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幼稚園における保健活動の実態 -養護教諭配置園と未配置園について-

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(1)Title. 幼稚園における保健活動の実態 −養護教諭配置園と未配置園について −. Author(s). 芝木, 美沙子; 仲田, さくら; 長谷川, 幸恵; 南向, 素子; 笹嶋, 由美. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 58(2): 81-93. Issue Date. 2008-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/86. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第58巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.58,No.2. 平成20年2月 February,2008. 幼稚園における保健活動の実態 一養護教諭配置園と未配置園について−. 芝木美沙子・仲田さくら・長谷川幸恵・南向 素子*・笹嶋 由美 北海道教育大学旭川枚 臨床医科学・看護学教室 *北海道教育大学附属旭川幼稚園. AStudyonHealthPracticeatKindergarten. −ComparingKindergartenswithandwithoutaSchooINurseTeacher− SHIBAKIMisako,NAKATASakura,HASEGAWAYukie,. NASAKIMotokoandSASAJIMAYumi DepartmentofClinicalScienceandNursing,AsahikawaCampus HokkaidoUniversityofEducation Asahikawa O70−8621. 要 旨 私たちは,幼児が健康な生活を営むために行われている保健活動の実態を把握するとともに,保健管理担 当職員としての養護教諭が配置されている幼稚園と配置されていない幼稚園の保健活動を比較し,現状を把 握することを目的として,全国の国立幼稚園,大阪府,北海道の公立および私立幼稚園で養護教諭配置園102 園,養護教諭未配置園122園を対象に質問紙による郵送調査を行った。. 保健室が独立した一つの部屋として設置されているのは41.5%であり,養護教諭配置園の方が多く,保健 室の利用人数も多かった。また,今回調査した全ての健康診断の検査項目において,養護教諭の未配置園は 実施率が低く,「聴力検査」「耳鼻科検診」「眼科検診」「保健調査」「視力検査」は半分以上の園で実施され ていなかった。. 保健活動を養護教諭配置状況別にみていくと,養護教諭配置園の方が園児の健康・安全管理の体制が整っ ており,園児の生活に直結して,その場に応じた指導や応急処置などが行われている。また,健康診断の実 施率も高くなっている。これらのことから,今後専門的な知識と技能をもつ養護教諭が多くの幼稚園に配置 され,幼稚園における保健活動のより一層の充実が図られることが望まれる。. 81.

(3) 芝木美沙子・仲田さくら・長谷川幸恵・南向 素子・笹嶋 由美. Ⅰ 緒 言 幼児は病気に対する抵抗力が弱く,一度病気に. そこで今回私たちは,幼児が健康な生活を営む ために行われている保健活動の実態を把握すると. ともに,保健管理担当職員としての養護教諭が配. かかると急速に進行する傾向がある。また,身体. 置されている幼稚園と,配置されていない幼稚園. 機能の発達が未熟であり,危険に対する注意力や. の保健活動を比較し,現状を把握したいと思い,. 判断力が乏しいため事故を起こすことが多い。し. 本研究に着手した。. たがって,幼稚園においては,幼児の安全や健康. の保持・増進のための計画や体裁を整え,効果的. に保健活動を実施することが必要である1)。 近年,社会環境や生活様式の変化は幼児の心や. Ⅱ 研究対象および方法 養護教諭が配置されている全国の国立(49園),. 体に強い影響を及ぼし,複雑な健康問題が見られ. 大阪府(130園),北海道の公立(17園)および私. るようになった。しかも,多くの心身の健康問題. 立(4園)の幼稚園計200園と,養護教諭が配置. の根源は,すでに幼児期から芽生えると言われて. されていない大阪府(160園),北海道(旭川市31. いる2)。また,幼児期は,身体的な発達の基礎が. 園・札幌市59園)の幼稚園計250園をそれぞれ対. つくられはじめ,運動機能が急速に発達する時期. 象として,質問紙郵送調査法により行った。. でもある。身体を十分に動かすことは,単に体を. 調査期間は平成16年11月17日から12月3日まで. 丈夫にしたり,運動機能を高めたりするだけでは. とし,回収状況は養護教諭配置園102部(回収率. なく,同時に知的好奇心を満足させたり,人との. 51.0%),養護教諭未配匿園122部(回収率48.8%). 関わりを広げたりするなど,様々な面の発達を促. であった。. すことにつながっていく。幼児の実態から幼稚園. 調査内容は,保健活動についてで,特に保健指. 教育要領の領域「健康」の観点である「健康な心. 導,応急処置,健康診断の実施状況や困難点など. と体を育て,自ら健康で安全な生活を作り出す力 を養う」をふまえ,幼児期の発達にふさわしい生 活を営むことができるようにする必要がある。 これらのことを達成するためには健康に関する. (一部自由記述を含む)を調査項目として設定し た。. 調査の結果の解析は,ズ2検定(5以下のセル がある場合はFisher法を用いた),t検定を行い,. 専門的知識と技能を持っている養護教諭の役割が. 有意水準5%をもって差があるとした。なお,集. 重要になってくると考えられる。養護教諭は,幼. 計および統計解析にはMicrosoftExcelおよび. 児の成長発達や複雑多様化した健康問題への対応. Excelアンケート太閤Ver3.0を使用した。. 及び,保護者の子育て支援に重要な役割を果たし ている。子ども自身も先生の話を真剣に受け止め る時期であり,遊びを中心とする幼児の生活に密 着しながらの保健活動は,基本的な生活習慣を定 着させるのに,最も適している。 生活習慣病などの病気の低年齢化がいわれてい. Ⅱ 結 果 1.調査対象者の概要. 養護教諭を経験年数別(平成16年4月現在)に みると,初任から36年であり,平均16.1年であっ. る今日,幼児期の段階から保健教育を推進し,健. た。そのうち幼稚園の養護教諭としての経験年数. 康に対する意識を芽生えさせることが重要である. は0∼36年であり,平均12.0年であった。. と考えられる。しかし,幼稚園に配置されている. 現在勤務している園での勤務年数は0∼20年で. 養護教諭は他校種に比べて少なく,その活動や役. あり,平均4.2年であった。過去に幼稚園以外で. 割についてほとんど知られていないのが現状であ. 養護教諭を経験した人は52.9%(54名)であり,. る。. 小学校42.2%(43名),中学校21.6%(22名),高. 82.

(4) 幼稚園における保健活動の実態. 等学校7.8%(8名),養護学校4.9%(5名)な. している場合,以下保健コーナーとする)がある. どであった。. 幼稚園は87.9%(197園)で,配置園では98.0%(100. 養護教諭が配置されていない園での回答者は, 園長47.5%(58名),教頭14.8%(18名),教諭24.6%. 園),未配置園では79.5%(97園)であり,配置 園の方が有意に保健室や保健コーナーが設置され. (30名),その他(臨時職員,看護師等)8.2%(10. ていた(p<0.001)。保健室や保健コーナーがあ. 名)であった。経験年数別にみると,初任から40. る園の園児数の平均は121.4名であり,保健室や. 年であり,平均21.2年であった。このうち過去に. 保健コーナーがない園の園児数の平均は135.0名. 幼稚園以外の職場を経験した人は32.0%(39名). であったが,有意差はなかった。. で,小学校7名,中学校5名,保育所3名,養護. 独立した一つの部屋として保健室が設置されて. 学校3名,教育委員会3名,会社員3名などが挙. いる園は41.5%(93園)であり,45.5%(102園). げられていた。現在,勤務している園での勤務年. は他の部屋と兼用していた。保健室を兼用してい. 数は0∼36年であり,平均7.0年であった。また,. る部屋として,職員室,図書室などが挙げられて. 過去に養護教諭が配置されている幼稚園で勤務し. いた。養護教諭配置状況別にみると,独立した保. たことがある人は18.9%(23名)であった。. 健室が設置されているのは,配置園64.7%(66園) に対し,未配置園では22.1%(27園)と配置園の. 2.幼稚園の概要 園児数は23∼433名で,平均123.0名であった。. 方が多く保健室が独立した一つの部屋として設置 されていた(p<0.001)。保健室を独立した一つ. 養護教諭が配匿されている幼稚園(以下,配匿園. の部屋として設匿している園の園児数の平均は. とする)と,養護教諭が配置されていない幼稚園. 109.1名であり,他の部屋と兼用している園の園. (以下,未配置園とする)の園児数を比較すると,. 児数の平均は132.7名であり,保健室を他の部屋. 配置園では23∼433名,平均119.5名であり,未配. と兼用している方が園児数は有意に多かった(p. 置園では38∼389名,平均125.9名であったが,園. <0.05)。. 児数に有意差はなかった。 学級数は2∼15学級で,平均4.6学級であった。. ベッドの有無については,ベッドが設置されて いる園は93.3%(209園),設置されていない園は. 養護教諭配置状況別に学級数をみると,配置園で. 2.7%(6園)であった。養護教諭配置状況別に. は2∼15学級,平均4.3学級であり,未配置園で. みると,配置園ではベッドが設置されているのは. は2∼14学級,平均4.8学級であったが,学級数. 96.1%(98園)に対し,未配置園では91.0%(111. に有意差はなかった。. 園)であったが,有意差はなかった。. 職員数は3∼27名で,平均9.7名であった。養. 保健室や保健コーナーがある197園の状況につ. 護教諭配置状況別に職員数をみると,配置園では. いて,「衛生的であるか」「備品・薬品は充実して. 4∼25名,平均10.1名であり,未配置園では3∼. いるか」「適切な場所にあるか」「園児のプライバ. 27名,平均9.4名であったが,職員数に有意差は. シーが守られているか」「充分なスペースはある. なかった。. か」の5点について聞いたところ,「衛生的である」. 障がい児を受け入れている幼稚園は72.8%(163. が84.8%(167園)と最も多く,次いで「備品・. 園)で,配置園では62.7%(64園),未配置園で. 薬品は充実している」は73.6%(145園)であっ. は81.1%(99園)であり,未配置園の方が有意に. たが,「充分なスペースがある」は46.7%(92園). 多く障がい児を受け入れていた(p<0.01)。. と少なかった。養護教諭の配置状況別では,有意. 差がなかったが,保健室や保健コーナーの設置状 3.保健室について. 保健室や保健コーナー(職員室等の一部を利用. 況別では,独立している方が「園児のプライバシー が守られている」(p<0.001),「衛生的である」「適. 83.

(5) 芝木美沙子・仲田さくら・長谷川幸恵・南向 素子・笹嶋 由美. 表2 幼稚園で行われている保健指導. 表1 保健室・保健コーナーの状況 %(園). 全体 n=197. 衛生的である 167. 保健室・保健コーナー設置状況 独立 n=93 兼用 n=102 検定. (84.8) (92.5) (78.4) 86. 80 **. 備品・薬品が 145 71 73 充実している (73.6) (76.3) (71.6) 72 適切な場所に 130 57 ** (66.0) (77.4) (55.9) ある プライバシー 126 73 52 *** (64.0) (78.5) (51.0) を守れる 充分なスペー 92 53 38 ** (46.7) (57.0) (37.3) スがある (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). 切な場所にある」「充分なスペースはある」(共に p<0.01)としている園が有意に多かった(表1)。. 保健室や保健コーナーの状況の5つの項目全て に「はい」と答えていた園は31.0%(61園)であ. %(園). 項 目 全体 n=224 項 目 全体 n=224 うがい・手洗い. 指導. 212 排便について 141 (94.6) (62.9). 歯磨き指導. (88.4) 紙の用意. 風邪予防. 191 (85.3) 食事のマナー 138 (61.6). 198 ハンカチ・ちり. 186 (83.0) 身体の清潔 トイレの使い方 179 (79.9) けがの予防. 虫歯予防. 健康診断につい て. 衣服の調節. 148 (66.1) 姿勢について 102 (45.5). プール指導. 147 (65.6) 目について. 夏休み・冬休み. の過ごし方 68 安全教育 142 (63.4) その他 4 (19.6) 145 からだの発育 (64.7). 規則正しい生活 143 (63.8) 耳について. は3.6%(7園)であった。保健室の設匿状況と. 「風邪予防」85.3%(191園),「虫歯予防」83.0%. の関係をみると,5つの項目全てに「はい」と答. (186園)などであった(表2)。. 調査項目以外で挙げられたものの中には,配置. 園),5つの項目全てに「いいえ」と答えた園で,. 園,未配置園の両園で行われていることとして「食. 保健室が独立しているのは14.3%(1園)であり,. 育指導」「お弁当について」があり,配置園では「性. 保健室が独立している方が有意に5項目全てに. に関する指導」「命の教育」,未配置園では「交通. 「はい」と答えていた(p<0.05)。養護教諭配. 安全指導」「インフルエンザについて」などがあっ. 置状況別では有意差はなかった。. 一週間の保健室の利用人数は0∼100名で平均 23.2名であった。配置園は2∼100名で平均34.8. た。 2)囲証点. 保健指導を行う上での困難点として自由記述で. 名,未配置園は0∼80名で平均10.5名であり,配. 調査したところ「幼児の理解力に差があるため,. 置園の方が未配置園よりも有意に多かった(p<. 指導内容に悩む」12園などがあった。養護教諭配. 0.01)。. 置状況別にみると,配置園では「時間の確保が難 しい」21園,「園児向けの保健教材・資料がない」. 4.保健指導について. 12園,「教材や資料の工夫が難しい」6園といっ. 1)保健指導の内容. た内容のものが多かった。未配置園では「養護教. 今年度行った,または予定している保健指導に. 諭がいないため専門性に欠ける」10園といったも. ついて聞いた(養護教諭に対しては養護教諭自身. のが多く,「家庭との連携がうまくはかれない」. が行った,または幼稚園教諭と協力して行った保. 4園ということも挙げられていた。. 健指導を聞いた)ところ,保健指導は,生活の中 で適宜行っている園が多かった。指導している項. 5.応急処置. 目をみると「うがい・手洗い指導」94.6%(212園). 1)内科的症状・けがの応急処置について. が最も多く,次いで「歯磨き指導」88.4%(198園),. 84. 1 7 (52.2) 1 5 (51.3). 165 水飲み場・足洗 109 (73.7) い場の使い方 (48.7). り,5つの項目全てに「いいえ」と答えていた園. えた園で,保健室が独立しているのは63.9%(39. 141 (62.9). 1週間でみられた内科的症状やけがの応急処置. 94 (42.0) 79 (35.3) (30.4).

(6) 幼稚園における保健活動の実態. 2)救急体制について. について調査を行ったところ,内科的症状の処置 では「発熱」68.8%(154園),「腹痛」59.4%(133. 救急体制を決めている園は92.4%(207園)で,. 園),「頭痛」33.9%(76園),「嘔吐」33.5%(75. 決めていない園は5.4%(12園)であった。救急. 園),「気分が悪い」31.7%(71園)などが多くあ. 体制を決めている園を養護教諭配置状況別にみる. げられていた。養護教諭配置状況別にみると,配. と,配置園は94.1%(96園)に対し,未配置園は. 置園の方が有意に多くみられた症状は「腹痛」(p. 91.0%(111園)であったが,有意差はなかった。. <0.01),「頭痛」「気分が悪い」「発疹」(p<0.05). 救急体制を決めていない園では,「その都度対応. であり,未配置園の方が有意に多くみられた症状. している」という理由が挙げられており,「職員. はなく,「症状なし」が有意に多かった(p<0.05). 不足などにより臨機応変に動くしかない」といっ た状況の囲もあった。. (表3)。 けがでは「すり傷」88.4%(198園),「うちみ・. 3)囲証点. 養護教諭配置園での応急処置を行う上での困難. 打撲」67.4%(151園),「頭を打つ」52.7%(118 園),「鼻血」47.3%(106園),「切り傷」46.4%(104. 表4 けがの応急処置. 園)などが多くあげられていた。養護教諭配置状. %(園). 況別にみると,配置園の方が有意に多くみられた. 養護教諭配置状況. 全体. ものは「うちみ・打撲」「頭を打つ」「鼻血」「切. n=224. り傷」「目の異物」「刺し傷」(p<0.001),「虫さ すり傷. され」「かみつき」「くつずれ」(p<0.01),「す. 配置園. 検定. n=102. 198 95 103 (88.4) (93.1) (84.4) 151 91. り傷」「とげ」「ねんざ」(p<0.05)であり,未. うちみ・打撲 60 *** (67.4) (89.2) (49.2). 配置園の方が有意に多くみられたけがはなかった. 頭を打つ. (表4)。. 鼻血 切り傷 表3 内科的症状の応急処置 %(園). 全体 n=224. 発熱 腹痛 頭痛 打匝吐 気分が悪い 下痢 発疹 乗り物酔い. 養護教諭配置状況. 眼の異物. 配置園 n=102 未配置園 n=122 検定. 虫さされ. 154 65 89 (68.8) (63.7) (73.0). かみつき. 133 61 ** 72 (59.4) (70.6) (50.0) 76 42 34 * (33.9) (41.2) (27.9) 75 31 44 (33.5) (30.4) (36.1) 71. 41. 30 *. (31.7) (40.2) (24.6) 36 17 19 (16.1) (16.7) (15.6) 33 21 12 (14.7) (20.6) (9.8) 8. 4. *. 4. (3.6) (3.9) (3.3) 1. 0. 1. ひきつけ. (0.4). その他. (12.1) (13.7) (10.7). 症状なし. (9.4) (4.9) (13.1). 27 21. とげ. (1.0). 14 5. 13. 16 *. (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). ねんざ 刺し傷 くつずれ. 118 (52.7) 106 (47.3) 104 (46.4) 49 (21.9) 45 (20.1) 27 (12.1) 23 (10.3) 14 (6.3) 13. 80 38 *** (78.4) (31.1) 61 45 *** (59.8) (36.9) 67 37 *** (65.7) (30.3). 19 *. 30 (29.4) (15.6). 38 7 (37.3) (5.7). 17 6 ** (16.7) (4.9) (10.8) (2.5) 12. 3 *. *** (5.8) (11.8) (0.8) 11 10 1 ** (4.9) (9.8) (∩.8) 8. 5. 3. (3.6) (4.9) (2.5). 耳の異物. (1.3) (2.0) (0.8). 脱臼. (0.9). 骨折. (0.9) (1.0) (0.8). その他 けがなし. ***. 19 8 ** (18.6) (6.6). 突き指. やけど. *. 3. 2. 2. 2. 1. 0. (2.0). 2. 2. 2. (0.9) (2.0) 17 15 (7.6) (14.7) (1.6) 6. 0. 2 ***. 5. (2.7) (1.0) (4.1) (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). 85.

(7) 芝木美沙子・仲田さくら・長谷川幸恵・南向 素子・笹嶋 由美. 点をみると,「園児の表現力が不充分なため,状. 6.健康診断. 況や程度の把握に困る」48.0%(49園)が最も多. 1)健康診断実施内容(表5). く,「一人一人に対して充分な時間がとれない」. 実施している健康診断をみると,「身長」「体重」. 15.7%(16園),「処置あるいは休養の場所がない」. はともに97.8%(219園),「内科検診」97.3%(218. 8.8%(9園),「保護者の理解が得られない」5.9%. 園),「歯科検診」95.5%(214園)と実施率が高かっ. (6園),「救急体制・設備が整っていない」4.9%. たが,聴力検査の実施率は46.0%(103園)と検. (5園),「幼稚園教諭の理解が得られない」2.9%. 査項目の中で最も低く,その理由として「聴力検. (3園)が挙げられていた。応急処置を行う上で. 査のために,静かな場所を確保することが難しい」. の困難点と保健室の設置状況との関係をみると, 「処置あるいは休養の場所がない」は,保健室が. ということが挙げられていた。. 養護教諭配置状況別にみると,配置園では「身. 独立で設置されている66園では3.0%(2園)で. 長」「体重」「内科検診」については100.0%(102. あったが,保健室がないまたは兼用している34園. 園)行われており,「歯科検診」99.0%(101園),. では20.6%(7園)と有意に多かった(p<0.05)。. 「視力検査」「寄生虫卵検査」ともに96.1%(98園). 項目に挙げた以外の困難点としては,「独立した. と実施率は高かった。未配置園では「身長」「体重」. 部屋でないため,子どもをゆっくりと休養させて. はともに95.9%(117園),「内科検診」95.1%(116. あげることができない(精神面でのフォローが困. 園),「歯科検診」92.6%(113園)と実施率が9. 難)」「常に一定の場所にいるわけではないので,. 割以上であった。しかし,「聴力検査」は23.8%(29. 必要としている園児や他の教諭が探し回る」など. 園)と低く,「保健調査」「耳鼻科検診」「眼科検診」. があった。. 「視力検査」は実施率が50%以下であった。. 養護教諭未配置園では「緊急性の判断が難しい」 表5 幼稚園で行われている健康診断. 44.3%(54園)が最も多く,「園児の表現力が不. %(園). 十分なため,状況や程度の把握に困る」37.7%(46 園),「手当ての方法や対応に不安がある」35.2%. 全体 n=224. (43園),「重症度の判断が難しい」30.3%(37園), 「処置あるいは休養の場所がない」9.0%(11園),. 身長. 「救急体制・設備が整っていない」5.7%(7園). 体重. が挙げられていた。保健室の設置状況との関係を みたが有意差はなかった。項目に挙げたもの以外. 内科検診 歯科検診. の困難点としては,「病院まで遠い」「職員数が足 りない」などがあった。. 養護教諭に幼稚園教諭の応急処置関与について. 座高. 尿検査. る」35.3%(36園),「園児の表現力が不十分であ. 視力検査. 24.5%(25園),「重症度の判断があいまいである」 22.5%(23園),「処置をする際,園児への声かけ. 配置園. n=102. 検定. 219 102 117 * (97.8) (100.0) (95.9) 219 102 117 * (97.8) (100.0) (95.9) 218 102 116 * (97.3) (100.0) (95.1) 101 113 * 214 (95.5) (99.0) (92.6) 183 96 87 *** (81.7) (94.1) (71.3) 162 98. 寄生虫卵検査 64 *** (72.3) (96.1) (52.5). 調査したところ,「手当の方法や対応に不安があ. るため,状況や程度の把握があいまいである」. 養護教諭配置状況. 保健調査 眼科健診. が適切ではない」7.8%(8園)などが挙げられ. 耳鼻科健診. ていた。. 聴力検査 その他. 156 (69.6) 148 (66.1) 140 (62.5) 132 (58.9) 127. 95 61 *** (93.1) (50.0) 98 50 *** (96.1) (41.0) 97 43 *** (95.1) (35.2) 84 48 *** (82.4) (39.3) 80. 47 *** (56.7) (78.4) (38.5). 103 74 29 *** (46.0) (72.5) (23.8) 15 11 4 *** (6.7) (10.8) (3.3). (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). 86.

(8) 幼稚園における保健活動の実態. すべての検査項目で配置園のほうが有意に多く 行われていた。「座高」「寄生虫卵検査」「尿検査」. 表6 養護教諭が重点をおいている保健活動と 期待されている保健活動 %(園). 「視力検査」「保健調査」「眼科検診」「耳鼻科検診」. 養護教諭配置状況. 全体. 「聴力検査」(共にp<0.001),「身長」「体重」「内. n=224. 配置園. 検定. n=102. 科検診」「歯科検診」(共にp<0.05)。. 36. 57. 各検査項目の1年間の実施回数の平均をみる. 応急処置活動 93. (41.5) (35.3) (46.7). と,「体重」が6.0回と最も多く,次いで「身長」. 園児の健康状 態の把握. 42 69 27 ** (30.8) (41.2) (22.1). 4.0回,「座高」1.7回,「歯科検診」1.1回,「内科. 保健便りの発. 検診」1.0回,「寄生虫卵検査」「尿検査」が共に0.9. 回,「視力検査」0.8回,「保健調査」0.7回,「耳 鼻科検診」0.6回,「眼科検診」0.6回,「聴力検査」 0.5回であった。 2)困難点. 健康診断を行う上で何らかの困難を感じている 園は59.8%(134園)であった。養護教諭配置状 況別にみると,配置園で困難を感じている園は. 69. 行・掲示物の 作成. う項目は「時間の確保が困難」が23.9%(32園) と最も多く,次いで「測定器具の不備」20.1%(27 園),「場所の確保が困難」17.9%(24園),「人手. 不足などにより,他教諭の協力が得られない」 14.9%(20園),「園児がじっとしていられないた め,検査に時間がかかる」13.4%(18園),「測定. 方法を園児に理解してもらうのが難しい」9.7% (13園),「園医の依頼が難しい」6.0%(8園). 43. 34 保護者との関 40 6 (17.9) (33.3) (4.9) わり 他教諭との・ 36 29 7 連携組織作り (16.1) (28.4) (5.7) 個別的な健康 34 15 19 問題への対応 (15.2) (14.7) (15.6) ・指導 集団的な健康 28 16 12 問題への対応 (12.5) (15.7) (9.8) ・指導. *** ***. 園の環境衛生. 27 22 ** (12.1) (4.9) (18.0). 健康診断. 17 (7.6) (10.8) (4.9). 5. 80.4%(82園)に対し,未配置園では42.6%(52 園)と有意に少なかった(p<0.001)。困難に思. 26. (30.8) (25.5) (35.2). 園内の安全 16. 12 (7.1) (11.8) (3.3). 養護教諭によ. 13. 5. る健康相談 (5.8) (4.9) (6.6). 6. 4 * 8. 他教諭が行う. 保健指導への 支援 12 円 (5.4) (1.0) (9.0) 伝染病の予防. 11. 3. ・対策 (4.9) (2.9) (6.) 専門医による その他 5 0 * (2.) (4.9) (0.) 健康相談の企 画・運営 7 2 5. 田 ** 8. (3.1) (2.0) (4.1). (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). などであった。配置園と未配置園において有意差 はなかった。. 握」22.1%(27園)などであった。. 養護教諭が重点を置いている保健活動と養護教 7.養護教諭が重点を置いている保健活動と養護. 諭に期待されている保健活動をみると,養護教諭. 教諭に期待する保健活動(表6). が有意に多く重点を置いている保健活動は,「保. 養護教諭が重点を置いている保健活動を3つ選. 護者との関わり」「他教諭との連携・組織作り」(共. んでもらったところ,「園児の健康状態の把握」. にp<0.001),「園児の健康状態の把握」(p<. 41.2%(42園)が最も多く,次いで「応急処置活. 0.01),「園内の安全」(p<0.05)であった。幼. 動」35.3%(36園),「保護者との関わり」33.3%. 稚園教諭が養護教諭に有意に多く期待している保. (34園)などであった。. 未配置園で養護教諭に期待する保健活動を3つ 選んでもらったところ,「応急処置活動」46.7%(57. 健活動は「園の環境衛生」「他教諭が行う保健指 導への支援」(p<0.01)であった。. 保健活動を行っていく上での困難点を養護教諭. 園)が最も多く,次いで「保健便りの発行・掲示. に調査したところ,「職員数が少ないため,保健. 物の作成」35.2%(43園),「園児の健康状態の把. 活動に専念できない」が58.8%(60園)と最も多. 87.

(9) 芝木美沙子・仲田さくら・長谷川幸恵・南向 素子・笹嶋 由美. く,次いで「幼稚園養護教諭の独自の研修がない」. また,園児の健康維持のために配慮しているこ. 42.2%(43園),「保護者との関わり」14.7%(15. とについて自由記述で調査したところ,「手洗い,. 園),「養護教諭に対する他教諭の理解がない」. うがいの励行」36園が最も多く,「生活習慣の指導」. 12.7%(13園),「他園の養護教諭との関わり」9.8%. 23園,「保護者を巻き込んだ保健指導」19園,「歯. (10園)などであった。. 磨き指導」15園,「外遊びの励行」14園,「食育指. 導」9園,「薄着の励行」9園などが挙げられて 8.養護教諭の必要性. いた。. 幼稚園に養護教諭が必要だと感じている園は,. 全体で84.8%(190園)であり,必要ではないと 感じている園は8.9%(20園)であった。養護教 諭配置状況別にみると,養護教諭が必要だと感じ ている園は,配置園では91.2%(93園),未配置. Ⅳ 考 察 1.保健室について. 保健室は幼稚園設置基準で,幼稚園に備え付け. 園では79.5%(97園)で,配置園の方が必要だと. なければならない施設として挙げられているが,. 感じているものが有意に多かった(p<0.05)。. 今回の調査では保健室や保健コーナーを設置して. 養護教諭未配置園に養護教諭が配置されている. いる園は87.9%であったが,独立した一つの部屋. ことを知っているか聞いたところ,知っている. として保健室が設置されていたのは41.5%であ. 77.0%(94園),知らない15.6%(19園)であった。. り,養護教諭を配置している園の方が多かった。. 養護教諭が配匿されていることを知っているもの. このことから保健管理担当職員としての養護教諭. では,養護教諭が必要としたのは84.0%(79園),. がいることにより保健室を組織的に管理運営でき. 知らないものでは68.4%(13園)であったが,有. るものと考えられる。. 意差はなかった。. 養護教諭の必要性と保健室の利用人数をみる. 保健室を職員室などの一部と兼用している園で は,「衛生面」「保健室の位置」「園児のプライバ. と,養護教諭が必要であると答えた園の平均利用. シー」「スペース」に対して不満を挙げており,. 人数は24.5名,養護教諭が必要ではないと答えた. 独立している保健室の方が休息や応急処置の場と. 園の平均利用人数は11.8名であり,養護教諭が必. しての機能が充実していた。. 要であると答えた園の方が有意に保健室の利用人 数が多かった(p<0.05)。. 一週間の保健室の利用人数の平均は23.2名で あったが,配置園の方が保健室の利用人数が多く, 保健管理担当職員の養護教諭がいることにより,. 9.園児の健康問題と健康維持について. 園児の気になる健康問題について自由記述で調. 園児の種々の訴えにも対応することができるため と考えられる。. 査したところ,最も多かったのは,夜型の生活や. 幼稚園の保健室は園児にとって保健管理をはじ. 睡眠時間の減少など「生活リズムの乱れ」37園で. めて体験する場であり,園児の健康管理を適切に. あった。次いで,少食やお弁当のインスタント化. 行うためには欠くことのできない施設である。そ. など「食生活の乱れ」30園,「アレルギー性疾患. のため,独立した保健室が設置されることが望ま. を持つ園児の増加」21園,「基本的生活習慣が身. れ,また保健管理担当職員としての養護教諭が保. についていない」12園,「体力の低下」10園,「危. 健室を管理運営することが望まれる。. 機回避能力の低下」8園,「肥満」5園などが多 く挙げられていた。その他「視力の低下」「便秘」 「伝染病について」「多様な対応を必要とする園 児の増加」なども挙げられていた。. 88. 2.保健指導について 南3)は,幼児期は発達段階的に基本的生活習慣 を身に付ける時期でもあり,園生活全般にわたっ.

(10) 幼稚園における保健活動の実態. て常に保健教育が行われており,また行わなけれ. 万が一,緊急事態が起きてしまった場合に,ど. ばならない時期であると述べている。今回の調査. のような状況においても最善の処置ができるよう. でも,実施した保健指導の内容として「うがい・. に体制を充分に整備しておくことが重要5)と考え. 手洗い指導」94.6%,「歯磨き指導」88.4%,「ト. られる。今回の調査では救急体制を決めている園. イレの使い方」79.9%など生活習慣の形成を目指. は92.4%であったが,全ての幼稚園で救急体制を. した内容が多く挙げられていた。. 早急に整備する必要がある。そのためには全職員. 幼児の場合,同じ内容を繰り返し指導すること. の救急体制整備に対する共通理解を図り,個々の. で効果をあげられるので,計画的に実施すること. 幼稚園にあった体制作りを進めていくことが望ま. が望まれる。また,保健指導は,幼稚園にとどま. れる。また,日頃から緊急事態に備え,保護者の. らず,小学校,中学校でも継続して指導されるこ. 緊急連絡先を把握しておくことも必要である。. とが重要であることから,一貫した保健指導の充 実が望まれる。. 保健指導を行う上での困難点を自由記述で調査. 養護教諭が挙げた応急処置の困難点として,「園. 児の表現が不十分であるため,状況や程度の把握 に困る」「一人一人に対して充分な時間がとれな. したところ,「幼児の理解力に差があるため,指. い」などがあった。園児の発達段階をふまえた対. 導内容に悩む」が多く挙げられていた。養護教諭. 応のあり方について学ぶ必要がある。. 配置状況別にみると,配置園では「時間の確保が 難しい」「幼児向けの保健教材・資料がない」な. 幼稚園教諭が挙げた応急処置の困難点として, 「緊急性の判断が難しい」「手当ての方法や対応. どが挙げられており,未配匿園では「養護教諭が. に不安がある」などがあった。また,養護教諭に. いないため専門性に欠ける」「家庭との連携がう. 対して幼稚園教諭の応急処置関与に対する不安を. まくはかれない」が挙げられていた。幼稚園にお. 挙げてもらったところ,「手当ての方法や対応に. ける保健指導は,個人差の大きい園児の特性を考. 不安がある」「園児の表現力が不十分であるため,. え,発達段階にあった指導が求められる。今後,. 状況や程度の把握があいまいである」などがあげ. 保育の中で必要に応じて保健指導を行うととも. られた。専門的な知識や技術を持つ養護教諭の配. に,情報交換の場を広げていくことが必要である. 置が望まれるが,突発的な疾病や障害に対する応. と考えられる。また,幼児向けの教材や資料の充. 急処置は不可欠であり,たとえ,幼稚園に養護教. 実が望まれる。幼児に保健指導を積み重ねていく. 諭が配置されていたとしても,応急処置を養護教. ことは,基本的な生活習慣を身につけることや,. 諭のみで行い得るものではなく,すべての幼稚園. 自分のからだに関心をもち,自分を大切に思う心. 教諭が応急処置の知識や技能を身に付けて対応で. を育てていくのに重要である4)。そのため,保健. きることが必要である。講習会や研修会などで幼. 指導は園全体で取り組み,また家庭との連携を密. 稚園における全教職員が応急処置の正しい知識と適. にすることが望まれる。. 切な方法を身に付けることが必要と考えられる6)。. 3.応急処置について. 4.健康診断について. 幼児期は心身の発達が未熟なため,けがが多く,. 学校保健法では,幼稚園も「毎学年定期に健康. その応急手当が日常の健康管理上大切である。今. 診断を行わなければならない,そして結果に基づ. 回の調査では,一週間に幼稚園でみられた内科的. き,疾病に予防処置,治療指示などの措置をとら. 症状として「発熱」「腹痛」「頭痛」「嘔吐」「気分. なければならない」と定められている。また,幼. が悪い」といった症状が多く挙げられていた。け. 稚園における健康診断は,園児の健康管理のため. がとしては「すり傷」「うちみ・打撲」「頭を打つ」. の中核的な行事であるだけでなく,園における教. 「鼻血」「切り傷」が多く挙げられていた。. 育のためにも極めて重要な業務とされている7)。. 89.

(11) 芝木美沙子・仲田さくら・長谷川幸恵・南向 素子・笹嶋 由美. 今回の調査では「身長」「体重」「内科検診」「歯. 対応・指導」「他教諭との連携・組織作り」「応急. 科検診」の実施率が90%以上と高かった。養護教. 処置活動」が多く挙げられており,今回の調査と. 諭配置状況別にみると,今回調査した全ての項目. 同様であった。. で配置園の方が未配置園に比べ実施率が高かっ た。特に,未配置園では「聴力検査」「保健調査」 「耳鼻科検診」「眼科検診」「視力検査」は半分以. 養護教諭が重点を置いている保健活動と,幼稚 園教諭が養護教諭に期待している保健活動を比較 すると,養護教諭は,園児一人ひとりの特性に応. 上の園で実施されていなかった。幼児期は,乳児. じ発達段階をふまえて健康状態を把握するととも. 期・思春期についで発育が著しく,継続的な観察. に,保護者や他教諭との連携を図りながらの保健. が必要である。また,特に体重は栄養・運動・疾. 活動に重点を置いていた。一方,幼稚園教諭は,. 病などの影響を受けやすく,幼児においても栄養. 園全体の環境衛生や自分たちが行う保健指導に関. 過多による肥満の増加傾向がみられるため注意す. して養護教諭の積極的な関与を期待していた。こ. る必要がある。したがって,計画的かつ継続的に. れらのことから,今後,保健活動を組織化して養. 健康診断を行い,疾病の早期発見に努めることや,. 護教諭と他教諭が互いに保健活動に対する共通理. 保健指導につなげていくことが望まれる。. 解をもつことが求められる。. 健康診断の困難点をみると,時間の制約や検診. 幼児期は,生活のほとんどを保護者に依存して. 場所の不適切などのために必ずしも適切な診断が. おり,保護者のこころのありようや生活スタイル. 行われないことも重要な問題8)とされているよう. が子どもにも強く影響するため2),他校種に比べ,. に,今回の調査でも健康診断の困難点として「時. 保護者との連携が重要だといわれている。また,. 間の確保が困難」「測定器具の不備」「場所の確保. 園児は発達途上で理解力が低く,個人差も大きく,. が困難」などが多く挙げられていた。健康診断を. 言葉だけでは理解できないこともあるので,園児. 行う上で必要な測定器具や教室などの環境が整え. の発達の過程を見通し,園児の興味・関心に即し. られておらず,また幼稚園教諭の間で,健康診断. た働きかけが求められる。また,養護教諭が保健. に対する共通意識が低いといったことが考えられ. 活動を行う上での困難点として,「保健活動に専. る。. 念できない」ことが挙げられていたが,幼稚園の. 健康診断の結果から,一人ひとりの健康状態と. 養護教諭は,保育に参加したり,園の行事にも関. 疾病・異常の有無を把握することが大切であり,. わっているためと考えられる。しかし,他校種に. 単に法令で定められている健康診断のみならず,. 比べ,園児と接する時間が多いため,園児の生活. 日常の保健管理の一環として,発育状態や健康状. に直結し,その場に応じた指導や応急処置などの. 態の評価のために組織的な健康診断が実施される. 対応ができるという面もある。幼稚園の保健活動. ことが望まれる。. では,園児の特性や成長段階を理解した柔軟な対 応が求められる。. 5.保健活動について. 幼稚園の養護教諭は,保健室や保健コーナーで の活動だけではなく,園のあらゆる場で園児との. 6.養護教諭の必要性について 幼稚園設置基準第6条において,養護教諭は「置. 関わりを持ち,園児の実態や発達をふまえ,学級. くように努めなければならない」とされているが,. 担任や保護者と連携しながら,園全体の環境把握. 配置率は国立・公立・私立合わせて2.5%(平成14. のための活動をしている。平成11年の調査9)では. 年学校基本調査)と低く,幼稚園における養護教. 養護教諭が重点を置いている保健活動として「園. 諭の認識は定着していない現状がある。. 児の健康状態の把握」「保健便りの発行・掲示物 作成」「保護者との関わり」「個別的な健康問題の. 90. 今回の調査で,幼稚園に養護教諭が必要である と感じている園は84.8%であり,配置園の方が未.

(12) 幼稚園における保健活動の実態. 配置園に比べ養護教諭が必要であると感じてい. など,幼児をとりまく環境の変化が影響している. た。これは,未配置園の中には,幼稚園に養護教. と考えられる。今後,幼稚園では複雑多様化した. 諭が配置されていることを知らなかったり,知っ. 園児の健康問題と成長発達の支援および保護者の. ていても幼稚園の養護教諭の活動の実態が把握さ. 子育て支援が求められており,養護教諭の配置が. れずにいることも関係していると推測される。養. 望まれる。. 護教諭に期待する保健活動から見ても,養護教諭. 幼児期は,身体機能の発達が未熟なため,病気. の役割に対する期待感は高いと思われ,専門的な. に対する抵抗力が弱く,一度病気にかかると急速. 知識や技能をもつ養護教諭が幼稚園に配置される. に進行する傾向がある。また,危険に対する注意. ことで,幼稚園教諭が抱える不安や困難が解消さ. 力や判断力が乏しく,自ら病気やけがを予防する. れることが望まれる。. ことが難しいと思われる。園児の実態から,幼稚. 幼稚園という初めての集団生活を経験し,教師. 園教育要領の領域「健康」の観点である「健康な. や同年齢,異年齢の友達とかかわる中で,ストレ. 心と体を育て,自ら健康で安全な生活を作り出す. スを感じ,体の不調を訴える園児も少なくないと. 力を養う」をふまえ,幼児期の発達にふさわしい. いわれている2)。幼稚園の養護教諭は言語による. 生活を営むことが出来るような環境構成が必要で. 訴えが不十分な幼児に対して,保育というかかわ. ある2)。. りの中から,園児一人ひとりの健康状態を把握す ることができるため,行動,態度などから異常を. 今回の調査では,園児の健康維持の配慮として 「手洗い・うがいの励行」「生活習慣の指導」「保. 早期に発見することが可能である10)。園児の保. 護者を巻き込んだ保健指導」「歯磨き指導」など. 健に関する諸問題にひとつひとつ対応しながら保. が挙げられていた。これらの配慮は,前述した園. 健活動を組織的かつ効果的に行い,園児の健康を. 児の気になる健康問題と関連があると考えられ. 維持,増進していくことが求められており,専門. る。このような健康維持のための活動は,初めて. 的な知識や技能をもつ養護教諭の配置について,. の集団生活を過ごす場である幼稚園でこそ,系統. より一層の充実が図られることが望まれる。. 的に実施でき,また効果が充分に発揮されるもの と考えられる。健康維持のためには,季節や園児. 7.幼児の健康について. 幼児期は身体的な発達の基礎がつくられはじ. の発達段階などに注意し,健康観の押しつけでは なく,園児自身が考え,判断するその経験を積み. め,運動機能が急速に発達する時期であるが,多. 重ねていけるように働きかけをしていくことが大. くの心身の健康問題の根源が芽生える時期でもあ. 切である2)。そして,個の育ちを考慮しながら,. るといわれている。近年,生活習慣病の低年齢化. 園児自身の健康観を獲得していくプロセスを大切. がいわれおり,園児においても小学生と変わらな. にするとともに,園児が自分の健康を守り,高め. い健康問題が観察されるようになった。幼児の健. ていく意欲をもつことでより豊かな健康観を持つ. 康問題は,単に子ども自身の身体的なものだけで. ことが望まれる。. はなく,家庭での生活状況や幼稚園での活動状況. などからも把握していかなければならない11)。 今回の調査では,園児の気になる健康問題とし て「生活リズムの乱れ」「食生活の乱れ」「アレル. Ⅴ 結 語 全国の国立幼稚園,大阪府,北海道の公立およ. ギー性疾患をもつ園児の増加」「基本的生活習慣. び私立幼稚園で,養護教諭が配置されている幼稚. が身についていない」「体力の低下」などが挙げ. 園102園と大阪府,北海道で養護教諭が配置され. られていた。これらは,近年の核家族化や少子・. ていない幼稚園122園を対象とし,幼稚園におけ. 高齢化,情報化などといった家庭生活や地域環境. る保健活動について調査を行ったところ,次のよ. 91.

(13) 芝木美沙子・仲田さくら・長谷川幸恵・南向 素子・笹嶋 由美. うな結果を得た。 (1)保健室や保健コーナーがある幼稚園は87.9%. (8)養護教諭が挙げた応急処置の困難点をみる. であり,独立した一つの部屋として保健室が設. と,「園児の表現力が不充分なため,状況や程. 置されている園は41.5%,他の部屋と兼用して. 度の把握に困る」「一人一人に対して充分な時. いる園は45.5%であった。配置園の方が保健室. 間がとれない」などがあり,発達段階をふまえ. や保健コーナーが有意に多く設置されており,. た対応のあり方について学ぶ必要がある。. 独立した保健室が設置されているのも有意に多. (9)幼稚園教諭が挙げた応急処置の困難点をみる. かった。これらのことから保健管理担当職員と. と「緊急性の判断が難しい」「手当ての方法や. しての養護教諭がいることにより保健室を組織. 対応に不安がある」などがあり,応急処置の知. 的に管理運営できると考えられる。. 識や技能を身に付けることが望まれる。. (2)保健室が独立している園の方が兼用している. ㈹ 実施している健康診断は,「身長」「体重」「内. 園に比べ有意に多く「衛生的である」「適切な. 科検診」「歯科検診」の実施率は90%以上と高. 場所にある」「園児のプライバシーが守られて. かったが,「聴力検査」の実施率は検査項目の. いる」「十分なスペースがある」と答えていた。. 中で最も低く,46.0%であった。. (3)保健室の一週間の利用人数の平均は23.2名で. 仕方 今回調査した全ての健康診断の項目におい. あり,配置園の方が有意に保健室を利用する園. て,未配置園は実施率が低く,「聴力検査」「保. 児の人数は多かった。保健管理担当職員の養護. 健調査」「耳鼻科検診」「眼科検診」「視力検査」. 教諭がいることにより,園児の種々の訴えにも. は半分以上の園で実施されていなかった。. 対応することができるためと考えられる。 (4)今年度行った,または予定している保健指導. ㈹ 健康診断の困難点としては,「時間の確保が 困難」「測定器具の不備」「場所の確保が困難」. は「うがい・手洗い指導」が94.6%と最も多く,. などが多く挙げられていた。測定器具や教室な. 次いで「歯磨き指導」88.4%,「風邪予防」85.3%,. どの環境を整え,また幼稚園教諭の間で健康診. 「虫歯予防」83.0%などであった。 (5)一週間でみられた内科的症状では「発熱」 68.8%,「腹痛」59.4%が多かった。配置園の 方が有意に多くみられた症状は「腹痛」「頭痛」 「気分が悪い」「発疹」であり,未配置園の方 が有意に多くみられた症状はなかった。 (6)一週間でみられたけがでは「すり傷」88.4%, 「うちみ・打撲」67.4%,「頭を打つ」52.7%. が多かった。配置園の方が有意に多くみられた. 断に対する共通意識を高めていくことが望まれ る。. ㈹ 養護教諭が重点を置いている保健活動は「園 児の健康状態の把握」が最も多く,次いで「応 急処置活動」「保護者との関わり」などであり,. 未配置園で養護教諭に期待する保健活動では 「応急処置活動」が最も多く,次いで「保健便 りの発行・掲示物の作成」「園児の健康状態の 把握」などであった。. 症状は「うちみ・打撲」「頭を打つ」「鼻血」「切. ㈹ 幼稚園に養護教諭が必要であると感じている. り傷」「目の異物」「虫さされ」「かみつき」「刺. 園は84.8%であり,配置園の方が有意に多く養. し傷」「くつずれ」「すり傷」「とげ」「ねんざ」. 護教諭が必要であると感じていた。. であり,未配置園の方が有意に多くみられたけ がはなかった。 (7)救急体制を決めている園は92.4%であり,養. 護教諭配置状況別で有意差はなかった。日頃か. 92. とが望まれる。. ㈹ 園児の気になる健康問題として「生活リズム の乱れ」「食生活の乱れ」「アレルギー性疾患を もつ園児が増加している」などが挙げられた。. ㈹ 園児の健康維持のために配慮していることと. ら全職員の救急体制整備の共通理解を図り,. して「手洗い・うがいの励行」「生活習慣の指導」. 個々の幼稚園にあった体制作りを進めていくこ. などが挙げられた。季節や園児の発達段階など.

(14) 幼稚園における保健活動の実態. に注意し,健康維持について,園児自身が考え, 判断していけるように働きかけをしていくこと が大切である。. :86−93,2003. 4)熊谷恭子:養護教諭の保育へのかかわりを考える, 教育における臨床の学,2:46−53,2001 5)向井田紀子,小林正子,田中哲郎:学校事故に対す る救急体制の現状に関する研究,学校保健研究,42(2). 以上のことから,幼稚園における保健活動は園 児にとって健康維持や,基本的な生活習慣を身に つける上で重要である。また,園児の健康問題は. 単に子ども自身の身体的なものだけではなく,家 庭での生活状況や幼稚園での活動状況などからも 把握していかなければならない。したがって,幼. 稚園の保健活動には複雑多様化した園児の健康問 題と成長発達の支援および保護者の子育て支援が 求められる。 保健活動を養護教諭配置状況別にみていくと, 配置園の方が園児の健康・安全管理の体制が整っ ており,園児の生活に直結して,その場に応じた. 指導や応急処置などが行われており,健康診断の 実施率も高くなっている。しかし,幼稚園の養護. 教諭の配置率は低く,研修や交流の不足のため困. :105−116,2000 6)芝木美沙子,太田真理,金子久美:北海道の幼稚園 における保健活動の実態調査(第2報)一応急処置に ついて−,小児保健研究,47(6):677−682,1988 7)船川幡夫,網野武博,飯田澄美子ほか:幼稚園にお ける健康診断の実施にあたっての提言,小児保健研究, 48(3):397−399,1989 8)江口篤寿:健康診断一現行規定の中で,健康診断を. 効果的に進めるために−,学校保健研究,22(3): 117−121,1980. 9)後藤ひとみ,天野敦子,三木とみ子:幼稚園におけ. る養護教諭の活動に関する調査一国立・公立の実態か ら,学校保健研究,42(Suppl):528529,2000 10)津村直子,池田哲子:幼稚園における養護教諭の活 動,北海道教育大学紀要,39:229−240,1988 11)野口多恵子,瀬谷美子,飯田澄美子:幼稚園児をも つ母親への健康相談について,小児保健研究,39(5/6) :214−,1980. 難や不安を抱えているといった問題もある。養護 教諭がいることで,幼稚園教諭が抱える不安や困 難が解消され,保健活動が計画的・組織的に行う ことができると考えられるため,今後,専門的な. 知識と技能をもつ養護教諭が多くの幼稚園に配置 され,幼稚園における保健活動のより一層の充実 が図られることが望まれる。. (芝木美沙子 旭川校准教授) (仲田さくら 旭川校大学生) (長谷川幸恵 旭川校大学生). (南向 素子 北海道教育大学附属 旭川幼稚園養護教諭). (笹嶋 由美 旭川校教授). ノ稿を終えるにあたり、本調査に快くご協力賜り. ました幼稚園の養護教諭と教員の皆様に深く感謝 いたします。. Ⅵ 文 献 1)芝木美沙子,黒田彩子,五十嵐千秋:北海道の幼稚 園における保健活動の実態調査(第1報)一億康診断 について−,小児保健研究,47(1):36−42,1988 2)日本教育大学協会養護教諭部門全国国立大学附属学 校連盟養護教諭部会幼稚園グループ:幼児のこころと からだをみつめて一義護教諭の実践活動を通して−, 2004. 3)南美智子:幼稚園における保健教育,研究集録,38. 93.

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参照

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