Title
経済民主主義の確立にむけて(2)
Author(s)
吉盛, 雅美
Citation
沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 9(1): 39-93
Issue Date
1984-10-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6742
経 済 民 主 主 義 の 確 立 に む け て
(
2)
吉 盛 雅 美 (前号よ り続 く) 第Ⅱ章 労 働 者 一 現状 と政策 -1・ 労働者の状態 一 雇用 -2.労働時間 3. 賃金 4・ 積極的労働政策 5・ 雇用対策基本計画 と特徴 第Ⅲ章 女性 と労働 1. 女性労働者の地位 一男女差別はどこか ら来たか-2. 人間にとって労働 とは何か 一性別分業が もた らす もの-3. 日本資本主義を支 えている もの 一家計補助労働 -4. 男女平等-の条件 一 女性保護撤廃一 第Ⅳ章 経済民主主義の確立にむけて 1. 国家独占資本主義 下の労働者 2.経済民主化の必要性 3. 民主的改革を進めるにあたって 第II章 労 働 者 一 現 状 と 政 策 一 末曽有の 「高度経済成長」 を可能にした重要な要因は、長時間低賃金による 労働で高度 に搾取 された労働者たちであった。そ して、石油 ショック以後、減 量経営、人減 らし合理化で不況 をの りきった日本経済 にたい して、内外か ら 「日本上出来論」 の声 さえきかれ るが、それを支えているのは多 くの不安定就 労者である。この章では労働者にスポ ットを当て、現在、労働者が置かれてい - 39-る状態 を、雇用、労働時間、賃金な どの面か ら統計数字 を用いて検討する。そ して、 どのような経過 をた どって現在のよ うな状態に労働者が置かれ るように なったのか を、労働政策 を通 して見てい こう。 1. 労働者の状態 一 雇用 -1982年の 日本の総人口は1億1848万人で、就業者数 は5638万人、その うち雇用者数は4098万人 (就業者数 の7 2.6% )となっている (表1参照 )0 第1次石油危機以後の7 4年か ら7 5年 にかけて雇用者数の推移 を見ると、男 性 は1 3万人増加 しているが女性は5万人減少 してい る。石油危機の影響は女 性 にあ らわれてい るよ うだ。第2次石油危機以後の7 9年か ら8 0年にかけて は雇用者の減少はみ られない。 1948年か ら8 2年 まで、雇用者は約3,2倍増 加 してお り、女性労働者の占める割合は4 8年の2 6.2%か ら82年には34・6 %へ と高まっている。 表 1. 男女別雇用人口の推移 年 度 男 性 女 性 総 数 1 9 4 8 929万人 330万人 1,259万人 5 0 910 334 1,254 5 5 1,247 531 1,778 6 0 1,632 738 2,370 6 5 1,963 913 2,876 7 0 2,210 1,096 3,306 7 4 2,466 1,172 3,638 7 5 2,479 1,167 3,646 7 9 2,566 1,310 3.876 8 0 2,617 1,354 3,9 71 8 1 2,646 1,391 4,037 8 2 2,680 1,418 4,098 出所 :総理府統計局 「労働力調査
」
次に産業構造 を見ると、第1次産業従事者が極端に減少 し、第2次、第3次 産業にかたよっている (図2参照 )。戦 後の労働力政策によ り、農業か ら工業 への人口移動がおこ り、農民層 の賃労働者化が加速化 し高度経済成長 を支 える 力 となるが、増加の一途をた どっている第3次産業の場合、将に女性従業者の 伸びが目立つ (図3参照 )。 390 200t) loワ 図2 重美別就業者数の推移 第三次産業 ノー・---3.110万人 < 二 第二次蘇葉 1,965万人 第一次重美 548万人
図4. 規模別雇用 者数 200万 400 600 800 1000 1200 1400 出所
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「・H働力調査年 報」 わが国の労働者 は、大企業、中小企業、零細企業の規模別に見た場合、 どの よ うに分布 してい るの だろうか。図4によると、 2 9人以下で働 く人が最 も多 く1368万人、 全休の3 5%である0 3 0-- 9 9人規模の雇桐者620万人を 合わせ ると1 0 0人以 下の企業の雇用 者は、 全体の5 1% とな り意外 と少ない 気がす る。 これは常絹労働者 だけの統計であって、臨時やアルバイ ト、パー ト 労働者が入 っていないか らそ うなってい るのだろ う。一万、 100人以上 1000 人未満の企業労働者 は740万人で1 8% 、 1000人以 上の企業は6 6 7万人で1 7% と高い数字が出て いる。 戦前か ら日本では、本土、社外工、 瞳時工 とい う独特 の重層構造 が形成 され、 これによ り搾取がい っそ う強化 されてい ったが、現在 も独占的大企業の支配の もとに系列 ・下請の中小零細企業群が ピラ ミッ ド型 に細織 されている。 そ こで は、臨時、 日覆い、パ ー ト、 アルバイ トとい った不安定就労者が働 いてい るが、 正確な統計はとられていない。 た とえばパ ー トタイマーの場 合、 「一 日の所定 労働時間が一般労働者 と比べて短 いか、一日の所 定労働時間が同 じであって も 週の所定 日数が短 い もの」、 「企業 もしくは事業所がパ ー トと呼んでい るもの」 とい うよ うに定義 も不明確 なため、その実数把握 は困難なよ うである
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「パ ー トタイマーと呼ばれてい る者」 とい う定義で調 査 した労働者の統計 によ ると (表5参照 )、 8 1年 ではパ ー ト労働者数が1515万 人 と出てい るが実 際には それ以上であろ う。 表5 常用 とパー トの労働 音数 常用労働者 パ ー ト労働 敬 者数 1975 3,646万人 699万人 76 3.712 809 77 3.769 979 78 3.799 1,119 79 3.876 1,480 80 3,971 1,459 81 4,037 1,515 表6 常用 と日雇 の比率 ( 1967年平均 ) 常 用 岳時 .日雇 男 性 92.5% 7.5% 出所 :大羽綾 子他編 『婦人労働 』 亜紀書房 p70 出所 :労働省 「雇用動向調査」
女性の瞳時雇用者の実数は1967年 平均 で男性 を上岡 って きてい るが (表6 参照 )、この事実は主婦のパー トタイマー雇用が この頃か ら急速 に伸 びて きた ことを示 してい る。その後の石油危機 には、女性パ ー ト労働者 は景 気の調整弁 としてまっ先 に首切 りの対象 とされ一時的に減少 したが、 7 5年か ら8 0年に かけての経済危機 下で、企業 は常用 労働者 をパー ト労働者 に切 りか えて人減 ら し合理化 をはか ったので、不安定就労者は再び増大 してい る。 パ ー トタイマー は、卸売、小売業、製造業の分野 で、 また大企業 よ りも中小零細企業 に多 く採 -43-用 されている0 8 2年の総理府統計局 「労働力諭査」 によれば、週35時間未 満のパ ー トタイマーは4 1 1万人で、その うち女性は2 8 4万人 (6 90/o)と な ってお り、パ ー トタイマーは女性、 とくに主婦 に多い ことがわかる0 不安定就労者 と失業 は背中合わせの関係にある。 日本の失業率が欧米諸国に 比べてはるかに低い数字が出ているのは (図7参照 )パー トをはじめとする多 1960 65 70 73 75 79 80
くの不安定就労者が存在す るためで ある。 8 2年の失業者数は1 3 6万人 (男 8 4万、女5 2万 )で、失業率は2.4%となっている。失業集中度の高い年齢 層は男性で60- 6 4歳、女性は1 5- 2 4歳 である (総理府統計局 「労働力 調査」 )。 しか し、統計数字にあ らわれてい るこれ らの失業者数 は実際の膨大 な失業者数の10分の1にす ぎないとい うことをはっきり認識すべ きである。 た とえば、女性にはまだ労働権が確立 されていないため 「縁辺労働力」 と言わ れ、失業をしても 「主婦」 とか 「家事手伝い」 とい うことで失業者 とはみな さ れない。 しか し、就業の希望 をもちつつ就業条件 を考 え合 わせねばな らないと いう、よ りつ らい立場 におかれていることは、ま さに失業者の状態 とい えるし 偲蔽 された失業者であるといわねばな らない。 このよ うに現実には、顕在 的な 失業者 と大量の見えざる失業者 を日本の産業社会 はかか えているのである。
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労働 時間 次に、 粒界で も長 いことで有名な 日本の労働時間について見てい こうO図8 によると、労働時間は年々短縮 されているが、石油危機以後の7 5年か ら79 1955 60 65 70 75 79 荏 )全産業、常用労働者 一人平均月間 出所 : 「毎月勤労統計調 査」
-45-表9 出勤 日数の推移 男 性 女 性 19 6 0 24.3日 23.9日 6 5 23.8 23.2 7 0 23.2 22.4 7 5 21.8 21.5 7 9 22.1 21.8 8 0 22.0 21.8 8 1 21.9 21.7 出所 :労働省 「毎月勤労統計調査」
年 にかけては増 えている。 出勤 日数に も石油危機の影響が あ らわれている (秦 9 )。 7 5年か ら7 9年にか けて出勤 日数 は増 え、 8 1年 になってやや減少 し ている。 製造業規模別で労働時間を比較 してみると (図1 0参照 )、大企業 と中小零 細企業 では大 きな開 きがあ り、零細企業の雇用 者は大企業の雇用者よ り1カ月 に8時間ほ ど多 く働いてい る。 この図で注目 され るのは、高度成長期の始 まっ た5 5年か ら6 0年 にか けては、景気上昇によ り労働時間が多 くな り、石油危 機以後の7 5年か ら8 0年 にかけては不況によ り労働時間が延長 されているこ とである。 図10.製造業規模別 実労働時間の推移 注 )一人平均月間 出所 :労働省 「毎月勤続統計調査」 1955 60 65 70 75 76 79 80 82
最近は日本で も週休2日制の企業が増 えているといわれるが、実態 はどうだ ろうか。図1 1によると、 30- 9 9人規模の企業で週休2日制 を採用 してい 図11 規模別企業の週休制 週休2日制 1日制 1
000人以
上 30
-
9
9
人
1975 81 1975 81 1975 81 88.10/al
l 67.2%t
ト 71.3%l
ト 37.7 42.5 9.0% 43 2 9 .2 26.1 60.4 55.1 出所 :労働省 「賃金労働時間制度総合調査」
るのは42.5%と半分に も遵 していない。週休2日制は大企業でのみ実施 され、 まだまだ定着 していないよ うだ。 週 当た りの労働 時間 を欧米諸国 と比較 して 見ると、 日本の労働者は西 ドイツ よ り遇に9時間 も多 く働いている (図12 )。 そ して、各国 とも労働時間は短 縮 されてい くのに、 日本では逆 に延長 されつつある。 年次有給休暇について 見た場合、 日本の労働者がいかに仕事中心の生活 をし ているか、あるいはそのよ うに仕向けられてい るかが よ くわか る (図13 )。 年次有給休暇を5週間 と立法化 しているフランスと対照的 に、 日本では14.4 日の有給休暇の うち実際に取得 されてい るのは8.8日で、有給休暇はあっても 取得 しに くい状況におかれている。 日本の労働者 には自由にす ごせ、 自分 自身 をとりもどす時間である余暇が不充分で、人間 らしい生活が保障 されていない といえる。 日本の労働者た ちは欧米諸国 との競争 に勝つために長時間労働 を強 い られているが、そのほか にも、余暇よ りも仕事 に価値 をお く見方 をす る国民 性が反映 されているともいえるのではないだろ うか。 - 47-図12 各国別週当た り実労働時間 (製造業 ) 日 1975 78 本 81 西 7 5 ツ 81 フ 75 ス 81 ア 75 カ 81 イ 75 出所:『83年労働統計要覧 』 図13 年 次有給休暇の各
国
比較 1 2 3 4 5 6 スウェ-T. フ フ ンス イギ リス 5週間 (立法 ) 4- 5遇 技術者は5遇 西 ドイツ 「1
蒜 .2;三岩間 ア メ リカ = 3- 4遇3
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義 金 労働者の状態を把握す るために、雇用 状況、労働時間の面か ら検討 して きた が、 さいごに賃金について見てい こう。 労働力の価値が貨幣であ らわ され 「労働力の価格」 とい う形 をとったのが賃 金であるが、労働力の価値は、労働者本 人 とその家族の生活資料の価値、特別 な訓練育成のための 支出か ら成 り立 っている。労働力の価値 の大 きさは時代に よってまた国 によって変化す るが、労働者階級の社会的地位 によ り労働力の価 値の水準は決 められ る (林直通 F経済学入門 j青木書店、 1981.p33158)0 そして賃金の現実的決定 は、労働力商品の需給の場 である労働市場 で労使の競 争関係を通 して決定 され る。 賃金には名 目賃金 と実質賃金が ある。労働者が通常雇用契約 によって あ らか じめ定める貸金 は貨幣単位ではか られた金額であ り、 このよ うな賃金 を名 目賃 金 という oそして、物価指数で修 正 し、その実質的な価値 をあらわ したのが実 質賃金である。 インフレが生 じると貨幣価値が低 下するので実質賃金は相対的 に低下す る。図表14で8 0年 を見ると、実質賃金が前年の水準 を下回 ってい るが、それを防 ぐためには名 目賃金を物価 にスライ ドさせて上昇 させ るスライ ド制が考 えられているO これは、一度設定 した企業内の賃率の絶対値 を消費者 物価指数や生計費など特定の指標の変動 に応 じて、 自動的 に調整す る制度 で、 特 にインフレ時に賃金の実質価値 を維持す る必要 か らその要望が強い。退職年 金に も用い られ 年金受給者 と現役稼得者 との所得水準格差 を少な くす るため、 給付費を物価や消費水準にスライ ドさせ る方法が行われている (『現代用語の 基礎知識』
「スライ ド制」 )0 賃金の高 さを問題にす るときは、絶対的賃金 と相対的賃金 を考席 しなければ な らない。剰余価値 または価値生産物 と比較 した賃金の高 さを相対的賃金 とい い、これにたい して、他の どんな要因 とも比べ ることをしない、賃金の高 さそ の ものを絶対的賃金 とい う。絶対的賃金、相対的賃金は、国内で労働者個 人別、 企業別、業種別、地域別に賃金の高 さを比較す る場 合や、国際比較す る場合に 用い られる (『大月経済学辞典』
「絶対的賃金 ・相対的賃金」 )。 資本主義の基本的経済法則は剰余価値の法則であ り、資本はつねに剰余価値 -49-表14.名 目賃金 ・消費者物価 ・実質賃金の推移 (実 質 賃 金 ) (消費者物価 ) (名 目 賃 金 ) 指 数 前年比 指 数 前年比 指 数 前年比 1960 37.3 2.5 24.2 3.6 9.4 6.2 65 47ー2 2.8 32.4 6.6 15,3 9.8 66 49.6 5.3 34.1 5.1 16.9 10.7 67 53.4 7.7 35.4 4.0 18.9 12.0 68 57.6 7.8 37.3 5.3 21.5 13.6 69 63.4 9.7 39.3 5.2 24.9 15.5 1970 68.8 8.7 42.3 7.7 29.1 16,9 71 74.1 8.1 44.9 6.1 33.2 14.6 72 82.1 ll.0 46.9 4.5 38.5 16,0 73 89.3 8.7 52.4 ll.7 46.8 21.5 74 91.3 2.2 65.2 24.5 59.5 27,2 1975 93.7 2.7 ・72.9 ll.8 68.3 14.8 76 96.5 2.9 79.7 9.3 76.9 12.5 77 96.9 0.5 86.1 8.1 83.4 8.5 78 99.3 2.5 89.4 3.8 88,8 6.4 79 101.6 2.3 92.6 3.6 94.1 6.0 1980 100.0 -1.6 100.0 8.0 100.0 6,3 81 100.4 0.4 104.9 4.9 105.3 5_3 82 102.1 1.7 107.7 2.7 110.0 4.5 を追求 してい く。 それは、賃金 を労働力の価値以下に切 り下げた り、労働 日を 延長 した り、労働生産性の向上や労働強度 の増大 とい う諸方法によって達成 さ れ、 これ らの ことが らは相 対賃金に直接影響 して くる。労働生産性の高い発達 した資本主義国では、生産に必要な労働時間が短縮 されて労働力の価値は′トさ くな り、剰余労働 に対する必要労働の比率が低下す るので絶対賃金は高 くて も 相対賃金 は下落す る (戸木田嘉久 F現代資本主義 と労働 者階級 』、岩波書店、 1982、 p216). わが国の平均月間給与額 (8 2年 )は表1 5の とお りで、 電気 ・ガス ・水道業が1番高 く384,010円、最 も低 いの が 卸完 ・小 売 業 で
図15. 名 目賃金 ・消費者物価 ・実質賃金の推移 1960 65 70 75 80 82 表15.産業大分類、平均月間現 金給 与額 (規模30人以上)単位 :円 電気.ガス水道金融保険 運輸通信 サービス業 建設業 製造業 卸売./小売業 1960 36,178 32,191 28,336 - 21,213 22,630 23,139 65 59.627 50,486 47,164 - 39,439 36,106 36.464 70 106,648 85,260 84,825 82,856 71,727 71,447 68,647 75 241,039 206,979 198,669 202,465 158,045 163,729 164,958 78 304,201 287,765 260,770 263,503 218,758 214,575 214,887 80 337,047 324,108 281,573 287,153 251,579 244,571 239,478 出所 :労働省 「毎月勤 労統計調 査」 251,989円 とな ってい る。戦後、 日本の労働者の絶対賃金 は労働運動の展開 と あいまって新 しい戦後的水 準に引 き上 げ られて きた。 しか し、戦後 日本資本主 義の高蓄積の盾の半面は、 きわめて高 い剰余価値率 (搾取率 )と利潤率が維持 され、相対賃金が他の発達 した資本主 義諸国に比べてかな り低 い水準に抑 えら れて きた。 図1 6では、 日本の実労働時間 当た りの貸金 を欧米諸国 と比較 して いるが、 1981年 で、 日本 を1 00とした場合、 アメ リカは165.5、西 ドイツ は148.7と高い数字 を表 わ してい る。 一
51-図17.各国別実労働時間当た り賃金 (製造業、生産労働者 ) 100 200 日本 (1975) 日本 (1978) 日
太
(1981) 出所F 1983年版労働統計要覧 』 相対的賃金 (価値生産物 と比較 した賃金の高 さ )を近似的に表わす ものに労 働分配率がある。それ は、付加価値のなかにおける賃金の割合を示 してお り、 政府統計 による労働分配率 は賃金 を粗付加価値で割 った ものだが、粗付加価値 が価値生産物 を表わ しているわけではない。労働分配率 とい う概念は、生産物 を資本側 と労働側が分配 しあ うとい う理論に もとづ き、賞金 を価値生産物の分 配 とみな しているが、労働成果である価値生産物 は資本側 と労働側 に分配 され るのではない。 それはすべて資本側に帰属 し、労働 者への賃金は労働成果の配 分 としてではな く、労働力の価値 (労働力の再生産費 )によって決 ま り、そう して支払われ るのである。 だか ら、賃金 を価値生産物の分配 とみなす労働分配 率の考 え方 は誤 ってい るし、 それは資本主義的搾取関係 をおおい隠す ものであ-る (『大月経済学辞典
』「
「労働分配率」 )。 わが国では労働分配率 を計算す る際、賃金 として現金給与額、人件費、労務 費のいずれを用 いるか、付加価値 として純付加価値、粗付加価値 のいずれを用 いるか等によって数字 はまちまちにな る。図18は製造業における労働分配率 の推移を表わ しているが、 75年には第一次石油危機の影響 で上昇 し、経済危 機 をやや もち直 した7 9年 には低 下している。 そ して、第二次石油危機 後の81 年になると再び上昇 している。 このよ うに、労働分配率は景気上昇期 には低 下 し、景気 F降期には上昇する。図18の製造業主要企業における労働分配率 は 70年代か ら8 2年にかけて4 0%以上になっているが、大月経済学辞典 によ ると ( 「労働分配率」 )わが国の労働分配率 は、 6 0年代か ら7 0年代 にかけ ての高度成長期 において3 0%台に安定 しているということだ。 これは欧米諸 国の5 0- 60%台に比べ ると極端 に低 い数字であ り、わが国の低賃金 と搾取 の列外的激 しさを端的に表 わしている。図1 9によ ると、高度成長期、 および 第一次石油危機以後 「長期的不況」 におちいった7 5年、そのいずれの時期を とってみて も、わが国の労働分配率 は主要資本主義国のなかで最低の レベルに ある。労働分配率 の低 さ、相対賃金の低 さは、労働時間の長 さ、労働生産性 と 労働強度の高 さによって条件づけ られた もの である。 図18.主要企業 (製造業 )における労働分配率の推移 60 5() 40 30 20 10 0//a 労働分配率 .-人件費 ÷付加経値額 1970 74 75 76 77 78 79 80 81 82 出所 :日本銀行 「主要企業経営分析」
1 53-わが国 は、絶対的賃金、相対的賃金 とも他の先進資本主義諸国に比べて、か な り低 い水準 にあ るが、国内で も、事業所規模別、男女別、常用労働者 とパー ト労働者の間に大 きな格差が ある。 まず、製造業の事業所規模別で 見ると (図 19)、 5 00人以上の場合、月間給与額が82年で328,964円だが、 5-29人規模では186,614円 と500人以上の57%となっている。次に男女別 では、 8 1年で男性が328,001円に対 し、女性は174,895円で男性の53.3 % しか支払 われていない (表 16)。男女の賃金格差 を欧米諸国 と比較 した場 令 (図21)、 日本 は最 も低 く、 オース トラ リアでは930/Oと、男女の差がほ とん どな くな りつつある。わが国の女性賃金問題は、たんに女性雇用者が増大 した り、学歴が向上 した りとい う条件 だけでは自然的に解消 していかない根深 い貸金構造 を もっているが、 これについては第 Ⅲ章で触れ る。 Eil 図20.事業所規模別 月間現金給与額 (製造業 ) 0二+20 40 60 80 100% 28,690 円 1963 66 69 71 75 出所 :戸木田嘉久 『現代資本主義 と 1982 労働者階級 』岩波書店 p217 出所 :労働省 「毎
月
勤労統
計
調査 」表16男女 の平均 月間給与額 図21.各 国の 男女 賃金格差 (非農業 ) 単位 :円 男性- 100 年度 男 性 女 性 男するの賃金性に対地 1960 29.027 12,414 42.8 65 46,571 22,275 47.8 70 89.934 45,801 50.9 75204,295 114,067 55.8 78 271,121 152,420 56.2 80 309,218 166,397 53.8 81 328,001 174,895 53.3 (1978) オース ト ラ リ ア フランス イギリス 西 ドイツ アメ・リカ (事業所規模30人以上 ) 出所 :労働省 「毎月勤労 統計調査
」
日 本 男性- 100に対 す る女性 の賃 金 0 20 40 60 80 100 資料 :昭和56年版 『婦 人労働 の実情 』 図22.女性常用労 働者 と女性パ ー ト労働者の 賃金格差 (時 間 あた り所 定 内給与 ) 常用労働者- 100に対 す るパ ー ト労働者の賃金 パ ー トの賃金 は1時間 あた り524円 女 性 管 用 労働 者女
性
働者ノ労ートヾ8
0
.7 78.47
8
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5 76.2 76.2 74.7 1977 77 78 79 80 81 82 年 出所 :労働省 「賃金構造 基本統計調査」
- 55-賃金格差 は男女間だけでな く、常用労働者 とパー ト労働者の間に もみ られ る。 図22は、女性常用労働者 と女性パー ト労働者の賃金格差 を表わ しているが、 82年 の場合、パ ー ト労働者は常用労働者の 74.70/Oの賃金しか支払われてお らず常用労働者 に対す るパー ト労働者の賃金は年々少な くなっている。パー ト は未組織のため、春闘に見合 う賃金が確保 されず、 82年 において、民間企業 の賃上げ伸 び率が 7.0%だったの に対 し、パ ー トは 4.2% と低 く,常用労働者 との格差 は開 く一方である. オース トラ リアのパー ト労働者は 1週 20時間ま でほ常用労働者 と同一賃率 で、 これ を超 える場合は常用労働者よ り高 くなる。 これは病気給付や老齢年金の欠如 を代償す るためである (竹中点実子 「婦人労 働者の賃金問題」大羽綾子他編 F婦 人労働 』、盛紀書房、 1969、p128 )。 男女格査の縮小やパー ト労働者への この ような対処 をみ ると、 オース トラ リア ではいかに人間が大切にされてそるかがわか る。 日本 とはまった く対照的であ る。 パー トタイマーにつ い て は Ⅰ章 で も触 れ た が 、 人 減 ら し合 f甲化 を実 施 し少 数 精鋭 型経営 をめ ざす企業にとってパ ー トタイマーは有効的であ り、 壬戦力化する企業 も増 えている。パ ー トタイマーの場合は1時間当た りの賃金 が低 いだけでな く、年 次有給休暇について も、昇給 ・賃上 げについて も、 1時 金や退職金の支払いについて も、常用労働者 と厳密に区別 されている。 このよ うに、パ ー ト労働者 は常用労働者が当然の権利 として法律上認め られている権 利 を与 え られていないのであるが、 それに もかかわ らず、 1日の労働時間や作 業内容は常用労働者 とほ とん ど変 わ らないケースが多い (広田寿 子 F現代女子 労働の研究 』、労働教育センター、 1979、p791。 とくに最近はパー トの常勤 化がみ られ、パー トの賃金体系に職務 ・職能給 をもちこみ、格差 をつけること によって競争 させ、戦力化の テコとして能力主義労務管理が強化 されてい る。 また、今 日の減量経営 と技術革新の もとで雇用の不安定性は増大 し、パー トの 無権利状態は さらに厳 しくな ってい るが、それで もパー トの勤続年数は伸 びて お りパ ー トを希望す る主婦 は増大 してい る。 そして、 このような膨大な数のパ ー ト就業希望者の存在が資本にとっては景気の調節弁 となるのである (日本婦 人団体連合会編 『婦 人白書、 1983年版 J、草土文化、 p191)Oパー トタイム
制の導入 についてい えば、フルタイマーとパー トタイマーに分割 して管理す る ことが、いまや男女 を含 めた全労働者の搾取 を完成 す るための効果的な手段 と な りつつあることに注目すべ きであろう (広 田寿子、前掲書、p81)0 以上のよ うに、わが国の賃金は欧米諸国の絶対的水準に到達 していない うえ に、男性 と女性、大企業 と中小零細企業、常用労働者 とパー ト労働者な どの差 別重層構造がつ くり出 され、高率な搾取が行なわれているので
、GNP
が世界 2位で も相対貸金は低 くなってい るのである。 労働者の状態 を、雇用、労働時間、賃金の面か ら見て きたが、低成長時代の もと、減量経営、合理化によ り雇用 は減少 し、一方では劣悪な労働条件 を強い られる不安定就労者層がつ くり出 され るなど、労働者間の重層構造 を利用 して 資本側は不況 をの りきろ うとしてい る。 わが国の労働者の実態は依然 として、 長時間低賃金の形か ら脱け きれてお らず\ 夷の人間 らしい生活が保障 されてい ないよ うだ。人間がいかに粗末に扱 われているかは、パ ー トタイマーの待遇状 態を見ると一目瞭然であるo労働者の このよ うな状態は、国の労働政策 と労使 協調的な労働運動な どによって もた らされた ものであるが、わが国ではどのよ うな労働政策が展開 されて きたのだろ うか。次節ではそれをと りあげる。4
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積樋的労働政策 資本主義における労働政策は、労働力商品 を対象 とし、市場法則に もとづ き 労働市場の機能を保障す る国家の管理方針 および手段である。独 占資本主義段 階では、独占資本は熟練労働者や若年労働者な ど、その蓄積欲求 に応 じた労働 力を独占するにいた るが、 さらに国家独占資本主義段階になると、国家が独占 体の欲求にしたが って労働力を創 出、維持、確保す るための労働力政策が展開 される (F大月経済学辞典』
「労働政策」 )。 第二次世界大戦後、資本主義国家はその経済的社会的矛盾 を克服す るために、 完 全雇用 を政策の主要課題 と!ノた。完全雇用政策の起点は1929年の世界恐慌 にさかのぼるが、 この時期か ら、失業はたんにこれまでの摩擦的 ・循環的な も のにとどまらず、構造的な もの にな りつつあったO失業問題 は資本主義体制の 危機 を誘発す るとい う認識 によ り、回避 しなければな らない大 きな社会問題と - 5 7-なっていた。 そして、第二次 世界大戦の巨大な軍需 によ り完 全雇用は実現 され たが、大戦後は軍事化 とい う手段ではな く、はかの方法でそれを達成 しなけれ ばな らず、体制危機 に もとづ く大量の失業を未然に防 ぐため、失業者に対する 事前政策 としての完 全雇用 をどのよ うに展開 してい くかが課題 とな った。 こう して、先進諸国は こぞって完 全雇用のモデル を、労働力需要拡大のための資本 蓄積拡大に求 め、戦後の岸済成長政策 をお し進めることにな った。 しか し、成 長政策 による完 全雇用の実現 とは、 見方 を変 えれば労働力の不足か ら賃金騰貴 がおこる可能性 も含んでお り、 その ことが資本蓄積の阻害条件 に もな りうるの で、賃金騰貴 を抑 えなが ら追加労働力を創 出す ることが同時課題 とされた (竹 中恵美子編 F女子労働論 』、有斐閣、 1983、p252)。 資本主義の持続的発展 を支えるひとつの重要な手段 として、 1960年代に積 極的労働力政策が国際的に提唱 された。 その具体的内容は、(丑失業や救済政策 の制限、(卦斜陽かつ低生産性分野 における就業人口の強制的減少 と人的資源の 改良、③ 限界労働力の開発、(彰職業訓練 および再訓練 を含む人的資源の改良な どで、それ らは経済成長 を促 進 しインフレを抑制するための方策 として期待 さ れた (江口英一他編 『現代の労働政策 山 大月書店、 1981、p13)Oわが国の 場合、まず炭鉱労働者 と第一次産業 (農業 )従事者を強制的に減少 させる政帯 が とられた。 アメ リカによ り、戦後 日本のエネルギー源が石炭か ら石油へ転換 させ られた結果、炭鉱労働者の大量失業が発生 したが、失業者の生活を保障す る 「失業保険法」や、能力に応 じて適 当な職業 に就 く機会を与 える 「職業安定 法」な どをテコとして、炭鉱 か ら排出 された失業者 を発展的な他の産業へ再就 職 させ るよ うに仕向けていった。 一方、農業従事者の賃労働者化 も進み、1955 年の就業者総数に占め る第一次産 業従事者の割合は4 0%余 りであったが、65 年には25%を下回 った。 このよ うな、労働者の低生産性分野か らの急速な移動 は、労働力流動化政策 によって裏づ け られた ものであ り、 ドルの援助 と国家独占資本主義を支柱 とす る重化学工業の発展、農業基本法 (6 1年 )や中小企業法 (6 3年 )に もとづ く産業構造の改善政策、な どと関連 して行なわれた。それによ り、近代経済へ の過渡期 における日本経済の高い生産性が もた らされ ることになるのである。
このよ うに、高度成長過程 は膨大な第二次 ・第三次産業の労働力需要 を発生 さ せ ると同時に、地域間 ・産業間 ・職業間の大規模 な労働移動 を必要 としたが、 この条件が満た されなか った とすれば、高度経済成長はあ りえなかっただろう。 この条件 を満た したのは、敗戦後 の 「民主化」政策によって発生 した、伝統に 縛 られていない とい う意味での流動性の高い膨大な過剰人口の存在 だった。 こ うして、戦後わが国のいわゆる労働力流動化政策は、農業政策 を基軸 とした大 量の過剰人口創 出を基底 として、独 占資本の蓄積政策 に重要な役割 を果た した。 限界労働力の開発は、若年女性 を短期的に活用 し、家庭の主婦 を労働力 とし てか り出 した。高度経済成長の過程 で導入 された新 しい技術体系は、古い熟練 を解体 し、特別な技術、判断力、筋力を必 要 としない,ただ轍密 さや忍耐力だ けが求め られ る単純労働分野が急速 に拡大 した。生産工程部門での機械化 ・自 動化 をすすめた製造業分野では、金属 ・機械産業や電 気機器産業 などの独占的 大企業が、競 って若年女性労働者 を雇用 した。また、事務労働部門での機械導 入 も行なわれ、単純事務労働分野 の割合 を高 めた. このよ うな単純労働分野が 拡大すればす るほ ど、資本にとっては、単純労働にふ さわ しい低賃金労働力の 確保が利潤増大の決め手になる。 しか も、設備投資に伴 な う減価償却費や利子 負担の増加を利潤 にしわ寄せ しないためには、低賃金労働力の比率 を高 めるの が最 もてっとりばやい方法 だった。労働集約的な単純労働分野 における資本の 労働力需要が低賃金労働力である女性 に集中 したのはそのためである (広田寿 子、前掲書、 p157,159)。そ して、高い熟練 を要 しない単調な仕事は、男性 よ りも忍耐力のある女性 に適 しているとみなす 「女性単調労働者論」の神話が つ くられ、苦痛な単純 くり返 しの 下働 き労働は男性よ りも女性 に押 しつけ られ ている。このよ うにして独占的大企業 は、単調で密度の高 い労働に耐 えられる、 若い強 じんな低賃金労働力 を雇開 し、短期的 に入れ替 えつつ労働強化 をはかっ た。高度成長期 における女性労働政策 は、 まず使い捨て政策、短期回転政策 と してあ らわれたのである。 新 しい技術的変化 に適合する若年低賃金労働者の大量雇用に伴 って、企業は、 年功賃金の もとで相対的 に賃金の高い中高年労働者を解雇ないしは退職 させ る 万策 をとった。反発 された中高年労働者の多 くは下向移動 し、低賃金不安定労 59
-働者 とな り、 世帯主労-働者の賃金収入 は縮小 した0-万、高度成長 は労-働者の 生活様式 を大 きく,変 え、消費需要 を著 しく高めつつ物価高 とインフレが進行 し たので、労働者の家計はます ます圧迫 された。 そして、消費支出 と賃金収入の 帝離は、労働者家族の多就業化-労働力の価値分割 を、新たな規模でお し進め ずにはおかなか った。 こうして、家庭の主婦が労働力 としてか り出 されて くる ので あるが、それは男性労働者の労働条件の水準 を切 り下げることに もなるの であった。 戦後過程 は資本の投 資市場 を拡大す るために、 これまで家庭で行なわれてい た諸々の私的労働分野 を、資本主義企業 にとり込 むことによって、不断に私的 労働の資本主義的 ・商品 ・サー ビス化をはか って きた。そ して、一方では家庭 内での余暇が創出 され、他方では資本 による商品 ・サー ビスの消費が社会的に 強制 され、主婦の賃労働化の条件がつ くり出 されたのである「しか し、主婦の 賃労働化が進んだとい って も家事や育児の負担か ら解放 されたわけではな く、 その負担 を背負 ったまま働か ざるをえない状況におかれ、主婦 は、家事や育児 の負担 の度合 と家計補助労働の必要性 に応 じて、常勤の雇用労働者、パ ー トタ イマー、および家 内労働者の三つの形態 をとらなければな らなかった。ここに、 女性労働者が、若年 ・未婚時には低賃金短期的消耗労働者 として搾取 され、結 婚後は家庭 に入 り出産 や育児の後、再 び今度 は低賃金不安定雇用労働者 として 活用 され るとい う軌道が しかれたのである (木下武男 「婦人労働政策の展開 と 特質」、江口英一他編、前掲書、 p178)0 女性雇用の増大 と変化 を もた らした要因は、経済成長 によ る生産力の発展、 産業規模 に伴 う若年労働力不足、技術革新による単調労働者の増大、 とい う需 要側か らの ものと、職業適応力の向上、家計補助の必要性の増大、家事労働の 軽減、 といった供給側 の条件があげ られ るが、なかで も 「女性の意識の変化」 は 見逃せな い。戦後、 「民主化」の一環 としての女性解放によ り、形式的には 憲法 14条で男女平等が うたわれ、参政権 も樺得 され、よ うや く一個の人間と して認 め られ るよ うになって、女性の生活環境が変化 してい くなかで、社会進 出をめざす女性の意向 と、限界労働力の開発 を進めようとする政府の積極的労 働力政策が ピタ リと一致 して.大量の女性労働者が労働市場へ登場 して きたの
である。 きて、積極的労働力政策 は、労働細合運動が発展 しているフランスな どでは 必ず しも独占資本の意図が貫徹せず、協調主義的な労働相合指導部 をもつ西 ド イツで最 も典型的な発展 をとげている。わが国の場合、アメ リカのマンパ ワー・ ポ リシー (労働力政帯 )にな らい、 6 3年 には 「人的能力開発」の政策が提唱 された。女性労働力の活用が政策上明確に打 ち出 され たの もこの時期で、岸済 審議会答申では、若年女性労働力を積極的 に活用す るよ う強調 され、労働力供 給側では、 60年代 における家計費の上昇 によって結婚後 も離職 しない女性が 増 えて きた。それに対 して企業 は、若年定年制 や結婚 ・出産退職制 を強行 し長 期就業の女性労働力に反発 した。 しか し、 この時期の政府の答申で は、将来は 既婚者の再雇用 を含め広範な活用が期待 されているとして、育児期間 を終 えた 女性の能力の有効的利用 を提唱 してい るのである。
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雇用対策基本計画 と特徴 積極的労働政策は、 6 6年に制定 された雇用対筆法を画期 にして本格的 に展 開 される.雇用対策法は、国民経済の均衡 ある発展 と完 全雇用の達成 を目的と してお り、 6 7年以降、四次 に渡 って雇 用対策基本計画が策定 され、その とき どきの経済的条件 に対応 して積極的労働力政策の指標が示 されたO完 全雇用の 達成とい う課題 は、政府の成長政策 に支えられた技術革新投資をテコとする経 済成長によってほぼ実現 され るが、完 全雇用 にむけての過程は同時 に、大企業 における終身雇用慣行の形成 をつ うじて、企業社会の安定 を支える条件が形成 されてい く渦程で もあった (下山 ・兵藤 「日本的労使関係 と労働運動」
『講座 今 日の日本資本主義4 』 p265)0 第一次雇用対策計画の期間中( 1967- 71)、農業従事者 は約2 5 0万減 少する反面、重化学工業における就業者は急激に増大 し、 また製造業の就業者 中に占める割合 も6割弱に高 まって、雇用対筆法はそれな りの成果 をあげてい た。 しか し、中高年齢者の就業促進 とい った面の施策は きわめてなお ざりであ ったO また第一次計画では、女性労働者が家庭責任 を円滑に果たす ことがで き るよ うにパー トタイム雇用制の導入 と、家庭外 で働 くことが困難な女性 には家-61-内労働対策 を、それぞれ振起 し、中高年女性の低賃金不安定労働者 としての活 用 を前面に押 し出 してい るが、パー トタイマーの雇用形態について も、政策的 にはほ とん ど放置 されたままだった。 第二次計画(71-76)では、 「新 しい地域雇用対策の推進」が強げ られ、 農村地域へ の工業導入促進法の推進がはか られている。 またこの計画では、近 代的合理的な労使関係の確立 と、企業 レベルおよび産業 レベルにおける自主的 な労使協議の促進 を主張 してい る。 しか し、 70年代半 ば、経済危機の深化に 直面して計画は破綻 した。顕在化 した経済危機にたいして政府 ・独占資本が進 めて きた基本方向は、第-に国家財政への独 占体寄生の強化であ り、第二には 過剰資本の整理 と資本の集中、全産業 にわた る徹底 した 「減量経営」であった。 人ペ らし 「合理化」がお し進 められ るなかで、 まっ先に削減の対象 となったの は女性パー トタイマーで、次に常用女性労働者 だったo この ように、女性労働 者は景気諏整的役割 を担わ され、家庭にお し戻す ことによ り失業階蔽の手段 と して も利用 された。 戦後の成長政帯 は、 それ 自体ひとつの矛盾 をは らんでお り、その ことは ドル シ ョックや石油危機等 に端的 に示 されているが、高度成長か ら低成長への転換 においては、女性労働 を再 び家庭内に遺流 させる古典的な方法が有効 に活用 さ れた。 しか し、不況 と物価騰貴 のなかで潜在的失業群 に転化 された主婦層 も、 一時的 には景気調節弁 として機能 を果たす ことがで きて も恒久的に家庭 に封 じ 込 めることは不可能であった (竹中恵美子編、前掲考、 p254)。 そこで資本 は、 こうした女性労働力 を主戦力化す ることによって不況に対応すべ く、 「近 代的パ ー トタイム雇用制度」 を提唱 した (本稿、plO4、p177参照 )。 これは 若年労働力不足 を補 う一時的労働力ではな く、また単な る景気調節の安全弁と してで もな く、企業の常態的な労働者 として雇 い入れ ることを意味する。 した がって、パ ー トタイマーといって も労働時間や仕事の内容 における差異はほと ん どないに もかかわ らず、常用労働 者に保障 されている権利 (年次有給休暇や 育児休暇 など )を持つ ことはで きないのである。この よ うに 「近代的パ ー トタ イム制度」 は、労働基準法の労働 者保護規定 をは り崩す ものであるが、パー ト タイマーを希望する女性は多 く、その活用 は拡 大 されつつ ある。 一方、女性の
能力開発政策の もとで、女性労働者の男性 との競争 あるいは代替が進め られて いるが、 これは基本的には人件費の節約がね らいで、女性 は若い うちにやめる 人が多いとい うことを利用 して行なわれている
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「能力開発」 といって も、男 性労働者なみの労働強化 と長時間労働 に耐 えるために教 育 ・訓練 を行 なお うと するもので、 そのい きつ くところは労働基準法の改悪なのである (木下武男、 「婦人労働政策の展開 と特質」前掲書、 p183)0 戦後資本主義の内的諸矛盾が激化 してお きた経済危機 によ り、第二次雇用対 策計画は再編を余儀な くされ、積極的労働力政策の基礎 が動揺す るなかで、政 府は74年に 「雇用保険法」 を制定 し、それを中核にしなが ら新 たな展開 を推 進 していった。雇用保険法 は、失業保険法 (1947年制定 )の相次 ぐ改悪の到 達点 といえる。失業保険は失業者の生活保障を目的 としてお り、第一次大戦後 の全般的危機の もとで各国 に普及 したが、 わが国では第二次大戦後 まで成立 さ せることはで きなかった。戦後の労働運動 を通 してよ うや く創設 されたが、そ の後何度か改 められ、 6 0- 7 0年代の産業構造の再編合理化 と低賃金労働力 供給機構の再編成 に伴い、 7 5年 に廃止 きれて雇用保険法が これ にかわった。 雇用保険法は、生活の不安か ら条件が悪 くて も再就職 を急がせ るよ うなや り方 で就職 を促進 し、雇用調整 を助長 している。 それ は、失業保障の-環 としての 失業保険制度 を廃止 し、労働者の失業保障の権利 を根本的に否定 しよ うとする ものであった。 その結果、失業給付は全体 として削減 される反面、雇用改善事 業や能力開発事業、雇用安定資金制度など、事業主を保善 し助長する政策が と られ、大企業を中心 とした一時帰 休や人員削減、配置転換 な どの合理化が促進 された。 このように、雇用保険制度は積極的労働力政策の中核 として、雇用 を 削減 し、相対的過剰人口の創 出を準備 ・促進す る政策 手段 となっている。 第四次雇用対策計画(79- 85)は、安定成長 下において完 全雇用 を実施す るとともに、高齢化社会にむけての準備 を課題に掲 げている。現在、 45- 64 歳の中高年労働者 を雇い入れた事業主にたい して高率の貸金助成 を行な うな ど して、中高年齢者雇用開発が実施 されてい る。 これは、国の雇用対策が労働力 流動化の促進にはな りえて も雇用の全体的拡大にはつなが らなか ったの で、民 間の活力 に依存 して雇用機会の拡大創出をはかろうとす るものである0 - 63-今 日におけるわが国の労働力政策 は、完 全雇用の地固め (第一次 )、ゆとり のある充実 した職業生活 (第二次 )、成長率低 下の もとでインフレな き雇用 (第三次 )、高齢化社会 にむけての完 全雇用 (第四次 )な どの雇用対策計画に み られ るよ うに、失業の予防、失業者の再就職の促進、雇用機会の増大、 とい った観点か ら種々の施策が展開 されてい るが、 これ らはいずれ も、雇用の場を 民間企業 に求 めるとい う考 え方に沿 って行 なわれてお り、 そのための援助措置 として各種の給付金の支給 がな されている。このよ うな、 「事業主 に対す る各 種の助成」、 「企業の負担軽減」措置 を中心に した雇用失業対策は、資本の雇 用調整 を下支 えす る公的な手段であ り、失業の予防、雇用の安定 とい う形 をと りなが ら、雇用不安 と不安定就業労働者 を拡大 しているのである。このよ うに、 労働 者よ りも事業主 を優先す るわが国の労働力政策 は、雇用対帯 も労働権保障 もな されない離職者対策 に堕 し、生産的な完 全雇用 とはほ ど遠い ものになって いる。 そ して、 「賃 ヒげか雇用か」、 「福祉か雇用か」 とい う独占の思想攻勢 と結 びついた今日の雇用対帯が及ぼす社会的影響は、たんに雇用 ・失業情勢や 賃金問題に関す る分野 にとどま らず、社会諸階級間の力関係 全体に及ぶ もの と なってい る (『大月経済学辞典 』、 「雇用対策」 )0 さい ごに、 「人貸 し会社」や 「代行産業」 と呼ばれ、労働者の社会的地位の 低 下をもた らしている ¶労働者派遣事業 ''について触れよ う。 第二次世界大戦前の 日本の底辺労働者の悲惨 な教訓 か ら、職業安定法第4 4 条では労働者供給事業 を禁止 している。 だが、 いま再 び、この労働者供給事業 の復活 を労働省 は検討 しは じめてい る。労働省職業安定局長の諮問機関が8 0 年4月 に、職安法の 見直 しを求 めた 「提言」を行 っているが、これによると、 6 0年代の高度経済成長期の産業構造高度化の過程でお きた労働力需給の多様 化 に対処 しきれな くなった として、廿職業安定機関の体制強化、②民営職業紹 介業の 見直 し、③労働者派遣事業の制度化 (創設 )、などをあげている
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「提 言」のなかで注 目され るのは、現行職安法で禁 止されている 「労働者係給事業」 を 「労働者派遣事業」 として公認 ・制度化 しよ うとい う点である (剣持-巳、 『マイコン革命 と労働の未来 』、 日本評論社、1983、p232- 233 )。労働者 供給事業の制度化は雇用機会の確保 を、求職者 自身の 自己努力に依存 させ る万向へ職安行政 を もってい き、労働力需給調整 を公的機関 としての職安か ら切 り 離 し、民間の営利事業化す ることによ り、行政責任 を放棄 しよ うとす る もので ある。 だが、法律によって制度化す る以前に、労働者供給事業は存在 して しま っている。臨時 ・日雇 い ・アルバイ トとして大量 に集めた労働者 を他企業 に派 遣 し、派遣先の業務 に従事 させ るとい う労働者派遣会社は、今 日、警備業、事 務処理請負業、情報サー ビス業、ソフ トウェア産業な どさまざまな分野で広 ま っている。一方、派遣 されて きた労働者を経営合理化の一環 として積極的 に導 入する企業 も広範網に渡っている.労働者供給事業が制度化 されれば、企業に とっては業務にかかわ りのない範囲だけを常用雇用すればよ く、他の部分 は労 働者派遣事業の労働者を活用すればすんでしま う。 これは資本にとって、不安 定雇用労働者活用の新たな段 階 といえるよ うだ。 労働者保護の観点か ら今必要な ことは、公的規制 をい っそう強化す ることで ある。 ところが、労働者か らは 「労働力需給関係の実憩」に法 と制度 を合 わせ ようとす る提案が出されてお り、 その意味す るところは、労働市場における 「雇用」の概念を根本か ら変 え、労働者の 「雇用」 と 「使用」の関係 を別々な 支配管押 下にお き、資本 にとって便利な機動的労働者をつ くり出そ うとす るこ とにあるよ うだO低賃金で、 しか も無権利な状態で広範囲に利用 しうる 「労働 力需給 システム」が確立 きれようとしている。労働者自身の力量 も低 く、行政 面での規制 も心 もとない現実か らすれば、派遣労働者 を頁に保障 してい く保障 は何 もない。 労働者は自分の適性、能力 にふ さわ しい職業 を求 め、生活 を維持す るに足る 労働条件 での就職 を希望 し、また、失業すればその間の生活保障を要求す る当 然の権利 を もっている。 それは、憲法の、健康で文化的な生活 を営 む権利 (25 秦 )、勤労の権利 (2 7条 )、職業選択の 自由 (2 2条 )に もとづ いてい る。 このよ うな労働者の権利 を具体的に保 障す るのが、国の職業安定行政 であ り、 職業紹介事業 は、労働者保護の 見地か ら原則 として国の機関が行なわなければ な らないのである。 フランスでは、むしろ、派遣労働者を取 り扱 う国営職業紹 介機関の設置が提言 されているのに、 日本では、 「公共職業安定所ではな じま ない」の一言で、民間の派遣事業や職業紹介が企業の利潤追求に きし出 されよ - 6
5-うとしてい る。労働者派遣事業の制度化 は、すべての労働者の雇用 ・労働条件 を直接左右す るものであ り、 「労働力需給 システ ムのあ り方 についての挺言」 が公共職業安定所の機能変質 と結 びついて出 されてい ることは、国民の雇用保 障の根幹に関わ る問題 となっている (江口英一他編、前掲書、p132)0 労働者よ りも事業主を優先 し助長する雇用対策が とられているなかで、パー トタイマーなどの不安定就労者は増加傾向にあ り、 さらに中間搾取 をす る労働 者派遣会社が出現するな ど、わが国の労働者は、 ますます無権利状態にお ちい りつつある。 第 Ⅱ 章 女 性 と労 働 本章では、 日本の労働者階級の底辺に位置づ けられた女性労働者の問題をと りあげる。女性の地位が低 下して男社会が形成 されていった歴史的背景か ら、 女性が背負わ されるよ うになった諸問題 をピックア ップし、資本主義における 矛盾 を明 らか にしてい く。 女性 と労働問題 を考 えるとき、男女平等や母性保護、福祉などの、いわゆる 「女性問題」 を避 けて通 ることはで きない.男性 と労働問題は、一般 に失業問 題 として労働者全体の テーマに還元 され、公共部門の政帯のあ り方 と結びつい てい く。 しか し、女性労働者が抱 えてい る 家 事 労 働の負担や経済的 自立の困 難性、労働権 が確立 されていないことな どの問題 は、根強い性別分業意識が資 本側に利用 され ることか ら生 じてお り、 それ らは家庭内の個人的問題だとして す りか え られ,政府が関知 する可能性は少な く、社 会化 されに くい状況にある。 マルクス経済学 において も、資本主義社会の基礎 は低賃金労働 にあ り、男女を 問わず彼 らの直接的搾取 にある とい うことは明 らかにされて きたが、賃金な き 労働者の搾取 については明 らかにされなか った。 た とえば、夫が勤めに出て、 妻が農業や家内労働またはパー ト労働者 として働 く場合、彼女た ちは経済的に
独立 してお らず、その労働 は夫 の低賃金 を支 える家計補助労働 として間接的に 搾取 され ることになる。 しか し、 このよ うな問題はほとん ど注 目きれない。 女性 と労働問題を考 えると、人間 にとって労働 とは何 なのか、 その意義やあ り方が導 き出 されて くる。なぜなら、女性労働者がこの矛盾 した社会状況の も とで提起する問題は、人間の労働が本来 ありうるべ き姿 を含んでいるか らだ。 女性労働問題 を人間労働の総体か ら考 え直 してみ るな らば、非人間化 されつつ ある男性労働 に対す る大 きな警告 とな りうる。その意 味において、女性労働問 題の提起する問題の解決 こそが、労働の人間化への第一歩なのである。 1. 女性労働者の地位 男女差別は どこか ら乗たか
-GNP
が 自由世界第2
位 とな り経済大国 といわれる日本 だが、労働者の地位 は他の先進資本主義国 と比べ るとかな り低い。 それは、企業 ごとに分断 された 労働市場 で過剰な労働力 を背景 として、需要側が優位 に立っているとい うこと と、 日本の労働者が、戦後、農漁村、 旧中間層か ら創出 され、出稼型 とい う特 有な性格 をもつ 「初代労働者」 で、欧米の幾世代 に もわたる 「生まれなが らの 労働者」ではない とい う歴史的状況 によ るものである。わが国では相対的過剰 人口が基盤 となって、少数の独占的大企業 を鳳 点に、多数の中小企業 と、無数 の下請零細企業や不安定就労者を底辺 に置 く '-ピラ ミッ ド型重層構造 "が築か れてきた。 ピラ ミッ ド型の中にい る日本の労働者は団結力 も弱 い。欧米諸国の 労働者たちが、同一産業 に働 く労働者を熟練 ・不熟練 または業種の別な く、一 つの組合に細織 する 「産業別労働細合」 を形成 しているのに対 し、 日本では、 企業単位に組織 され る 「企業別細合」 とい う特異な形態が とられているか らで ある。 これは、労働者の団結力の範囲が狭 く、企業意識に とらわれて経営者に 従属 させ られやすいとい う欠点 を もつ。石油危機後、減量経営が行 なわれたと き労働細合は、 「企業あっての労働者」 とい う考 え方か ら人減 らし合理化 を進 めていった。 また、産業用 ロボッ トの導入に対 し、欧米諸国では労働者とちの 強い抵抗がみ られたが、 日本ではそ うした抵抗 もほとん どな されず、世界 一の ロボッ ト王国 とな っている。 -67-社会的地位 も低 く、団結力 も弱い労働者た ちが構成する ピラ ミッ ドの、底辺 部分に女性労働者は置かれている。 82年の雇用者総数は4,098万人、 その う ち女性 は1,418万人で約3 4%を占め るが、現在の 日本では、女性はまだ一人 前の労働者 として 見な されていないO賃金 も男性の半分で、常用労働者で あっ て も事実上男性の垢時労働者 と大差がない。 これは、女性が男性 と異なる性的 機能 を もち、 それが資本主義経済 下においては社会的労働に従事す るうえでハ ンデ ィにな ってい ること、歴史的 に男性よ りも低 い地位 に置かれて きたことな どによるものである。 だか ら、女性労働者の要求 には、労働者 としての経済要 求,権利要求、民主化要求のほかに、男性 との平等要求が加 えられろのである。 新聞の求人広告 は男女差別 を端的にあ らわ している (資料1参照 )。 また、 ILO(国際労働機関 )がま とめた女性をと りま く現状についての報告 による と、雇用労働人口に占める女性の割合は3分の 1、賃金は男性の2分の 1、労 (資料1 )
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。
「元始、女性は太陽であった。真正の人であった。今、 女性は月である。他 に依 って生 き他の光 によって輝 く病 人のよ うな蒼 白い顔の 月である」 とい う平塚 らいて うの ことばにあ るとお り、原始共同体ではおおむ ね母系社会であったが,これは男性の行 う狩猟よ りも女性の牧畜 ・農耕の収穫 の方が確実だったか らである。 エンゲル スによれば、生産 には生活資料や生産 手段の生産 と、人間 自身の生産すなわち種の繁殖の2種類があ り、この2種類 の生産が歴史の規定要因 になっているが、男性は食料の調達 とともにそれ に必 要な労働手段の調達 に、女性は出産 というその生物的機能の延長 として家事や 衣食住の世話にたず さわ り、こ こに最初の性別分業が現 われて くる (フ ')- ド リヒ ・エンゲルス F家族 ・私有財産 および国家の起源 』大月国民文庫、1954、 p8,207)。 しかし、原始共同体 においては、 この2種類の生産 はともに共同 体的な社会的生産であって、性的差異に もとづ く労働の分割が女性の抑圧 に結 びつ くことはなか ったO それは、 この時代が まだまだ生産力 も低 く、生産手段 も平等分配 されて支配や従属、搾取な どが存在 しなかったか らである。 人々が家族 に定著 し、農耕 ・牧苔が主な仕事 とな り、体力のいる生産用具が -6 9-使われは じめるようにな ると,男性の方が経済的に重要な役割を果たすように な り、そこで母系社会は滅んで家父長制度へ と移行 していった。 そして、労働 生産力の発展か ら私的所有物が蓄積 され、その宮は男性が支配 し、女性の もつ 子供 を産む機能は私的財産 を継手す るための手段 として男性に支配 された。そ れ とともに、女性の労働能力 も人格 も家父長たる男性によって支配 されるよ う になった。つま り、生産手段の共同所有が崩れ私的財産が出現 したことに伴い、 女性は抑圧 され差別 されるよ うになるのである。女性抑圧の存在 しなかった原 始共同休か ら家父長制度への転換を、エンゲルスは 「女性の世界史的敗北」 と 呼んでいるが (エンゲルス、前掲書、p73)、 この転換 とともに、性別分業は 女性抑圧 と結 びついた もの になる。 女性がまだ工場 に引 っぼ り出 されなか った資本主義初期において、男性が行 う社会的労働は価値 を生み出 し【賃金 "(労働力の再生産費、家族の生活資料 の価値 )が支払われた.一万、家事や育児な ど女性が行 う私的労働は、男性の 労働力 を再生産す るために必要不可欠であるが、それは単 に使用価値 しか生み 出 さず間接的 に価値 を生み出す労働であった。社会的生産 と労働力の回復の間 に介在す るこの私的家事労働 は、資本主義においては 「目に見えない労働」 と い う東城にお し込 められて限定 され、社会的には 「女性的な もの」 と規定 され た (イザベル ・ラーギア、 ジ ョン ・デュモ リン 「女性労働の条件の諸局面」、 E ・ザ レッキ ィ-他 r資本主義 ・家族 ・個人生活 J亜紀書房、1980、p222). そして、 マルクス経済学 において も、資太 と商品の論理が支配す る市場の列で 行なわれる労働 として対象外におかれて きた。 男性が行 う社会的労働 (生活資料の生産 )は、人間の生存 を確保 し維持せし めるために不可欠であ り、人間 にとって本源的な活動 をなす ものといえる。人 間は外的環境への働 きかけにおいて、他の人間 と関わ りあい共同で生存権 を確 保 し、 またその活動を通 して自己を鍛 え変革 し、不断に自己の実現をはかるこ とがで きるので、 その意味か らも生活資料の生産 は人間にとって本源的な生産 なのである。 一方、女性が行 う私的労働 (人間その ものの生産 )の活動には、 ひろ く人間の生命や生存を維持するための配膚、たとえば育児や食事の世話な ど多種多様 なサービスを行 う労働が含まれるが、この私的労働による生産 も,
社会的労働による生活資料の生産 と同 じよ うに人間にとって本源的な意味 をも っている。 だが、その理由は、社会的労働が もつ もの とは大 きく異 なる。 それ は、私的労働の基礎 をなす種の繁簡は人間が生み出 したのではないひとつの 自 然的前提であ り、人間の生産 はまさにこの意味で、人間にとって本源的な もの となるか らである。 このよ うに、 「生活 資料の生産」 も 「人間その ものの生産
」
も人間にとっては本源的な意味を もつが、 資本主義経済 において 「人間の生産J
はどのよ うに位置づけ られているのか とい えば、資本が関心 を もつのはただひ とつ、市場における労働力支出すなわち現実の労働 にたい してだけで、労働力 (生 きている人間 )が どのよ うに再生産 され るか とい うことには関与 しないの で、 「人間の生産」は軽視 されている。
「人間の生産」は自律的な物的生産 シ ステムの枠外の世界のいとなみとして、 システムか ら基本的に除外 され、労働 力の直接的再生産領域は 「見えざる労働-J として社会的生産領域か らは除外 さ れてい るのである (竹中恵美子編 『女子労働論 』、有斐閣、1983、p14- 15, p21- 22)0
人間その ものの生産 を 「見えざる労働」 として除外する資本イデオ ロギーは、 女性の後進性が生物的ない しは性的条件のせ いであるとい う神話 をつ くりあげ それを強化 している。た とえば、女性は管理能力や統率力の面で男性 に劣 り、 その労働は補助的性格 を もつ もの として昇進機会がほとんど与 え られない。ま た、現在、公立の普通高校で使 われている F保健体育 』の教科書 (第一学習社 ) には、 「労働 における女性の特性」 と題す る一節で、次のよ うに書 かれている。 「一般に女子は男子に比べ て体力が弱 く、身体の構造や機能 も異 なるが、力 を 必要としない手先の繊細な動作 は優れてい るので、女子の職業 としては軽い平 技的労働が多い。 まT:、 このよ うな労働には くり返 し作業が多 く一般 に高い熟 練を要 しないので、単調 さに対す る耐性が、男子 よ りも優 っている女子 に適 し ている」 。 ¶耐性 けは男女を問わず後天的に訓練 によって獲得 され ろものであ り、その ことは大脳生理学 によって示 されているか ら、 「女子は単調 さに対す る耐性が男子よ り優 っている」 とするこの教科書の文章はまちが っているのだ が、一般 に ¶女性は単調労働者 "とい う認識があることはた しかで ある。 そし て、女性たち自身 もそれに対 して抵抗な く受 け入れている事実 も少なか らずあ ー7
1-る (樋 口恵子編 『あ したの女たちへ 』学傷書房、1977、p65- 66)O ボー グォワ-ルは 『第二の性 』の冒頭で、 「ひとは女に生 まれない。女にな るのだ」 と述べ、男がつ くった現 にまだ男のみが実権 を握 っている男本位の社 会で、女は少女時代か ら男よ り劣 った もの と教 え られつつ、第二の性 として女 にな ることを著わ した。つ ま り、女 はつ くられた ものなのである。 さらに彼女 は、 女にはまず宿命 として生物学的条件が あ りそれに伴 う生理があるが、そう い う雌 としての生理的な現実はただそれだけの ものではない とい う点に着 目し、 女性が もつ性的機能 にはいろいろな意味や価値が与 えられ、 それ こそが女の一 生 に重 くの しかかっていることを指摘 している (ボーグォワール 『第二の性 』 第 4巻、新潮文庫、1959、p243)。女性の生物学的条件は男性よ り劣っている もの として男社会の中で位置づけ られ、その劣っている部分が利用 されて地位 が低め られ、女性 は 't第二の性 "にな るのである。 アメ リカの社会学者アル ビ ン ・トフラー も、 『第三の波 』のなかで男性 と女性の特性について書いている が それによると、男性は子 どもの時か ら将来、相互依存の世界である企業内 の役割 を果 たすよ うに育て られたのに対 し、女性は生 まれた時か ら社会的には かな り孤 立 した出産 ・育児そのほか単調な家事労働 を分担す るようしつけられ た。 そして、夫は直接的な経済活動 にの り出 し、歴史的にみてよ り進んだ形態 の労働 を分担するので未来へ前進 してい くようになるが、妻は家庭 にとどま り 間接的な経済活動 に従事 し、古いお くれた形態の労働 を引 き受 けるので過去に とどまる傾向が強 くな るとい うのである。 このよ うな背景か ら、客観的な男性 に対 し女性は主観た らざるをえなかったとして、 トフラーは女性の特性がつ く られた ものであることを示 してい る (アル ビン ・トフラー 『第三の波 』、 日本 放送出版協会、1980、p69)0 女性 は男性 と異なった性的機能 を もつがゆえに劣 った もの とみな され、女性 に担わ された私的家事労働 は、直接的には価値 を生み出 さないことか ら経済的 に自立で きず、 こうして女性 は男性よ り低 い地位におかれるよ うになったので ある。