父親をとりまく家族や社会状況
12
0
0
全文
(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第59巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.59,No.1. 平成20年8月 August,2008. 父親をとりまく家族や社会状況 岡 田 みゆき. 北海道教育大学旭川枚家庭科教育研究室. TheConditionsofFamilyandSocietySurroundingFathers OKADA Miyuki DepartmentofEducation,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 父親の役割に影響を及ぼすと考えられる父親の周辺の社会状況や家族の状況について明らかにするた. め,家族形態,結婚,離婚,家庭観,職業観等の項目について,その現状や変化を学術書や統計資料を使っ て検討した。. その結果,家族形態としては,家族構成員の人数が年々減り,両親あるいは片親のみで,家庭の機能を維 持していかなければならない状況にある。若者の結婚観は変化し,「自分の仕事に対する理解と協力」や「家. 事・育児に対する相手の役割」について,男性,女性共に結婚の条件として重視している。また,離婚率も 年々上昇し,片親だけで子どもを育てている家庭が核家族全体の約15%を占めるようになった。. 家庭内の性役割分業意識については年々薄れ,2002年には「夫が外で働き,妻が家庭を守る」という考え 方に反対が賛成を上回った。そのため,女性の社会進出に対する肯定的な考えが一般的になり,2002年は, 子育てのために職場を離れるよりも,仕事をしながら子育てをすべきであるという考えが,男女共に多数派 を占めるようになった。それに伴い,若い世代を中心に父親の家事・育児の参加が徐々に増えてきた。しか しながら,家事については,40代以上の父親の参加は停滞しており,仕事優先の生き方はあまり変わってい なかった。また,子どもの年齢が進むにしたがって,父親と子どもの両方がそれぞれ個人で過ごす時間が多 くなり,以前よりも関係は希薄になっていた。. 変えていった。それに伴い,一家の経済的支柱と 1.目的. しての父親の役割も変化の兆しが見られるように. 家族におけるジェンダー関係が,1970年後半か. なる。「男も女も仕事と家庭」というジェンダー. ら1980年代にかけて変化したと言われている(天. 観が流布し,父親の家庭での役割が一家の経済を. 野,2006)。専業主婦である多くの女性が,自ら. 支えるだけでは認められなくなったのである。山. の生き方に疑問を持ち「専業主婦」から「働く主. 田(2005)も,1998年以降,戦後の家族モデルは. 婦」や「活動専業・主婦」へとライフスタイルを. 解体し,再構築が迫られていると分析している。. 139.
(3) 岡 田 みゆき. つまり,「夫は仕事,妻は家事・子育てを行って,. 目について,その現状や変化を学術書や統計資料. 豊かな家族生活を目差す」といった戦後家族モデ. を使って検討しながら,父親の周辺の社会状況や. ルが,経済の低成長期の到来(1975年以降)と共. 家族の状況について明らかにする。. に揺らぎ始め,1998年以降,解体しているという のである。そして,それ以後は,家族員のそれぞ. れが家族を離れた個人の生活領域を持つことが普 通になり,個人の自己実現が求められる傾向にあ るという(牟田,2005)。そこでは,個人が家族. 2.方法 (む分析資料. 父親の周辺の社会状況や家族の状況を検討する. と折り合いをつけながら,一方で自己実現を果た. ために,以下の資料を調査した。. し,他方で家族を存続させるため努力するという. 広田照幸 リーディングス日本の教育と社会3. ものである。しかし,これも一般的な家族像とは 言い難く,まだ,新しい家族モデルは見つかって いないという(山田,2005)。. 子育て・しつけ 日本図書センター2006 山田昌弘 迷走する家族:戦後家族モデルの形成 と解体 有斐閣 2005. 一方,父親の周辺の状況の変化は,家庭だけで. 阿部恒久・大日方純夫・天野正子 「男らしさ」. はなかった。父薫別ことって居心地のよかった職場. の現代史 日本経済評論社 2006. も,1980年代に入る噴から変わり始める。1985年. 宮島 喬 現代社会学 有斐閣 2005. の男女雇用機会均等法などの男女平等にむけての. 尾形和男 家族システムにおける父親の役割に関. 制度的改革を背景に,しだいに女性の活用が図ら. する研究:幼児、児童とその家族を対象と. れるようになる。女性が総合職として企業の中に. して 風間書房 2007. 組み込まれ,時には男性の競争相手にもなるなど, 「男だけの世界」,「男同士の粁」の重視から,ス. (統計資料). 厚生省,厚生白書(1998,2002,2003,2005). ムーズに仕事をこなすためには,女性への配慮,. 内閣府,国民生活白書(2005,2006,2007). 女性との円滑な関係が求められることになる。ま. 総理府,男女共同参画自書(1998∼2007). た,雇用環境の激しい変化に対応するために,終. 身雇用制を廃止したり,リストラしたりしなけれ. (卦調査内容. ばならない会社側にとって,仕事に人生のすべて. 1975年以降の家族や社会(職場や地域)の状況. を注ぐ会社人間は不必要になってきた。会社の外. について,学術書や統計資料を使って,以下の項. に活路を見つけ,個人として自立していることが. 目に分類しながら整理する。. 求められ始めた。. ・家族形態の変化・結婚と離婚の現状. このように,1970年後半から,家族におけるジェ. ・少子化の推移 ・家庭観の変化. ンダー関係,家族モデル,職場環境,雇用状況な. ・職業観の変化 ・人生観の変化. ど,父親の周辺の社会や家族の状況は変化してい. ・家庭内での役割分担の状況. るようである。そして,このことが,家庭内での. ・父親と子どもとの関係. 父親の役割に影響を与えていることが考えられ. ・育児休業制度の取得率. る。どのような父親が社会や家庭生活の中で求め られているのかを検討するためには,父親の周辺 の社会状況や家族の状況を理解する必要があると 考える。. 3.結果と考察 (手 家族形態の変化. そこで,父親の役割に影響を及ぼすと考えられ. 家族の構成員の数を最も客観的に,また正確に. る家族形態,結婚,離婚,家庭観,職業観等の項. 把握するためには,日本では居住と生計の共同が. 140.
(4) 父親をとりまく家族や社会状況. 基準となる世帯を調査することである。表1は,. 調査によると,表3の結果であった。. 1975年以降の普通世帯平均人数の推移と一般世帯. 結婚相手を決めるときに重視することとして 「職業」については,男性より女性のほうが重視. 数に占める様々な世帯数の割合の推移である。戦 後一貫して,家族の構成人数は減少し,家族は縮. する傾向がある。その傾向は,男女共に強まって. 小していることがわかる。その理由としては,単. いると言える。また,「経済力」についても,男. 族世帯が増えたこと,三世代世帯が減ったことに. 性より女性のほうが重視する傾向があり,現在も,. よる。また,表2より,核家族世帯においても,「夫. その状況は変わらない。女性の結婚相手に対する. 婦のみ」や「片親と子ども」の世帯が増えたこと. 「経済力」「職業」重視は,結婚生活においては,. 夫が家計収入を稼ぐべきであるという役割分業意. も理由として挙げられる。. このように,家族の構成人数が減ったことによ. 識を持っていることが見て取れる。加えて,男性. り,現在は,少ない家族構成員の中で,「収入を. 自身も結婚生活では,自分の経済力を重視してい. 得る」,「家事や育児を行う」などの家族の機能を. る傾向にある。厚生労働省「少子化に関する意識. 遂行しなければならない状況にあることがわか. 調査」(2004年)によると,結婚できない理由と. る。当然,父親の家庭内での役割が重要視され,. して「経済力がないから」を挙げた割合が,20∼. 収入を得るだけではなく,様々な役割が要求され. 32歳独身男性では46.9%,33∼49歳独身男性で. る状況にあることは,明らかである。. 28.7%であった。男性においても,家計を支えな. ② 結婚と離婚の状況. ければならないとの意識が強いことがわかる。. 夫婦の平均初婚年齢は,1975年以降,男女とも. 「自分の仕事に対する理解と協力」については,. に上昇している。1975年男性27.0歳,女性24.7歳. 男性,女性共に重視している。特に,女性は,近. であったが,2005年には男性29.8歳,女性28.0歳. 年相手に自分の仕事への理解を求める傾向にあ. であった。この30年間で,男性2.8歳,女性3.3歳. る。また,「家事・育児に対する相手の役割」に. 上昇している(厚生労働省「人口動態統計」)。. ついても,男性,女性共に重視している。仕事の. 結婚相手に求める条件としては,1997年と2002. 協力も,家事・育児の分担も互いに求めているこ. 年の国立社会保険・人口問題研究所の「結婚相手. とがわかる。つまり,一方で,結婚生活では,夫. の条件項目別,重視・考慮する未婚者の割合」の. が家計収入を稼ぐべきであるという役割分業意識. 表1 一般世帯数に占める単独世帯数,核家族世帯数,三世代世帯数の割合の推移(%) 1975年. 1980年. 1985年. 1990年. 1995年. 2000年. 2005年. 世 帯 平 均 人 数. 3.28人. 3.22人. 3.16人. 2.99人. 2.82人. 2.67人. 2.56人. 単独世帯数の割合. 19.5. 19.8. 20.8. 23.1. 25.6. 27.6. 29.5. 核家族世帯数の割合. 59.5. 60.3. 60.0. 59.5. 58.7. 58.4. 57.9. 三世代世帯数の割合. 11.9. 12.2. 11.9. 10.5. 9.2. 7.5. 6.1. (総務庁統計局「国勢調査」より). 表2 核家族世帯の家族類型別世帯割合(%) 1975年. 1980年. 1985年. 1990年. 1995年. 2000年. 2005年. 夫 婦 の み. 19.4. 20.7. 22.9. 26.0. 29.6. 32.3. 33.9. 夫 婦 と 子 ど も. 71.5. 69.8. 66.6. 62.6. 58.4. 54.4. 51.6. 片 親 と 子 ど も. 9.1. 9.5. 10.5. 11.4. 12.1. 13.1. 14.5. (総務庁統計局「国勢調査」より). 141.
(5) 岡 田 みゆき. を持ちながらも,男女が共に仕事を持ち,家事や. た,父親から養育費を受け取っている母子世帯は. 子育てを協力して行うというジェンダーフリーに. 14.9%であった。父親の子どもに対する無責任が. たった考えも持っていると言える。. 浮き彫りになっている。さらに,離婚後の親権者. 以外の親と子どもの面接頻度を見ると,「ほとん. 表4から離婚率は増加傾向にある。それに伴い, 表2のように,「片親と子ども」の世帯が増え,. ど会っていない」が64.2%であった。つまり,離. 片親だけで子どもを育てている家庭が増えてい. 婚家庭においては,1人2役を果たしているのが. る。当然,母子家庭では母親が父親の役割も,ま. 現状で,その数は少なくないと言える。 現在の結婚や離婚の状況を考えると,従来の性. た父子家庭では母親の役割も果たさなければなら. 役割分業に立った家庭生活では機能しないことが. ない。. 離婚から見た子どもの責任に関しては,1996年. うかがえる。父親・母親の両方が,共に仕事を持. 厚生省大臣官房統計情報部の調査によると,有子. ち,家事や子育てを行うことで,様々な家庭環境. 離婚件数の78%は,母親が親権者としている。ま. に適応していかなければならない状況にある。. 表3 結婚相手の条件項目別,考慮・重視する未婚者の割合(%) 性. 男. 重視する. 女. 考慮する. 重視する. 性 考慮する. 1997年. 3.0. 32.8. 21.8. 56.1. 2002年. 3.4. 34.5. 22.8. 57.2. 1997年. 2.8. 28.0. 33.5. 57.4. 2002年. 3.2. 27.0. 34.3. 57.8. 1997年. 42.5. 45.7. 46.5. 41.9. 2002年. 44.2. 45.7. 51.7. 41.6. 1997年. 34.9. 51.9. 43.6. 46.2. 2002年. 45.0. 47.0. 59.3. 36.7. 相手の職業. 相手の経済力. 白分の仕事に対する理解と協力. 家事・育児に対する相手の役割. (国立社会保険・人口問題研究所の「結婚相手の条件項目別,重視・考慮する未婚者の割合」より). 表4 離衆昏率の年次推移(人口千人に対する割合) 1975年. 離. 喪昏. 率. 1980年. 1.07. 1.22. 1985年. 1.39. 1990年. 1.28. 1995年. 1.60. 2000年. 2005年. 2.10. (厚生労働省「人口動態続計」より). (多少子化の推移. 表5は,1975年から2005年までの出生数と合計 特殊出生率の推移を表したものである。. 出生数は,1973年209カ人をピークに年々減少 の傾向にある。2005年の出生数は106万人と約半. 子化がここ30年で急速に進行していることがわか る。しかし,このまま少子化の傾向が進むと,労 働力不足が見込まれる。その解決のためにも,女 性の雇用が必要とされている。 なぜ,子どもを産まないのであろうか。国立社. 分に減少している。また,合計特殊出生率も,1975. 会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」. 年1.91から2005年1.26と急速に低下している。人. (1997年)によると,妻が子どもを持たない理由. 口を維持するのに必要な水準(人口置換率)であ る2.08を大幅に割り込んでいる。このように,少. 142. として,「子どもを育てるのにお金がかかる」 (37.0%),「子どもの教育にお金がかかる」. 2.08.
(6) 父親をとりまく家族や社会状況 表5 出生数及び合計特殊出生率の推移 1975年. 出 生 数(千人) 合計特殊出生率(人). 1980年. 1985年. 1990年. 1995年. 2000年. 2005年. 1,901. 1,577. 1,432. 1,222. 1,187. 1,191. 1,067. 1.91. 1.75. 1.76. 1.54. 1.42. 1.36. 1.26. (厚生労働省「人口動態統計」より). (33.8%),「高齢で産むのは嫌」(33.5%),「こ. 成・反対が同率となり,2004年には反対が上回っ. れ以上,育児の心理的・肉体的負担に耐えられな. た。. い」(20.8%)が上位であった。子育てに伴う養. 男女別で見ると,「夫が外で働き,妻が家を守る」. 育費と教育費の経済的な負担と,母親の子育ての. という考え方に賛成は,男性50.7%,女性39.9%. 時間的,心理的,肉体的負担感が挙げられている。. と賛成の割合は男性のほうが多い。しかし,男女. 経済的な負担を軽減するためには母親が職業を持. 共賛成と答える者は減少しているので,性役割分. つこと,子育ての負担感を軽減するためには父親. 業意識は薄れてきていると言える。. さらに,年代に別に見ると,賛成20∼29歳:. の育児参加が求められていると言える。. 41.4%,30∼39歳:38.8%,40∼49歳:37.3%,. このように,少子化傾向が進んでいる状況の中. 50∼59歳:40.0%,60∼69歳:50.0%,70歳以上. で,安心して子どもを生み育てるためには,父親. と母親が共に仕事を持ち,協力して子育ての当た. :56.9%であった。60歳以上では,賛成のほうが. 反対より多くなっているが,それ以下の年代では、. る必要があると言える. 反対者のほうが多くなっている。特に,40代はジェ ンダー. (彰 家族観の変化. 図1は,内閣府で行った「夫は外で働き,妻は. フリーの考え方をしていることがわかる。. 20代が40代より賛成が多いことは意外と言える。. 家庭を守るべき」という考え方についてのアン. 男性においては,若い世代ほど反対する者の割合. ケート結果の推移である。. が高くなっていた。しかし,20代,30代の女性は 40代の女性より賛成が多かった。専業主婦を望む. 「夫が外で働き,妻が家庭を守る」という考え. 方について,1979年では男女ともに賛成するもの. 若い女性が依然として少なくない。. が72.5%を超えていた∩ しかし,2002年には賛. 以上から,家庭内の役割分担について問題にさ. %8−. ÷賛成 −・ロー・反対. 0. 1979. 1992. 1997. 2002. 2004. 2006 年. 区= 「夫が外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えについて (内閣府「婦人に関する世論調査」1979年,「男女平等に関する世論調査」1992年,「男女共同参画社会に関する 世論調査」1997年,2002年,2004年,2006年より). 143.
(7) 岡 田 みゆき. れるようになったのは,調査が再開された1992年. 33.8%)と,「継続就業」支持者については,女. 頃からであり,年々性役割分業意識は薄れてきた。. 性のほうが男性より若干多いが,男女共に「継続. そして,その意識が逆転したのは2002年以降で,. 就業」支持が多いことから,男女共に生涯通じて. 家庭内の役割分担意識は変化したと言える.. 女性が職業をもつことを肯定的に捉えるように なったと言える。 次に,父親の職場環境は,どのようになってい. (9 職業観の変化. 表6は,雇用者数に占める女性の割合の年次推. るのだろうか。図2は,仕事や職場環境に関する. 移を表したものである。1975年の32.0%が2005年. 項目の充足度の推移を表したものである。「快適. では41.3%と年々上昇し,女性の社会進出が進ん. な職場環境」は,1990年代後半から2000年代初め. でいることがわかる。. にかけて,いくらか下がる傾向が見られるが,「仕. 事のやりがい」と「雇用の安定」の2つの項目ほ. 内閣府「男女共同参画に関する世論調査」の結 果でも,女性が職業を持つことに対して,「子ど. ど顕著に低下していない。この2つの項目に関し. もができても,ずっと職業を続けるほうがよい」. ては,1980年代後半以降,低下する傾向にあり,. と考える「継続就業」支持(37.6%)が,「子ど. 特に20代の「仕事のやりがい」については,2005. もができたら職業をやめ,大きくなったら再び職. 年(2.5)も引き続き低下していた。これは,企. 業をもつ方がよい」と考える「一時中断・再就職」. 業間のグローバルな競争が激化する中で,正社員. 支持(36.6%)を,2002年に初めて上回った。. の年功的な処遇を見直し,成果主義,能力主義を. また,2006年の同調査において,男女差を見る. 賃金決定に取り組む企業が増えて,会社の帰属意. と,「継続就業」支持(男性40.9%,女性45.5%),. 識が低くなったためと考えられる。男性の職場と. 「一時中断・再就職」支持(男性32.2%,女性. のつながりは弱まってきていると考えられる。. 表6 雇用者数に占める女性の割合の年次推移(%) 1975年. 女 性 の 割 合. 32.0. 1980年. 34.1. 1985年. 35.9. 1990年. 1995年. 37.9. 38.9. 2000年. 2005年. 40.0. (総務省続計局「労働力調査」より). 一−◇一仕事のやりがい・・■・一雇用の安定−▲・快適な職場環境. 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005 図2 仕事や職場環囁に関する項目の充足度の推移. 144. 41.3.
(8) 父親をとりまく家族や社会状況. にまで迫っていて,男女の賃金の格差は縮小して. (参 人生観の変化. 女性の社会進出は進み,一方で,男性の職場環. いる。. 境は悪化する状況の中で,男女はそれぞれどのよ. また,世帯の収入について夫婦いずれが責任を. うな生き方をしようと考えているのであろうか。. もつ家庭を築きたいかと尋ねたところ,「夫が主」. 1997年,2004年の内閣府「男女共同参画社会に. (男性52.5%,女性53.9%),「同様の責任」(男. 性46.5%,女性45.3%)となっていた。男女共に. 関する世論調査」の中の「仕事,家庭生活,地域. 活動への男女の望ましいかかわり方」では,女性. 「夫が主」と考える人の割合が高かったが,「同. の望ましいかかわり方について,1997年では,「家. 様の責任」も半数近く占めており,就業における. 庭生活・地域活動優先」(45.0%)が最も多かった。. 分業のメリットが必ずしも重視されなくなってき. しかし,2004年には,「仕事と家庭生活・地域生. ていることがわかる。つまり,家計費負担におけ. 活の両立」が最も多くなっている。また,「仕事. る夫婦の役割は,共同化への方向が見られる。. 優先」も10.5%から25.1%と急激に増えている。. それでは,家事や育児について,どのように分. 女性が職業に従事することへの抵抗感がなくなっ. 担されているだろう。表7は,総務省「社会生活. てきていることがわかる。. 基本調査」の中の「育児期にある有業夫婦の仕事,. 男性の望ましいかかわり方については,ほとん. 家事,育児時間」の推移を表したものです。夫に. ど変わっていない。職場環境は悪化する傾向に. おいては,仕事時間と育児時間が若干延びてはい. あっても,反って,「仕事優先」が62.4%から. るが,1986年からあまり変化がない。妻において. 68.5%に増えていた。このように,女性の望まし. は,仕事時間と家事時間が減り,育児時間が増え. い生き方は変化しているが,男性の生き方は変. ていた。時間から,夫婦の仕事,家事,育児の関. わっておらず,男女の役割分業意識は徐々に薄れ. わり方をみた場合,夫は仕事中心の生活を送り,. ているが,「男は仕事中心」という意識はある。. 妻が家事・育児の全般を担っていると言える。夫 の家事・育児参加は進んでいない状況が伺える。. 加えて,1996年の総務省の同調査における家事. (∋ 家庭内での役割分担の状況 1997年の総務庁統計局「労働力調査特別調査」. 関連時間(育児時間を除く)においては,共働き. によると,夫婦の47.9%が共働き世帯であり,専. 世帯と専業主婦世帯とを比較すると,共働き世帯. 業主婦世帯の36.7%を上回っている。また,若年. (夫18分,妻3時間56分),専業主婦世帯(夫20分,. 層(25∼34歳)の共働き率が2000年から急激に上. 妻5時間56分)で,妻の家事関連時間は,有業か. 昇している。就学前の子どもがいながらも,働く. 無業かで大きな差はあるが,夫の家事関連時間は. 母親が増えてきている。実際,収入の面でも,2003. 有業か無業かによる差異はみられなかった。共働. 年の34歳以下の勤労者単身世帯での実収入を見る. き夫は男女の役割分業意識が低く,一見,家事参. と,男性30万3978円,女性27万8301年となってお. 画意識も高いようにも想像されるが,「女性は仕. り,男性の実収入に対して女性の実収入は91.6%. 事をもつのはよいが,家事・育児はきちんとすべ. 表7 育児期にある有業夫婦の仕事,家事,育児時間の推移 夫(時間). 妻(時間). 仕事時間. 家事時間. 育児時間. 仕事時間. 家事時間. 育児時間. 1986年. 9.00. 0.06. 0.05. 5.21. 3.43. 1.21. 1996年. 9.07. 0.10. 0.10. 4.52. 3.42. 1.31. 2001年. 9.17. 0.10. 0.16. 4.32. 3.34. 1.52. (総務省「社会生活基本調査」). 145.
(9) 岡 田 みゆき. きである」と言う考えに賛成する男性の割合は約. は,いずれも前回に比べ低下している。この調査. 9割にも達し,妻の就業に関して夫は寛容になっ. では,夫の家事分担は停滞していると言える。た. ているが,あくまでも家事・育児と両立できると. だし,年代別に見ると,40歳以上は,夫の家事分. いうことが前提という意識は強く見られる。ただ. 担は停滞しているが,20代,30代は家事遂行率が. し,1日7時間以上勤務している女性では,夫の家. 比較的高く,年々増加傾向にあった。 表9は,6つの育児関連項目について,夫が「週. 事・子育て時間60分以上が21.6%と高かった。家. 事と育児が同様に負担はされていない状況ではあ. 1∼2回」以上,遂行している者の割合の推移を. るが,フルタイムで働く女性が仕事と子育てを両. 示したものである。「週1∼2回」以上,遂行が「遊. 立するためには,男性の家事・育児参加は必要不. び相手をする」,「風呂を入れる」が70%を超え,. 可欠であるというデータも見られた。. 他の項目より有意に高かった。「寝かしつける」 は40%台と低いが,すべての項目で,年々夫の育. 次に,家事の分担を行動から検討してみる。表. 8は,7つの家事関連項目について,夫が「週1. 児遂行割合は高くなっている。特に,若い世代を. ∼2回」以上,遂行している者の割合の推移を示. 中心に育児参加が増えていた。. このように,父親の家事・育児参加に関する全. したものである。「週1∼2回」以上,遂行が40% を超える項目はなかった。第1回(1993年)と第. 国的な調査は,1980年後半から始められているが,. 2回(1998年)の調査を比較すると,すべての項. 具体的な家事・育児行動について調査されたのは. 目で夫の家事遂行割合は高くなっていた。しかし. 1990年以降である。それまでは,父親の家事・育. ながら,第3回(2002年)の調査では,「ゴミ出し」. 児参加については,世間の関心もなかったという. で若干遂行率の上昇がみられるものの他の項目で. ことであろう。これらの調査結果から,父親の育. 表8 夫の家事遂行割合の推移 1993年. 1998年. 2003年. ゴミだし. 26.5%. 33.4%. 36.4%. 日常の買い物. 25.2%. 34.7%. 31.9%. 部屋の掃除. 13.4%. 18.7%. 16.7%. 洗濯. 15.7%. 19.7%. 17.7%. 炊事. 20.1%. 24.9%. 15.7%. 25.4%. 24.7%. 風呂洗い. 23.1%. 食後の後片付け. (国立社会保障・人口問題研究所「全国家庭動向調査」より). 表9 夫の育児遂行割合の推移 1993年. 1998年. 2003年. 遊び相手をする. 78.0%. 82.3%. 85.1%. 風呂に入れる. 72.7%. 77.4%. 78.6%. 食事をさせる. 40.9%. 49.9%. 53.9%. 寝かしつける. 38.1%. 38.8%. 42.9%. オムツを替える. 37.5%. 46.1%. 52.1%. 59.1%. 64.4%. あやす. (国立社会保障・人口問題研究所「全国家庭動向調査」より). 146.
(10) 父親をとりまく家族や社会状況. 児参加は進んできていると言える。一方,家事に. 以内と回答しており,平日父親が子どもと接する. ついては,若い世代の参加が増えているのに対し,. 時間が短い。特に,「ほとんどない」と回答して. 40代以上の父親は停滞していた。これは,若い世. いる割合が,2000年14.1%から,2006年23.5%へ. 代は,家事や育児をすることに抵抗感が少ない上,. と大幅に増加しており,父親の4人に1人が平日ほ. 男女が協力して家庭生活を築くという意識が高い. とんど子どもと接していないことがわかる。国際. ため,家事・育児参加が進んでいると思われる。. 比較調査と同様,この調査でも,父親の接する時. また,ここ数年の間に家事・育児に参加する男性. 間は減少している。このような状況の背景として,. を肯定的に評価する社会的な動きがあり,始めて. 父親の長時間労働が要因の一つとして挙げられ. 父親になる若い世代は参加しやすい環境にいるこ. る。総務省「労働力調査」によると,60時間以上. とも原因として挙げられるだろう。. 働く従事者の割合は1995年の16.8%から,2005年 の17.9%へと増えている。特に子育て期の30代男. 性は,1995年20.9%,2005年23.5%の男性が週60. (参 父親と子どもとの関係. 父親の育児参加が徐々に進んでいることが認め. 時間以上働いている。毎日4時間以上の残業をし. らたが,学童期までの子どもについてはどうであ. ている計算である。そのため,帰宅時間が遅くな. ろうか。. る。/ト学生の就寝が増え始める9時以降に帰宅す. る父親は31.0%と,2001年の調査より5%以上も. 2006年独立行政法人国立女性教育会館「家庭教 育に関する国際比較調査」によると,0∼12歳の. 増加していた。. 子どもが親と平日過ごす時間は,母親が平均7.6. また,子ども自身が家で別行動をとっているこ. 時間と調査対象国中で最も長いのに対し,父親は. とも一つの要因として挙げられる。2001年,総務. 平均3.1時間と韓国(2.朗寺間)に次いで短かった。. 省「社会生活基本調査」によると,平日の夜帰宅. その結果,父親と母親が子どもと過ごす時間の差. してから就寝までの時間を家族と過ごさず1人で. は4.5時間と6か国中最大(韓国:4.4時間,タイ. 3時間以上過ごしている人の割合は,小学生3.6%,. :1.2時間,アメリカ:2.5時間,フランス:1.9. 中学生20.8%,高校生33.0%と,子どもが成長す. 時間,スウェーデン:1.2時間)となっている。. るにつれて親と独立して行動する状況がうかがえ. また,1995年の同調査結果,父親の平均3.3時間,. る。加えて,中学生以降では,クラブ活動や塾に. 父親と母親の差4.0朗寺間と比べてみると,父親が. 通う生徒が増え,帰宅も遅くなる。父親と子ども. 子どもと過ごす時間はさらに減少している。子ど. の両方の帰宅が遅い上,子ども1人で過ごす時間. もとのつながりは弱くなっていることが予想され. が増えている状況では,平日において,ほとんど. る。. 父親との関わりがないことが想像できる。. さらに,小学4年生から中学3年生までの子ども. このように,父親と子どもの関わりは,密接で. を持つ父親が平日に子どもと接する時間を尋ねた. あるとは言えない。そして,以前よりも増して父. 総務庁と内閣府の調査結果が,表10である。2000. 親と子どものつながりは弱まっていると思われ. 年,2006年ともに,約6割の父親が「30分くらい」. る。特に,子どもの年齢が進むにしたがって,父. 表10 平R父親子どもと接する時間の割合 ほとんどない 15分程度 30分程度 1時間程度 2時間程度 3時間程度 4時間以上 2000年. 14.1%. 16.6%. 30.3%. 21.4%. 9.1%. 5.0%. 3.4%. 2006年. 23.5%. 14.8%. 22.1%. 24.3%. 9.8%. 4.2%. 1.3%. (総務庁「青少年の生活と意識に関する基本調査」2000年,内閣府「低年齢少年の生活と意識に関する調査」2006年より, 回答者は小学4年生から中学3年生までの青少年の父親). 147.
(11) 岡 田 みゆき. 親と子どもの両方がそれぞれ個人で過ごす時間が. をフレキシブルにして,育児に関わりやすくする. 多くなり,さらに関係は希薄になっている。. 必要がある。実際,イギリスやアメリカでは,30%. の父親が子育てに関わるなど,父親と母親が交代 で育児を分担している(牟田,2005)。日本の厳. (卦 育児休業制度の取得率. 表11は,男女それぞれの育児休業取得率の推移. しい職場の環境を考えると,育児休業で休むより,. を表したものである。女性の育児休業率は着実に. 時間短縮労働を規定するほうが父親は利用しやす. 伸びている。一方,男性は増える傾向にあるもの. いと考えられる。. の未だに1%に満たない。男性の育児休業取得は 伸び悩んでいると言える。 4.結論. (財)こども未来財団「子育てに関する意識調. 査」(2001年)によると,父親が育児休業を取得. 父親の役割に影響を及ぼすと考えられる父親の. しなかった理由として,「仕事の量や責任が大き. 周辺の社会状況や家族の状況について明らかにす. い」(66.7%),「給料がはいらないと経済的に困. るため,家族形態,結婚,離婚,家庭観,職業観. るから」(57.8%),「職場の理解が得られない」. 等の項目について,その現状や変化を学術書や統. (47.6%),「男性は子育てよりも仕事に専念すべ. 計資料を使って検討した。その結果,以下のこと が認められた。. き」(25.4%)が上位を占めていた。. 職場に男性が育児休業を取りやすい雰囲気があ. ・家族構成員の人数が年々減り,両親あるいは片. るかどうかについては,日本労働研究機構「育児. 親のみで,家庭の機能を維持していかなければ. や介護と仕事の両立に関する調査」(企業調査,. ならない状況にある。. 2003)によると,「どちらかといえばとりにくい」. ・「自分の仕事に対する理解と協力」や「家事・. と答えた企業か52.2%と過半数を超えており,そ. 育児に対する相手の役割」について,男性,女. の理由は「職場が忙しい・人が足りない」が. 性共に結婚の条件として重視している。. 73.3%,「経営状況がきびしいため」が31.8%,「経. ・片親だけで子どもを育てている家庭が増え,核. 営幹部や管理職が男性の育児休業に否定的」が. 家族全体の約15%を占めている。. 26.3%となっていた。. ・1992年噴から,年々家庭内の性役割分業意識は. このように,男性は経済的な理由や職場の忙し. 薄れ,2002年には,「夫が外で働き,妻が家庭. い環境から,育児休業制度が取得できない。安心. を守る」という考え方に反対が賛成を上回った。. して,育児休業制度を取得するためには,職場が. ・男女共に女性の「継続就業」支持が年々増え,. 育児休業を取りやすい雰囲気にすることはもちろ. 2002年は,子育てのために職場を離れるよりも,. んであるが,スウェーデンのように,30日の父親. 仕事をしながら子育てをすべきであるという考. の育児休業取得中は給料の75%の給付金を受ける. えが多数派を占めるようになった。. ことができるなどの制度の確立が必要であろう。. ・女性の望ましい生き方は変化し,男女の役割分. さもなければ,イギリスやアメリカのように,公. 業意識は徐々に薄れているが,男性の仕事優先. 的な育児休業制度ではなく,労働形態や労働時間. の生き方はあまり変わっていない。. 表‖ 育児休業取得率の推移 1996年. 1999年. 2002年. 2004年. 2005年. 男性の取得率. 0.16%. 0.42%. 0.33%. 0.56%. 0.50%. 女性の取得率. 44.5%. 56.4%. 64.0%. 70.6%. 72.3%. (厚生労働省雇用均等・児童家庭局「女性雇用管理基本調査」より). 148.
(12) 父親をとりまく家族や社会状況. ・1990年以降,父親の家事・育児参加についての 引用文献. 調査が始まり,世間の関心になった。 ・家事については,若い世代の参加が増えている のに対し,40代以上の父親は停滞している。一 方,父親の育児参加は,徐々に増えている。 ・子どもの年齢が進むにしたがって,父親と子ど もの両方がそれぞれ個人で過ごす時間が多くな. り,以前よりも関係は希薄になっている。 ・経済的な理由や職場の忙しい環境から,父親の. 天野正子,2006,「男であること」の戦後史:サラリーマ ン・企業社会・家族,pp.10−71,阿部恒久・大日方純 夫・天野正子,「男らしさ」の現代史,日本経済評論社 中田照子,2005,国際比枚:働く父母の生活時間一骨児 休業と保育所−,御茶の水書房. 牟田和恵,2005,現代の家族,pp.206−225,宮島 喬, 現代社会学,有斐閣 山田昌弘,2005,迷走する家族:戦後家族モデルの形成 と解体,有斐閣. 育児休業制度の取得率は伸び悩んでいる。 (旭川校准教授). これらの知見から,現在,父親の家庭内での役 割が重要視され,収入を得るだけではなく,様々. な役割,特に家事や育児に参加しなければならな い社会状況や家族状況にあることは明らかであ る。 ところで,父親の様々な役割,特に家事・育児. の役割を求める傾向は,これについての政府の調 査が始まった1992年噴から見られ始めた。そして,. 2002年には,母親が仕事を持ちながら子育てをす ることに賛成する男女が多数を占めるようにな り,父親の家事・育児参加は,新しい父親の当然. 求められる姿になったと言える。つまり,2002年 は,新しい父親の姿が社会で承認された転換の年 と考えられる。. しかしながら,家事・育児をする父親が「よい 父親像」として社会で承認されてきたとはいえ,. 実際の父親が家事・育児に参加したり,育児休業 を取得したりしているわけではない。多くの父親 は,職場の忙しい環境から,仕事に追われる毎日. で,思うように家事・育児参加が進まないのが現 状である。だたし,若い世代を中心に,徐々にで はあるが家事や育児をする父親が増えているのも. 事実である。こうした若い世代の家事や育児に対 する意識の高さを維持し,実際に参加できるよう にするためにも法律や制度あるいは教育の充実が 望まれている。. 149.
(13)
関連したドキュメント
父親が入会されることも多くなっています。月に 1 回の頻度で、交流会を SEED テラスに
海に携わる事業者の高齢化と一般家庭の核家族化の進行により、子育て世代との
親子で美容院にい くことが念願の夢 だった母。スタッフ とのふれあいや、心 遣いが嬉しくて、涙 が溢れて止まらな
里親委託…里親とは、さまざまな事情で家庭で育てられない子どもを、自分の家庭に
№3 の 3 か所において、№3 において現況において環境基準を上回っている場所でございま した。ですので、№3 においては騒音レベルの増加が、昼間で
下山にはいり、ABさんの名案でロープでつ ながれた子供たちには笑ってしまいました。つ
今年は、目標を昨年の参加率を上回る 45%以上と設定し実施 いたしました。2 年続けての勝利ということにはなりませんでし