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柏原千英編「開発途上国と財政 -- 歳入出、債務、ガバナンスにおける諸問題」(新刊紹介)

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柏原千英編「開発途上国と財政 -- 歳入出、債務、

ガバナンスにおける諸問題」(新刊紹介)

著者

柏原 千英

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

177

ページ

52-52

発行年

2010-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004495

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.177 (2010. 6)

52

  ﹁開発途上国﹂ という言葉やカ テゴリが使われ るようになって 半世紀以上が経 過する間には 、 資源輸出国や経 済発展を推進で きた一部の諸国 が ﹁中所得国﹂ と呼ばれ、 国際社会での発言力を高め、 さらに進んで欧米先進国とほぼ肩を並 べる数カ国も現れた。その一方で、さ まざまな経済政策が期待通りの効果を もたらさなかったり、地域内での相対 的な経済発展レベルが低下していく国 や、開発を実現・加速させるために政 治や経済体制の移行を試みる国など 、 途上国間でも国内状況の多様化が進ん だ。また、途上国を取り巻く外的環境 も著しく変化している 。国際間の人 ・ 物・サービス・資金移動の量とスピー ドは、景気浮沈と時には経済危機を経 験しながらも増加を続け、その下で国 際社会の一員であるためには、途上国 にも多くのルール遵守や義務が課され るようになった。   本書の目的は、このような状況下で 途上国が経済発展の根幹である財政を いかに運営する か︵できるか︶ 、 成功と失敗の要 因は何かを再考 するとともに 、 経済発展の過程 で生じる課題へ のインプリケー ションや新たな 分析視点の提供 を試み、全章をつうじて一定の鳥瞰図 を提供することである。本書は、まず 序章で途上国の財政問題に関する国際 社会での認識の変化、開発援助枠組み での対処や途上国側の成果を評価する ための新たな指標の導入などについて 概観したのち、つづく九章を開発財政 における主要な課題で分類し 、﹁歳入 ︵税収︶と再分配における制度設計と 改革﹂ 、﹁中長期的課題としての債務管 理﹂ 、﹁ガバナンスおよび貧困削減と財 政﹂の三部構成としている。   第一部では 、一章から四章までが フィリピン・ベトナム・エジプト・韓 国の歳入構成と再分配政策に関する国 別分析、五章が財政運営とも関連深い 金融政策︵通貨発行権︶のクロスカン トリー分析を扱っている。財政が赤字 基調、移行経済、資源輸出国かつ地政 学的レントを持つ国、また、OECD への正式加盟によって ﹁先進国入り﹂ を果たした直後に通貨・経済危機を経 験した国など、 それぞれの政府が経済 ・ 財政運営を行う上で拠って立つ条件が 異なれば、最重要課題も税制・税源移 譲の歪みに起因する根幹的な問題から 再分配に新たな課題を抱えた場合ま で 、﹁途上国﹂として一括するには多 様化していることが分かる 。さらに 、 約一五〇カ国の長期パネル・データに 基づいて行った経済成長に伴う通貨発 行益 ︵シニョリッジ︶ 関する分析では、 一つの財政政策に中長期的に依存する ことが適切ではないとの結論が示され ている。   第二部では、 債務︵国債や対外援助︶ の構成や管理制度について、マレーシ アとフィリピンを取り上げている。財 政と債務管理の目的や手段、ガバナン スが概ね良好に運営されており、金融 市場プレーヤーや投資家層の育成を目 指している前者と、財政赤字補填が喫 緊の課題であり、予算策定・実施サイ クルと公会計・監査システムとの整合 を必要とする後者では、導出されるイ ンプリケーションが異なる。これら二 カ国はIMF・世銀が発表してきた債 務管理に関するガイドラインや報告書 でも国別分析の対象外であるため、併 せて参照されたい。   第三部は、とくに一九九〇年代後半 から開発財政・援助との関連づけが強 められてきたガバナンスと貧困削減に ついて扱っている。ロビー活動や汚職 が家計の厚生水準や経済成長に与える 影響を分析するモデル構築や 、従来 、 開発財政の明示的対象から外れがちで あったジェンダーを行政に組み込む指 標の概念に関する考察をつうじて、援 助機関側によって設定される評価基準 を途上国が財政政策と戦略的に連携さ せる必要性がより高まっていることが 分かる。   各章で明らかとなったさまざまな課 題や指摘を総合すると、開発財政の実 施には、何より途上国自らの選択と行 政・政策決定上の調整能力が問われて いるといえよう。税制や金融市場・制 度において適宜かつ必要な改革を実施 していくには、立法府や行政組織間で 優先的および中長期的な開発目標が共 有されていなければならない。それら は世界的な取り組みを要求するものか ら、地域単位での協力枠組みが存在す るもの、あるいは個別機関や政府との 交渉など、途上国政府は多様なレベル での対応に迫られる。自国での経験を 持つ先進国や開発財政を支援している 先進諸国・国際機関側にも、改善を要 求するための根拠としてのみではな く、援助対象国における適切な制度構 築と政策実行性を確保するため、多国 間での比較検討が可能な情報提供や指 標の策定・改訂への努力が必要であろ う。このような観点からの分析手法や 理論的考察は、本書に残された課題と して今後も考えていきたい。 ︵かしわばら   ちえ/アジア経済研究所 開発戦略研究グループ︶

柏原

千英

﹃開発途上国と財政

︱歳

題︱

研究双書 No. 583 ■

柏原 千英

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