いじめの意識調査による教育心理学的取 り組み
Ⅰ.中学生の場合
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い じめ,意識調査,教育心理学的取 り組み,い じめ予防要
約
い じめの問題は,その被害を受けた人にとって深刻 な問題であると同時に,加害者を生み 出す現代の家庭,学校,礼 会の問題でもある。今回,中学生を対象に,い じめ られた経験,い じめた経験,い じめを見た経験,お よびい じめにつ いての考え方で構成 した質問紙を作成 して,い じめの意識調査を実施 した。その結果をまとめて報告す ることが第1の 目的である。 さらに,学校現場へ結果をフ ィー ドバ ックして全教員で検討す る試みを実施 した。 また,幼児教育科の学 生教育の教材 としても活用 した。 こうした教育心理学的取 り組みが,い じめを予防す る対策の一環として機能す る可能 性を兄いだす ことも検討 した。1
.は
じ め に
平成6年 に愛知県の中学生がい じめを苦に して自殺 し た ことは,その手記が遺言の形で公表 されて,社会的問 題 と して大 き く取 り上げ られた。 このように,い じめの 問題は,その被害を受けた人の心身に傷 を負わせ,死に 至 ることもある深刻 な問題である。心の傷のケアに臨床 心理学的支援が期待され,この対策の一環として,スクー ルカウンセラー制度 も創設 され るなど,教育界の改革に 関心が集 まっている。 しか し,い じめ問題の背景には, 加害者を生み出す現代の家庭 ・学校 ・社会の問題が存在 す る。臨床心理学的観点の他,教育心理学的観点か らも い じめ防止の対策が検討 されている。 真仁 田 (1998)は,平成 8年の文部省報告 「い じめの 問題 に関す る総合的な取 り組みについて」をうけて,い じめにかかわ る教育的課題について,予防と防止,介入 と分離,支援 と指導の三側面か ら対応す ることが必要で あると述べている。 高野 (1986)によれば,い じめ問題が社会的関心を呼 ぶ以前の 「校内暴力」の全盛期 に,教育心理学者や臨床 心理学者は,すでにい じめの問題が次の社会問題になる ことを予測 していたという。 校 内暴力もい じめも同 じ根 を持つ ものであるが,学校や教師に対す る暴力現象であ る校内暴力の方は,警察力などで制圧す ることはむ しろ 簡単であるか ら,次に問題化す るのはい じめになること が分か っていたというのである。 さらに,い じめの定義 がかなりあいまいなことも,適切 な対応ができないこと に通 じていると している。そこで,い じめを 「圧倒的に 強い立場にある老 (あるいは集団)が,反撃の余地を持 たない弱い立場 にある老 (あるいは集団)に対 して, こ とばや態度や比較的軽度の身体的攻撃によって,主に心 理的な苦痛 を与える行為」 と定義 した。 この定義では, 意地悪 な行為や,法に触れ る行為を除いたものと して, 教育心理学的にとらえる必要性 を提案 している。5
4
平 松 芳 樹 本報告では,中学生にい じ吟の実態調査を実施 したの でその内容について報告す る。 また,実施 した学校現場 へその結果をフィー ドバ ック して,研修の機会を持 った。 さらに,短期大学の学生がアンケー ト作成 と結果の処理 などを通 して,い じめ問題 に関わ った。 このような教育 心理学的取 り組みが,い じめ予防対策 と して機能す る可 能性を兄いだす ことを 目的 と している。2.
方
(1) 質問紙による意識調査 中学生 を対象 に した, い じめ に関す る意識調査用紙 「い じめに関す るア ンケー ト」を作成 した。調査項 目の 選定 にあた っては,高野 (1986),詫摩 (1995)などの 文献を参考に した。アンケー トの作成 と集計には,短期 大学幼児教育科2年生の中で, い じめ問題 の調査に関心 の高い学生の協力があ った。 (2) 実施時期 2001年11月 (3) 調査の回答協力者 岡山県内のM中学校の1年生か ら3年生 まで全校生徒 286人(4)
統計的分析SPSS 10.OJforWindowsによ り行 なった。
3.
結
果
アンケー トの集計結果は以下の通 りである。問1か ら 間24まである。問 1で性別 を尋ねた。問 2は,回答者が い じめの被害者になった経験の有無を問い,有 りの場合 は問3か ら9までの枝問でその体験 について回答を求め た。問10で 自分が加害者 となった ことの有無を問い,有 りの場合は問11か ら16までの枝問でその体験について回 答を求めた。問17でい じめの現場を 目撃 した経験の有無 を問い,有 りの場合は問18か ら20までの枝問で自分の取 っ た行動や感 じ方について回答を求めた。問21か ら最後の 問24までは,回答者全員のい じめ問題の認識について質 問 した。特に最後の質問では,い じめがなくなると思うか どうかを回答 した上で,それぞれの理由を自由記述で求め た。数字はすべて人数で,複数回答は加算 して集計 した。 【い じめに関す るア ンケー トの集計結果】 問1 人数 と性別 [286(男137,女149)] 問 2 い じめ られた ことは (全員対象) [ある63, ない223] 「ある」 と答えた人は問3-問9に回答 問3 それはいっか [小学校35,中学校21,両方 6,無回答 1] 問4 い じめは個人か らか複数か らか [個人18,複数43,無回答2]
問5
誰かに相談 したか (複数回答可) [親17,友達11,先生18,誰にも しない25,その他 2, 無回答 1]
問6 どんない じめをされたか (複数回答可) [無視26,言葉でのいやが らせ40,暴力8,持 ち物隠 し5, ものを買わ され る1,お金 を貸 してと言われて取 られ る 1, した くないことをさせ られ る12,その他 5, 無回答3
]
問7 自殺を考えたことは [ある22, ない41]問8
い じめのきっかけ (複数回答可) [服装0,持 ち物3,顔やスタイル8,部活3,家 の こと 1,男 (女)だか ら0,不明40,その他12,無回答 1]
問 9 い じめは続 いているか [はい 5, ない56,無回答 2] 間10 い じめた ことはあるか (全員対象) [ある93, ない193] 「ある」 と答えた人は問11-16に回答 問11 何人でい じめたか [1人 9,複数84] 問12 なぜい じめたか (複数回答可) [むかついた40,きらい27,何 となく19,その他17] 問13 どんない じめを したか (複数回答可) [無視54,言葉でのいやが らせ41,暴力14,持 ち物 を 隠す 6, ものを買わせ る4,お金 を貸 してと言 って取 る 3, した くないことをさせ る9,その他1]
問14 い じめを している時の気持 ちは (複数回答可) [ス カ ッと した11,楽 しい 9,おも しろい 7,かわ い そう12,やめたい10,何 も感 じない47,その他 5]問15 い じめ られている人の気持 ちを考えた ことは [ある
3
2
,少 しある4
2
, ない1
7
,無回答2]
問1
6
今 もい じめをす ることは [ある0
,時にある1
7
, ない7
5
,無回答1]
問1
7
い じめを見たことは (全員対象) [ある1
7
0
, ない1
1
6]
「ある」 と答えた人は問1
8
-2
0
に回答 問1
8
い じめを見て何か したか (複数回答可) [気の毒 と思 ったが何 も しなか った1
1
0
,止めた1
0
,抗 議 した4
,その場か ら離れた2
5
,加わ った7
,誰かに知 らせた2
0
,その他4
,無回答2]
問1
9
どんない じめを見たか (複数回答可) [無視6
0
,言葉でのいやが らせ8
7
,暴力5
0
,持 ち物隠 し1
7
, ものを買わせ る4
,お金貸 してと言 って返 さない 7, した くないことをさせ られ る1
8
,その他4]
問2
0
そのい じめを見て感 じた こと (複数回答可) [かわいそ う9
0
,止めさせたい3
1
,おも しろい 7,巻 き込 まれ るのはいや3
2
, しかたない3
2
,その他0
,無回 答2
]
問2
1
い じめは今 もあるか (全員対象) [ある1
6
8
, ない1
1
1
,無回答7]
問2
2
い じめを どう思うか (全員対象,複数回答可) [悪いこと2
0
1
,いっで もどこでもあること6
1
,関係 な い1
5
,その他6
,無回答1
0]
問2
3
い じめは どちらに問題があるか (全員対象) [い じめる人7
3
,い じめ られ る人2
4
,両方1
8
0
,無回答 9]
問2
4
い じめはなくなると思うか (全員対象) [なくなると思う7
5
, な くなると思わ ない1
9
3
,無回答1
8
]
[なくなると思 う理 由 (自由記述の主 なもの)
]
みんなが仲 良 くすれば良いと思 う (多数)。みん なが なくそうと思えばなくなる (多数)。何 となく (多数)。 みんながい じめ られ る人の気持 ちになればなくなる。止 めればなくなる。 最近い じめについていろいろな人が対 策を考えているか ら。嫌いな人がいてもが まんすればよ い。みんなで話 し合 う。 人をい じめ る権利はない か ら。 い じめる人 ・い じめ られ る人 どちらも傷つ くと思うか ら。 みんなが協力すればいっかな くなる。 [なくなると思わ ない理 由 (自由記述の主 なもの)
]
い じめは悪いこと じゃないと思 っている人が多い。悪 いことを していると分か っていない。みん な自分がい じ め られ ないためにい じめをす る。 身分の差がある限 りど こでも。人間が集団で生活 してい く中で必然的に起 こり うるものだ と思 う。 い じめは簡単 に解決で きることでは ない。気の弱い人がいる限 りい じめは終わ らない。 口で 言 って止め る人 なんか最近いない。どんなに抗議 しても 言 うことをきか ない人はきかない。今の人間は人の気持 ちを考え られ ない人が多い。今の子どもは頭が悪い。 自 分のス トレスが発散で きる。今の ままの世 の中だと一生 なくならない。嫌 いな人は嫌いだから。むかつ くことは がまんできない。い じめる人たちの意識の問題。 なくな るならとっくにな くなっている。 みんな仲 良 くす ること は不可能。学校 とか人 とつ き合 っていく中でなくならな い。みんな先生 とかにばれ ないようにしている。い じめ られ てる人も他の人に言えない。 いじめようという気持 ちを持 っている人が多い。人は 自分より弱い者がいない と安心できない。4.
考
察
(1) ア ンケー ト調査にみ られ る,いじめに対す る中学 生の意識は,次のようにまとめ られる。 (丑 い じめ られた経験の有無 今回調査 した中学生で,い じめ られた経験があると答 えたのは6
3
人で,調査者総数の2
2
%
にあた る。 このうち 男子は4
1
%
,女子は5
9
%
であ り,性差の有意差はなか っ た。 また,小学生の頃の体験者は4
1
人で6
5
%
にあた る。 中学生 になっての体験者は2
7
人で4
3
%
であ る (両方 と答 えた6人はそれぞれ に含めた)。 高野 らの小学生の場合 では,い じめ られた経験を持つ子 どもの割合は,小学校3
年生男子7
8.
1
%
,女子8
3.
3
%
,小学校4
年生男子8
3.
9
%,女子8
0.
0
%
,小学校5
年生男子7
1.
1
%
,女子8
1.
3
%
であ り,かなり高い比率で存在す る。この調査 と今回の 中学生の調査 とは,方法 も違 うため,このまま比較はで きないが,小学生の頃か らい じめ られた経験 を持っ子 ど もが多いことに気づ く。 い じめ られたのは,個人か ら(
3
0
%)
よ りも複数 によ る(
7
0
%)
ものが多い。誰 にも相談しなか ったと答えた 者が2
5
人(
4
0
%)
もいることが注 目され る。 い じめの種56 平 松 芳 樹 頬では,言葉でのいやが らせ (40人)と無視 (26人)が 多か ったが, きっかけは不明 (40人)が最 も多か った。 自殺を考えた ことがある者が22人 (35%)いることは, い じめの深刻 さを表 している。 ② い じめた経験の有無 自分がい じめた ことがある者は,93人 (33%)いて, い じめが身近 なことと して存在す る状況を示 している。 い じめの多 くは単独でなく複数 (90%)で,無視 と言葉 でのいやが らせ という心理的手段がほとん どであるが, 暴力も14件ある。い じめ られ る人の気持を考えたことは ある (少 しあるを含め)が80%もあるにもかかわ らず, い じめを して,かわいそう,やめたいというのは22人に す ぎない。スカ ッとす る,楽 しい,おも しろいと感 じた 者が27人いて,何 も感 じないと回答 した者が47人いるこ とは問題である。 しか し,今はい じめをす ることはない と答えた者が75人 (81%)というのが救いである。い じ めた経験 とい じめる人 ・い じめ られ る人の どち らに問題 があると思 うかの質問への回答 との間で クロス集計す る と,有意差があ った (x2-19.410,p<.01)。い じめ た経験のない者は,い じめ る側 に問題がある (34%)と 考えるが,い じめた経験のある者は,い じめる側 に問題 があるとの回答が少な く (11%),い じめ られ る側 また は両方に問題がある (89%)と考えている。 ③ い じめを見た経験の有無 い じめを見た ことがないとの回答が40%に対 し,60% がい じめを見たと答えている。い じめの内容は,無視, 言葉でのいやが らせ,暴力が主 なものである。い じめを 見て,かわいそう,止めさせたい (63%)と思 っても, 多 くの場合,何 もせず,その場を離れ る (75%)だけで あ り,止めに入 った り,抗議す ることはご くわずか
(
8
%)である。 なお,い じめを見たことがあるという答え と性別の間に有意差があ った (x2-7.597,p<.01)。 す なわ ち,女子生徒の方がい じめを見た ことがあるとす る答えが多い。女子の方がい じめを意識 しやす い傾向が あるといえるのではないか と考え られ る。 い じめた経験の有無とい じめを見た ことの有無 との間 に,有意差があ った (x2-34.118, p<.01)。す なわ ち,い じめた経験のある中学生は,い じめを見た ことが あると答えることが多い。い じめを見たという生徒は, 自分 との関わ りを意識 しているので敏感 な傾向があ り, い じめを見た ことがないという生徒は,い じめた経験が なくい じめに気づ きに くい傾 向があると考え られ る。 ④ い じめについての考え方 自分の周 りで今 もい じめがあると考えている中学生が 60%はあ り,ほとん どの中学生 (71%)は,い じめを悪 いことだと考えている。 しか し,い じめの問題の所在を, い じめる側 にあるとす るのは26%であ り,い じめ られ る 側および両方 という答えは合わせて74%あ り,い じめ ら れ る方にも問題があると考えている中学生が多い。 クロ ス集計では,性別の間に差が見 られた (x2-6.552,p <.05)。す なわち,い じめ られ る側に問題があると答え た者 と,両方に問題があると答えた者を合わせ ると,男 子は77%で,女子の71%より多か った。 い じめる人 ・い じめ られ る人の どち らに問題があるか という質問と,い じめについて どう思 うか という質問と のクロスで有意差が見 られた (x2-15.698,p<.01)。 す なわち,い じめ る人に問題があると考える者は,ほと ん ど (88%)が,い じめは悪 いことだと答え,いっでも どこでもあることだと答える者はごく少数 (8%)であ る。両方に問題があると考える者は,悪いことだ (70%) と しなが らも,いっでもどこでもあることだ (25%)が 多 くなる。い じめ られ る人に問題があると考える者は, 悪 い ことだ (50%)が, いっで もどこで もあ ることだ (42%)とほぼ同 じ程度 となっている。 ⑤ い じめはなくなるか 今後い じめがなくなると思 うか という質問に,67%も の中学生はなくならないだろうと考えている。その理 由 を自由記述で求めた結果は,前述の通 りである。 なくな ると思う者は,26%と少 ないが,その理 由のなかに,人 権意識や相手の気持を考えることなど建設的な意見があ ることは頼 も しく感 じられ る。 しか し, な くなると思わ ない理 由が,人間不信的で悲観的な意見が多いことが気 になるところである。 (2) 実施 した中学校へのフ ィー ドバ ック 今回のアンケー ト結果は,実施に際 して協力 してもらっ た中学校の責任管理者にフ ィー ドバ ック した。中学校で は,そのデータをもとに筆者 も加わ って全教員で研修 を 持ち,調査結果に現れたい じめの問題の実態をふまえて, 今後の対策を検討 した。い じめ られて自殺 を考えた こと がある中学生の数が多いことにお どろき,スクールカウンセラーと協力 して相談 しやすい環境整備をす る必要性 が改めて感 じられた。 さらに,い じめ問題 を根本的に考 え,い じめ る側の生徒への対応 と,い じめのない学校 に す るために教師は どのようなことに努め るべ きかも話 し 合われた。質問に答えることで,中学生 自身がい じめ問 題を問い直す機会になればよいという期待をもって実施 したが,あ らか じめ,い じめの定義を明確に していなか っ た ことや結果を基に話 し合うところまではできなか った ので,効果を数量的に測定す るところまでは至 っていな い 。 高野 (1986)のまとめによると,い じめの定義がは っ きりしないため,い じめと意地悪の区別がっか なか った り,対応についても意見が分かれ ることになると してい る。 い じめは,相手が分か っていて,強者 と弱者がは っ きりしていることと,暴力犯罪 など法に触れ るものは除 外すべ きと している。 したが って,単にい じめに負けな い強い意志を持っようにとか,周 りが監視 してい じめ ら れ ないよう防止対策をす るとか,学校 内での教育的指導 の問題 と した り,警察力など外部の協力が欠かせ ないな どの様 々な意見が分かれ ることになるのである。 さらに, い じめ られて心理的 ダメージを受けている子 どもに対 し ては,臨床心理学的アプローチが効果的であるが,い じ める立場の子 どもに同 じ手法だけでは,本質的解決には なりに くいと している。む しろ教育の問題 と して取 り上 げる必要を強調 している。 この立場は筆者 も同感であ り,い じめは,学校教育は もちろん,家庭教育,社会教育の問題であることを認識 す る必要がある。い じめについての基本的 な考え方 と対 処の仕方を,各個人がきちんと捉え,子 どもたちもお と なたちも共 に自分 自身のことと して考え,お互いの人権 を尊重す る生 き方を貫けるようにす る人間教育が大切で あることを痛感す るものである。
(3)
大学生の教育効果 今回,短期大学幼児教育科の学生がアンケー トの作成・ 集計に参加 し,教科 「総合演習」の研究発表資料 として 活用 した。す なわ ち,2
学年の全学生を対象 に研究発表 形式で,い じめ問題について討論を した。幼児教育科 の 学生たちの多 くは,卒業後,保育園や幼稚園に就職 して, 毎 日子 どもたちと接触する役割を担うのである。 したが っ て,い じめ問題には幼児の段階か ら対応できる立場 にあ ると考え られ る。 また,本人たちはやがて結婚 して次の 世代を育成す る年齢にも近いのであり,人生初期か らの い じめの予防教育の重要性を考え る機会 になった と考え られ る。 さらに,最近 なぜい じめの問題が大き く取 り上げ られ るようになったのか,そ して我が国に特有の現象 なのか を考察す る機会 ともなった。 最近 のい じめ 問題 が 多発す る要因 の背 景 を, 河 合 (1999)は次のように分析 している。我が国は第二次大 戦後,急速に先進国の仲間入 りを果たすため,全体の平 均点を上げ る教育方針をとり,便利で匪適 な生活を享受 できる成果を上げることに成功 した。 しか し,その半面 , 親や教師は子 どもの価値を,一面的な知識の量や学校の 成績で測 るようになるのである。その結果,子 どもたち への圧力が強 くなりす ぎるため,いじめや不登校の問題 を生むのである。 松尾(
2
0
0
2
)
は,い じめ防止のプログラム開発の研究 の必要性を取 り上げている。 海外での基礎研究の進歩 と 防止 プログラムが多様 な角度か ら検討されいることを紹 介 しなが ら,我が国では系統的なプログラム研究は立ち 後れている現状を指摘 している。 各個人が,い じめ と無縁であるように成長できること が理想であるが,い じめ発生のメカニズムを知 って,幼 児期を含めた集団現場で心理教育的視点か ら対応できる 人材養成を充実 させ ることも,大切である。5.
お わ
り に
今回の調査は,中学生に協力を求めて実施 したもので あ り,アンケー ト調査の項 目を,い じめ られた経験,い じめた経験,い じめを見た経験,およびい じめについて の考え方で構成 した。特定の中学校1校 の実施にす ぎな いが,い じめの実態 について現状の一端が判明 したとい える。協力者である中学生には,このア ンケー トに回答 す ることを通 して,い じめの被害者の気特を考える機会 になるのではないか,そ して,人権意識 を高めて欲 しい という願いを込めたもので もあ った。 また,実施 に協力 してもらった教師にフ ィー ドバ ックして,現状認識 と対 策を考える資料 となることを期待 した。 さらに,短期大 学の学生にとっても,調査研究の方法を知 り,結果をま58 平 松 芳 樹 とめ なが ら,い じめ問題 の現状 と予防的醜わ りの重要性 についても学ぶ機会 とな った と考え られ る。 今後は, さ らに調査協 力者の対象 を広げて年代別の相 違点 などを明 らかに したいと考えている。 最後 になりま したが, ア ンケー トに協力を して頂 いた 皆様 に深 く感謝申 し上げ ます。