることができるのは, 銀行業務を行う会社に限る。 (5). 財政官署が譲渡の通知を受けた場合には, 譲渡人および譲受人は,. その譲渡が行われなかった, 有効でなかった, または前項の規定に反し 無効であったとしても, 財政官署に対してそのことを対抗できない。 (6)(7) 〈略〉 (訳は, 中川・前掲注(19) 31頁を参考にした。) 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 7( 799 ). 説.

(13) たしかに, この問題は1995年改正税法により, 財政官署は譲受人, 譲渡 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. 人のいずれに対しても請求でき (AO 37条第 2 項第 3 文), かつ両者が連 (21). 帯債務者となることとなった (同44条第 1 項) が, これまで連邦税務裁 (22). 判所によって多数の判決が下されており, さらに, その判決理由において 連邦通常裁判所の判断および学説が検討されている。したがって, 私法上 の債権の譲渡の場合と比較して分析することが有用であると考えられる。 以下, 私法上の原因関係に基づく債権が譲渡された場合に関する判例学 説 (Ⅱ), 租税還付請求権が譲渡された場合に関する判例学説 (Ⅲ) の順 に整理し, 若干の検討を行う (Ⅳ)。. Ⅱ. 私法上の原因関係に基づく債権が譲渡された場合. 1 判例 (23). (1) 判例の紹介 以下では, 当事者の関係を明確にするため, 訴訟当事者いかんにかかわ らず, 債務者を A, (表見的) 譲渡人を B, (表見的) 譲受人を C とし, そ. (21). ドイツ租税通則法44条第 1 項:[連帯債務者] 租税債務関係より生じる同一の給付を互いに並列して負担する者, その. 給付に対し責任を負う者, または 1 つの租税につき合算して査定される者 は, 連帯債務者とする。別段の定めがない限り, 各連帯債務者は全体の給 付を負担する。 (訳は, 中川・前掲注(19) 30頁を参考にした。) (22). ドイツではわが国と比べて税務訴訟が非常に多いことも一因であろう. (三木義一「ドイツにおける税務訴訟の現実とその背景 (一)・(二・完)」 民商法雑誌119巻 4・5 号613頁, 6 号886頁 (1999年))。 (23). ①∼④判決については, 平田健治「ドイツにおける三当事者不当利得. 論の近時の展開 (一)∼(三・完)」民商法雑誌 1 号 1 頁, 2 号179頁, 3 号 341頁 (1997年), とくに 2 号180頁以下に, 詳細な訳と分析が行われてお り, 本稿もこれによるところが大きい。 8( 800 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(14) れ以外の者を M 以下で表す。 論. (24). ①連邦通常裁判所第 4b 民事部1988年 6 月 8 日判決 B は, 投資・金融会社である原告 A との間で, 約30戸のマイホームの 建築計画に「匿名の出資者 (stiller Partner)」として参加し, 利益配当金 を受け取る旨の契約を締結した。B は, この契約から生じる請求権を被告 C に譲渡した。C は, B が業務執行者である有限会社に対して債権を有し ており, この譲渡に基づいて行われる支払いによって清算されることになっ ていた。本件建築計画は 3 つの工期に分けられ, 工期ごとに決算が行わ れた。第 1 および第 2 工期から生じる B の利益配当金については, 問題 なく A から C へ支払われた。しかし, 第 3 工期について, 最終決算前に 暫定的な最終決算書が発表されることになったので, C が A に対して, それに基づく支払いを求めた。A が C に対して, B がその支払いに異議を 唱えているので供託したい旨を伝えたが, C は, これを拒絶し, 支払いが なければ訴訟準備に取りかかる旨を A に伝えた。A は, 後からこの支払 いの全部または一部が債務免責効を生じないことが明らかとなった場合に はいつでも返還請求できる旨の留保をつけて, C に支払った。その後, 第 3 工期について費用の増加が生じたので, A は, C に対して, B の利益配 当金が減額される旨を通知し, 決算書を差し替えるとともに, 過払い分に ついて返還を求めた。第1審, 原審ともに A の請求を認めた。C 上告。. 第 4b 民事部は, まず譲渡債権が実際には存在しなかった場合における 不当利得返還請求権の相手方を譲渡人と解することが通説であると述べ, その理由を, 債務者の法的地位を債権譲渡によって悪化させてはならず,. (24) BGH Urt. v. 08. 06. 1988−IVb ZR 51 / 87, NJW 1989, 161. 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 9( 801 ). 説.

(15) 債務者は契約相手方として選択していない者の倒産リスクを負担する必要 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. がないからであるとする。そのうえで, 本件は実際に存在している B の 請求権の過払いが問題となっているにすぎないとし, この場合通説も, 債 務者・譲渡人間の法律関係やそこから生じるリスク分配と関係がないこと, あるいは, 譲渡人はその限りで支払いを誘引していないことから, 例外的 に債務者・譲受人間での利得調整を認めていると述べる。 また, 当裁判所は, 過払いが錯誤または債務者の看過に基づく場合だけ でなく, 本件のように譲受人の振舞いに起因する場合も, 譲受人に対する 不当利得返還請求権を認めなければならないと述べる。すなわち,「A の 過払いを B との法律関係に帰責することはできない……暫定的にしかす ぎない決算書に基づき C の強い要請により支払が強制されている。建築 会社である C にとって,大規模の建築計画の最終決算書では予想外の費 用増加も生じうることは明白であったに違いない。したがって,C は譲渡 債権が暫定的な決算書に基づく B の利益配当金を下回るというリスクを 引き受けている。最後に,A は, C からではなく C に対する留保のもとで 支払いを行っている……このようにして譲受人が譲渡債権の前払いを強制 し,それにより譲渡人の関与なく過払いが生じた場合には,少なくともこ の過払いを,債務者の支払いによる譲渡人の譲受人に対する給付とみなす ことはできない」として,C の上告を棄却した。 (25). ②連邦通常裁判所第 4b 民事部1988年11月 2 日判決 原告である保険会社 A は, 会社 M を所有する B との間で火災保険契約 を締結した。 その後, M の工場と倉庫で火災が発生し 消 失 し た の で, B は A に対して保険金を請求した。A は, この火災が B によって引き起こ. (25). BGH Urt. v. 02. 11. 1988−IVb ZR 102 / 87, BGHZ 105, 365.. 10( 802 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(16) されたのではないかと考え, 当初支払いを拒否した。B は, その一部の支 払いを求めて A を訴え, その大部分を金融会社 N に, 残部を自己に支払. 論. えとの判決を求めた。被告 C は, 継続的に商品を売却している B に対し て, B の融通手形の引受という形で信用を与え, その担保として A に対 する保険金債権を譲渡させた。その譲渡は A に通知されたが, A は, 自 己に支払義務がないと主張し, もし B の訴えが認容されれば支払う用意 があることを示した。B の上記請求が認容されたが, A は, 目下の事情の 下では立証責任を果たすことができないと考え, 控訴手続を取らず,「将 来の一切の抗弁を留保する」との手紙を添えて C に対して保険金を支払っ た。M の破産手続が開始された後, 本件火災が B の放火によることが判 明し, B は保険詐欺に基づく刑に服した。A は, C に対して保険金につい て不当利得返還請求をした。第 1 審は A の訴えを棄却した。A の控訴に 対して, 原審も, 三角関係における利得法的清算は, あたかも債務者が譲 渡人に対して支払い, 譲渡人が譲受人に対してその支払いを引き渡したか のようにして, 補償関係 (債務者・譲渡人間) において行われるべきであ るとして, これを棄却した。A 上告。. まず, 第 4b 民事部は, 連邦通常裁判所は, これまで債権譲渡担保の場 合における利得調整について判断をしていないが, 原則として顧慮される べきは利得法が法形式的ではなく経済的な考察方法を命じていること, お よび, 三当事者以上の者が関係する利得法的清算ではいかなる図式的解決 も禁じられ, 個別事例の特殊性が考慮されなければならないという指図事 例において繰り返された命題を引用する。そして, 決定的なことは, 当事 者が, 彼らの表明した意思によるといかなる目的を追求したかであり, 給 付関係の基準となる, 出捐に付与された目的決定はそれに従い, そのよう な給付関係の内部で利得法上の調整が探求されなければならないと述べる。 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 11( 803 ). 説.

(17) 給付関係の確定にあたって, 当裁判所は, 判例にならい, 受領者視界理論 (26). 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. に支えられた利得法的給付概念を用いて, A の B に対する給付 (および B の C に対する給付) を認める。すなわち, C の視界からは, A は, 自己の 支払いによって, 保険金受取人 B に対して保険給付を行い, それと同時 に B が C から受けた信用を返済している。A のこれと異なるイメージは 現れていない。たしかに, A は, BC 間の法律関係についてそれほど詳細 に認識していないし, その限りでより詳細な照会をする理由も見当たらな い。しかし, A は譲受人たる C に対する保険給付の支払いによって, 保 険契約上の B に対する義務を履行しようとしていたことは明らかである。 B は, (表見的な) 給付請求権の譲渡後も, 保険金受取人としての資格を 失ってはいない。保険法上, 譲受人に対する保険給付の支払いは保険金受 取人に対する支払いとみなされるので, 給付免責事由を知らずに譲受人に 対して支払った保険者は, 通常, 保険金受取人に対してのみ返還請求でき る。 また, 当裁判所は, リスク配分と信頼保護の観点もこの結論を支持する と述べる。すなわち,「たしかに, A は, 無資力の譲渡人への請求を指示 されるならば, 経済的には何も取得しないが, 問題となりうる複数の返還 義務者のうちで誰が無資力となるのかは偶然に基づくので, 法的な判断は このことに関わるべきではない。その限りで, A が保険者として自己の保 険金受取人 B の倒産リスクを負担しなければならないのかが問題となり うるにすぎず, この問いは肯定されるべきである。本件の規模の火災保険 の引受けは, 日常的大量取引ではなく, 保険事故の一般的リスクの評価に 加えて, 契約相手方の信頼性の検討も要求する……保険者は, 保険給付の 支払いによっても, 保険金受取人に対して, 債権は正当に行使されており,. (26). 拙稿①163巻 4 号111頁以下。. 12( 804 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(18) 保険者が契約条件に基づき保険保護を否定できるような事由も存しないと いう信頼を与える。このことは, このような信頼が正当ではなかったこと. 論. が後に判明した場合に, 保険金受取人の倒産リスクを保険者に負担させる ことを正当化する。」「このリスクの割り当ては, 保険金債権が譲渡担保さ れた場合であっても異なるところがない。保険者の法的地位は, 債権譲渡 担保によって悪化しない。保険者は, 契約関係から生じる抗弁を譲受人に (27). 対して主張することもできる (404条)……保険者の法的地位を債権譲渡 担保によって改善する理由もない。」 さらに, 当裁判所は, ①判決との比較を行い, A が B の保険詐欺の事 実が判明する前に支払ったことは C の振舞いに基づくものではないこと や, C は A に対して債権譲渡通知を行ったにすぎないことを挙げて, ① 判決の事案と異なることを述べる。また, A が支払いの際にドイツ民法 404条を挙げて将来の抗弁を留保したことも, 同条は給付拒絶権を定める にすぎず, それが行使されなかった場合における返還請求を基礎付けるも のではないとする。 最後に, 当裁判所は, この結論は利益適合的でもあり, 債権譲渡担保は, 経済的には指図事例に近く, 指図事例の場合, 補償関係に瑕疵があればそ の関係内で利得調整するのが判例であると述べる。例外が認められるのは, 補償関係の瑕疵を受領者が知っていた場合, 補償関係が実際には存在して いなかった場合に限ってであり, 本件では, AB 間に保険契約が補償関係 であり, この存否について争いがなく, C が支払受領時に, A が免責事由. (27). ドイツ民法404条:[債務者の抗弁] 債務者は, 債権譲渡の時に旧債権者に対して有していた抗弁をもって新. 債権者に対抗することができる。 (訳は, 椿寿夫=右近健男編『ドイツ債権法総論』(日本評論社, 1988年) 355頁〔松井宏興〕を参考にした。) 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 13( 805 ). 説.

(19) を援用できることを知っていたとの A の主張もないので, そのような例 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. 外は認められないとする。 (28). ③連邦通常裁判所第12民事部1990年11月28日判決 被告 C が勤めていた有限会社 B は, 建築事務所 M に住宅の設備近代化 のための設計を委託した。M は, B の名で有限会社 N に対して, これに 必要な仕事の実行を委託した。M の建築家 P は, 前任者が作成した N の 請求書が水増しされており, B は N に対して過払いをしているとして, 請求書の額を減額した。過払い分の返済がないまま N は破産し, その後 B も支払能力を失った。B の「人的責任社員」たる C は, N を退社してい た Q に対して本件建築計画における活動によって生じた損害として過払 い分を賠償するよう求めた。 Q は, 自己の職業責任保険 者 で あ る 原 告 A に対して, C の損害賠償債権は正当に存在し, 訴訟になれば責任を回避 できないと述べつつ, C から請求を受けたことを伝えた。A からの受領権 限の証明の求めに対し, C は, B に対して Q が支払うべき;筆者注 賠 償金の立替払いをしたと主張し, これを受けて A は C に対して支払った。 その後, P が A に対して, N の仕事に過払いはなく, B の支払いがないた めに仕事を中止しようとしていた別の建築会社に仕事を続行させるために, N が減額を偽装したことを通知した。A は, Q および C に対して, 保険事 故の偽装を理由に, 支払った保険金の返還を求めた。また, A は, C に対 して, B は請求権を C に譲渡しておらず, 受領権限を有していなかったと して, 不当利得に基づく返還も求めた。 第1審は, C は請求書が恣意的に減額されたことを知らなかったとして, 詐欺に基づく賠償を否定し, 不当利得返還請求権についても, A は C に受. (28). BGH Urt. v. 28. 11. 1990−XII ZR 130 / 89, BGHZ 113, 62.. 14( 806 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(20) 領権限がないことを知っていたとして否定した。A の控訴に対して, 原審 は, C に対する請求を認容した。C 上告。. 論. 第12民事部は, A の C に対する不当利得返還請求権を認めた原審の結 論を正当であるとしつつも, その論拠とするところの指図状況の存在を認 めなかった。すなわち, 「A は, 支払いによって Q の B に対する責任債務 を履行しようとしており, 瑕疵のない補償関係に基づいて Q を免責させ る義務を負っていると考えていた。A は, 責任保険者が債権者に対して支 払う場合に通常そうであるように, 自己の債務に対してではなく, 保険契 約者の債務に対して給付しているが, このことは, A が Q の指図に基づ いて支払ったということを意味しない。ここでは, 指図も広義の指示も存 在しないし, 仮にあったとしても責任保険者はそれを遵守する必要はない。」 「むしろ, 保険者は, 補償関係のほかに債権者の保険契約者に対する債権 の正当性をも検査したうえで, 債権者に対して給付する……。A は, B に 対する表見的債務に対して支払おうと決心し, C に対して支払ったのであ る」 と述べる。 そのうえで当裁判所は, 指図がないので, 利得法上の巻戻しは, 指図事 例について展開された規律に従ってではなく, 第三者弁済という別の事例 群について妥当する規律に従って行われると述べる。すなわち, 「被指図 者による給付があった場合, それにより債権者・債務者間の債権を消滅さ せる旨の弁済決定は, 指図者たる指図者から行われるのに対し, 第三者弁 済の場合には弁済をした第三者が行う。したがって, 第三者自身が債権者 (29). に対して給付するのである。」「267条で定められている第三者弁済は, 他 (29). ドイツ民法267条:[第三者弁済] 債務者が自ら給付を行う必要のないときは, 第三者も給付を行うことが. できる。 この場合, 債務者の同意は必要でない。 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 15( 807 ). 説.

(21) 人の義務に対して給付する者が, 債務者に対して第三者弁済を行う義務を 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. 負っていると考えていた場合にも成立する……責任保険者は債権者に対す る支払いによって, 保険契約者に対する自己の免責義務の履行であっても, 他人の債務, すなわち, 保険契約者の債務者に対する責任債務を弁済する。」 「第三者弁済において, 対価関係が存在しなかった場合には, 弁済者は表 見的債権者に対して直接に不当利得返還請求できるとするのが通説であり, このことは, 少なくとも表見的債務者が弁済者に対して給付を誘引しなかっ たか, あるいは帰責できる形で誘引しなかった場合には妥当する。」 「A は, B の:筆者注. 請求権が C に移転したと考えて, C を損害賠償請求権者. であると考えたが, そうではなかった。A は B ではなく C に対して支払っ たのである……しかし, 債権譲渡があったと誤信した場合には, 表見的譲 受人に対して行われた給付については, 譲受人に対して不当利得返還請求 できる」 として, C の上告を棄却した。 (30). ④連邦通常裁判所第12民事部1993年 3 月10日判決 原告 A は被告 C が B に対してリースした車両の車両保険者であり, B が保険金受取人である。BC 間の一般取引約款によると, リース借主は, 過失とは無関係に, 本件車両とその備品の滅失・損傷について責任を負い, 車両全部保険を締結し, この保険に基づくすべての権利をリース業者に対 して譲渡しなければならないとされた。B が本件車両について A と保険 契約を締結した後, A は C に対して保険証書を交付した。その証書には, 賠償額が 500 DM を超える場合には, C の書面による同意がなければ, B に対してではなく, C に対して支払われること, C に対する保険給付は,. (訳は, 椿=右近編・前掲注(27) 86頁 (30). 今西康人. による。). BGH Urt. v. 10. 03. 1993−XII ZR 253 / 91, BGHZ 122, 46.. 16( 808 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(22) B が債務として負担する額に満つるまでなされることが記載されていた。 B は, A に対して, 車両の盗難を届け出た。C は, A に対して車両の賠償. 論. を求め, 支払われた。のちに, この盗難が仮装されたものであることが判 明したので, A は, C に対して不当利得返還請求した。第1審は, A の訴 えを規約した。 原審も, A の支払いの法律上の原因となりうるのは, AC 間ではなく, AB 間の保険契約および BC 間のリース契約であり, 保険給 付の支払いは, 保険契約に基づく A の B に対する給付およびリース契約 に基づく B の C に対する給付となるので, 補償関係に瑕疵がある場合, A は B に対して主張しなければならないとして, A の控訴を棄却した。A 上 告。. まず, 第12民事部は, 他人のためにする保険では, 保険者の給付の目 的は被保険者 C の固有の請求権の履行であるので, A の給付は利得法上 C に対する給付となり, A の C に対する直接不当利得返還請求権が生じる との上告人の主張に対し, 次のように述べる。すなわち, 他人のためにす る保険でも, 契約関係から生じる義務, とりわけ保険料支払義務は, 本来 の契約相手方にとどまるので, 被保険者は第二の保険契約者とはならない。 保険事由が生じた場合における保険者の被保険者に対する支払義務は, 保 険契約者との補償関係に基づく。被保険者の保険給付を求める請求権に関 しては, 被保険者の法的地位は, 本質的には譲受人の法的地位と区別され ず, その限りで経済的にも差異はない。 次に, 当裁判所は, 給付関係の確定について次のように述べる。すなわ ち, 他人のためにする保険において, 被保険者の実体法上の請求権の履行 を利得法上の意味での給付目的とみなすなら, それはあまりに形式的な考 察方法である。利得法的給付概念にとって重要なのは, 給付時点における, 支払受領者と出捐者の目的に関する実際のイメージである。これが一致し 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 17( 809 ). 説.

(23) ない場合に限り, 受領者の視界からの客観的考察方法が要請される。これ 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. について原審は, 出捐者たる A と支払受領者たる C は, 一致して B との 保険契約から生じる A の義務を履行しようとしているということから出 発していると述べている。支払プロセスに関与した両者が, 車両盗難に関 する B の申告が妥当であり, 保険給付の支払いには B の C に対する債務 を免責する目的があるということを明白に承認していたので, 当裁判所も 原審の判断に賛成し, A の B に対する給付を認める。 また, 当裁判所は, 給付概念からの導出だけでは必ずしも説得力がある とは思われないとして, 信頼保護およびリスク分配の観点から B に対す る不当利得返還請求権を正しいものと確認する。すなわち, A は B の申 告を信頼して保険給付を支払っている。そのことは, 保険契約者の倒産リ スクを負担することを正当化する。譲受人と他人のためにする保険の被保 険者は通常より給付能力を有しているので, 彼らに対して不当利得返還請 求できるとすれば, 出捐者は不当な利益を有することになろう。「角を曲 がっての」不当利得返還請求権の要請は, 保険に典型的なリスクが当初あっ たところにとどめ, 瑕疵がある法律関係, つまりここでは AB 間での利得 調整が指示されるとする。 さらに, 当裁判所は, B は, C への保険給付によって, リース契約に基 づく C に対する損害賠償義務に対応する額において免責され, その点に 利得が存していると述べる。通常, 保険金請求権を予め譲渡することは, 自動車の滅失・損傷に基づく C の B に対する請求権の履行のために行わ れており, すでにこれに対応する弁済決定も行われている。C は, その後 の自動車の滅失に基づいて B に対して損害賠償請求権を有し, この債権 はAによる保険給付によって履行される限りで消滅すると述べる。 最後に, 当裁判所は, 他人のためにする保険は経済的に指図事例に近く, また保険証書が C に渡されていることから, 引き受けられた指図 (ドイ 18( 810 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(24) (31). ツ民法784条) と比較できると述べる。これによって, 指図受領者はその 法的地位を強化されるが, 給付の利得法上の帰責可能性, 利得調整の種. 論. 類や方法は何も変わらない。給付関係の経済的な重点を形成するのは, AC 間の関係ではなく, AB 間の保険関係であるとする。 説. (32). ⑤連邦通常裁判所第 8 民事部1996年 9 月25日判決 原告 A と取引関係にあった有限会社 B が, 自己のメインバンクである 被告 C 銀行に対して, 貸金債務の担保のために, Aに対する将来債権を含 めた一切の債権を譲渡した。B は, A との間で, 有限会社 M がポーラン ドで製造する缶詰製品を700万余 DM で供給する旨の契約を締結し, A は, 代金債権の保証のために, N 銀行から, 限度額を700万 DM とする, B ま たは譲渡担保権者による要求払いの支払保証 (Zahlungsgarantie auf erste Anforderung) の設定を受けた。その後, C が N に対して本件支払保証に 基づいて請求し, B の請求書等関連書類の送付を受けた N は, C に対して 180万 DM を支払った。その前に B は破産手続開始の申請をしていたが, 破産財団を欠くために却下されていた。N は, C に対する保証給付を A の 口座から引き落とすとともに, 本件支払保証に基づき一切の請求権を A に (31). ドイツ民法784条:[指図の引受け]. (1). 被指図者が指図を引き受けたときは, 被指図者は, 指図受領者に対. して給付する義務を負う。被指図者は, 指図受領者に対して, 引受けの 効力に関する抗弁, 指図の内容若しくは引受けの内容から生じる抗弁, 又は被指図者が指図受領者に対して直接有する抗弁をもってのみ対抗す ることができる。」 (2). 引受けは, 指図証書への注記によって行われる。指図への注記は,. これが指図受領者に交付される前に行われたときは, 交付されることに よって初めて受領者に対して効力を有する。 (訳は, 右近編・前掲注(15) 699頁〔床谷文雄〕を参考にした。) (32) BGH Urt. v. 25. 09. 1996−VIII ZR 76 / 95, NJW 1997, 461. 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 19( 811 ).

(25) 譲渡した。A は, 請求書に記載された商品を受領していないとして, C に 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. 対して保証給付の返還を求めた。第 1 審は, A の請求を棄却した。原審 は, すでに本件商品の所有権が A に移転しており, N の C に対する保証 給付は正当なもので会うとして, A の控訴を棄却した。A 上告。. 第 8 民事部は, まず A がすでに本件商品の所有権を取得しているとの 原審の判断を誤ったものであるとしたうえで, B がもはや A に本件商品 の所有権を取得させることができないために, 本件支払保証の対象となる (33). A に対する代金債権がドイツ民法320条に基づく抗弁にさらされる場合に は, AB 間における原因関係において N の支払いにつき法律上の原因を欠 くので, A の不当利得返還請求権が問題となると述べる。 そのうえで, 当裁判所は, 先例に基づき, まず②判決を引用して, 受領 者たる C の視界からは, N の支払いは, 貸金債務の返済のための B によ る給付であり, A は B との法律関係に基づく自己の義務を履行しようと するにすぎず, このように解するなら A の C に対する不当利得返還請求 権は排除されなければならないだろう, しかし, ①判決を引用し, 過払い の場合で, かつ, それが譲受人の強度の支払要請に基づくものであるため に債務者・譲渡人間の法律関係に帰責できない場合には, 結論が異なると (33). ドイツ民法320条:[契約未履行の抗弁]. (1). 双務契約により義務を負う者は, 債務の目的である給付を反対給付. の実行があるまで拒絶することができる。 ただし, 先履行義務を負うと きは, この限りでない。 給付が数人に対して行われるべきときは, 各人 に給付すべき部分については, 反対給付全部の実行があるまでこれを拒 絶することができる。 273条第 3 項の規定は, 適用しない。 (2). 一方が一部の給付をしたときは, 反対給付の拒絶は, 諸般の事情,. とくに残余部分がごく僅かであることにより, 信義誠実に反する限りで 認められない。 (訳は, 椿=右近編・前掲注(27) 209頁〔右近健男〕を参考にした。) 20( 812 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(26) 述べる。そして, 本件では,「過払いではなく, 全体が法律上の原因を欠 く履行が問題となっているけれども」, 本件商品にかかる請求書を提示し. 論. て N に対する保証債権の行使を主導したのは, もっぱら C であるとして, A の C に対する不当利得返還請求権を認める。すなわち,「A の申立てに よると, C は B 破産による損失を減らすために意識的に保証債権を行使し たとされるが, そうであるとすると, C は, 本件支払保証の要求によって, (B の包括譲渡によって取得した) N および A に対する自己の直接の債権 を実現させたのである」。 (34). ⑥連邦通常裁判所第 8 民事部2005年 1 月19日判決 通信販売業を営む原告 A は, 有限会社 B と枠契約を締結し, 園芸用品 を購入する数年間の取引関係に入った。B は, 被告 C に対して, ファクタ リング契約に基づき A に対する債権を譲渡していたところ, 園芸用品の 引渡しに関する 2 つの請求書を作成し, これらを C に交付した。C は, A に対して, 本件請求書を提示して, 自己に対する支払いにより債務免責効 が生じることを指摘してその支払いを求めた。A は, C に対して支払った が, 別訴において, 本件請求書に該当する園芸用品の供給はなかったとし て, C に支払った金額の返還請求が認められた。その後, B の財産につい て倒産手続が開始したので, A は C に対してその返還を求めた。第一審 は A の請求を棄却した。A の控訴に対して, 原審と, ②④判決を引用し つつこれを棄却した。A 上告。. 第 8 民事部も, ②④判決を引用しつつ, A の上告を棄却する。リスク 分配および信頼保護の観点から, 債務者の譲渡人に対する不当利得返還請. (34) BGH Urt. v. 19. 01. 2005−VIII ZR 173 / 03, NJW 2005, 1369. 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 21( 813 ). 説.

(27) 求権のみを認める。この基本思考は, ②④判決のような, 不当に支払われ 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. た保険給付の巻戻しだけでなく, 他の債権譲渡事例にも転用でき,「少な くとも……表見的債務者・譲渡間における, 原則として瑕疵のない法律関 係に基づく」表見的債権の譲渡の場合にも妥当すると述べる。 また, 当裁判所は, 当事者の利益状況に関して, 本件では, AB 間の枠 契約がこの「瑕疵のない法律関係」にあたり, A が自己の長年の契約相手 方 B が作成した請求書を信頼して支払いを行っていることから, その信 頼が正当でないことが判明した場合にも, A に B の倒産リスクを負担さ せることが利益適合的であるとし, 契約上の供給関係にある場合, その支 払いの契約上および利得法上の巻戻しは, 1 つの同じ法律関係で行うこ とが事態適合的であると述べる。さらに, 債務者の地位を債権譲渡の前後 で変えてはならないこと (②判決の引用), C は AB 間の契約関係に入っ ていないこと (原審の認定) が指摘されている。 最後に, 当裁判所は, ファクタリング契約も, 通常の債権譲渡事例にお ける利得調整の原則が妥当すること, および, ファクタリングと指図との 経済的近接性を述べる。 (35). ⑦連邦通常裁判所第 1 民事部2006年 1 月26日判決 材木取引を営む原告 A は, 運送会社 B と恒常的な取引関係にあった。 被告 C 銀行は, A に対して, B が A との取引関係から生じる現在および 将来の債権を C に包括譲渡したので, C にある B 名義の口座に支払うよう 通知した。B は A との取引を中止し, その財産について倒産手続が開始 した。A は, B との取引の中止以降, B と商号が類似する有限会社 M と 取引を開始した。A は, B, M, 別の運送会社 N に対する債務を弁済する. (35). BGH Urt. v. 26. 01. 2006−I ZR 89 / 03, NJW 2006, 1731.. 22( 814 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(28) ため, 誤って C にある B 名義の口座に全額を振り込んだ。A は, C に対し て, 過払い分について返還を求めた。第一審は, A の請求を認容したが,. 論. 原審は, 債権譲渡において債務者の利得法上の返還請求は譲受人ではなく 給付受領者たる譲渡人に向けられるとの原則が本件にも妥当するとして, C の控訴を容れ, A の請求を棄却した。A 上告。. 説. 第1民事部は, 譲渡人に対する返還請求を認める実質的な理由を, 表見 的譲渡債権に対する支払いの法律上の原因は, 債務者・譲渡人間の契約で あること, リスク分配・信頼保護の観点から給付不当利得返還請求権はこ の両者の間で行われるべきことにあると述べる。 原審の判断とは異なり, 本件では, 「A による C にある B 名義の口座への振込みは, AB 間の契約 にその原因があるのではなく, 第三者が有する債権に対する支払いとして, 失敗したにすぎない。 B は帰責できる理由で, A の支払いを C に対する B の給付とみなすような外観を作出したのではない。したがって, B を利 得調整に巻き込む理由がない。」 「B が C との間で合意した包括譲渡は, B 自身が有する債権のみに関するものであり, 支払うべき請求書が B の債 権に関するものであるとの A の錯誤は, A が新債権者たる C に対する支 払いによって履行しなければならないと考えることを導くにすぎない。し たがって, 本件は, 債務者が (本来の) 債権者以外の者に対して支払うに あたり, 債権者が誘引したのではない錯誤に陥っているという特徴がある」 と述べる。そのうえで当裁判所は, 債務者が誤って譲受人に過払いをした 場合に関する①判決, 債務者が給付にあたり債権譲渡があったと錯誤した 場合に関する③判決, さらに, 1 つの債権に複数の差押えがあったとき に, 第三債務者が後順位の執行債権者に対して給付した場合に関する判 (36). 決を引用して, これらの判決と同様, 直接の不当利得返還請求権が認める。 そして, C の返還内容について, 利得消滅の抗弁 (ドイツ民法818条第 3 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 23( 815 ).

(29) 項) が認められるかどうかについてさらに審理すべく, 原審に差し戻した。 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. (37). ⑧連邦通常裁判所第 5 民事部2012年 7 月 6 日判決 原告 A は, B の私有地にある消防車接近地帯に自己の自動車を放置し た。被告 C は, B との間で, B の土地に無断駐車をしている自動車を撤去 する旨の契約を締結した。C は, B から, 無断駐車をした者に対する損害 賠償請求権の譲渡を受けた。C は A の自動車を移動させ, A が撤去費用 を支払った後, 自動車の保管場所を A に伝えた。A は, その費用が高額 であると考え, C に対して過払い分の返還を求めた。第 1 審は A の請求 を認容した。C の控訴に対して, 原審は, C が A の自動車に対する留置権. (36). 連邦通常裁判所第7民事部1981年10月8日判決 (BGH Urt. v. 08. 10.. 1981VII ZR 319 / 80, BGHZ 82, 28):他に劣後する執行債権者に対する第 三債務者による直接の返還請求について,原審が,第三債務者は執行債務 者に対する義務の履行を目的としているとして,給付受領者は受領した執 行債権者ではなく執行債務者であり,直接の返還請求が認められないと判 示したのに対し,第7民事部は,次のように述べて,第三債務者の直接の 返還請求を認める。まず,第三債務者の給付目的について,第三債務者 は,執行債務者に対する義務を履行するという目的と同時に,移付 (     .

(30) ) によって発生する執行債権者の取立権を消滅させる目的も有し ており,執行債務者が差押後は支払受領権限を失う一方で,執行債権者は 自己の名で取り立てることができるので,第三債務者にとっては後者の目 的が重要である。したがって,第三債務者の執行債権者に対する給付が認 められるところ,他に優先する執行債権者がいる場合,他に劣後する執行 債権者には取立権が存在しないので,その給付の法律上の原因が欠けると 述べる。また,直接の返還請求を認めることは,差し押さえた債権が存在 していなかったという類似の状況における異論のない帰結と同じくするも のであり,反対に第三債務者の執行債務者に対する返還請求を認めること は,他に劣後する執行債権者にその順位を超える利益を与えることになり 正当化されないと述べる。 (37). BGH Urt. v. 06. 07. 2012−V ZR 268 / 11, NJW 2012, 3373.. 24( 816 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(31) の行使によって圧力を加えて給付をさせているとして, これを棄却した。 C 上告。. 論. 第 5 民事部は, A が行った給付が, 土地所有者が受けた損害を超える (38). 場合に, A にドイツ民法812条第 1 項第 1 文前段に基づく不当利得返還請 求権を認めた原審の判断は正当であるとする。しかし, 侵害を受けた土地 所有者が, レッカーサービス業者や代金回収業者が撤去費用についての支 払場所にすぎない場合だけでなく, 運転者に対する損害賠償請求権をこれ らの業者に譲渡した場合にも, 利得債務者となると述べる。そして, ②④ ⑥判決を引用しつつ, 基準となるのは, 事態適合的な倒産リスクの分配で あり, 巻戻しを各原因関係の内部で行う場合に限り, これが保障されると 述べ (⑥判決引用), この観点は, 無断駐車によって土地所有者・運転者 間で生じるような, 法定債務関係に基づく場合でも正当性を有するという。 その理由として,「土地所有者は通常運転者のことを知らないけれども, 土地所有者から委託を受けたレッカーサービス業者の倒産リスクではなく, 土地所有者の倒産リスクの負担を運転者に要求することができる。他人の 土地への駐車は運転者に直接帰責しうるのに対し, 運転者は被侵害者によ るレッカーサービス業者の選定に何らの影響も与えていないからである。 レッカーサービス業者や代金回収業者の倒産リスクをこれらの委託者たる 被害者に課すことが望ましいように思われる」と述べる。 また, 当裁判所は, ①判決において譲受人に対する不当利得返還請求権 が認められたのは, 譲受人の振舞いからだけでなく, 当該事情によればそ. (38). ドイツ民法812条第 1 項第 1 文:[返還請求権] 法律上の原因なく他人の給付又はその他の方法によってその他人の損失. によりあるものを取得する者は, その他人に対して返還義務を負う。 (訳は, 椿=右近編・前掲注(13) 6 頁〔右近健男〕による。) 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 25( 817 ). 説.

(32) の過払いを債務者・譲渡人間の法律関係に帰責することができず, その結 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. 果, 債務者・譲渡人間の関係の外側に過払いの原因があるという考慮から でもあるとする (①⑤⑦判決引用)。これに対して, 本件では, C の振舞 いを B に帰責することは容易であると解する。すなわち, 原審のいう C の 圧力は, 「通常の権利行使であり, 委託者たる B は, このことを計算に入 れておかなければならない。C が見積もった費用は, BC 間の枠契約から B に周知のことであり, この費用が B の償還可能な損害を超える限りで, 留置権の圧力のもとで A が行った過払いは, レッカーサービス委託の予 見可能な結果である。したがって, 過払いを AB 間の法律関係に帰責する ことができる。 C が B の知らないところで A からの支払いを受領したこと で保管場所を伝えた場合に限り, 異なった判断が問題となるが, 本件はそ うではない」 と述べ, 原審の判決を取り消したうえで, 第1審の判決を変 更し, A の請求を棄却した。 (39). ⑨連邦通常裁判所第5民事部2014年 7 月 4 日判決 原告 A の自動車が, フィットネススタジオ B の来客用駐車場に無断駐 車されていた。土地所有者でもある B は, 被告 C との枠契約に基づいて, 本件自動車の撤去を委託した。これについて, 総額250ユーロの報酬が合 意され, B は, 無断駐車に基づいて生じる A に対する請求権を C に譲渡 した。C は, 本件自動車を撤去し, A の妻 M に対して, 撤去によって生 じた損害額である250ユーロが支払われれば直ちに A に保管場所を教える 旨を電話で伝えた。A は, 弁護士 N を通じて, 100ユーロの支払いと引き 換えに保管場所を教えるよう C に求めたが, C はこれに応じなかった。こ れを受けて, A は120ユーロを供託したが, それでも C が保管場所を教え. (39). BGH Urt. v. 04. 07. 2014−V ZR 229 / 13, NJW 2014, 3727.. 26( 818 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(33) なかった。C が250ユーロに付加価値税を加えた額を A の支払額と見積もっ たため, A はその差額をさらに供託して C から保管場所の連絡を受けた。. 論. その後, A は, C に支払った金額が高額であると考え, C に対して, その (40). 返還を求めたほか, この間の弁護士費用 (700余ユーロ) について免責を 求めた。第 1 審は, A の支払うべき費用を100ユーロとしたうえで, A の 免責請求権を認めた。C の控訴に対して, 原審は, A の支払う費用を175 ユーロに引き上げたうえで, A が N に依頼した時点では, C は留置権を 有しているため, 本件自動車の返還について遅滞に陥っていないとして A の免責請求権を否定した。A が第 1 審の判決の回復を求めて上告する一 方, C も返還額の引き下げを求めて上告した。. 本稿とは直接関係のない A の免責請求権に関する判断は割愛する。第 5 民事部は, C の上告に対して, ⑧判決を引用しつつ, 本件では A が C に対して, 供託金の自己に対する支払いについて同意を求めているが, A のみが供託者として供託手続に関与しており, C は供託申立てにおいて受 領権者と指定された者であることから, ⑧判決とは異なり, AC 間におい てのみ利得調整が行われると述べる。また, A の C に対する不当利得返 還請求権を812条第 1 項第 1 文後段に基づくものとした原審の判断を是認 する。. (40). 免責請求権 (Befreiungsanspruch) のことを指す。この内容については,. 渡邊力「一般免責請求権論―ドイツ法の紹介と日本法への示唆―」法と政 治61巻 4 号 (2011年) 103頁, とくに115頁以下。 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 27( 819 ). 説.

(34) (2) 小括 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. (2. 1) 紛争の実態 (2. 1. 1). 債務者の支払いが法律上の原因を欠くこととなった事由, およ. び, 債務者の請求の相手方 まず, 債務者の支払いが法律上の原因を欠くこととなった事由について, 譲渡債権が存在していなかった事例を判断したのが②④⑤⑥判決, 譲渡債 権の過払いがあった事例が①⑧⑨判決, 債務者が債権譲渡を誤信した事例 が③⑦判決であると区分することができる。このうち, 譲渡債権が存在し ていなかった事例が問題となった②④⑤⑥判決は, いずれも債務者・譲渡 人間の契約関係 (②④判決:保険契約, ⑤⑥判決:継続的供給契約) 自体 は有効に存在しており, 問題となった債務者の支払いに対応する債権が発 生していなかったにすぎない場合 (②④判決:保険詐欺を理由とする免責 (41). 事由の発生, ⑤⑥判決:譲渡人の反対給付の不存在) である。 次に, 債務者の請求の相手方について, 連邦通常裁判所は, ②④⑥⑧判 決は譲渡人を, ①③⑤⑦⑨判決は譲受人を指示する。上記事由との関係で 細分化すると, 譲渡債権が存在していなかった事例に譲渡人を指示するの が②④⑥判決, 譲渡債権の過払いがあった事例に譲渡人を指示するのが⑧ 判決, 譲受人を指示するのが①⑤⑨判決, 債務者が債権譲渡を誤信した事 例に譲受人を指示するのが③⑦判決である。. (2. 1. 2) 譲渡債権の性質 譲渡債権の性質について, ①∼⑦判決は契約関係から生じた債権, ⑧⑨ 判決は損害賠償請求権である。このうち, 契約から生じた債権について, (41). 譲受人説を主張するロイターが, この点を特に指摘する。Dieter. Reuter, in : Dieter Reuter / Michael Martinek, Ungerechtfertigte Bereicherung, Bd. 2, 2. Aufl. (Mohr Siebeck, 2016), S. 156. 28( 820 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(35) ①判決では利益配当金請求権が, ②③④判決では保険金請求権が, ⑥⑦判 決では継続的供給契約に基づく代金債権が, それぞれ問題となった。. 論. (2. 2) 他の三角関係型との比較および給付関係の所在 譲渡人に対する請求を指示する判決では, 債権譲渡担保およびファクタ リング契約は, 経済的に指図事例に近いものであるとして, 債務者の譲渡 人に対する給付を認める (②④⑥判決)。⑧判決も, これら②④⑥判決を 引用して債務者の譲渡人に対する不当利得返還請求権を認めているので, 債務者の譲渡人に対する給付を認めていると考えられる。 譲受人に対する請求を指示する判決では, 譲渡債権の過払いがあった事 例につき, 債務者の支払いが譲受人の強い要請に基づく場合には, 譲渡人 の譲受人に対する給付を認められないことの反射として, 債務者の譲受人 に対する支払いを認めるもの (①⑤判決), 債務者が債権譲渡を誤信した 事例につき, 第三者弁済に妥当する規律にしたがって債務者の譲受人に対 する給付を認めるもの (③判決), 誤って債権者以外の者への支払いがあっ たとして, (明示はしていないが) 債務者の譲受人に対する給付を認める もの (⑦判決) がある。 以上に対して, ⑨判決は, 812条第 1 項第 1 文後段を適用しており, 供 託による財産移転であることから, 給付関係の存在を認めていないものと 考えられる。. (2. 3) リスク分配において考慮された当事者の事情 (2. 3. 1) 債務者の事情 譲渡人に対する請求を指示する判決では, 債務者が譲渡人を契約関係の 相手方として選択したこと (②判決), 他方で譲受人を選択していないこ と, あるいは, その選択に関与していないこと (⑧判決), 債権譲渡によっ 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 29( 821 ). 説.

(36) て債務者の地位に変動があってはならないこと (①④⑥判決), 保険給付 債 権 譲 渡 に お け る 三 角 関 係 型 不 当 利 得 論. によって保険金受取人にその正当性についての信頼を与えたこと (②判決) が挙げられている。 譲受人に対する請求を指示する判決では, 債権譲渡を債務者が譲受人を 供託手続の受領権者として指定したこと (⑨判決) が挙げられている。. (2. 3. 2) 譲渡人の事情 譲渡人に対する請求を指示する判決では, 譲受人が正当な権利 (留置権) に基づいて債務者に対して支払いを要求したことは, 譲渡人・譲受人間の 契約関係において譲渡人が計算に入れておくべきこと (⑧判決) が挙げら れている。 譲受人に対する請求を指示する判決では, 過払いの場合や債権譲渡が誤 信された場合には債務者の支払いを譲渡人に帰責できないこと (①③⑦判 決) が挙げられている。. (2. 3. 3) 譲受人の事情 譲渡人に対する請求を指示する判決では, 譲受人は債務者・譲渡人間の 補償関係と無関係であること (⑥判決), 債権譲渡通知を行ったにすぎな い場合には債務者に対して支払いを強要したとはいえないこと (②判決), 正当な権利 (留置権) に基づいて債務者に対して支払いを要求したにすぎ ないこと (⑧判決) が挙げられている。 譲受人に対する請求を指示する判決では, 債務者に対して支払いを強要 したこと (①⑤判決) が挙げられている。. 追記 本研究は, 科研費の助成 (15K21203, 22730099) を受けたもの である。 30( 822 ). 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月).

(37) Zum Bereicherungsausgleich in      .  Vergleich zwischen den Entscheidungen des BGH und den des BFH, Teil 1 Hisanori TAKI. 説. Die willentliche

(38)       .      wird mit dem Bereicherungsrecht      .  wenn es einen Mangel   das zugrunde liegende     . erfolgt nicht im    .          .   gibt. Die  Zustand, aber wird sie, wie man das zustimmt, von die zugrunde liegenden  .   beeinflusst. Im.      . .    insbesonder im so-. genannte !    . .    kommt es in Frage, wer Bereicherungsschuldner und -".     ist. Welche  . sein dem Problem  #$ .  gewertet ? Dieser Artikel untersucht das   .   und wie sein die  Problem um Anhaltspunkt dem Bereicherungsausgleich in       .  %. 法と政治. 69 巻 2 号 Ⅱ ( 2018 年 8 月). 論. 31( 823 ).

(39)

参照

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