<ca faire P que Q>について
著者
安達 博明
雑誌名
年報・フランス研究
号
36
ページ
5-14
発行年
2002-12-25
URL
http://hdl.handle.net/10236/9589
(9aね
he P que Q〉について
螂 明
0.は
じめに「事柄
Qの
生起」と「その後期間Pが
経過 したこと」を関係付けるために,フランス語では 〈
ユ
yaPque Oや
←
om Pqueの
と並んで
,〈鉾
hire P queO(1)も
使用 される.(1)ca金
五t vingt ans qu'on dome de 19argent aux ttnds patrons pourembauche■etils n'embauchent pas.∠ 』√24/3/98
この構文が含んでいる (“ 罰晨
P)は ,金
額な どの合計をPと
して提示するときに使用 され る表現でもある
.(ca価
晨Pque Oに
お けるP,つ
ま り(1)における"宙ngt ans"も 「合計」 とい う操作 によ り算出 されたもの と考えるこ
とができるだろ うか。本稿では
,そ
のよ うに考 えることが妥当であるかどうかを検討した上で
,(ca hire P queのとは何をどのように伝える表現であるか
を,用 例の調査,イ ンフォーマントが提供する情報と作例をとおして論じる。
コーパスは主に
Le Monde sur CD‐ROM 97‐98を
使用 した②
.1。
〈
鉾
faire P que OのP
② は買い物の場面で
,支 払いをする側が
,購
入しようとする品々に対して
全部でいくら払わなければならないかを店員に尋ねるときに使用する表現であ
る
.6
く9a fairc P quc Q〉 について (2)En tout,ca hit combien?このように
,(ca hire P)は,「合計」という操作が要求される場面で使用さ
れる.② において
(鉾 hire P〉が果たしている機能は図
1のように示される。
図
1巨 コ 十 匝 コ 十 匝 コ
+…
→
Eヨ
次に,(鉾
faire P que Oを説明する場合についても図
1が適用可能である
かどうかを検討してみよう
.
、
(D caf五
t quatre ans que je suis en p五 son,que j'ai tout Oa dans mon ventre.五 ″「7/5/980で
は"an"が
合 計の対象 とな つてい る と考 えるこ とが可能 であ るので,0に
おいて発話者が
(鉾Lire P queのを使用する動機も
,(2)と
同じよう
に,「合計」とい う操作の必要性を感 じているからだと説明できそ うである.と
ころが
,同
じ論理で ④ は説明できない.(O Jl叩prendsle iane■S depuis 5 moiso Ah,je rai app五 s pendant 3 mois iya 2 ans.?ca fait hut mois queje rapprends.
③ では
,Pは
断絶のない連続した期間である.そ こで,明 らかに Pが連続
した期間ではないことが伝わるような文脈で〈
鉾
faire P que Oを使用した ④
をインフォーマン トに提示 したところ
,文
の容認度が下がつた.単
に 「合計」 とい う操作が必要なだけであれば,Pが
連続 した期間であることは関与的では ないはずである.し
たがつて,0の
不適格 さも説明できる別の原理が必要 と なる.また
,次
の ⑤ ,③ も「合計」 とい う概念では説明が困難な例である.(5)ca金
五sait un bout de te】mps qulon ne vous voyalt plus,monsiburD)esnos,s'exclama le barman,qulest‐ce qulon vous sert?二 』ご14/8/98
(6)Lui,rancien journahste a L.Humani“
‐
Dimanche,a可
Ourd・hui auchOmage,dit que ca金五t bene lurette qul■ a entett l'id“ de=6volution,
く9a faire P que Q〉 について les pr6bnmes'9。 ″ 28/1/98
0で
は
,"aゴ0は計数的な性質を持つために「合計」という概念となじむが
,0,③
のように非計数的な性質を表す名詞句が
Pと
して使用された場合
,P
は何かが合計された結果であるとは考えにくい
.そこで以下では
,「合計」という概念による ③ の説明を棄却した上で
,③‐
③
を同時に説明する 〈
caねむ
e P queのの機能とはどのようなものであるかを提
射 る。
2.que節
中で描かれ る事柄Qの
分類この章では 〈鉾
faire P que Oに
お ける事柄Qを
性質に応 じて分類 した上で
,こ
の構文が使用 され る環境 を確認す る.(つFaut〔rttter!ご est tottours nOus quiprenons,ca fait des amees que(鉾 dureolls nous font monter la haine,ユ s veulent nous elire vOter Le Pen.
乃 И9/10/98
(O Cela ht Orlze ans queje suisici.… Je宙s tottourS dansla meme maison avec qu■nze autres mes qu. se sont toutes retrouv6es la dans des clrconstances identiques aux Huennes.″ 5/12/98
事柄
Qを
叙述する動詞句が
,0に
おける「継続」や
,③
における「状態」
といった,あ る種の持続を表わす事行のタイプに属する場合
,事
柄
Qは
生起後
期間
Pに
わたつて持続する
.こ
の事柄
Qの
性質を
type lと呼ぶこととし
,持
続を太線で表わすことで,そ の性質を次のように図示する。
Xは
事柄
Qの
生起
時点
,Yは
期間
Pを
算定するのに必要な時点とする
.図
2 Ctype l)X Y
(0)Cela ttdt dtta bね n longtemps que la radidogle est devenue une acti宙
8
〈9a fairc P que Q〉 についてa part dans l'exerciに e】m[6山al contelnporain,estme J6rOme Cahuzac,
d6pu“ (Parti socialiste)de Lot‐ et‐Garonne,rapporteur de h loi de
hancement de la鍮多cu五
“
sociale.五″「5/8/98
(10 A renttte de la"Maison des soc通
“
s",comme on nomme encoreお i,a Arras,la Bourse du travan,I)idier]Bargade a d6HDlJb sa chaussette,
qu9il continue a t面
に。
ter en 6coutant du Johnny.ca金五
t quatre ans qu'ila commenc6;la chaussette rnesure a p“sent 80 1natres de long.
LM「1″1/98
事柄
Qを
叙述する動詞句が
O,(10)の
ように瞬間的に成立する事行のタイ
プに属する場合
,事
柄
Qそ
のものは動詞句の性質上
,生
起後持続することはな
いが
,そ
の後別の事柄
(cと呼ぶことにする
)が
期間
Pに
わたつて持続してい
る
.例
えば
,0で
は「変化 したこと」力`
事柄
Qで
あり
,変
化後の状態が事柄
Qで
ある。
(10)では
,「始めたこと」力`
事柄
Qで
あり
,先
行文脈で明示されて
いるノ
“
屁盟
“
ゴ加
"″
“ “
麟ム
“
ι
6レ此山η
/が
事柄
Qで
ある。この事柄
Qの
性質を奴
pe 2と呼ぶこととし
,事
柄
Qの
持続を
2重
線で表わすことで
,その性質を次のように図示する
. 図3 Gpe2)
(11)"Ceh fait trente et un ans que je ime",raconte Ben en roulant de
五ns p6Lrds odorants.∠ 』√28/11ノ
98
(12)Quand je parle din“
脚
tion aux jeunes m6diateurs,ユ s me disent: "Ca hit 10ngtemps qulon met des tites dans le cou∝ ouse"ns ne sesentent pas du tout les repnSsentants dlune comlnunaut6。 二』ど12/4/97
(11)で
は
,事
柄
Qを
叙述するために用いられている動詞句は持続を表わす
事行のタイプに属するが
,0や
③ に見られるような
,期
間
Pに
おける絶え
間ない持続ではなく
,断
続的な持続を描写している
.ま
た
(12)では
,事
柄
Q
く9a faire P quc Q〉 について
9
を叙述す るために用い られている動詞句は瞬間的に成立する事行のタイプに属するが
,⑨
や
(10)に見られるような
,1回
きりの出来事ではなく
,繰
り返さ
れる出来事を描写している
.つ
まり
(11),(12)は習慣を表わしている
.この事
柄
Qの
性質を故
pe 3と呼ぶこととし
,「断続的な持続」
,あ
るいは「繰 り返さ
れる出来事」を太線で表わすことで
,そ
の性質を次のように図示する
.図
4 Ctype D以上
,事
柄
Qを
性質に応じて
3つ
に分類したわけであるが
,図 2か
ら図
4をとおして分かることは,区間
X‐Yに
おいて持続する事柄が1つ存在するとい
うことである。それは
,(7),(8),(11),(10のように
,事
柄
Qと
して直接表現さ
れる場合もあれば
,0,(10)の
ように事柄
Qを
とおして間接的に表現される場
合もある
.30(ca fahe P que Oの
機能
前章では,事柄
Qの
分類をとおして
,区
間
X‐Yに
おいて持続する事柄が
1つ存在するということを確認した
.ところで
,「持続する事柄が存在する」とき
,その持続 に付随す る「ある時間量」が必ず存在する
.こ
こでい う「ある時間量」とは,"an‖ ,‖moi」',"semaine"のよ うな語で とらえ直 された時の量ではな く,
単に経過 した時の量 を指 している。
すなわち
,(ca価
晨 P queの の表現の対象となるのは
,Qを
とおして直接
的あるいは間接的に言及される「持続する1つの事柄」と
,そ
れに伴 う「ある
時間量」
(以下
Tと
呼う である
.で
は
,「合計」という概念を棄却 した上で
,T
とPと はどのような関係にあると考えればよいだろうか
.まず ③ を考えてみ
よう。この場合
,発
話者は事柄
Qの
存在を踏まえ
,Qに
ついて
Tを
認め
,"aゴ1という単位を用いて
Tを
Pと して提示していると考えられる
.この過程のうち
10
〈9a faire P quc Q〉 についてTの
認識以降を示 したのが図5で
ある. 図 5I T _1→
│
こ
uat拠五
五
ζ
leと
して提示) 「合計」とい う概念では不適格 さが説明できなかつた ④ も,図 5に
したが うと説明できる.つ
ま り,Tと
は 「持続する1つ
の事柄」に伴 う「ある時間量」 とい うものであつた。ところが,0で
は,持
続する事柄が2つ
であるために,Tを
1つ と認定することができなくなり,容
認度が低下したと考えられる. では,図
5に
したが うことで,(5),(6)に
はどのような説明が与えられるだ ろ うか。これ らの例の場合,発
話者はTを
性格付けていると考えられる.性
格 付けをうけた後のTを
TOと すると,こ
の過程は図6の
ようになる. 図6I T l→
I To l
ところで,図 5や
図6で
示 される過程には,発
話者の主観が大きく関与して いると考えられる.例
えば,"aゴ1とい う単位を導入すれば"Z anざ と表現で きるようなTを
考えてみよう.こ
の場合,発
話者がTを
‖Z anゞ9と表現する 必然性はない.そ
れは,(19,(1の
のようにPを
概数 として提示 している例か ら明らかである.(19‖ Cela fait une宙nl婁由me d'anttSes que le persomel“n61■b dtta
d'horares am6na"s etinと 宙duah“ ゞ
t souhgnele DRH.″
17/9/98(10 Cela Lit ptts de d破 ans quele pユote ne ttside plus dans son pays,lui
p“
“
rant les douceurs climatiques et i∝ ales de la prmcわ au“ de
Monaco.″
3/11/98Tに
対す る性格付 けについて も同様で,あ
る人物がTを
"longtemp」 'と性格付 けた としても
,別
の人物 に とつては "longtempゞ9は不適切であるかもしれ ない。換言す ると
,Tを
どの よ うに表現す るかは発話者によつて異なるとい〈9a fairc P quc Q〉 について
であると言 える.
では
,(ca hre P queの
は
0)の
ように使用可能な 〈
鉾
fak)P〉を含んで
いるにもかかわらず,なぜ 「合計」という概念では説明できない例が存在する
のであろうか,それは,(鉾
faire P queのが表現の対象とする「時間」とい
うものが不連続な存在ではないからである
.時
間を ‖
an","moiゞ・
,Wsemaind9 といつた語で表現す ることは可能であるが,こ
れ らの語は,連
続 した性格 を持 つ 「時間」 とい うものを発話者が必要なだけ切 り取つて扱 うために存在 してい るのであって,「時間」がある単位のもとで分割 された状態で存在 しているということを裏付けるものではない。つまり,(鉾 価晨
P queの
において
,Pは
合計の結果ではない. 4。depuis とのLヒ較 「事柄Qの
生起」と「その後期間Pが
経過 した」ことを関係付ける手段 として
,〈ca hire P queのの他に
(Q depuiS P〉も使用される
.(1→ La tension sociale est v■ ve en Martidque alors que la rVe des
ouvners de la banane dure depuis ptts dlun lnoiso I』 √15/12/98
(10 Monique Le Merre■
m五
ねnte s∝ialiste,est run des pmers de ce mouvement,qui dure depuis le 14 1nars.″ 31/10/98(19は
幅のある期間を表わす名詞句が
depdsに
後続する場合
,(10は
時
点を表わす名詞句が
depuisに
後続する場合である.では
,(ca hire Pque Oと 〈
Q depuis P〉の間にはどのような相違点が認められるだろうか
.(1つ Le Pakistan volsh,qui sbst dtta militahment al丑on“
p譴 ぽ魏
hs
の 法 壷 gυ′燿
"a″
s avec rlnde,a auss比 飢 発agien a―
ant qu・n se19■6sewait le droit de prendre les lnesures approprlees‖ pour garantir m
“
cu五
“
.五″「13/5/98
12
〈9a fairc P quc Q〉 についてQが
生起した回数を表わす表現と共起可能であるのに対して,(韓
hire P queの はそのような表現とは共起できない
.(18)士ca ht deux semaines quej'ai vu Paul avec une me trois fois.
回数を明示する表現を挿入してしまうと
,「ポールがある女性と一緒にいる
ところを目撃する」という事柄の時間軸上における′
点在を表すことになつてし
まい
,「期間Pに わたつてある事柄が持続していること」にはならない
(図つ
.図
7
-(11),(12)に おいても事柄Qは
確力城こ時間軸上で点在 しているが,で
はなぜ (11),(12)が 容認可能であるか とい うと,点在す る出来事はま とめて とらえられ てお り,あ
たか もひ とつの事柄が持続 しているかの ように解釈 されている(図8).ひ
とつひ とつの出来事は独立性 を失つているのである。 図 8したがって
,(ca Lhe P queの
と 〈
Q depuis P)の間の相違点を次のよう
にま とめることができる.
〈
韓
hire P que o・期間Pにおける事柄
Qの
点在は表せない
.(Q depuis P)
〈9a l間rc P quc Q〉 について
5。 素31bりに
本稿では,合計という操作が要求されるときに使用される
(ca脳艶
P〉を含
んでいることにとらわれず
,(ca hire P)に沿つて 〈
●
faire Pque Oの
機能
を規定することを棄却し,(“ 価h P que◎ にのみ適用できる説明原理を提
案した.そ れは
,「〈
鉾
Lire P queのは,事柄
Qあ
るいは事柄
Q'の持続に付
随するある時間量
Tを
,発話者の主観 によつて評価する」 とい うものであった.また,(9a脳腱
P queの
と〈
Q depuisP)の
間の相違点についても言及した
.ところで
,入
手 した例 を観察す ると,hireの
時制 は単純時制か,ま
たは迂言法 を用いた近接未来形であった
.ま
たL・ireが 否定 されている例は見当た らなかつた③.こ のことから,(鉾 価麗
P que oは
「
hireは
否定できない」や
「hireは複合時制で表示できない」といった制約を持つと考えられる.さ らに
,〈
ca hire P que Oの
機能は 佃
y a P queのや ←
om Pqueの
とも異な
るはずである.こ れらについては今後の課題としたい
.注.
1。 本稿ではこの構文における
cehと
ぃ の区別 は行わない.以
下 この構文に言及するときは 鉾 のみを表記する.
2。 刊行年月 日を記 した用例は Le Monde sur CD‐ROM 97‐
98に
よるものであり
,記
していない ものは作例である.ま
た,用
例 中の斜字体は筆者 による.3.インフォーマン トによると
,memeを
挿入す るのであれば,ne。¨pasに
よる否定は問題 ない との ことである.
Ca ne Lit meme pas delⅨ ans qu'ユapprend leル
ゃ
Onais.参考文献
〈9a fairc P quc Q〉 について 古石篤子 (1984):「
DEPuS≪
d6艶ique≫の分析」,『フランス語学研剣,第
18号
. (1986):「≪Depuis》 を含む現在形否定文の問題 一 「DEPUIS
≪
d6ictique》の分析」追記一」
,『フランス語学研列
,第
20号
.松村瑞子 (1990:『 日英語の時制と相 一意味・語用論的現点から一』
,開文
社出版.L Gottc,R(1999:θ
″盟盟a“
あ ルha“
Л曖″rasc HaChette.Charaudeau,P(1992):θ
腸 ““2“
グレ艶nsθ ι `カノeっ
res螢 ",Hachette.Vendle■Z。 (1967):
“
Verbs and Times'' ,Ittn夢 L農離
た
SIh f甍圧た
sqpれ%COmeu
University Press,pp.97‐121.
Co】叩us:I■ Monde sur CD‐ ROM 97‐98