学習に入っていけない生徒の「読み」の深化を促す学習過程
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(2) 地. 売る人になって考えさせる。︵売る人と買う人に分かれ、お店. 子どもたちに1キミならどうする?﹂と問う。︶﹂、﹁第三段階=. 菊. 〝学習に入っていけない〃生徒の﹁読み﹂の深化を促す. 一、間毘と目的. 屋さんごつこをする。︶﹂という指導過程を経ることによって、 中学校において、学業不振の改善に取り組もうとする 時、そ の多くは、学習内容や進度についていけない生徒、い小 わ学 ゆ校 る六 遅年生でも正答率が一割程度という算数の文章題を 進児を対象にすることが一般的であった。しかし現在学 、校 普二 通年 学生の児童が八割以上正答したとする実践研究や認 級において増加傾向を示しているのは、むしろ、学習理 の学 入の り知 口見を引用しながら、〝思考の領域固有性〟につい において立ち止まっている生徒、いわゆる〝学習に入べ って てい いる け。すなわち、子どもに﹁買い物ごつこ﹂という文 ない″生徒である。これらの多くは、一見、学習に参動 加の し文 て脈 いが与えられた時に思考活動が活性化されたという るように振舞ってはいるものの、その実、学習とは無や 関実 係験 に結 、果をもとに、﹁私たちの思考が、雀き生きと作動 周囲の言動にただ同調しているだけの時を過ごしていの るは 場、 合そ もれにふさわしい状況が示された時のみであり、そ できない状況では、どんな人でも︵大人でも、学者でも、専門 あれば、教師の顔を見つめ、うなずきながら話を聞いて いるよ 家でも︶、まるで革も足も出ない﹄ということがある﹂と言 うな素振りをしつつも、内面的には〝心ここにあらず″ という 状況で、ただひたすら終業チャイムを待っているという うの 場で 合あ もる。 ﹁知識がないのではない。﹃考え方﹄を知らないのでも ある。 要するに、考えがはたらかないのである﹂と説明される〝 の領域固有性″は、前述の〝学習に入っていけない〟生徒 佐伯︵二〇〇四︶は、﹁第一段階=問題を読んで細かせる。﹂、. ﹁第二段階=買う人になって考えさせる。︵教師が説明して、. −63−.
(3) 当てはまるのであろうか。 また、筆者は、菊地・黒岩︵二D〇五︶において、国語科の. 内容は違ったものになっていたのかもしれない﹂と述べたので ある。. ていけない″生徒であった。すなわち、菊地・黒岩︵二〇〇五︶. ﹁読み﹂の学習における中学生の読み方を、①〝﹁体﹂ を菊使 この 地っ ・黒岩︵二〇〇五︶ の実践報告に登場する③〝本文 て読む″、②〝序文の﹁中﹂を読む″、③〝本文の﹁の 外﹁﹂ 読読 むむ〟 外を ﹂を ″認知スタイルを持つ生徒は、まさしく、〝学 の三通りの認知スタイルに分類し、それぞれのスタイ習ル じにおいて立ち止まっている″生徒であり〝学習に入っ のに 入応 り口 た指導過程を工夫することが、遅れがちな生徒の1読み﹂の深. の順にアプローチを行なった場合、〝本文の﹁外﹂を読む〟認. 提示した﹃外﹄1﹃中虹1﹃体﹄、もしくは﹃外﹄1﹃体﹄1﹃中﹄. まりに寄与するという実践報告の中で、明らかになっの た実課 のその生徒の″思考の領域固有性〟を活性化させ、そ 践題 は、 改善に向けた次のような具体策を提示した。 の﹁思考を生き生きと作動させ﹂ただけの段階で終了してしまっ すなわち、①〝﹁体﹂を使って読む″認知スタイルの 生た徒 読あるのである。 てい 可の 能﹁ 性が み﹂の深まりに対して③〝本文の﹁外﹂を読む″認知ス イこル とタ いう とは、前述の佐伯︵二〇〇四︶ の紹介する〝思考の の生徒の﹁読み﹂が深まらなかった要因の一つは、学領習 程性 に″が〝学習に入っていけない〟生徒にも当てはまり、 域過 固有 おける﹁読み﹂のアプローチの仕方の順序と考えられ筆る な菊ぜ 者。 が、 地・黒岩︵二〇〇五︶におぃて課題の改善策として なら、この実践では、全員が三通りのアブローチの仕方を1体﹂ ←﹁中﹂1﹁外﹂の順序で、全て取り組むという学習過程をとっ. ていけない″生徒の﹁読み﹂の深まりに注目しながら、その結 果について比較検討していくこととする。. ていたからである。そして、このことによって、〝一知見 うル でを持つ生徒、すなわち〝学習に入っていけない〟生 スど タイ もいいような、教材文および作者の周辺的内容が気に徒な そ﹂も深まるということが期待されるのではないだろ のり ﹁、 読み れを知るまでは本文の﹁読み﹂に入っていくことがでうき かな 。い子 どもたち″、いわゆる③〝本文の﹁外﹂を読む〟認知ス ル本実践報告では、生徒一人ひとりに応じた学ぶ場を そタ こイ で、 の生徒も、無理なく﹁読み﹂に向かうことができた。提し し取 、り組みの一つとして、中学校国語科の﹁読み﹂の学 供か する この実践では、その後の充分な﹁﹃読み﹄を深める時習間 を地持 に﹂ 、菊 ・黒岩︵二〇〇五︶において実践した三通りのアプ っことができなかつたため、結果上しては、③〝本文ロの ﹂方を取り入れた学習指導を実施し、特に、〝本文の ー﹁ チ外 の仕 を読む″認知スタイルの生徒の﹁読み﹂が探まったと﹁ 言外 え﹂る をま 読む″認知スタイルを持つ生徒、すなわち〝学習に入っ でには至らなかった?そこで、﹁この実践とは逆の三外﹄1﹃中﹄. 1▼﹃体﹄という順序で学習が行われれば、アークシートの記述. ー64−.
(4) 二、方法. 1.参加者 札幌市立星置中学校一年生六学級︵二二八名︶. と ?考 歌 ゝ ス. が. 2.教材と学習指導目標. 、■・ し か に の. ︵1︶ ﹃河童と蛙﹄草野新平︵平成一六年度・教育出版︶. を で分 聞 す き な 少 る た り 年. 詩の楽しさを味わい、言葉に対する感覚を豊かにする。. 読 が 自 新. ア. 立 日 と. 辞の構成や表現の特色に注意して読み味わう。. し る 〝 た こ を. イ. か す え. ﹃新開少年の歌﹄辻 仁成︵平成一六年度・教育出版︶. を ヽ つ 〝 生 と 答. ︵2︶. 評価規準. し め て 蛙 さ よ の 』. 人物相互の関係をとらえ、心の成長について考える。. ?楽 と い と. ア. か や ま つ コ!こ. 臼. 作品の展開をとらえ、措かれている人物や状況を理解. ∈可 き 自 章名 た さ に に 河. イ. ①. で 面 文題. する。. ①. 意 欲 点. 3. 評価規準. ●. 学習指導目標の達成を目指す観点別学習状況に応じた評価. , ■■ し_ L_ 度・. とと. 観点別学習状況に応じた評価規準. 観. 規準は、菊地・黒岩︵二〇〇五︶ に準じ、﹁表1﹂とした。. 表1. 聞 話 ・関 く す 態心. ※第一学年を担当する国語科教師二名の話し合いにより、表中. の内容が﹁ほぼ達成されている﹂と判断された場合がB。そ. れより上はA、下はCと評価する。. 理 て 言. 解 の語. む. ・知 に. (._. 技識つ 能・い. と. ①. ① を 詩 理 の. (∋. こ の 詩 許そ 話 自. ②. と 特の 価 れす分 が色構 す ぞ こ の. 解基 で礎. で を 成 る れ と 考 き 捉や こ の が え た え 表 と 〝 で た. き 知 た 識 か を. か る 現 が答 き 〝 でえた答. で意情や文. ②. ①. が心措「と つ の 「. き〟かえ 〝 たを? か聞 を. ?き. き 点 を 情未 で情か新がた 少 ぼ た を 読景表 き 変れ開で出年 く か理み描現 た 化方配 き 来」」. 取. 観 点. に. な. る 起配. が ら. こ こ 連. て. 、. と の、行. −65−. 示 し. 沿 つ. 「. る 上か話. が留心動. 、 を. ?解取写 や か を や達 た事 と と す る 等会 ?捉「の か を の こ で ら. 根. り 拠. る く 年 」」. え に 聞. と の の.
(5) 4.学習過程. オリエ ン テ ー シ ョ ン 。. のオリエンテーション用プリント. ¶河童と蛙﹄−︵一つ目の教材文︶ 一時間目 ︵1︶. 菊地・黒岩︵二〇〇五︶ ︵概略は﹁表2﹂︶を用ぃて行なう。 ︵2︶本文を読み、学習課題について考える。. の欄に、. 学習課題﹁蛙は、最後に一度だけしか出てこないのに、な ぜ、この詩の題名は、¶河童と蛙﹄なのだろう?﹂ ︵3︶ ワークシートの︻今のところ、その答えは⋮︼. 自 分 な り の答えを書く。 二時間目 =交流会. ︵1︶班隊形になり、それぞれの答えを班内で交流する。 ︵2︶代表者を決め、﹁交流内容﹂の発表準備をする。. ﹂▼. ︵3︶各班の代表者による﹁各班の交流内容﹂の発表を聞き合 、つ0. ︵4︶ ワークシートの︻交流会の内容を聞いて⋮︼を書く。. 三時間目 ﹁体﹂を使って読む⋮﹁句点読み﹂﹁段落読み﹂﹁役割. り 読 み ﹂ を する。 闇不文の﹁中﹂を読む⋮ワークブック︵平成一六年度﹃新 しい国語のワーク﹄秀学社︶ の問題を解く。. =発表会. 同閲㈲凰不文の﹁外﹂を読む⋮持ち寄った資料を読み合い、聞 き合う。 六∼七時間目. の内容を発表. ︵1︶一人ずつ前に出て、ワークシート︻すべての学習を終え、. 自分なりに、こういう答えを出しました⋮︼. でも﹃新. し合うと同時に、観点に沿って相互に評価し合う。. ︵2︶学習全体を振り返り、自己評価をする。. ﹃新聞少年の歌﹄−︵二つ日の教材文︶ 一時間目. ︵1︶本文を読み、学習課題について考える。. 学習課題﹁この作品の題名は、r新聞少年の話﹄. ︻今のところ、その答えは⋮︼. の欄に、. 聞少年との思い出﹄でもなく、なぜ、﹃新聞少年の歌﹄な ワークシートの. のだろう?﹂. ︵2︶. 自分なりの答えを書く。 二時間目 廿交流会. ︵1︶班隊形になり、それぞれの答えを珪内で交流する。. ︵2︶代表者を決め、﹁交流内容﹂の発表準備をする。. ︻交流会の内容を聞いて⋮︼を書く。. の学習を振り返り、自分だけの学習計画を. ワークシートの. ︵3︶各班の代表者による﹁各班の交流内容﹂の発表を聞き合 1つ○. ︵4︶. ﹃河童と蛙﹄. 三∼六時間 ︵1︶. 立てる。. ︵2︶自分だけの学習計画に沿って、﹁体﹂﹁中﹂﹁外﹂読みの. いずれか、あるいは全ての読みに取り組む。. ー66−.
(6) ︵3︶ ワークシートの︻すべての学習を終え、自分なりに、こ. =発表会. ういう答えを出しました⋮︼の内容をまとめる。 七∼八時間. の内容を発表し合うと同時. ︵1︶一人ずつ前に出て、︻すべての学習を終え、自分なりに、. こ う い う答えを出しました⋮︼ に 、 観 点に沿って相互に評価し 合 う 。 ︵2︶学習全体を振り返り、自己評価をする。. 三、結果 1.学習過程の実際. 授業は、学習全体を捉えさせるためのオリエンテーションを 一つ目の教材文F河童と蛙﹄の導入時に行った上で、﹃河童と蛙﹄. では、菊地・黒岩︵二〇〇五︶と同じ学習過程で、二つ目の教. −. 前文省略. −. その丁・・﹁体﹂を使って読むー・. 開いた人が﹁へえ!﹂と納得してくれる〝面白い﹁一つじゃ. です。. ない答え﹂″を見つけるための方法⋮その一つ目は、〝﹁体﹂を使っ て読む!″. ﹁声に出して読む﹂﹁身振り手振りの動作をつけて読む﹂﹁劇. のセリフのように体全体で、登場人物や作者になったつもりで. 思いっきり読む﹂などなど⋮とにかく﹁体﹂を使って全身で、. 中略. −. 何度も何度も読むわけです。. −. その二⋮本文の﹁中﹂を読む!. 開いた人が﹁へえ!﹂と納得してくれる〝面白い﹁一つじゃ. です。. ない答え﹂〟を見つけるための方法⋮その二つ目は、〝本文の﹁中﹂ を読む!″. 分析的に読むと言ってもいいかもしれませんね。一つ一つの. 文の﹁中﹂を読む″、③〝本文の﹁外﹂を読む″の三通りの読 み方やそれぞれの読み方に取り組む順序を生徒が選択できるよ. がりなどに注意して読んでいく方法です。みなさんが今まで取. か﹂というようなことを考えながら、ストーリーの前後のつな. 材文﹃新聞少年の歌﹄では、①〝﹁体﹂を使って読む″、②〝本. う、〝自分だけの学習計画を立て、その計画に沿って個別に学. り組んできた学習の中では、ワークの問題を解きながら内容を. 文や段落の関係はもちろん、﹁物語がどのように作られている. 習を進める〟という時間が組み込まれる過程で行なわれた。な. −. 理解していくスタイルがこの方法にあたりますね。. 中略. ない答え﹂″を見つけるための方法⋮その三つ目は、〝本文の﹁外﹂. 聞いた人が﹁へえ!﹂と納得してくれる〝面白い﹁一つじゃ. その三⋮本文の﹁外﹂を読む!. −. お、菊地・黒岩︵二〇〇五︶のオリエンテーション用プリント. オリエンテーション用プリント﹁〝﹃答えは一つじゃな. の概略は﹁表2﹂の通りである。 表2. い﹄読み″ への挑戦!﹂の概要. −67−.
(7) を読む!″. です。. ﹁作者はどういう人か﹂ということを調べたり﹁同じ作者の他 の作品﹂を読んだり、または、﹁その作品が作られた時代﹂や﹁社 会の状況﹂などを調べることによって〝面白い﹁一つじゃない. 後略. −. 答え﹂″を探し出す方法です。. −. 判断できたからであった。. 2.〝学習に入っていけない″生徒の﹁読み﹂の変容. ﹁表3﹂は、各学級二∼三名ずつ見受けられる〝本文の﹁外﹂. を読む″認知スタイルを持つ生徒、すなわち〝学習に入ってい. けない″生徒の一人が記したワークシートの記述である。. ︻今のところ、その答えは⋮︼. 〝自分だけの学習計画を立て、その学習計画に沿って個別に 学習を進める″という時間が組み込まれた理由は、〝本文の﹁外 〝﹂ 学習に入っていけない″生徒のワークシートの一部 を読む″認知スタイルを持つ生徒、すなわち〝学習に入ってい けない″生徒が、﹁外﹂1﹁中﹂⊥﹁体﹂、もしくは﹁外﹂1﹁体﹂. 新聞少年の色々な思い出が歌みたいになっているのだろうと. 思った。. 1﹁中﹂の順にアプローチを行なつた時、その﹁読み﹂が深ま ると期待されたからであった。なお、菊地・黒岩︵二〇〇五︶. 生徒、すなわち〝学習に入っていけない″生徒の多く︵一人人. て新聞少年の歌という題名にしたんだと思いました。. んが新聞少年の色々な思い出がつたわり歌みたいになっていっ. が実践に際して考慮し、配慮した点については、次のような 状流会でのみんなの考えを聞いて⋮︼ ︻交 況から、概ね問題はなかったと判断された。すなわち、今回﹁の いいかげんな気持でやるとやったらおれが許さんけんね。﹂ 実践に参加した生徒は、いわゆる﹁自我が芽生え始めるとと同 い時 う言葉が心の中で反響していて歌になったのかなとみんな に、他者との差異に必要以上に敏感になる時期﹂にはあっのた 考も えを聞いてそう思えてきた。 のの、数学等の他教科において、少人数指導やグループお︻ よす びべての学習を終え、自分なりに、こういう答えを出しまし 個別学習等の学習経験から、同じタラ・スの中で級友と異たな った !︼ 学習活動に取り組むことに大きな抵抗感を感じられなかった﹁ こ新聞少年の歌﹂という題名なのは、自分なりに考えて とと、﹁三通りのアプローチの仕方のうち、どれかを選び○な い年 ﹂の歌の最後の﹁いいかげんな気持ちでやるとやった 新さ 聞少 と投げかけた際、〝本文の﹁外﹂を読む″認知スタイルをら持 おつ れが許さんけんね﹂という言葉が心の中で反響して、辻さ 中一七名︶が、自らの認知スタイルに応じた読み方を選んだと. −68−.
(8) 〇二つ目の考えでは、辻仁成さんが歌が好きだから、新聞少年 の歌という題名にしたんだと思います。なぜかと言うと、辻仁 成さんは作曲家だったから、新聞少年のことを書いている時、 辻さんが自分なりの歌を作っていき新聞少年の歌という題名に し た ん だ と 思いました。 この生徒は、〝自分だけの学習計画を立て、その学習計画に 沿って個別に学習を進める″とい、γ時間において、まず﹁作者 の他の作品やプロフィール﹂﹁ミュージシャンという別の顔を もつ作者のヒット曲﹂等々、生徒や教師が持ち寄った資料を読. ︵おおむね満足できる︶とされた。また、この生徒. たか?﹂をクリアしている。よって、この教材の﹁読むこと﹂ の評価はB. はこの学習後の﹁関心・意欲・態度﹂においても評価規準を充. 分にクリアし、規準に基づく到達度測定テスト︵定期テスト︶. においても、判定基準となる得点を上回ったことから、﹁読む. こと﹂の評定が、最終的にBへと向上することになケた。. 3.学級全体の﹁読み﹂の変容. 次頁﹁表4﹂は、前述の生徒が在籍する一学級全体の﹁読み﹂. の段階では﹁わか. 座標の左よりも右、下よりも上の生徒が、〝﹁読み﹂が深まった〟 と判断できるわけである。. み合い聞き合う学習活動を選び、食い入るように資料や歌詞を の変容をプロットしたものである。 読み漁っていた。事前に推察された認知スタイルも〝本文の﹁外﹂ この座標では、﹁根拠のある﹂﹁複数の答え﹂を示すことがで から読んでいく″というものであり、〝一見どうでもいいような、きた生徒が、右上の第一象限にプロットされていく。すなわち、 教材文および作者の周辺的内容が気になり、それを知るまでは 本文の﹁読み﹂に入っていくことができない〟という生徒でも. 表からは、︻今のところ、その答えは⋮︼. りません!﹂と記述していた生徒一三名が、︻交流会でのみん. あった。また、通常の国語科の授業では、﹁関心・意欲・態度﹂ をはtれ﹁読むこと﹂においても、C︵努力を要する︶と判定. なの考えを聞いて⋮︼. ぅに、﹁新聞少年の言動が作者の人生に与えた影響﹂や﹁作者. 自分なりに、こういう答えを出し㌢した⊥に記されているよ. ところが、今回の属践では、﹁表3﹂の︻すべての学習を終え、. 上へ、左から右へと動いていることが分かる。このことから、. る″という学習活動を経ることによって、学級全体が、下から. けの学習計画を立て、その学習計画に沿って個別に学習を進め. の段階でゼロになり、その後の〝自分だ. さ れ る こ と の 多い生徒であった。. の新聞少年に対する尊敬や愛憎﹂などを碇えることができて.い. 一部の認知スタイルを持つ生徒のみならず、多くの生徒の読み が深まったと判断された。. た。これは、﹁表−﹂の評価規準﹁読むこと﹂②﹁﹃新聞配達の. 少年﹄の描かれ方や﹃ぼく﹄の心情の変化を捉えることができ. −69−.
(9) 表4. の移動を表. 前述の生徒が在籍する一学級全体の﹁読み﹂の変容. ※﹁−﹂は︻交流会でのみんなの考えを聞いて⋮︼. わし、﹁◆﹂は︻すべての学習を終え、自分なりに、こういう 答えを出しました!︼の段階での最終移軌を表わしている。. 四、考察と今後の課題 学級全体、あるいは、﹁表3﹂の生徒を含めた各学級二∼三 名ずつ見受けられる〝本文の﹁外﹂を読む″認知スタイルを持 つと礎察された生徒のワークシート、および、授業中の観察尊 から軌断して、今回の実践は、〝学習に入っていけない〟生徒. の課. の﹁読み﹂の深まりを促す、一つの学習方法せ提案することが. 出来たのではないか。すなわち、菊地・黒岩︵二〇〇五︶. 題改善を目指し、〝自分だけの学習計画を立て、その学習計画. に沿って個別に学習を進める″という時間を組み込んだことは、. の紹介. 〝学習に入っていけない″生徒の﹁読み﹂の深化を促すことに 寄与したと考えられる。. また、今回の実践結果を見る限り、佐伯︵二〇〇四︶. する〝思考の領域固有性″は、〝学習に入っていけない″生徒. にも当てはjることが実感された。なぜなら、普段の国語の授. 業では、授業開始とほぼ同時に〝心ここにあらず″という表情. で終業チャイムを待つだけの、いわゆる〝学習に入っていけな い″生徒が、自分の最も気になる作品の周辺的な情報をまず探. してよいと分かると、一転、生き生きとした表情に変わり、食. い入るように資料や歌詞を読み漁った上で、納得または充分満. 足するや、それまでには見たことのないような意欲的な読み取. りを開始する姿を何度も目にしたからである。. つまり、〝学習に入っていけない″生徒においても、佐伯︵二. 〇〇四︶が指摘する﹁知識がない﹂から学習に参加できないわ. けでもないし、﹁r考え方Lを知らない﹂から意欲が湧かかいわ. けでもないということが実感され、﹁考えがはたらく﹂状況、 すなわち、思考活動が活性化される領域や状況設定がなされれ ば、意欲的な学習への取り組みが始まるということが示唆され. たのである。 ただ、このような成果と同時に、課題も明らかになった。. −70−.
(10) ものの、一∼二名の指導者では充分に日が行き届かないという. 二箇所を用意した。その結果、成果として記した効果はあった. 室を併用しながら、授業の重なる他のクラスと共同で〝静かな 学習環境〟と〝声を出したり動き回ったりできる学習環境″の. る生徒や作者のプロフィールを読んでいる生徒もいるというこ とである。今回の実践では、普通教室と向かい合わせの多目的. 生徒の多くは、普段の授業では、静かに教師の話を開き、黙々. 読む″学習活動を選択するケースが頻繁に現われた。それらの. 八割︶. 知スタイルであろうと推察された庄倒的多くの生徒︵全学年の. を選択し、その後、﹁外﹂1﹁中﹂といケ学習を経て、﹁読み﹂. 期﹂の中学生に、自らの認知スタイルに合った読み方を自然な まず挙げられるのは、個別学習を少数の教師で指導すること の困難性である。﹁体﹂読み、﹁中﹂読み、﹁外﹂読みの学習順 形で、無理なくとらせていく方法や学習過程を工夫していく必 要がある。 や内容を生徒一人ひとりに委ねるということは、同じ授業時間 また、〝﹁外﹂を読む″認知スタイルであろうと推察した生徒 の中に、音読をしでいる生徒もいれば、ワークに取り組んでい. 課題が残った。なお、公立の中学校においては、今回のように. とノートにべンを走らせている〝ごく普通の生徒″. の生徒が、〝声を出したり動き回ったりできる学習環境″の中、. である。そ. の中に、計画の段階で、予想とは違う〝﹁体﹂を使って. が深まったと判断されるに至った。他にも、〝﹁中﹂を読む″認. の残り一名は、計画の段階で〝﹁体﹂を使って読む″学習活動. 同じ学年を組む教師同士が、協力して指導することさえ難しい 場合が一般的である。実践現場でも少しずつ日常性を帯び始め. を選択した。しかし、どの学年、どの生徒においても、常に自. 学習計画を立てる際に、まず〝本文の﹁外﹂を読む″学習活動. ろうと推察した生徒のうち、九割の生徒︵一人人中一七名︶が、. 観察や授業資料の分析から〝﹁外﹂を読む″認知スタイルであ. み方を選択する生徒への対応である。今回の実践では、普段の. 課題の二つ目は、事前に推察した認知スタイルと異なった読. 葉で考えたり、読んだり、書いたりすることは苦手−だから、. ような内容を述べている。すなわち、﹁今の子どもたち﹂は﹁言. まとめた﹁子どもの特性と実践の工夫﹂の中の. 処理優先脳﹂と区別した福島︵二〇〇〇︶、の研究を踏まえつつ、. 脳を﹁大量イメージ情報処理優先脳﹂として従来の﹁言語情報. 二︶は、﹁子どもの脳が変わった﹂とし、現代の子どもたちの. これはいったい、何を意味するのであろうか。安藤︵二〇〇. ている数学科の少人数指導の枠を国語科教育にも広げ・ていくな 嬉々として本文を繰り返し音読し合ったり、演じ合ったりしな ど、財政面の支援を含む具体的なシステムの改善が求められる。 がら﹁読み﹂を深めていったのである。. らの認知スタイルに合った読み方を選択するとは限らない。菊. 説明・講義型の授業はほとんど効果がない。論理的思考におい. で、次の. 地・黒岩︵二〇〇五︶が配慮したように、いわゆる﹁自我が芽. ては映像などのツールが必要。言葉だけの説教など無意味であ. ︵1︶. 生え始めると同時に、他者との差異に必要以上に敏感になる時. −71−.
(11) ら、考えを深めつつ、日々の実践に取り組んでいjたい。. る。別の言葉で言うと﹃カラダから言葉へ㌔まず動作・行動・ は、〝思考の領域固有性″という考え方に享えられて、﹁今の子 作業から入ること。言葉はその後。﹂と言うのである。この内 どもたち﹂に応じた〝学び手のための学習過程″の開発と実践 容は、日々、﹁今の子どもたち﹂に接している公立中学校の教 的検証の段階に入ったと言える。今後とも、各分野の知見を広 師にとっては、極めて共感度が高い。 く学びつつ、目の前の生徒一人ひとりをしっかりと見つめなが また、斎藤・山下︵二〇〇二︶は、LD/ADHDの子ども. たちに対する療育手法の基本にある〝感覚統合″という理論を ︵札幌市立宮の丘中学校︶ 紹介する中で、﹁感覚がよく組織化され、統合された方法で流 五、引用文献 れるとき、脳は、知覚、行動、学習を形づくるためにこれらの 感覚を使用することができる﹂と、身体感覚の重要性を指摘し、 安藤修平三〇〇二︶ ﹁﹃今どきの子ども﹄研究の実践化﹂. 佐伯︵二〇〇三︶も、幼稚園児に、慣れ親しんだ﹃結んで開い ﹃蒼穿第九号 北師教育文化振興会札幌支部 て﹄を、手を動かさずに歌わせることの困難性を例に引きなが 菊地一・黒岩 督︵二〇〇五︶ ﹁遅れがちな生徒の認知 ら﹁からだを動かさないことは﹂本来、ものを考えることを、 スタイルに応じた﹃読み﹄の学習﹂﹃学校数青学研究﹄ 押さえ﹂ てしまうと警告する。 第一七巻 兵庫教育大学 っまり、〝﹁体﹂を使って読む″という読み方は、ごく一部の 佐伯 鮮︵二〇〇三︶ ﹁子どもはからだでわかる﹂﹃﹁学び﹂ 生徒の認知スタイルなのではなく、﹁今の子どもたちの特性﹂ を問いつづけて−授業改革の原点﹂﹄小学館 であり、多くの生徒が﹁読み﹂を深める過程をスタートさせる 佐伯 膵︵二〇〇四︶ ﹁思考の領域固有性﹂﹃﹁わかり方﹂ ための〝スイッチに近いもの″と考えた方がいいのかもしれな の探求−思索と行動の原点−L小学館 い。であるとするならば、目の前の子どもたちのため、実践現斎藤 孝・山下抽実︵二〇〇二︶ ﹁﹃学校﹄からはみ出る 場で今なお広く用いられている、伝統的な座学中心の学習過程 子どもたち﹂r中央公論﹄十一月号 を見直し、﹁今の子どもたち﹂に応じた〝学び手のための学習 福島 章︵二〇〇〇︶ ﹁テレビの影響に対する警告﹂﹃子 過程″を、早急に開発する必要があろう。 どもの脳が危ない﹄PHP新書 〝適性処遇交互作用″という考え方を拠り所に〝認知スタイ ル″という窓から生徒を見つめ直し、﹁読み﹂の学習を改善し ていくという﹁一人ひとりに応じた学ぶ場を提供する取り組み﹂. −72−.
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