Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
歯科外来治療期間中の使用を想定した「お食事セット」
利用者の主観的評価
Author(s)
三浦, 慶奈; 大久保, 真衣; 上田, 貴之; 杉戸, 博記;
大野, 啓介; 勢島, 典; 森岡, 俊行; 内山, 沙姫; 吉田,
光孝; 矢島, 安朝
Journal
歯科学報, 120(2): 111-118
URL
http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.111
Right
Description
緒
言
食べることは,生命を維持するために基本的かつ
不可欠である
1)。単なる栄養補給だけでなく「楽し
み」としても存在し,Qulity of Life(以下 QOL)に
関係する因子の一つでもある。また歯も栄養に大き
く影響し,咬合不全および咀嚼不全はコレステロー
ルの増加や食物繊維の減少を引き起こすとされてい
る
2)。歯科治療は口腔の疾病を直したり,装置を入
れたりすることで,食べることをより良くする
3)。
このため治療後の QOL や ADL を比較した研究は
数多く認められる
4−7)。しかし,実際の歯科治療中
もしくは治療直後の痛みや腫れなどにより,食事摂
取が一時的に困難になる場合がある。たとえば,外
科処置などを伴う歯科治療,新しい義歯の装着直
後,矯正治療直後の歯の移動に伴う痛みなどで物理
的に咀嚼が困難となり,一時的に食形態の変更が必
要になる可能性がある。
実際に臨床の現場において,治療後数日間は治療
前に摂取していた食形態が摂取困難となり,飲料の
みの食生活を送っていたということもある。しかし
その後すぐに回復し,通常の食事が摂取できるた
め,このような事は見過ごされてきた。オランダの
先行研究では,高齢の外来患者の約20%で栄養失調
が認められ,その半数以上がリスクにさらされてい
るとしている
8)。数日間とはいえ,特にこのような
栄養失調のリスクがある高齢者においては,治療に
伴う侵襲により QOL が低下するという事実は,
我々が対応すべきであると考える。そこで我々は,
そのような状態の発生が予想される外来患者に対し
解
説
歯科外来治療期間中の使用を想定した「お食事セット」利用者の主観的評価
三浦慶奈
1)大久保真衣
1)上田貴之
2)杉戸博記
3,4)大野啓介
5)勢島 典
6)森岡俊行
7)内山沙姫
8)吉田光孝
9)矢島安朝
9) 1)東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室,
2)東京歯科大学老年歯科補綴学講座
3)東京歯科大学保存修復学講座,
4)東京歯科大学短期大学歯科衛生学科
5)東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座,
6)東京歯科大学歯周病学講座
7)東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座,
8)東京歯科大学水道橋病院
9)東京歯科大学口腔インプラント学講座
抄録:歯科治療後は一時的に咀嚼が困難となり,食形態の変更や栄養不足を招く可能性がある。これま でに我々が考案したお食事セットの効果を調査するため,対象となる歯科治療後の患者にアンケートを 行った。 期間は2016年6月から2017年9月までとし,患者はお食事セット利用後に VAS 形式のアンケートに 回答した。項目は不快感の軽減,満足度,味,利便性,再度利用,量とした。全体評価および満足度に 関係する項目の検討と,非高齢者群と高齢者群の違いを検討した。 アンケート総数は41件で,概ね肯定的であった。満足度とその他の項目はすべて正の相関性が認めら れた。非高齢者群と高齢者群では,不快感の軽減および味,量で有意差が認められた。 高齢者群では不快感軽減と美味しさに影響を与えたものの,利便性に対しては両者で高く評価してお り,満足度にもつながると考えた。歯科治療直後の栄養指導としてお食事セットは効果的であり,患者 の QOL 向上に役に立つと示唆された。 キーワード:摂食,食品,術後,調査 (2020年1月27日受付,2020年3月24日受理) http : //doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.111 連絡先:〒101‐0061 東京都千代田区神田三崎町2−9−18 東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下 リハビリテーション研究室 三浦慶奈 111 ― 9 ―て,市販の軟食や栄養補助食品,栄養補助飲料など
を組み合わせた規格化された食事メニュー(以下,
お食事セット)を考案し,これを使用した指導を
行ってきた
9)。今回明らかな摂食機能障害がおこる
口腔外科的小手術を除いた一般歯科治療後にこのお
食事セットを提供し,患者の主観的評価によるアン
ケート調査を行った。我々はこのアンケート調査か
らお食事セットの効果と治療後の食事の問題点を把
握することを目的に,満足度に関係するアンケート
項目の検討と,非高齢者群と高齢者群での違いを検
討した。
方
法
1.対象
東京歯科大学水道橋病院で研究同意を得た患者と
した。口腔内条件は,歯の欠損がある場合にはプロ
ビジョナルレストレーションや義歯を装着した状態
において,アイヒナー分類が A または B1で,大
臼歯部咬合が保たれている状態とした。該当術式例
は,抜歯後即時義歯装着,臼歯部の歯周外科治療,
フルアーチの矯正治療もしくは本格矯正治療,臼歯
部への口腔インプラント埋入手術である。対象から
除外した者は,摂食嚥下障害のある者,食品アレル
ギーのある者,全身疾患により食事制限がある者,
食事に介助が必要な者とした。対象診療科は,補綴
科,保存科,口腔外科,口腔インプラント科,矯正
歯科とした。更に対象者は,厚生労働省が示す日本
人の食事摂取基準(2015年版)
10)のライフステージに
よる年齢区分をもとに,70歳未満で非高齢者群,70
歳以上で高齢者群と定義し,群分けを行った。
2.お食事セット
お食事セットは市販の軟食,ゼリー,飲料などを
組み合わせたものとした。主に使用した食品は,主
食米飯を主とする軟らかい食品(やわらか亭)
200
g,高栄養ゼリー(エンジョイカップゼリー)
70g,
濃厚流動食品(エンジョイクリミール)
125ml,水分
補給ゼリー(ポチプラス飲むゼリー)
100g,(クリニ
コ,東京,日本)である。これらの食品を1日3食
組み合わせ4日分のセットを作ることで,1人あた
りのお食事セットとした(図1)。お食事セットの1
日の平均栄養含有量については,高齢者は栄養不足
のリスクが高い
8)という点と,今回は女性の対象者
が多いという点から,本研究において高齢者と定義
した70歳以上の日本人女性の食事摂取基準量(2015
年版)
10)を参考に比較した(表1)。
3.調査方法
対象となる歯科治療を予定している患者に対して
説明を行い,治療後に東京歯科大学水道橋病院で考
案したお食事セットを利用してもらい,アンケート
に回答させた。期間は2016年6月から2017年9月ま
図1 お食事セットの参考例 下記のものを組み合わせた1日3食の参考例を示す。 a.米飯を主とする軟らかい食品(やわらか亭)200g b.高栄養ゼリー(エンジョイカップゼリー)70g c.濃厚流動食品(エンジョイクリミール)125ml d.水分補給ゼリー(ポチプラス飲みゼリー)100g (すべて,クリニコ,東京,日本) 112 三浦:歯科治療後のお食事セット ― 10 ―でとした。
アンケート項目は不快感の軽減,満足度,味,利
便性,再度利用,量とした。アンケート形式は
Vis-ual Analogue Scale(以下,VAS)を利用し,肯定的
であるほど10,否定的であるほど0とした。また量
については少ないと思うほど0,多いと思うほど10
とし,適量を5とした。このアンケートの結果か
ら,お食事セットの満足度について調べるため,年
齢およびその他のアンケート項目(味,完食,利便
性,不快感の軽減,再度利用)との相関性について
検討を行った。さらに,非高齢者群と高齢者群の結
果を比較することで,年齢によるお食事セットの評
価の違いを検討した。
本研究は,東京歯科大学倫理審査委員会の審査,
承認を得て行われた(承認番号675)。
4.統計学的分析
満 足 度 と 年 齢,各 ア ン ケ ー ト 項 目 の 関 係 に は
spearman の相関分析を用いた。非高齢者群と高齢
者群の比較には Mann-Whitney U 検定を用いた。
すべての統計処理には SPSS,version 23
(SPSS
sta-tistic version 23 for windows,IBM Corp.,NY,
USA)を使用した。有意水準は p<0.
05および p<
0.
01とした。
結
果
1.全体評価
アンケート総数は41件 で,男 性12名,女 性29名
(平均年齢52.
0±20.
5歳)であった(表2)。対象診療
科別では多い順に,口腔インプラント科17件(平均
49.
0±11.
6歳),補 綴 科15件(平 均63.
5±17.
9歳),
矯 正 科6件(平 均21.
0±6.
8歳),保 存 科3件(平 均
表1 お食事セットおよび日本人の食事摂取基準量の比較 お食事セット*1 日本人の食事摂取基準量 (70歳以上の女性) エネルギー (kcal) 1397.5 1750 たんぱく質 (g) 47.1 50 脂質 (g) 29.8 39−58 炭水化物 (%) 73 50−65 食塩相当量 (g) 54 7.0以下 カリウム (mg) 1227.5 2000 カルシウム (mg) 1137.0 650 マグネシウム (mg) 264.0 270 リン (mg) 864.5 800 鉄 (mg) 30.0 6.0 亜鉛 (mg) 36.3 7 銅 (mg) 1.3 0.7 食物繊維 (g) 22.2 17 ビタミンA (μg) 1015.0 650 ビタミンD (μg) 7.6 5.5 ビタミンE (mg) 17.9 6.0 ビタミンB1 (mg) 2.6 0.9 ビタミンB2 (mg) 3.1 1.1 ナイアシン (mg) 36.5 10 ビタミンB6 (mg) 3.7 1.2 ビタミンB12 (mg) 7.2 2.4 葉酸 (mg) 630.0 240 ビタミンC (mg) 656.0 100 *13食4日分の摂取内容の平均 お食事セットの1日平均栄養含有量と70歳以上の日本人女性の食事摂取基準(2015年版)の 栄養量について比較したものを示す。 歯科学報 Vol.120,No.2(2020) 113 ― 11 ―73.
7±7.
8歳)であった。全体の VAS の平均は,不
快感の軽減8.
04±1.
93,満足度6.
75±2.
20,味6.
22
±2.
23,利便性8.
91±1.
50,再度利用6.
14±2.
76で
あった。量については,4.
20±1.
64と概ね適量で
あった(表3)。
2.満足度における年齢とその他のアンケート項
目との関係性
満足度と年齢は低い逆相関を認めた(|r|=−
0.
35,p=0.
03)。満足度とその他の項目ではすべ
て正の相関性を認めた(味:|r|=0.
70 p≦0.
00,
完食:|r|=0.
60 p≦0.
00,利便性:|r|=0.
56
p≦0.
00,不快感の軽減:|r|=0.
48,p=0.
00,
再度利用:|r|=0.
79,p≦0.
00)
(表4)。
3.非高齢者群と高齢者群
非高齢者群は34名(46.
1±17.
1歳),高齢者群は7
名(80.
9±5.
6歳)で あ っ た(表2)。VAS の 各 平 均
は,不快感の軽減が非高齢者群で8.
45±1.
39,高齢
者群で6.
07±2.
92,味が非高齢者群で6.
49±2.
32,
高齢者群で4.
91±0.
98となり,この2項目で有意差
を認めた(不快感の軽減 p=0.
02,味 p=0.
04)。
また量については,VAS の各平均は非高齢者群で
4.
01±1.
72,高齢者群で5.
17±0.
62となり,非高齢
表2 全体および非高齢者群,高齢者群の年齢と人数 全体 非高齢群 高齢者群 n 41 34 7 年齢(mean+SD) 52.0±20.5 46.1±17.1 80.9±5.6 男女比(男:女) 12:29 11:23 1:6 診療科別(n) 補綴科 15 10 5 保存科 3 1 2 矯正科 6 6 0 インプラント科 17 17 0 表3 全体および非高齢者群,高齢者群における各アンケート項目の VAS の結果 アンケート項目 全体 VAS(SD) 非高齢者群 VAS(SD) 高齢者群 VAS(SD) p value 不快感の軽減 0:軽減しない 10:軽減した 8.04(±1.93) 8.45(±1.39) 6.07(±2.92) 0.02* 満足度 0:満足しない 10:満足した 6.75(±2.20) 6.89(±2.27) 6.10(±1.90) 0.27 味 0:美味しくない 10:美味しい 6.22(±2.23) 6.49(±2.32) 4.91(±0.98) 0.04* 利便性 0:利便性がなかった 10:利便性があった 8.91(±1.50) 8.93(±1.62) 8.79(±0.84) 0.25 再度利用 0:再度利用したくない 10:再度利用したい 6.14(±2.76) 6.21(±2.90) 5.83(±2.14) 0.60 量 0:少ない 10:多い 4.20(±1.64) 4.01(±1.72) 5.17(±0.62) 0.04* 不快感の軽減と味,量の3項目で2群間に有意差が認められた(p<0.05)。 (*p<0.05) 表4 満足度における年齢とその他のアンケート項目の相関性 年齢 味 完食 利便性 不快感の軽減 再度利用 満足度 |r| −0.35** 0.70** 0.60** 0.56** 0.48** 0.79** p 0.03 <0.01 <0.01 <0.01 0.00 <0.01 (**p<0.01) 年齢が低い者ほどお食事セットに対する満足度が高かった。その他の項目はすべて,満足度と正の相関関係が認められ た(p<0.01)。 114 三浦:歯科治療後のお食事セット ― 12 ―者群はやや少なく感じ,高齢者群はほぼ適量と評価
していた。この項目においても有意差を認めた(p
=0.
04)
(表3)。
考
察
口腔の痛みや構音障害,咀嚼障害などによる口腔
の状態は,QOL に大きく影響していると言われて
いる
11)。また口腔内が健康であると食事や精神状態
の安定,笑顔などに影響があるとされている
12)。
よって,口腔内の状態と QOL の関係は密接であ
り,口腔内の状態が良くないと食事に影響すると考
える。更に高齢になると食欲の低下が認められ
13),
栄養状態の低下も認めるといわれている
14)。栄養失
調の高齢者は筋肉たんぱく質の合成が減少するため
サルコペニアのリスクが高くなる
15)。しかし,たん
ぱく質が豊富な肉や魚は十分な咀嚼を必要とするた
め,口腔内に疼痛がある場合は十分なたんぱく質の
摂取が困難となる。よって,たんぱく質の減少によ
りさらなる栄養不良が予測される。
今まで歯科治療の有無による患者の満足度
16)や
QOL の比較
17)をした報告はある。しかし,歯科治
療中もしくは治療直後の患者の QOL について検討
した報告はない。治療直後では QOL を低下させる
要因として,咬合状態の変化や,炎症による疼痛お
よび浮腫などが挙げられる。このため噛む事ができ
ず,一時的に食形態の変更が必要になる可能性があ
る。そこで我々は,歯科治療直後の食事と QOL に
注目し,規格化されたお食事セットを考案した。明
らかな摂食機能障害がおこる口腔外科的小手術を除
いた一般歯科診療直後に,患者がこのような食事の
提供により不快や負担軽減といった効果を感じた
か,満足度との関係から検討を行い,さらに年齢に
よるお食事セットの評価の差を検討した。これらに
より,歯科治療直後の食事に対する問題の把握と,
QOL の向上について検討した。
1.全体評価
全体の VAS の結果から,満足度,味,再度利用
は6以上あり,不快感の軽減と利便性は8以上で
あったため,お食事セットの提供については有効で
あったと考えた。患者にとって咀嚼困難な時,軟ら
かい食品は噛む回数が少なくてよく,液体状の飲料
は噛む必要がないため,不快感軽減につながったと
考える。創傷の治癒にはたんぱく質やビタミン類,
鉄・亜鉛が必要である
18)。また食物繊維は今日の若
年日本人に不足しがちという報告もある
19)。口腔内
の疼痛があるとたんぱく質の多い,肉,魚などは咀
嚼が必要となるため摂取困難になる。しかし,治療
の侵襲により咀嚼困難なときであっても栄養素の豊
富な食事を摂取するのは有益であると考える。また
利便性に関しては,患者が疼痛や浮腫により外出や
調理が困難な場合,このようなお食事セットを簡単
に利用できるとその必要性がなくなるため評価が高
かったと考える。個々の嗜好が影響する項目であっ
たが,全体の結果は概ね肯定的であり,更なる調査
の有用性が示唆された。
2.満足度における年齢とその他のアンケート項
目との関係性
お食事セットの提供による満足度が,年齢やその
他のアンケート項目に相互に与える影響を知るた
め,探索的に検討を行った。小城らの報告
20)では,
満足度に関係するのは硬さや食べにくさ,飲み込み
にくさではなく,味や見た目といった利用者の嗜好
も関与すると言われている。このため,本研究では
美味しいと感じることが満足度に影響し,満足度と
味に相関性が認められたと考える。また美味しさに
関しては,香りや外観,テクスチャーによる影響が
あると言われている
21)。さらに視覚情報が味覚に影
響するという報告
8)もあるため,今後は対象者の特
性や嗜好を考える必要があると考える。今回は視覚
や嗅覚に関する質問項目を設けなかったが,既製品
であるレトルトパウチ食品やパック包装されている
食品は馴染みや抵抗等も影響すると考える。満足度
と年齢に弱い逆相関性を認めたのも,このような視
覚情報の影響もあると推察される。
満足度と再度利用については,今回の提供で満足
度が高かった場合,再び歯科治療直後に不具合が生
じた際には再度利用しようと考えるため,このよう
な相関性が認められたと推察される。
3.非高齢者群と高齢者群
非高齢者群と高齢者群で比較したところ,不快感
の軽減と味に有意差が認められた。満足度と年齢の
歯科学報 Vol.120,No.2(2020) 115 ― 13 ―関係と同様に,高齢者にとって既製品のようにみえ
る食事は馴染みがないため,美味しいと感じにく
く,不快感の軽減につながらなかったと考える。ま
た高齢者は食への関心が低下する傾向があり
22),味
や嗅覚が変化する可能性がある
22)ため,さらに美味
しさを感じにくく,食事を楽しむのが困難になる可
能性がある。Reijierse ら
23)は,食欲低下と体重減少
の関連性を報告し,筋肉量がサルコペニアの診断に
最も有力であることを実証した。よって,今後この
ような高齢者群のためにも提供方法の検討も必要が
あると考える。
本法のように規格化された食品を提供する方法
は,数日間の対応としては費用対効果の高い方法で
あると思われる。しかし対象者の特性や嗜好によっ
ては,このような既製品ではなく,ケータリング式
や栄養指導,調理方法といった異なる方法の検討も
必要である。本研究では,非高齢者群と高齢者群で
利便性に有意差は示さず,両者において高い評価を
受けた。その理由としてはやはり,年齢に関係な
く,治療後の侵襲によって食事の準備が困難な場合
に,簡単に摂取できるためと考えらえる。要介護者
への配食サービスのアンケートで,民間の配食サー
ビスに対しては利用者が利便性を高く評価している
という報告がある
24)。よって,治療後の高齢者にお
いては特に,今回のようなお食事セットの提供に限
らず,利便性も考慮した栄養指導が重要であると考
える。
本研究の limitation としては,a)お食事セット
が1種類であったこと,b)男女で人数の差があり
参加者が少人数であったこと,c)アンケート項目
が大まかなものであり,美味しく感じた要因や不快
感が具体的にどの程度軽減したかなどの詳細につい
ては検討を行っていないことが挙げられる。しか
し,本法のような取り組みの報告はこれまでなく,
本研究結果が今後一般歯科診療を受診する外来患者
に対して,栄養指導の臨床や研究の参考になると
我々は信じている。今日の一般歯科医院で栄養士に
よる栄養指導を行っている例をあまりみないが,特
に高齢者にとっては栄養に関するアドバイスを提供
する必要がある。それは人々に必要な栄養素だけで
なく,それをどのように摂取すべきかについてまで
述べなければならない。今後このような治療直後に
おける栄養指導は高齢者の QOL の向上や栄養不良
を防止するためには必要である。治療直後は食べら
れないのは当然であるというような考えから脱却す
る必要があり,今後栄養指導は歯科診療において必
要不可欠なものになると考える。
結
論
歯科治療直後のお食事セットの効果を知るために
外来患者にアンケートを行った。効果としては,不
快感の軽減や利便性を認めた。また不快感軽減や美
味しさに関しては非高齢者群と高齢者群で違いが認
められた。お食事セットのような既製品の提供は,
すでに食への関心が低下している高齢者にとっては
不快感の軽減や美味しさにつながらない可能性があ
る。しかし,利便性に関しては両者で高く評価され
ており,特に栄養不良になりやすい高齢者には一般
歯科医院においても歯科治療直後の栄養指導とし
て,栄養素のみならず食べやすい食事のアドバイス
も行う必要性がある。本研究から,栄養と食べやす
さを考慮して市販の食品を組み合わせた規格化され
た食事メニューを提供することは,歯科治療後の患
者の QOL 向上に必要であると示唆された。今後
は,高齢者の食欲との関連についてさらなる調査を
行っていく必要があると考える。
本論文の要旨は,第305回東京歯科大学学会(2018年6 月2日,東京)において発表した。利益相反
本研究に関連し,開示すべき COI 関係にある企業・団 体などは,下記のとおりです。 株式会社クリニコから物品寄与として食品サンプルが あります。顧問,講演料,受託研究,共同研究費,奨学 寄与金はありません。 文 献1)Report of the Joint WHO/FAO Expert Consultation, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases, WHO Technical Report Series 916. Geneva, WHO Li-brary Cataloguing-in-Publication Data. 2003.[ac-cessed 2018−5−10]
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門職による住民主体,行政,民間による配食サービ スおよび訪問介護による食事提供の評価,厚生の指 標,63:14−22,2016.
本論文は,下記論文の内容を解説した。
Mai Ohkubo, Takayuki Ueda, Keina Miura, Hiroki Sugito, Keisuke Ono, Fumi Seshima, Toshiyuki Morioka, Saki Uchiyama, Mitsutaka Yoshida, Yasutomo Yajima:“Easy -to-eat Meals”for Outpatients Following Dental Treat-ment. The Bulletin of Tokyo Dental College, 60:225− 232,2019.
Mai Ohkubo, Takayuki Ueda, Keina Miura, Hiroki Sugito, Mikiko Kawaguchi, Keisuke Ono, Fumi Seshima, Toshi-yuki Morioka, Saki Uchiyama, Mitsutaka Yoshida, Yasutomo Yajima:Differences Between Elderly and Non-Elderly Outpatients Subjective Evaluation of the Use of“Easy-to-Eat Meals”During Dental Treatment, The Bulletin of Tokyo Dental College Vol.61(No.3) (in press)
歯科学報 Vol.120,No.2(2020) 117
Outpatients’subjective satisfaction evaluation of
“easy-to-eat meals”after dental treatment
Keina M
IURA1),Mai O
HKUBO1),Takayuki U
EDA2),Hiroki S
UGITO3,4),Keisuke O
NO5)Fumi S
ESHIMA6),Toshiyuki M
ORIOKA7),Saki U
CHIYAMA8),Mitsutaka Y
OSHIDA9)Yasutomo Y
AJIMA9)1)Department of Oral Health and Clinical Science, Division of Dysphagia Rehabilitation, Tokyo Dental College 2)Department of Removable Prosthodontics and Gerodontology, Tokyo Dental College
3)Department of Operative Dentistry, Cariology and Pulp Biology, Tokyo Dental College 4)Department of Dental Hygiene, Tokyo Dental Junior College
5)Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Tokyo Dental College 6)Department of Periodontology, Tokyo Dental College
7)Department of Removable Partial Prosthodontics, Tokyo Dental College 8)Suidobashi Hospital, Tokyo Dental College
9)Department of Oral Implantology, Tokyo Dental College
Key words : Food Intake, Food, Post-Surgical, Survey
118 三浦:歯科治療後のお食事セット