Author(s)
池口, 明子
Citation
地域研究 = Regional Studies(1): 77-90
Issue Date
2005-06-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/5481
池□明子:沖縄島羽地内海における漁船漁業の資源利用
沖縄島羽地内海における漁船漁業の資源利用
池口明子*
AnnualResourceUseofArtisanalFisheriesinHaneji,Okinawalsland Akikolkeguchi 沖縄県を含め、低緯度地域の沿岸における持続的漁業では、多様な魚種を季節や天候に応じて柔軟に利用することが 重要である。本稿は沖縄の沿岸のうち広大な干潟・浅海を有する羽地内海を漁場とする漁船漁業について操業形態を示 し、それぞれがいかに多様な魚種の利用によって成り立っているのかを年間を通じて明らかにした。 キーワード:干潟、浅海、資源利用、漁船漁業、沖縄 ThispaperdescribesannualresourceuseinartisanalfisheriesmwetlandandshallowwaterinHanQji,Okinawa lslandAccountbooks廿omtheNagowholesalemarketareusedasdata・Analysisshowsthattidalspeciescompnse thesignificantpartofproductsharvestedbygillnetsandfixednets・Catchbydivingalsodependsseasonallyon benthicresourcesinshaUowwater,andtheyfetchrelativelyhighpricecomparedwithotherresources・ Keywords:Tidalflats,Shallowwater,Resourceuse,Fisheries,Okinawa とくに魚種が多い沖縄やそのほかの低緯度地域の沿岸 では重要である。さらに、干潟・浅海といった近接す る漁場は、小型漁船での操業を主たる選択肢とする漁 業者にとって、重要な漁場となるだろう。以上の観点 から、本研究では沖縄の沿岸のうち広大な干潟・浅海 を有する羽地内海を漁場とする漁船漁業について操業 形態を示し、それぞれについて年間に利用する魚種を 明らかにすることを目的とする。 はじめに 1. 沿岸域を構成する地形のうち干潟とそれに連続する 浅海は、多様な海洋生物の生息場である。漁業資源と なる海洋生物のなかにも、生活史のいずれかの段階で 干潟・浅海の環境に依存するものが多いことはよく知 られている。ところが近年、沖縄県では急速に沿岸開 発が進み、干潟・浅海の資源生物の生息環境が変化し ている。今後の持続的な沿岸漁業を考えるうえでは、 沿岸漁業がいかなる生物の利用によって成り立ってい るのかを明らかにし、漁場の保全・回復策を考える必 要がある。 ところで、従来漁業における資源利用の研究では、 ある特定の生物種について、資源量の変動を把握する 目的で漁獲量や操業時間との関係が分析されてきた。 しかし、沿岸漁業においては、ある漁業を成り立たせ る生物資源が単一種であることは少ない。沿岸ではさ まざまな魚種を季節や天候に応じて柔軟に利用するこ とによって狭い漁場での操業が可能となる。この点は 2.方法 主な資料として用いるのは、名護卸売市場で記録さ れた漁業者ごとの売上記録(以下、仕切り書)である。 仕切り書は漁業地理学において資源利用・漁場利用パ ターンの分析に用いられ、その有効`性が示されている (田和1997、池口2001など)。しかし沖縄における仕切 り書の利用には次の点に留意が必要である。第1に、 漁獲された魚はすぺてが卸売市場で販売されるわけで はない。とくに家族・親類が鮮魚小売店を営む場合に *名古屋産業大学環境`情報ビジネス学部,〒488-871l愛知県尾張旭市新居町3255-5,ikeguchi@nagoya-suacjp 77Ci訂究フニーロ
「地域研究」1号2005年6月 'よ、これらの店に直接販売されることがある。したが って、仕切り書にみられる魚種をもって利用状況をす べて把握できるわけではない。第2に、仕切り書に記 載される魚名は標準和名とは異なり、セリのための魚 名である。仕切り書にみる-つの魚名が、分類学上の 複数の魚種に対応していることがある。この点は国内 のどの地域でも共通しているが、とくに沖縄では魚種 が多く両者の対応が複雑である。 以上の留意点はあるものの、仕切り書は漁船漁業に おける資源生物利用を定量的に明らかにするうえで、 有用な資料である。本研究では、聞き取りによって小 売店への直接販売が周年顕著であると考えられた漁業 者は、資源利用の分析事例としなかったI'1。その他の 漁業者についておよその利用を示すものとして仕切り 書を利用した。また、利用される魚名の一部について は、セリの観察により標準和名との対応関係を確認し、 その他の魚種については既存資料を参考に標準和名と の対応表を作成した(6章)。 仕切り書は2001年4月から2002年3月までのものを用 いる。このほか、現地での聞き取り調査と、卸売市場 での水揚げの観察を2002年4月と10月~11月におこなっ た。 3.地域概要 本稿で考察対象とする羽地内海は、本部半島と屋我 地島との間に形成された浅海で、最深部は水道部で 27m、内海は平均約8mである(図1)。屋我地島沿岸に 沖出し約1kmの前浜干潟が、本部半島側には沖出し約屋我地島
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78池□明子:沖縄島羽地内海における漁船漁業の資源利用 500mの河口干潟が、大井川河口と奈佐田川河口にそれ ぞれ形成きれている。これら干潟とこれに続く潮下部 の底質は元来陸水が運搬する砂~砂泥質であるが、 1970年代に始まる農地整備により赤士が流入しており、 とくに屋我地島側の干潟と奈佐田川河口干潟には赤土 の堆積が著しい。 羽地内海の漁船漁業は、内海の湾奥部に位置する羽 地漁業協同組合(以下、羽地漁協と呼ぶ)に所属する 漁業者によって行われている。羽地漁協が管理する漁 業権は、区画漁業権と共同漁業権の2種類である。共 同漁業権は名護漁協との共同で管理している。羽地内 海の区画漁業権漁場は水道部に魚類養殖区画が、湾中、 湾奥部に貝類と魚類の養殖区画が設定されている。共 同漁業権漁場は羽地内海のみではなく、北は大宜味村 と国頭村の村境から南は本部半島沿岸一帯を含み、こ のなかで漁船漁業がおこなわれている(図2)。 羽地漁協組合員は、名護市の14村、大宜味村の8村 図2羽地漁協、名護漁協が共同管理する共同漁業権漁場 (羽地漁協資料より作成。) の居住者からなる。このうち大宜味村の漁業者は主と して塩屋湾での養殖と沿岸での漁船漁業に従事してお り、羽地内海を利用するのは名護市に在住している漁 業者である(図3)。名護市の集落のうち、漁船漁業を
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図3羽地漁協組合員の居住地分布(2002年11月)(国土地理院平成3年発行50,000分の1地形図「名護」、「国頭平
良」、「仲宗根」、および羽地漁協資料より作成。) 79C面T霊フニーの
「地域研究」1号2005年6月 ムで乗船する例などがあり、漁船漁業が転職者の受け 皿になっていることがうかがえる。80才代を過ぎて漁 船漁業に従事する人のなかには、水揚げが少なくとも 毎日海に出たいという声も聞かれる。 営む漁業者が最も多いのは漁港が位置する仲尾次集落 である。 名護市は人口56,301人(2002年4月1日現在)で、名 護漁港に北部地域最大の産地卸売市場をもつ。名護卸 売市場は北部の各漁協から集荷しており、出荷された 鮮魚は那覇市、名護市の仲買、問屋を通じて県内各地 に流通している。羽地漁協もこの市場へ水揚げを出荷 31~40 囚刺し網| ロ定置網|i鋒|
ロー本釣り| ロ不明’ 000 567 一 一 一 111 456 年齢 している。 71~80 4.羽地漁協における漁業者と漁業種構成 羽地漁協組合員の主な漁業種は、養殖、刺し網、定 置網、延縄、カゴ網、潜水、一本釣りである。養殖は スギやタイを対象としており、近年では九州へも出荷 している。聞き取りによれば、養殖従事者の多くは 1980年代から参入した人々である。養殖業者は大宜味 村の場合塩屋、宮城、名護市の場合運天原、我部、饒 平名など屋我地島の3集落や源河、親川、仲尾などに 居住している。屋我地の3集落は、水交換がよく小ざ な入り江を多くもつ水道部沿岸に位置していること、 塩田経営の経験があることなど、養殖に適した立地や 経験が養殖業の選択に作用していると考えられる。 一方、漁業組合で多数を占める漁船漁業者は仲尾次 や済井出など特定の集落に集中している。仲尾次は戦 後、県外や海外の出稼ぎから戻ってきた人々のうち、 糸満や南洋での漁業経験者により専業的な漁業がおこ なわれるようになった集落である。1950年代後半から 遠洋漁業にも参入したが、台風などの被害により中断 され、現在では小型船による沿岸漁業が中心となって いる(2)。済井出では1800年代前半より寄留した糸満漁師 が漁船漁業を始め、沿岸での小規模漁業を営んで現在 に至っている。仲尾次では羽地内海を含めた沿岸域を 漁場とするのに対し、済井出ではサンゴ礁礁池や礁斜 面を中心に漁業が営まれている。 図4にみるように、20才代から30才代では養殖業従事者が多く、50代以降とくに高齢者では漁船漁業従事
者が多くを占める。後者では、土木建設業から転業し
た事例、公務員から転業した事例、退職後パートタイ 0 5 10 152025 人数 図4コ]地漁協組合員の年齢階層別漁業種(2001年4月~ 2002年3月)(漁協資料より作成。) 漁船漁業のうち一本釣りは外洋に面した礁斜面でハ タ類(方名み-ぱい)、タカサゴ類(方名ぐる〈ん)な どを対象におこなわれる。刺し網、定置網、延縄、潜 水は礁斜面や礁池など外洋に面した海面と、内海の両 方で、様々な魚貝類を対象におこなわれる。カゴ網は 内海でおこなわれ、カニ類を対象としている。 これらの漁業種のうち内湾を主に利用する漁業種で は、個人差はあるものの、自然条件や魚価の変動など により複数を組み合わせておこなう場合が多い。表l は2001年度に出漁した組合員について、月ごとの主な 漁業種を示したものである。出漁月数が多いのは、刺 し網と定置網を用いる漁業者である。刺し網は、風の 弱い夏季には礁斜面や礁池、水路など、風の強い冬季 には主に内海を利用して周年操業ができる。小型定置 網は内海や礁池の静かな場所に設置するため、冬季で も操業ができる。多くの小型定置網漁業者は、刺し網 を組み合わせて漁獲を増している。潜水で周年操業し ている漁業者は対象種を変えることによって複数の漁 場を周年利用し、夏季には延縄を組み合わせて単価の 高いハタ類(み-ぱい)を漁獲している。 このように出漁日の多い漁業者では、内海を利用す ることによって周年操業が可能となっている。以下5 章、6章では内海の利用を可能とする漁場選択と利用 魚種についてそれぞれ述べる。 80 皿 ZZZZZZZZZ'Z'''1:;:§iimQQ、 ZZZ;釦:;:Ru、ロQQQSl1i1ilili1il 勿勿〃勿勿;:;:!:!Ⅲ詩
池□明子:沖縄鳥羽地内海における漁船漁業の資源利用 表1羽地漁協組合員の漁業周期(2001年4月~2002年3月)(羽地漁協資料より作成)
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「地域研究」1号2005年6月 4時頃設置して明朝に引き揚げて7時頃に漁港に到着 する。陸で到着を待っていた家族なども網から魚やカ ニをはずすのを手伝い、7時30分までに魚種ごとにまと める。 図5は、11月19日と25日から28日の間に聞き取った 漁場利用図である。聞き取り対象とした刺し網漁業者 A氏は、500mの長ざの刺し網と小型定置網を所有し、 父親と乗船して周年操業している。2002年度の出漁日 数は211日で全組合員中4番目に多い。A氏の父親はか つてアンブシと呼ばれる建干網で漁をしていた。アン ブシとは干潟に木やパイプなどで網を建て、満潮時に 摂餌のため岸に寄ってきた魚を漁獲するものである。 その後ナイロン網の普及とともに定置網と刺し網に替 えて操業している。11月の聞き取り時は風が強く、刺 し網は主に内海で設置していた。刺し網は魚群の通り 道に対して垂直に設置する。11月19日には岸に平行に 設置し、アンブシと同様岸近くに寄った魚をとらえる 4.漁業種と漁場利用 羽地漁協にみられる漁業種は、1日で操業可能な範 囲の漁場を利用している。漁獲物は羽地漁協がまとめ てトラックで羽地漁港から名護漁港の卸売市場へ搬送 する。セリは日曜祭日を除く毎日朝8時30分から始まる。 これに合わせてトラックは7時30分頃に集荷を終えて出 発する。以下では内海を利用する漁業種について漁場 利用と操業の概要を述べる。 (1)刺し網 刺し網は夏季には礁池や礁斜面を利用して操業が可 能である。一方冬季では主として羽地内海での操業と なる。羽地内海では冬季、強風が屋我地島によって遮 られ、その島影となっている場所が操業可能な場所に なる。このうちさらに潮流や潮位による魚種と魚群の 動きを経験的に予測して刺し網を設置する。網は夕方 屋我地島 ● ● ▽o▽o▽o 、 、 ヘナ ◎ ◎灘警
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本部半島 潜(ウミギク) 潜 (ウミギク)「へ牛■鍬』
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■"、、 。■『 0,00,0 図5 羽地内海の漁場利用の事例(2002年)刺:刺し網、定:定置網、潜:潜水カッコ内は特定の魚種を 主目的とした場合(海上保安庁平成3年刊行15,000分の1海図「運天港」と聞き取りより作成。) 82池□明子:沖縄島羽地内海における漁船漁業の資源利用 形で漁獲している。11月25日と11月28日には干潮時に ワルミ水道に出て行く魚群をとらえるよう、水路に垂 直に設置している。28日にはとくに水深10mと湾内で は深い位置に設置している。この日は風が強く、浅場 に設置すると風に揺られて根がかりなどおこすためと 説明された。 これらの事例ではまず風向が考慮され、潮流と潮汐、 魚群の動向が設置方向を決める上で考慮されている。 また図でみるように面積の小さな内海では、1人の漁業 者が刺し網を設置することで、水路をほぼ横断してし まう。しかし、他の漁業者とは特に設置場所のとりき めはなく、早いモノ勝ちなので、競合上選択可能な漁 場が限られることがある。 礁斜面を移動しながら、ヤスにより岩陰に潜む魚をつ いて漁獲するものである。波が強いと危険なのでかな り天候に左右きれる。一方、フーカー方式の潜水は主 に内海や礁池でおこなわれ、現在1名が従事している。 このC氏は水温が高く天候が穏やかな春夏季に、内海 や礁池の潮下帯でナマコや貝類、藻類などを採集し、 このほか延縄、刺し網なども利用している。 6.資源利用の季節変化 (1)仕切り書における魚名と魚種 干潟や浅海域は、微地形の発達や植生パッチの形成、 河川からの栄養供給、光合成プランクトンによる酸素 供給などにより多くの稚魚と成魚の生息場となってい る。とくに低緯度に位置する沖縄では沿岸で漁獲され る魚種が豊富でかつ地域固有`性が高く、県など広域単 位で集計された漁業統計では「その他の魚種」として 一括される魚種があまりにも多い。特に羽地内海のよ うな内湾域で、刺し網や定置網で漁獲される場合、選 択的に漁獲する一本釣りや潜水漁などにくらべ魚種数 は多い。したがって、漁業種ごとの利用魚種を検討す るには、セリの記録を示した仕切り書の分析が必須で ある。 ところで、仕切り書による魚種利用の分析から、あ る漁業種にとっての重要な漁場を推定する場合、魚種 ごとの生活史や生息域を照合していく必要がある。こ の作業のためには、 ①仕切り書に示された魚名(多くは地域で異なる方名) と標準和名の照合 ②標準和名で記載された魚種の生活史、生息地と、対 象海域における該当範囲の照合 という手順が必要である。しかし現在のところ①、② ともに情報が少なく、羽地、屋我地地方の方言や魚類 生態の地域`性をふまえた調査が今後必要である。本章 ではとりあえず、名護卸売市場で調査をおこなった坂 下(私信)、沖縄県の一般的な方名と種名の対応を記し た具志堅(1972)と中松(1976)を参照し、セリでの 分類と標準和名の対応を示しておく(表2)。この表に (2)小型定置網 小型定置網は名護市の組合員中4人が所有し、羽地 内海で利用している。このうち1人は内海の潮下帯か ら水深5~6mの位置にlか所と、稲嶺集落沖合の礁池 にlか所設置している(図5)。2人は屋我地島沖の潮 下帯に設置している。これらの建網の長さは岸から沖 にかけて200mであり、両側には縦網に沿って魚を誘導 する周囲80mの網がそれぞれ設置してある。聞き取り 対象としたB氏の場合、建網は岸側で満潮時の水深が 2mの地点に固定し、沖側は満潮時の水深が約10mの地 点に固定する。これにより、潮がひくとともに沖側へ 移動する魚群を、沖側の袋網に誘導して漁獲する。小 型定置網では、魚体にキズがつく刺し網に比べ、魚を 新鮮なまま漁獲することができる。しかし、「地獄網」 とも呼ばれるように、小さな魚も捕らえてしまうため に資源管理上の問題がある。聞き取りによれば、定置 網をもつ漁業者は沖合で水揚げしたときに小苫な魚を 選別して海に戻している。 (3)潜水 潜水漁はスキューバダイビングによるものと、船上 から空気を送り込むフーカー方式の二つがおこなわれ ている。スキューバダイビングによる潜水は、夜間に 83
CiiT霊フニ、
研究ノート 「地域研究」1号2005年6月 みるように、一つのセリ分類名は常に1種のみを指す のではなく、数種あるいは複数の科を含むことがある。 また、単価が低い魚で、その日の漁獲尾数が少ない場 合、他の魚と合わせて同一のトロ箱に入れられてセリ にかけられることがある。したがって、仕切り書に記 きれた魚名から利用魚種やその生息域を検討する際に は、一つのセリ分類が含みうる魚種の範囲に留意する 必要がある。 表2羽地漁協組合員による販売魚種のセリ分類名と標準和名の対応 セリ男 禦準和 参照セリ 昌準和 参照難み-ぱいハタ科スジアラ①
あしちんニシン科ドロクイ① リュウキュウドロクイ① あかな-フエダイ科バラフエダイ④ あかみ-キントキダイ科キントキダイ④ あぱさ-ハリセンポン科ハリセンボン ① ネズミフグ① あまいゆクロサギ科オオクチサギ②,③ いせえびイセエビ科ニシキエビ① いなふくすぐすび-フエダイ科フエダイ②,③ いしみ-ぱいイシダイ科イシガキダイ① いぬぱ-フエダイ科イトヒキフエダイ① いらぶちや-ブダイ科ヒブダイ① スジブダイ① いりか-みずんニシン科ミズン① しるいゆ 白魚フエフキダイ科サザナミダイ① タマメイチ① メイチダイ① うきむる、ぶりアジ科ヒレナガカンパチ① うなぎウナギ科オナガウツボ① ウツボ科ゴマウツボ① アナゴ科キリアナゴ① え-ぐあ、すぐアイゴ科シモフリアイゴ① おもなが フエフキダイ科キツネフエフキ④ か-えアイゴ科ゴマアイゴ ②,③ が一らアジ科ヨロイアジ※① ウマヅラァジ① カスミアジ※① マルヒラアジ※① ミナミギンガメアジ※① ヒイラギ科シマヒイラギ① ネッタイヒイラギ① イトヒキヒイラギ① かいるい 貝類マルスダレガイ科アラスジケマンガイ② スダレハマグリ② ヤエヤマスダレ② ウミギクガイ科ウミギク② かたかしヒメジ科コバンヒメジ① タカサゴヒメジ※① ミナミヒメジ① がちゆんアジ科メアジ③ かますカマス科ダルマカマス ① かわはぎカワハギ科ウスバハギ① ソウシハギ① きすキス科ホシギス ① こう 甲し'力、コウイカ科コブシメ ② ぐるくまサバ科グルクマ ① ぐる〈んタカサゴ科タカサゴ ① ニセタカサゴ ① くれ-み-ぱいイサキ科コロダイ① クロコショウダイ① こちコチ科ミナミマゴチ① しちゆ-イスズミ科ミナミイスズミ① イスズミ① テンジクイサキ① しろいかヤリイカ科シロイカ② しゃこがいシャコガイ科ヒレジャコガイ① すぎスギ科スギ① たし、タイ科タイワンダイ① たちタチウオ科テンジクタチ① たまんフエフキダイ科ハマフエフキ① シモフリフエフキ① ちいまんニザダイ科テングハギ③ ツマリテングハギ※③ ちんタイ科ミナミクロダイ① オーストラリアキチヌ① ヘダイ① イサキ科ホシミゾイサキ① とかじや-ニザダイ科カンランハギ③ ながじゆうみ-ぱいハタ科オジロバラハタ① なまこクロナマコ科ハネジナマコ ② なんずらベラ科ミツバモチノウオ① シマタレクチベラ① のこぎりがざみガザミ科(ノコギリガザミ属)② あかいゆ 赤魚ひ-ちキントキダイ科③ びたろうフエダイ科キュウセンフエダイ① ひらめヒラメ科テンジクガレイ① ササウシノシタ科アマミウシノシタ① ひれ-かニザダイ科トサカハギ③ ひんが-が一らアジ科インドオキアジ① ぼらボラ科ボラ① まくぶベラ科シロクラベラ① み-ぱいハタ科アザハタ① アズキハタ① チャイロマルハ夕① ヤイトハタ① ナミハタ① みじゆんニシン科ヤマトミズン ③ む-ちイトヨリダイ科ヒトスジタマガシラ① も-し、イバラノリ科(イバラノリ属)② やまと 大和な力、いゆアジ科ツムブリ① わたりがに ガザミ科タイワンガザミ②塞煮アジ科ミナミイケカツオ①
スダレダイ科ツバメウオ① 標準和名は以下により記載した: ①名護卸売市場でセリの写真(2002年11月16日~11月27日)をもとに、坂下光洋氏にご教示頂いた。※は未確定のもの。 ②名護卸売市場でセリを観察し,筆者が同定した。 ③具志堅(1972)を参照した。ただし※の標準和名は中坊編(1993)に従った。 ④中松(1975)を参照した。 84池□明子:沖縄皀羽地内海における漁船漁業の資源利用 (2)漁業種と利用魚種 2001年4月から2002年3月までに個人が漁獲した魚種 数(セリ分類)は、最も多い組合員で65種類である。 このうち11月のセリに見られた39種類は約68種の標準 和名に相応する。26のセリ分類については未確認であ ることを考えると、1人が漁獲し、流通させる魚種数 はかなりの数にのぼることがわかる。以下では内湾の 漁業種を対象に、利用魚種とその季節変化を検討する。 b小型定置網・刺し網 ここでは、小型定置網と刺し網を組み合わせて周年 創業しているB氏を例として魚種利用を検討する。B氏 の1月あたり出漁日数は平均で20日であり、風が強くな る9月から12月にかけては日数が減っている。1日あた りの水場金額をみると、最も多いのは4月で9月からは やや下がり、とくに10月、1,2月は少ない。しかし冬 季には出漁日数が少ないことを考えると、D氏同様冬 季の水場単価が高いことが冬季の収入安定につながっ ているといえる。 次にこの水揚げを構成する魚種を検討する。B氏の 利用魚種は、周年多種にわたる(表4)。これは多種を 誘導漁獲する定置網の性質を示す一方、B氏が単価の 低い魚であってもほとんどを水揚げしセリにかけてい ることも示している。例えば10月には特定の魚種が漁 獲を優占することがほとんどなく、わたりがに、あし ちん、が一らがそれぞれ13%、11%、11%を占めるに 過ぎない。一方魚種数は35種類(セリ分類)にわたり、 それぞれが水揚げの1~5%を占めている。天候が悪く 刺し網が併用できない冬季にはとくに、浅場と深場を 移動する多魚種の利用が水揚げに重要な役割をもって いる。 季節ごとの利用種変化をみると、あしちんが周年安 定的な利用がなされ、水揚げにも一定の割合を占めて いることは刺し網漁のA氏と同様である。また、が一 らも1,2月を除いては毎月利用される。が一らは表2 でも示したとおり多くの魚種を含んでおり、セリでは それぞれの魚種に応じて価格形成きれている。季節的 に利用が限定的な魚種はえ-ぐあで、特に4,5月に水 場金額の多くを占める。 a、刺し網 ここでは、周年操業し出漁日数が最も多いD氏を例 として、魚種利用の季節変化を明らかにする。D氏の 月あたり出漁日数は平均で20日であり、風力が強くな る11月からは日数が減っている。1日あたりの水揚げ 金額をみると、3月が最も多く、6,7月の2か月、10 月から12月の3か月が続いて多くなっている。つまり、 天候がよく出漁可能な日が多い夏季には水揚量を増や すことにより収入を増している。天候が悪く出漁可能 な日が少ない冬季には水揚量は減るが、単位重量あた りの金額が高いために、1日あたりの水場金額は夏季 とほぼ同様になっている。 次にこの水揚げを構成する魚種を検討する。表3は 各月ごとの魚種とその水場金額を示したものである。 周年安定的に漁獲されるのはあしちんで、12,1、2月 を除いては漁獲量、水場金額ともに全体に占める割合 が最も大きい。6月の総水場金額に占める割合は73%に のぼり、最低でも2月の13%、平均で42%となっている。 7,8月はたまん・こち、9月から12月にかけてはきす・ わたりがに類、1月から3月にかけてはきす.ちんが漁 獲に加わる。天候の悪い冬季に水揚げを構成するのは あしちん・きす・わたりがにで、この時期に単価が上 がっている。 刺し網漁では潮流、潮汐に応じて移動する魚種の魚 道を予測、選択して網を設置する。魚種利用をみると、 あしちんのように周年漁獲されるものに加えて、季節 ごとに数種の魚種を選択的に漁獲していることがわか c,潜水漁 内湾で潜水漁をおこなうc氏は、兼業漁業者である。 8月と4月、5月以外の季節は毎月出漁しているもの の、出漁日数は最多で17日(11月)、最低で1日(2月) のみである。1日あたりの水場金額が多いのは6、7 月と11月で、4月から8月にかけては1kgあたり単価が る。 85
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「地域研究」1号2005年6月 高い。このように、潜水漁の場合、春季に集中して単 価の高い資源を利用することで水揚げを確保している。 利用魚種は季節ごとに大きく変化する(表5)。これ は、漁業種の変化と、選択魚種の変化による。潜水漁が 主体となる4月から8月までは、藻類(も_い)、なま こ・貝類(ウミギク)など潮間帯から浅海に分布する魚 種を利用する。これらはいずれも単価が高く、も一い は1kgあたり970円~1300円、なまこは2100円~2600円、 ウミギクは1500円で取引きれる。探索~採集に時間が かかるため、努力量あたりの単価は魚類にくらべ低く なるが、移動性の低い資源であるため、生息地が確保 されていれば確実に収入になる点で重要な資源である。 9月から3月にかけては漁業種を延縄あるいは刺し網 に変えて操業する。主な利用魚種はあしちん、わたり がに、たちうおであり、とくにあしちんが主要な魚種 となっている。 己甸狛 二幻〒 ]、【】 】埠己 】す②$ 】⑨詞D副 】記[ 》⑤‐ざ -ロー’ (掻坐U一幻組州Ⅷ曰坦)(亜『塒SCNl亟の叶一sN)重冊e 以上、内湾の漁業種3種について利用魚種の構成と 季節変化を検討した。これら漁業種に共通している点 は、内湾性魚種であるあしちんが漁獲と水場金額の安 定性において重要な魚種である点である。とくに漁船 漁業一般にとって操業地が限られる冬季において、安 定的に得られるあしちんは重要である。漁業種別にみ ると、定置網では浅場と深場を移動する多魚種が水揚 げを構成する。選択的な漁獲をおこなう刺し網と潜水 漁ではともに利用魚種の季節性が大きく、刺し網では きす、こち、わたりがに、え-ぐあが、潜水漁ではナ マコ、貝類などベントス資源と藻類が重要種である。 圧一一脹些迦歴塒仰吊旦喧○椥絲燵若鯉 uフ 1k( 7.内湾における資源利用の特性 本稿では沖縄島の内湾漁業について、資源利用を検 討した。本島北西海岸に位置する羽地内海は、本島第 2の規模をもつ名護卸売市場に近く、また名護市の消 費市場にも隣接しており、多魚種の流通が可能な地域 である。さらに近年の養殖技術の発達により養殖海面 としても有望視されている。 88池□明子:沖縄島羽地内海における漁船漁業の資源利用 この内海を利用する沿岸漁業者は、養殖に参入する 比較的若い世代と、外洋の一本釣り・潜水漁に従事す る中~高齢世代、および内海を中心に操業する高齢世 代に概ね分けられる。就業の経緯についての資料は断 片的だが、漁船漁業者のなかには建築業や公務員など 他業種からの転業もみられる。また、70代の漁業者へ の手伝いとしてパートタイムで乗船している30代の漁 業者の例もみられた。これらから、とくに漁業集落で は今後も、小規模な漁船漁業が中高年者の転業の受け 皿となる可能性がある。本稿では漁船漁業者のうち、 とくに内湾への依存度が高い漁業種3種について、利 用魚種の構成と季節変化を分析した。 まず、漁場利用の制約からみると、北西から風を受 け、風速が強い冬季は礁池・礁斜面での操業ができず、 内湾での操業のみが可能となる。この場合、一本釣り 漁業者は休漁し、刺し網、小型定置網漁業者が操業す ることになる。刺し網漁では湾口を横断するほどの長 さの網を用い、潮流、潮汐により移動する魚群の魚道 に網を設置するため、小さな魚群をめぐっては漁業者 間で操業場所の調整が必要となる。 このような状況では、どのような利用魚種の構成に よって個々の漁業者の操業が成り立っているのだろう か。魚種の季節変化から、次のことが示唆される。ま ず三つの漁業種に共通するのは、あしちんが漁獲量、 漁獲高ともに周年操業にとって重要となる点である。 あしちんに含まれるドロクイとリュウキュウドロクイ は、泥質中のデトリタスを漉しとって摂餌しており、 生態系の低位に位置する生産性の高い魚種である。こ うした生産性の高い魚種にある程度依存しつつ、漁業 種ごとに異なる魚種選択をおこない全体の水揚げが構 成される。刺し網漁ではきす、こち、わたりが|こなど 単価の高い魚種を季節ごとに選択的に利用する。事例 にあげた漁業者以外では、いせえびの底刺し網を組み 合わせる例もみられた。このように、異なる魚種を選 択することは、内湾の漁場利用における個人間の調整 にとって重要な側面と考えられる。このような魚種選 択は潜水漁でも観察された。一方定置網では多魚種を 水揚げすること、そして刺し網を組み合わせて操業す ることにより一定の漁獲高を確保している。定置網で 漁獲されるそれぞれの魚種の単価は必ずしも高くない ので、あばさ_のように皮をむき、付加価値をつけて セリに出す漁業者もいる。このような操業が可能なの は、一方で漁業者の荷分け・加工の努力があるが、他 方で羽地内海が消費地に近接していることや、名護卸 売市場を通して多様な魚種の流通チャネルが形成され ていることは内湾の利用にとって重要な背景である。 漁船漁業者が多い仲尾次集落では、血縁を通して鮮魚 店に直接漁獲物を販売する例もみられた。 以上のような魚種利用のうち、内湾に固有な魚種の 利用は今後も重要`性を増すと考えられる。汽水、内湾 に固有のドロクイ、リュウキュウドロクイ(あしちん) は現在のところ生産地、消費地ともに限られているが、 県内の干潟浅海域が埋め立て等により減少しているこ とから、他地域での生産量は今後増加する可能性が低 い。聞き取りをするなかでも、本種の単価が昔に比べ 上がりつつあることが認識されていた。 以上から、特に消費地に近接する汽水、内湾環境で は、一方で生産'性が高くかつ地域固有性の高い魚種の 生息環境、他方で漁業種ごとに異なる利用魚種の生息 環境をふくめて漁場を考えていく必要がある。今後こ のような観点から、それぞれの魚種について生活史お よび生息域についての情報を収集することが求められ る。とくに、あしちんに含まれるリユウキユウドロク イでは、産卵のため河口を遡上する可能性も報告きれ ており(ChenandHsiaol996)、流域を含めて生息域を 考えていくことが重要である。 8.おわりに 本稿では、仕切り書をもちいた利用魚種の分析を中 心に、沖縄島の内湾の資源利用について考察した。そ の結果、内湾の漁船漁業が生産性の高い魚種にある程 度依存しつつ、干潟と浅海の問を移動する多様な魚種 の利用によって水揚げを構成していることが明らかに なった。これらの魚種の存在が、複数の漁業種の組み 89