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MgTi2O5を用いた光電極の作製条件の検討と色素増感太陽電池の発電特性: 材料分析室利用研究成果, そのXXVI(3)

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Academic year: 2021

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(1)

MgTi

2

O

5

を用いた光電極の作製条件の検討と

色素増感太陽電池の発電特性

――材料分析室利用研究成果、その

XXVI(3)――

田村陸・竹本稔



工学部応用化学科

Examinations of fabrication process of photoanode employing MgTi

2

O

5

and power generation properties of dye sensitized solar cells

-- Research works accomplished by using materials analysis facilities: XXVI(3) --

Riku TAMURA and Minoru TAKEMOTO

Abstract

Dye sensitized solar cells in which photoanodes were fabricated by employing MgTi2O5 as semiconducting

porous film material were assembled and their photovoltaic properties were investigated. In the present study, MgTi2O5 was synthesized and ground by a ball-milled, and was used to prepare paste to form the

porous film,. The ball-milling process resulted in improvement of open circuit voltage and short circuit current density. It was considered from FE-SEM observations of the film formed that the ball-milling process resulted in less ineffectual pores in the films and the improvement of the photovoltaic properties. The photovoltaic properties varied by cells with the ball-milling process comparing with the cells without ball-milling process. It was considered that the ball-milling process dispersed the size distribution of MgTi2O5 particles and that MgTi2O5 films with similar quality were difficult to be formed reproducibly.

Keywords: dye sensitize solar cell, photoanode, MgTi2O5

 はじめに  色素増感太陽電池は1991 年に Grätzel らによって発明さ れた太陽光電池の1 種である[1]。模式図を図 1 に示す。 光電極、対極、電解液の3 つから構成されており、光電極 にはアナターゼ型TiO2の多孔質膜が、対極にはPt が、電 解液にはヨウ素を含むアセトニトリル溶液がよく使われ ている。多孔質膜に吸着している色素が光励起され、電子 を放出する。この電子は多孔質膜に注入され、外部負荷を 経由して対極へ移動する。電解液中の I3-によって電子が 受け取られ、生成したI-が、先に電子を失った色素に電子 を与える。光照射下でこのサイクルが継続し、発電する。 鈴木ら[2]は多孔質膜に MgTi2O5を用いた色素増感太陽 電池を作製し、発電特性を調べた。開放電圧は最大で0.55 V 程度と比較的大きかったが、短絡電流密度は 0.083 mAcm-2と小さかった。作製されたMgTi2O5の多孔質膜は 数μm の粗大な粒子で構成されており、大きな空隙が多く 見られた。このことは膜内での電子の効率的な移動の妨げ [研究論文] Fig. 1 色素増感太陽電池の模式図 Gla ss Gla ss Tr ans par ent Cond uc tiv e Fi lm Pt Light TiO2 Dye

Photo-electrode ElectrodeCounter Electrolyte Load e -e -I3 -I -Tr an spa ren t C on du cti ve Fi lm MgTi2O5を用いた光電極の作製条件の検討と色素増感太陽電池の発電特性(田村・竹本) 35

(2)

になる。また、電解液の浸入により、膜内の電子が電解液 中の I3-へ移動する可能性が考えられる。これらのため短 絡電流密度が低くなっていると鈴木らは指摘した。多孔質 膜は、通常半導体粒子を分散させたペーストを塗布、焼成 して作製される。そこで、本研究ではあらかじめMgTi2O5 を粉砕処理し、その後ペーストを調整することにした。そ の結果、MgTi2O5を用いた色素増感太陽電池の発電特性を 向上させることができ、ここに報告する。  実験方法   0J7L2の合成 文献[3]を参考にして合成を行った。チタンペルオキソ クエン酸アンモニウム4 水和物をイオン交換水で溶解し、 酢酸マグネシウム4 水和物と無水クエン酸を加え、60 oC で加熱した。エチレングリコールを加え、90 oC で加熱し た。110 oC で乾燥後、400 oC で 2 時間焼成した。なお、金:クエン酸:エチレングリコールをモル比で 3:1:3 とした。  色素増感太陽電池の作製 MgTi2O5を1.09 g にエタノール 7 mL を加え、遊星ボー ルミル(P-5、Fritsch)を用い、回転速度 250 rpm で 30 min 粉砕処理した。エタノールを除去後、硝酸水溶液(pH = 0.7) 2.7mL、アセチルアセトン 0.12 mL、ポリエチレングリコ ール 0.060g、界面活性剤(Triton X-100) 0.06 mL を追加し、 回転速度 100 rpm で 10 min 混合処理し、事前粉砕した MgTi2O5を含むペーストを調製した。比較のため、事前粉 砕を行わないMgTi2O5を含むペーストも調製した。 フッ素ドープ酸化スズがコーティングされた導電性ガ ラス板(AGC ファブリテック)にペーストを塗布し、450 oC30 min 焼成して多孔質膜を得た。ルテニウム錯体系色N-719 ([RuL2(NCS)2]:2TBA、L = 2,2’-ビピリジル-4,4’-ジ カルボキシラート、TBA = テトラ-n-ブチルアンモニウム) のエタノール溶液に浸漬し、色素を吸着させた。別の導電 性ガラス板にスパッタリングでPt 膜を形成して対極とし た。封止材(Solaronix)を用いて熱圧着により光電極と対極 を貼りあわせた。アセトニトリルにI2、LiI、1,2-ジメチル -3-プロピルイミダゾリウムヨージド、4-tert-ブチルピリジ ンを溶解させ、電解液とした。   色素増感太陽電池の特性評価 キセノン光源(MAX-302、波長範囲 350 nm ~ 800 nm、 朝日分光)からの光を照射し、ソースメータ(2401 型、 Keithley)を用いて電流-電圧特性を調べた。光の放射照度 が100 mWcm-2になるよう調整し、マスクにより光照射面 積を0.28 cm2に制限した。電圧ステップは0.001 V とし、 100 ms の待機時間を設け、発生する電流を測定した。  実験結果と考察   0J7L2多孔質膜のキャラクタリゼーション ボールミル粉砕処理を行わなかった MgTi2O5を含むペ ーストを用いて作製した多孔質膜の FE-SEM 観察写真を2(a)(b)に示す。また、ボールミル粉砕を行った MgTi2O5 を含むペーストを用いて作製した多孔質膜の FE-SEM 観 察写真を同図(c)(d)に示す。いずれも破断面を観察したも

Fig. 2 多孔質膜の破断面観察結果。(a)(b) MgTi2O5をボールミル粉砕処理しなかった場合、(c)(d) MgTi2O5をボールミ

ル粉砕処理した場合 10 mm 10 mm 10 mm 10 mm

(a)

(b)

(c)

(d)

神奈川工科大学研究報告 B‐40(2016) 36

(3)

のであり、(a)と(b)、および(c)と(d)はそれぞれ同一の試料 で観察箇所が異なる。写真を見ると、いずれもガラス基板 表面の、厚さ約1 mm の導電膜上に、約 25 mm の厚さで成 膜されていることが分かる。図2(a)に示すように、ボール ミル粉砕処理を行わなかった場合、多孔質膜は粗大な粒子 が乱雑に堆積しており、隙間の多い構造であることが分か る。また同図(b)に示すように、他の観察箇所でもほぼ同 様の構造が観察された。一方、図2(c)に示すように、ボー ルミル粉砕処理を行った場合、粗大な粒子が存在するもの の、より微細な粒子が粗大粒子間を充填するように存在し ており、結果として隙間が少ない構造であることがわかる。 しかし、同図(d)に示すように、別の観察エリアでは粗大 な粒子が膜の下方で、微細粒子は上方で集中して堆積して おり、観察エリアによって膜の微細構造が異なっていた。  電池特性の測定結果 粉砕処理を行わなかったMgTi2O5を用いた太陽電池(A1 ~A5、数字は作製順を表す) の電流密度-電圧特性、電力 密度-電圧特性をそれぞれ図 3(a)、(c)に示す。また、粉砕 処理を行ったMgTi2O5を用いた太陽電池(B1~B5、数字は 作製順を表す)の電流密度-電圧特性、電力密度-電圧特性を それぞれ同図(b)、(d)に示す。いずれの太陽電池も発電す ることが確認された。前者は開放電圧が概ね0.40 ~ 0.53 V、 短絡電流密度が概ね0.04 ~ 0.10 mAcm-2の性能を示し、後 者は開放電圧が概ね0.45 ~ 0.55 V、短絡電流密度が概ね 0.06 ~0.12 mAcm-2の性能を示した。 作製した電池の性能にばらつきが見られた。ナノ粒子が 分散したペーストの塗布、乾燥、焼成によって光電極多孔 質膜は作製される。そのため、その膜質には作製者の技能 が反映されることがあり、結果として太陽電池の特性に影 響を与えることがしばしばある。図3 の各図を検討すると、 いずれも作製3 個め以降の太陽電池の性能に関しては、ば らつきが収束しつつあるように思われた。そこで、それ以 降は作製者の技能が安定したと判断し、作製3 個め以降の 太陽電池(A3~A5、および B3~B5)について発電特性をま とめ、表1 に示す。MgTi2O5を粉砕することによる、各発 電特性の平均的な変化をみると、開放電圧(VOC)は約 0.43 V から約 0.52 V へ、短絡電流密度(JSC)は約 7.8×10-2 mAcm-2 から約1.0×10-2 mAcm-2へ、フィルファクター(FF)は約 0.413 太陽電池発電特性の測定結果。MgTi2O5をボールミル粉砕しなかった場合の(a) 電流密度-電圧特性と(c) 電

力密度-電圧特性(+: A1、X: A2、○: A3、△: A4、◇: A5、本文参照) 、および MgTi2O5をボールミル粉砕した場合

(b) 電流密度-電圧特性と(d) 電力密度-電圧特性(/: B1、\: B2、●: B3、▲: B4、◆: B5、本文参照)。

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0

0.05

0.10

0.15

J / m

A

cm

-2

(a)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0

0.01

0.02

0.03

V / V

P / m

W c

m

-2

(c)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0

0.05

0.10

0.15

(b)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0

0.01

0.02

0.03

V / V

(d)

1 太陽電池特性。開放電圧(VOC)、短絡電流密度(JSC)、 および最大電力密度(Pmax) MgTi2O5

Particles Cell No.

VOC / V JSC / mAcm-2 Pmax / mWcm-2 As prepared A3 0.439 8.12×10-2 1.46×10-2 A4 0.407 7.04×10-2 1.14×10-2 A5 0.455 8.12×10-2 1.54×10-2 Ball milled B3 0.492 9.06×10-2 1.86×10-2 B4 0.560 1.16×10-1 2.89×10-2 B5 0.516 1.06×10-1 2.41×10-2 MgTi2O5を用いた光電極の作製条件の検討と色素増感太陽電池の発電特性(田村・竹本) 37

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から約0.43 へ、変換効率()は約 0.014 %から約 0.024 %へ 変化した。つまり、MgTi2O5の粉砕処理は発電特性を向上 させる効果があったと考えている。 図1 に示したように、MgTi2O5の膜は、光励起された色 素から発生した電子の導電経路である。図2 に示したよう に、MgTi2O5を粉砕すると、生成した微細な粒子が粗大粒 子の隙間を充填する膜構造になる。このため、電子の導電 経路がより発達することになる。これには膜から電解液中 のI3-へ電子が移動し、I-が生成するという本来とは逆の反 応を抑制する効果もあり、結果として、短絡電流密度、開 放電圧ともに増加したものと考えられる。 MgTi2O5をボールミルで粉砕処理することにより、発電 特性を向上させることができたが、すでに指摘したように、 一方で特性の変動が大きくなっている。図2 で示したよう に、粉砕処理を行うと、膜の構造が場所により異なるとい う傾向が強くなる。これは、粉砕処理により MgTi2O5の 粒度分布が広がったことが原因として考えられる。粒子の 粒度分布が広くなるほど、それを含むペーストを均一に塗 布することが難しくなることは想像に難くない。このため、 ボールミルで粉砕処理すると、均一な構造を持つ膜を再現 性良く作製することが難しくなり、発電特性の変動が大き くなったものと考えられる。 アナターゼ型 TiO2を半導体多孔質膜材料として用い、 種々の条件を最適化したときは~101 mAcm-2程度の短絡電 流密度が得られる。これと比較すると、本研究で作製した 太陽電池が示す短絡電流密度はいずれも~10-2 mAcm-2 あり、極めて小さい。この理由として現時点で次の2 つを 考えている。1 つは光励起された色素から MgTi2O5へ効率 よく電子が注入されていないことである。光励起された色 素から電子が半導体多孔質膜へ注入されることが発電の 第1 のステップとなるが、半導体多孔質膜へ注入された電 子が再び、電子を失った色素に戻る可能性がある。この現 象が起これば、発生する電流は小さくなる。アナターゼ型 TiO2を半導体多孔質膜として用いた場合、色素から TiO2 への電子移動の速度定数は、TiO2から色素への逆電子移 動の速度定数よりも大きく、発生・移動した電子が有効に 発電に寄与する[4]が、MgTi2O5の場合はまだよくわかって いない。また、TiO2表面への色素分子の吸着様式によっ て発電特性が変化することが知られている[5]が、MgTi2O5 にどのように色素分子が吸着しているか、現時点では不明 である。このことから、MgTi2O5表面への色素分子の吸着 様式を調べるとともに、電子移動の速度定数について明ら かにする必要がある。もう1 つは MgTi2O5内での電子の 寿命が短い、言い換えれば導電経路長が短いことが考えら れる。図 2 に示したように、本研究で作製した MgTi2O5 膜の厚さは約25 mm であるが、これが電子の導電経路長 を超える長さであると、発生した電子が MgTi2O5内で消 失し、結果、発生電流量が減少してしまうことになる。こ のため、より膜厚の薄い MgTi2O5薄膜を作製し、その太 陽電池発電特性への影響を調べる必要があると考えてい る。   まとめ 錯体重合法で MgTi2O5を合成し、これを半導体多孔質 膜に応用した太陽電池を作製し、前報と同様に発電を確認 することができた。合成した MgTi2O5を事前にボールミ ル粉砕して多孔質膜を作製すると、太陽電池の発電特性が 向上した。これは、事前のボールミル粉砕処理により、緻 密なMgTi2O5膜が作製できたためと考えられた。 参考文献

[1] B. O’Regan and M. Grätzel: A low-cost, high-efficiency

solar cell based on dye-sensitized colloidal TiO2 film,

Nature 353, 737 (1991).

[2] 鈴木 健、竹本稔: MgTi2O5を光電極材料に用いたし磯

増感太陽電池 --分析電子顕微鏡システム利用研究

成果、そのXXV(1) --、神奈川工科大学研究報告 B

理工学編第39 号、5 (2015).

[3] M. A. Reddy, M. S. Kishore, V. Pralong, V. Caignaert, U. V. Varadaraju, and B. Raveau: Synthesis and Lithium

Insertion into Nanophase MgTi2O5 with Pseudo-Brookite

Structure, Chem. Mater. 20, 2192 (2008).

[4] A. Hagfeldt and M. Grätzel: Light-Induced Redox Reactions in Nanocrystalline Systems, Chem. Rev. 95, 49 (1995).

[5] M. Honda, M. Yanagida, L. Han, and K. Miyano: X-ray Characterization of Dye Adsorption in Coadsorbed Dye-Sensitized Solar Cells, J. Phys. Chem. C 117, 17033 (2013).



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Fig. 2  多孔質膜の破断面観察結果。 (a)(b) MgTi 2 O 5 をボールミル粉砕処理しなかった場合、 (c)(d) MgTi 2 O 5 をボールミ ル粉砕処理した場合 10 mm 10 mm10 mm10 mm(a)(b)(c)(d) 神奈川工科大学研究報告 B‐40(2016)36 This document is provided by JAXA.

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