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用語解説(No.30)

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Academic year: 2021

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(1)真菌誌. 第 62 巻. 第2号. 2021 年. 33. シリーズ 用語解説(No.30) 日本医真菌学会 用語委員会. 犬のマラセジア皮膚炎. Canine Malassezia dermatitis. coses and inflammation: The adaptive balance between growth, damage, and survival. J Mycol Med 25: e44-58, 2015. ・Bond R, Morris DO, Guillot J, Bensignor EJ, Robson D, Mason KV, Kano R, Hill PB: Biology, diagnosis and. マラセジア皮膚炎は,皮膚表面の常在菌の一種である. treatment of Malassezia dermatitis in dogs and cats:. Malassezia pachydermatis によって引き起こされる犬,猫の. Clinical Consensus Guidelines of the World Association for. 皮膚炎名で,痒みを伴う,皮膚の紅斑,脂漏,落屑,苔癬化. Veterinary Dermatology. Vet Dermatol 31: 75, 2020.. などを認める非特異的な皮膚炎である.M. pachydermatis 日本大学生物資源科学部・加納 塁. は普段皮膚炎を惹起することはないが,異常に増殖すると以 下の機序に従って炎症を引き起こすと考えられている.一 方,人の皮膚におもに常在するマラセジアは,Malassezia globosa や Malassezia restricta など菌種が異なる. 宿主の皮膚表面からの皮脂の分泌が盛んになると栄養源に. プロトテカ症(プロトテコーシス) Protothecosis. するため,増殖しやすくなる.その後増殖したマラセジアが 分泌する多量の脂質分解酵素や,皮脂を分解することによっ て生じた脂肪酸(オレイン酸など)が表皮内へ浸透すること. Prototheca は,藻類の一種であるが,二次的に葉緑体を退. によって表皮角化細胞を刺激し,炎症性サイトカインを分泌. 化させているため光合成を行わない.そのため外部からエネ. させ皮膚炎を惹起させる.さらに皮膚内に存在するマクロ. ルギー源を摂取する従属栄養生物で,腐生性または寄生性に. ファージが菌体成分を取り込み,リンパ球へ抗原提示してア. 栄養を得ている.世界中の土壌,植物表面,動物の消化管内,. レルギー性皮膚炎へ発展すると考えられている.この様にマ. 湖沼や汚水中など湿潤な環境下に生息しているが,ヒトや動. ラセジアからの直接的な皮膚への刺激による炎症およびアレ. 物に感染する人獣共通病原体でもある.. ルギー的要素による複合的な皮膚炎が予想されているが,い まだ不明なことが多い. ただし皮脂の分泌を盛んにさせる原因が, 皮膚の皺が多く, 脂質分泌も多い犬種,温度・湿度などの飼育環境要因,食餌, 基礎疾患など多岐にわたるため,いくつかの発症要因が複雑. 1894 年に Wilhelm Krüger が Prototheca の特徴的な形態, 生理学,発育環の様相から Chlorella に近い新たな一属とし て報告し,藻類として分類されているが,便宜上ヒトや動物 のプロトテカ症として医真菌学で扱われてきている. Prototheca 属には現在のところ 15 種報告されているが,. に絡み合い,それが予防・根本治療を困難にさせていると考. おもに人,動物に病原性が報告されているのは,Prototheca. えられる.. blaschkeae, Prototheca bovis, Prototheca cutis, Prototheca. なお,マラセジア皮膚炎はアレルギー機序が関与している ため, 「皮膚炎」用語は相応しくないと医学の専門家から指摘 されることがあるが,上記機序からアレルギーだけの原因だ けではないため,国際的にも獣医領域で使用されている. * 日本医真菌学会菌名カタカナ表記に従って「マラセジア」 と記載したが, 「マラセチア」と記載されている場合もある.. miyajii, Prototheca paracutis, Prototheca wickerhami の 6 種 である. 本症は人,犬,猫ともにまれな疾患で,人や動物は環境か ら創傷感染すると考えられているが,一方で動物の消化管に も常在していることから,日和見感染症の病原体でもある. 症状として皮膚の急性~慢性の炎症病変を引き起こすが,さ らに中枢神経を含めた全身の臓器へ播種する致死的な疾患で. References:. もある.また糞便から分離されることから,消化管からの日. ・Miller Jr WH, Griffin CE and Cambell KL: Malassezia. 和見感染が考えられている.そのため最近では,慢性下痢症. dermatitis, In Muller & Kirk`s Small Animal Dermatology. に対する抗菌剤投与による菌交代症のほかに,免疫抑制剤や. 7th ed, pp 243-249, Elsevier Mosby, St. Louis, 2012.. 抗ガン剤投与の使用頻度の増加に伴い,人,動物とも報告例. ・Hube B, Hay R, Brasch J, Veraldi S, Schaller M: Dermatomy-. が増加している..

(2) 日本医真菌学会雑誌. 34. 診断は,病巣部の病理組織検査で桑実状または車軸状の母 細胞を確認するか,病巣からの分離同定によって行う.. 第 62 巻. 第2号. 2021 年. より生じる電気抵抗や電気伝導度の変化を測定するインピー ダンス法,二酸化炭素の産生や酸素等の消費量の変化を測定. 治療法は,藻類に対する特異的な薬剤がないため,あまり. するガス測定法,菌体内の ATP を酵素反応による発光現象. 殺藻類活性は高くない抗真菌剤および一部の抗菌剤の投与し. をもとに検出する生物発光法,微生物の産生する微弱な熱を. かなかったため,治癒率の低い疾患であった.しかしながら. 測定するマイクロカロリメトリーなどがある.. 最近,アゾール系抗真菌剤のラブコナゾールが,in vitro で Prototheca に対して殺藻類活性の強いことが判明し,治療効. References. 果が期待される.. ・小林央子:食品・医薬品・環境分野等の微生物試験法およ び微生物汚染の制御に関する最近の話題 5 「第 17 改正日. References:. 本薬局方」微生物迅速試験法.防菌防黴 45; 147-152, 2017.. ・Masuda M, Jagielski T, Danesi P, Falcaro C, Bertola M, Krockenberger M, Malik R, Kano R: Protothecosis in dogs. ・佐々木次雄,棚元憲一,菊池 裕(編) :新 GMP 微生物試 験法 第 3 版(第 21・22 章) ,じほう,東京,2016.. and cats ­ New research directions. Mycopathologia 186: 東京薬科大学・大野尚仁. 143-152, 2021. ・Kano R: Emergence of fungal-like organisms: Prototheca. Mycopathologia 185: 747-754, 2020.. 薬物治療モニタリング. ・Miura A, Kano R, Ito T, Suzuki K, Kamata H: In vitro algaecid effect of itraconazole and ravuconazole on Prototheca species. Med Mycol 58: 845-847, 2020. 日本大学生物資源科学部・加納 塁. Therapeutic drug monitoring(TDM) TDM(therapeutic drug monitoring)は薬物治療モニタリ ングと訳され,1970 年台半ばから医療現場でコンサルテー. 微生物迅速試験法. Rapid Microbiological Method(RMM). ションの 1 つの手法として,グラム陰性菌の感染症治療に対 するアミノグリコシド系抗菌薬のゲンタマイシンをモニタリ ングに用いられ,その有効性と安全性を評価し,TDM の有 用性を報告している.しかし,当初日本では,TDA(therapeutic drug assay)が主体となり,薬物血中濃度の測定を. 環境中の微生物の多くは従来の培地ではコロニー形成能が. 行っていた経緯がある.. 低く,培養法のみではそのような微生物を検出,計数・計量. TDM は,特定薬剤治療管理料として診療報酬が認められ. しがたいことが明らかとなってきた.また,医薬品の製造工. ており,抗真菌薬ではボリコナゾールが算定可能だが入院患. 程における継続的な微生物管理においては,結果を得るまで. 者に限られる.コンサルテーション時に注意すべき点とし. に数日から数週間を要し,選択した培養条件によっては,増. て,診療報酬の算定には,血中濃度を測定のみでは特定薬剤. 殖の認められない菌が含まれる可能性が残されていることは. 管理料の査定の対象にならず,下記にあるような治療計画の. 問題である.また,培養に伴いバイオハザードのリスクも増. 要点を診療記録に記載する必要がある.. 加する.これらの課題を解決するために,微生物を培養する. TDM コンサルテーションの含まれる内容. ことなく検出し,その属種に関する情報を得るためのさまざ. ・薬物濃度測定につながる問題に関する短い記述. まな手法が開発されている.欧州薬局方(European Phar-. ・薬物動態および効果に影響する可能性のある要因の要約. macopoeia)には,代替法(Alternative Method)として記載. ・過去および現在の薬物動態学的データの評価. され,検出対象は,核酸,脂肪酸,タンパク質,代謝反応な. ・薬物療法の適切な変更とその後の追跡評価に関する推奨. どさまざまである.. 案. 菌体の直接検出法としては, 蛍光顕微鏡法, レーザースキャ ンニングサイトメトリー,フローサイトメトリー,On-chip. Reference. フローサイトメトリー,蛍光ファージアッセイ,マイクロコ. ・Noone P, Parsons TM, Pattison JR, Slack RC, Garfield-. ロニー法などがある. 間接的測定法としては,抗原検出法,ファージアッセイ法, 脂肪酸分析法,菌体のフーリエ変換赤外分光法,質量分析法,. Davies D, Hughes K: Experience in monitoring gentamicin therapy during treatment of serious gram-negative sepsis. Br Med J 1: 477-481, 1974.. 核酸増幅法,DNA のフィンガープリント法などがある. 増殖評価法としては,増殖の際に生じる代謝産物の増加に. 東京女子医科大学病院・浜田幸宏.

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