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〈研究ノート〉金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関 : 住宅金融制度とのかかわりにおいて

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93 〈研究ノート〉       

金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関

一住宅金融制度とのかかわりにおいて一

有 馬 敏 則 1 は じ め に  アメリカでは,金利の自由化にともなう金融イノベーションの進展とともに,中小規模 の金融機関とくに貯蓄金融機関の経営リスクの増大が注目を集めている。今年3月のオハ イオ州での貯蓄貸付組合(Savings and LQan Associations, S&L)の取り付け騒ぎに続 いて,5月中旬にはメリーランド州で連邦貯蓄貸付保険に未加入のS&しに対する取り付 け騒ぎが発生した。S&Lは小口預金をもとに住宅金融を主として行う中小規模な貯蓄金 融機関のひとつである。3月のオハイオ州での取り付け騒ぎのときは,約70のS&しが約 !週間営業停止を行ったが,今回も一地方の金融不安とはいえ,事態を放置すると他州に も波及して,さらに大規模な混乱の騒ぎ金になりかねないと懸念されている。  そこでメリーランド州当局は.S&しの預金引き出し額を一口座!ヵ月当たり1,000ド ルに制限するとともに,7種類の緊急立法措置により不安を鎮静化させようとしている。 これらの法律は,いままで民間保険のみに入っていた102のS&L(預金総額90億ドル) すべてが,連邦貯蓄貸付保険公社(Federal Savings and Loan Insurance CorPoration, FSLIC)に加盟することを義務付けるとともに,弱小S&しには4年間の加入猶予期間を 与え,その期間,新設のメリーランド預金保険基金公社が預金者を保護することを規定し ている。また問題のあるS&Lを州の管財下におくか接収する緊急権限を州知事に付与す ることも定めている。州知事は「FSLICへの加盟ないし州の支援資格要件を満せられ ないS&Lは,強制的に合併もしくは資産を清算させる」との強硬姿勢を打ち出している。  一般に貯蓄金融機関としては,S&しや相互貯蓄銀行(Mutual Savings Banks, MSB).  ・本稿は目本住宅総含センターの助成金による研究成果の一部である。なお拙稿「アメリカにおけ   る最近の住宅金融問題」r金融ジV一・ナル』1985年5月号も併せて参照されたい。

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 94 彦根論叢第232号

信用組合があげられる。そのなかでもS&しと相互貯蓄銀行は,アメリカの住宅金融の主 要な担い手である。アメリカの住宅金融は,ほとんどが民間金融機関により行われてい る。たとえば住宅モーゲジ(mortgages,抵当証券)残高を融資機関別にみると,ユ983年 末に主要民間金融機関が57.2%を占め,そのうちS&しだけで31.7%,相互貯蓄銀行が 8.3%を占めている。これに対し政府関係機関は,7.1%にすぎない(詳しくは,96ページ の第1表を参照されたい)。政府関係機関は,民間金融機関活動支援を基本とし,とくに 民間三宅金融の変動を緩和するため,モーゲジの第2次市場(流通市場,リファイナンス 市場)でのモーゲジ購入や,S&L等への資金供与の役割を果たしで、・る。  アメリカの住宅業界を人間に例えるならば,住宅建設が骨格で,住宅金融制度が建設資 金を円滑に循環させる血管であり,政府関係機関が神経系統に相当するといえるだろう。  しかし1980年代の高金利水準持続により,このような構造は変化しようとしている。ア メリカの住宅金融制度は,前述のように金利自由化の大きな流れの中で,金融イノベーシ ョンにともなう高金利商品の導入と相次ぐ諸規制緩和により,不安定性を増大させるとと もに,政府も介入を避ける姿勢を示し始めている。また住宅金融市場における金融イノベ ーションの進展は,他の分野での金融イノベーションにも様々な影響を与えている。  したがって本稿でぱ,まずアメリカの住宅金融制度について概観し,民間金融機関とく に貯蓄金融機関による住宅金融と政府の役割について検討を加え,アメリカのモーゲジ市 場における金融イノベーションの進展の状況と,貯蓄金融機関とくにS&しの当面する問 題について考察する(消費者割賦信用を主とする信用組合は除外する)。 ff アメリカの住宅金融制度  !.住宅金融制度の概要  アメリカの住宅金融制度を図示すると,第1図のようになるであろう。  住宅金融制度における政府の役割は,1949年住宅法に明示されているように,あくまで 「民間企業により満たすことを基本とし,公共住宅の建設はきわめて限定し,民間企業の 活動を防げないようにすべき」であるというものである。すなわち政府の役割は,直接, 住宅を供給することではなく,民間主導の住宅建設を適正に誘導することにあり,①信用 補完制度と②第二次弓場(流通市場,リファイナンス市場)制度の整備の二つの基本施策 で,民間住宅金融の円滑化を図っている。  これらの民間金融機関は,相対的に短期の資金で長期の融資を行うためリスクが大きい

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債券市場 合同債券代り金 合同債券発行    金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機.関  95  第1図 アメリカの住宅金融制度 偵券発行       連邦政府 起邦住宅貸付銀行 理讐藝会〔FHLBB> 連邦住宅貸付銀{丁 (FHLB,12行  出資 モ寸 一∼1

i

 財務省 連邦住宅貸付抵当 協会(FHLMC) 零 出 資「一一一一一一w 住、都市開発省   退役軍入局  (HUD) 1 1 (VA) 政府抵当金庫 {aNMA) 連邦抵当金庫  (FNMA) 抵当証券オペ

e

抵当証券オペ

e

連邦住宅局  (FHA) __h  I  I抵当債券の保証 ②1(mortgage backcd     ロ  の  :

mL

u 貯蓄貸付組合  (S&L) 根互貯苔銀行 (MSB)  生命保険会社  cuc)

e/ @

   o

商業銀有  (CB]        @ 一一m ロ司卜’保険        ① → 資金調逮手段 一 抵当証券(mortgage5}のfk O金の流れ  ①第一次市場(発行市場)  ②第二次市場(流通市場〉   なお、第二次市場では上記の他年金基金等の    機閃投資家がモーゲジを保有している。 〈出所〉 モーゲ/ハンカー  {MB) 借入者(個人・ 建築業者) (rロortgage yd芒者了〉

1] Krnsmm 保証・保険 __ 一 r欧米主要国の公的金融制度一公的金融と民聞金融に関する海外調査報告』工983年7月, 18ページ,大蔵省「金融制度調査会資料」その他。 ものの,住宅P一ン債権が抵当証券(モーゲジ)化される第一次市場(発行市場)が存在 し,その抵当証券の売却市場である第二次市場(流通市場,リファイナンス市場)が発達 し,後述する連邦抵当金庫など政府機関による債権の流動化システムが,住宅金融の増大 を可能にしたといえるだろう。  2.民間金融機関による住宅金融  第1表は,モーゲジの融資主体別残高である。主要民間金融機関の住宅融資に占める割        D 合と残高について,以下概観することにしよう。  (1)貯蓄貸付組合(S&L)  S&Lは,連邦法または州法により設立された住宅金融媒介機関であり,連邦法免許に よるS&Lは連邦住宅貸付銀行理事会(Federal Herne Loan Bank Board, FHLBB)の指 導監督をうけ,州法免許によるS&Lは州の監督をうける。第2表に示されるように1983 年末で前者は1,553組合,後者は1,960組合である。また前者は,連邦住宅貸付銀行(FH LB)制度と連邦貯蓄貸付保険公社(FSLIC)への加盟が義務づけられているのに対 1)詳しい統計数値については,前掲拙稿を参照されたい。

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96 彦根論叢 第232号

      第1表 機関別モーゲジ融資残高

(単位,100万ドル,%) 一一一

唐?鼈鼈鼈

乏」・98・

1981 1982 1983 合 計

民間金融機関

商 業 銀 行

相互貯蓄銀行

貯蓄貸付組合

生 命 保 険

政府関係機関

政府抵当金庫

農家住宅局

連邦住宅局・退役軍:人局

連邦抵当金庫

連邦土地銀行

連邦住宅貸付抵当協会

モーゲジ・プール

個人・その他

1,124,113 (100. 0) 752, 159 (66. 9) 173, 250 (15. 4) 8?, 547 (7. 4) 457, 905 (40. 8) 37, 457 (3. 3) 76, 302 (6. 8) 4, 642 (O. 4) 1, 526 (O. 1) 5, 640 (e. s) 57, 327 (5. 1) 2, 099 (e. 2) 5, 068 (O. 5) 130, 023 (ll. 6) 165, 629 (14. 7) 1, 201, 648 (100. 0) 776, 617 (64. 6) 185, 145 (工5.4) 84, 147 (7. 0) 1, 245, e65 (100. 0) 738,3ユ9 (59. 3) 189, 578 (15. 2) 82, 082 (6. 6) 470,841 1 431,069 (39. 2) 1 (34. 6) 36, 484 (3. 0) 81, 588 (6. 8) 4, 765 (O. 4) 1, 387 (O. 1) 5, 999 (O. 5) 61,412 (5. 1) 2, 788 (O. 2) 5, 237 (O. 5) 148, 164 (12. 3) 195, 279 (16. 3) 35, 590 (2. 9) 90, 118 (7. 2) 4, 227 (O. 3) 1, OOI (O. 1) 5, 228 (O. 4) 71, 814 (5. 8) 3, 068 (O. 2) 4, 780 (O. 4) 200, 703 (16. 1) 215, 925 (17. 4) 1, 363, 206 (100. 0) 780, 310 (57. 2) 200, 650 (14. 7) 113, 213 (8. 3) 431, 743 (31. 7) 34, 704 (2. 5) 96, 476 (7. 1) 3, 825 (O. 3) 243 (O. 1) 4, 700 (O. 3) 77, 488 (5. 7) 3, 007 (O. 2) 7, 213 (O. 5) 268, 748 (!9. 7) 217, 672 (16. 0)  <出所> FeaeTal Reserve Bulletinより作成。 し,後者の加盟は任意である。 ところでS&しの資金源の約80%は貯蓄性預金であり,普通預金勘定の比重が低下して きているのに比べ,定期預金等の比重が増大してきている。しかし最大の住宅資金供給を 行うS&しの資金の大部分が預金であるため,住宅建設活動の激しい変動をもたらすこと になる。なぜなら金融引締めにより債券の金利が上昇する場合,より高い金利を求めて預

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  金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関  97

第2表S&しの数と資産

陣撫肩ヂ州法鰭陣

数lFSHc櫨膿。万満

1960 1965 1970 1975 198e 1983 1984 1, 873 2, Ol1 2, 067 2, 048 1, 985 1, 553 4, 447 4, 174 3, 602 2, 883 2, 628 1, 960 6, 320 6, 185 5, 669 4, 931 4, 613 3, 513 3, 394悼 4, 098 4, 508 4, 365 4, 078 4, 002 3, 040 71. 5 129. 6 176. 2 .o,38. 2 629. 8 771. 7 902. 7“ (注) 純よ予想値。 〈出所> The Banker, April 1985, p 18. 金が債券に流出する。そのためS&しの資金供給力は弱まり,他方,住宅資金貸出金利で あるモーゲジ・レートも上昇圧力が増し,住宅ローンは減少することになるからである。  S&Lは,本来的にはモーゲジ融資機関であるものの,資産運用は主として小世帯用住 宅が中心である。しかしS&しの自己金融資産に占めるモーゲジの比率は,1970年84.7       2)%,75年82.1%,80年79.5%,81年77,9%,82年68。3%と低下傾向にある。  (2)相互貯蓄銀行(MSB)  相互貯蓄銀行は,1980年までは州法に基づいて設立される相互会社の形態をとる場合が       3) 多く,大部分はニューヨH一クやマサチューセッツなど東部の州に偏在していた。相互貯蓄 銀行は零細資産保有者に安全な貯蓄の機会を与えるために設立されたため,資金運用も安 全性の確保が重視され,住宅モーゲジ融資の比重が大きいものの,最近の金融機関相互間 の競争激化とともに収益性も重要視され,資産構成の多様化とともにモーゲジ貸付けの比 重が低下している。MSBの自己金融資産に占めるモーゲジの比率は,70年73.0%,75年        4) 63.7%,80年583%,81年57.0%,82年54.0%である。  (3)商業銀行(CB)  S&しの住宅金融市場での地位低下にともない,商業銀行の相対的比重が増大している ものの,資金の流動性の観点からは,住宅モーゲジ融資の割合を低く押えようとする傾向 があり,顧客へのサービス的な色彩が強い。商業銀行の自己金融資産に占めるモーゲジの  2) Federal Reserve Bulletin, Flow of Funds Accounts, Assets and Liabilities Outst−  anding 1959−82, Aug. 1983.  3)1980年金融制度改革法により連邦法免許の銀行業務が拡大されたため,同法成立後,すべての   州法免許相互貯蓄銀行から,連邦制免許銀行への転換申請書が出された。  4) Federal Reserve Bulletin, ibid..

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 98 彦根論叢i第232号

      5) 割合は70年14.4%,75年16.3%,80年18.9%,81年18.7%,82年18.8%である。  (4)生命保険会社(LIC)  生命保険会社の住宅モーゲジ投資の比重は,保有総資産に対し,あまり高くない。しか し事務所等のビジネスむけ不動産に対する割合は高いといえる。また州当局の監督を受 け,モーゲジ投資に対しても株式や債券に対するのと同様に規制を受けている。生命保険 会社の自己金融資産に占めるモーゲジの割合は,70年37.0%,75年31.9%,80年28。2%,        6) 81年27.1%,82年25.0%である。  3.政府eaよる信用補完制度  (1)連邦住宅局(Federal Housing Administration, FHA)保険制度  1930年代の大恐慌の際経済再建のための政府の総合的民間金融助成策の一環として, 1934年FHAが創設され,民間住宅金融の促進を図るFHA保険制度が開始された。この 制度は,金融機関が融資を行う時にFHAに保険付勢申込みを行い, FHAでは借入予定 者の信用調査,物件の審査・評価等を経て,保険引受けを同意するものである。FHAの 信用補完により,金融機関の資金融資率が引き上げられる(最高限度は90%,特殊な場合 100%)とともに,貸付期問も延長され,現在では30∼40年の長期になっている。  住宅金融が未整備な時期に,政府によるこのような住宅金融助成策により金融機関は, 債権確保や資金硬直化を危惧することなく,長期の住宅モーゲジ市場に参入することが可 能となったのである。また住宅購入者にとってもFHA保険付き住宅は、一定水準以上の 優良な物件であり,このような物件を少額の頭金で購入する機会が拡大されることになっ たといえるだろう。  (2)VA保証(Veterans Administration Guaranty)  1944年に制定された「退役軍人再調整法(Servicemen’s Readjustment Act)」により創 設されたもので,退役軍人に住宅を建築または購入するための資金を有利な条件で金融機 関から借り入れられるように,退役軍人局(VA)が債務保証を行うものである。保証料 は無料であるが,融資機関は当該物件に第一順位の担保権を取得する必要がある。また一 般の金融機関から住宅資金を借り入れることが不可能な退役軍:人には,直接,資金の貸付 けも行っている。 5) Federal Reserve Bulletin, ibid.. 6) Federal 1∼eserveβ%〃θオ勿,ゴう∫d,.

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金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関  99 皿 住宅債権流動化とモーゲジ制度  1.モーゲジ制度と第二次市場  モーゲジ融資とは,住宅ローン借入れに際し,債務履行の保証のため,当該不動産を担 保に提供する旨の証書が,ローン借入老から貸付けを行う金融機関に交付され,これに基 づき当該不動産に抵当権を設定して行われる貸付けである。したがってモーゲジは,これ らの証書を有価証券化したもので,これを譲渡することにより,貸付金の回収・流動化が 図られているのである。  第1図に示されるように,モーゲジ市場は第一次市場(発行市場)と第二次市場(流通 市場)があり,発行市場,つまり個人が住宅を購入する場合の融資は,民間金融の領域で あるといえるだろう。その担い手は前述したS&L,相互貯蓄銀行,商業銀行,生命保険 会社やモーゲジ・バンカー等である。そのうちモーゲジ・バソヵ一は,短期三つな:ぎ資金 を商業銀行から借り入れ,この資金で長期の住宅融資を行い,その倥宅P一ン債権をモー ゲジ化して貯蓄金融機関に売却し,資金を回収している。  モーゲジ・バンカーは預金受入機能を持たないため,住宅ローン債権売買の行われるモ ーゲジ市場および第二次市場が不可欠であるといえる。  第二次市場におけるモーゲシの活発な流通は,アメリカの住宅金融を特徴づけるもので ある。この流通市場(リファイナンス)の発達には,次節で述べるように政府機関による 流動化促進政策が大きな役割を果たしている。すなわち政府機関によるモーゲジ流動化促 進により,貯蓄金融機関,年金基金,保険会社等々の長期資金を住宅金融市場に流入させ て,資金の季節的・地域的過不足を平準化させるなど住宅金融を側面から援助しているの である。  2,第二次市場と政府(関係)機関  (!>連邦抵当金庫(Federal National Mortgage Association, FNMA)  !938年に設立された当時,FNMAは政府機関で, FHA保険と連結して低所得者にも 住宅を保有させようとする色彩が強かったが,!954年の連邦抵当金庫設置法により,第二 次市場機能,特別援助機能,管理清算機能に明確化された。さらに1968年の住宅都市開発 法により連邦抵当金庫は,第二次市場を受け持つ機関(名称は従来通りFNMA)と特別 助成機関(政府抵当金庫,Government National Mortgage Association, GNMA)とに

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 100 彦根論叢 第232号

分離させられた。また,それにともなってFNMAは,住宅都市開発省長官が監督権限を 持つGovernment Sponsored Enterpriseとなった。  FNMAの業務は,民間金融機関からモーゲジを購入することであるが,民間金融機関 は売却後も債権管理を行い,FNMAはその手数料を支払う。モーゲジ購入の際は,入札 によりFNMAがコミットメントを行い,落札者は売却するか否か自由に選択できる。し たがって,コミットメントにより民間金融機関は,住宅貸付債権の流動化を確保できるこ とになる。  FNMAのモーゲジ購入資金は,民間市場からの調達や保有モーゲジの返済金が原資と なっており,購入モーゲジはそのまま保有し,第二次市場の最後の買い手となっている。 したがって,.保有モーゲジには低金利のものが多いのに比べ,資金調達は近年の高金利に より上昇し,逆鞘となっている。  (2)政府抵当金庫(GNMA)  FNMAがモーゲジ購入量を増減させることで住宅金融の変動を緩和する役割を果たす のに対し,GNMAは1968年当初,宮中所得者のための特別な条件での融資や,利子補給融 資のモーゲジなどといった補助付きモーゲジの購入という特別助成機能を果たし,住宅都 市開発省の1部局として設立された。1970年以来,金融逼迫期にGNMAが市場金利より やや低い金利でモーゲジを購入し,それをFNMAや民間金融機関に市場金利で売却し, その差額はGNMAが負担するというタンデム(Tandem)プランが実施されてきたが,財 政赤字のため廃止の方向にある。  また1968年住宅都市開発法により,モーゲジ担保債券(Mortgage Backed Security) 保証制度が設立された。これ嫁後述するが金融機関保有のFHA保険, VA保証モーゲジ をプールし,これを担保にして債券を発行し,GNMAが元金と利子の支払いを保証する ものである。この制度によりモーゲジ投資をいままで行わなかった州や自治体の退職基 金,さらにモーゲジ部門を持たない年金基金などの資金を債券の購入へ向けさせ,住宅金 融に民間資金を,より効率的に導入しているのである。 1  (3)連邦住宅貸付銀行(FHLB)  1932年の連邦住宅貸付銀行法により設立され,S&L,相互貯蓄銀行および生命保険会 社が加盟しているが,FHLBはその中央銀行的存在で,アメリカ国内にτ2存在する。経 営形態はGovernment SponsQred Enterpriseで,これを監督する連邦住宅貸付銀行理事 会(FH.LBB)は,政府の独立した執行機関である。

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       金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関  101  FHLBの役割は,加盟機関に住宅金融の原資を供給する(貸付方式)ことによって, 預金の大量引出しや住宅モーゲジの季節的変動の調整と地域的資金偏在の調整を果たすこ とである。また機関投資家に,大口資金単位による合同債券(Consolidated Obligation) を発行し,住宅モーゲジ市場と一般資本市場間の資金の流れを結びつける役目も果たして いる。  (4)連邦住宅貸付抵当協会(Federal Home Loan Mortgage Corporation, FHLMC)  1970年,緊急住宅金融法によって設立されたGovernment Sponsored Enterpriseで, FHLBBの監督下にある。 FHLBが加盟機関への資金供給(貸付方式)を行っている

のに対し,FHLMCはFNMAと同様に第二次市場の育成を図ろうとするもので,とく

にFHA保険やVA保証がされていないコンベンショナル・モーゲジの購入を目的として いる(1978年以降は,コンベンショナル・モーゲジに特化している)。  以上の諸機関のうち,政府機関はGNMAとFHLBB, Government Sponsored Ent−

erpr圭sesはFNMA, FHLBおよびFHLMCであるといえるだろう。

 このように住宅金融における政府の関与は,直接個人への融資は行わず,保険機能や債 務保証および債権流動化機能により,民間金融を補完する方法をとっている。しかしこの ような状況に対しても,住宅金融は政府が関与しすぎるという批判も根強い。また大幅な 財政赤字の下で,前述のGNMAのリファイナンスやこれに付随した補助金を削減すると ともに,保証業務の比重を高めるなど,政府支出を圧縮する方向が打ち出されている。し たがって,アメリカの住宅金融市場において,今後,政府資金の使用が減少し,民間資金 を活用する動きがますます強まると予想される。 W 金融イノベP一 ’i aンとモ一一ゲジ市場  ところでモーゲジの残高は,第3表によると1984年9月末で1兆9.828億ドルに達して いるが,証券化されているのは,まだ16%にすぎない。そこで証券各社は,モーゲジ市場 の規模の成長性に注目している。モーゲジの直接売買では,複雑な事務手続きが必要であ ることとモーゲジー件当りの金額が少額なため,1ドルあたりの事務処理コストが高かっ た。そこでモーゲジ市場は,低コストで地域情報を得られる各地の金融機関が貸出しをし て,債権をそのまま保有する場合が多かった。したがって,モーゲジ市場は流動性が低く, 地域性が強いという特徴があった。  第3表によれば,資金の出し手の中心は貯蓄金融機関で,1970年にはモーゲジ残高の

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102  彦根論叢 第232号        第3表 モーゲジ保有残高の推移 (単位,10億ドル,%) 保有主体 年

民間金融機関

貯蓄貸付組合 相互貯.蓄銀行

商業銀行

生命保険

1960 1970 1980 1984/9月

残高1構成比残高1轍比残司構成比残高睡成比

lsz6[ 76.01 3ss.gl 7s.11 gg7.21 6zs] 1,220.ol 61.s 60. 1 26. 9 28. 8 41. 8 29. 0 13. 0 王3.9 20. 1 150. 3 57. 9 73. 3 74. 4 31. 7 12. 2 15. 5 15. 7 503. 2 99..2 263. 0 131. 1 34. 2 6. 8 17. 9 8. 9 544. 3 155. 1 364. 5 155. 8 27. 5 7.8 18. 4 7. 9

政府関係機劇,L515・・1・8・・18・・i256・・1・7・・「47・・!・3・・

臥・そ・他t・8・・1・8・・i・9・・1・6・・1218…4・・i292・・114・・

合 :f 1 207.sf  loo.ol 474.21 loo.o[1,471.sl loo.ol i,’t−t.s 一一1−06Jt  (注)政府関係機関合計には,連邦抵当金庫,政府抵当金庫,連邦住宅貸付抵当協会およびモー     ゲジ。プールも含む。  〈出所> Federal Reserve Beslletin,より作成。 43.9%にも達していた。貯蓄金融機関は既述のように短期の預金を主な原資として固定利 率で,25∼30年返済の長期モーゲジ貸付けを行ってきた。しかし1970年代末からの高金利 と金利の自由化により,貯蓄金融機関のほとんどが1980年以隆赤字に転落してしまった。 1960年代から70年代前半に低利で貸し付けたモーゲジが資産の中心で,貸付けの原資は高 金利の市場金利で調達するので,赤字転落は当然の帰結であったともいえる。  このような状況下で貯蓄金融機関は,後述のように,金利変動リスク転嫁のため金融イ ノベーションを推進した。その第1は,住宅貸付けによって得たモーゲジを証券化して他 に売却するというモーゲジの証券化であ、り.第2は基準金利の変動に従って貸出金利を変 動させる変動利付モーゲジであった。  いわゆるモーゲジ担保証券は,モーゲジ担保債券(Mortgage Backed Bonds)とパス・     7) スルー・証書(Pass Through Certificates)に大別され,モーゲジ担保債券の発行額は少な い。パス・スルー証書は,モーゲジ・プールに対する持分を表象した有価証券である。モ ーゲジ・プールは期間,利率などが近似したモーゲジ貸付債券を貸手が集めてつくり,こ 7)詳しくは,D. J. Larkins, Recent Developments in Mortgage Markets, Surveフof  Current Business, Feb 1982 D. F. Seiders, Changing Patterns of Hoztsing Finance,  .Federal Reserve Baslletin, June 1981. C. Luckett, Recent Developments in the  Mortgage and Consumer Credit Markets, ibid., May 1982. J. R, Brick, A Primer on  Mortgage−Backed Securities, Theβanke7s Mag. a2ine, Jan/Feb..1984を参照されたいg

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      金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関  !03 れを銀行に信託し,投資家に対しモーゲジ・プールの一定比率の持分を表象する証書が発        8) 行されるのである。  第4表は,パス・スルー証書の新規発行額と発行残高を示している。各種パス・スルー 証書の中で最も重要な地位を占めているのは,GNMAパス・スルー証書で,1983年末の 発行残高は1,599億ドル,83年の新規発行額は505億ドルにも達している。GNMAは, 1000以上のGNMA認可民間金融機関が, FHA, VA保証のモーゲジを担保に発行した 証書の,元利合計額を期日通り支払うことを無条件に保証している(このGNMAの保証 責任は,連邦政府の一般債務となる)。  GNMAパス・スルー証書が成功した理由として,①投資家にとり市場性,安全性が高 い,②発行会社にとっても実質上の政府保証債となり有利な条件で発行可能である,モー ゲジ担保債券に比べ担保として必要なモーゲジの金額が少なくてすむ,モーゲジ・プール 証書売却後も元利金徴収や記帳などにともなうサービス料収入が得られる,プー・ルの所有         第4表  パス・スルー証書の新規発行額,発行残高       (単位,億ドル,%) 年末 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983

GNMA

27 30 46 74 138 174 154 249 206 143 160 505 新 (84,4) (90.9)(100.0)(88,1) (91.4) (78.7) (70.6) (84.4) (88.8) (77。3) (29.6) (60.5) 規

FHLMC

5 3 一 10 工3 47 64 45 25 35 242 197 (15.6)(9.1) ( 一)(11.9)(8.6)(21,3) (29.4) (15.3) (10.8) (18.9) (44,7) (23.6) 発

FNMA

一 一 一 『 一 一 一 一 一 7 140 133 行 ( 一) ( 一) ( 一) ( 一) ( 一) ( 一) ( 一) ( 一) ( 一) (3.8)(25.9) (15.9) 額 合  計 32 33 46 8生 151 221 218 295 232 185 541 835 (100.0) (100,0) (100.0) (100.0) (100,0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100,0)

GNMA

55 79 118 183 306 449 543 764 939 1,058 1,189 1,599 発 (93.2)(9⑪.8)(94.4) (92,0) (92.2) (87.2) (82.0) (83.4) (84.8) (83.7) (67.4) (65。9)

FHLMC

4 8 8 16 27 66 119 152 169 199 430 578 行 (6.8) (9,2) (6.4) (8.0) (8.1) (12.8) (18.0) (16.6) (15.3) (15.7) (24.4) (23.8)

FNMA

一 一 一 一 一 一 一 一 7 145 251 残 ( 一)( 一) ( 一) ( 一) ( 一) ( 一)( 一)( 一) ( 一)(0,6) (8.2)(10.3) 高 合  計 59 87 125 199 332 515 662 916 1,107 1}264 1,764 2,428 (100.0)qOO.0)(100.0) (100.0) (100。0) (100.0) (100。0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (注1)四捨五入の関係で,内訳を加えても必ずしも合計額に一致しない。 (注2)FHLMCは, PCおよびGMC(75∼79年)を含む。 <出所>Federal Reserve Bulletin, FHLMC, Salomon Brothersその他の資料より作成。 8)パス・スルー一証書は,モーゲジ・プールの所有権がモーゲジ貸付者(オリジネーター一)から証 書保有者に移るものの,元利金の借手からの徴収,記帳をオリジネーターが行い,元利金,期限 前返済金は手数料を差引いた後,パス。スルー証書保有者に送られる。このように元利金,期限 前返済金がオリジネーターを通り抜けるため,パス・スルー証書と呼ばれている。

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 104 彦根論叢 第232号

権が投資家に移転することにより貸借対照表上の債務とならず財務構成を悪化させないで すむ等々の有利さがある,③政府にとっても直接債務を負わずにすみ,しかも保証料徴収 により低コストで民間部門による住宅金融を補完できることがあげられる。  第4表に示されているように,1983年にパス・スルー証書の発行は急増したが,その理 由として,①金利低下を反映して1983年に住宅需要が回復し,モーゲジ貸付けが急増した

こと,②1983年にFHAローンやVAローンの利用が増大し,これらのローンがGNMA

証券化される比率が高まったこと,③貯蓄金融機関がモーゲジを証券化して売却するモー ゲジ・バンカー型の事業形態に近付いていることなどがあげられる。  しかしモーゲジ・プールを構成するモーゲジのうち相当部分が期限前に返済されるた め,パス・スルー証書は償還年限が確定していないという欠点がある。この欠点を少なく したCMO(Collateralized Mortgage Obligatien)といわれるモーゲジ担保証券が,1983 年6月にFHLMCから発行された。 CMOは元本返済を一定の順序で数クラスの証券に 割り振ることにより,償還年限の不確定性を減少させ,各クラスの証券の満期を多様な投 資家の投資期間に合わせようとするものである。CMOは, FHLMC以外に,モーゲジ・ バンカー,住宅建設業者,証券会社等の民間企業がCMO発行のために子会社を設立し, 発行される場合も多い。CMOが民間企業から発行されるとき,多くはGNMA証券を担 保に発行されてきている。このようにCMOが創出された1983年から,モーゲジ担保証券 に対するウォール街の証券各社の態度は従来の消極的動きが一変し,競って同分野への参 入を図るようになってきている。 V 高金利と貯蓄金融機関

 1.高金利下のS&L

 アメリカにおける住宅金融と住宅貯蓄は,間接リンク制度であるといえるだろう。S& L等に預金として流入する資金は,多くの部分が住宅金融に運用され,その意味で貯蓄と 貸出しはリンクしているものの,預金者と住宅金融の借り手が必ずしも同一でないことを 前提しており,直接リンク制度といえないからである。したがって住宅貯蓄を吸収するた め金利上の魅力をS&しの預金に持たせる必要があったといえる。  そこでS&Lは,商業銀行より高めの預金金利をつけることが許されてきた。しかし預 金の上限規制が行われているもとで,市場金利が預金金利を上回った場合,金利規制がな い金融市場資産や証券会社のMMMF(Money Market Mutual Fund,短期金融資産撲資

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      金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関  105 信託)への資金流出が生じ,S&しや商業銀行の預貯金が流出し,住宅資金不足がしばし ば発生した。  貯蓄金融機関保護のための預金金利規制が逆効果となる事態に,連邦準備制度理事会や 連邦住宅貸付銀行理事会(FHLBB)等の監督当局は,預金金利規制を部分的に修正し, 市場金利連動の高利回り預金であるMM C(6−Month Money Market Certificates,6カ 月物TB金利基準定期預金)を1978年6月に, S S C(Small Savers Certificates,2年 半物財務省証券基準定期預金)を1980年1月に,S&L,相互貯蓄銀行,商業銀行で取り 扱うことを認めた。  第5表は,これら導入後のS&しの資金源の変化である。とくにMMCは!978年の8.4 %から1980年には30.7%と急速にシェアを伸ばした。これはMMCの最低額面が!万ドル で,いままで10万ドル以上でなければ得られなかった市場金利が,中間所得層にも享受で ぎるようになったため,魅力ある投資対象となったことを意味している。  しかしながらMMCやSSCは, S&しからの加速的資金流出にある程度の歯止め効果 をもったものの,証券会社等のMMMFに対抗するには,まだ十分でなかった。その反面 S&しの資金調達コスト上昇をもたらすことになった。S&Lは資金の大部分を,長期で 固定された金利のモーゲジ貸付けで運用しており,高金利水準の持続下での資金調達コス       第5表 S&しの資金源         (単位,%)

 ∼避1966

1969 1973 1974 1978 1980

固定金利の預金

定金金

勘預預

W

o蓄期

N貯定

変動利付の預金

M M C

s   s   c そ の 他

大口定期預金

FHLBB借入れ

その他借入れ

94. 0 g3. s 1 g2.2 1 sg. s 1 so. o 1 42.2 83. 1 10. 9 64. 1 29. 7 43. 5 48. 7 40. 1 49. 4 e. 1 29. 3 50. 6 O. 1 19. 1 23. 0

一1

一1

引8・・1・…

8. 4 30. 7 9. 3 6.01 6.21 7.s l lo.s 1一 ’−t.// i lzs 5. 6 0. 4 nJりD ドDO

288150

1. 7 7. 6 1. 2 3.1 6. 3 2. 2 7. 0 7. 9 2.9 合 計 ioo. o [ ioo. o i ieo. o 1 ioo. o 1 ioo. o 1 ”i651.’60 〈出所>The Re汐ort of the動’67璽θ%oンTasle Force on Thrift動3’吻蜘%s,1980,

(14)

 106  彦根論叢 第232号        9) b上昇は,大きな収益圧迫要因となったのである。

 FHLBBは,1979年7月,連邦法免許のS&しに,変動金利モーゲジであるVRM

(Variable Rate Mortgage)の導入を認め,調達コスト上昇分を貸出金利へ転嫁できる道 を開いた。さらに貯蓄金融機関は金利変動幅や変動時期を自由化したARM(Adjustable Rate Mortgage)を開発して!981年4月, F H L B Bの認可を受けた。しかし変動金利住 宅モーゲジ貸付けが徐々に増えてきているものの,既往分の住宅ローンには適用されず, 長期の固定金利債権がいぜんとして大きな比重を占めており,収益面に大きな課題を残し ていた。そして第6表に示されるように,1981年,1982年にはFSLIC被保険貯…蓄機関 (主としてFSLIC被保険のS&L)は,税引き前で61億ドルと59億ドルの赤字を計上 することになったのである。1981年5月,シカゴのS&しが倒産したが,連邦法免許のS &しの倒産は,それまでの10年間で初めてのことであった。       第6表 FSLIC被保険貯蓄機関の収益   (単位,100万ドル) 年 1970 1974 1978 1979 1980 1981 1982 1983 営 業

収入i支出1差額

10, 675 20, 981 40, 589 48, 606 56, 135 65, 152 71, 509 81, 992 1, 902 3, 443 6, 177 7, 088 7, 920 8, 976 10, 104 12, 757 8, 773 17, 538 34, 412 41, 518 48, 215 56,176 61, 405 69, 235 利  払  い 貯蓄預金1借入金 6, 895 13, 646 26, 024 32, 151 41, 627 54, 075 58, 600 59, 687  764 1, 671 2, 667 4, 299 5, 801 9, 206 11, 653 9, 544 純 益

税引き前1税金陶1き後

 1,166 2, 144  5, 717  5, 198  1, 193 −6, 148 −5, 869  2, 732

 241

 661

 1, 799  1, 578

 409

−1, 516 −1, 598

 687

 925

 1, 483 3, 918 3, 620

 784

−4, 632 −4, 271  2, 045 <出所>The Banker, Apri11985, p..22.  2.貯蓄金融機関への救済措置  このようなS&Lをはじめとする貯蓄金融機関の経営悪化に対し,金融制度目由化の中 で成立した「1980年預金金融機関規制緩和・通貨管理法(以下では「1980年金融制度改革 法」と略す)」や「1982年ガーン=セント・ジャーメイン預金金融機関法(以下では「1982 年預金金融機関法」と略す)」に,貯蓄金融機関救済措置が盛り込まれた。  「1980年金融制度改革法」では,連邦法免許のS&しの資金運用範囲が拡大された。す 9) FHLBBによれば, S&しの預貸金利鞘は1978年の1.80%ポイントが,1980年下半期には,  0.33%に縮小した。

(15)

      金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関  107 なわち,オープン・エンド投資信託の購入,総資産の20%までの消費者ローンやコマー シャル・ペーパー(CP)・社債の購入,信託業務やクレジット・カード発行が承認され た。また,連邦無免許の相互貯蓄銀行は,地域的制限があるものの総資産の5%までの商 工業貸付けと,それにともなう要求払預金受け入れが可能となった。さらに預金金利規制 の段階的廃止にともなって,住宅モーゲジ貸付けに関する各州の上限規制は無効とされる など,貸付金利規制について規制緩和の規定が設けられた。  そして「1982年預金金融機関法」では,①預金保険機関であるFDIC(連邦預金保険 公社)やFSLICに,管轄下の預金金融機関救済のための権限の拡大を行った。さらに 法成立後3年間は,異なる州,異なる業態の金融機関との間での買収,合併を認める権限 も与えられた。また,②住宅モーゲジ貸付けで損失が発生している連邦または州の預金保 険制度加盟金融機関に,3年の時限立法ながら.一定限度内で自己資本証書(Net Worth Certificate)発行を認め,預金保険機関がこれを購入することで,証書発行金融機関の自 己資本強化を図ろうとした。  さらに③連邦法面許貯蓄金融機関業務の拡大を図った。具体的にはS&Llc,1982年10 月15日から総資産の5%.1984年4月1日から10%までの事業貸付け・農業貸付けが認め られ,総資産の30%までに消費者u一ソの貸付限度が引き上げられた。相互貯蓄銀徹こは, 1982年10月15日から総資産の7.5%,1984年4月1日から10%に事業貸付け・農業貸付け の貸付限度が引き上げられた。  そして④預金金融機関からの資金流出を防ぐ新金融商品が認められた。すなわち証券会 社のMMM Fに十分対抗できる商晶として. MMDA(Money Market Deposit Accounts, 短期金融市場預金勘定)が,連邦預金保険機関加盟の商業銀行,S&L,相互貯蓄銀行に 認められた。MMDAは金利,期間,預金者資格に制限が無く,月3回まで第3者宛資金 振替えと小切手振出しが可能で,個人所有分には法定準備率が課せられず,その反面,預 金保険の対象になる有利な点をもっていた。さらに,1983年1月,金利上限規制のないス ーパーNOW勘定が,商業銀行. S&L,相互貯蓄銀行に認められた。  また⑤1984年1月1日から商業銀行と貯蓄金融機関の金利格差を廃止するとともに,中 小金融機関保護のため,法定準備の対象となる預金のうち,最初の200ドルは皮払準備 率0%とされた。そして選択的モーゲジ貸付け(Alternative Mortgage Transaction)取 り扱いを・3年以内に州法で規制を行わないかぎり,州法免許預金金融機関にも認めるよ うにした。

(16)

 108 彦根論叢 第232号

 3。貯蓄金融機関の対応  「1980年金融制度改革法」や「1982年預金金融機関法」を含めた金融制度改革により, 預金金利規制廃止,貯蓄金融機関の業務範囲の拡大,州法での貸出金利上限規制の停止等 等が行われてきたが,預金金融機関内での競争や証券会社等の他業種との競争が激化し, 貯蓄金融機関の経営は悪化してきた。その最大の要因は,高金利下での預貸金の期間対応 がとれていないことにある。すなわち,資金調達コストは高金利により上昇するにもかか わらず,資金運用は長期かつ低利の固定金利モーゲジが中心で,逆鞘になることが多かっ たからである。  そこで貯蓄金融機関は,調達コスト上昇分を貸出金利へ転嫁する方法として,前述の VRMやARMを積極的に取り入れている。 FHLMCが1983年秋に実施した調査では, 調査対象になった750のモーゲジ貸付機関の82%がARMを提供し,これら貸付機関に        10) よる1983年上半期のモーゲジ貸付けの44%がARMで占められている。  また貯蓄金融機関の対応策として,モーゲジ担保証券等の金融イノベーションの進展に ともない,モーゲジ市場とくに第二次市場の積極的活用が,図られてきている。  さらに経営の効率化や合併もさかんに行われてきている。FHLB加盟のS&しの場 合,1981年315件,1982年425件,1983年は11ヵ月で122件にのぼる合併が行われている。  1983年上半期には市場金利が大幅に低下したことにより逆鞘は解消し.FSLIC被保 険金融機関全体として黒字経営になってきているが,いぜんとして赤字経営のところも少 なくない。貯蓄金融機関が今後どのように歩んでいくのか,激しい競争の下では,予断を 許さないといえるであろう。  貯蓄金融機関業務の健全化と住宅金融の安定的発展のためには,収益強化と金利リスク の減少,負債管理の効率化,弾力的な業務運営と,新たに認可された資産運用分野の活用 による体質の強化等々の課題を解決していかねばならない。     〔参 考 文 献〕 (1) M. Boleat, lfozesing Finance; An fnternational Study, 1982. (2) 一, “Housing Finance−the lessons of international experience”, The Banleer, Nov.  1984. [3) J一 R, Brick, “A Prirmer on Mortgaged−Backed Securities”, The Banleers Maga2ine,  Jan,/Feb, 1984. [4) P. H, Hendershott & K. E Villani. Regulation and Reform of the llousing Finance IO) Builder, May 1984.

(17)

金融イノベーション下のアメリカの貯蓄金融機関 109   Sptstem, 1977. C5) M. A. Kaplan, “Deregulation and New Powers in the Savings and Loan lndustry”,   llousing Finance Review, April 1983. [6) G. Palmer, “America’s troubled thrifts”, Tke Banleer, April 1985. (7) J. Walmsley, “Secondary mortgage markets: the wave of the future?,” Tke Banleer,   Oct. 198L (8) L, E. Wofford & R. C, Burgess, “Structuring and Pricing Adjustable−Rate Mortgage   Products”, Hozasing Finance Review, Jan. 1984. 〔9〕新井富雄「証券化すすむ米国のモーゲージ市場」r財界観測』1984年9月。 〔10〕伊東政吉・江口英一一Wtrアメリカの金融革命』有斐閣,1983年。 〔11〕外国住宅事情研究会「米国の住宅金融(1)∼(5)」r住宅金融月報』1984年4月∼8月。 〔12〕住宅金融問題研究会『住宅金融の国際比較』住宅金融普及協会,1982年。 〔13〕松井和夫「米国のモーゲイジ市場の最近の動き」r証研レポート』1984年3月5日。 〔14〕村木卓生「米国金利自由化とMMDAの影響」r農林金融』1984年3月。

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