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オンライン授業となって

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Academic year: 2021

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〒6100321 京都府京田辺市多々羅都谷13 同志社大学理工学部 機能分子・生命化学科

Department of Molecular Chemistry and Biochemistry, Faculty of Science and Engineering, Doshisha Universi-ty, 1-3 Tatara Miyakodani, Kyotanabe-shi, Kyoto 610-0321

257 高圧力m科学g技術Vol. 30, No. 4 (2020)

このファイルの頒布には日本高圧力学会の許諾が必要です。

巻頭言

オンライン授業となって

同志社大学理工学部 機能分子・生命化学科

木村 佳文

大学の授業がオンラインとなった。私が高校生の頃,通信教育 といえば,解答を郵送して添削されて戻ってくるようなものだっ た。私が大学に入った前後が丁度パソコンの黎明期で,CPU は 8ビット,データの記憶装置と言えばテープもしくは 5 インチ FDDだった。私はパソコンをもっていなかったので,友人のと ころでテープからゲームをロードして遊んだことを覚えている。 研究室に配属されたころには 16 ビットのパソコンが使われ始め ていたが,はじめに書いた論文はタイプライターで印字するソフ トを用いた気がする。私が最初に参加した高圧討論会は第 27 回の札幌大会で,当時の 要旨集を眺めてみると手書きの原稿が半分以上を占めている。手書きの原稿は大変丁寧 に書かれてあって,決して読みにくいことはなく,むしろ当時の印刷された文字のほう に違和感がある。私が現在所属している同志社大学の研究室には第一回からの要旨集が そろっており,第一回の京都開催の要旨集を眺めると,発表件数は 20 件ほどで書式も 要旨ごとに異なっており,いかにも手作りの出発という感じがする。日本高圧力学会が 設立されたのは私がはじめて高圧討論会に参加してから 3 年後の第 30 回(仙台)の高 圧討論会のときで,その時の要旨集にはもう手書きの原稿はほとんど見られない。しか しながら,当時はまだインターネットなど全く普及しておらず,パソコンを使ったデー タ通信といえばモデムを用いて大型計算機と接続するような作業しかなかった。オンラ インで授業を行っている現在と比較すると隔世の感がある。これがあと数年もすれば VR技術の発展に伴って,オンライン授業のスタイルも大きく変化するのであろうか 自宅に居ながら,さも大学で授業を受けているような環境が簡単に使えるようになって いたりするかもしれない。 パソコンの能力が乏しかった時代は,限られた条件の中でどのような解析プログラム を作るかとか,いかにグラフを書くかとか,そういった点でも苦労し,情報交換を行っ たりした。現在ではパソコンでできることは飛躍的にひろがり,便利なツールがいろい ろと用意されそのようなことで困ることはない。学問や技術の進歩においても似たよう なことは当然起こる。高圧討論会の発足時から流体の高圧力分野は討論会の主要なテー マであり,日本高圧力学会の初代の会長の蒔田 蓋 先生は流体の高圧力物性でご活躍さ れていた。流体に圧力をかけ,いかに様々な物性や反応を測定するかという技術の開発 や,そこから得られる様々な新しい科学が学会を盛り上げていったのだと思う。私が学 会に参加したころはちょうど超臨界流体の研究の黎明期であり,非常に多くの研究者が

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活発に議論を交わしていた。私が研究室に配属されて与えられたテーマが,超臨界流体 での二量化反応に対する圧力効果であったことは,今から思えば非常に幸運であったの だと思う。ちなみに私の指導教員の吉村 洋介 先生の教えにより,我々の研究グループ では超臨界流体という用語をあえて使わず,中密度流体という言葉を積極的に用いてい た。残念ながら我々の用語は定着しなかったが,臨界密度(中密度)近傍の流体でいろ いろと不思議なことが起こるという意味では,適切な表現であると今も考えている。当 時,臨界密度近傍の流体で,溶質の部分分子容が大きな負の値をとるという不思議な現 象がすでに報告されていたが,我々は二量化にともなって体積が増加することを発見し た。新しい実験装置の開発とともに中密度流体特有の新しい現象が,次々と報告され, おおいに議論が盛り上がった。その後,2000 年代では超臨界水へと超臨界流体の研究 は大きく展開した。超臨界水の研究は技術的にも困難が多く,高圧討論会でも活発な議 論が行われた。特に超臨界状態の水に水素結合が存在するかしないかといった点で,X 線,ラマン分光,NMR などの実験,および分子動力学シミュレーションなど様々な観 点から激論が交わされた。 近年では,超臨界流体に限らず流体の物性や反応といった発表は高圧討論会では非常 に少なくなった。これは必ずしも流体の高圧力研究が下火になってしまったということ を意味するものではない。流体の物性や反応測定に関する様々な高圧力技術が普遍的な ものとなり,高圧力をキーワードとして学会活動をおこなうより,流体をキーワードと して学会活動を行うことが盛んになったことによるものであると思う。今後,パソコン が進化し,授業の形が大きく変わっていくかもしれないように,流体分野でも次の革新 的な圧力技術が学会活動を変えていくことが起こることを期待したい。

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