リラクセーション法を臨床で活用していくために
近藤 由香
1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科 リラクセーションとは, 再び, 緩める と定義されてい ます. リラクセーション法は, 副 感神経の作用を優位に して, ストレスによって緊張してしまっている身体の状態 を元に戻し, 心身の状態を整えることができる技法です. 私は, 現在, 主にがん患者の方へのリラクセーション法の 介入に関する研究に取り組んでおりますが, 患者さんがリ ラクセーション法を実施していくことによって, 少しでも 心身の苦痛を軽減し, 生活の質を維持・向上できることに 貢献していきたいと えております. 今回, 研究紹介の機 会をいただきましたので, 私が実施してきた主な研究につ いて紹介させていただきます. 私が, がん看護に興味を持ったのは, 群馬大学医学部附 属病院第一内科での臨床経験が大きく影響していると思い ます. 現在ほど緩和医療が普及していなかった当時, 多く の患者さんより, がん看護の難しさや重要性を教えていた だきました. 大学院博士前期課程 (東京医科歯科大学) で は, がん患者の疼痛ケアに関する研究 を実施しましたが, 修了後は, 西群馬病院の緩和ケア病棟で緩和ケアの実際を 学びました. リラクセーション法を学びたいと えはじめたのは, 緩 和ケア病棟に勤務していた時でした. 終末期がん患者さん へのケアを通して, 患者さんの全人的苦痛の緩和のために は, 看護独自の介入法であるリラクセーション法が重要で あると強く認識しました. その後, 大学院博士後期課程 (群 馬大学)にて,小板橋喜久代教授 (現 京都橘大学)の下,リ ラクセーションとその技法 (主に筋弛緩法) についての研 究を実施しました. リラクセーションに関する研究 リラクセーション法の 1つである筋弛緩法は, 米国の Jacobson によって開発された技法です. 筋弛緩法は, 意図 的に骨格筋の緊張と弛緩を繰り返すことによって全身をリ ラックスさせていく能動的筋弛緩法と, 骨格筋を緊張させ ず弛緩のみで進めていく受動的筋弛緩法に けられます. 私は, 大学院では, 主に能動的筋弛緩法である漸進的筋弛 緩法についての研究を行いました. がん患者の方に対して 2週間, 漸進的筋弛緩法の介入研究 を行いましたが, その 結果,介入後,唾液中 泌型免疫グロブリン A (S-IgA)の有 意な上昇や副 感神経が優位な状態になること, 開始から 2週間後には「肯定的な気持ちになれる体験」が増加するこ とも明らかになりました. このように対象者からはリラク セーション反応や肯定的な反応が得られましたが, その一 方, 漸進的筋弛緩法を実施していくことへの負担感も意見 としてあげられました. 筋弛緩法をはじめとするリラク セーション法は, 継続することによって, 症状緩和や気持 ちが肯定的になるなど様々な効果を得ることができま す. 大学院修了後,私は,がん患者の方が,筋弛緩法を負担 が少なく実施できるために, 簡易版漸進的筋弛緩法のプロ グラムを作成しました. 1年間, プログラムを継続できた ― 39― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成27年11月20日 修正 平成27年12月8日 採択 平成27年12月10日 論文別刷請求先: 近藤由香 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科流 れ
2016;66:39∼40方からは,「自 の生活の中で役立つ」などの意見があげら れました. 今後に向けて 現在, 患者さんが, さらに負担が少なく実施できるため の受動的筋弛緩法のプログラムを作成し, 常者に対して その有効性を検証している段階です. 今後は, がん患者さ んに, このプログラムを介入して, その効果を明らかにし ていく予定です. 筋弛緩法に関する研究の今後の課題として, 基礎研究で のランダム化比較試験の推進, 長期的効果の検証をしてい くことが必要であると えています. 以前, 研究にご協力いただいたがん患者さんで「楽にな れるものがあったら何でもすがりたいと思っています」と 話されていた方がいらっしゃいましたが, 私は, 今も, その 言葉を忘れることができません. リラクセーション法は, 習得すれば, 患者さんが望む時 にいつでもどこでもできる技法です. 今後も, 希望される 患者さんに対して, 筋弛緩法をはじめとするリラクセー ション法を紹介し, 患者さんの苦痛の緩和につながる研究 を行っていきたいと思っております. 保 学科に着任後より, 先生方や職員の皆様からは, 常 に温かいご支援をいただき感謝しております. 今後ともご 指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます. 参 文献 1. 荒川唱子. リラクセーション法を 康の自己責任とホリス テイックナーシングの基盤に. 小板橋喜久代, 荒川唱子 (編).リラクセーション法入門.東京 : 日本看護協会出版会, 2013:6-7. 2. 近藤由香,渋谷優子.痛みのある外来がん患者のモルヒネ 用に対する懸念と服薬行動に関する研究. 日本がん看護学 会誌 2002;16(1):5-16. 3. 近藤由香. がん患者に対する漸進的筋弛緩法の継続介入の 効果に関する研究. 日本がん看護学会誌 2008; 22(1): 86-97.
4. Kondo Y, Koitabashi K, Kaneko Y. Experiences of diffi-culty that patients with cancer faced in the learning process of progressive muscle relaxation. Jpn J Nurs Sci 2009;6: 123-132. 5. 近藤由香,小板橋喜久代.がん患者の漸進的筋弛緩法の習得 状況と自己練習継続による効果―身体的反応と主観的評価 より―. 日本看護研究学会雑誌 2006;29(5):71-82. 6. 近藤由香, 小板橋喜久代, 金子有紀子ら. 簡易版漸進的筋弛 緩法の作成とがん患者への介入の効果. 日本看護研究学会 雑誌 2011;34(5):87-93. 7. 近藤由香, 小板橋喜久代. 1987∼2013年における国内の漸 進的筋弛緩法に関する看護文献レビュー ―基礎研究と臨 床研究の視点より―. 日本看護研究学会雑誌 2014; 37(5): 65-72. リラクセーション法を臨床で活用していくために ― 40―