造形表現におけるイメージに関する考察
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(2) はじめに. 段階に即した指導も考えられてきているけれども、およそ技法や材料といった児. 鑑賞をも含めた広い意味での造形表現において、いわゆる「イメーージ」が大き. 童生徒の外欄かちの指導に偏っているのではないかと考えたことが動機となって. く関与していると考えてよいであろう。辻 弘は造形とイメージの関わりについ. いる。また今日の情報化社会における生活環境の変化により、児童生徒を取り巻. て次のように述べている。. く環境も様変わりしてきていると考えられ、児童生徒の内面の実態の新しい理解. 「イメージは形態制作の母(1>」であり、. n把握から技法や材料の見直し、ひいては美術教育そのものの見直しが迫られる. 「造形思考の構造は、理念としての形、すなわち人聞のイメ・一一tジと材料との問. のではないかと考えちれる。本研究が、そうした新しい時代の美術教育の一端を. に技衛や技法を介在しつつ、相互に関連を持って『物sとしての客体化を行うと. 担えれば幸いかと思う。. 譲づことができ馨であろう.②」 こグ賦うな遣形に間わるイメージを造形的イメ・一・・mジとし、造形的イメ凡下ジに関. する考察を行うことは、美術教育の基礎研究として重要なものであると考えられ る。. 本論文の醤的は、この造形的イ歯面ージの中でもイメージ表鵡の主体である個人. の集団を牲溺・年齢・興昧回心等によって分け、表出される造形的イメージに差 ‘ うこ七を、申学生を対象として実証的に明4、かにし ょうと:するもぴ)である、. 研究跨方法は、まず第1章で・ずメ…ジの前提とな蒜知覚について概括し、知覚 に続ぐ一般的イメージとその串廓樹垂勧イメーージにっ轡ぐ整理したい。第2章以. 降では、研究あ自的に沿って造形的イメージ表出に影響を及ぼすものを調べるた めに、中学校における心象表現の指導との兼ね合いを含めて、調査を行った中学. 校の、全学年の生徒を被験者として性別t学年醤常生活での三昧関心と、不定 形の命名によって言語化されたイメ…一ジの分類との相関から考察を行いたいと考 えている。. 本論文のテーーマを設定するにあたって、現在までの美術教育は、児章生徒の発達. (!)〈2’〉造形形態論 辻 弘・杉山明博著 三晃書房. 一1一. 一2一.
(3) 第1章. 験が外部の技法や材料などの条件により造形活動として結実すると考えちれよう。. イメージについて. しかも心理学での、. 造形表現と関わるfイメージ」について一般的に定義されたものとして、水. 「イメージとは何かを定義することは、他の人格的事象の場合と同じく容易な. 島恵一は、リチャーードソンによる. ことではない。それちが何らかの知覚像的なものを意味し、対象が現存しなく. 「1.準感覚的または準知覚的経験であり、2.われわれはそれを自己意識的に気. ても感じとちれる(ないし経験される)一種の認知事象であることはまちがい. づいており、3、それに対応した本物の(感覚ないし知覚を産み出すような)刺. ない。それが人間的にかなり普遍的なものであり、しかも同時に個人差が大き. 激条件が実際に存在しないのに、あたかも存在しているもののように経験し、. いことも確かである。それに関連してイメージが個人の内的状態や生きる姿勢、. 但し、4.その刺激条件に対応した感覚ないし知覚の場含とは違った結果をもた. 状況などによって異なり、さちに特有の象徴的意味をもつことなども認められ. らす。と規定している。〈1>」. る。」④. と挙げている。. のと同様に造形的イメージにおいても更に広がりを持ち、…般的な財メーージ」. 造形表現と関わる「イメージ」(以下造形的イメージとする〉は、人間の抱く. の定義の枠を越えて新しい定義を持たねばならないであろうDそれは、. 包括的なイメージの中にあって、しかも部分として切り離されるものではなく、. 「しかし詳しく吟味していけば、何がイメージなのかという見方は理論的立場. イメPtジ全体を代表するものとさえ雷えまいか。というのは造形的イメージが、. によっても異なってくる。またその研究者や理論家が主としてどのような種類. 先述したリチャー一 Fソンの一般的な「イメY一一DLジ」の定義と重なり合うと考えちれ. のイメ・・・…Eジを、どのような側面からみているかによって違ってくる。」⑤. るかである。1.の準感覚的または準知覚的経験というの1ま、造形活動が第一義的. からである。よって、造形表現という立場かち「イメーージ」を捉え直し造形的イ. には感覚的知覚的な経験を基にした活動であるし、2.では「通常造形制作活動の. メ・一ジを概括したい。. 主体である人間が、芸衛表現の意志を持ち、その意志をf物」として客体化する 過程において〈2>」は、一度その経験を自己かち切り離して意識せねばなちないし、. 3.においては「再現的表現・抽象的表現・思考的表現・適応的表現に分けちれる 造形表現活動(3)」が、いずれも本物(現実の)の刺激条件(すでに存在している 形と考える)ではなく、人間の内部にまず形造られる物であり、4.その内的な経. 〈1)(4>〈5) イメPtジの基礎心理学 水島恵一・上杉喬 編 誠信書房. (2)(3> 辻弘造形形態論辻弘・杉山明博著 三晃書房. 一3一. 一4一.
(4) 第1節 知覚とイメージ. 光刺激を受け電位変化を生じさせることにより行われる。網膜の内部では神経細 胞が複雑にからみあっており、すでにそこで情報処理が行われていると考えちれ. 人がその内部にイメージを保持する時、初めに考えねばならないのが知覚とそ. ている。その網膜にある多数の神経節細胞の軸索が長く伸び、視神経として眼球. の生理的基盤である。御領謙によれば、. かち大脳皮質の後頭葉にある視覚領に至る。この視覚領は、ヒューベルとウィー. 「生活体は一つの情報処理機構で、知覚や認知は、感覚情報の処理機構にほか. ゼルの研究によって、その視覚領とその周辺の神経細胞は単純細胞・複雑細胞・. なちないと考えることができる。」し、「生活体の感覚情報処理機構は、生理. 超複雑細胞に分けちれ、これちは網膜の特定の部位への特定の刺激に対してのみ. 学的には感覚受容器、大脳皮質、効栗器にわたる神経系に他なちず、医学、生. 反応する。つまり、外界のさまざまな形の部分に特有に反応する細胞が存在する. 物学的に明らかにされるべき部分が大きい。しかし、われわれの意識的な体験. というのである。. や、さまざまな行動と結びついた機能的な側面については、心理学的な研究に. 視覚以外の情報処理機構においても同様である。これらの生理的な機能は、. 頼ちざるをえない面も多い。(1)」としている。. 「このように現在まで多くの生理的現象が明らかにされているが、大脳皮質で. 造形的イメーージにおいては視覚を中心に考えることができよう。人の持つイメ. さまざまな処理を受ける感覚情報が、われわれの記憶、判断、思考、情動など. ー一za. Wの申心は視覚的イメーージであると考えちれている。藤岡喜愛は、リチャード. の’C理学的過程と、どのようなかかわり合いをもち、どのようにして遠’巳唯の. ソンの説を引用し、イメージには「鮮やかさ」という因子が認められ、入が鮮や. 経路とつながり、運動反応となるかを生理学的に究明していくことは、今後の. かなイメ・一・・ジを持つときに、視・聴・皮膚・運動・昧e嗅t内臓の7つの感覚系. 困難な課題」(3)であるe従って本論でも、知覚が、このような生理的情報処理. 統のうち、どの感覚が優位になっているか調べたところ、90%は視野イメーージが優. 機構に乗って働いているということにとどめたい。. 位で5%が聴覚、残りの5%では運動イメ…一一ジが優位である(2)としている。. 知覚の一般的特性 知覚の生理的基盤. 牧野達郎は知覚の一般的特性について、次の7つの分類を提示している。. 感覚情報処理機構は生理学的には神経系である。神経系の最小単位は神経細胞. 1.知覚の対象性. で、無数の神経細胞が連絡し合って神経系が作ちれる。神経系の出発点である感. ∼知覚は生活体の内的な働きであるにもかかわらず、知覚されたものは、外. 覚細胞は受容器または受容細胞と呼ばれ、物理的化学的刺激を神経内で伝達可能. 界に対象として位置づけちれる。これを知覚の外回性あるいは対象性という。. な電気信号に変換する。造形認知において視覚は、眼球の網膜にある神経細胞が. 2.知覚のズレ いわゆる‘錯覚’. (1)〈3> 心理学1知覚・認知柿崎祐一・牧野達郎編有斐閣双書. ∼知覚と外界の物理的・幾何学的特性とのズレは、一般に錯覚(illusion)と. (2> イメP・一ジ その全体像を考える 藤岡喜愛 著 ㎜ブックス. いわれるが、このズレは、本来の意味においての‘錯’覚ではない。これを. 一5一. 一6一.
(5) 錯覚とよぶのは、外界の対象の物理的、幾何学的特性と知覚との一一一・一L対一対応. また、同一感覚領域において、時間的・空間的統合性が認められるだけで. を仮定し、知覚が外界の対象の特性に一義的に規定されると考え、外界の特. はなく、色・形・大きさ、音、香り、味など、別個の感覚受容器、感覚経路. 性と一致しない知覚は‘誤り’であると素朴に考えることにもとつく。しか. を通して知覚される刺激特性の間にも統合性が認めちれ、さらに、知覚系か. し知覚と外界の特性がL・一・・致すべきであるという素朴な仮定(独断)こそ問題. ちの情報と運動系からの情報の統合、知覚一運動統合が成立する。. である。錯視図形は、対象の幾何学的特性と知覚のズレをより顕著に示すも. 4.知覚の選択性. のであるが、決して‘錯’覚ではなく、また特殊なものではない。むしろ錯. 感覚レベルでの選択性. 覚こそ知覚の特牲をより顕著に示すものである。. ∼感覚受容器は、それぞれ適刺激に対して反応し、また上限としての刺激頂. 知覚の恒常性. と下限としての刺激閾の範囲内にある刺激に対してのみ反応する。すなわち、. ㌻知覚が感覚受容器に与えられる刺激と一一一一対一一一一aに対応すると考える素朴な仮. 感覚受容器は多様で広汎な刺激エネルee’・一一の、ごく限ちれた範囲にのみ選択. 定を恒常仮定〈c。nstancy hypothes is>というが、知覚は、外界の物理的、幾. 的に反癒する。このことは、一面においては、感覚機能の有限牲を意味する. 何学的特性によって一義的に規定されるのではなく、また感覚受容器に与え. が、他面においては、環境への選択的反応の基礎でもあるという意味におい. ちれる刺激の特性によって一義的に規定されるのでもない。. て重要である。ところで、生活体は、このような感覚レベルにおいて環境刺. 3.知覚の統合性. 激を選択し、選択的に反応するだけではなく、より高次のレベルにおいても. 知覚の全体性. 選択的に反応する。. ∼外界の事物は、点、線、角、あるいは明、暗、色によって構成され、それ. 情報の選択的抽出. らが刺激として、感覚受容器に興奮を生じ、また、それぞれが感覚的に別個. ∼知覚の選択性は、まず眼の動きについて認めちれる、眼の網膜は、視力(. に処理されたとしても、われわれは、個々の点、線、角、色などの集合を知. visual acuity)が均等でなく、中心窩(fovea ceftt,ralis)かち3∼4度ずれれば、. 覚するのではなく、続一体としての円、3角形、あるいは家や木を知覚するe. 視力は50パーーセント低下し、10度もずれれば、中心窩の2⑪パー一igントに低下. 時間的空間的統合. するといわれるが、ものをみるときには眼の飛躍運動(saccadic movement>に. ∼外界の事物をみるとき、目の運動、頭の運動、対象の動きによって脳膜に. よって、対象の情報量のより多い部分が、網膜の中心部に像を結ぶように、. 映る像は刻々に変化する。それにもかかわちず、ひとつの対象は、多重像と. 凝視点がつぎつぎと変えちれる。すなわち、眼は対象のより重要な部分が、. してではなく、まとまりのあるひとつの対象として知覚される。写真は、唯. よりょくみえるように、選択的に動く。. 一の視点からの一瞬の像であるが、知覚は、時閻的変化、空間的変化の統合. ∼図形知覚の精度は、図形の観察時間よりも、図形を見るときの停留点の数. である。写真と知覚のズレ、‘似てない写真’は、さきに述べた知覚の恒常. によって規定されるというが、ここで、選択的、継時的な眼の動きによって. 性によるとともに、この点によるものと考えられる。. 一アー. 抽出された部分かち、抽出された部分の単なる寄せ集めではない、統一的な. 一8一.
(6) まとまりのある知覚がいかにして成立するかが問題となる。 ∼網膜で受容された刺激は、視覚情報として、視覚像情報保存機構(visual information storage, VISと略す。 iconまたはiconic storageともいう)に一. 時的に短時間(約270ミリ秒までといわれる)保持され、そこから情報が選択的. に読み出される。VISに一時的に保存される情報は多いが、限られた時間内に そこから選択的に読み出され、つぎの情報処理機構に送ちれる情報は限ちれ ている。ここに第2段の選択が働くと考えられる。最近の多くの実験結果か. 定し、知覚を生じるには、非等質、不均等な刺激布置に勾配が必要であるこ とがわかる。この意味では、知覚は、時間的、空聞的な刺激の変化または差 異に対する反応であるといえよう。また知覚が刺激の変化または差異に対す る反応であるという事実は、他面においては、知覚が順応の水準あるいは基 準に対して成立することを示すといえよう。. 知覚の基準としての‘尺度 ∼2つの対象の相対的な比較判断ではなく、ただひとつの対象をみるときに. ち、刺激の新奇性、親密性、観察者の構え、態度、情動などは、視覚像情報. も、大きい・小さい、明るい・暗い、早いe遅い、美しい・醜いなどが直接. の…特記保存のありかたを規定するのではなく、VISかちの選択的読みだしを. 知覚されるのは、かかる心的な基準との比較によるのである。また、われわ. 規定すると考えられる。このようなVISからの選択的読み出しについては、現. れは、単に重い・軽い、大きい・小さいを知覚するだけでなく、‘非常に重. 在まだわからないことが多いが、知覚は、選択的な眼の運動と、贋Sからの選. いyt‘少し軽い’などと直接に重さや大きさの程度を知覚する。心的基準は、. 択的読み出しという少なくとも2段階の選択によって規定されると考えれる。. 単なる点ではなく、‘重くも軽くもない’という中性点を原点とする‘非常. 刺激の多義性と‘枠組み’. に軽い’‘少し軽い’‘少し重い’‘非常に重い’などの目盛りのある両極. ∼ここで問題となるのは、刺激それ自体は多義的であり、刺激パターンがい. 的な〈bipolar>一種の‘尺度’と考えちれるe. かなる枠組み(関係系、関係枠、1勉ugssystem, fr ame of referenceなどとも. 6.知覚に及ぼす情動・欲求の効果. いう)に関係づけちれて特定の知覚が成立するのという問題である。〈中略〉. ∼一般に、個体にとって価値あるもの、欲求の対象となるものは認知閾(cog. 枠組みには、距離知覚の手がかり、方向知覚の空間座標などから、動作的枠. 一樋tio鍛threshold)が低く、不快なもの、忌避されるものは認知閾が高いこ. 組み、概念的枠組み、情動的枠組み、さらには社会的役割まで、多くの枠粗. とが認めちれている。前者を知覚的促進(perceptual sensitization)、後者. みが与えられ、刺激パターーンが、いかなる枠組みに関係づけられるかによっ. を知覚的防衛(perceptual defence>という。. て、知覚、認 知は、多様に変化する。. ∼視覚適刺激が、視覚像としてVISに一時的に保存される段階までは、情動、. 5.知覚の基準. 欲求、構えなどの効果は認めちれないが、VISかち、処理容量のより少ないっ. 差異・変化に対する反応としての知覚. ぎの段階の読み出しにおいて、情動、欲求、構えなどによる選択が行われ、. ∼刺激エネルギーが、刺激閾かち刺激頂までの範囲にあっても、必ずしも知. また読み出しの順序が規定されると考えちれている。ところで、このような. 覚が生じるとは限らない。(中略)刺激が存在するかしないか、刺激が刺激. 情動、欲求、構えなどの個体的な要因の効果は、一三に、曖昧で、多義的な. 閾以上であるか否かよりも、むしろ刺激エネルギーの変化や差異が知覚を規. 刺激パターンについてより多くみられることはいうまでもなく、知覚の枠組. 一9一. 一10一.
(7) み、基準が一義的にきまるような事態においては、その効果は小さい。. 覚・知覚体験と近似した体験をわれわれに与えるのである。(2)」ことによって、. 7.知覚に及ぼす経験の効果. 知覚世界と、知覚によって引き起こされるイメージと、そして閾下刺激でのイメ. 知覚に及ぼす経験の効果については、古来生得説同経験説の問題として、多. ージとに区別して考えねばなちないことに留意したい。2.知覚のズレ、3.知覚の. くの論議がみちれる。(中略)この問題は、知覚は生得的か、経験的かとい. 統合性、4、知覚の選択性は、認知心理学での実験に基づいたものである。造形的. うような素朴な2分法的な問題ではない、生得説を主張する研究者の実験に. イメージと関わり、それに先行するものとしては、5.知覚の基準、6.知覚に及ぼ. みられるような経験的な知覚の側面、知覚の事実もある、ところで、対象の. す情動・欲求の効果、7.知覚に及ぼす経験の効果が考えちれようe. 知覚が経験によると説明しても、経験がどのような機制において、知覚を規 定するかを明ちかにしなければ意昧がない。さきに述べたVISからの情報の選. 形の知覚. 択的読み出しが、経験によって変容することは、ヒヨ認の鑑定士の例などか. 造形的イメージと結び村く形の知覚について、2つのモデルを挙げたい。形の. らも考えられるが、VISの視覚像のありかたが経験によって規定されるとは考. 知覚については、パターンの認知に近いものであるとし、. えちれない。また、選択図式や枠組み、基準が経験によって形成され、経験. 「記憶や学習の働きがなければ、文字や形、音声の認知が成立しないのはいう. によって変容することは当然であるが、他方、方向知覚、動きの知覚、距離. までもない。(3)」事かち、形の知覚には記憶や学習の働きが必要であるというこ. 知覚、差異や変化の知覚などの枠組みや基準で、経験によって規定されると. とになる。造形的イメージにおける形の知覚にも記憶や学習の働きは、同じく関. は考えられないものもある。経験が知覚を規定するとしても、経験が直接に. 与すると考えてよいであろう。. 知覚を規定するのではなく、経験は、情報の選択的読み出し、選択図式、枠. 1.鋳型照合モデル(template matchiftg raode・1). 紹みや基準を変容することによって、知覚を変容すると考えられる。. 「このモデルでは、視覚像パターンが、記憶されている型〈temp late>あるいは原. 以上の7つの一般的特性(1)の上で、造形的イメVg一・ジに先行する知覚が行われると. 型(pr ot◎type)と:もっともよく合致したとき、そしてそのときのみ、それと連合. 考えられる。この7つのうち、1.知覚の対象性については、. して記憶されている‘名称’が活性化され、意識にのぼると考える。④」. 「知覚的世界は、外界や対象かちの、感覚受容器への直接的刺激によってもた. または、. らされる。イメージの世界は、外界や対象を思い浮かべ、イメージすることに. 「∼情報処理系には、われわれの認知するパターンの数だけ、パターンの原型鋳. よって現出する。われわれのイメージ体験は、一般に、『心の眼』や『心の耳s. 型ともいうべきものがあって、入力パターンは鋳型と照合され、合致した鋳型. など、イメー・一ジを浮かべるものとして意識される。すなわち、イメー・・ジは、感. に対応する認知が成立するという。入力パターンと鋳型とep照合には、入力パ. (1)1.∼7.までの引用は牧野達郎心理学1 知覚・認知 柿崎祐一一一一牧野達郎編. (3) 御領 謙 ’じ理学1 知覚・認知 柿崎祐一・牧野達郎 編. 有斐閣双書. (4) 小谷津 孝明 心理学1 知覚・認知 柿崎祐一・一一 {牧野達郎 帰. (2> イメージの基礎乙理学 水島恵一・上杉喬 編 誠信書房. 一11一. 一12一.
(8) ターンを鋳型のひとつひとつと継続的に照合する直列処理(serial pr◎cessing. 恒等的に反応し、自動的に方向修正を行ってしまう。このような修正処理は、. >と、入力パターンをすべての鋳塁と同時に照合する並列処理(parailel pr◎c. 入力パターンの受容段階の比較的初期に行われるもので、前述の回転修正が‘. −essing)が考えられている。⑤」しかし、. 後処理的であるのに対して‘前処理’. 1一∼われわれの認知しうるパターンの数はほとんど無眼であり、また、われわ. 〈pre−pr◎cessiD9)的性格をもつといえ. るであろう。⑧」(図1). れは、同じパターンであれば、大きさや方向が異なっていても、あるいは少々. 2種類の修正処理. ゆがんでいても、同一一一一.パターンとして認知することができる。脳細胞が149億あ るとしても、すべてのパタt一一一・ンに対応する鋳型が存在するとは考えちれない。. また、溝じパタ・一・maンが幾とおりにも認知されることを考えれば、以上述べたよ. 一⋮⋮⋮ーー−壷. 囎崩. 1)な素朴な鋳型愚デルは、そのままでは到底受け入れち象しない、16>」. そこで、小谷津孝明は 鼠ひとつの:文字、ひとつの図形には、それぞれひとつの標準的鋳型もしくは. ; t一一一一一・一・・I iM) ミ ミ. ↓ i. i. てからの処理であるから‘後処理(pos麹r◎ce謡曙泊勺性格をもつ。〈中略) もうひとつの修正処理は、大きさの処理のような場合である。(申略〉一連の. ユ⋮、⋮﹃、⋮⋮−﹂. 正されて、ふたたび照合が行われる。かかる國転修正は、一応の知覚が成立し. ・ ︸S. そのまま比較照合され、婦応ずる鋳型が箆出されないときに、はじめて躍転修. ⋮−:一唱置⋮⋮⋮一L. 1そのひとつは、たとえば画転修正のような場合で、傾いた文字や図形は一一一一一度. 甲聖と静. V. 「一鯉一. ミ ミ ミ ピ. 原型しかな・〈 一入力パターンは、すべて必要な修正処理をづけてからこれと此. 較二念されると考えたらどうであろうか。〈7)」として、その修正処理について. ギ コ. l瓢∬」「訓_ご癒> L…_._一 1L__」 i i. l i ↑ く i ↓ i . i i i i l. ド ミ ミ. 重感覚一記憶辞書 処理i ミ 」 ユニット〈鱒1。tes et、). 一一. L__ 」. 単純細胞からの情報を総合して応答する細胞集戒体は、ある限界値以上の長さ をもった線分刺激に対しては恒等的に反応する。すなわち、大きさの標準化修 〈図1>. 正を行う神経囲路とみなすことができる。それはわずかな方向ズレに闘しては. (5>(6> 御領 謙 心理学1 知覚・認知 柿崎祐一・牧野達郎 編 〈7>(8> 小谷津 孝明 心理学k 知覚・認知 柿崎祐一・牧野達郎 編. 2.特徴分析モデル. 視覚入力された情rv 一パターンを部分的要素パターンに分解処理を行う特徴分. 一13一. 一ヱを.
(9) 三モデル(feature analysis mode1)として、セルフリッジ(O.(}. Selfri dge)のパン. パンディモニアム・モデルでの、符号化された視覚情報と照合される内部の記憶. ディモニアム・モデル(pandemon i um mode 1,万魔堂モデル)(図2)を挙げる。. 情報が、造形的イメージ表出の鍵になると考えられまいか。或は造形的イメージ. 「セルフリッジのモデルはつぎのような4つの処理機能の階層的統合として構. とは何であるのか、そして造形的イメージを表出させるものは何なのかというこ. 成されている。すなわち図2に示すような、①視覚像を記録する視覚像ディモ. との手がかりであると考えられる。. ン(image demons)(ここでは、情報処理体をディモン(demon)という)、②視覚像. から部分的特徴、たとえば特定の線分、角度、曲線パターンなどの存在を検出. 造形的イメージ表出の前提となる知覚について次のようにまとめることができ. する特徴検出ディモン(fe ature demons)、③特徴検出ディモンの検出反応を監. る。. 賢し、自分が担当するパターーンの特徴が検出されるほど強く活性化する認知デ. 1.造形的イメージ表出を行う生活体において、その前提となる知覚は感覚情報の. ィモン(cognltive demons)、④もっとも強く活性化している認知デdモンを選. 処理機構であり、医学・生物学的に明ちかにされるべき生理的基盤と、心理学的. 択的に判定する判定ディモン. 研究によるその機能的側面とに分けて考えることができる、. 自 ㎜蠣. 三. 〈decisi◎n deraon>であるeこ. 2.人の持つイメPtジは視覚的イメージが申心であり、本論においての造形的イメ. のパンディモニアム・モデル. ージも視覚的イメーージを中心として考えるべきであろう。. が、前述の鋳型照合モデルと. 3.知覚の一般的特性は、対象性、ズレ、統合性、選択性、基準、知覚に及ぼす情. 異なる点は、視覚像情報が一. 動・欲求の効果、経験の効果の7つに分けちれ、中でも情動・欲求、経験の効果. 群の特徴に符号化されてから. は造形的イメ・…”一ジに関わ。てくるものと考えることができる。. 内部の記憶情報と照合される. 4.形の知覚について2つのモデル、鋳型照合モデルとパンディモニアム・モデル. という点だけであって、両モ. を挙げた。この2つは、4.の一一般的特性とともに、造形的イメージを考える手が. デルは決して背反的に対立す. かりになると思われる。. るものではない。」(9>として いる。. 形の知覚について、2つのモ デルを挙げた。鋳型照合モデ. (P.H. Lindsay and D. A. Norman,1972より). ルにおける感覚一記憶辞書や (図2)パンディモニアム・モデル. (9) 小谷津 孝明 心理学1 知覚・認知. 一15一. 柿崎祐一・牧野達郎 編. 一16一.
(10) 象である。また、「残像が知覚像の消滅にひきつづく単一の過程(5>」であり、. 第2節一般的イメージ. 「残像は一定時間内に消滅するもの⑥」である。. イメージの語源. 2.直観像. イメージという言葉の語源について、岡野静二は、. 「直観像の現象は、提示した対象や絵を取り除いた後に、その提示した対象や. 「イメージということばは、ラテン語のイマゴ(imago)かち生まれたものである。. 絵全体の像を鮮明に、しかも正確に見ることができ、かなり長い時間(数10秒、. ラテン語のイム(im)は模倣とか写しなどの意昧である。イムが後にイミトール. ときには数10分以上)保持できるというものである。(7)」として「∼直観像ま. 〈imitor>となり、フランス語のイミタション(imitation)となった。アゴ(ago). たは直観像的記憶像を定義的に述べるならは次のようになる、一直観像は、知. は、導く、行う、役を演ずる、などの意味を持つ。それは、フランス語のアジ 一一ルとなり、全く同じ意昧を受け継いでいる、イマゴは、像、似姿、幻影、反. 覚時にも、比較的受動的・無選択的・焼き写し的に知覚・記銘され、『生のま. ま貯蔵sされ、再生時にも情報処理されずに『生の知覚像』(感覚記憶に近い. 響、写し、想念、などの意昧を持つe(1)」としている。現在イメPtジという言. もの〉として再生されるものである。その細部は感覚的に鮮明であり、それに. 葉は、社会生活のあちゆる場面において用いられており、その意昧も多種多様. に基づいて、あたかも通常の対象物を知覚するように、能動的情報処理、イメ. である。イメージに関する研究も多く行われているe本節では基礎心理学のう. ・・一…ジ操作をすることができる。これは、直観像保有者の再生像、催眠時に知覚. えに立脚した一般的イメージについてのみまとめてみる。. されたものの再生像、入眠時心像などにあらわれやすく、また内部感覚、運動 感覚、感情感覚も『なま』に貯蔵されうる。〈8)」. 外的刺激によるイメージの喚起. この直観像について、北村晴朗は、. 人の外側から与えちれた刺激によって喚起されたイメージについて、上杉喬. 「直観像(eidetic iwagery, Anschaunngsbiid)とは、過去に経験し.た視覚的印象. は1凡知覚の過程にひきつづくものとしての残際及び直観像について(2>」そして. が、あたかも知覚の場合と同じように、鮮明、明細に再生され、しかも外界に. 「表象像としてのイメージ(表象的イメージ)(3)」の申で次に様に述べている。. 投影され、定位されている像である。(9) 」としている。. 1.残像. 直観像の研究は、イェンシュ(E.R. Jaensch)を主とするマールブルグ学派を申心. 「対象からの刺激によって知覚像が生じたのち、刺激を取り去った後も、なお. にすすめちれた。イェンシュは「人間の心的発達においてきわめて重要な意義. その興奮が残り、原刺激と同質または異質の視覚様体験の生ずることがある。. をもっことを強調〈1⑪〉」し、「成人では知覚の世界と想起や想像の世界が分化. これを残像という。④」残像は生理学的なものであり、誰にでもおこりうる現. しているが、発達の当初では、その両者が未分化の状態に融合しているもので、. 〈1) イメージとは何か 岡野静二著 相川書房. その結果、児童期では、知覚と表象との申間的状態である直観像が容易に観察. (2)(3>(4)(5)(6)上杉 喬 イメージの基礎心理学 水島恵一・上杉 喬 編 (7)(8>(10)(11) 誠信書房. されるという考え方である。(Jaensch 1927>(11)」しかし北村晴朗は、「イェ. (9) 心象表象の心理 北村晴朗著 誠信書房. ンシェが直観像の類型からその素質者の類型を考え、さちに人間そのものの類. 一17一. 一18一.
(11) 型論にまで飛躍し、ナチスのドイツ民族優位の主張と結び、科学的研究の枠か. 激の内容と趣を異にしたものとして見えるタイプであり、後者は、『像が刺激. ら遠く離れるようになったことは内外の批判を招いた。(1)」として、イェンシ. と同じ内容のまま静止しs変化としては色彩があせる程度にすぎないタイプで. ェの「∼発達の初期には知覚と心像とが未分化であって、それが児童期におい. ある(鬼沢・衛藤1参76)。(5)」. て直感像をみる者が多い(2)」という仮定を、「実証的に確かめちれたわけでは. こうした型に対して、それを主として経験する人問のタイプと対応するという. ない(3)」としている。しかし北村晴朗は、イェンシェの研究を全て否定してい. 考えは本論での造形的イメージとその表出のタイプということに関連あるもの. るわけではなく、続いてイェンシェによる直観像でのT型(類テタニー型)と. と思われる。. B型(類バセドー型〉による分類と、鬼沢・衛藤によるイェンシェと異なった. イェンシェは、「T型の人では、知覚・感情・意志・思考・表象などの諸機能. 変化型と静止型の分類を挙げている。. が孤立的・非統合的に働き、人格的には打ちとけがたく、活気に乏しく、真面. 冒エンシェによれば、直観像には二つの種類が区別される、いくちか残像に. 輿で憂うつさに傾くが、B型の人では、各毛的機能が統合的に働き、人格的に. 似た性質をもつ三型(類テタニー型)と、いくちか心像に近いB型く類バセド. は、腹蔵なく如才なく、上機嫌であるが気が変わりやすく、持続性が乏しい傾. ・・一一一. ^)とである。前者は、直観像体験者の意志に関係なく出現するだけでなく、. 向にあるとしている。(6)」. これを有意的に変容させることは困難であり、その大きさは距離の大小に応じ. 奥沢らは、「変化型の児童では、観念の湧出は豊かであるが、それは刺激の客. てエンメルトの法則*に近いような変化を示すのが常である、後者では、直感像. 観的な特徴に即したものではなく、そこから想像やさちに空想を作り上げてゆ. は有意的に出現し、また任意に変容させることができ、像の大きさは、エンメ. く傾向をもち、総じて情緒的に安定性を欠き、現実とくに他者との適応が不良. ルトの法員睡にはよちない変化を示すのである、④」. であるe静止型では、刺激の客観的な特徴は的確にとらえちれているが、観念. *エンメルトの法剛とは、視覚残像をさまざまな距離にあるスクリ ..mンに. 活動はそこで局限され、想像の自由な展開はなく、「般に冷静で抑制的であり、. 投影したときに観察されるもので、視覚残像の網膜像としての大きさは. こだわりのある人栖がうかがわれる。〈7>」といったものである。. 一定であるにもかかわらず、残像の見えの大きさは、スクリーン距離が. 3.表象像としてのイメージ. 2倍になると、大きさもほぼ2倍になるという事実をいう。 (上杉 喬 イメージの基礎心理学) 「鬼沢らは、直観像における変化型と静止型の区別を強調する。前者は直観像. がしばらくして『激しく、時にはとめどもなく変化したり運動したりして』刺. 以上の残像や直観像は一一一・一一般的にイメージとして扱われることは少ない。. 「もっともふつうに、われわれがイメージとして意識するものは、対象の表象. 的イメージ⑧」である。造形的イメージも、この表象像をもってイメージとし ている。イメージ表出には、きっかけとなるような刺激が存在する場合と、自 発的に表出する場合とがある。一W没的イメージにおいて、知覚との関連を押さ. (1)(2)〈3)(4)(5)(6>(7> 心象表象の’C理 北村晴朗著 誠信書房. えつつ、まずは「直接に知覚像を成立させる外的対象かちの刺激によるイメー. ⑧〈9>上杉喬イメージの基礎心理学水島恵一・上杉喬編誠信書房 ジ喚起(9)」について述べたい。. 一19一. 一20一.
(12) 刺激の程度、知覚のあり方とイメージについての関係は、. ちれた触感覚によって、過去に体験(または認知〉したものに類似したイメー. 「われわれは、自分が覚醒状態にあり、しかも、対象からの刺激が明瞭である. ジを浮かべる。(2)」のである。この不明瞭な視覚刺激により、鮮明なイメーー. 場合、その対象を直接知覚していることを意識しているが、その時、その対象. ジが喚起されたり、触覚的なもので不明瞭であいまいな刺激かち、過去に体験. のイメージが生じていることを意識することはない。残像や直観像と同じよう. した物と類似したイメーージを浮かべるということは、本研究での不定形の命名. に、思い浮かべた像を現前する対象に重ね合わせたり、現前する対象と同じも. によるイメージ表出の理論的裏付けを与えるものとなろう。また、. のとして意識されるような場合にはイメージではなく幻覚であるとされる。(1. 「イメージと直観像が互いに近いことも示されている。それは、不明瞭な刺激. >」といわれる。しかし、この考えについては、次節の造形的イメージで検討. によって喚起されたイメPtジが、直観像のように鮮明で現実に近いほどの物で. されねばならないであろう.なぜなら、鑑賞においては、対象となる作晶の刺. あった点である。しかしながら、そのちがいもあきらかである。直観像の場合. 激の明瞭さについて、なにが明瞭であるのか、またその作品を鑑賞するという. には、知覚像と同様に明瞭な外部刺激によって形成され、そこには過去体験様. 行為一知覚しているということの意識を離れ、その対象のもつ世界に入り込む、. のものをほとんど含まない。イメー・・一ジの場合には、不明瞭な外部刺激の場合に、. つまり、思い浮かんだイメージが現前する作晶と重なり合ってしまうような共. より鮮明になり、また、そのイメーージには、過去体験様のものをしばしば含む. 感体験を持つことが知ちれているからである。続いて一般的イメージはパーキ. ことである、このことはイメージが記憶作用そのものと深く結びついたもので. イ(Perkey, Cs W.,191⑪)の研究かち、. あることを示している。〈3)」記憶作用との結びつきは、イメージ表出のメカ. 「外部的に提示された不明瞭な視覚刺激によって、鮮明なイメーthジが喚起され. ることを示している。また被験者の報告は、何も提示されないでただ教示によ ってイメV一ジするだけなら、これほどまで鮮明なイメージが得られないことを. ニズムの所で詳しく検討する。 以上のまとめとして、. 「高次神経活動の関与しているレベルでみて。もっとも初歩的なものは知覚像. 示唆するものである。. であり、次いで残像、さらに直観像となり、表象像としてのイメー一thジは、最も. またわれわれは、箱や袋の中に、ある物を入れておいて。手を入れてそれに. 高いレベルで高次神経括動の結果として成立するものであると考えることがで. 触れ、その対象のイメージを浮かべることができる。その場合、その事物が、. きよう。④」となる。. よく知られており、明瞭な場合には、まさにその対象の触覚的知覚像を得るこ とができるが、その事物が、不明瞭であいまい(例えば、ぐに@つとして冷た. 閾下刺激とイメージ. く形状不定)な場合には、その不明瞭な対象そのものでなく、その対象から得. 知覚刺激のないイメージ表出がありうる。「刺激に対する反応が起きるか起き なくなるかの境目の刺激の値を刺激閾といい、刺激閾下の刺激を閾下刺激とい. 〈1)(2>(3>④〈5)上杉 喬 イメージの基礎心理学水島恵一・上杉 喬 二. う。(5>」つまり、外的刺激のない状態でもイメーージ表出が行われるというこ とである。. 一21一. 一22一.
(13) 1.知覚遮断とイメーージ. この入眠時イメージは、直観像での型のように、それを思い浮かべる人との間. 「知覚遮断は、外界からの刺激の感覚受容器への入力を最大限に減少させるこ. に関連が研究されている。イメージとパーソナリティであり、造形的イメ・一一一bジ. とで、感覚遮断とも、感覚剥奪とも言われる。(1>」このような状況は、日常. と関連あると思われるので、長くなるが引用すると、. 生活においてはみちれないことであるが、上杉 喬はシーガル[Segal, S.・J.,1. 「フt一クスら[Foulks, B.,et aL,1966]は、入眠時イメージとパーソナリ. 971]の引用かち、「感覚刺激のないときに脳が自動的に仕事を与え、これらの. ティ特性との関係について研究している。彼等は、被験者の入眠状態を脳波測. 像を構成すると考えられる。(2)」としているeそして、. 定によって、脳波の電位が低下する睡眠の第1段階(睡眠後、初めてみられる. 「いずれにしろ、外的刺激の減少が、内的活動としてのイメージを活発にさせ. 段階)のレベルのものと規定し、実験を行った。. ることは疑いないe(3>」のである。. 被験者は、この睡眼の第1段階に起こされ、その直前に起こっていたことを. 2.入眠時像(入眠時イメージ〉. 質問され、この被験者の回答が分析された。この分析結果と、カリフォルニヤ. 入眠時イメーージは、夢とともに、造形にも関わりを持っているeそれが題材と. 人格診断目録およびTATの結果から、①入賑時イメージが鮮明で内容が豊か. なり、表現の契機になるケ・一・・スがみられるかちである。. な人は、人格特性において、社会的により安定しており、硬い規則主義者では. 「入眠時イメージは、覚醒と睡眠の間の、もうろう状態の申で出現する。[リ. なく、自己受容的で、より創造的であること、②また、反対に、入眠時イメt・一・b一. チャードソン 1969].り一ニング[Lea簸i㎎, F. E.,1926]は、入賑時イメ・…一一. ジがないか、その内容が概念的で平凡な被験者は、典型的な独裁者的兆候を持. ジには、①形のはっきりしない光斑や、閃光、幾何学模様などの無意味イメー. っており、生硬で、形式張っており、非寛容で、排外的であった、と報告され. ジと、②人の手足やまとまりある光景などの有意昧イメージのあることを明ち. ている.. かにしている。〈4)」そして、. これらの結果は、ゴt・・…ルドバPtガt…H・と:ボルト[Goidberger, L。,&Holt, R. R.,. i一∼入眠時イメージは、自分が見ているものを意識しており、その光景も具体. 箋%月によって実施された感覚剥奪時のイメ・一・・一ジと、籔MPIによる人格特性. 的で鮮明である。そこでは、現実との混同はあまり見ちれない。このことは、. との間の関連が、f知的可塑性と情緒的自由性との結合の反映」(すなわち、知. 夢とも、また幻覚ともちがうものである。むしろ入眠時イメージは、オズワル. 的な柔軟性が、より豊かなイメージと結びついている)として解釈されている. ド[◎swald, L,1962]、ホルト[Holt, R。 R,1964]やズッカーマン[Zueker. こととの一致を示している、(6)」. man, M.,1969コの述べているように、感覚剥奪時のイメージに類似している。 (E)J. 3夢 夢とは、「睡眠中に生じる自覚的体験のうち、明瞭な感覚・知覚的イメージを 持つもの(7)」である。なぜ夢を見るのかということについては、よく言われるR. (1)(2>(3)(4)(5)上杉 喬 イメージの基礎心理学 水島恵n・一一JL 一上杉 喬 編. EM睡眠時での、 f眼球運動が何らかの刺激を網膜像に引き起こし、それが夢と. (6> (7>. なってあちわれるのか、それとも、夢の中の出来事が、眼球運動を引き起こすの. 一23一. 一24一.
(14) かについてはまだ明ちかにしていないが、いずれにしても、両者には密接な関係. 例である。. がある(1>」ということがある。またこれ以外に、夢を引き起こすものとして、. この期待・予想・構えなどによるイメージ喚起や、その内容が決定されたり. 「意識としては知覚されない刺激が夢のなかに現れたり、その刺激が引金とな. する事実は、臨床的事実として確定されているものであり、精神分析の自由連. って夢を見たと思われる事例がある。ナイサ・・…(1967)は、このように刺激が夢. 想、ユングの夢分析、またイメージ面接の基礎をなすものである。(4)」. のなかに現れたり、刺激を同化し合成された夢となったりすることを、夢の合. この条件は、その個人が持つ過去の体験や、考え方といったものに言い換えちれ、. 体(dream incorporati◎n)と呼んでいる。(2)」また、. 造形的イメージの表出にも考慮されねばならない問題となろう。. 「覚醒時における閾下刺激が、意識されたものとしての過去体験とはなちない にもかかわらず、夢において現れたり、夢に影響を与えたりすることが知ちれ. 次に身体活動性とイメ・…一ジの表出について、. ている。(3)」. 「∼イメーージが身体的リラックスや安静時に、よりょく生起される⑤」反面、. 夢については、ユング等が精神分析の立場から研究しているが、本節では夢を. 「∼巫女が神のお告げを「聴いたり」「見たり」するときに、身体的活動性の極地か. ちのものであることを知っている。(中略1このことは、単に身体活動性のレベ. 以上のものにとどめたい。. ルの問題だけではなく、興奮の極地としての精神空白とでもいうことが関係して. いるようにも思われる。⑤」のである。「∼いずれにしろ、イメージが喚起され. イメージ表出の条件 個人の持つ内的な条件により、たとえそれが無刺激の状態にあってもイメ・…一ジ を引き起こすことがある。. る条件にしても、まだ未知の部分の多いことを示すものである。⑦」ということ である。. 「期待・予想・構えがイメ・一一ジを引き起こすことは、シルバ・・・…マンら[1962]. の知覚遮断実験にも見ることができる。そこでは、ほんのかすかな刺激を手が. イメージの基礎的特性. かりに、医学専攻生がx線を、心理学者がロールシャッハ図版をイメージした. 知覚とイメージの持つ基礎的特性について、上杉 喬が、対象性、能動牲、全. のであるが、被験者の心的準備状態(構え)によって、さまざまなイメージと. 体性、恒常性、正像性を「イメージの基礎心理学」の中で述べている。ここでは. なることを示すものであろう。また、バーバー等[Barber, T X,et a1.,1970. ]は暗示によって、被験者が、そこに存在しないネコをひざの上に見たことを 報告しているが、言語暗示によって作られた心的構えがイメーージを喚起させる. 主に造形的イメージと関連あるものをとりあげてみたい。 1.対象性. 外的刺激を必要とするものと、刺激閾下でのイメーージ表出について、残像、直. 観像、イメージの3つが挙げられる。 〈1)(2)〈3>(4)(5)上杉 喬 イメーージの基礎心理学水島恵一・上杉 喬 編. 「残像は、知覚過程にひきつづく過程として成立し、知覚像の残像として、対. (6) 〈7). 象性において成立する。しかしながち残像は知覚像とは異なり、対象の消失後. 一25一. 一26一.
(15) に成立するものである。また、直観像の保有者では、再生された直観像の残像. が受動的な写真模写(写像)ではなく中枢神経系の複雑な活動の結果であるこ. を見ることも報告されており[イェンシェ 1930;バーディ Purdy, D. M.,1936]. とが知られている。(4)dとして、ザポロージェッツ(1967)の言葉を引用して. 対象との関係が間接的であることも示されている。(1)」次に、. いる。. 「直観像の内容は、『焼きつけられた像sとして、知覚対象の内容をそのまま. 「知覚の過程そのものは独特な定位・探求行為であり、定位探求は対象の吟味. 保持する点では対象性を強く保持するが、操作可能なものであり、残像に比べ. と対象の像の創造という機能を営み、この像によって主体は自分の行動を制御. てもより対象から自立し、(申略)表象像としてのイメージにより近いもので. する。(5)」このことは、知覚が能動的で協ることを示している。しかし、. ある、(2>」. 「知覚において、より受動的なものがあることも知ちれている。外界を観照的. 「イメーージは、知覚像の成立しない閾下刺激の下で、また、対象が何も存在せ. に知覚したり、外界の刺激を無意図的に受け入れるなどの場合である。意識的. ず無刺激の状況において、より鮮明に喚起される。さちにイメージは、残像や. な選択注意を行わない状態であるe…般に、このような状態では、身体的活動. 直観像と異なり、ことばによって容易に喚起され、そのことばの指示対象につ. は抑制され、覚醒水準も低下する。前述した(身体活動性とイメージ)シーガ. いてのイメーージをうかべる。このようにしてイメーージは、対象かち自立したも. ル[1971]の研究などかちは、この状態の時には、イメーージが知覚をしのいで. のとしてあちわれる。対象かちの相対的自立は、残像、直観像、(表象像とし. 現れる可能性をもつことが示されている。(6)」のである。このような知覚の能. ての)イメージの順に高くなると考えることができる。(3)」としている。この. 動性と受動性のもとで、. 中でイメージは対象から相対的自立が最も進んでいるというところで造形的イ. 「残像はその成立において知覚活動に従属し、まさに受動的に成立する。残像. メ・・一…ジと食い違うように思われる。しかし対象が、例えば宗教画であればイメ. は意識的努力と無関係に成立する。その意味で、知覚像のある種のレプリカで. ージも宗教的なものに限定されがちであろうし、造形作晶として対象そのもの. あり、受動性を特徴とする。. が解釈の自由度を高めれば、イメーージが喚起され易いという意味において拡大. 直観像もまた、知覚像のレプリカとして、1”焼きつけちれた生のまま」のもの. 解釈するならば、ここで述べちれている相対的自立と同じことが造形的イメー. として成立する。その意味で、受動性を特徴とするものである。しかし、直観. ジにおいて考えられるとしてよいであろう。. 像は、残像に比べて、より能動的な側面を持っている。一般に直観像はその成. 2.能動性. 立に時間を必要とし、その間、注意の集中を必要とする。注意を受けそこなっ. 知覚とイメージは能動的か受動的かという問題がある。上杉喬は、 「知覚の過程が、主体の積極的な定位・探索活動を基本とするもので、知覚像. た部分は像かち脱落することがある。また、直観像は消失後、それを再生する ことができる。これは、直観像の能動的性格を示すものである。(7)」そしてイ メージは、. 〈1>(2>〈3)(4)(5)上杉喬 イメv一ジの基礎心理学水島恵一・上杉喬編. 「表象像としてのイメーージも知覚後の再生像として成立するが、それは、知覚. く6) (7). 像の受動的で単純な再生にとどまらず、複雑な心理過程を通じて形成され、喚. 一27一. 一28一.
(16) 起される。(中略)知覚作用では受動性の極は、覚醒水準の低下とともに、知. しかしながち、イメージは、知覚像に比べ、より部分的、断片的なものとし. 覚像が意識されなくなるのに対して、イメージでは、覚醒水準の低下(ある程. て成立することも知られる。(中略〉イメージは、知覚像の全体性に比較すれ. 度まで〉により、鮮明な像を意識できるのである。(中略)イメージは、多く. ば、全体性を保存しつつも、より部分的として特徴づけられる。だが同時に、. 能動性として成立するが、その喚起においては、意識的に浮かべる能動性ばか. イメージでは、視覚的イメージが聴覚的イメージや嗅覚的イメージを連想喚起. りではなく、受動性をも特徴とするものである。(1)」覚醒水準の低下により鮮. 明な像を意識できるという記述については造形的イメージの所で再検討する必. するということも指摘できる。(3)」ここでの、「より部分的」とは、次の「恒. 常性jについて考え合わせると、イメージが変形しやすく、また意識的に焦点 化しやすいということを示しているのではないのだろうか。. 要があると思われる。. 4.恒常性. 3.全体性. 知覚は、あるまとまった全体として成立することがゲシュタルト心理学によっ. まず知覚は、. て明ちかにされている、また、. 「∼知覚の恒常性は、感覚受容器に入る物理的エネルギー一の絶えざる変化にも. 「へ知覚像の全体性は、感覚・知覚モダリティの統合として成立することかち. かかわちず、安定し、持続性を持った知覚像を成立させる。このことによって、. も知ちれる。視覚的知覚像は、対象の視覚的質(ex.色、形)、触覚的質(柔ら. 安定した外界認知が可能になる。(4)」これは、「知覚の恒常性は、知覚像の全. かさ、硬さ〉、二三感覚的質(暖かさ、冷たさ)、さらに感情的要素(快、不. 体性に基づき、経験や学習の結果としてのものである。⑤」のである。こうし. 快〉などの全体性として成立する.(2> .iそして、. た知覚に、「∼残際は、安定した知覚像の成立に関与しているe(中略)これ. 財メーージもまた、知覚の基礎的特性である全体性を保持している。それは、. は、絶えざる眼球運動によって知覚対象かちはずれた圏を、対象に引き寄せる. まず、イメーージの形成過程にみることができるe前述した静止網膜像の過程は、. ように機能し、知覚像の安定に貢献する。(6>」のである。また.「∼残像は知. 知覚の過程であると同時に、感覚記憶の過程、すなわちイメk・・一・ジが形成される. 覚過程に結びついているが、直観像は、残像のように知覚過程に入りこんだも. 過程でもある。イメーージはその形成過程において全体性を示している。. のではなく、知覚像の號きつけ」である。(7>」. また、イメV一一一ジは、喚起され浮かぶときにも全体性を保存している。多くの. イメ…一Lジは、こうした残像・直観像と異なり、意識的な操作により変形するこ. 場合に背景を持った全体としてイメージされ、多様相性としても成立する。シ. とが可能である。. ャーレイ[1962]による知覚遮断時の被験者の鮮明な海岸の視覚的イメv一・一ジは、. 「安定した外界認知を可能にする知覚の恒常性に対して、イメージは、より不. 潮風という嗅覚的イメージを伴うものであった。. 安定で、恒常性をさらに進めた超恒常性または変形性(デフォルメーション) が特徴である。. (1>(2)〈3>(4)(5)上杉 喬 イメージの基礎心理学 水島恵一・上杉 喬 編. イメージの変形性(デフォルメーション)は、ゲシュタルト心理学の記憶痕. (6) 〈7>. 跡の変容に関するプレグナンッの法則*(簡潔性の法則)として知ちれている.. 一29一. 一3臣.
(17) *プレグナンツの法則は、①常態化(よく知ちれている図形の構造に合わ せて、それに近づく)、②強調化(他のものと著しく異なる個性が実際. (4)」としている。つまり、. にあった以上に強調される〉、③構造的変化(図形自体が不安定で歪が. 「知覚像が正像性によって正確な世界像をつくるのに対して、イメージは、操. 存在しているような場合、その歪が補正されて均整の取れた形に近づく). 作性によって、世界を想像し、知覚的認識を深めるばかりでなく、人問の創造. というものである。これらは、原刺激の持っている不安定な構造が安定. 活動の基礎を提供するものになると考えちれるe(5)」のである。. した方向に変わっていく力を受けていると考えられる。(1)」. この正像性の申のイメージの操作性こそが、造形的イメージを考えていく上で、. 次にイメー・一ジの同化作用について、. 基礎的な部分に相当するものであろう。創造的な造形活動において、個人がその. 「シーガル[1971]は、『イメージにおける同化作用は、被験者が外界の変化. 内部で表現のためのイメーージを操作することができるからこそ、個性というもの. を検知することなしに、外部刺激の諸側面を、被験者のイメ/一一一ジに取り入れる. が考えられ、またそこに普遍的な造形表現があるという想定が可能になってくる。. ときに生ずるもの』であり、財メージと→致する刺激を提示した場合には、. 本節の最後にこれまで挙げてきたイメージとその基礎的特性が、どの様な構造. イメージの記述は、その事物の典型的で慣習的なものとなり、不一一一■i致刺激の場. を持って人の内部で機能しているかを、認知心理学の研究成果かちまとめてみた. 合には、独特の特徴を見せ、一般にその形や色は、しばしば背景や、またはデ. い。. ィテールとしてあらわれる。』とまとめている。(2)」. 認知’島理学によるイメPtジの構造. 経て造形が新たなる展開を示すのであろうと考えちれる。. まず、認知心理学での情報処理論的(int“orraation pr。cessing)アプローーチから、. 5.正像性. 宮崎清孝によるイメ・…一一ジ構造の1”きわめて原始的な1つのモデル」を挙げる。. 「対象の正確な認知を可能にするものが、正像性(そして恒常性)である。③」. 一tt t−di“tttLtt一一Lt一一一tt thttt t−trittttt tfitt ttt ttt ttt t t tt tt t’t’ t’ t’I. ﹁[↓. 造形的イメ…一一Sジにおいて、造形過程にある形と外部刺激によりこの同化作用を. I 「表象像としてのイメージは、対象性かちの相対的自立によって、正像性をさ. 鵬. 外界一→・. の知覚においてはその裏側の知覚像をもつことができないのに対して、対象の. 認識. 期憶 長記. らにすすめ、修正・改変・操作の側面が優勢となっている。このことは、対象. ﹁一. 膿. こうした正像性について、. 記憶. イメージでは、裏側をイメージすることができることに典型的に示されている。. (図 3> (1)(2)(3)④(5>上杉 喬 イメージの基礎心理学水島恵一・上杉 喬 編. これは、. 誠信書房. 「∼外界かちの刺激の結果は、一一時的に感覚貯蔵庫に蓄えられ、パターン認知. 一31一. 一32一.
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