〈論説〉
ワークショップ・エコノミーの経済学
−小規模酒造業の経営分析−
石 川 啓 雅 プロローグ―「市場見合型」経済活動(経営)の限界― I. 価値論からみた経済・経営活動―価値形成と価値実現の相克― 1. 価値形成と価値実現の差異とその相互関係 2. 生産性とマーケティング(経営戦略論)の世界―「引き算」の論理 II. 小規模酒造業の経営分析 1. 産業としての酒造業の特徴−典型的な中小・地方産業としての酒造業− 2. 小規模酒造業者の経営分析−国税庁の統計調査を手掛かりにして 1)欠損・低収益の要因―嵩む価値実現のための費用― 2)小規模酒造業の生産力構造―「生産性の低下」をどうみるか?― 3)資本の回収状況−安全性分析− 4)損益分岐点分析―欠損・低収益の改善について 5)小括 補遺.コロナ禍での経営問題 III. 市場の現実―高級化、広域販売、連携路線の再検討− エピローグ−ポスト・コロナにおける経済活動の行方― 192 193 193 194 195 195 197 197 199 201 203 204 204 205 207プロローグ―「市場見合型」経済活動(経営)の限界― 我々は市場経済という仕組みの中で生きている。正確には、資本主義市場 経済であるが、この資本主義市場経済という仕組みが、新型コロナウイルス 感染症の世界的流行のなかで機能不全に近い状態に陥っている。新型コロ ナウイルスの急激な広がりは、ヒト、モノ、カネの動きが一体であり、ヒトの動 きがあって、モノもカネも動くという単純自明にして普段は意識されることのな い経済の本質を白日のものとした。労働という営みがあって、生産生活に必要 なモノやサービスが創造され、仕事(雇用)や所得が生まれる。こうした基本 的な仕組みと市場経済の関係について、労働の担い手である人間自体が立場 (身分)や生活している場所によってどのような状態に置かれるのかも含め、 我々は真剣に向き合わなければならない時期に来ているのかもしれない。 そうした空気を反映しているわけではないだろうが、「革新(イノベーショ ン)」とか「生産性」「成長」という言葉が以前にも増して強調されるように なった気がする。その内容はともかく、何をどのように「革新」するのか、何を どのように成長させるのか、生産性を上げてどのような社会を目指すのかにつ いての根本的問いや省察はほとんどない。ただ単に、コロナをきっかけに、閉 塞した経済が「変革」するというイメージだけが共有され、結果として、「市 場見合い」で制度(≒法制度や慣行)や組織、考え方・意識、そして行動様式 (経営のやり方や働き方)を変えていかなければならない、そうしないと「稼 げない=生き残れない」という従来同様の図式を前提とした話になってい る。 だから、今回の経済危機をチャンスに中小企業や地方銀行の再編を図り、 稼げない中小企業にはご退場願おうという「成長戦略」となるのだろう1。だか ら、「自助、共助、公助」であり、電子決済システムを導入しないと恩恵を受け られない「GO TO事業」なのだろう。 しかしながら、コロナ禍で問われているのは、マクロとミクロの両面におい て、「市場見合いでは稼げなくなった現実」であり、市場見合いの経済活動の
限界と市場見合いの経済活動を強いるシステム(制度や組織)のあり様であ り、「市場見合いでは稼げなくなった現実」があるといっても、かつてのよう に、私的経済領域の全面否定なり、市場経済をひっくり返せばいいというわ けにもいかないという意味での「展望の欠如」である。 そこで、本稿では、典型的な中小企業業種である酒造業、とりわけ地方で 営まれている小規模酒造業に焦点を当てて、その経営活動(経済活動)に関 する分析を行い、「展望」を探ってみたい。というのは、地方の中小企業こそ、 雇用を含めてその社会に果たす役割を期待されつつも、「市場見合い」の行 動を強いられ、呻吟している存在だからである。こうした矛盾と向き合ってい る経済活動を抜きにして「展望」を見出すことはできない。 かくして、以下、第一に、経済活動の本質を再度整理する意味で、価値形成 と価値実現の関係について確認を行い、分析視角を提示する。第二に、その 作業を踏まえて、小規模酒造業の経営分析を行う。第三に、高級化、広域販 売、連携の酒造業における3つ「戦略」(市場・経営対応)をめぐる現実に言 及する。そして、最後に、行論の考察を踏まえ、酒造業も含めて、経済活動のオ ルタナティヴについて考えてみたい。 I.価値論からみた経済・経営活動―価値形成と価値実現の相克― 1.価値形成と価値実現の差異とその相互関係 それでは、酒造業の経営分析に先立ち、「分析視角」を提示しておきたい。 冒頭で、労働があってモノやサービスが創造され、仕事や所得が生まれるとい う話をしたが、まずは、この大原則に立ち返って、市場で販売するモノやサー ビスを生産し、所得を得るという経済活動(経営)の構造を整理しておく。 何かを商品として販売するためには、予め商品となるべきモノが存在してい なければならない、また何らかの行為を商品として提供するためにはその行 為がなければならない。つまり、売るべきものを生産する労働が要る。労働な しには商品は存在しえない。労働は何かに手を加えて新しいモノを作り出す、
あるモノをそれ以上の別の何かに変える行為なので新たな価値を生む。つま り、使用価値を生む営みであると同時に、新たな価値を生む、形成する営みで もある。しかし、労働投下だけでは、どれくらいの価値を生んだかはわからな い。何かが加工されて新しいものに変わるとき、労働対象は新たなモノの一 部となり、その価値が移転されると同時に、別の何かに生まれ変わったことに よって、新たな価値が上積みされたことはわかっても、成果であるモノやサー ビス自体からはわからない。どれだけの価値が生まれたかは、成果物が商品 として販売されて貨幣になった時である。この時、価値は貨幣として実現され る。仮に、手を加えたものが貨幣により入手したものであったなら、実現され た商品の価値額と投入した原材料や生産資材の差額が労働によって生産さ れた新たな価値となる。そして、それは生み出された所得となる。 こうした経済活動の原理から確認しなければならないのは、価値形成と価 値実現は別だという点である。価値形成はモノやサービスが生産される過程 であり、労働が投下されるプロセスで、いわば「足し算」の世界である。価値 実現は労働によって形成された価値を貨幣に変えるプロセスであり、投じたも のの金額と生産したものの金額の「差分」として認識するし、せざるをえない という「引き算」の世界である。市場経済における経済活動あるいは経営とい うのは、この相矛盾する2つのプロセスにより成り立っている。 実はこの単純な原理が意外と等閑視されている。なぜか?目的が「貨幣」と ならざるをえないからである。労働がなければ何も生まれないことは理解しつ つも、目的が「貨幣」とならざるを得ない以上、結局「引き算」、収支を意識せ ざるを得ない。結果として、現実的な対応として「価値実現が主で、価値形成 が従」となる。 2.生産性とマーケティング(経営戦略論)の世界―「引き算」の論理― 「価値実現が主で、価値形成が従」になると、産出と投入の差額が問題に なる。しかしながら、「引き算」だけでは、実現される価値には限界が出てくる ので、より多く貨幣を手に入れるためには、より多くの価値形成がなされなけ
ればならない。より多くのモノやサービスを生産する必要がある。そこで今度 は「生産性」が問題になる。生産性は投入に対する成果を問題にするので、 一見すると「足し算」であるかのように思える。しかしながら、これも、結局の ところ「引き算」的な発想がその背後にある。というのは、雇用経営では、貨 幣をより多く手元に残すためには、少ない時間、少ない人数でなければならな いからである。明確に「人件費」が意識される。したがって、雇用経営におい ては「生産性向上」と「人件費の節減」は同義であり、「人件費」の節減につ ながらないような改良は意味がなく、「人件費」の節減につながるようなもの であれば、労働強化を伴い、労働力の疲弊を伴うものであっても「生産性向 上」と認識されることになる。自己労働に基づく自営の場合には、生産性の向 上は「人件費」の節減と観念されることはない分だけ、生産性の成果が丸々 価値実現へとつながり、自分の所得になるかのような錯覚を生み、自己搾取 的な働き方を誘発する。 さらに「価値実現が主で、価値形成が従」となることによって意識されるの は「生産性」だけではない。いかにモノを売るかということも強く意識される。 モノを売るための理論、方法論、ノウハウの総称は一般的にマーケティングと 呼ばれているが、それを生産や原料調達も含めて、経営活動のあらゆる場面 に拡張したものを経営戦略とか企業戦略とか呼んでいる。 こうして、生産性向上とマーケティングなり経営戦略は経営活動を行う際の 「目標」なり、「常識」となる。 II.小規模酒造業の経営分析 1.産業としての酒造業の特徴-典型的な中小・地方産業としての酒造業- それでは、小規模酒造業の経営分析を行うが、その前に小規模酒造業の酒 造業におけるポジションを確認しておきたい。 表1は製成数量規模別(生産規模別)に酒造業者の生産量と業者数のシェ アを整理したものである。同表からわかるように、生産量においては、5000
㎘超の酒造業者が国 内生産の半分以上を占 める寡占構造となって いるが、業者数におい て最も数が多いのは、 最下層の100㎘以下で あり、全業者の約7割 を占める。100~200㎘ を含めると、実に8割 にもなる。そして、これらの小規模酒造業者の大半は全国各地の地方に存在 し、地元市場での販売を基本とした典型的な地場中小企業である。したがっ て、酒造業の行方は圧倒的大多数を占める地方の小規模酒造業者の動向に かかっているといっても過言ではない。 では、小規模酒造業者の経営は具体的にどのような存在なのかというと、 経営者が杜氏(製造責任者)を兼務する半ば家族経営的なものであったり、 雇用経営であっても専従者が杜氏を含めて2~3名程度で、繁忙期に地元の 臨時雇用を使って継続しているというようなものが多く、企業経営とは言えな いようなものが多い。生産技術的にも、経験と手作業に支えられ、作業を軽 減するための省力化は進んでいるものの、大量生産や省人化につながるよう な装置化は行われていな い。 そこで、こうした小規模 酒造業者が経営としてどの ような状況にあるかを表2 により確認すると、欠損及 び低収益企業の6割を100 ㎘以下層が占め、階層内で も半数以上を占める状況 表1 生成数量規模別でみた酒造業の構成(2017)
となっている。インバウンド消費や輸出が好調で単価、売上ともに改善傾向に あった2017年度でこの状態であるから、事態はかなり深刻といえよう。日本酒 の魅力を支えているのは銘柄の多様性であるが、その多様性を支えているの は地方にある多数の小規模酒造業者の存在である。したがって、こうした状 況は小規模事業者の経営が単に苦しいということだけではなくて、酒造業そ のものの盛衰にかかわってくることになる。そこで、この欠損・低収益の中身 について詳しくみておきたい。 2.小規模酒造業者の経営分析-国税庁の統計調査を手掛かりにして― ここでは、『清酒製造業の概況』(国税庁課税部酒税課)に掲載されてい る経営指標を用いて、100㎘以下層の欠損・低収益経営の中身がどのようなも のであるかを検討する。但し、同資料の経営指標の多くは「比率」と「人当た り」なので、一部、一業者当たりの指標を推計する等の数字の加工を行ってい る。これについては、巻末表を参照されたい。 実際の経営数字ではなく、平均値を用いる点で経営の内容を完全に把握し えるものではないものの2、指標の検討に当たっては、Iで提示した分析視角を 意識しながら、可能な限り数字の裏にあるものの把握に努めた。というのは、 企業会計の考え方で整理されている経営指標は基本的に価値実現ベースの、 「引き算」の論理に基づいているため、経営指標を額面通りに受容して要因 や内容を検討するのは正確ではないと考えたことによる3。 1)欠損・低収益の要因―嵩む価値実現のための費用― 図1は、100㎘以下層における1999~2017年の営業利益と総利益、販管費 等の推移を整理したものである。図からは、改善傾向にあるとはいえ、営業利 益は依然としてマイナスであることがわかる。営業利益は、売上から価値形成 に要した費用である生産費(C+V)相当の製造原価 を差し引いた総利益か ら、販管費を控除して算出される。販管費は価値形成ではなくて、価値実現に 要した費用であるが、この動きを確認すると、営業利益とトレード・オフ関係に
あることがわかる。販管費が低下する と営業損失が改善され、逆に上昇する と悪化する関係がある。つまり、価値 実現に要する費用が形成された価値 を食っていることになる。しかしなが ら、形成された価値を売上として実現 するためには、形成された価値を食っ てしまう費用が必要であるという矛盾 がある。そこで、移出(販売)数量当た りの販管費、販管費に対する売上高の 比率を確認すると、前者については上 昇、後者については低下する局面が多 い。つまり、販管費に売上が追い付い てこない、あるいは売上当たりの販売 費が嵩むという局面が散見される。 そこで、今度は、図2で、一業者当 たりの売上の推移を確認すると、リー マンショック、東日本大震災のあった 2009、2011年を底として大きく好転し ている。その内訳を確認すると、移出 量、単価上昇がともに好転しているし たがって、2011年以降の売上と総利益 は単価、数量が伸びたことによるとこ ろが大きい。しかしながら、単価と移 出量の動きは必ずしもパラレルではな く、後者については減少局面が続いて きたことから、コロナが終息した後は 局面が変わる可能性がある。
いずれにせよ、 欠損・低収益の要因には売上の問題もあるのだが、価値実 現のための費用が嵩んでいることをまずは指摘しておきたい。その原因につい ては、広告宣伝費、旅費・交際費、リベート、輸送費などが考えられるが、デー タがないので、ここでは論点留保である。 2)小規模酒造業の生産力構造―「生産性の低下」をどうみるか?― (1)「生産性の低下」をどうみるか? 今度は、図3により、生産性の状況をみておこう。同図をみると、製造工程 従事者一人当たりの生産量(製成数量)はほぼ一貫して右下がりの状態と なっている。これに対して、売上、付加価値は2011年以降増えており、物的生 産性と価値生産性は連動しない。この乖離はもちろん単価の改善によるもの であるが、それが市場の要因によるものなのか、生産側の要因によるものな のかはわからない。後者にしたいところではあるが、単価の改善は双方が要 因だと思われるので、物的生産性を 生産性指標とすると 、その動向から は「生産性が低下している」のは否め ない。しかしながら、この生産性の低 下を額面通りに受け止めることはでき ない。というのは、この生産性の低下 は、販売量と酒造従事者の減少のな かで起きているからである。 有機的生産という特性から受注見 合いで生産を簡単には変更できない 酒造業においては、販売量が毎年落 ちていくという状況のなかで必ず在庫 が発生する。したがって、生産計画は この在庫の存在を前提としたものとな るので、生産は減少トレンドをたどら
ざるを得ない。したがって、生産量の減をリカバリーするために、吟醸酒のよ うな単価の高いものに製造アイテムを転換することになるが、少量仕込みで醸 造期間を長めにとる関係で数量を追求できない。 したがって、生産性の低下は、販売動向とそれを反映した製法の合理的な 選択という側面がある。 そして、酒造従事者の減少については、2017年では4.2人であり、1999年の 5.2人に対して1人の減である。たった1人の減であるが重要な意味をもってい る。というのは、1人減っただけでも人数以上の作業消化能力が失われるこ とになるからである。人数の減少によって、作業者個々人の能力が低下するわ けではないのにもかかわらず、協業ないし分業のもつ生産力失われ、あたかも 一人当たりの生産能力が低下したかのような「生産性の低下」が生じるので ある。しかも、4.2人は製造以外の業務への従事も含んでいる。「生産性の低 下」を額面通りに受け止めることには落とし穴がある。生産労働の具体的な 仕組を理解することなく、闇雲に機械化や先端技術の導入を含む「革新」を 言い立てることは、無用な投資や改良を誘発し、逆に経営の悪化を招きかね ない。 生産性の低下は「生産能力」の低下を意味しない。施設の稼働率をみると 改善されており、使用自体が生産手段の維持管理の機能を果たすことを考え ると、生産性云々に関係なく、生産の継続自体が間接的に生産力を維持する という機能を果たしている。 したがって、「生産性の低下」は、あくまで結果でしかなく、マーケットが縮 小している状況下では、さほど重要な意味をもつわけではない。重要なのは、 生産性の低下が人数の減少の中で起こっているという状況である。人がいな いことによって生産性が低下するのであって、その逆ではない。 (2)「人件費」について しかしながら、人がいないのにもかかわらず、人当たり人件費は低位であ る。表3に生産規模別に生産性を整理したが、100㎘以下の小規模酒造業の
一人 当たり人件 費 は300万円に届かな い。ここでの人件費 は役員を含めたも のだが、それでもこ の水準なのである。 生産規模間の比較 では、生産性と収益 性、人件費の間には相関がある。生産性の差が収益性の差となり、人件費の 支払い能力の差となって現れるのだろう。しかしながら、生産性の最も高い 5000㎘超と最も低い100㎘を比較すると、一人当たり製成数量と一業者当た りの従業者数の倍率が10倍以上になるのに対して、売上高や付加価値は5倍 程度に過ぎない。しかも、5000㎘超の従業者はかなりの程度非製造部門の 従事者数が含まれている。したがって、生産性と収益に規模間格差があると いっても割り引く必要がある。ただ、人数の多さは分業を可能にし、労働装備 率の高さは省力・省人化を可能にして、生産工程の改良、製品開発、作業条件 の改善、事業の多角化、価値実現へ対応を可能にすることは否めない。市場 の縮小で生産増が売上に直結しない時代になり、営業赤字が慢性化している 状況下でその回収は非常に困難だが、人や設備への投資は必要だろう。機械 による人間の置換が部分的なものに止まらざるを得ない酒造業 では、とくに 人への支出、人的投資が生産の維持継続に果たす役割は大きい。売上見合 いで「抑制」せざるを得ないとしても、賃金以外の形で補うような対応が必要 であろう。 3)資本の回収状況-安全性分析- 「営業赤字≠収益力低下」であり、「生産性低下≠生産力(≒稼得能力)低 下」で、「人件費は必要な経費である」とすると、小規模酒造業における経営 の問題は別にある。
そこで、資本の回収状況あるいは資 金循環の状況を整理した。図4は財務 の健全性をみるために安全性指標の 推移をみたものだが、まず借入金比率 が大きく低下し、50%を下回っている。 したがって、借金への依存が大きく下 がったという面では改善されている。 しかしながら、赤字が慢性化している ことを踏まえると、このことは、人件費 を抑制してでも借入金の返済を優先 させなければならなかったということ の裏返してもある。 流動比率と当座比率については、前 者については右肩上がりだが、後者に ついては、その傾向は明瞭ではなく、 水準としては100%に届かない。それ 故、借入金依存の状況は改善されたけれども、資金繰りが厳しいという状況 は続いており、経営内部で苦しい資金の遣り繰りが行われている様子がうか がえる。ただ、慢性的な営業赤字であるのにもかかわらず、借入金を減らしな がら、資金の遣り繰りができているのは、費用の節減もさることながら、費用 の中には実際の支出を伴わない償却費や引当金等の「みなし費用」もあるの で、キャッシュベースではそれほど収益が悪化しているわけではないからなの かもしれない。しかしながら、「みなし費用」のなかにはいずれ回収しなけれ ばならないものもあり、キャッシュベースでの収支管理は、中長期的には苦し くなる。図にあるように、総資本回転率は確実に悪化している。ただ、投下し た資本のすべてを貨幣として回収しなければ、事業を継続できないというわ けでもないだろうから、回転率の悪化がどの程度危機的状況に直結するか は、生産を継続するために回収すべきものがどのくらいあるかによって、判断
は変わってこよう。 4)損益分岐点分析―欠損・低収益の改善について そこで、今度は、生産ならびに 経営を維持するために必要な売 上と販売数量について考えてみ たい。 生産継続や利益確保に必要な 売上は、操業継続にとって優先 度が高い費用は何か、最低限確 保しなければならない利益は何かによって変わってくる。つまり何を「限界利 益」として整理するかによって変わってくる 。慢性赤字で人当たりの人件費も 低い小規模酒造業では利益を問うことは意味がないので、原料費(米代)、 人件費、金融費用を限界利益として整理すると、表4のようになる。限界利益 とそれに対応する販売数量はそれぞれ約3500万円、39㎘であり、現行の売 上(2017年)に対する比率としては77.8%となる。この77.8%は上記3費目の 比率で、3,500万円で生産継続と経営に必要な費用をすべてカバーするわけ ではないものの、これを粗方の損益分岐点とみなせば、低収益・欠損状態の 状態と資本の回収状況を改善するためには、限界利益の引下げ、販管費の節 減、販売の増の3択となる。原料費と金融費用は、農業生産者や金融機関へ の支払いで単独で節減できるものではない。人件費ももともと低水準である ことを考えると、限界利益の引下げの余地は限られており、無理に引下げを行 うと生産力の喪失・劣化を招いて、生産性の低下につながる可能性がある。 したがって、販売費用の節減と販売増がセットでないと状況の改善は望めな い8。生産性の拡大も販売の拡大があってはじめて意味をもつ。 かくして、事態の改善のためには「足し算」の発想が求められる。 表4 限界利益(生産継続分岐点売上)
5)小括 小規模酒造業の欠損・低収益の問題は単純ではない。「経営のやり方が 悪い」9だとか「生産性が低い」、「付加価値の高いものをつくっていないから だ」というような話ではない。 結果にすぎない指標の水準(数字)に拘泥して、経営指標をもって経営の 優劣とし、その指標の改善自体を目的とする単線的な分析では、事態を見誤 る可能性がある。とりわけ、企業会計ベースの分析手法においては、価値形成 と価値実現の関係が完全に見落とされており、経営活動は「引き算」だけで 成り立っているわけではないのに、どうしても「引き算」の思考になりがちであ る。生産性の問題についても、一人当たりの生産量、売上高、付加価値をとり あげることによって、「入」を図ろうとする点で「引き算」的思考を解決してい るようにみえるが、そこで期待されていることは、結局のところ「人件費の節 減」でしかない。売上と費用の差分の追及を前提にしているという点でマーケ ティングにしても同様で、「価値実現を優先させて、価値形成を従とする」ので は、漠然とした「方向性」以上のものは出せまい。 補遺.コロナ禍での経営問題 ところで、以上の分析は2017年度時点までのものであり、今現在の危機的 状況下のものではない。 しかしながら、今現在の状況を示すものはないものの、飲食サービスへの 出荷が大きい酒造業者の経営状況については容易に想像がつくところではあ る。売上は、半分にも満たないどころか、皆無というところもあるのではなか ろうか?筆者の周辺でも、飲食店からの注文は例年の1割にも満たないという 声も漏れ聞く。在庫があるので、タンクが開かなければ、新酒の仕込みもでき ない。原料米についても、先買いの契約なので、その分の支払いもある。原料 米の引き取り、したがって支払いの繰延べ対応があるにせよ、おそらく1シー ズンが限度であろう。こうなると「限界利益の回収」どころの話ではない。製 造従事者の給与や雇用、原料生産者である農業者への影響が懸念される。
そこで、喫緊の問題は酒造業者の経営にどれだけ体力があるかだが、欠 損・低収益企業の多い小規模酒造業者の場合、危機的状況に陥っていること は間違いない。小規模酒造業者の経営は酒造業そのものの盛衰にかかわっ てくることに言及したが、今、求められているのは、こうした小規模事業者の 救済であろう。具体的には、令和3年酒造年度に予定されていた原料米の代 金と人件費、金融費用の補償であろう。その際、合併や事業の継承を強要す るような条件をつけるようなことはすべきではない。また、補償は、融資ではな く、助成や給付が望ましい。 III.市場の現実―高級化、広域販売、連携路線の再検討- 以上の小規模酒造業の経営分析からは、最大の問題は「生産性の向上」な どではなくて、「売上の確保」にあることがわかる。財務の問題にしても、米 代や人件費の回収にしても販売に帰着する。生産性は米代や人件費の回収と は無関係である。しながら、清酒の消費量が減少トレンドにある、代替品であ る他の酒類と競合関係にある、少子高齢化で地方を中心に人口減少が進ん でいる、所得の低下と雇用の悪化・内容変化で家計の消費能力が落ちている 等々の構造的な要因があり、売上確保は容易ではない。とはいうものの、そう したマーケットの動向を完全与件として縮小対応するのは先細りである。価 値形成の観点からは縮小再生産は限界がある。筆者が行った聞き取り調査 によると、最低でも4人いなければ分業体制は採れないので、フレキシブルな 対応も困難になるということであった10。したがって、最低でも4人の製造従事 者に労働の対価を十分に支払うことができるだけの売上げを確保しなければ ならない。もちろん、労働に対する対価を確保するためには、物財費、販管費 の見直しも必要ではある。酒造業の場合、製造原価の7割を米代が占めるとい われているものの、原料米の酒化率によってコストが左右される面もあり11、ま た販管費についても交際費のように見直し可能なものも存在するからである。 しかしながら、原料消費の工夫にしても限界があり、米代そのものを節減する
ことは、原料生産者である農業生産者との関係が出てくる。また、価値形成と 価値実現の関係を踏まえると、販管費にしても0ということにはならない。小 規模酒造業者の場合、製造従事者が販管業務を兼務している場合も少なく ない。したがって、最終的には、売上そのものをいかに増やすかというところ に帰着する。 そこで、売上げを増やすために、何が提言されているのかを整理すると、高 級化、広域販売、連携の三点に集約される。 高級化は、単価のとれる付加価値の高いものを生産したり、ブランド化する という路線である。具体的には、純米酒、吟醸酒に代表される特定名称酒の 生産に傾斜するというものである。広域販売は、人口が減少する地元市場だ けでは販売を確保できないので全国市場での販売も目指すというもので、こ れには輸出も含まれる。連携は、原料部門、製造部門、加工販売部門が連動 する産業組織を形成するというもので、高級化にともなう原料米の安定確保 や地産地消のブランド形成にかかわって言及されることが多い。 しかしながら、こうした路線は、小規模酒造業の路線としてはどうなのか? 表示は略するが、確かに、販売量に占める特定名称酒のウェイトが高くなって おり、それに伴い単価も上昇する傾向が続いている。しかし、このことは競争 が激しいということの裏返しでもある。表5は清酒の商品カテゴリー別の集中 度を計測したものであるが、これをみると寡占化の進んだカップ酒、パック酒 に比べて、高級酒である特定名称酒の競争状態は歴然としている。こうした 状況のなかで、機械生産によって 製造された大手酒造メーカーの特 定名称酒が低価格で市場に投入 されるようになってきている12。広 域販売もかなり進んでいるが、「知 名度」がないと「店の棚において もらえない」というのが現実のよう だ。それ故、すべての小規模酒造
業者がうまくいくわけではない。小規模酒造業者の場合、広域販売となると 直販は困難なので、どうしても問屋流通となる。が、その場合、取扱いロット が壁となる。単価とマージンが高くとも取扱数量が小規模になるので、流通費 が割高となる。その辺で流通業者との「連携」にはどうしても齟齬が出てくる ことになる13。アイテム単位で売れたとしても、全体として売上は伸びているわ けではないという指摘もある14。小規模酒造業者の場合、地元市場を前提に、 当該地域の消費者の経済力に見合ったものを「定番商品」として提供し続け、 それによってある程度の販売の見通しが立っている場合もあり、高級品だけ をつくればいいというわけでもない15。原料生産者である農業者との連携16に しても、マーケットの変動に対するリスクに対して、その受ける影響が同じで はないことを前提にした関係構築が必要で、それほど予定調和的な話ではな い。それ故、地元市場が縮小しているからと言って、高級・広域・連携路線が 必ずしも「正解」とは言い切れない面がある。 小規模酒造業者の場合、経営学の教科書にあるようなマーケティングや経 営戦略論が示すような「方向性」ではやれない現実がある。 エピローグ-ポスト・コロナにおける経済活動の行方― 冒頭で、「市場見合いでは稼げなくなった現実」に対して、「かつてのよう に、私的経済領域の全面否定なり、市場経済をひっくり返せばいいというわ けにもいかない現実」に対して、「展望」を見出したい、そのための作業であ るとして、小規模酒造業の経営分析を位置づけた。そこで、最後に、何を「展 望」しえたのか、「展望」に至らなくても、何を発見しえたのかについて言及し ておきたい。 小規模酒造業の分析を通じてわかった、あるいは考えさせられたのは、市 場経済のもとでの経済活動は「矛盾した活動」だという現実である。それは 価値形成と価値実現の過程が、すなわち足し算と引き算のプロセスが同時に 存在するという点であり、どちらを欠いても成り立たないという現実である。
例えば、本稿では、生産性と人件費の問題をとりあげたが、そこで明らかに なったことは、生産性の低下は生産力の低下を意味しないということであり、 人が少なくなると生産性が低下するという現実であった。少ない労力で多く の成果を生む、すなわち産出-投入の差額を大きくするためには、労力(人)が 存在しなければならない、人件費がかかるという現実である。そして、売上高 総利益を総利益として実現するためには、そこからの控除をなす販管費が必 要であり、そのことは同時に営業利益の実現プロセスでもあるという現実であ る。どちらも互いを前提とするプロセスで、価値形成と価値実現のどちらを欠 いても経営は成り立たない。 したがって、重要なのは、相矛盾する要素のバランス(均衡)ということにな ろう。欠損・低収益の状態は確かにバランスを欠くが、収益費用のバランスは 求められるバランスのうちのひとつでしかない。それ故、収益費用のアンバラ ンスよりも、相矛盾する要素をどう両立させるかが重要なのである。それは経 済活動の持続可能性の追求でもある。 ポスト・コロナ時代に求められる経済活動なり経済運営というのは、まさに バランスの経済であり、持続可能性の追求であろう。その意味で、働いている 人間、地域との関係に呻吟しつつ、ビジネスを行っている中小企業の存在は 非常に大きい。小規模酒造業の労働と経営が一体となったワークショップ・ エコノミー(作業場経済)とも呼べるような経済活動は、経営内外における諸 関係のバランスの上になりたっており、その目的は事業の維持・継続にある。 したがって、労働力を人件費として位置づけ、その節減を意識せざるをえない 企業型経営とは大きく性格を異にする。本稿のタイトルを「ワークショップ・エ コノミーの経済学」としたのはこのような理由による。 経営の目的は、「“人間らしい生活”を営むに足る水準の所得の確保と雇用 の安定」におかれるべきである17。生産性はその手段でしかない。こうした経 済活動への転換、「持続可能な経済活動」への転換がポスト・コロナ時代の 経済経営に求められている。 したがって、酒造業を含むワークショップ・エコノミーに必要なのは「持続
可能であること」で、行論の検討を踏まえると、それは「労働組織の維持創 造」にほかならないことを最後に強調しておきたい。 【謝辞】 本稿を執筆するにあたり、現職の杜氏である廣島達彦氏(吉乃友酒造)よ り多くの示唆をいただいた。とりわけ、酒造技術、生産・労働過程が大きく関 係してくる部分については、同氏のレクチャーによるところが非常に大きい。 また、本学の根田正樹前学長からは、専門外の話であるにもかかわらず、 私の酒造業の話に熱心に耳を傾けて下さり、「研究者(=大学教員)とはどう あるべきか」についてご指導いただいた。 この場を借りて、厚くお礼を申し上げたい。 [注] 1 こうした中小企業の位置づけに関する議論については、「成長戦略会議」(https://www.cas. go.jp/jp/seisaku/seicho/)にアップロードされている議事概要、とりわけ第4回会議のそれを参 照されたい。中小企業、とりわけ小規模事業者に対する考え方が明確に表れている。会議において は、中小企業の生産性の低さが問題視されているが、「ゴール」については一切議論されていない。 ただ単に低さが問題にされて、その改善自体が目的にされ、生産性を上げれば問題が解決されるか のような「予定調和的」議論が繰り返されている。 2 経済分析は平均値 (所得、資本、資源、生産性、付加価値、消費水準等々の平均値)の比較で 行われることが多い。が、それは、「平均値比格」という点で、制約を免れない。例えば、「労働生産 性」でいえば、労働組織内部における個々人の役割や能力の差、分業を不問にすることになるので、 格差や生産性の状況を正確に伝えるものとはならない。具体的な中身を取り扱えないという点で、 「基本動向(傾向)」以上のものを語れないという欠点がある。 3 この点については、筆者が行論で言及している理由のほかに、小栗崇資「会計用語と経済用語」 (小栗崇資・谷江武士編『内部留保の経営分析』学習の友社、2010)も併せて参照されたい。 4 生産費は価値実現がどのような水準であるかに関わらず、ある一定量のモノ・サービスの一部と して対象化されている原材料や生産資材、労働の費用を積算したものであるのに対して、製造原価 は一定期間にモノ・サービスの生産に投じたと「観念」されるものを積算し、売上として価値実現さ れた分に対応するものだけを計上する点で、決定的に異なる。 ここでは、便宜上、製造原価をもって生産費とみなしている。なお、生産費と製造原価のちがいを 理論的に整理したものについては、加用信文「生産費の概念」(『農畜産物生産費論』1976、楽游
書房)がある。管見の限りではこれ以外に見当たらない。 5 モノが売れなくなるような時代になってから、物的生産性ではなく付加価値生産性が重要な指標 となっており、マーケットの動向を反映する成果をもって生産性を計測しようという風潮がある。「売 れるものをつくる=生産性高い」というのはどうなのか?付加価値生産性の概念は、その要因を検 討する際に、付加価値の水準が「市場の要因」によるものなのか、財・サービスの生産構造に基づく ものなのかが整理されないまま議論されることが多い。「売れるものをつくる」「革新」は生産性概 念と別のような気がする。 6 近藤康男編『酒造業の経済構造』(東大出版会、1967)によると、清酒の単位数量当たりの原価 は規模が大きくなるにつれて逓減するわけではなく、2000㎘以上になると逓増するとし、それは酒 造りが機械生産でないことに由来するという。そして、そこに中小規模の酒造業が存在する理由が あるとしている。この指摘は基本的には今でも当てはまるのではないか。むしろ、マーケットの縮小 でよりそうした側面が強まっているように思われる。そうなければ、減少しているとはいえ、表1のよ うな企業分布は説明がつかない。 7 したがって、損益分岐点や操業停止点は何を「固定費」(変動費)とみなすかで変わってくるとい うことであり、それは経営者が何を必要な費用として観念するかによって変わってくるということで ある。場合によっては、目標利益が間接費のなかに入れられて、回収すべき「費用」とされることも ある。 8 それ故、「販売対策の費用対効果」を考えねばならない。 9 例えば、「(中小企業が-石川)価格競争に巻き込まれているというのは3つの要素しか考えられ ない。一つは需要が足りない。もうひとつは、供給が多すぎる。…(中略)もう一つは、経営が下手と いうことが考えられる」(前掲「成長戦略会議」第4回会議議事要旨、p21)という指摘がある。 10 小規模酒造業の労働力編制については、拙稿「現代地方中小酒造業における生産・労働に関す るモノグラフ」(『高岡法学』第30号、2020.12)を参照されたい。 11 つくり手の技能によっては、吟醸酒並みの純米酒を低精白の高い酒化率で生産することは可能 であるらしい。但し、その場合、ランクは下がるので価格が伸びないという矛盾が出てくる。吟醸酒 のような高級酒をつくれば、原料代をそのまま上積みするような形にならざるを得ないので、部外者 がイメージするように付加価値が上がるわけではないようである。 12 山田聯昭「流通システムの変化と酒造メーカーの戦略」(『フードシステム研究』第24巻第1号、 2017)によると、「量産可能なところまで技術開発が進んだ」結果、メインチャネルとなっているSM とCVSでは、単価1000円前後の価格帯に高級酒の大吟醸や純米大吟醸が登場するまでになって いるという。 13 この点については、小林元「清酒市場における流通構造再編の現段階」(『農業市場研究』№ 56、2002)にあるように、以前から指摘されているところである。同論文によると、特定名称酒市場 は「競争型の全国市場」であり、ロット追求型の卸売業者とも齟齬があることから地方中小メーカー の「差別化路線による生き残り戦略」は必ずしも妥当とは言えない状況が指摘されている。ちなみ に、前掲「流通システムの変化と酒造メーカーの戦略」では、地方の中小酒造業者の広域直販チャ ネルである専門酒販店をプラットフォームとする限定流通システム、特約店網を活用した販売にも限 界が出てきていることが指摘されている。特約契約の専門店といえども「売りやすいものだけをライ
ンナップ(プッシュ)しがち」になり、酒造業者との間に距離が出始 めているという。 14 筆者が行った聞き取りによると、売れている酒があるといって も、売上は落ちており、「いいものをつくればなんとかなる問題では ない」という意見があった。 15 生成数量規模と移出単価の関係(右表)は、規模が小さくなるほ ど単価が高くなり、中小規模酒造業ほど手づくりの特定名称酒路線 をとっていることが伺えるが、本稿の分析の対象としている100㎘以 下の小規模酒造業ではそうでもない。このことのもつ意味を考える 必要がある。 16 原料生産者との連携については、斎藤修「清酒のバリューチェーンと農商工連携」(『フードシス テム研究』第24巻第1号、2017)が詳しい。但し、同論文でも「リスクの分担、取引先との投資戦略、 パートナーシップとインセンティヴを検討しておく必要がある」と指摘はしているものの、肝心のそ の中身については立入っていない。ちなみに、「連携」に関する議論の下敷きになっているのは産業 組織論の議論であるが、これによると、「連携」の最大のメリットは「規模の経済」を享受できるこ とにあるらしい。たとえば、原料米生産が効率的に行われている場合、そうした生産を行っている農 業経営体と固定的な取引を行えば、原料代の引き下げることができ、付加価値を引き上げることが できる。あるいは、損益分岐点を引き下げることができる。なので、「連携」は「バリューチェンの構 築」という課題として提起される。が、「バリューチェンの構築」は理屈としてはそうであっても、現 実としてはそれほど予定調和的な話ではない。 17 利益や生産性はこの目的を達成するための「手段」でしかない。その意味では、最近流行の「K PI」(重要業績評価指標)はまさに手段が目的と化すツールになりかねないことを指摘したい。
付表 小規模酒造業者(100㎘以下)の経営指標
73 47 48
付表 小規模酒造業者(100㎘以下)の経営指標
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