• 検索結果がありません。

聖地巡礼ツーリズムの経験価値に関する一考察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "聖地巡礼ツーリズムの経験価値に関する一考察"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

聖地巡礼ツーリズムの経験価値に関する一考察

A Study on the Experiential Value of Pilgrimage Tourism

南地 伸昭* NANCHI Nobuaki *

The purpose of this study is to examine the experiential value of pilgrimage tourism from the viewpoint of the experience economy and clarify the characteristics of the modern pilgrimage tourism. A pilgrimage to the sacred space that was a traditionally religious act was commercialized by tourism industry and fused with the tourism as the entertainment product in spare time. In a new economic era, pilgrimage tourists are in search for extraordinary and memorable experiences. However, there is no academic investigations on the measurement of pilgrimage tourism experiences. Overall, findings of this study improve the theoretical advance on the experiential concept in pilgrimage tourism.

キーワード: 聖地巡礼ツーリズム(pilgrimage tourism)、経験価値(experiential value)、真正性 (authenticity) 1.はじめに 近年、様々な場所で宗教的行為である聖地巡礼と ツーリズム1)、(1)が融合しつつある。例えば、世界各 国から多数のツーリストを集めているサンティア ゴ・デ・コンポステラ巡礼においては、聖地へと赴 くツーリストの半数以上は、特段に信仰をもたず教 会にも行ったことのない非キリスト教徒である2)。 中世においては聖人の遺体や聖遺物といった“聖 なる”超越的存在と物理的に接触していたとされる 「物」によってその場所に聖性が付与されてそれらが 信仰世界の中心を形成していた。すなわち、教会と いう権威が認めたという事実によって真正性が獲得 され、信仰ある人々を魅了していたのである3)、 (2)。 しかしながら、現代のサンティアゴ巡礼において は、信仰の無い人々にとって巡礼路のゴールに安置 された聖遺物は絶対的な目標とは成り得ず、宗教が 生み出したフィクションに過ぎない。それにもかか わらず信仰を持たない多くのツーリストが聖地を訪 れるのは、ある場所やそこにある様々な事柄がそれ ぞれのツーリストにとって「訪れるに値するもの」 であると認識されているからであろう。 従来、伝統的な宗教組織がその役割を担っていた “信仰”や“修行”などの「宗教的なるもの」がそれ らから解放されて日常の生活空間における慣習的習 俗からの脱埋め込みが成されている4)。現代の巡礼 者は制度的・共同体的な信仰よりもむしろ個人的な 問題に関心を寄せており5)、宗教組織の教義とは無 関係に自身の関心や目的に応じて宗教の特定要素を 切り取り、自身にとって意味ある形にカスタマイズ することによって私的な信仰を形成しているので あ る。 一方、ツーリズム産業も宗教資源の中から「神聖 なものや美しいものにふれることで獲得される癒し や精神的充足感」などのツーリズムと親和性のある 資源パーツを切り取り、誰もが聖地巡礼を気軽に経 験できるよう、経済財としてのツーリズム商品に組 み替えている。 ツーリストが巡礼路で様々なものを見聞し、神聖 なものや美しいものにふれるといった経験によって 獲得される価値は、ツーリスト自身の内面にベクト ルが向かうといった特徴がある。宗教的行為として の聖地巡礼は、商品に内在する記号を消費し他者と 比較することによる差異への注目や、どのような集 団に帰属したいかといった社会関係に軸足を置く記 号的価値6)、(3)とは異なり、感動や癒しなどの心理的 充足感を志向する側面が強いことから、内面的な経 験価値を多分に包含するツーリズムとは親和性が 高7)。 *北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院 博士後期課程 論 文 [観光研究]2020. 9 / Vol. 32 / No.1 日本観光研究学会機関誌 Journal of Japan Institute of Tourism Research

(2)

聖地巡礼およびツーリズムに関する先行研究にみ られるように、古来より聖地への巡礼者は、宗教的 な信仰はもとより、見聞や娯楽、芸術などの多様な 目的をもって旅に出かけた8)、9)、10)、11)。また、個人的 意味の探求といったツーリズムが有する宗教的次元 を論じたマキャーネルやグレイバーンなどの先行研 究は、元来、不可分である旅も、宗教的行為である 聖地巡礼も、ともに人間の主観的な経験としての真 正性の探求を基底にしていることを指摘してい る12)、13)。 伝統的な宗教の枠組みを超えて経験消費される余 暇・娯楽商品としてのツーリズムの側面をも併せ持 つようになった現代社会の聖地巡礼は、互いに内面 志向の側面を有する聖地巡礼とツーリズムが融合し たものである。それゆえ、感情的、知的、精神的な レベルで働きかけて顧客を魅了し、サービスを思い 出に残る出来事に変える経験価値を多分に内包して いるものと考えられる。巡礼路を取り巻く自然や教 会建築、礼拝での厳かな雰囲気などといったツーリ ストの経験価値を生み出し得る様々な資源が、旅行 会社によって聖地巡礼ツーリズムに商品化され、「訪 れるに値するもの」として現代の巡礼者に経験消費 されているのである。 次節で詳述するように、聖地巡礼やツーリズムに 関する先行研究は、それらの間に歴史的な連続性が 存在し、ともに内面のオーセンティックな経験を探 求する価値を内包しているといった類似性を指摘し てきた。しかしながら、消費者の経験する内容が価 値を生み出す今日の経験経済システム下で経験価値 が重要性を増しているにもかかわらず、経済財とし ての聖地巡礼ツーリズムが内包している経験価値の 構成要素を明らかにしてこなかった14)、15)、(4)。 現代の巡礼者が聖地巡礼ツーリズムの中に見出す 経験価値の構成要素を浮き彫りにすることによって、 互いに親和性を有する聖地巡礼とツーリズムが融合 した新たな形態としての聖地巡礼ツーリズムの本質 的な価値を捉えることが可能になるものと考えられ る。加えて、このような経験価値の構成要素を新た なツーリズム商品の企画・開発や、マーケティング 活動などに活かすことにより、ツーリズム産業の発 展や、ツーリズムを活かした地域創生への貢献と いった今日的意義を見出すことができよう。 そこで本研究では、成熟化社会の新たなツーリズ ムの一形態である聖地巡礼ツーリズムをとりあげ、 伝統的に宗教的行為であった聖地巡礼が、次第に ツーリズムと融合しながら市場経済システムに包含 されてきた背景を考察し、聖地巡礼に赴くツーリス トが「訪れるに値するもの」として見出す経験価値 の内実を明らかにする。具体的には、まず巡礼に関 する先行研究のサーベイを行う。古来、巡礼者は、 宗教的な信仰はもとより娯楽、芸術、健康などの様々 な目的をもって巡礼に出かけており、巡礼がツーリ ズムの原型としての特徴を有していることを確認す る。次に、ツーリズムに関する先行研究のサーベイ を行い、その本質が真正性の探求にある点で聖地巡 礼との間に類似性を有していることを浮き彫りにす る。そのうえで、経済システムの進化に伴い消費者 行動の研究分野で発展してきた「経験価値モデル」 の観点から、ツーリズム産業によってプロデュース される聖地巡礼ツーリズムの中にツーリストが見出 している経験価値の特徴を明らかにする。 2.聖地巡礼とツーリズムの親和性 (1) ツーリズムのプロトタイプとしての聖地巡礼 古代ギリシャにおいて、古代都市デルフォイのア ポロン神殿やオリュンポス十二神の最高神に捧げら れたゼウス神殿など、重要な神託所であった神殿へ の巡礼が行われていた。当時から十分な余暇の時間 を有していたアテネの市民は、「祝祭や聖域への巡礼 のみならず、楽しみや学び、芸術、健康回復など、 各自の様々な関心事に応じて」旅行をしていた16)。 その後、巡礼は13 世紀に入って慈善巡礼宿のネット ワークが産業として成長する一方で免罪旅行案内書 が大量発行されたことにより大流行したが、「既にこ のような巡礼には宗教的な信仰心と見聞、娯楽が混 じり合っていた」とされている17)。 このように、巡礼とツーリズムとの間に明確な区 分はなく18)、むしろ歴史的な連続性が存在すること から、巡礼はツーリズムの起源の一つであると考え ることができる19)。そして、たとえ巡礼が宗教的な 目的を第一にしていたとしても、一般的にそれは記 念物や博物館、美観地等へのツーリズムを兼ねてい たのである20)。この点において、巡礼者は宗教的な 信仰のみならず巡礼路で見聞する芸術等の美しいも のや遊興の楽しさ、学びといった審美的要素や娯楽 的要素、教育的要素の中にも「訪れるに値するもの」

(3)

を見出しているものと考えられる。 巡礼とツーリズムの類似性についてグレイバーン は、「ツーリズムは、場所を移動する旅行という特別 な観点から捉えると、中世の学生旅行や十字軍、欧 州やアジアの巡礼のような精神的な啓発を得ると いった目的性の強い諸々の慣習や制度と共通性があ る」と指摘している21)、22)、(5)。マキャーネルもまた、 「旅は本来宗教的な巡礼だったのであり、旅も宗教的 行為である聖地巡礼も、どちらもがオーセンティッ クな経験を探求するものである点で、ただ単に形が 似ているのみならず動機においても似ている」と論 じている23)。聖地への巡礼者が宗教的に重要な出来 事のあった場所を訪ねるのに対し、ツーリストは社 会的・歴史的・文化的に重要な場所に赴くが、「い ずれも訪問地で真の“生”を分かち合いたいと考え、 少なくとも真の“生”を見たいと望んでいる」ので ある24)。 人間を「聖化された宇宙の中に生活し世界的神聖 性にあやかっている宗教的人間(homo religiosus:ホ モ・レリギオースス)」として理解したエリアーデは、 「人間は、宇宙の中に見出した神聖性を自己の中にも 再発見し、宇宙の生命と自身の生命とが相同である ことを、体得された経験としてもっている」と論じ ている25)。このように「ただ単に人間であるのみな らず同時に宇宙的でもあるという超人間的な構造を もつ宗教的人間」は世界に向かって開かれているこ とから、「世界を知ることによって自分自身を知る能 力」を与えられており、それを知ることこそが「あ る宗教的なもの」なのである26)。そして、日常生活 が変化し至る所に徴表が発見される宗教的人間の体 験においては、生命の道を象徴する「道」や世界の 中心への遍歴である巡礼の象徴としての「歩み」は 宗教的価値を有することとなり、「人間は神々との交 流が可能な“中心”に身を置くことを望んで巡礼に 赴く」ようになる27)。 エリアーデは、「人間は、非日常的な聖なる時間・ 空間において精神的かつ身体的に決定的な出来事を 体験することによって、それまでにはもち得なかっ た力や知恵を獲得し、再び日常の俗なる時間・空間 に帰還するときには全く新しい人間としてかつてと は異なる存在論的かつ社会論的な地位に到達する」 として、人間が象徴的な意味で「古い人間としては 死に、新しい人間として再生するという体験」をイ ニシエーションと呼んだ28)。 新しい人間への再生であるイニシエーションの典 型例を、聖なるもの29)、(6)との出会いを求めて安定し た俗なる時空から出て苦難に満ちた旅へと向かう 「巡礼」の中に見出したターナーは、「通常の生活に おいて社会的・空間的な構造の中にいる人間が、あ る状態から別の状態へと移行するためには必ず重大 な通過儀礼を伴う」と指摘した30)、31)。 ターナーはイニシエーションについて、アルノル ト・ファン・ヘネップによる通過儀礼に関する「分 離」、「周縁」、「再統合」の三段階説32)を踏襲しなが ら解説した。それによると、最初の段階として、人 間は日常生活においては社会的・空間的な構造の中 に存在するが、当該構造から一旦分離されることで 通常の社会的な絆や身分などの世俗的な区分意識が 消え去り、次に、各自は、自分自身が時間と場所か ら出たどっちつかずの境界状態の中に置かれている と感じるようになる。そして最後に、イニシエーショ ンを経る者の間に強固な結束力を有する平等な個人 で構成される仲間集団としてのコムニタスが形成さ れ、このコムニタスにおいて聖なるものとの出会い という宗教的体験が実現することにより、新しい人 間への再生を果たすのである33)。 彼が巡礼の中に見出した日常的で俗なる時空から 聖なる時空へと移行する人間の主観的な経験として のイニシエーションこそ、まさに旅の原初的な姿で あった。それゆえ、神々との交流を求めて俗なる日 常から脱出して非日常の聖なる時空へと移行する主 観的な経験の中に、巡礼者は「訪れるに値するもの」 としての価値を見出しているものと考えられる。こ のようなターナーによる巡礼分析の枠組みをツーリ ズムに当てはめた場合、ツーリストが巡礼路で様々 な非日常的で主観的な出来事を経験する聖地巡礼 ツーリズムにおいても、日常の義務が宙吊りになり 無礼講のふざけた行為が許容されることで、比較的 しばられないコムニタスを賞揚するといった非日常 的な側面が存在するものと考えられる34)。 (2) 真正性を探求する聖なる旅 前近代社会では教会や寺院などの宗教的空間を中 心としてコミュニティを共有する文化的・倫理的な 帰属意識があったのに対して、現代の世俗化社会に おいては前近代社会とは異なる多様な価値観が日常 的に生み出されることにより、支配的な価値観や文

(4)

化が構造的に存在し得ず、特定の伝統宗教が公的な 地位や権威を失いつつある35)。その結果、人々の間 の同じコミュニティに所属するといった感覚が希薄 化し、共同体意識や仲間意識などの共同性が崩れて いく傾向にある36)。今日、サンティアゴ巡礼に赴く 特段に信仰をもたないツーリストにとって聖ヤコブ への信仰はもはや重要ではなく、「巡礼の道中で出会 う他の巡礼者や巡礼者を道中でサポートするオスピ タレロなどとの人間的交流や繋がり」の方がより重 要になっており37)、このような事例は、まさに仲間 意識などの共同性を回復する営みであるといえよう。 教会などの権威に基づく帰属意識が希薄化した現 代社会において、普遍的な価値観を共有する永続的 な共同体の構築が困難になっている。それゆえ、ター ナーが非日常の聖なる物との出会いを可能にする仲 間集団としてのコムニタスの重要性を指摘したよう に、ツーリストは、巡礼路で出会う様々な人々との 交流を通じて価値観を共有し共同体意識を取り戻す プロセスの中に「訪れるに値するもの」を見出して いるものと考えられる。 また、このようなオーセンティックな経験の探求 に聖地巡礼とツーリズムの類似性を見出したマ キャーネルは、ブーアスティンが提示した「ツーリ ズムは疑似イベントであり、ツーリストは真正性を 獲得することはできない」という議論38)を批判しつ つ、近代ツーリズムの本質は単なる疑似イベントや 一時的な消費行為としての遊興ではなく、ツーリス トによる「真正性の探究」といった非日常的で神聖 なものにあると論じた39)。そして彼は、「ツーリズム は社会における儀礼的側面の一つとして近代におけ る宗教の社会的機能を担っている」40)として、社会の 価値観を体現する宗教的儀礼と同様、ツーリズムも 独自の義務的体系を有している点を指摘している41)。 さらに、ツーリズムを「聖なる旅」と称したグレ イバーンも、「近代ツーリズムの本質は単なる一時的 な遊興ではなく、真正性の探求といった非日常的な ものにある」と指摘している42)。ツーリスティック な旅は「存在の非日常的な領域に位置していること から、その目的は日常の仕事の世界への関心よりも 道徳的により高度な次元に位置しており、象徴的に 聖なるもの」なのである43)。 ここで、ある場所やそこに存在する様々な事柄が 「訪れるに値するもの」として表象され、その表象に 基づき自らの多様な欲求を充足するためにそこへと 旅する消費行動をツーリズムとして定義すると、「信 仰なき巡礼者」の行為はツーリズムの側面を有して いるといえる44)。今日、様々な関心や目的を有する 「信仰なき巡礼者」がツーリズム産業によってプロ デュースされる聖地巡礼ツーリズムを経験消費すべ く聖地へ赴いており、伝統的な宗教的行為としての 聖地巡礼や宗教的習俗に縁が無かった人々が、新た に聖地巡礼ツーリズムの「顧客」として生まれ変わっ ている45)。 ツーリズム産業による聖地巡礼のツーリズム商品 化を通じて、経験価値の構成要素となる巡礼路の 様々な資源が組み合わされ、聖地巡礼のプロセスが パターン化されることによって、ツーリストの誰も が淡々と続く俗なる日常生活の皮相な空間から脱出 して、それぞれにとって価値のある経験ができる聖 なる旅へと赴く機会が提供されるようになった。 ツーリストは巡礼路の様々な局面で日常生活の中で は目にすることのない目新しいものや美しいものを 見聞し、巡礼仲間と人間的交流を重ねることで、信 仰を深めつつ、癒され、楽しみ、学び、感動し、そ のような私的な経験の中に「訪れるに値するもの」 を見出しているのである。 聖地巡礼とツーリズムが融合した形態としての聖 地巡礼ツーリズムは、非日常的な聖なる時空を生み 出すものとなることから、たとえツーリズムの空間 が意図的に作られたものであっても、それは「ツー リズムの舞台裏」や「強度ある体験」を提供する場 となり、巡礼者という名のツーリストは真正な体験 をし得るようになるものと考えられる。 このような非日常の経験が有する価値の重要性を 指摘したコーエンは、「ツーリストは既存の作られた 慣習的な観光サービスにおいては体験が不可能な “違い”を求めて多様な観光経験を望んでおり」、「旅 の目的の一つはツーリスト自身の精神的な“中心” から離れて他の異質なものと出会うことにある」と 論じている46)。彼は、ツーリストの“中心”との距 離および宗教性の強さに基づきツーリストの精神的 中心に対するスタンスを分類した「観光経験の5 つ のモード」を提示した47)(表-1)。 それによると、レクリエーション・モードのツー リストが求めるものは娯楽の楽しさであり、宗教的 な意図や意味は世俗化されている。彼らは社会や価

(5)

値観といった自己の“中心”から移動しようとする が、社会やその価値観が生み出すプレッシャーを和 らげて回復に向かわせてくれるパワーによって社会 やその価値観に繋ぎとめられ、結局のところ、自己 の“中心”から離れることはない48)。一方、気晴ら しモードの観光経験においては、リクリエーショ ン・モードが“中心”を志向する人々にとって何ら かの意味を有するのとは異なり、ツーリストは意味 を探そうとはせず疎外された状態を単に耐え得るも のにするだけである49)。 これに対して、経験モードのツーリストは本質的 に宗教的行為であるオーセンティシティの探求を行 う。しかしながら、彼らが他者のオーセンティック な生を自ら営むことはなく、ただ一幅の絵として鑑 賞するだけである50)。一方、体験モードのツーリス トは他者のオーセンティックな生の形を発見し関わ ろうとする点で、オーセンティシティの探求に対し てより主体的であるといえよう51)。 さらに、究極的な実存モードにおいては、観光経 験は「選び取った」精神的中心、すなわち自己の社 会や文化とは異なる他者の“中心”へのコミットを 通じて代替的なリアリティーを追求する宗教色の濃 いものになる52)。このように、コーエンのモード分 類において、観光経験はレクリエーション・モード および気晴らしモードから実存モードへと深まるに 従い、より宗教性を強めて、巡礼者が宗教的回心に 至る聖地巡礼と同等のものになり得ることが示され ている。 現代のツーリズムにおいては、ツーリストが巡礼 路で経験価値を消費できるよう、ツーリズム産業が 価値を生み出す様々な資源を組み合わせて聖地巡礼 ツーリズムに商品化しており、ツーリスト自身が生 まれ生活を営んできた社会の価値観とは異なる別の “中心”を自由に選択することが可能になった。それ ゆえ、“中心”が多極化しており、あらゆる場所が真 正性をもち得るようになったといえよう53)。 聖地巡礼ツーリズムは、楽しみや学び、心身の健 康、真正性の探求、人間的交流を通じた共同体意識 の回復といった多彩な目的を有するツーリズムと、 元来、宗教的行為としての聖なる旅であった聖地巡 礼が融合したものであることから、現代の巡礼者は 巡礼路での経験消費の深度に応じてコーエンのいず れのモードをも経験し得るものと考えられる。 3.経験価値消費経済下のツーリズム産業 (1) 経験経済の進化と主な経験価値モデル 経済システムが、農業経済から産業、サービス、 さらに経験経済へと進化するのに伴い、提供物とし ての経済価値がコモディティから製品、サービス、 経験へと進展している。すなわち、主体の経験を動 機とする経済が拡大することで、商品の便益的価値 でも記号的価値でもない、消費者自身が経験する内 容に価値を見出す新たな消費社会が到来しているの である54)。 自己の“中心”との距離 宗教性の強さ レクリエーション・モード その場を愉快に過ごすために作り事を受け入れ自己を欺くことで、 社会やその価値観といった“中心”から移動するが、結局は、自己の“中心”に対する支持を強める。 ツーリストは旅を他の「娯楽」と同じように享受し楽しむことで活力を得る。 気晴らしモード 退屈で無意味な日常から逃れてバケーションでのんびりする単なる気晴らしによって、 社会や文化の“中心”から疎外されている状態を耐え得るものにするが、 それに代わる“中心”を求めることをしないため、「再生」もない。 経験モード 自己の“中心”を喪失し、そのままではオーセンティックな生に到ることができない人々が、 他者の生のオーセンティシティを自分の生のことのように経験することで意味を取り戻そうとするが、 それらを「他者たちのもの」であるとずっと思っており、自己の生を転換したり回心したりしない。 体験モード オーセンティックな生に関わろうとして試行錯誤を繰り返しながら 自分自身が共鳴できる生の形を発見しようとするが、 いつも迷い続けて何かに完全にコミットすることができない。 実存モード 「選び取った」精神的中心、すなわち自己の社会や文化とは違った他者の“中心”に完全にコミットし、 巡礼者が巡礼を通じて新たな精神的活力を得て「再生」される 宗教的回心に近い状態である。   遠い  強い  出典 Cohen, E.(1979) に基づき筆者作成 表-1 観光経験の5つのモード モード ツーリストの“中心”に対するスタンス   近い 弱い 出典 Cohen, E.(1979) に基づき筆者作成 表-1 観光経験の 5 つのモード

(6)

経験経済の進化を指摘したPine and Gilmore(1999) は、新たな経済価値として認められた経験を、「企業 がサービスを舞台に、製品を小道具に使って顧客を 魅了するときに生じるものであり、コモディティが 代替可能、製品が有形、サービスが無形である一方 で、経験が思い出に残るという特性を有している」55) として、消費を経験として把握する経験価値概念を 提示した。従来の経済価値は全て買い手の外部に存 在していたのに対し、経験は感情的、身体的、知的、 さらに精神的なレベルで働きかけて顧客を魅了する ことでサービスを思い出に残る出来事に変えること から、経験を買う人はある瞬間やある時間に企業が 提供してくれる“コト”に価値を見出すこととなる。 彼らは、①顧客の経験への参加度と、②顧客と環 境の関係性の2 つの座標軸を用いることによって、 経験を、①娯楽、②教育、③脱日常、④審美の4 つ の領域に分類した。彼らのモデルの横軸は「顧客の 経験への参加度」を示し、左端はイベントに顧客が 影響を与えない「受動的な参加」を、また右端は顧 客が経験につながるイベントに積極的に関わる「積 極的な参加」を示している。一方、縦軸は「顧客と 環境との関係性」を示し、上端は顧客が経験に夢中 になっている「吸収状態」を、また下端は顧客が経 験の中に入り込んで一体化している「投入状態」を 示している56)。 人々は、①楽しみ(娯楽:何かを楽しむこと)、② 知的好奇心を満たし(教育:何かを学ぶこと)、③時 間を過ごすに値する場所へ旅をするなどの非日常的 な活動を行い(脱日常:日常生活から離れて非日常 的な何かを行うこと)、④美しいものにふれる(審 美:美しいものに身を委ねること)といった経験を 通じて意味的価値を見出しているのである(図-1)。

以上の Pine and Gilmore(1999)の「経験価値の 4E モデル」や「顧客が製品やサービスを通じて好ま しい経験をした際に獲得する顧客価値」概念を提示 した Holbrook(1994) 57)を基として、経験価値モデ ルをさらに発展させたのが Mathwick et al.(2001, 2002) 58)、59)である。彼らは製品やサービスを消費す る過程での経験において生じる顧客価値を経験価値 として概念化し、これを「顧客自身が消費経験を通 じて製品やサービスに対して知覚した好ましい事柄」 と定義した。そのうえで、Holbrook(1994)の快楽 的価値を、①審美的価値と、②娯楽的価値の2 つの 意味的価値に分類し、これにHolbrook(1994)の経 済的価値に相当する、③優れたサービスと、④コス トパフォーマンスの2 つの機能的価値を加えて独自 の価値モデルを提示した(7)。 (2) 経験価値産業としてのツーリズム産業 山本は、経験価値が重視される成熟化社会の下で 有 望 と 成 り 得 る 産 業 を 論 じ た オ グ ル ヴ ィ の Experience Industry 論 60)の経験価値61)、(8)に関する議 論を基に15 の「経験価値キーワード」を抽出し、そ れぞれのキーワードと関連性が高い経験価値を提供 する有望な産業の事例を提示した62)(表-2)。

Cultivate 心を磨く Education / Culture 教育・文化

Broaden 経験を広げる Travel 旅行

Heal 心を癒す Therapy 医療

Escape 心を休める Entertainment 娯楽

Edify 悟りを開く Religion 宗教

Stimulate 感性を刺激する Erotica 風俗

Warp 気を紛らす Alcohol / Restaurant 酒・レストラン

Numb 全てを忘れて耽る Tobacco / Casino 嗜好品・カジノ

Enrapture 感動する Art / Music /Film 芸術・音楽・映画

Participate 参加する Sport / Auction スポーツ・競売

Acquire 買う Shopping 買い物

Inform 知らせる Information / Communication 情報通信

Instruct 教える Intelligence / Knowledge 知識・教育

Create 創造する Production / Creation 製造・制作

Venture 冒険する Investment / Development 投資・開発

出典 山本(2000) 表-2 経験価値キーワードと有望な経験価値産業 経験価値キーワード 有望な経験価値産業 表-2 経験価値キーワードと有望な経験価値産業 出典 山本(2000)

  娯 楽

教 育

審 美

脱日常

      出典 Pine and Gilmore(1999)

経験に吸収されている 受 動 的 参 加 積 極 的 参 加 経験に投入されている 図-1 経験価値の4Eモデル Educational Entertainment Escapist Esthetic 図-1 経験価値の 4E モデル

(7)

そのうえで、彼は各産業領域を、15 の「経験価値 キーワード」に適合する度合いに応じて、縦軸が「高 付加価値度」、横軸が「製品・サービス区分」の平面 上に配置することにより、顧客の経験価値に対する 訴求度の高い高付加価値産業を提示した。 その結果、宗教と、旅行やレジャー、スポーツ、 テーマパークなどのエンターテイメントとは、経験 価値産業マップ上、ともに高付加価値の経験価値産 業として極めて近接的なポジションに位置づけられ ており、経験価値の観点から類似性を有する付加価 値の高い産業同士であることが伺える(図-2)。 経験価値を活かした経営を行う企業、すなわち経 験ステージャーは製品やサービスそのものではなく、 それをベースに顧客の心の中につくられる「感覚的 にあざやかな経験」を提供する企業であり、ツーリ ズム商品を扱う旅行会社はその最たるものであろ う64)。山中はツーリズムについて「ある場所やそこ にある様々な事柄が訪れるに値するものとして表象 され、その表象に基づきその地域外に居住する人々 が自らの多様な欲求を充足するためにそこへと旅す る消費行動である」と定義したうえで、先天的に聖 性を帯びていないものを「訪れるに値するもの」と して表象し、消費可能な商品に仕立てる役割を果た す「プロデューサー」の存在の重要性を指摘してい る65)。ツーリズム産業は、既存の伝統宗教の枠組み から解き放たれた様々な宗教資源に対して新たな文 脈で聖性を付与することによって、製品やサービス そのものではなく、ツーリストの心の中に思い出と して残る感覚的にあざやかな経験を提供している。 それゆえ、ツーリズム産業は、ツーリズムを消費可 能な経験価値商品としてプロデュースする経験価値 産業であるといえよう。 経済システムが進化し、消費者自身が何を経験し たかが重要な価値を有する経験経済に移行する中で、 経験ステージャーは巡礼路で経験価値を生み出す 様々な資源を組み合わせることにより、新たな形態 のツーリズム商品である聖地巡礼ツーリズムをプロ デュースしている。一方、現代の巡礼者も自らの関 心や好みに応じて、聖地巡礼ツーリズムの中に彼ら にとって意味のある「訪れるに値するもの」を見出 している。このように、元来、宗教的行為である聖 地巡礼とツーリズムが融合し、ツーリズム産業に よって聖地巡礼ツーリズムへと商品化されるプロセ スは、聖地巡礼を経済財として市場経済システムに 包含することにより、現代の巡礼者の誰もが各自の 目的や関心に応じてそれらの商品を自由に売買し、 経験消費することを可能にしている。 今日、伝統的な宗教的行為としての聖地巡礼や宗 教的習俗に縁が無かった人々までもがツーリズム産 業によってプロデュースされる聖地巡礼ツーリズム ・ 高級ブランド品  ・マルチメディアコンテンツ  ・高等教育、文化 ・宗教 Contents (車、バッグ、化粧品、宝飾、腕時計、酒など)  (TV芸能、映画、音楽、ゲーム) ( 中身の価値)  ・芸術 ・娯楽作品( 絵画、 著作など) ・ ITネットワークソフト   ・医薬、サプリメント   ・ ヘルスケアサービス ・ コンサルティング (資産運用、法律、ビジネス)  ・ 金融サービス   ・一般ホテル、レス トラン    ・ 新聞、出版、映画会社     ・ 航空、鉄道、レンタカー   ・ SI、エンジニアリング     ・ 人材派遣サービス ・ 普及品     ・商社、卸問屋        ・ビジネス ホテル、ファース トフード (車、バッグ、化粧品、宝飾、腕時計、酒など)     ・ 流通、物流サービス  ・ 地方自治体、公共サービス  ・ 日用品     ・ 住宅、建設、ゼネコン   ・ 義務教育  ・ 生活必需品      ・ ユーティリティサービス     ・ 不動産開発 Conduits  ・ 農業、漁業      (通信、放送、電力、ガス、水道、郵便) ( 器の価値) 出典 寺本・山本(2004)63) を加筆修正 図-2 経 験 価 値 産 業 マ ッ プ 高 付 加 価 値 ネ ト ワー ク 産 業     ・ ブランド品ショップ    ・ス ーパー、コンビニ 単体製品 システム サービス 産   業   区   分 基 盤 産 業 経 験 価 値 産 業 ・ペット ・DIY、ガーデニング、アウトドア 製 品 ・ サ ー ビ ス 区 分 エンターテイメント ( 旅行、レジャー、スポーツ、 テーマパーク、ショッピングモール、 インターネット・ サービス プロバイダー ものづくり 製造業 図-2 経験価値産業マップ 出典 寺本・山本(2004)63) を加筆修正

(8)

に赴いている。このようなツーリストが各自の関心 に応じて経験価値を消費するといった精神的側面に 比重を置いた私的な営みは、ツーリズム産業による 聖地巡礼のツーリズム商品化と表裏一体の関係にあ ると考えられる。 4.経験価値にみる聖地巡礼ツーリズムの特徴 聖地巡礼に赴くツーリストは聖なるものに対する 人間の普遍的な関心を有しており、“本物”を求めて 日常生活から離れて別の「時」と別の「場」に移動 することから、現代の巡礼者であるといえよう。 このような現代の巡礼者は、自身の関心に合わせ て宗教資源を切り取り私的な経験消費を行っている ことから、彼らが「訪れるに値するもの」であると 認識している真正性は、宗教的行為としての伝統的 な聖地巡礼に見出されてきた狭い文脈における固定 化されたそれとは異なるものである。現代の巡礼者 はそれぞれの関心に応じて巡礼路のいたるところで 様々な「訪れるに値するもの」を見出していること から、彼らによって経験消費される価値は多様化し ているものと考えられる。 先行研究で論じられてきたように、元来、不可分 である旅も、宗教的行為である聖地巡礼も、ともに 人間の主観的な経験としての真正性の探求を基底に している。したがって、経験消費される余暇・娯楽 商品としてのツーリズムの側面をも併せ持つように なった現代の聖地巡礼は、個人の内面的な経験を通 じて得られる価値を捉えようとする経験価値モデル に基づき分析することが有益であると考えられる。 そこで、宗教学や社会学を中心とした聖地巡礼お よびツーリズムに関する先行研究のサーベイを通じ て明らかになった、元来、未分化で同様の現象であっ た聖地巡礼とツーリズムの様々な特徴について、主 な経験価値モデルの価値次元の観点から比較、検討 し、価値次元毎に分類した(表-3)。 Holbrook(2006) 66)は、Holbrook(1994)を基に、 製品やサービスを通じて快楽を感じる「快楽的価値」、 ある商品を所有することで優越感や社会的名声を獲 得する「社会的価値」、正義感や美徳に基づき他者へ の貢献を行った際に得られる「利他的価値」、製品お よびサービスの品質ならびにコストパフォーマンス を評価する「経済的価値」の4 つの価値次元からな る価値モデルを提示した。 彼の「快楽的価値」は、快楽を感じるといった人 間の精神的な自己充足に由来する経験価値であるこ とから、Pine and Gilmore(1999)ならびに Mathwick et al.(2001, 2002)の価値モデルが提示した「審美的 価値」および「娯楽的価値」に相当するものである。 審美的経験は、ツーリストを取り巻く物理的環境や サービスを通じて、再訪問するか否かについての ツーリストの意思決定やツーリズムそのものに関す る彼らの評価を左右するという点で重要性を有して いる67)、68)、69)、70)。また、経験の中でも最も古い形態 の一つである娯楽的経験は、審美的次元のように顧 客を魅了することを必要とし、通常、ツーリストが 音楽などを含めて他の人々の行動やパフォーマンス を見聞きしたときに生じるものである71)。したがっ て、デュシェやアーリなどの先行研究72)、73)、74)、75)、76) が、巡礼の旅の目的は宗教的な信仰心のみならず芸 術の美しさといった審美的要素や遊興の楽しさと いった娯楽的要素も含んでいると指摘したように、 聖地に赴くツーリストは、教会建築や鐘の音、巡礼 路の自然などの視聴覚的な美しさや、礼拝の厳かな 雰囲気などを評価する「審美的価値」、および他の巡 礼者の立ち居振る舞いや僧侶による読経、巡礼宿で のおもてなし、巡礼路で繰り広げられる遊興などを 見聞きして楽しむ「娯楽的価値」を聖地巡礼ツーリ ズムに見出しているものと考えられる。 また、エリアーデによる「神々との交流を求めて 巡礼に赴く」といった議論77)や、聖なるものとの出 会いを求めて旅する「巡礼」の中にイニシエーショ ンの典型例を見出したターナーの議論78)、さらに、 元来、不可分である旅も、宗教的行為である聖地巡 礼も、ともに人間の主観的な経験としての真正性の 探求を基底にしているといったマキャーネルやグレ イバーンの指摘79)、80)は、Pine and Gilmore(1999)が 提示した非日常的でオーセンティックなものを探し 求めて聖なる時空へ接近するといった経験に価値を 見出す「脱日常的価値」の内容と符合する。 加えて、先行研究81)、82)、83)、84)が論じた偉大な聖人 の足跡にふれることで自ら学んで知的好奇心を充足 する経験に見出される価値は、自己啓発により何か 重要なものを学ぶ85)、86)「教育的価値」である。 一方、Holbrook(2006)が提示した優越感や社会 的名声を獲得した際に得られる「社会的価値」およ び正義感に基づき他者への貢献を行った際に得られ

(9)

る「利他的価値」は、Pine and Gilmore(1999)や Mathwick et al.(2001, 2002)の価値モデルでは示さ れていない価値次元である。ターナー87)はイニシ エーションを通じて仲間集団としてのコムニタスが 形成されることを指摘したが、このようなコムニタ スの互いを受け容れ、支え合うといった平等で水平 的な人間関係の中に、聖地へ赴く巡礼者は「訪れる に値するもの」を見出しているものと考えられる。 この点については、岡本(2012)もサンティアゴ巡 礼者が巡礼路で出会う他の巡礼者や、巡礼者を道中 でサポートするオスピタレロなどと営む人間的交流 や繋がりの重要性を指摘しており88)、巡礼者がその ような他の巡礼者や地域住民との人間的交流を通じ て 仲 間 意 識 な ど の 共 同 性 を 回 復 す る 過 程 に 、 Holbrook(2006)が提示した優越感や社会的名声の 獲得を通じて得られるそれとは異なる「社会的価値」 を見出している可能性が伺える。加えて、オスピタ レロによる巡礼者のサポートや地域住民によるお接 待、あるいは先達による巡礼者の引率・指導などを 他者への貢献としての利他的行為であると捉えると、 このような巡礼者を支援する利他的行為の中に、既 存の価値モデルが提示した他者への貢献を行う主体 としてのそれではなく、受益者として獲得する「利 他的価値」を巡礼者が見出している可能性も伺える。 さらに、Holbrook(2006)の「経済的価値」は、 製品およびサービスの品質や技術的性能、実用性等

Holbrook (1994, 2006) Pine and Gilmore (1999) Mathwick et al.(2001, 2002)

Cohen, E. (1979) 観光経験の 「レクリエーション・モード」

Graburn, N. (1989)

Nash, D. (1989) 「場所の移動」

Turner, V. & Turner, E.

(1978) 「非日常的なコムニタスの賞揚」 Cohen, E. (1979) 観光経験の「気晴らし、経験、 体験、実存モード」 教育的価値 Duchet (1949) Urry, J. (1990) Fuller (1992) Tomasi, L. (2002) 巡礼者の関心事に応じた 祝祭や楽しみ、学び、芸術、 健康などの「多様な目的」 社会的価値 Turner, V. (1969) 道中で出会う他の巡礼者との 「人間的交流や繋がり」 利他的価値 優れたサービス コストパフォーマンス 価 値 機 能 的 経済的価値

出典 Holbrook (1994, 2006)、Pine and Gilmore (1999)、Mathwick et al. (2001, 2002) ならびに上記先行研究に基づき筆者作成

娯楽的価値 娯楽的価値 Duchet (1949) Urry, J. (1990) Fuller (1992) Tomasi, L. (2002) Nash, D. (1989) 巡礼者の関心事に応じた 祝祭や楽しみ、学び、芸術、 健康などの「多様な目的」 脱日常的価値 Eliade, M. (1957) Turner, V. (1969) MacCannell, D. (1973) Graburn, N. (1989) 「中心への接近」 「聖なる時空への移行」 「真正性の探求」 表-3 経験価値モデルに基づく聖地巡礼ツーリズムの価値次元 経験価値モデル 宗教学および社会学を中心とした 巡礼とツーリズムに関する先行研究 価    値    次    元 意   味   的   価   値 快楽的価値 審美的価値 審美的価値 Duchet (1949) Urry, J. (1990) Fuller (1992) Tomasi, L. (2002) Nash, D. (1989) 巡礼者の関心事に応じた 祝祭や楽しみ、学び、芸術、 健康などの「多様な目的」 表-3 経験価値モデルに基づく聖地巡礼ツーリズムの価値次元

出典 Holbrook (1994,2006)、Pine and Gilmore (1999)、Mathwick et al.(2001,2002) ならびに上記先行研究に基づ き筆者作成

(10)

の評価といった機能的価値に関するものであること から、Mathwick et al.(2001, 2002)の「優れたサー ビス」と「コストパフォーマンス」の2 つの機能的 価値に該当する。しかしながら、これらの機能的価 値は製品やサービスの品質およびコストパフォーマ ンスを評価するものであるがゆえに、巡礼および ツーリズムを商品やサービスの機能的価値の観点か ら研究対象として扱ってこなかった従来の宗教学や 社会学を中心とした研究においてはふれられること のなかった価値次元であることが判明した。 消費者行動研究において、優れたサービスとは消 費者の受動的な反応を反映しており、「サービスを提 供する主体が顧客本位の取り組みを行うことで消費 者が好感を持つ」ことを意味する89)、90)。消費者が最 終的にサービスの品質を評価した場合に、当該サー ビスは優れたサービスとなり91)、消費者が提供され たサービスを素晴らしいと知覚することで価値にな る92)。したがって、聖地巡礼ツーリズムにおいては、 消費者であるツーリストが旅行会社をはじめとする 様々な経験ステージャーが提供するサービスの品質 を評価し好感を抱くことで、聖地巡礼の過程に「訪 れるに値するもの」を見出すこととなる。 一方、コストパフォーマンスは「財務的、時間的、 行動的、心理的資源の積極的な投資によってどれだ けの利益を獲得することができるか」といった問題 に関する価値次元であり、消費者が投資した時間や 価格に見合った見返りが得られているか否かを示し ている93)。現代の巡礼者は巡礼路で普段目にするこ とのない教会建築や鐘の音、振り香炉などを見聞し、 巡礼仲間との交流を通じて感動し、学び癒されると いった非日常的な経験をすることとなる。このよう な内面の私的な経験を通じて、巡礼の旅がそれに費 やした時間や金銭に見合った実り多いものであると 彼らが認識する場合には、そこに新たな価値を見出 すこととなろう。 今日のツーリズム産業は経験価値を生み出す様々 な資源を組み合わせることで、元来、先天的に聖性 を帯びていないものを「訪れるに値するもの」とし て表象し、消費可能な商品にプロデュースしている ことから、聖地巡礼は伝統的な宗教の枠組みを超え て余暇・娯楽商品としてのツーリズムの側面をも併 せ持つようになった。したがって、ツーリズムを提 供する主体としての旅行会社がいかにツーリスト本 位の取り組みを行い、好感を得ているかといった視 点や、ツーリストの時間や金銭的投資に見合った果 実を提供することができているかといった視点は、 聖地巡礼ツーリズムの経験価値の重要な価値次元で あると考えられる。 このように宗教的経験の側面もが経験消費される ツーリズム商品としての特性を兼ね備えるように なった聖地巡礼の経験価値について、機能的価値の 価値次元の観点から捉え直すことは、既存の他の商 品やサービスが有する機能的価値との比較検討が可 能となるなど、これまでの巡礼およびツーリズムを 対象とした先行研究ではみられなかった新たな分析 の視座を与えてくれるものと考える。 5.おわりに 本研究では、巡礼およびツーリズムに関する先行 研究を批判的に継承しながら、伝統的に宗教的行為 であった聖地巡礼がツーリズム産業によって商品化 され、余暇・娯楽商品としてのツーリズムと融合し てきた背景について考察し、特に経験価値の観点か ら現代の聖地巡礼ツーリズムの特徴を明らかにした。 古来より聖地への巡礼者は、宗教的な信仰はもと より、見聞や娯楽、芸術などの多様な目的をもって 旅に出かけてきたのであり、元来、聖地巡礼とツー リズムの両者は未分化の同じ現象であった。このよ うな互いに親和性を有する聖地巡礼とツーリズムが 融合した形態としての聖地巡礼ツーリズムの特徴に ついて、主な経験価値モデルが提示している価値次 元の観点から分析を行った。 その結果、巡礼者は視聴覚的な美しさや好ましい 雰囲気を評価する「審美的価値」および遊びを通じ て楽しさを感じる「娯楽的価値」、神々との交流が可 能な聖なる時空へ移行する「脱日常的価値」、学び知 的好奇心を満たすことを評価する「教育的価値」を 聖地巡礼に見出していることを確認した。 加えて、既存の価値モデルにおける意味的内容と は異なるものの、人間的交流を通じた社会性の回復 に基づく「社会的価値」や、正義感や美徳に基づく 利他的行為の受益者として獲得する「利他的価値」 をツーリストが聖地巡礼の過程に見出している可能 性が存在することも浮き彫りになった。 さらに、宗教学や社会学を中心とした巡礼および ツーリズムに関する先行研究ではふれられることの

(11)

なかった、顧客本位の取り組みを通じてツーリスト の好感を獲得するといった「優れたサービス」の視 点や、ツーリストが投資した時間や金銭に見合う果 実を得られているかといった「コストパフォーマン ス」の視点は、聖地巡礼ツーリズムの経験価値の重 要な価値次元であることが浮き彫りになった。この ような顧客志向の機能的価値の価値次元は、今や ツーリズム商品としての特性を併せ持つに至った聖 地巡礼においてツーリストが経験する多様な価値を 分析するうえで、新たな視座と成り得ることが明ら かになった。 今後の研究課題は、本稿で考察した経験価値モデ ルに基づき測定尺度の開発を行い、現代の巡礼者が 聖地巡礼ツーリズムの途上で「訪れるに値するもの」 として見出している多様な経験価値、とりわけこれ まで研究対象とされることのなかった「社会的価値」 と「利他的価値」の意味的価値および「優れたサー ビス」と「コストパフォーマンス」の機能的価値を、 具体的事例の分析を通じて明らかにすることである。 【補注】 (1) 本研究では門田(2013)1)にならい、“遊び”や“娯楽” といった志向性のない慰霊ツーリズムなどの旅も多 く存在する実態に鑑み、そのようなニュアンスが含ま れる「観光」の概念とは区別して、「観光」を含みつ つも産業化された旅と移動手段全般を意味するより 広い概念としての「ツーリズム」の用語を用いる。 (2) 例えば、キリスト教が支配的であった西ヨーロッパの 封建社会において、商業活動に伴う貨幣経済の拡大や、 自然災害、ペストの流行による労働力の大幅な減少な どを契機として農奴の抵抗運動や聖職者の反乱が起 こるなど、歴史的にはそれぞれの地域や階級で多様な 価値観が存在していた。 (3) Baudrillard (1970) 6)は記号的価値について、「消費は単 に貨幣交換によって財を入手する行為ではなく、財に 付随したイメージやシンボルを入手することによっ て社会集団への帰属や社会的ステータスの向上など の副次的効果を獲得することである」と論じている。 (4) ツーリストの経験価値を実証分析したものとして、 B&B での宿泊経験を対象とした Oh et al. (2007) 14)やク

ルージング経験を対象としたHosany, S. and Witham, M. (2010) 15)がわずかにあるのみで、これらの研究も特 定の地域や観測期間に限られたものとなっている。 (5) ナッシュもまたこのような移動の側面に注目して、 オーストラリアのアボリジニの聖地への訪問などの 「狩猟採集社会での絶え間ない移動の側面はツーリズ ムの原型である」として、巡礼とツーリズムとの類似 性について指摘している22)。 (6) 「聖なるもの」の経験について、オットーはその本質 を「ヌミノーゼ」と呼んで、「心に漠然と感得される 非合理的な宗教感情」であると論じている29)。 (7) これまでの消費者行動研究において主な価値モデル として提示された「顧客価値モデル」、「消費価値モデ ル」、「経験価値モデル」は、製品の機能や実用性に関 する機能的価値と、楽しみや美しさなどの心理的側面 に関する意味的価値の2 つの価値次元からなる。 (8) 山本(2012) 61)Experience Industry を日本語に訳すと 「経験産業」になり、Experience に含まれる「感性価値」 を「経験価値」と訳してきたとして、「経験価値」と 「感性価値」は極めて近い概念であると論じているこ とから、本稿では研究テーマに沿って「経験価値」の 用語を統一的に用いる。 【引用・参考文献】 1) 門田岳久(2013):巡礼ツーリズムの民族誌―消費さ れる宗教経験,森話社,pp.334-339 2) 岡本亮輔(2012):聖地と祈りの宗教社会学―巡礼 ツーリズムが生み出す共同性,春風社,pp.41-63 3) 岡本亮輔(2012):前掲書,pp.216-220 4) 門田岳久(2010):「宗教」の資源化・商品化・再日常 化―巡礼ツーリズム,及びその地域的展開からみた 「生活」論としての宗教研究試論,国立歴史民俗博物 館研究報告,第156 集,pp.201-243 5) イアン・リーダー(2005):現代世界における巡礼の 興隆―その意味するもの,現代宗教 2005,東京堂出 版,pp.293-300

6) Baudrillard, J. (1970): La Société de Consommation: Ses Mythes, Ses Structures, Gallimard = (1979) 今村仁司・塚 原史訳:消費社会の神話と構造,紀伊国屋書店, pp.67-68

7) 門田岳久(2013):前掲書,pp.19-30

8) Duchet, R. (1949): Le tourisme à travers les ages, Paris, Vigot Frères.

9) Urry, J. (1990): The Tourist Gaze: Leisure and Travel in Contemporary Societies, London, Sage Publications = (1995) 加太宏邦訳:観光のまなざし―現代社会にお

(12)

けるレジャーと旅行,法政大学出版局,pp.7-8 10) Tomasi, L. (2002): Homo Viator: From Pilgrimage to

Religious Tourism via the Journey, In: From Medieval

Pilgrimage to Religious Tourism, pp.1-24

11) Fuller, C. J. (1992): The Camphor Flame: Popular Hinduism and Society in India, Princeton, Princeton University Press, p.205

12) MacCannell, D. (1973): Staged Authenticity: Arrangements of Social Space in Tourist Settings, American Journal of

Sociology, 79(3), pp.589-603 = (2001) 遠藤英樹訳:演出

されたオーセンティシティ―観光状況における社会 空間の編成―,奈良県立商科大学「研究季報」,第11 巻,第3 号,pp.93-107

13) Graburn, N. (1989): Tourism: The Sacred Journey, Valene L. Smith ed., Hosts and Guests: The Anthropology of

Tourism, second edition, University of Pennsylvania Press,

pp.21-36

14) Oh, H., Fiore, A. M., and Jeoung, M. (2007): Measuring Experience Economy Concepts: Tourism Applications,

Journal of Travel Research, 46(2), pp.119-132

15) Hosany, S. and Witham, M. (2010): Dimensions of Cruisers’ Experiences, Satisfaction, and Intention to Recommend, Journal of Travel Research, 49(3), pp.351-364 16) Nash, D. (1989): Tourism as a Form of Imperialism, Valene L. Smith ed., Hosts and Guests: The Anthropology

of Tourism, second edition, University of Pennsylvania

Press, p.39

17) Urry, J. (1990): 前掲書,pp.7-8

18) Burns, Peter M. (1999): An Introduction to Tourism and Anthropology, London, Routledge, p.97

19) 橋本和也(1999):観光人類学の戦略―文化の売り方・ 売られ方,世界思想社,p.57 20) Fuller, C. J. (1992): 前掲書,p.205 21) Graburn, N. (1989): 前掲書,p.22 22) Nash, D. (1989): 前掲書,p.39 23) MacCannell, D. (1973): 前掲書,p.97 24) MacCannell, D. (1973): 前掲書,pp.95-97

25) Eliade, M. (1957): Das Heilige und das Profane: Vom Wesen des Religiӧsen, Rowohlt, Hamburg = (2014) 風間 敏夫訳:聖と俗―宗教的なる物の本質について,法政 大学出版局,pp.154-157

26) Eliade, M. (1957): 前掲書,p.157 27) Eliade, M. (1957): 前掲書,p.173

28) Eliade, M. (1957): 前掲書,pp.174-177

29) Otto, R. (1936): Das Heilige: Über das Irrationale in der Idee des Göttlichen und sein Verhältnis zum Rationalen, 23. Bis 25. Auflage, C. H. Beck’sche Verlagsbuchhandlung, München = (2010) 久松英二訳:聖なるもの,岩波文庫, pp.11-227

30) Turner, V. (1969): The Ritual Process: Structure and Anti-Structure, pp.94-97

31) Turner, V. (1973): The center out there: pilgrim’s goal, History of Religions, 12, pp.191-230

32) Arnold van Gennep (1909): Les Rites de Passage: Étude systématique des ceremonies = (1977) 綾部恒雄・綾部裕 子訳:通過儀礼,弘文堂

33) Turner, V. (1969): 前掲書,pp.94-97

34) Turner, V., and Turner, E. (1978): Image and Pilgrimage in Christian Culture, New York, Columbia University Press = (1995) 前田勇訳:観光とサービスの心理学,学文社, p.215 35) 岡本亮輔(2015):聖地巡礼―世界遺産からアニメの 舞台まで,中公新書,pp.15-19 36) 岡本亮輔(2015):前掲書,pp.15-16 37) 岡本亮輔(2012):前掲書,pp.220-235

38) Boorstin, D. (1962): The Image: or, What Happened to the American Dream, Weidenfeld and Nicolson = (1964) 星 野郁美・後藤和彦訳:幻影の時代―マスコミが製造す る事実,東京創元社,pp.127-128

39) MacCannell, D. (1973): 前掲書,pp.102-103 40) MacCannell, D. (1973): 前掲書,p.93

41) MacCannell, D. (1976): The Tourist: A New Theory of the Leisure Class, New York, Schocken Books

42) Graburn, N. (1989): 前掲書,pp.24-31 43) Graburn, N. (1989): 前掲書,pp.24-31 44) 山中弘(2009):「宗教とツーリズム」事始め,平成 18年度~平成20年度科学研究費補助金(基礎研究〔B〕) 研究成果報告書:場所をめぐる宗教的集合記憶と観光 的文化資源に関する宗教学的研究 45) 門田岳久(2013):前掲書,pp.99-100

46) Cohen, E. (1972): Towards a Sociology of International Tourism, Social Research, 39(1), pp.164-182

47) Cohen, E. (1979): A Phenomenology of Tourist Experiences, Sociology, Vol.13, No.2, pp.179-201 = (1998) 遠藤英樹訳:観光経験の現象学,奈良県立商科大学 「研究季報」,第9 巻,第 1 号,pp.39-58

(13)

48) Cohen, E. (1979): 前掲書,pp.43-44 49) Cohen, E. (1979): 前掲書,pp.44-45 50) Cohen, E. (1979): 前掲書,pp.45-47 51) Cohen, E. (1979): 前掲書,pp.47-48 52) Cohen, E. (1979): 前掲書,pp.48-49 53) 岡本亮輔(2012):前掲書,p.136

54) Pine, B. J., and J. H. Gilmore (1999): The Experience Economy, Harvard Business School Press = (2005) 岡本 慶一・小高尚子訳:新訳 経験経済,ダイヤモンド社 55) Pine, B. J., and J. H. Gilmore. (1999): 前掲書,pp.28-29 56) Pine, B. J., and J. H. Gilmore. (1999): 前掲書,pp.52-78 57) Holbrook, M. B. (1994): The Nature of Customer Value:

An Axiology of Services in the Consumption Experience,

In Rust, R. T. and R. L. Oliver (eds.), Service Quality: New Directions in Theory and Practice, London, Sage

Publications, pp.21-71

58) Mathwick, C., Malhotra, N., and Rigdon, E. (2001): Experiential Value: Conceptualization, Measurement and Application in the Catalog and Internet Shopping Environment, Journal of Retailing, 77(1), pp.39-56 59) Mathwick, C., Malhotra, N., and Rigdon, E. (2002): The

Effect of Dynamic Retail Experiences on Experiential Perceptions of Value: An Internet and Catalog Comparison,

Journal of Retailing, 78(1), pp.51-60

60) Ogilvy, J. A. (1985): The Experience Industry, SRI International Business Intelligence Program, Report, No.724 61) 山本尚利(2012):感性産業論,早稲田大学 WBS 研 究センター「早稲田国際経営研究」,No.43,pp.55-65 62) 山本尚利(2000):米国ベンチャー成功事例集,アー バンプロデュース社 63) 寺本義也・山本尚利(2004):MOT アドバンスト:新 事業戦略,日本能率協会マネジメントセンター 64) Sternberg, E. (1997): The Iconography of the Tourism

Experience, Annals of Tourism Research, 24(4), pp.951-969 65) 山中弘(2009):前掲書,pp.14-15

66) Holbrook, M. B. (2006): Consumption Experience, Customer Value, and Subjective Personal Introspection: An Illustrative Photographic Essay, Journal of Business

Research, 59(6), pp.714-725

67) Bitner, M. J. (1992): Servicescapes: The Impact of Physical Surroundings on Customers and Employees,

Journal of Marketing, 56, pp.57-71

68) Turley, L. W., and R. E. Milliman (2000): Atmospheric Effects on Shopping Behavior: A Review of the Experiential Evidence, Journal of Business Research, 49(2), pp.193-211

69) Lovelock, C., and J. Wirtz (2004): Service Marketing: People, Technology, Strategy, 5th ed, Upper Saddle River,

NJ, Prentice Hall

70) Bonn, M. A., S. M. Joseph-Mathews, M. Dai, S. Hayes, and J. Cave (2007): Heritage/Cultural Attraction Atmospherics: Creating the Right Environment for the Heritage/Cultural Visitor, Journal of Travel Research, 45(3), pp.345-354 71) Oh, H., Fiore, A. M., and Jeoung, M. (2007): 前掲書,

pp.119-132 72) Duchet, R. (1949): 前掲書 73) Urry, J. (1990): 前掲書,pp.7-8 74) Tomasi, L. (2002): 前掲書,pp.1-24 75) Fuller, C. J. (1992): 前掲書,p.205 76) Nash, D. (1989): 前掲書,p.39 77) Eliade, M. (1957): 前掲書,p.173 78) Turner, V. (1969): 前掲書 79) MacCannell, D. (1973): 前掲書,p.97 80) Graburn, N. (1989): 前掲書,pp.21-36 81) Duchet, R. (1949): 前掲書 82) Urry, J. (1990): 前掲書,pp.7-8 83) Tomasi, L. (2002): 前掲書,pp.1-24 84) Fuller, C. J. (1992): 前掲書,p.205

85) Prentice, R. C., S. F. Witt, and C. Hamer (1998): Tourism as Experience: The Case of Heritage Parks, Annals of

Tourism Research, 25(1), pp.1-24

86) Prentice, R. C. (2004): Tourist Motivation and Typologies,

In: A Companion to Tourism, edited by A. Lew, M. Hall,

and A. M. Williams, Oxford, UK, Blackwell, pp.261-279 87) Turner, V. (1969): 前掲書,pp.94-97

88) 岡本亮輔(2012):前掲書,pp.220-235 89) Holbrook, M. B. (1994): 前掲書,pp.21-71

90) Holbrook, M. B. and Corfman, K. P. (1985): Quality and Value in the Consumption Experience: Phaedrus Rides Again, In Jacoby, J., & Olson, J. C. (eds.) Perceived

Quality: How Consumers View Stores and Merchandise,

Massachusetts, Lexington Books, pp.31-57

91) Oliver, R. L. (1999): Value as Excellence in the Consumption Experience, In Holbrook, M. B. (eds.)

(14)

London, Routledge, pp.43-62

92) Zeithaml, V. A. (1988): Consumer Perceptions of Price, Quality, and Value: A Means-end Model and Synthesis of

Evidence, Journal of Marketing, 52(July), pp.2-22 93) Mathwick, C., Malhotra, N., and Rigdon, E. (2001): 前掲

書,pp.39-56

聖地巡礼ツーリズムの経験価値に関する一考察

南地 伸昭* 本研究では巡礼およびツーリズムに関する先行研究を批判的に継承しながら、伝統的に宗教的行為であった 聖地巡礼がツーリズム産業によって商品化され、余暇・娯楽商品としてのツーリズムと融合してきた背景に ついて考察したうえで主な経験価値モデルが提示している価値次元の観点から分析を行い、現代の聖地巡礼 ツーリズムの特徴を明らかにした。その結果、現代の巡礼者は「審美的価値」および「娯楽的価値」、「脱日 常的価値」、「教育的価値」、「社会的価値」、「利他的価値」の意味的価値、ならびに「優れたサービス」およ び「コストパフォーマンス」の機能的価値を見出している可能性が存在することが確認された。 (受稿 2019 年 7 月 25 日) (受理 2020 年 6 月 28 日)

参照

関連したドキュメント

(Construction of the strand of in- variants through enlargements (modifications ) of an idealistic filtration, and without using restriction to a hypersurface of maximal contact.) At

It is suggested by our method that most of the quadratic algebras for all St¨ ackel equivalence classes of 3D second order quantum superintegrable systems on conformally flat

In this paper, we study the generalized Keldys- Fichera boundary value problem which is a kind of new boundary conditions for a class of higher-order equations with

Keywords: continuous time random walk, Brownian motion, collision time, skew Young tableaux, tandem queue.. AMS 2000 Subject Classification: Primary:

Kilbas; Conditions of the existence of a classical solution of a Cauchy type problem for the diffusion equation with the Riemann-Liouville partial derivative, Differential Equations,

This paper develops a recursion formula for the conditional moments of the area under the absolute value of Brownian bridge given the local time at 0.. The method of power series

Answering a question of de la Harpe and Bridson in the Kourovka Notebook, we build the explicit embeddings of the additive group of rational numbers Q in a finitely generated group

The main problem upon which most of the geometric topology is based is that of classifying and comparing the various supplementary structures that can be imposed on a