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特別支援教育に関わる校内研修のあり方 : 全教員で児童を支援するための研修方法とシステムの開発に向けて

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(1)Title. 特別支援教育に関わる校内研修のあり方 : 全教員で児童を支援するため の研修方法とシステムの開発に向けて. Author(s). 濱渕, 雅樹; 二宮, 信一; 栢野, 彰秀. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第42号: 199-207. Issue Date. 2010-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2357. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第42号(平成22年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.42(2010):199-207. 特別支援教育に関わる校内研修のあり方 ~全教員で児童を支援するための研修方法とシステムの開発に向けて~ 濱 渕 雅 樹1・二 宮 信 一2・栢 野 彰 秀3 1. 北海道教育大学附属釧路小学校. 2. 北海道教育大学釧路校地域学校教育専攻. 3. 北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻. Significance Teacher's On-The-Job Training for Special Needs Education Masaki HAMABUCHI1, Shinichi NINOMIYA2, Akihide KAYANO3 1. Kushiro Elementary School Attached to Hokkaido University of Education 2. Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 3. Hokkaido University of Education Graduate School. 要 旨 特別支援教育が始まり、発達障害をはじめとするさまざまな課題のある子どもに対して、学校がチームとなって取り組 んでいく体制作りが求められ、 各学校においては学校の事情に合わせた校内研修がもたれてきている。そのような中にあっ て、本報告は、特別支援教育コーディネーターの役割を吟味しつつ、生徒指導実践交流会という形の校内研修のあり方と 子どもの課題を全教員が共有するための児童データベースの構築について2年間にわたって積み上げてきたものを検討し たものである。 特別支援教育に関わる教員の研修のあり方としては、担任教師がクラスの状況を公開し、抱えている課題を教員が協働 で検討することが、かかる担任教師のみならず、協働で検討した他の教員にとっても、子どもを捉えていく視点の獲得に つながり、教員集団の力量形成の底上げになっていったこと、そのためにコーディネーターが、学校内の課題と教員集団 の力量とを照らし合わせ、研修内容を検討していったこと、そのような蓄積の結果、児童データベースの意義が見え、教 員が活用する状況が生まれてきたことが明らかになった。. 1.はじめに. 本報告は、北海道教育大学附属釧路小学校における特別. 特別支援教育がすべての学校で推進することの重要性が. 支援教育に関わる校内研修のあり方と児童データベース構. 共有されてきた中で、各学校で指名されている特別支援教. 築に向けた2年間の実践をまとめ、成果とそれを可能とし. 育コーディネーター(以下コーディネーター)の役割につ. た条件を考察し、そこから見えてくる今後の取り組みの方. いて、仕事の内容については文科省からガイドライン等で. 向性について検討するものである。. 示されてはいるものの、各学校のおかれている状況の違い もあり、具体的なモデルがないまま、手探りでその役割を. 2.附属釧路小学校の概要. 担っている現状であろう。また、教員間でその役割のコン. 本校は、児童約440名で、各学年2学級編成の学校で特. センサスが得られているのは、まだわずかであると思われ. 別支援学級はない。管理職3名、学級担任12名、研修主. る。特に、特別支援教育に関わる校内研修はコーディネー. 任・実習主任各1名、養護教諭1名の18名体制で運営して. ターの役割の大きな柱であり、学校全体が特別支援教育に. いる。それ以外には、教職大学院院生が非常勤講師として. 向かっていくためには、必要不可欠なプログラムである。. 2名いるが、特別支援教育支援員等の配置はなく、余剰人. それゆえ、学校の現状に即したカリキュラムや運営の仕方. 員のいない中での特別支援教育体制となっている。. が構築されなければならず、現場のニーズに応えるために. また、教員の年齢構成も若く、管理職を除くと、40歳代. もスタンダードがないと考えたほうがよく、コーディネー. が1名、20歳代が数名で、30歳代が大半を占め、特別支援. ター自身が学校の現状分析を行い、 「次の一歩」のための. 教育に関わる経験はほとんどない教員集団である。. 研修を組み立てていく必要がある。. 特別支援教育の制度では、その対象が「障害のある児童. - 199 -.

(3) 濱 渕 雅 樹・二 宮 信 一・栢 野 彰 秀 生徒」 となっており、 特別支援学級のない本校にとっては、. ①ねらい. LD、ADHD、高機能自閉症などの知的発達に遅れのない. ⅰ. 子ども一人一人のニーズにあった支援の方法や実践に. 発達障害のある児童が対象となるのであるが、本校におけ. ついて共通理解を図る。. る特別支援教育は、発達障害と診断されているかどうかで. ⅱ. 特別支援を必要とする子どもや担任の目から見て気に. はなく、 子どもの学習上、 生活上の「困り感」に目をむけ、. なる子どもについて、交流する場を持ち、全職員で確. 支援していくことと捉えている。それは、教育現場では、. 認できるようにする。. 子どもの学習上の困難さ、生活上の困難さに目をむけてい. ⅲ. 年4回交流会を行い、子どもの変容を見取ることで、. くことのほうがむしろ実践的であり、有効性を持つと考え. 具体的で実践的な交流を進める。. られるからである。. ②今年度の重点 ⅰ. 実態把握に終わらず、手立てによってどのように子ど. 3.1年目(2008年度)の実践から. もが変容したかまで交流を行うようにする。. 1)生徒指導実践交流会の取り組みを通して. ⅱ. 大学教員に可能な限り交流会に参加してもらい、子ど. 本校では年4回、児童の実態を交流する生徒指導実践交. もに対するより具体的な手立てや、指導方法を研修す. 流会(以下交流会)を行っており、児童の情報交換を行っ. る機会を設ける。. ていたが、各学級担任から報告はされるものの、その対応. ③内容・計画. 策について検討するところまでには至っていなかった。そ. ⅰ. ブロック交流 註1) と全体交流 註2) をする時間を設け. こで、この交流会に特別支援教育の観点を加え、子どもの. る。. 困り感に着目し、その要因や対策について研修する場とし. ⅱ. ブロック交流では、可能な限り大学教員に入ってもら. ての機能を付加し、大学との連携により特別支援教育担当. う。また、大学教員には、授業中等の子どもの様子を. の教員(以下大学教員)を講師として招き、学びを深める. 見に来てもらうようにする。. こととした。4月初めの運営計画では、年4回の交流会を. ⅲ. 担任の目から見て支援を要する子ども、ブロックから. 次のように企画した。. 見て支援を要する子どもを抽出する。 ⅳ. 抽出した子どもの指導目標や手立てについてブロック 表1 2008年度 生徒指導実践交流会 企画. - 200 -.

(4) 特別支援教育に関わる校内研修のあり方 で話し合う。. ②目標は、到達可能な設定とする。. ⅴ. 本年度は、4回(5、6、11、2月)の交流会を実施. ③手立ては具体的なものとする。. する (表1) 。事前に各担任より資料を提出してもら い、子どもの実態の資料として保管していく。5月、. 3)子どもの見方①~大学教員と一緒に教室をまわって. 2月については、個人写真を使用した児童交流を中心. 交流会を行うにあたり、大学教員が事前に子どもの実態. に行うこととした。. について観察する場を設定した。その際、筆者も同行し、. しかし、この計画を実行に移すにあたり、さまざまな問. どのような観点で子どもに注目し、抽出したのかを学ぶこ. 題点が浮かび、改善を余儀なくされた。. ととした。その中で見えてきたことは次の4点であった。. まず、一つ目の問題は「時間の確保」であった。交流会. ①落ち着きのない児童~座っている様子から. を行う日程は決まっていたが、その限られた時間を有効. 椅子に座っていても常に動いている子どもは落ち着きが. に、且つ、スムーズに進めていったとしても、当初の計画. なく、普段の作業もせっかちな行動が考えられた。. 通りでは交流会のねらいに近づくことが難しいということ. ②片付けられない児童~児童の座席周辺から. であった。二つ目の問題としては、全教員が大学教員の研. 座席の周りや机の中を片付けることの出来ない子どもに. 修を受ける時間を確保するということであった。コーディ. も注目する必要があること。. ネーターである筆者が教員と大学教員の間に入るよりも、. ③何を行えばいいのかわからない児童~教師の指示と児童. 直に話を聞く時間を設けた方が良いと感じたためである。. の反応から. この二つの問題点を改善するために交流会の持ち方を以下. 教師の指示を一見聞いているように見えても、作業が始. のように変更した。. まると周りを見渡し、周囲の子どもの様子を確認してか. ①ブロック交流は交流会の中で時間をとらず、交流会前ま. ら作業を開始する児童は、何をしたらいいのかがわから. でに済ませておく。. ず、教師の指示が伝わっていない可能性があるというこ. ②全体交流は、大学教員の研修(本校の児童の実態や手立. と。. てについて)を受けることを中心として、今後の交流会. ④学ぶ姿勢が確立していない児童~鉛筆の持ち方や姿勢か. も大学教員による具体的な子ども理解、支援の手立てに. ら 鉛筆の持ち方や姿勢が悪い児童は、学ぶための準備が指. ついての研修を受けるようにしていく。 これにより、年間の交流会の内容を以下のようにした。. 導されていない。また、姿勢保持の困難さは、集中する. 5月:全職員で気になる児童の確認~児童写真を使って交. ことを妨げることがあるということ。. 流する。 6月:大学教員の講話~事前に児童を見てもらった上で、. 4)子どもの見方②~普段目立たない子. 子どもの行動上、学習上、対人関係上おきている課. 今回、大学教員と共にクラスを巡回し学んだことは、. 題を整理し、そのような困り感の背景にある子ども. 「一見問題を抱えていないように見えるが実は配慮が必要. の発達的課題、認知の偏り、身体的問題などの講義. な子どもがいる」ということであった。普段の授業では、. から、具体的な児童への関わりの工夫や手立てにつ. 他の子に迷惑をかけることもなく、授業にのぞむことので. いてのヒントを提供してもらう。. きる子どもが、実は様々な困難を抱えている可能性がある. 11月:大学教員の講話~6月からの児童の変化、手立ての. として、各学級で数名抽出された。これまで指導を要する. 有効性について個人ファイルをもとに講義。. 児童として名前が挙がってくる子は、「立ち歩く」「奇声を. 2月:大学教員の講話~この1年の取り組みについて手立. 発する」 「学習についていくことができない」等、担任の. てが有効だったのかの検証、次学年への引き継ぎ項. 目から見てその困難さがわかる児童が抽出されていた。も. 目の整理。. ちろん、そうした児童に対する配慮も必要だが、普段目立 たないが、実は困り感を持っている子どもがクラスに数名. 2)個人ファイルについて. おり、担任が気づいていないことがあるという事実が、筆. 個人ファイルは、子どもの実態について客観的に記録. 者にとって大きな収穫であった。. し、その成長の様子が捉えられるように始めた取り組み. 6年生のA君は、先にも述べたように普段の生活の中で. で、2007年度から行ってきていたが、2008年度は大学教員. 気になるようなところは殆どない。誰とでも仲良くし、友. による児童の観察を踏まえた気になる児童についての抽出. 達や教師に頼まれたことも快く引き受けてくれる。また、. を行い、その後、クラス担任自身が気になる児童を加え、. 作業が丁寧で、ノートやプリントの字は大変丁寧に書くこ. 個人ファイルを制作することにした。なお、個人ファイル. とが出来る。そのため、これまでは、抽出児童にあげるこ. を作成するにあたり、留意すべきこととして、以下の3点. とはしていなかった。しかし、大学教員から名前が挙がっ. を確認した。. てから彼の動きに注目するといくつかの心配な様子が見ら. ①実態については、気になる部分(マイナス面)だけでな. れたのだった。. く良い点も書くようにする。. A君の行動の特徴. - 201 -.

(5) 濱 渕 雅 樹・二 宮 信 一・栢 野 彰 秀 ①授業中当てられたら、まずとなりの児童に確認をしてか. ④彼にしかできないことを見つけて、その仕事や取り組み. ら発表する。. は専属にする。. ②学習中、休み時間共に自分の意志と言うより周りの児童. このような形で、A君への取り組みを整理することに. についていく場面が多い。. よって、授業や生活の場面での担任の関わり方の方向性が. ③作業が始まってからしばらく、黙っている時がある。そ. 明確となり、具体的な支援につながっていった。. の後周りの児童を見て活動を始めている。 ④修学旅行のグループを決める際、 「誰と一緒でもいい」. 5)1年目の課題と今後の取り組みについて. と言ってゆずる場面が多かった。. 1年の実践を通して、今後の課題、取組として次の3点. 以上の様子から、彼には授業中に以下のような困り感があ. が挙がった。. ることが考えられた。. ①特別支援教育の推進を図っていくためにコーディネータ. A君の困り感. ーとしてどのように動いていくかという枠組みを明記し. ①教師の指示が理解できていない時がある。. たマニュアルを作ること. ②何をしていいのかがわからずに困っていることがある。. ②各学級にいる困り感をもつ児童に対してどのようなチー. ③自分の考えを友達に伝えることが苦手である。. ムを組み、どのような支援が必要かを組み立てること。. ④不安が強く、自信を持って行動していない。. ⅰ. チームによる支援体制の確立. そこで、本児の指導目標と手立てを次のように考えた。. 支援を要する児童に対して、複数の教員による指導体制. 長期目標. を考える。また、各家庭や関係機関との連携を視野に入れ、. ①自分の思いを友達に伝えることが出来るようになる。. 学校内に限らず、その児童に対する支援計画を作成し、そ. ②自分のすべきことを友達に頼らず、出来るようにする。. の成果を検証していく。. 短期目標. ⅱ. 教材開発. ①今、しなくてはいけないことがわかるようにする。. 通常学級には、支援を要する児童とそうではない児童が. 手立て. 混在している。各担任の目指す教材は、支援を要する児童. ①活動に入る前に、これからすべきことを自分で確認でき. のみに通用する教材ではなく、どの児童にも対応可能な教. る時間を設ける。. 材として考え開発していく。. ②これからすることをノートの端に記入するように声をか. ③交流会の充実を図る。. ける。. 年数回行っている交流会の内容の充実を図り、実践に結. ③自信をつけさせるために、うまくできたときはクラス全. びついた内容としていくために交流会における研修プラン. 体で賞賛する。. を表2のようにまとめた。 表2 次年度 生徒指導実践交流会における研修プラン. - 202 -.

(6) 特別支援教育に関わる校内研修のあり方 2008年度は、特別支援教育に関わる大学教員の指導を受. ⅱ. 抽出クラスでビデオ撮影してきた資料を用いて、子ど. けながら、教員全員で本校の児童について理解を深めるこ. もの見方や教師の関わり、支援の手立てと子どもの変. とができた。次年度以降は、このことを踏まえて、全教員 で共通の認識を持って、授業の改善、生徒指導の改善につ. 容について交流する時間を設定する。. なげていくこととした。. ③内容・計画 ⅰ. 年4回の交流会の計画・提案を行い、大学教員には交. 4.2年目(2009年度)の実践から. 流会前に児童の様子を見に来てもらうよう依頼する。. 筆者が、コーディネーターとなって2年目となり、これ. ⅱ. 4回(5月、6月、11月、2月)の実践交流会を実施. までは支援を要する児童に対してどのようにアプローチを. する。(表3). していくか考えたり、また、児童の実態や支援に関する交 流会を計画、実施して、学校全体で支援を要する児童につ. 2)コーディネーターの役割とブロックの活動. いて研修を進める立場として動いたりしてきた。その中で. 複数名体制となったコーディネーターの役割は、ブロッ. 課題として上がってきた課題は次の二点であった。. クの活動と直結しているので、以下のポイントを押さえて. ①コーディネーターとして、全校の支援を要する児童につ. 展開することとした。. いての把握が十分ではなく、支援を要する児童に対する. ①ねらい. 具体的な手立てや、実践は各担任任せになっており、検. ⅰ. 各ブロックのコーディネーターが中心となって支援を. 証していない。. 必要とする児童や担任・ブロックの目から見て気にな. ②年4回行う交流会については、大学教員に講義をしても. る児童について、交流する場を持ち、全職員で確認で. らう形が中心で、各担任のクラスの児童に対してどのよ. きるようにする。. うな支援や手立てが必要かという所まで深く交流されて. ⅱ. 保護者や担任のニーズに応えることができるように、. いない状態である。. 各ブロックのコーディネーターが中心となって、校内. ①の課題については、コーディネーターが一人というこ. 体制を整える。. とで、全学年の指導を必要とする児童の把握が困難であっ. ②内 容. た部分が、原因と考えられる。そこで、2008年度末に行っ. ⅰ. 支援に関する要望が保護者や各担任から出てきた場合、. た学校評価や年度反省でコーディネーターを増やすことを. コーディネーターが中心になり、担任とともにその児. 提案し、2009年度より各ブロック(低・中・高学年)に1. 童のニーズにあった指導計画を作成する。. 名ずつ、計3名のコーディネーターを配置する体制とする. ⅱ. 各ブロックのコーディネーターが中心となって、ブロッ. ことができた。 ②の課題については、 2008年度の交流会が、. クごとに児童の様子について交流する時間を設けると. 大学教員による子ども理解を中心とした講義で、大変有効. ともに、コーディネーター部会で検討したのち、管理. なものであり、支援を要する児童に対する理解が深まった. 職、大学教員からの助言を受け、明らかになったこと. という全職員からの評価を得たので、2年目として、講義. を全職員に還元できるようにする(表4)。つまり、. で受けた部分をどのように実践に生かし、検証していくか. ブロック内で、児童の話をする機会を持ち、児童の実. という部分に進めるため、新たに企画を練る必要があると. 態調査(アンケート形式)を行い、支援を要する児童. 考えた。そこで、全職員が児童の困り感や有効な手立てに. の抽出とその対応について協議し、コーディネーター. ついて共通理解が図れるように、「コーディネーターの有. 部会に回す。コーディネーター部会では、ブロックか. 効活用」と「交流会の方法の充実」という2点の課題に絞っ. ら上がってきた児童とその児童への支援の手立てにつ. て検証を進めることにした。. いての把握、検討を行い、その妥当性を管理職及び大 学教員に助言を求め、全職員に還元していくというシ. 1)交流会. ステムとしてデザインし、学校内に支援の階層性を作. 特別支援教育という観点を踏まえて2年目となった交流. り出すこととした。. 会は、以下のねらい、重点目標、計画で進めることした。. なお、研究主任、実習主任、養護教諭は、必要に応じて. ①ねらい. 各ブロックに入るようにした。. ⅰ. 子ども一人一人のニーズにあった支援の方法や実践に. ⅲ. 個別シートを作成し、いつでも見たり、書き込めたり. ついて共通理解を図る。. することができるように、データベース化を図る。これ. ⅱ. 年4回の交流会を行い、子どもの変容を見取ることで、. については、2008年度に抽出していた児童のシートを中. 具体的で実践的な交流を進める。. 心にしつつ、ブロック内で新たに名前が挙がった児童に. ②今年度の重点. ついても順次シートを作成し、情報を共有できるように. ⅰ. 大学教員に可能な限り交流会への参加を依頼し、児童. する。. に対するより具体的な手立てや指導方法についてアド バイスをもらう機会を設ける。. 3)交流会、ブロック充実のための計画. - 203 -.

(7) 濱 渕 雅 樹・二 宮 信 一・栢 野 彰 秀 表3 2009年度に行われた生徒指導実践交流会の実際. 交流会、ブロックの充実を図るために大きく次の2つの. ることができるようにする。. 計画を立て取り組んでいくこととした。. ⅱ.抽出クラスの様子を撮影したビデオを見て、全職員で. ①5月、6月、11月、2月に行われる交流会の持ち方を具. 有効な手立てや子どもの見方について研修を深めることが. 体的に決めて、計画通りに研修会を進める。. できるようにする。. ②児童のデータベースを作り、全職員が児童の情報を常に. ②6月の交流会. 共有できるようにする。. ⅰ. 大学教員の講話 ・児童を観察して気がついた点について. 4)交流会の内容. ・昨年度から抽出している児童の変化や手立てについて. 交流会の内容は、以下の通りであった。尚、5月の交流. ⅱ. 抽出クラスのビデオを見て全職員で手立てや児童の見. 会は、児童交流として行われたので割愛する。. 方について交流。. ①ねらい. ・抽出クラスを撮影したビデオを見る. ⅰ. 大学教員から児童を観察した結果や児童の実態から、. ・捉える観点の学習(児童の実態と手立て、1ヵ月取り. 全職員で支援を要する児童の手立てについて共通理解を図. 組んだ結果). 表4 ブロックから出てきた問題のフォローアップ・フロー. - 204 -.

(8) 特別支援教育に関わる校内研修のあり方 ・全職員及び大学教員で意見交換. ることにつながった。. ⅲ. 評価. ・抽出児童が出てきたので、今後は、個別指導計画を立. ・大学教員の子どもの実態についての講義は今後も続け. て、短期、長期目標を決めて取り組んだことを報告し. ていく。. ていただいて、交流できたら、より実践的な研修会に. ・後半行った抽出クラスのビデオをみて、ワークショッ. なると思う。. プ形式で児童の様子や手立てについて交流した点は、. ④2月の交流会. 具体的な児童の姿があり、全職員で課題を共有化する. ⅰ. 大学教員の講話. ことにつながった。. ・児童を観察して気がついた点について. ⅳ. 教員からの評価. ・前回取り上げた児童の変化や手立てについて. ・ビデオで事例をみることがとても良かった。. ⅱ. 抽出クラスのビデオを見て、全職員で手立てや児童の. ・ブロックごとに討議できた点は、互いに児童を知って. 見方について交流。. いる故話しやすかった。. ・抽出クラスのビデオを2本見る。1本は前回と同じク. ・実際に抽出児をビデオに撮ってみることで、その子の. ラス。もう1本は担任から要望のあったクラス。. 困り感などがとても良くわかることを知った。自クラ. ・捉える観点の学習(前回との変化、新たな児童の実態 と手立て). スでも行ってみたい。. ・ワークショップ形式での交流。 (ブロックに分かれて. ・ビデオを見ながら研修が進んだため、自分のクラスと. 交流ののち、全体交流). 比べながら参加することができた。. ・大学教員からの助言。. ・一つのクラスの抽出児童を全員でみることにより、自. ⅲ. 評価. 分以外の見方考え方を知る機会となった。抽出児童に. ・前回抽出クラスでは、その後の変化と手立てを紹介し、. ついては自分のクラスにも似たような児童がいるので. その効果について意見交流を行った。うまくできてい. 今後の参考にしていきたい。. る点や今後の改善部分について交流ができた。. ③11月の交流会. ・新たな抽出クラスでは、大学教員もチェックした児童. ⅰ. 大学教員の講話. であり、全職員が映像でその児童の困り感について確. ・児童を観察して気がついた点について. 認することにつながった。. ・前回の研修会で目立った児童の変化や手立てについて. ⅳ. 教員からの評価. ⅱ. 抽出クラスのビデオを見て、全職員で手立てや児童の. ・ほぼ前回と同じ評価であったが、学校全体で指導して. 見方について交流。. いくという観点やワークショップ形式で行う研修を通. ・抽出クラスを撮影したビデオを2本見る。1本は前回. して新たな発見や違う見方を知ることにつながった、. と同じクラス。もう1本は担任から要望のあったクラ. 実践的な研修会に近づいた等の意見が出され、研修が. ス。. 教員の力量形成につながってきていることが窺われた。. ・捉える観点の学習(前回との変化、新たな児童の実態 と手立て). 5)児童データベースの構築. ・ワークショップ形式での交流。 (ブロックに分かれて. 前年度開始した個人ファイルを発展させ、職員全員で子. 交流ののち、全体交流). どもを見ていくという意識を作り出し、タイムリーな情報. ・大学教員からの助言。. 交換ができるようになること及び次年度へのスムーズな引. ⅲ. 評価. 継ぎとなるよう記録を蓄積していくことをねらいとして児. ・前回抽出クラスの交流では、子どもの変化と手立てを. 童の様子のデータベース化を図り、システムを構築するこ. 紹介し、その効果について意見交流を行った。うまく. ととした。. できている点や今後の改善部分について交流ができた。. ①目的. ・新たな抽出クラスの交流では、大学教員もチェックし. 児童の様子を担任だけでなく、教員全員でみていき、そ. た児童であり、全職員が映像でその児童の困り感につ. こで得た情報を全教員が、今後の指導に生かしていくこと. いて確認することにつながった。. が出来るようにする。. ⅳ. 教員からの評価. ②児童データベースの設定は、PCの校内ネットワークを. ・今回、新たに抽出児童として1年生を取り上げてもらっ. 活用し、開発した。. たことが、今後の学校全体の指導にもつながるので良. ③使い方. かったと思う。. ⅰ. 本校の全児童を対象に、教員の目から見た児童の様子. ・ワークショップ形式で行う研修の中に、自分で考える. をファイルに記録する。. 時間があって良かった。人の意見を聞く前に自分で考. ⅱ. 児童の課題とすることがらだけでなく、良かった点に. え、その後交流することで新たな発見や違う見方を知. ついても記録する。また、困り感を持っているであろ. - 205 -.

(9) 濱 渕 雅 樹・二 宮 信 一・栢 野 彰 秀 う児童についても教員が気づいたことを記入していく。. とではなく、子どもの困り感がどのような場面や状況で生. ⅲ. 書かれた内容については、定期的にコーディネーター. まれているのかを学ぶ上で有効であった。. が中心になって、協議の場を作り、担任に還元してい. ②このような基本的な観点が習得できた次のステップとし. くようにする。. て、交流会を子どもの実態から問題を抽出し、手立てにつ. ⅳ. 評価としては、1学期は、児童データベースを整備す. いて検討する学びあいの場に発展させていったこと。これ. るところで終わってしまい活用されなかったが、2学. も①と関連するが、LD等の子どもへの支援を一般論とし. 期以降、コーディネーターから積極的に声をかけ、活. て学ぶのではなく、目の前にいる子どもへの具体的な手だ. 用していくことができた。. てとして検討することによって、抽出された児童の事例を 通して、自クラスの子どもへの支援について具体的に考え. 6)2年目の成果と今後の課題. ることが可能となっていった。. ①交流会. このことは、学級担任が、自分のクラスを巡回やビデオ. 今年度より、大きく内容を変えた形で行った交流会だ. により公開し、支援を必要としている子どもについて全教. が、教員からは、抽出児童を見て全員で行うワークショッ. 員が協働で検討することを通して可能となったことがらで. プ形式の交流は、自分の考えだけでなく同じ事例を通して. あり、全教員の子どもを見取る力量形成の底上げになって. 他の先生方の声を聞くことができ、自クラスの実践に生か. いったと考える。. していきたいという意見などが出され、ひとつの事例を全. ③コーディネーターを3人体制にすることによって、一人. 員で検討していくことを通して、児童を見る視点の幅が広. 体制としてのコーディネーターの負担を軽減し、丁寧に子. がることにつながった。また、似たような事例が、自クラ. どもの実態把握に努めることができたこと。また、コーディ. スにもあることがわかり、それぞれの教員が実践を出し合. ネーターが困ったときに、コーディネーター同士で検討す. うということに発展し、より具体的な交流ができるように. ることが可能となり、担任に還元する内容が質的に高まっ. なったなど、概ね良好との評価を得た。. ていったこと。. 今後の課題としては、抽出児童の困り感や手立ての検証. ④コーディネーターが3人体制になったことにより、低中. を進めていくこととともに、一歩進んで、困り感を持って. 高の学年ブロックを重視することができ、できるだけ現場. いる児童に対する授業における具体的な支援や教材の開発. に近いところで検討したり課題解決を図ったりするシステ. について交流できるようにしていく事であると考える。. ムを作り上げることができるようになったこと。これによ. ②児童データベース. り、担任が困り感のある子どもを抱え込むことがなくな. 普段から「全職員で児童を見る」という意識付けをして. り、全教員が協働で子どもを支援していく素地を作ること. いく意味での効果はあった。また、データベースを作った. につながっていったと考えられる。. ことにより、その内容を今後に引き継いでいくことも可能. ⑤このような蓄積があって初めて児童データベースの意義. となった。課題としては、児童データベース記入の意識付. が全教員に共有されていき活用が可能となっていった。. けが困難であったので、記入週間を設け、全職員に呼びか. ⑥特別支援教育に関わる大学教員の活用の仕方を工夫し. けていくこととしたい。また、書かれた内容が担任に還元. た。専門的な知見のある存在に対しては、依存が生まれや. されることによって、記入の意味も明確になっていくこと. すい。しかし、特別支援教育を推進していくのは、教員で. から、コーディネーターからの情報発信を丁寧に行う必要. あり、学級担任一人ひとりである。1年目は、講義という. がある。活用する教員からの意見に基づき、データベース. 形で行われていた研修であったが、2年目より助言者とし. の改良を行うとともに、日直になった教員には、その日の. て捉えなおし、むしろ自分達の実践を中心に据えていくこ. 子どもの様子をデータベースに記入するというようなシス. とによって、大学教員に依存することなく、自らの主体的. テムの開発も必要であると思われた。. な課題解決に意識を向けさせていっている。このことも、 教員の力量の底上げにつながっていったと思われる。. 5.特別支援教育に関する校内研修のあり方. ⑦このような研修積み上げは、コーディネーターが、学校. この2年間の特別支援教育に関する校内研修の実践の中. 内の課題と教員集団の力量とを照らし合わせ、研修内容を. から読み取れるのは、以下のことであると思われる。. 検討し、より相応しい形に発展させていったことが大きい. ①子どもの理解を、実際の子どもの実態を事例にしながら. といえる。つまり、特別支援教育が始まり、多くの学校が. 子どもの発達や認知システム、身体作り、教室環境との相. 校内研修で特別支援教育に関する研修を行っているが、学. 互作用など多様な観点から検討し、より深く子どもの状況. 校の現状や構成する教員達の力量などを擦りあわせながら. を汲み取れる視点を教員が相互に学びあいながら習得して. 研修内容について検討しているところは少ない。本校は、. いったこと。このことは、知識としてLDやADHD、高機. 比較的若い教員が多いだけでなく、特別支援教育を担って. 能自閉症等の状態を知っていたとしても、目の前にいる子. きた教員も少ない。このような教員集団の現状分析に基づ. どもとは結びつかず、見逃しやすかったことを踏まえ、目. く校内研修のあり方の模索があって初めて現場のニーズに. の前にいる子どもに、発達障害があるか、ないかというこ. 対応した企画が可能であったと思われる。. - 206 -.

(10) 特別支援教育に関わる校内研修のあり方. 6.終わりに 今日、特別支援教育の推進は、学校においては必須のこ ととなっている。発達障害の有無の問題ではなく、今、一 人ひとりの子ども達がさまざまな課題を抱えつつ学校で生 活し、学習に励んでいるからである。筆者がコーディネー ターを担当するようになって2年が経ち、はじめはコー ディネーターとしてどのように動き、どのように特別支援 教育を進めていくとよいか迷う場面が多々あった。しか し、2009年度からコーディネーターが3人体制となり、低 中高学年に一人ずつ配置されたことによって、コーディ ネーター同士が協力して学校の特別支援教育の体制を整え ることができるようになってきた。交流会の取り組みや児 童データベースの活用にはまだまだ課題はあるが、今後の 本校の特別支援教育をよりよいものにしていくためにつな がる実践になっていったと考える。 今後の取り組みとしては、困り感のある児童に対する支 援を具体的に授業の中でどのように取り入れて進めていく か、各教科の授業研究をもとに検証していきたいと考えて いる。 尚、本稿は、大学院高度教職実践専攻におけるマイ・オ リジナル・ブックを基に加筆し、 分析を加えたものである。 註1 ブロック交流は、低学年(1・2年) 、中学年(3・ 4年)高学年(5・6年)に学級担任を分け、困り 感のある子どもについて情報交換する場として設定 している。 註2 全体交流は、全学年の学級担任が集まり、ブロック 交流で抽出された困り感のある子どもの情報交換す る場として設定している。 註3 児童交流は、前年度からの引継ぎとして、疾病、ア レルギー等を含む子どもの個別の情報を確認する場 として設定している。. - 207 -.

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参照

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