神経難病患者に対する訪問看護のアウトカム評価
髙 橋 陽 子, 内 田 陽 子, 河 端 裕 美
要 旨 本研究の目的は神経難病患者に対して訪問看護のアウトカム評価を明らかにすることである. 対象は A 脳・神経疾患の専門病院併設の B訪問看護ステーションでケアを受けている神経難病をもつ利用者 7名であ る. アウトカム評価の方法は日本版在宅ケアのアウトカム評価表及び SEIQoL-DW の QoL の測定方法を用 いて, 訪問看護での 3ヵ月前後の変化を測定した. その結果, QoL が最高値持続, 改善した事例は 5事例であ り,訪問看護師によるアウトカム評価においても改善,悪化傾向が同じ数の傾向にあった.QoL が低下してい る事例は 2事例であり, アウトカム評価においても悪化傾向が多かった. よって, 訪問看護師は徐々に悪化し ていく神経難病患者に対しても改善傾向に着目し, アウトカム評価に対する働きがけが必要である.(Kita-kanto Med J 2010;60:251∼257) キーワード:神経難病, アウトカム, 評価, SEIQoL-DW, 訪問看護 緒 言 神経難病患者は, 原因不明, 治療方法が未確立であり, かつ後遺症を残す恐れが少なくない疾病, また経過が慢 性的であり, 単に経済的な問題のみならず介護等に著し く人手を要するために家 の負担が重く, また精神的に も負担が大きい疾病とされている. しかし, 多くの神経 難病患者は自宅生活を望む者が多く, 在宅療養の継続 は,本人の Quality of Life(QoL)の向上に繫がる.それを 支え, ケアの中心となるものは訪問看護であり, 看護師 は医療面だけでなく精神的ケア, 家族の支援の役割を担 う. さらに, 訪問看護は患者本人が生きがい感を持てる ような支援, また常に身近なところで支えている家族に 対する支援が求められる. しかし, わが国では, 島内, 内 田らによる在宅ケア利用者のアウトカム評価が行われて いるが, 徐々に進行していく神経難病患者に対するアウ トカム評価の研究は少ない, 本研究の目的は, 神経難病 患者に対する訪問看護のアウトカム評価を明らかにする ことである. 以上によりアウトカムを高める訪問看護で の方法システムについて検討することとした. 方 法 1.対象 脳神経を専門とする A 病院に併設されている B訪問 看護ステーションを利用している神経難病患者で調査の 協力を得られた 7名を対象とした. 2.調査期間 2005年 4月から 5月に第 1回目調査, 同年の 7月から 8月 (第 1回目調査の 3ヵ月後) に第 2回目調査を行い, 3ヶ月間の患者及び患者の受けたケアについての変化を 調査した. 3.調査項目 調査の主な項目は, ①患者の背景 ②アウトカム評価 ③ケア内容とした. 1)対象の背景 患者のアウトカムに影響を及ぼす背景条件として, 性 別・年齢・診断名・罹患期間・要介護度・主介護者 (年齢) を受け持ちの訪問看護師が調査票に記入した. 2)患者のアウトカム評価(QoL評価)QoL 評価には, Oboeyらにより開発された Schedule
1 群馬県伊勢崎市太田町366 財団法人脳血管研究所美原記念病院 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 平成22年5月27日 受付
for the Evaluation of Individual Quality of Life-Direct Weighting (SEIQoL-DW) を用いた. SEIQoL-DW は 半構造化面接法を い, 現在の患者自身の生活の中で最 も 重 要, 大 切 に 思って い る 物 事 や 人 (領 域 : こ れ を キューと呼ぶ) を 5つあげてもらう. 次に各キューがど のような状態かの水準 (これをレベルと呼ぶ) を患者自 身に 100点満点で評価してもらう. 次に各キューの生活 の中で重要性について,各々どれくらいの割合 (%)にな るか (これを重み付けという)を患者自身で割り振り,円 グラフとして表示してもらう. 次にそれぞれを掛け算し 足して, 和を算出し SEIQoL-DW indexを算出する. 測定は SEIQoL-DW の研修を受講した 訪 問 看 護 師 が 行った. 3)訪問看護師からみたアウトカム評価 アメリカ合衆国において Shauhnessyらにより開発さ れた. The Outcome Assessment Information Set-AI (OASSIS-AI) をもとに日本版として開発された在宅ケ アアウトカム評価表を った. 整容,上半身の 衣,下半 身の 衣などの ADL に関する項目,意思疎通,判断力な どの精神能力に関する項目, 尿失禁の有無, 転倒の頻度 などに関する症状と 康状態に関する症状と 康状態に 関する 10項目,身体的疲労・ 康問題などの介護力に関 する 5項目から構成されているが, 今回は本人の評価に 焦点をあてたため, 身体的疲労・ 康問題などの介護力 に関する項目は除いた 4項目の評価表を った. アウト カム判定は, 1回目, 2回目の調査とも最高値を示した利 用者を「最高値維持」,1回目の調査が最高値以外で,2回 目の調査が 1ランク以上改善した利用者を「改善」1回目, 2回目の調査ともに同じ値を示した利用者を「維持」, 1 回目の調査が最低値以外で, 2回目の調査が 1ランク以 上低下した利用者を「悪化」, 2回目の調査とも最低値で あった利用者を「最低値持続」とした. 4)訪問看護師が行ったケア内容 3ヶ月間の訪問看護師によるケア内容を調査するため に訪問看護の業務 析, A 病院併設 B訪問看護ステー ションのケアプランを参 に, ケアを 13項目に り込 んだ.この 13項目は,リハビリ,食事,口腔ケア,清拭,排 泄,整容, 衣,観察,医療処置,精神ケア,医療相談,社会 資源活用, 介護者へのケアである. そのケアの項目につ いて, 受け持ち患者に実施の有無を受け持ち訪問看護師 がチェックした. 4.倫理的配慮 本研究は脳血管研究所の倫理審査委員会の承認を得て 実施した. 調査対象には, 研究の主旨, 自由意志での参加 であり断っても不利益がないこと, プライバシーの保護 に十 配慮することを説明し同意を得た. 成 績 1.対象の背景 (表 1) 対象患者の 7名の性別の内訳は男性 4名, 女性 3名で あった. 年齢は, E 氏を除き 6名が 70歳以上で, 診断名 は, パーキンソン病 5名, 筋萎縮性側索 化症, 脊髄小脳 変性症が各 1名であった. 罹患期間は, 3年から 4年が 4 名, 10年以上が 3名と大きく 2つに かれていた. また, 要介護度では, E 氏の要介護度 2度を除いて, 6名が要介 護度 4から 5度で, 主介護者は夫, 妻, 娘, 嫁と全員が家 族であった. 2.対象別にみた QoLの変化 (表 2) 1)A氏:キューの内容をみると「信仰」「 康」「栄 養」「運動」「睡眠」に 3カ月後も変化はなかった,「信仰」 においては, 初回より 80%と大半以上の重み付けをして おり, 3ヶ月後も同様の重み付けであった. その他のレベ ル, 重み付けに変化はなく, SEIQoL-DW indexは,初回, 3ヶ月後ともに 100%を維持していた. 2) B氏:初回にキューとしてあげていた「嫁, 孫, 夫」が 3ヶ月後には「家族」という表現に変化し,新たな キューとして「ディサービス」があげられた.レベル,重 み付けに変化はなく,SEIQoL-DW indexは,初回,3ヶ月 後ともに 100%を維持していた. 3) C氏:キューの内容をみると, 初回の「排泄」が 3ヶ月後には「排 」,「家族との会話」が「家族との団欒」 と具体的な表現に変化していた. さらに,「リハビリ」が 表1 対象背景 事例 性別 年齢 診断名 罹患期間 要介護度 主介護者 (年齢) A 氏 男 84歳 パーキンソン病 10年 5 妻 (70歳) B氏 女 78歳 パーキンソン病 3年 4 嫁 (42歳) C 氏 男 78歳 パーキンソン病 10年 4 妻 (76歳) D 氏 女 78歳 筋萎縮性側策 化症 (ALS) 4年 5 娘 (55歳) E 氏 男 71歳 脊髄小脳変性症 (SCD) 4年 5 妻 (73歳) F 氏 男 82歳 パーキンソン病 13年 5 妻 (80歳) G 氏 女 50歳 パーキンソン病 4年 2 夫 (54歳)
「仲間との 流」に変わり,レベル,重み付けもそれぞれ のキューの内容にばらつきがみられたが SEIQoL-DW indexは, 57から 65に上昇した. 4) 氏:キューの内容をみると, 初回にあげていたそ れぞれの 5つのキューが 3ヶ月後には, それぞれ異なっ た 5つのキューがあげられた. 特に初回にあげていた 「訪問診察」「訪問看護」が「お金」「鶴を折る」「テレビ」 という余暇に関連したキューに変化していた. レベル, 重み付けもそれぞれのキューの内容にばらつきがあり SEIQoL-DW indexは, 初回 99%から 3ヶ月後には 82% に下がった. 5) E氏:キューの内容をみると, 初回にキューとし てあげていた「リハビリ」が 3ヶ月後には「お金」に変化 していた. 初回のそれぞれのキューのレベルに高低の差 がはっきりしていたが 3カ月後には差がなくなってお り, SEIQoL-DW indexは, 初回 78.5%から 3ヶ月後には 76%に下がった. 6) F氏:キューの内容をみると, 初回のキューと 3ヶ月後のキューの内容に変化はなかったが, キューで ある「病院スタッフ」「演歌」のレベルがそれぞれ 10%増 えており, SEIQoL-DW indexも初回 69%から 3ヶ月後 に 73.5%に上がった. 表2 事例にみた QOL の変化 事 例 初 回 キュー レベル 重み レベル×重み INDEX 3ヶ月後 キュー レベル 重み レベル×重み INDEX 1 信仰 100% 80% 80.0% 1 信仰 100% 80% 80.0% 2 康 100% 5% 5.0% 2 康 100% 5% 5.0% A 氏 パ ー キ ン ソ ン 3 栄養 100% 5% 5.0% 100.0% 3 栄養 100% 5% 5.0% 100.0% 4 運動 100% 5% 5.0% 4 運動 100% 5% 5.0% 5 睡眠 100% 5% 5.0% 5 睡眠 100% 5% 5.0% 1 嫁 100% 20% 20.0% 1 家族 100% 20% 20.0% 2 ヘルパー 100% 20% 20.0% 2 ヘルパー・看護師 100% 20% 20.0% B 氏 パ ー キ ン ソ ン 3 孫 100% 20% 20.0% 100.0% 3 俳句 100% 20% 20.0% 100.0% 4 夫 100% 20% 20.0% 4 デイサービス 100% 20% 20.0% 5 俳句・鳥 100% 20% 20.0% 5 鳥 100% 20% 20.0% 1 食事 90% 20% 18.0% 1 秘 70% 50% 35.0% 2 排泄 70% 20% 14.0% 2 物書き 60% 20% 12.0% C 氏 パ ー キ ン ソ ン 3 リハビリ 50% 20% 10.0% 57.0% 3 仲間との 流 50% 10% 5.0% 65.0% 4 物書き 40% 20% 8.0% 4 家族との団欒 70% 10% 7.0% 5 家族との会話 70% 10% 7.0% 5 食事 60% 10% 6.0% 1 家族との暮らし 75% 40% 30.0% 1 家族との暮らし 75% 40% 30.0% 2 病院スタッフ 70% 40% 28.0% 2 病院スタッフ 80% 40% 32.0% D 氏 A L S 3 自 の病気 50% 10% 5.0% 69.0% 3 自 の病気 50% 10% 5.0% 82.0% 4 テレビ 50% 5% 2.5% 4 テレビ 50% 5% 2.5% 5 演歌 70% 5% 3.5% 5 演歌 80% 5% 4.0% 1 映画音楽 80% 20% 16.0% 1 映画音楽 80% 20% 16.0% 2 家族のやさしさ 80% 10% 8.0% 2 家族のやさしさ 90% 10% 9.0% E 氏 S C D 3 妻 80% 10% 8.0% 48.0% 3 妻 70% 10% 7.0% 76% 4 孫 20% 50% 10.0% 4 リハビリ 30% 50% 15.0% 5 病院 60% 10% 6.0% 5 入院 60% 10% 6.0% 1 妻 100% 20% 20.0% 1 体・ 康 80% 50% 40.0% 2 規則正しい生活 90% 10% 9.0% 2 家族 90% 20% 18.0% F 氏 パ ー キ ン ソ ン 3 運動 100% 25% 20.0% 99.0% 3 お金 80% 10% 8.0% 82.0% 4 訪問診察 100% 25% 25.0% 4 鶴を折る 80% 10% 8.0% 5 訪問看護 100% 25% 25.0% 5 テレビ 80% 10% 8.0% 1 家族 90% 80% 72.0% 1 家族 90% 50% 45.0% 2 自 の体 10% 10% 1.0% 2 お金 60% 35% 21.0% G 氏 パ ー キ ン ソ ン 3 リハビリ 10% 5% 0.5% 78.5% 3 体 50% 5% 2.5% 76.0% 4 康 100% 2% 2.0% 4 リハビリ 70% 5% 3.5% 5 孫 100% 3% 3.0% 5 孫 80% 5% 4.0%
7) G氏:初回にキューとしてあげていた「孫」「病院」 が 3ヶ月後には「リハビリ」「入院」に変化していた. ま た, それぞれのキューのレベル, 重み付けにレベルにわ ずかに上昇がみられた. SEIQoL-DW indexは 48から 53に上昇していた. 3.対象別にみた QoLとアウトカム・ケア内容の変化 (表 3) 1)QoLが最高値持続・改善した事例 初回と 3カ月後の QoL の変化で最高値持続・改善した 事例は,A 氏,B氏,C 氏,F 氏,G 氏の 5事例であった.A 氏, B氏は index 100%を維持し最高値持続であった. C 氏, F 氏, G 氏もそれぞれ上昇し indexが改善していた. 次に, 看護師によるアウトカム評価をみてみると改善, 悪化傾向が同じ数の傾向にあった. 改善した項目は, 自 立度や上半身の 衣,下半身の 衣,移乗など ADL の項 目で, パーキンソン病の A 氏, B氏, C 氏にみられた. 筋 萎縮性側索 化症の F 氏と脊髄小脳変性症の G 氏の改 善項目は, 意欲, 判断力, 皮膚の状態などの精神能力に関 する項目と症状に関する項目であった. 一方, 悪化した 項目は全体的に冷暖房の管理, 電話の い方, 尿失禁の 有無など IADL の項目と症状に関する項目だった. ケア 内容においては, パーキンソン病の A 氏, B氏, C 氏は 4 から 5のケアが増加しており, ケア内容をみてみると精 神ケアが共通されていた.筋萎縮性側索 化症の F 氏は, 医療処置の実施がなくなり, 脊髄小脳変性症の G 氏は同 表3 QOL とケアアウトカム・ケア内容 事 例 INDEX (%) 訪問看護師によるアウトカム評価 訪問看護師が行ったケア内容 初回 (%) 3ヶ月 (%) 判定 在宅ケア アウトカム判定 個 改善した項目 悪化した項目 初回 ケア項目 個 3カ月後 ケア項目 個 最高値持続 12 自 立 度・上 半 身 の 衣・下半身の 衣・身 体の清潔・移乗 整容・食事・冷暖房・ 服薬・尿失禁の状態・ 痛み・痛みの頻度 リハビリ・排泄・整容・ 衣・観察・介護者の ケア 6 リハビリ・排泄・整容・ 衣・観察・介護者の ケア・食事・口腔ケア・ 清拭・精神ケア・医療 相談 11増加 改善 5 A 氏 100.0 100.0 最高値 持続 維持 3 悪化 7 最低値持続 6 最高値持続 9 自立度・上 衣・下 衣・身体の清潔・排泄・ 移乗・家事・意欲 電話の い方・意思疎 通・尿失禁の有無・尿 失禁の状態・痛みの頻 度・呼吸・皮膚の状態 リハビリ・排泄・観察 3 リハビリ・排泄・観察 清拭・整容・精神ケア・ 介護者のケア 7増加 改善 8 B 氏 100.0 100.0 最高値 持続 維持 6 悪化 7 最低値持続 3 最高値持続 12 移乗・意欲 自立度・食事・電話の い方・冷暖房の管理 リハビリ・整容 観察 3 リハビリ・整容・観察・ 排泄・精神ケア・医療 相談・介護者のケア 7増加 改善 2 Q O L が 最 高 値 ・ 改 善 し た 事 例 C 氏 57.0 65.0 改善 維持 6 悪化 4 最低値持続 9 最高値持続 7 意思疎通・判断力・意 欲・尿失禁の状態 尿失禁の有無・痛み・ 痛みの頻度 リハビリ・食事・口腔 ケア・清拭・排泄・整 容・観察・精神ケア・ 医療相談・介護者のケ ア・医療処置 11 リハビリ・食事・口腔 ケア・清拭・排泄・整 容・観察・精神ケア・ 医療相談・介護者のケ ア 10減少 改善 4 D 氏 69.0 73.5 改善 維持 1 悪化 3 最低値持続 18 最高値持続 9 皮膚の状態 意思疎通・痛みの持続 リハビリ・食事・口腔 ケア・清拭・排泄・整 容・観察・精神ケア・ 医療相談・介護者のケ ア 10 リハビリ・食事・口腔 ケア・清拭・排泄・整 容・観察・精神ケア・ 指導相談・介護者のケ ア 10維持 改善 1 E 氏 48.0 改善53.0 維持 2 悪化 2 最低値持続 19 最高値持続 12 上半身の 衣・下半身 の 衣・判断力 整容・食事・電話の い方・買い物・意欲・ 痛みの頻度・尿失禁の 状態・意思疎通 リハビリ・口腔ケア・ 清拭・排泄・整容・観 察介護者のケア 7 リハビリ・口腔ケア・ 清拭・排泄・整容・観 察・介護者のケア・食 事 8増加 改善 3 F 氏 99.0 82.0 悪化 維持 4 悪化 8 Q O L が 悪 化 し た 事 例 最低値持続 6 最高値持続 14 食事・転倒 自立度・整容・下半身 衣・身体の清潔・電 話の い方・買い物・ 食事の支度・家事・洗 濯・外出・金銭管理・ 意思疎通・判断力・尿 失禁の状態・痛みの頻 度 リハビリ・観察・精神 ケア・社会資源・介護 者のケア 5 リハビリ・観察・精神 ケア・社会資源・介護 者のケア・排泄 6増加 改善 2 G 氏 78.5 76.0 悪化 維持 2 悪化 15 最低値持続 0
じケア内容で維持されていた. 察 本研究は 7名という事例であり, 一般化には限界課題 があるが, 以下に得られた知見と 察を述べる. 1.訪問看護師によるアウトカム評価と本人の QoLと の関連 3ヶ月間の QoL の変化で, QoL が最高値持続・改善し た事例と悪化した事例に かれた. また, 訪問看護師に よるアウトカム評価の在宅ケアの項目に注目してみると 最高値持続が多く, 改善項目と悪化項目が同じ数の傾向 にある事例は, QoL が最高値持続・改善となる傾向がみ られた. 一方, 改善項目より悪化項目に 2倍以上の数が 多いと QoL が悪化する傾向があるという特徴がみられ た. これらのことから, QoL と訪問看護師がみたアウト カム評価は密接な関係があると言える. 島内らは, 必要 なケアの見極めやケア提供の方法がアウトカムに強く関 係すると報告している. 特に神経難病の場合, 症状の変 化に対応しながら生涯にわたって専門性の高い医療が必 要とされるため 患者アウトカムの 1つである QoL は, 神経難病に携わる訪問看護師のケアの質に大きく影響す ると思われる. 神経難病は, 症状が長期慢性経過をたど り, 根本的な治療法がないといわれているが, 訪問看護 師の関わりによって, アウトカム評価が高まる可能性が あるといえる. 2.アウトカムを高める訪問看護 QoL がよい事例と悪い事例について, 訪問看護師から みたアウトカム評価の改善, 悪化項目に着目すると, 自 立度や 衣に関する ADL 項目で改善, 電話の い方や 冷暖房の管理など IADL 項目が悪化していた. IADL は 高次の生活機能であり, これは ADL 先行して悪化する 順序性があると言われている. 神経難病患者の状態も まずは IADL が低下すると言える. しかしながら, 訪問 看護によって ADL が改善したという報告がある. 内 田は重度の利用者を対象とする訪問看護ステーションの 顧客の ADL が改善されたのは, 幅広い多くのケアを実 施したからだと述べている. 本研究でも QoL がよい事 例はケア項目数が増加しており, ADL が改善されてい た. この結果は, 神経難病患者であっても訪問看護で ADL 等のアウトカムが高まることを示唆している. ア ウトカムを改善していくために, 訪問看護師は IADL の 変化を見逃すことなく介入し, ADL についても機能訓 練や食事, 精神的ケアなどの包括的な幅広いケアを投入 していく必要がある. また, 筋萎縮性側索 化症の患者 は, コミュニケーションサポートや心理サポートを含む 包括的な援助により支えられていると言われている. F 氏, G 氏は初回より, 精神ケア, 医療相談, 介護者のケア と訪問看護師の包括的な援助により QoL が改善に繫 がったと思われる. 筋萎縮性側索 化症, 脊髄小脳変性症の疾患を持つ患 者は, 痛みや意思疎通が悪化していた. これらは, 疾患の 特性に影響しており, 訪問看護師はその特性に応じた疼 痛管理や意思疎通の補助用具導入を試みる必要がある. D 氏, E 氏ではケア項目数が減少, 維持であったが, 訪問 看護師は症状アセスメント強化が求められる. また, F 氏, G 氏では QoL が悪化した事例をみると, パーキンソ ン病で体調に関する事項がキューとして上位に上がり, 訪問看護師からのアウトカム評価も ADL, IADL, 痛み や症状精神的項目と悪化項目が多かった. 同じパーキン ソン病であっても改善事例と悪化事例に かれたが, 個々の背景条件を捉え, また, 痛みの変動を個々にアセ スメントし, 個人差のある服薬調整, 機能訓練等を え て実施する必要がある. 特に L ドーパーやドパミンアゴ ニスト等のパーキンソン治療薬については, 対象に合し た微妙な調整が必要となる. また, パーキンソン病に伴 ううつ症状, 起立性低血圧, 排尿障害, 消化管運動障害に ついては, 悪化を見逃さぬように医師との連携を速やか にし, 対処する必要がある. しかし, パーキンソン病は進 行期になると服薬調整も難しくなってくる. 大生は身体 機能が重症であっても何らかの心理的介入 を 通 し て QoL を高めることが可能になるといっている. さらに 中島は難病ケアの下で, 根治しない病気とともに生きて いく際に, 家族やケアスタッフとの関係性の中で, 患者 の心の中には今までと異なった価値観や生きがいが構成 されていくいことによって QoL が構成されていくと いっている. つまり, 訪問看護師は身体的側面のみなら ず, いかにそれぞれの患者が何を大切と感じているのか を引き出し, どう関わるかによって QoL に大きく影響 するといえる. 3.神経難病患者のアウトカムを高めるシステムづくり 以上より, 神経難病のアウトカムを高めるためには, 今後一層, 質の高いケアシステムづくりが求められる. まず, 訪問看護での体制であるが, 疾患の特性により進 行のタイプが異なるため, 訪問看護師は知識, 技術の研 修を積み, 短時間で限られたなかでアセスメントを的確 に行い, アウトカムを予測したうえで必要なケア実践し ていくことが求められる. したがって, それらが実現で きるよう訪問看護ステーションの内外の勉強会の充実や アセスメント・ケアプラン表の作成, 職員同士のカン ファレンス開催等の体制づくりを構築する必要がある. さらに, 同じ在宅ケアを支える多専門職種との連携シ
ステムも求められる. それを実現する具体的な案として, 難病で問題となる点について, 現在のケアプランのなか の焦点をより り, 共通のアウトカム数個に着眼して, 問題解決を図る共通のアクションプランの立案が有効で ある. アメリカでは, アウトカム評価に基づき, 共通のア クションプランを他職種が協働して立案し, 患者の状態 改善をめざす戦略がシステム化されている. わが国で も同様なシステムづくりが求められる. 最後に, 神経難病患者は症状の増悪のために入院, 介 護者のレスパイトのために施設入所することがある. 在 宅から病院へ, 在宅から施設入所へとケア機関が変わっ た時に, 患者のアウトカムが悪化しないようなケア体制 づくりが求められる. そのためには, 在宅ケア機関のな かでも医療と生活面を結ぶ訪問看護の役割は大きい. 本研究の限界性と課題 本研究は対象が一施設のみでのデータであったため, 今後は施設, 対象患者数を増やして調査をしていく必要 がある. 神経難病患者に対する訪問看護のアウトカムと ケアの関連性について今後も継続研究を重ねて検証して いくことが課題である. 謝 辞 本研究にご協力くださいました患者さま, ご家族の皆 様, 調査にご協力くださいました訪問看護ステーショ ン・グラーチアの管理者や職員の皆様の方々に深く感謝 いたします. なお, 本研究は, 財団法人在宅医療助成勇美 財団の助成をうけて実施した. 文 献 1. 川村佐和子. 難病者とともに生きる家族. 家族看護 2005; 3(1): 6-11. 2. 飯嶋美鈴, 細井さゆり, 高橋陽子ら. 神経難病に対するレ スパイトケア―特殊疾患療養病棟への短期入院利用. 日 本難病看護学会 2005; 10(2): 136-142. 3. 島内 節, 友安直子, 内田陽子. 在宅ケアアウトカム評価 と質改善の方法. 医学書院 2002; 126-131.
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Outcomes Evaluation in Visiting Nursing Care
for Patients with Intractable Neurological Diseases
Yoko Takahashi,
Yoko Uchida
and Hiromi Kawabata
1 Institute of Brain and Blood Vessels, Mihara Memorial Hospital, 366 Otamachi, Isesaki, Gunma372-0006, Japan
2 School of Health Sciences, Gunma University Faculty of Medicine, 3-39-22 Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, Japan
The objective of this study was to evaluate outcomes of visiting nursing care for patients with intractable neurological diseases. The subjects of the study were 7 patients with intractable neurological diseases who used home care services from B visiting nursing station which was affiliated with A specialized hospital for brain/neurology. We measured outcomes of visiting nursing care at baseline and three months using the Japanese version of the Outcome Assessment Information Set and the Schedule of Individual Quality of Life― Direct Weighting (SEIQoL-DW). There were 5 improved cases with maintaining the maximum QOL level,while the same numbers of improved and declined cases were seen in outcomes evaluation by visiting nurses. The QOL was decreased in two cases,while a declining trend was common in the outcomes evaluation. Therefore, visiting nurses need to focus on an improvement trend in patients with gradually progressing intractable neurological diseases, and promote outcomes evaluation.(Kitakanto Med J 2010;60:251∼257)
Key Words: intractable neurological diseases, outcomes, evaluation, SEIQoL-DW, visit-ing nursvisit-ing care