ミツバチ科学23(2)二58-64 HoneybeeScience(2002)
ミツバ チにお ける飛行機能 と飛期筋 の多機能化
佐々木 正己
1.は じめに 最近になって多方面か らミツバチに興味が向 けられている. 理由の一つはWilsonの社会生 物学 (Sociobiology)が社会性昆虫をモデルとしなが ら体系化 されたことで,広 く一般の注 目 をひいた点である.遺伝子の利己的振 るまいを 見 る眼が 「血縁びいき」 に移 された時, ヒト社 会の現実 とも重 なり,蜂の社会構造-の興味が 一段 と強 ま った ことも挙 げ られよ う.一方,
DNA
解析法の飛躍的進歩 に伴 い,遺伝子の発 現が比較的容易に扱えるようになり,個体の中 でのプログラムやフィー ドバ ックだけでな く, 自種の仲間間や他種生物 との相互作用の中でそ れがどう調節 されているかにも興味が向けられ はじめた (久保 ら,1996). カス ト問の構造 ・ 機能両面 にわたる多型的発現 は,社会的関係の 中で調節 されるだけに,高度の面白さを秘めて いる. コロニーの成員問での機能分担や システ ムとしての組織化や統合の機構 は,物理分野の 人達の興味 もそそりは じめている. こうした眼で ミツバチをみてみると,その面 白さは社会 システムの中で最適に機能するよう に適応 した生理機構の中にも随所 に見受 けられ る. ここではそのような視点の一つ として,本 莱 "飛ぶ"ために発達 した超 と飛拘筋が, コロ ニー機構の色々な場面で,見事なまでに "機能 拡張" されてきた点を概観 してみたい (図 1).2.
本来 の 目的 と して の飛 糊 とその燃 料 ミツバチは停止飛招 (ホバ リング)か ら秒速 8m くらいの早 さで飛 び,1mgの糖で約 2km 飛べ る (Brandstettereta1.,1988). ミツパテ の飛和筋や脂肪体中のグ リコーゲ ンは限 られて いて (Maurizio,1965). ガソ リンタンクに相 当する蜜胃に必要量の-チ蜜を積んで飛行 にで る.採餌か ら帰 った働 き蜂はこの蜜胃に貯めて きた蜜をすべて吐 き出 して貯蜜係 に渡 し,再外 出の際 には改めて蜜 を もらって出てい く.最 近,燃料蜜の積み込み量がダンス情報 により認 識 した飛行距離 に相応 した量 に調節 されている ことがわか り (Sasakietal.未発表), ダンス 図 1 ミツバチの飛招あるいは飛期筋活動からの機能拡張の流れ (ニホンミツバチの場合)∴ ∴ l 図2 ミツバチ成虫の飛糊時の燃料補給系 体外の貯蔵系 (体外消化した貯蜜)が発達した代わりに通常の貯蔵 系である脂肪体の発達は悪い.ルー ト3が主要経路と推察される. が本当に情報伝達 として機能 していることも, 改めて確認 された. 巣内に膨大な量の燃料 プールとしての貯蜜が あり,何時で も積み込めること, また次の行動 量を予測 ・認識 してお り,それに見合 った最小 量 (+安全率,または保険相当分)を利用すれ ばよいこと,の2点のために, ミツバチは個体 の体内の貯蔵エネルギー量を最/川艮にまで減 ら して しまった.従 って蜜胃が空になればす ぐに 血糖の低下がおこり,その間の温度や運動量 に もよるが,数時間で死 んで しま う. ミツバ チ (成虫)の血中に,多 くの昆虫が血糖 として採用 している トレ- ロースだけでな く,多量のグル コースとフラク トースが見 られることは既に指 摘 されているが
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, 私たちはこのことをコロニー全体 のエネルギー供給系の視点か ら解析 している. 羽化 したばか りでまだ蜜を飲んでいない働 き 蜂 と既に蜜を飲んだ蜂の血糖を比較すると,飲 んだ-チ蜜の糖組成 (グルコースとフラク トー スが ほぼ1:1)が血糖 に大 きく反映 しているこ とが推察 され る.飛行前 後 の蜂 の血糖 をみ る と,やはりグルコースとフラク トースがそれぞ れ40mM
前後, トレ- ロースがそれよ り少 し 濃度が高 いくらいで,飛行中はむ しろそれより 血糖 は高めになっている場合が多い. 詳細 は省略するが, 3種の糖が血糖 になって いる点, ホメオスタシスが存在 しないと思われ るほどに変動幅が大 きい点 は, ともには乳類の 場合 と著 しく異なっている. トレハ ラーゼの阻 害剤であるVAA
を注射すると, す ぐに血中に トレ- ロースが貯 まって くるので,昆虫一般の 代謝系が動いていないわけではないらしいが, そのよ うな状態 の蜂で もまだ飛期が可能 であ る.13Cの グル コースまたはフラク トースを注 射するとす ぐに呼気中に13Cが現れることか ら ち,血中のグルコース, フラク トースをそのま ま解糖系に入れている可能性が高い. こうして みると,花蜜のスクロースを予め体外分泌 した αグルコシダーゼでグルコースとフラク トース に分解 し,高濃度に濃縮 してコロニー共有のプ ールとして巣内に貯めておき,それを必要時に 蜜胃 (タンク)-弁-中腸-血中-飛招筋 とそ のままの形で利用 していることになる,昆虫 と して採用 した基本的代謝系である一度 トレ- ロ ースにする系 は,少な くとも活発に活動 してい る時 には主 たる役 目を果 た して いない らしい (図 2). 昆虫の場合中腸での単糖の吸収は能動 輸送 によ らないといわれているので, "アクセ ルペダルの踏み具合"に相当する弁 (蜜胃と腸 の間 に位置 す るpr
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の動 きが何 に感応 してどうコン トロールされているのかに興味がそそ られる.
3.
巣 内 の換 気 お よび温 度調 節 へ の使 用 -チが空中を飛ぶ時には麹のあお りで空気を 下方,後方へ押 しや り,推進力を得て飛ぶが, このとき体を固定 しておけば蜂 は "扇風機" と なる.熱帯の開放空間に営巣 したオオ ミツバチ や コ ミツバチの巣板面で も扇風行動 はみ られる が,セイヨウ ミツバチやニホンミツバチのよう に木の うろなどの閉鎖空間に営巣 した種では, 扇風の重要性 ははるかに大 きい.扇風が必要な のは 1)巣内が暑 くなりす ぎた時 と,2)呼吸に よる炭酸 ガスが充満 して酸素濃度が下が った時 である.巣穴 (出入口)が小 さい時など下手を すればコロニーの生死 にかかわる.扇風蜂の羽 ばたき回数 は150-200回/秒程度で,飛糊時 の250回/秒 に比べ ると少 しゆっくりで,飛和 筋の温度 もそれほど高 くはな らない. 自動車の アイ ドリング状態に似ている. ミツバチは酸欠には気がつかないが,炭酸 ガ ス濃度 は敏感に感受で き(Seeley,1974),巣内 の炭酸 ガス濃度 に応 じて扇風蜂の数を調節す る (Seeley,1974,高橋 1992).ここで興味深いの は扇風の方向 と扇風蜂間の同期の問題である. 個々の蜂の定位がバ ラバ ラではいたず らに空気 を撹拝す るだけで,巣 レベルの有効な換気 はで きない.巣門部の蜂,通路の蜂,巣坂上の蜂で しかるべ き定位 と同期 した連携プ レイが必要 に なる.この2点を蜂がどのように して実現 して いるかはまだよ くわか っていないが,少な くと も巣門付近で,暗い中にも外の明か りが見える 状態では,定位 に光を利用 している.試みに夏 の夜,巣門の外で扇風行動をとっているセイヨ ウ ミツバチに正面や横か ら懐中電灯の光を当て てみ ると,彼女 たちは扇風 しなが ら向 きを変 え,光源の方向に尻を向ける. これはセイヨウ ミツバチが巣内の空気を排気す る形で扇風する 性質が あることを反映 して いる (生 田 ・佐 々 木,1996). これに対 しニホ ンミツパテでは巣門での換気 扇風の方向が逆で,外の新鮮な空気を巣内に取 り入れるように扇風す る. スズメバチなどの天 敵が多いニホ ンミツパテでは,西洋種のように 巣門で尻を外に出 していたり,巣内の匂いを排 出 してまき散 らしたのでは,捕食の危険性を高 めることになるか らだと推察 される."排気型" のセイヨウ ミツバチの場合 は巣内の空気を触角 でモニ ター しなが ら行動 を続 けることにな る が,逆向 きのニホンミツバチでは触角を通過す る空気 は新鮮 な外気なので,触角 に当たる空気 か ら巣内の状態を察知す ることはで きない.巣 門で扇風 している蜂が時々巣内に戻 り,また巣 門に出て くるのが観察 され るが, これが単なる 燃料補給でな く,巣内の空気環境の改善状態を 図3 巣坂上での蜂の分布とEl齢の関係 巣板上の等温曲線 (温度は巣板表面から1-2mmの空間のもの)と比べると, 若齢の蜂は温度の高いエリアにいることがわかる.丸印が 1匹 1匹の蜂.図 示してある以外にもいろいろの日齢の蜂がいるがそれらは示してない.4 2 0 1 1 1 ( U .) 堪 痩 せ 壌
会
報 1 5 14 20 働き蜂の日齢 図 4 セイヨウミツバチ成虫の加齢と寒冷麻樺が起 こる温度との関係 評価するために戻 っているのであれば大変興味 深い (生田 ・佐々木,1996).ただ し,そんなニ ホンミツバチであって も,分蜂群が新たな巣箱 に入 る時のような特別な場面では,先着蜂がち ゃん と外側 に尻を向けてナサノフ (集合) フェ ロモ ンを放出 しなが ら扇風を し,後続の仲間を 誘導する. コロニー全体 はゆっくりとした リズムで扇風 により間欠的に 「コロニー呼吸」をす るが,そ のタイ ミングを決めるには,炭酸 ガス濃度に対 する感度が高いか,それを受 けた行動解発の閥 値が低 い "ペースメイカー" になるような蜂が いるに違 いない.巣門 と内部を結ぶ特別の実験 用通路を作 り,現に蜂が作 った気流が流れてい る通路上での扇風蜂を回転 (床の一部 ごと) さ せると,2
種のいづれで も風上 に頭を向けるよ うに体軸を調整することなどか ら考えて, リー ダー的に機能する少数の蜂 と,それ らが作 った 気流を単 に増幅 しているだけの蜂がいるように 思われる. 扇風行動 は超を羽ばたかせることにより行わ れるが,巣内の強制暖房のために蜂が発熱す る 場合 には麹 は動かさずに飛糊筋だけを緊張 させ る.ただ,巣内温度が下が ったか らといってす ぐ皆で発熱を始めるかというと,決 してそうで はない.蜂の付 いた裸の巣板をサーモグラフィ -でみなが ら実験的に部屋の温度を下 げていく と,発熱をは じめた蜂がいれば胸の温度の上昇 が 色 の 変 化 に 変 換 さ れ て す ぐ に わ か る Stabentheiner,1991,Satoetal.未発表). し か し蜂 は幼虫のいるところを被 い尽 くすように 集 まり,身を寄せあって断熱層を作 る.まず自 然に発生 している幼虫や仲間の呼吸熟を逃がさ ないようにするのである.その際働 き蜂の体中 を被 う分岐 した長毛が空気を捉えるのに機能す る.それでどうして も足 りない時にのみ,一部 の閥値の低 い (感度の高 い)蜂か ら発熱を始め るようである.それ も層状に重 なった蜂の最外 層の冷気 にさらされている蜂はなかなか発熱 し ない. これは彼 らが既存の熱源を大切に してい かに効率的にエネルギーを倹約 しているかを示 す ものであ る.その倹約 の性質 と10か ら40 kgにも及ぶ貯蜜があ って,は じめて外部資源 にたよれない温帯 の長 い冬 を休眠す ることな く,全員で越冬出来 るのである. 個々の蜂の加齢状態によって も温度 に対する 反応 は大いに異なる.巣坂上の温度分布 と蜂の 臼歯令を見 ると,若 いものが暖かいところにいる 傾向が見て取れる (図3,Satoetal.未発表 ; Ohtanai,1992).人工的な温度勾配の中で温度 に対する選好性を調べると,羽化直後 はとて も 寒が りで,35℃ どころか 38℃ くらいを選ぶ. 選好温度 はその後だんだん低 くな り,20
日齢 以降では 28℃ くらいを選ぶ よ うになる.耐寒 性 も異 なり,寒冷麻痔に陥 る温度 は若 いものと 加齢の進んだ ものでは10度近 い差がみ られた (図 4).発熱能力 は飛 糊筋 の発達 によ って違 う.飛摺筋の断面の色 は,齢が進むと赤味が強 くなるが, これはチ トクロームの量を反映 して いる.電顕でみると,筋繊維の間を埋める ミト コ ン ドリアの分布密度 に大 きな違 いがみ られ る. コロニー レベルの熱産生能を推定 した結果で はセイ ヨウ ミツバチで最高643W/胸1kgと いう値が報告 されている (Dyer and Seeley, 1987),働 き蜂 1匹の胸部の重 さを30mgとし て胸1kgは33000匹分,すなわち少 し大 きめ の1コロニー分 に相当す る.4.
熱 投 へ の 応 用 飛招筋 による ミツ/ヾチの発熱 は, そ もそ も幼 虫 の保温や 自分たちの越冬 のための ものと考 え られ る.囲 み に上 に述 べ たよ うな熱 の産生能 は,熱帯のオオ ミツバチで は355ワッ トで,盟 帯産 のセイ ヨウ ミツバチのそれを大 きく下回 っ ている.従 ってニホ ンミツバチが この発熱反応 を,巣 を襲 って きたスズメバチに対す る防衛手 段 として,熱死 させ るよ うに "応用" したこと は き わ め て 興 味 深 い (Ono et al.1987, 1995). 大型で, しか も集団攻撃 の性質を もつオオス ズメバチが ミツパテの巣箱 を見つけると,近 く の ものにvan derVecht腺 を擦 り付 け, 同巣 の仲間を誘引す る匂 いのマーキ ングをす る. こ のオオスズメの攻撃 に対 し,原産地 にこのよう な天敵がいないセイヨウ ミツバチは,次々と向 か って行 ってはオオスズメの強大 な大 あごの一 撃で殺 されて しまう. しか しこの強力な天敵 と の長 い共存 の歴史を もっこホ ンミツバチはそん な馬鹿 なことは しない.オオスズメの情報化学 物質である餌場 マーキ ングフェロモ ンやオオス ズメ自体の体臭 を感 じとると非常防衛体勢 に入 る.オオスズメが姿 を消す と多数 の蜂が巣門の 外-出て周辺 をか じり,匂 いをク リーニ ング し ていると思われ る行動 をとることす らある. ら しオオスズメの飛来が続 けば,採餌活動 を停止 して巣門か ら出て こな くな り,持久戦 に入 る. 巣門の外か らはわか らないが,巣門の内側で は 数百か ら時には数千匹におよぶ蜂がスクラムを 組み,オオスズメの侵入 に備えている. もしオ オスズメが入 って くれば一気 にこれに襲 いかか りボー リング行動 にで る. オオスズメが襲来 し ているときの巣門付近 のガー ド蜂の体温が既 に プ レヒー トの状態にな っているいるのはきわめ て興味深 い (Onoetal.1995). この ボー リングによる発熱 は20か ら40分 も続 くので,燃料 もず いぶん必要 な はずで あ る.対 スズメバチ防戦 モー ドにな ったニホン ミ ツバチは蜜胃中の蜜の量が多 いことか ら (未発 義),先の展開 (熱殺)を予測 して燃料 を備えて いるもの と推察 され る.セイ ヨウ ミツバチで も 希 には,多数が巣門に出て ホバ リング している キイロスズメバチを捕 らえ, ボー リングに近 い 様相 を呈 す ることが あ る. そん な もみ合 いが 10分 はど続 いた時点 のセイ ヨウ ミツバ チの血 糖 を測 ってみたところ,血糖値が ほとんどゼロ に近 い状態 まで下が って しまっていることがわ か った.セイ ヨウ ミツバチのガー ド蜂 は刺針行 動のみを武器 としてお り, おそ らく身軽 に して お くために蜜胃には余分 な燃料 を積 み込んでい ないためであろう.5.
コ ミュニケー シ ョンツール と しての利用 最後 に情報発信手段 としての延 の使 い方 をみ てみたい. この場合麹 は振動す るが,背中の上 にたたんだままでの微少 な上下動なので,肉眼 で捉え ることはで きない. 大 きく分 けて 1)防 の運動 を超 を介 して空気 の振動 とい う形で発信珊
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fp=ilS.Z7eilif3e87g Uapan) セイヨウミツパテ0
500 1000 1500 巣箱から餌場までの距離 (m) 図5 セイヨウミソバチとこホンミツバチの巣箱か ら餌場までの距離とタンス中の発音時間との 関係を調べた実験結果.星印は尻振 り時間を 測定 したが,これは発音時間と等 しいことを 別に確認 してある.し,触角の共振 という形で受信す る近距離 (敬 cm以内)の少数の蜂への伝達 と,2)胸部 を巣 板 に当てて振動 を直接基質 に伝えて広域 に発信 す るマスコ ミュニケー ションとがある (佐 々木 1999). 空気を媒体 とす る方 は採餌 ダンスの中で,距 離 と方位 の情報 を含 んだ8の字 の直線部分 を 踊 る際 に発 せ られ る.250Hz前後 だか ら超 の 動 きのパ ター ンは異 なるが,振動数 としては飛 招時 と同 じである. ダンスは帰巣 した働 き蜂が 採餌場所 に仲間を誘導す る価値があると認識 し ている時に,貯蜜係が待 ち受 けている巣門に近 い巣板上の一角で踊 られる. この ダンスによる 情報伝達 のすぼ らしさについて はSeeley博士 の "ミツバチの知恵"(1995)に詳 しいので省 略するとして,重要 なのは,餌場 までの距離情 報が この振動音 の長 さにコー ド化 されている点 である. この コー ドは種や亜種,地域個体群 に よって も定量的に異 なっていて,例えば私 たち が調べた 日本のセイヨウ ミツバチ (イタ リア系 雑種 と称 される) とニホ ン ミツバチは,それぞ れ原産地 といわれるイタ リア地方 もの,東南 ア ジアの もの とはずいぶん異 な っている.因みに 日本のセイ ヨウ ミツパテは1kmを約 1秒 に コ ー ド化 しているが, これはイ タ リアでのそれよ りも, もっと北方の ドイツ,オース トリアなど に産 す るAPismelliferacarnicaの それ に近 い. ニホ ン ミツバ チは同様 に1kmを約0.7秒 にコー ド化 しているが, これ も同種 の熱帯産 の もの (Koenigerらによるス リランカのデータ やDyerらの タイでのデータ) とは大 きく異 な る.北方 に分布圏を広 げて コロニー規模 も拡大 したのに見合 うよ うに広域適応型 とな っている (図 5). ダンスの中に花 までの距離 と方位が コー ド化 されて表現 されていることは間違 いないが,そ れが情報伝達 として機能す るにはそれが受信者 に正 しく読み とられ, デ コーデ ィング (解読) されなければな らない.距離情報 に関 して は触 角 の第2節 と 3節 の間 の ジ ョンス トン氏器官 様の受容器で聴 いているとの説明で理解で きる が (Drellerand Kirchner,1993),方位の読 み とりについてはもっと難解である. ダンスの 追従者 の中で も真後 ろか らついてまわ っている ものについては,信号音が発せ られている間, 自身 もダンサーと同 じ方向を向いているので, その時の体軸 の重力場方向に対す る傾 きが ダン サーと等 しくな り,理解で きる. しか し実際に はダンスを横 の方 か らのぞ き込むように して聴 いている追従者 も多 く,Dreller(1994)による と, それ らも真後 ろか ら聴 いているもの と同程 度の精度で餌場 に到達で きたとい う.麹か ら発 せ られ る空気の波動 には方 向性があるか ら,哩 論的にはある種 の変換 を介 して どんな向 きか ら で もダンサーの体軸 の傾 きを読み とることはで きる. しか し本当にそ うしているのだろうか と の疑問 も禁 じえない. 収穫 (リクルー ト) ダ ンスが変形 して別 の意 味を もつようにな ったと考 え られ るものに逃去 ダンス (仮称)がある.ニホン ミツバチは花資 源の枯渇や巣内環境の悪化 にさらされた時,栄 を捨 てて全員で逃去す ることがある. これに先 立 って しば しば, 収穫 ダンスに似てはいるが8 の字 を描かず,異常 に長 い発音を伴 うダンスが 見 られ る. このダンスは, まだ一度 も飛行 に出 た ことのない若 い蜂を も対象 として,巣 を捨て て引 っ越 しす ることを動機づ ける意味があるの ではないか と考え られ る. この ダンスは巣内の あちこちで静 かに踊 られ,追従 した蜂 は20秒 前後で聴 くのを止 めて しまう.収穫 ダンスの場 合 と異 な り,巣外 に飛 び出 して行 くようなこと はない.通常の距離 コー ドの範囲を越 えて "異 常 に遠 く" を示すよ うな長 時間の発音が,別の 意味を もつように変化 した もの と考え られ,輿 味深 い (Sasaki,1990;佐 々木1993). 振動 を基 質 に伝 え る タイプには, いわゆ る queen pipingやworker piping, DVAV (dorso-ventralabdorminalvibration)など がある. いづれの場合 も,蜂 は発音時に胸部 を 基質 に押 し当て るようにす る. まだ確証 はない が, これ らはいづれ も受信者 のovertな行動 を 抑制 す るよ うに機能 す るよ うで (佐藤,未 発 義),例えばqueenpipingの場合,その録音 を 空気伝搬で音 として聴かせて も働 き蜂たちには
何事 も起 こらないが,その振動を直接基質に伝 えると広域の働 き蜂の行動が一時的に強 く抑制 される. このような基質の振動 は肢で感受 されるらし いが (Sandemaneta1.,1996),受容器などの 詳細 はまだわか っていない. ニホ ン ミツパ テを含 む
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ceranaで はさ らにシマ リングとか ヒッシングと呼ばれる興味 深い行動が見 られる (Fuchs and Koeniger,1974).これは巣 に物理的な衝撃が与え られた 時などに多数の蜂が連携 して作 り出するシュー ッ, シュー ッという音で, アラーム信号 と考え られている.各個体が出す音を単独で捉えるこ とが不可能 に近いので,解析 は難 しいが, この 時蜂 は超 を 1度 だ けキュ ッと正 中線方 向に縮 めていることが肉眼で もわかる. これが体を接 している蜂の間で波紋 の よ うに広が ってい く (伝搬速度 は秒速25cm程度).この音 は自身の 巣の仲間に対 しては警戒音 として機能すると思 われるが,外敵 とくには乳類 に対 しては,蛇や オオ トカゲなどの威嚇音の ``擬音効果"がある ので はな いか と も考 え れ て い る (Koeniger. 1995;Sasakieta1.,1995).ずいぶん以前か らクマに対する効果のほどを実験で確かめてみ たいと計画 しているが, まだチャンスがない, (194-8610 町田市玉川学園 6-ト1 玉川大学 ミツパテ科学研究施設) 引用文献
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HoneybeeScience(2002)23(2):58-64.Honeybee ScienceResearchCenter,TamagawaUniversity,
Machida.Tokyo,194-8610Japan.
HoneybeesdlVerSifiedtheirflightabilityfrom its orlglnal fllght function to other multi -purpose uses.Wlth the developmentoftheir sociality and related informatlOn delivery sys -tems. Funning was achieved by fixing the bodyontothesubstrate. Colonyrespilationis lealized by tlleirsynchronlZed and orientated manner Heatproduced bythecontl-actionsof flight muscles without visible wing beats is used notonly for regulating the brood area temper'ature,butalso forspecificstrategy kill -ingtheenemyhornetsinA.cerana.Airvlbr a-tion (sound)produced by mlnutedorso-Ventral wlng movements is co°ed wlth its length of signaling,and used to inform theforaging or nesting sites. Furthermore,thesignalexcee d-ingacertainlengththresholdmotivatest oab-scond(relocate)thewholecolony.Physiological basesofthesefunctionswerediscussed.