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補助動詞構文の文法化の初期段階の設定について

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Academic year: 2021

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(1)55. 補助動詞構文 の文法化 の初期段階 の設定 について 李. 廷玉. (イ. ジ ョ ンオ ク). About a Cline of Grammaticalization of[te]_form Auxiliary Verb LEE Jung― og Abstract: In this article it is considered that Japanese[te]―. form auxiliary verb stnlcture is in the process of. grammaticalization from a main verb to an auxlliary verb. Based on this consideration this article discusses the morphological and syntactic characters of[te]―. form auxiliary verb structure.. These[te]― form verb stmcture has characters such as impossibility of separation between main verb and auxiliary verb,dependcncy,nucleus donlinancc and grammatical meaning etc. However these characters can― not be scen in all the[te]― form auxiliary verb stmctureo All these characters are not seen in the process of the. grammaticalization and this brings the consideration that this[te]― fom auxiliary verb strllcture is in the process of grammaticalization and that there can be a cline in the process of this grammaticalizationo Apart fron■. that some Japanese dative verbs and Korean PATTA verbs are given as a bases of the argument in this. article。. Centering on these points a cline of the[te]― form au対 liary verb strllcture is discussed in this atticle.. 要 旨 :本 稿 で は、 日本語 の テ形補助 動詞構 文 は、本動詞 か ら補助動詞 へ の 文法化 の 途 中にあ る もの と 看倣 し、その立 場 か ら、テ形補助動詞構 文 の形態 的 ・統語 的特徴 につい て考察す る。. テ形補助動詞構文の形態的・統語的特徴としては、①前項動詞 と補助動詞 との分離不可能性、②依 存性、③前項動詞の格支配、④文法的な意味などが考えられる。この 4つ の諸特徴は、全てのテ形補 助動詞構 文 にみ られ るので は な い 。文法化 の 途 中段 階 で は これ らの諸 特徴 全 てが み られ な い こ とか ら、 テ型補助 動詞構 文 は文法化 の途 中にあ り、文法化 に段 階性 (連 続性 )が 存在す る と考 え られ る。 また、 日本語 の授 受 に 関す る動詞類 の一 部 と韓 国語 の「PATTA」 動詞 の存在 も本稿 の主 張 の裏 づ け の根拠 と して挙 げ られ る。 以上 の よ うな点 を中心 に、 本稿 で はテ形補助動詞構文 の 連続性 につい ての考察 を行 う。. 0。. は じ め に. 補助動詞構 文 を本動 詞 か ら補助 動詞 へ の文法化 の連. 1.テ 形 補 助 動 詞 の ひ と ま と ま り性 影 山 (1993)は. ,テ 形複合動詞 は,「 語」 の 緊密性 D. に問題が あ り,一 つ の語 としては認 め られな い と述 べ. 続線上 にあ る もの とす る立 場 か ら,ま ず テ形補助 動詞 構 文 の 形 態 的 ・統 語 的特徴 につ い て 考 察 す る。 そ の. て い る。 イ形複合動詞 は,副 助詞 の付加 が不可能であ. 後 ,補 助動詞 と しての文 法化 の途 中にあ る と考 え られ. る反面 ,テ 形複 合動詞 の例 は,副 助詞 の付加 が可能で. る 日本語 の授 受 に関 す る動詞類 と韓 国語 の 「PATTA」 動詞 の存在 か ら,文 法化 の初期段 階 の存在 を明 らか に. あ る。 また,名 詞化 にお い て も,イ 形複合動詞 は,名 詞化が 出来 る反面 ,テ 形複合動詞 力は,不 可 能 で あ る。. す る。. しか し,だ か ら とい って ,た だ単 な る二 つ の 動 詞 の.

(2) 甲南女子大学研究紀要 第 46号. 文学 ・文化編 (2010年 3月. ). う とも. 語 の補助動詞構 文 は,統 語 的 に ま とま りを もつ 単位 で. 吾」 の緊密性 には問題 限 らない。テ形補助動詞 は,「 言. あ る とい うこ とであ る。 しか し,先 ほ ど,説 明 した よ. があるが,以 下 のように,ひ とつの まとまり性 を帯 び. うに,日 本語 の補助動詞構文 は,副 助詞 の挿入 がで き. なが ら存在するか らである。. る こと等 か ら,形 態 的 な語 (mOrphologial word)と し. (前 項動詞 +補 助動詞 )の 連続か とい う と,そ. 第 一 ,分 離移 動 の 不 可 能が考 え られ る。副助 詞 「ハ,サ エ,モ 」等以外 の要素 は,前 項動詞 と補助動. ての位 置 は 占め に くい 。 こ うい った特徴 に よって ,日 本語 の補助動詞構 文 に つい ての研究 は意味 の 分類 に とどま り,そ の構 文 上の. 詞 の間に介入で きない。影山での説明の ように,副 助 詞 の介入 は可能であるが,以 下 のように,副 詞類 の介. 特徴 な どの詳細 に まで は及 んで い なか ったのが 現状 で. 入はで きない。. あ る とい え よ う。 影 山 (1993)は ,日 本語学 にお い ての補助動詞 とい. (1)納 豆 を食べ てみた。. われて きた もの は大 部分が統語 的複合動詞 に相 当す る. (1-1)納 豆 を思 い″ つて 食べ てみた. ものの ,完 全 に対応す るわけで はない と し,補 助動詞. (1-2)#納 豆 を食べ て思 い切 ってみた。. を見分 け る基 準 が明瞭 とも言 えない ことか ら,独 立 し た範疇 として補助動詞 なる もの を立て る根拠 はない と. 「 食 べ てみ る」 とい う補 助動 詞構 文 は ,例 (卜 1). しなが ら,い わゆる補助動詞構 文 の (受 身化 )の 実現. の ように,副 詞 「思 い切 って」が補助動詞構 文 の前 で. の され方 の異 な りを説 明 して い るが ,こ れ こそ ,補 助. は修飾可 能 で あ って も,例 (1-2)の よ うに,前 項動. 動詞構 文 の二 面性 と程度性 が存在す るこ とを明 らか に. 詞 と補助動詞 の 間 には介入で きない 。. す る根拠 になる。. 第 二 ,補 助 動 詞構 文 は依 存 度 が 高 い ので ,例 (2-. 補助動詞 とい う範疇成 立の妥 当性 を説 明 で きない と. 1)(2-2)の ように,ひ とつ の ま とま りと して の移動 は可 能 で あ るが ,例 (2-3)の ように,前 項動詞 を分. す る証拠 として挙 げて い る説明が返 って ,逆 接 的 に も. 離 して の移動 は不可能 である。. がか りとな ってい る。. そ うい った 中間的 な存在が存在す る こ とを説明す る手. V2に よつて左 右 され た よ うに ,テ 形 複 合動 詞 も V2に よって 直接 受 身文 に イ形 複 合動 詞 の 受 身性 が. (2). 私 はその本 を読 んでみ た。. 3。. (2-1)読 んでみ た,わ た しはそ の本 を。 (2-2)私 も読 んでみたその本 を。. な った りな らなか つた りす る. (2-3)*私 は読 んでその本 をみた。. る 」「 あ る」 が 自動 詞 で あ るた め 直 接 受 身 に な らな. V2が 自動 詞 の 「 ∼ て い る」「 ∼ て あ る」 は ,「 い い 。 また,V2が 他動詞 の 「て しま う」 は ,以 下 の よ. とい うの は,「 前項動 詞 +補 助動詞」 が あ る程度 緊密. うに受 身化 が生 じない 。. 性 を保 ってい る証拠 で もあ る。 あ る程 度 とい う言 い 方 は明示 的 で はない が ,程 度性 の 問題 が大 き くかか わる. (4). →. 桜 の 本 を切 つて しま った. *桜 の 本 が. 切 って しまわれ た。. ので ,こ うい った表現 に とどまる。 第 三 ,格 支配 は,前 項動詞 に よる。. しか し,同 じく,V2が 他動詞 の 「∼ てお く,∼ て. (3). ダイエ ツ ト中 の 花子 は ,我 慢 で きず ,つ い. み る」 の場 合 は,基 本的 に受 身 を許容す る。. ノゞン を 全部 食べ て しまった。. (3-1)ダ イエ ッ ト中 の 花子 は ,我 慢 で きず ,つ い ノゞン を 全部 食べ た。. (3-2)#ダ イエ ッ ト中 の花子 は,我 慢 で きず ,つ い パ ン を 全部 しま った。. (5). →. 陳列 台 に商 品 を並 べ てお い た. 商 品が. 陳列 台 に並 べ て お か れ た モ ルモ ッ トに新 しい 薬 を試 してみ た →. モ ル モ ッ トに新 しい 薬 が 試 して み られ. た. 「パ ンを」のヲ格 は,前 項動詞 の「食べ る」の要求. 冷蔵庫 の 中 をのぞ い てみ た. する格 であって,補 助動詞 「 しまう」 の要求す る格で. 中が のぞ い て見 られた. はない。. ドア を ノ ック して み た. 以上 の三つのテス トフレームか ら分かるのは,日 本. ク して見 られた. →. →. 冷蔵庫 の. *ド アが ノ ッ.

(3) 廷玉 :補 助動詞構文の文法化の初期段階の設定について. 李. 駐 車場 に車 をい れ てお い た. →. 車 が駐 車. 場 に入 れておかれた. 57. 例 (12)は 「太郎が本 を くれ た」 の省略 の可能性 は 考 え られ るが ,「 太郎 が行 って くれ た」 の 省略 と して. (10)風 呂 を沸 か して お い た. →. *風. 呂が沸 か. しておかれた. は ,考 え られ な い 。 同 じく,「 太郎 が見 た」 も「太 郎 が映画 を見 た」 の省 略 の 可能性 は考 え られ るが ,「 太 郎が試験 問題 を解 い てみた」 の省略 と しては,考 え ら. このように,同 じ,「 テ ミル」「テオク」構文で も ,. 「見 る,置 く」 の原意 と意味的に整合 してい るか どう かによって,受 身化 の可否が決まるのである。受身化. れ な い 。即 ち,補 助動詞構 文 にお い て前項動詞 の省略 はで きな い。前項動詞 あ ってか らの補助動詞構 文 であ るか らであ る。. の様相 の違 い は,ま さに,本 動詞「置 く」「見 る」の 意味が残 っているか否かによるので,「 見る」「置 く」 の原意が残 っている と判断 されるのは,前 項動詞 の 「のぞ く」 と「入れる. (∼. 二∼ ヲ)」 「並べ る. (∼. ヲ)」. 2.2. 補助動詞 だけの「 ソウスル」代用 の不可. 「 ソウスル」 に よる代 用 は ,動 詞 を中心 とす る ま と ま りを置 き換 える もので ある。補助動詞構 文 にお い て は,前 項動詞 の代用 ,例 (13-1),補 助動詞構 文全体. によるものである。 これ らの前項動詞 は「置 き方」「見方」 を表す動詞. の 代 用 ,例 (13-2)は 可 能 で あ るが ,補 助 動 詞 だ け. としての解釈が可能であるか らである。すなわち,補. の 代用 ,例 (13-3)は 不 可 能 で あ る。補 助 動 詞 だ け. 助動詞構文 を考える上では,補 助動詞だけではな く. の代用化 がで きないのは,補 助動詞が文法化 しつつ あ. 前項動詞 をいれた補助動詞構文 として考えるべ きであ. る こ とを物語 ってい る こ とであ り,こ れは補助動詞 の. る。. 依存性 の証拠 で もあ る。. ,. 日本 語 補 助 動 詞 構 文 の 形 態 的 ・ 統 語 的 特 徴. 2。. (13) 彼 は大西 の前 の切 身か ら一 っぺ らをかす め とって食 べ てみた。 (太 郎物語〉. この節 では,補 助動詞構文 の認定 の根拠 として,依. (13-1)彼 は大西 の前 の切 身 か ら一 っぺ らをか す め. 存性 (前 項動詞 の省略不可),補 助動詞だけの代用不 可 と文法的な意味を挙げることにする。すなわち,以. とって食 べ てみた。 彼女 もソウシテみ た。. (13-2)彼 は大西 の前 の切 身 か ら一 っぺ らをかす め. 下の三点が,補 助動詞 と一般動詞 (本 動詞)と を分 け る基 準 になるわけで,補 助動詞た らしめ る根拠 にな. とって食 べ てみた。彼女 もソウシ タ。. (13-3)*彼 は大西 の前 の切 身か ら一 っぺ らをか す め. る。. とっ て 食 べ て み た 。 彼 女 も食 べ て ソ ウ シ. 古 くは橋 本進吉が ,「 補助 的 に用 い られ る」 と し. 夕。. て,補 助用言 を設けた所以 は文節 として一文節 であ り なが ら,「 上の語 と共 に文の成分 となる」 とい うそ の 点にあ った 一中村 (1994)弓. 補助動詞 の代用化が で きないのは,補 助動詞が文法. 一とい う才 旨摘か ら分か. 形式 の性格 を帯 びて い る ことへ の 反証 で もあ る。 代用. るように,一 番大 きな補助動詞の特徴 として考え られ. 化 は,内 容語 で は起 こるが ,機 能語 で はお こ らない 。. るのは,前 項動詞に依存 してい るとい うことである。. 助詞や助動詞 な どには置 き換 え られ ないの が そ の夕1で. 1用. あ る。. 2.1 依存性 (前 項動詞 の省略不可 (11) パ ンを食べ て しまった。 (H-1)パ ンを食べ た。. ). 2.3. 文法 的意味. 補助動詞 を一 般動詞 と区別す る次の理 由 は,そ の文. (11-2)♯ パ ンをしまった。. 法 的意味 にあ る。補助動詞構 文 は二 つ の動詞が つ なが ってい る よ うに見 えるが ,補 助動詞が文法化 の段 階 を. 補助動詞「 しまう」 は,例 (11-2)か らわか る よ うに,単 独 では使 われない。単独で使われた際には. ,. 経 て ,文 法的意味 を帯 びて い る。単独 で使 われ る本動 詞 の意味 とは,違 う意味 を帯 びて い る。. 本動詞 の「シマウ」 の原意 の解釈 しか不可能にな り ,. 補助動詞構文 とは異なる文 を成す。. (14) 「 しか し,母 もiFく が. /Jヽ. さい 時か ら,ず っ と. 独 りで生 きて きた人 間 で す か らね。母 に僕. (12) 太郎が くれた。. か ら別れ ろ とは言 えない で す よ」 〈ひつ じ〉.

(4) 甲南女子大学研究紀要第 46号. 文学 。文化編 (2010年 3月. ). 中 原 因 の 意味 にな りやす い 無 意思動詞 を入 れ て 作 例. 例 (14)は ,(動 作の継続〉 とい う文法的な意味 を 伴 ってお り,こ れは,補 助動詞 「クル」の影響 であ. してみ たが ,こ の 文 は 自然 さに欠ける。実際 の例 をみ. る。. てみて も,原 因,並 列 の例文 は存在 しない 。 また,補 助動詞形 とい うのは,明 示的 な用語 とは言. (15). えない が ,テ 形 と「 イク 0ク ル」が繋 が って存在す る. 昨 日,東 京 か ら親 戚 の お じさんが 来 た。. 場 合 ,例 (17)の よ うに,「 イク ・ クル」が あ る程 度 しか し,例 (15)の よ うに,単 独 で 使 われて い る場. 本動詞性 を持 って い る とは い え,単 独 で 使 われ る本動. 合 は,(動 詞 の継続〉 の 意味 はな く,(空 間 の移動〉 の. 詞 の「 イク・ クル」 とは異 なる こ とを表 して い る。 単. み を表す。. 独 の「 イク・ クル」 は,起 点 を表す 「 カラ」 と共起 で. 以上 ,一 般動詞類 とは異 なる補助動詞 固有 の形態 的. きるが ,本 動 詞性 を帯 び る補 助 動 詞 形 の 例 (17-1). ・構 文的特徴 につい て述 べ た。 日本語 にお い て ,補 助. は ,起 点 を表 す 「 カ ラ」 とは 共起 出来 な い か らで あ. 動詞構文 を設定す る根拠 を示 した こ とになる。. る。. しか し,こ うい つた独 立 した ひ とつ の 範疇 と して の 特徴 を持 ちつつ も,補 助動詞構文 は,文 法 カテ ゴ リー. (17-1)*彼 は 自分 の家か ら学校 に歩 い て きた。. の一 種 と して扱 うの には ,無 理 が あ るの も事 実 で あ る。 なぜ な ら,補 助動詞 は,文 法 的 な意味 を持 って い. 一 方 ,例 (18)は ,「 クル」 の格体制 を守 って お ら. なが ら も,動 詞 と して の 活 用 も保 って い るか らで あ. ず ,意 味 も空 間移動 か ら,時 間移動 ともい えるア スペ. る。. ク ト的 な意味 へ と抽 象化 して い る ことか ら,文 法化 が 進 んで い る とい える。. (16) 今 度一緒 に行 ってみ よう。 (20) また,他 の文法 カテ ゴ リー,た とえば,テ ンスは. ,. 彼 はパ ン屋 でパ ンを買 って きた。. (20-1)*彼 は家 にパ ン屋 で パ ンを買 って きた。. す べ ての文 に現 れ るが ,補 助動詞 はそ うではな い。 ま た ,テ ンス は ,す べ ての用言 に現 れ るが ,補 助 動 詞. 例 (20)は. ,例 (20-1)の. よ うに,「 クル」 の 要求. は,補 助動詞 の種類 に よつて,前 項動詞 の類 を選 ぶ。. す る着点句 との 共起 は不可能 で あ り,場 所 を表す 「パ. 本稿 で は,こ うい った動詞 の特徴 と,文 法形式 と し. ン屋 で 」 は,「 クル」 で は な く,前 項動詞 の「 買 う」. ての特徴 を も併 せ 持 つ 補助動詞 をひ とつ の範疇 と して. に よ り必 要 と され て い る も の で あ る。 この 点 ,例. 設定す るこ とにす る。. (18)と 似 てお り,補 助動詞 化 が進 んで い る よ う に も み えるが ,ク ルの 空 間移動が まった くな くな った とも. 3.初 期 段 階 の 設 定. い えないので ,例 (20)は ,例 (17)と 例 (18)の 中 間的 な段 階 で ,文 法化 の初期段 階 で あ る とい える。 こ. 補助動詞構文 の 設定基準 の ひ とつ であ る動詞 自身が 要求す る格支配 関係 を考 えてみ る。. うい った例 の存在 は,本 動詞 の補助動詞化 へ と連続線 上 にあ ることを示 して くれ る好例 である。 文法化 の 認定 にお い ては,こ うい つた統語 的 な認定. (17) 彼 は学校 に歩 い て きた。 (18) 彼 は近 頃髪 の毛が 薄 くな って きた。. 基準 を考 えるべ きで あ るが ,そ れが絶対 的 な基準 では な く,意 味的 な側面 を視野 にい れ ,初 期段 階 の存在 も 認 め つつ ,連 続 的 な様相 を描 い て い く必要 が あ る と思. 例 (17)は ,「 学校 に」 と共起 して い るため ,補 助 動詞形 とは言 え,本 動詞 と して の性 質 を失 ってい ない レが こ とが分 か る。補 I功 重し 詞形 とは, テ形 とイク ・ クリ. われ る。. 4.初 期 段 階 の 設 定 の 裏 づ け. 繋が ってい る形式で ,こ の場合 ,テ 形 の 意味分類 と し て知 られ る ,付 帯 状 態 ,継 起 ,原 因 ,並 列 の 内 ,原 因,並 列 は現 れ ない 。. 4.1 前項動詞 +「 与 える,よ こす,わ たす」 補助動詞構文 を,本 動詞か ら補助動詞へ の文法化 の 連続線上にあ るもの と見た上での考察である本稿か ら. (19)*彼 は学校 に驚 い て きた。. す ると,い わゆるヤ リモ ライ補助動詞構文 も,本 動詞.

(5) 李. 廷玉 :補 助動詞構文の文法化の初期段階の設定について. か ら補助動詞構文へ と文法化 の道 をたどってい る。 こ の授受表現は,物 の授受 とい うのが基本で,他 の物 の. た。 (さ ぶ ). (26). 自分 の行 く美容 院で は,お 客 に. たいな物 を作 って渡 している。(錦 繍〉. 授受 を表す 「与える,よ こす,渡 す」等 との相違点 は い くつか存在する。. 59. (27) 「見る人の心 々にまかせお きて雲井にすめ る秋の夜の月」 とい う 和歌 を一首 書 いて. しか し,こ れ らの「与 える, よこす ,わ たす 」等 は,「 やる,く れる」 と違 って,補 助動詞化が進 んで. 渡 した。(山 本〉. い ない。 これ らの動詞がテ形 と連結 してい る際の例 を. (28) 「少 しあるだろう」 とこういってその内の. 取 り上げてみると,そ のテ形は,物 の授受 を表す類 の. 一 人が立 ち止 って 自身の水筒 を抜 い て 渡. 動詞類 に制限されてい ることが分か る。. した。(小 イ 曽〉. 「「与 える」は,「 子供 にお もちゃを買 って与 える」 のように,具 体的な物 の受け渡 しがある場合の一部 で *教. 補助動詞的にも用 い られるが,抽 象的 に「. えて与. える」 とは言えないこ とか ら考 えて も,こ れは継起的 な「買 う」 のテ形に「与 える」が付 いた ものと考えら れる。山田 (2000:102注. 1)」. とあるように,「 与 え. る」 とテ形 との連結についての指摘がある。. 「テワタス」の実夕1も ,「 テアタエル」同様,前 項動 「作る」などの生産動詞 詞 として,「 取 る」「書 く」. ,. 「抜 く」な どの対象変化他動詞が多い。また,格 支配 においても,例 (26)か ら分かるように,「 渡す」の 格支配を従 っていることがわかる。すなわち, これ ら の例は,モ ノの授受を表す場合で,前 項動詞 と「ワタ ス」には時間的継起関係を成 している。. 4.1.1「 テアタエル」. (21). 山本の買 って与 えた 薔薇 の花 が ,花 瓶 い. 4.1.3「 テ ヨコス」. (29) 「見てみろ,ひ どい器量 だ」山本 は言 い な. つぱいにさしてあった。 〈 山本〉. (22) 源氏 は二 ,三 日,宮 中に も出仕せず ,紫 の 君 を手なずけるのにかかっていた。 姫君へ ,そ の まま手本 になるよ うに,と 思. い,卜 や絵│を かいて与えた。(新 源氏). (23). 源氏は舎人たちに國. が ら 望遠鏡 を息子に返 して よこ した。 (太 郎〉. (30). ともか く君 はかかる内部 の葛藤 の激 しさに 堪 えかねて,去 年 の十月にあのスケ ッチ帖. を脱いで与え,そ. のいろいろは,ま るで秋の紅葉 を風が吹 き. とを僕 に送 って よこ したの と真率 な 国 だ。 (小 さき〉. (31) その後 は岡安 も諦めたのか,し いて会 わせ. ひるがえす ばか りだった。〈 新源氏). (24) 運命 は彼が表面的に望 んでいた もの をすべ て与 えた。陰険に皮肉に与えて くれた。 (沈 黙 )(「 ヤ リモ ライ 十与 える」の承接 は. 不可能). よ う とはせ ず ,差 入れ の 品だけ を部屋 ヘ 届けて よこした。 (さ ぶ〉. (32) 黒が炊事室 の建物 の陰か らわずかに手 をだ してみせ ,大 丈夫 だ ,と し らせ て よ こ し た。. 「テアタエ ル」 の実例 をみると,前 項動詞には,モ ノの生 産 を表す 「買 う,書 く」 (例 (21)(22))な ど の 生 産 動 詞 ,モ ノの 授 受 を 表 す 「 与 え る 」. 「テ ヨコス」 は,「 テアタエ ル」「テワタス」 に比 べ. (伊 l. る と,抽 象的 な ものの授受 (例 (32))等 もあ る こ. (24)),対 象変化他動詞 の「脱 ぐ」 などが来やす い。. と,格 支配が前項動詞 に従 っているのか,「 よこす」. また,例 (23)か ら分かるように,「 舎人たちに」 の 二格 は,前 項動詞 の「脱 ぐ」ではな く,「 あたえる」. によるのか,不 明 ではあること,前 項動詞 と「 よこ す」 との関係が時間的継起関係 を成 してい ないこ と. の要求する格 である ことが分かる。. 等 の理由か らして,補 助動詞構文に近づいてい る形式. ,. である とい えよう。 4。. 1.2「 テワタス」. (25). しか し,本 動詞 「アタエル,ワ タス」が補助動詞形. そ して,与 平 に挨拶 をし,持 っていた包み. 式 として使 われた際,新 しいモノの生産,対 象変化 を. をあけて,少 ない けれ どみなさんでひ と口. 表す前項動詞類 と共に使 われ,新 しいモノの授受 を表. ず つ ,と 云 い なが ら 切餅 の包み を取 って 渡 し,あ との包み を持 って栄二のほ うへ 来. してい る点で,補 助動詞 の文法化 の初期段階を表 して い ることが分か り,こ の現象 は,「 テアゲル」「テクレ.

(6) 甲南女子大学研究紀要第 46号 ル 」 にお い て も,モ ノの 授 受 を表 す 例 は ,文 法 化 の 初. 文学 。文化編 (2010年 3月. (33)■ 七 祖司せ♀ (chonebadun/手 渡 して もらっ た)毅 Ol斗 嘲 電立三 司詈 キ 鎖鎖立 。■可 ス1子 を (通 帳)会 ヨ署司せ〇卜(dhedOryobadゴ 返 して貰って)ユ 号スI Ell刹 司頭■. 期段 階 で あ る こ とを物 語 って い る とい え よ う。. 4。. 2. ). 韓 国語 の 「PATTA」. .. 日本語において,や りもらい動詞 「やる. (あ. げる). (34)月 1叶 Il° l鍬 嘔 計晉 (作 品)舎 列1。 l口 1. 011ttql. /く れる/も らう」 は,物 の授受 を表す と共に,様 々. バ七 ユ 嘲三 〇101せ 。卜 (iobadゴ 受 け継 い で. な動詞 と結合 して,利 益行為を表す文法形式 として発. もらって)せ 電三朴 殻Ol立 通 ≧司理 よ。卜(ml町 obadゴ 譲 って もらって )オ ス1ユ 入1召 敷 嘔 号 ュ. 嘲フトユ (35)。 卜. 達 してい る。 韓国語 にお い て も,「 子叫CHUDA」 動詞 は,日 本 語 と同 じく,物 の授受 を表す と同様に,様 々な動詞 と 結合 して,利 益行為 を表す文法形式 として発達 してい. 咀 嘔■. (鏡 )三. u朝. 賛o卜 彗書 .…. (36)司 1ユ 鍬嘔 を手舎 ♀冽 到 ユ七. 金 (桂 ユ. 1司. る。 しか し,日 本語 の「 もらう」動詞に該当す る韓国. ン・人名)1舎 唱冽せ〇卜 (nomgyObad″ 渡 して. 語 の「せ■ PATTA」 の場合 は,授 受動詞 としては. もらい)立 暑舎ユ三 司書到 望子J詈 頚■. ,. 生産的に使われるが,利 益行為 を表す文法形式 として. (日. paki/渡. 本語 ・韓国語 ・英語の授受動詞〉. 日本語. 韓 国語. dJlせ フ1(gome してもらうことに)三 殻嘲. (37)社 子■司1嘔 司 そ ■. は,発 達 してい ない といわれてい る。. ... (本 )舎. .. 韓 国語 の「A PATTA」 構 文 は ,日 本語 の 受益構 文 とは対照 的 に生産的で はない 。 しか も,こ れ らの動詞. 英語. も物 の授受性 が残 っている動詞 で あ るので ,授 受性 を. くれ る くだ さる. 子■CHUDA 千人1■ cHuSIDA. やる あげる さしあげる. 丁叫 CHUDA. り,物 の授受性 の 延長 に存在 して い る程度であ る こと. 三 司■ TURIDA. が言 える。例 (33)は 「子を (通 帳 )」 ,例 (37)は. もらう いただ く. せ■ PATTA. GIVE. 色濃 く持 って い る前項動詞 に限 つて受益 が存在 してお. ,. 「 硼 (本 )」 とい う,モ ノの 授 受性 が 大 い に残 って い. RECEIVE. る。韓 国語 の 「A PATTA」 構 文 は ,日 本語 の 受益構 文 とは対照 的 に生 産的 ではない に も関わ らず ,実 例 を. (1979:25)に も,「 ところが ,朝 鮮 語 に は 「 ∼ て もら う」 にあ た る表現 が な い 。 PATTAは あ る. みてみ る と,モ ノの授 受 に関係す る場合 は,成 立す る. が ,そ れ を補助動詞 として使 う こ とがで きない 。 つ ま. 日本語 の「テ ワ タ ス ,テ ア タエ ル 」,韓 国語 の 「A. り朝鮮語 で は受 け手主語 の恩恵授受構 文 はな い わけで. PATTA」 の 存 在 は ,補 助 動 詞構 文 の 文法化 を連続 線. あ る」 の よ うな指摘 が あ り,韓 国語 の 「せ叶 PATTA」. 上 の もの として捉 える際 ,そ の初期段 階 の 設定 を裏付. 構文 が補助動詞構 文 と して発達 して い ない こ とについ. ける根拠 となる と考 え られ る。. 奥津. ことが 分 か る。. て言 及 して い る。. (2000:H5)で は,「 恩 恵 を表 す補 助 動 詞 表現 は韓 国語や タイ語 な どに も見 られ ますが ,英 語 な 庵. 主な参考文献. 他. どの西洋語 には見 られ な い表現 です。 韓 国語 の授受表 現 は「 (∼ て )や る」 と「 (∼ て )く れ る」 の 区別が な く,ま た補助動詞 と して の「 ∼ て もらう」 の 用法が な い な ど,細 部 で は 日本語 の それ とは違 ってい ます」 と い った言 及 もあ る。 しか し,実 際 ,例 文 を集 めてみ る と,「 A PATTA」 の形 で 使 われ る例 を見 つ か るこ とがで きる。 しか し. 他 (2000)『 日本語文法ハン ドブック』 スリーエー不ットワーク 影山太郎 (1993)『 文法 と語形成』 ひつ じ書房 庵. 仁田義雄 (1995)『 複文』 くろしお 山田敏弘 (2000)「「連載 日本語におけるベ ネファクテ イブの記述的研究」『日本語学』2000.Ho VOL。 19 7。l嘔 嘔電 子■Oll嘲 せ 電子 ト 斗 (姜 )(1998)『 号Ol到 =ス ト(韓 国 (国 語の動詞連結構成に関する研究)』 せ号モ斗ス 文化社). ,. これ らの例の共通点 もや は り,具 体物 の授受 であ る こ とが分か る。. 用例 出典 日本語 :新 潮文庫 100冊 CD 韓国語 :を. (姜 )(1998:56).

(7) 李. 廷玉 :補 助動詞構 文 の文法化 の初期段 階 の設定 につ い て. 1)影 山 (1993;10∼ H)は ,語 の 形 態 的 な緊密 性 と し て ,形 態 的 な不 可 分性 ,統 語 的要 素 の 排 除 ,外 部 か ら の修飾 の禁止 ,語 彙照応 の制約 を挙 げて い る。 2)影 山の用語 で本稿 のテ形補助動詞 に当た る。 3)例 (4∼ 10)は ,影 山 (1993:170∼ 172)か らの引用 であ る。. 4)仁 田 (1995;107)「 (時 間的継起 )の 典型 は,シ テ節 と主 節 が と もに意志 動 詞 で 形 成 され ,両 者 の 主 体 が 同 一 の もの で あ る。 無 意志 動 詞 で の 形 成 や異 主体 の 可 能 性 の 高 さは,(起 因的継起 )を (時 間的継起 )か ら分 か つ一つ の特徴 であ る」 との指摘 を受 けて の作例 であ る。.

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参照

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