Japan Advanced Institute of Science and Technology
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Title 研究インフラから見た公的研究機関の現状と課題(地域
科学技術システム)
Author(s) 山口, 佳和
Citation 年次学術大会講演要旨集, 19: 515-516
Issue Date 2004-10-15
Type Conference Paper
Text version publisher
URL http://hdl.handle.net/10119/7166
Rights
本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す
るものです。This material is posted here with
permission of the Japan Society for Science
Policy and Research Management.
2J04
研究インフラから 見た公的研究機関の 現状と課題
0 山川野口 睡総
W)
1 . はじめに
産業技術総合研究所 ( 以下「 産 総研」という ) は発足して 4 年目に入っており、 第 7
期の中期計画の 最終年度となった。 施設などのインフラは 補正予算を獲得し 拡充され
ているが、 老朽化対策、 耐震性確保など 問題は山積している。 長期的な研究戦略に
基づく計画的なインフラ 整備からはほど 遠い状況にあ る。 本稿では、 こうした現状を 分
析 するとともに、
インフラ整備から 見た公的研究機関の 課題について 考察する。
2. インフラ整備の 現状
インフラ整備を 施設 床 ㎡
800000
面積で見ると、
工業技術
, 20000
瞬時代の
づ
くば統合
移 700000
転
時に大幅に拡大した
, 00000
600000
後、 概ね着実な増加を 続
け 、
さらに産総研発足以
80000 500000
後 急速に拡大し 現在に 400000
至っている ( 図 1 ) 。 現在 60000
の 床面積は、 産 総研 発 300000
40000
尼前から見れば
22 % 、 200000
づ くば統合移転直後から 20000
見れば
53 % の増加とな 100000
っている。
産
総研発足後の
施設
年度
整備関連予算を 見ると、 図 ] 産 総研の施設床面積の 推移
補正予算により 新 棟 建設のための 巨額の予算を 獲得しており、 このことが急速な 床面
積の拡大を実現している ( 図 2 ) 。 問題点は、 維持のための 予算が不安定でかっ 床面
積の拡大に対応していないことであ る。 この 4 年間の予算が 23 つ 9 つ 47 つ 35 億円と
推移していることを 見ても明らかであ る。
新株建設予算に 隠れがちで地味な 存在では
あ るが、 施設が存在すれば 必然的に発生する 経費であ り、 それにもかかわらず、 十分
な配慮がなされてきたとは 言い難い。
1970 年代末の づ く は 統合移転時に 建設された施設が 多くを占め廃止されるものが
ほとんどないことから、 老朽化は進展し 今後大きな問題となる。 未 修繕箇所の蓄積が
進展していけば、 短期的な予算節約を 大きく上回る 損失となって 近い将来返ってくる
ことが予想される。
産 総研全体の研究活動の 規模は床面積を 上回って拡大している。 人員数で見ると、
一 515 一
常勤者の数は 大きな変動はな
ほ R
いが、 非常勤と産学官連携 制
度 による 来
前者の数が大きく
' 。 。
増加している。
研究分野の性
' 。 。
格によ る違いがあ
るため一概
600
には言えないが、 全体として 50 。
見ると 1 人 当たり床面積は 小さ , 00
くなっている。
研究活動が拡
, 00
大し研究内容も 高度化すると
200
すれば、
対応するため
新たな
100
施設の建設が 必、 要になる。
産
総研の活動が
拡大し施設
図 2 度総研の施 投 整備関連予算の 推移
も 増加する中で、 インフラ維持
のための予算確保が
追い付いていない。 新 棟の建設も、 補正予算を背景として 急速
に 進められてきたことがあ る。 第 「期の中期計画期間では、 15 研究所の統合、 独立行
政法人化、
自主営繕の開始などの 改革が一気に
実施されたことがあ り、 インフラ整備
を 計画的に進めていくための 検討と準備は 十分ではなかった。 2005 年度からの第 2
期の中期計画では、 日本の産業技術をリードする
優れた研究成果の
創出と社会への
説明ができる
公的資金の効率的使用という
責任を踏まえて、
長期的な戦略に
基づい
た 計画的なインフラ 整備の確立が 必、 要であ る。
3. インフラ整備の 課題
以上を踏まえて、 今後 表 Ⅰインフラ整備の 課題
取り組むべき 主なインフ ①長期的な研究戦略に 基づく計画的なインフラ 整備
ラ
整備の課題を
掲げる 長期的な研究戦略の 未策定、 インフラ整備面から 研究戦略への 検討材料提供、
前提となる計画的な 予算確保、 インフラ整備予算における 産総研の自主性
(
表 Ⅰ ) 公的研究機関 ② 産 総研の活動規模に 見合ったインフラ 整備
に
共通した課題であ
る。 活動規模の予測とタイムリ 一なインフラ 整備
課題への取り 組みと 解 高い研究効率達成の 前提としてのインフラ 整備、 インフラの景の 確保
沃 には、 マネジメントの ③最新の研究動向に 対応できるインフラ 整備
研究者・研究ユニットとの 連携、 インフラ関連業界など 外部からの情報収集、
意志決定が不可欠であ
新技術へのチャレンジ、 インフラの質の 向上
る 。 インフラ担当部署は 、 ④ LCM ( Ⅱ eCycle Management) の導入
課題を積極的に
検討し、 ト一 タ /L, での コスト最小化、 新株建設・高度化改修と 維持補修のバランス ,
施設の耐用年数終了までを 見通すことの 未経験の克服,
経営判断の基礎となる 踏 研究機関に適したインフラ 技術基準の確立
み 込んだ報告と 提言を行 ⑤安全確保、 珪境 保全の重視
わなければならない。 事故トラフルの 未然防止、 耐震化対策、 インフラ面からの 環境負荷低減、
安全・環境を 使 失 させる考え方の 倣 底
4 , まとめ
産総研に限らず 公的研究機関では、 その特質を踏まえた
長期的な戦略に
基づく 計
面的なインフラ 整備が必要であ る。 取り組むべき 課題は多いが、
公的研究機関の
目標
達成に貢献するインフラ 整備の確立を 期待する。
一 516 一