第161回 月例発表会(2015年4月) 知的システムデザイン研究室
最近のセキュリティの脆弱性
堂面拓也,山口浩平
Takuya DOMEN
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Kohei YAMAGUCHI
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はじめに
近年のサイバー攻撃は知的財産や個人情報を狙った事 案が多い.2014年2月に起きた,仮想通貨「Bitcoin」の 大手取引所Mt.GOXから3億円相当のBitcoinが不正 に引き出された1) .この事件の原因は,何者かによっ て管理システム上の不具合を攻撃されたことであった. このように,情報やシステムを守るセキュリティに問題 があった場合,企業や組織は大きな損害を被る可能性が ある.2
情報セキュリティとそれを脅かす要素
2.1 情報セキュリティの3要素 情報セキュリティとは,JIS Q 27002によって,以下 の3要素を維持することであると定義されている. • 機密性(confidentiality):許可を与えられた者だけ が,その情報にアクセスできる状態を確保すること. • 完全性(integrity):情報が破壊,改ざんまたは消去 されていない状態を確保すること. • 可用性(availability):必要なときに情報にアクセス できる状態を確保すること. これら三つの英語の頭文字をとって,情報のCIAという. 2.2 セキュリティを脅かす要素 情報セキュリティを脅かすものとして,以下の2種類 がある. • 脅威:情報セキュリティを脅かす直接の要因.トロ イの木馬やDoS攻撃がこれにあたる. • 脆弱性:情報の取り扱いにかかわる様々な構成要素 の中にあり,損失のリスクを発生・拡大させる要因 となる弱点や欠点のこと. 脅威はその性質上,完全に取り除くことはできない.一 方,脆弱性は組織の内部にある弱点なので,脆弱性に働 きかけることでセキュリティ対策を行う. 本稿では,セキュリティ対策の中心である脆弱性につ いて述べる. 2.3 脆弱性の定量的評価法 脆弱性を定量的に評価するための手法として,CVSS(Common Vulnerability Scoring System)がある.これ は情報システムの脆弱性に対する汎用的な評価手法であ る.CVSSの値は,情報のCIAへの影響度と,どのネッ トワークから攻撃可能かなど攻撃の容易さを基に算出 される.CVSSを用いることで,脆弱性の深刻度を同一 の基準の下で定量的に比較できる.CVSS値によって, Table1に示すように3段階の深刻度に分けられる. Table1 CVSS値による深刻度 CVSS値 深刻度 脆弱性に対して想定される影響 7.0∼10.0 レベル3(危険) 大部分の情報が漏えいする可能 性など 4.0∼6.9 レベル2(警告) 一部の情報が漏えいする可能性 など 0.0∼3.9 レベル1(注意) 非常に部分的な情報が漏えいす る可能性など
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近年発見された脆弱性
3.1 OpenSSLにおける脆弱性 OpenSSLはSSL/TLSの,オープンソースで開発・提 供されているソフトウェアである.利用可能なプラット フォームはほぼすべてのLinux系とWindowsであり, その普及率は世界中のサイトの66%にのぼる2) .この ように広く浸透しているOpenSSLに,重大な欠陥が発 見された 2014年4月に公表された脆弱性は「Heartbleed」と呼 ばれている.Fig.1にHeartbleedの概要を示す.Fig.1にあるように,クライアントがサーバに5バイトの文字 列HELLOと,文字列長100バイトというデータをリク エストすると,サーバは送られてきた文字列をチェック することなく,指定された文字列100バイト分の文字列 をメモリからコピーし,クライアントに送信してしまう. この脆弱性を攻撃されると,サーバ側のメモリ内容が漏 えいしてしまう.攻撃者は,1度の攻撃で64kBずつメモ リの内容を読み取ることが可能で,保護されていたユー ザ名やパスワードも再現することができる. HeartbleedのCVSS値は5.0となっており3),Table1 の深刻度はレベル2に相当する.一度の攻撃で非常に部 分的な情報しか漏えいしないが,この脆弱性による被害 も報告されている. 3.2 GNU bashにおける脆弱性 現在Linuxは非常に幅広い分野で使用されている.こ のLinuxに標準搭載されているシェル「bash」に重大な 脆弱性が発見された.この脆弱性は「Shellshock」と呼 ばれている.Shellshockの概要図を図2に示す.Fig.2 にあるように,本来は読み込まれない不正な位置にある コードを読み込み,実行してしまう.この脆弱性は攻撃 条件が非常に容易かつCIAに重大な影響を及ぼすため に,CVSS値は10.0となっている4).これは Table1の 深刻度はレベル3に相当する. 1
Fig.1 Heartbleedの概要 Fig.2 Shellshockの概要 3.3 実際の被害報告 OpenSSLの脆弱性を突かれ,三菱UFJニコスが894 人の個人情報が不正に閲覧された.脆弱性が発表された 1日後に,三菱UFJニコスは攻撃を受けた.脆弱性の発 表を受け,すぐにシステムを修正しなかったために攻撃 を受けたと考えられる. 一方,Shellshockを突いた攻撃によって,大阪府立産 業技術総合研究所のサーバが不正アクセスを受け,マル ウェアに感染してしまった.攻撃を受けたサーバは一部 職員のメールサーバとしても利用されており,メール内 容が流出した可能性もある.しかし,特に重要な情報は 別サーバで管理していたため,被害を最小限に抑えるこ とができた.