て
著者
岸野 麻衣子
雑誌名
KGPS review : Kwansei Gakuin policy studies
review
号
11
ページ
1-13
発行年
2009-03-31
希少動物の野生復帰政策が地域景観に与える影響
−兵庫県豊岡市におけるコウノトリシンボルを例として−
岸野 麻衣子
【要旨】 兵庫県豊岡市は、地域にかつて生息していたコウノトリの個体数を人工的に増やし、野生下に復帰さ せる「コウノトリ野生復帰推進計画」を実行している。コウノトリが生息できるビオトープや湿地の創 出といった自然環境整備をはじめ、多生物を育む農法の普及、農作物の地域ブランド化、市民の環境学 習の啓発といった施策を行っている。 本研究では、コウノトリの野生復帰事業が地域景観にどのような影響をあたえているのかを明らかに するために、主要道路及びコウノトリ関連施設へのルート上における、コウノトリをシンボルとする景 観要素の存在状況について調査を行った。この調査によってコウノトリをシンボルとしたアイコンが増 加しており、コウノトリを模した擬似剥製型という特徴的な景観要素が現れていたことがわかった。こ れら景観要素の設置はコウノトリ野生復帰に対する肯定的な意思の表明と捉えることができる。しかし それらは、コウノトリが飛来する可能性の高い場所にさえ設置されていた。 さらに、人工巣塔の分布状況と設置経緯の調査から、営巣場所整備の補完的対策であった人工巣塔が 「コウノトリと地域住民の共生の象徴」と認識されるようになったことを明らかにした。 キーワード:文化的景観、豊岡市、野生動物保護、コウノトリ1. はじめに
21 世紀は環境の世紀といわれ、持続可能(Sustainable)という概念が重要視されている。 地域の活性化においては、外部からの産業施設誘致や大規模な自然改変による開発ではな く、地域内に存在するものに価値を見出し、その価値を地域の活力へとつなげることが主 流となりつつある。 こうした中で、経済的価値に換算できない里山や水辺景観といった自然環境、建築スト ックやオープンスペースなどが「アメニティ」、すなわち地域生活を豊かにする快適性と して評価されつつある。 文化庁は 2005 年から「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形 成された景観地でわが国民の生活又は生業の理解のためにかくことのできないもの1」を 関西学院大学大学院総合政策研究科博士課程前期課程 1文化財保護法 第二条第 1 項第五号より引用。2005 年の一部改正によって文化的景観が文化財の一領域 として新たに加えられた。文化的景観と定義し、典型的なものや独特なものを重要文化的景観として選定、保存して いる。 本研究の対象地である兵庫県豊岡市は、地域にかつて生息していたコウノトリを繁殖さ せ、野生下に復帰させる「コウノトリ野生復帰推進計画」を実行している。さらに、コウ ノトリの野生復帰を支えるためのしくみをつくる施策も行っている。具体的な施策を挙げ れば、多生物を育む農法の普及、農作物の地域ブランド化、市民の環境学習の啓発などで ある。 コウノトリという地域シンボルによってさまざまな分野の政策を結びつけ、「コウノト リのまち」という地域イメージ構築を行う豊岡市において、地域にどのようなアメニティ を生み出しているのかを明らかにすることが、地域の活性化、ひいては持続性に必要であ る。 本研究で扱う「シンボル」とは、野生復帰にまつわる多様な活動、自然との共生を目指 すことがコウノトリの姿によって象徴されている状態を指す。
2. 豊岡市におけるコウノトリ保護の歴史
豊岡市は兵庫県北部の円山川流域に広がる豊岡盆地を中心とした地方都市である。 2005 年に、旧豊岡市、日高町、城崎町、出石町、竹野町、但東町の 1 市 5 町による広 域合併が行われ、人口約 8.9 万人、面積 679km2の市となった(2008 年度現在)。 北但地域の都市機能を担ってきた豊岡であるが、若年層の流出や高齢化が進んでいる。 加えて地場産業である鞄製造の衰退、商業や農業を始めとした地域生活に必要な産業の担 い手不足といった問題を抱えている。 コウノトリは日本で繁殖する数少ない大型鳥類である。江戸時代の 1830 年頃コウノト リが多数営巣していた出石町(細見字桜尾)の松山が「鶴山」と呼ばれる名所になってお り、当時すでに保護対象として意識されていた。その後 1919 年に公布された史蹟名勝天 然紀念物保存法公布においてコウノトリが天然記念物に指定され、1956 年には特別天然 記念物に指定されるなど、コウノトリを保護する法令の整備がされていった。 1934 年頃には、上述の鶴山はもとより豊岡以外の営巣地付近にも「茶店」と呼ばれる 飲食店が開かれた。このように「コウノトリのいる景観」は地域の魅力と評価されていた といえる。 それにも関わらず食糧・剥製のための乱獲(明治以降)、松林の伐採による営巣場所の 消滅(第二次世界大戦中)、農業の近代化による餌の減少と農薬被害(高度経済成長期) などの社会的要因と生物学的要因が重なり、コウノトリは急速に減少していった。3. 景観に現れる地域シンボル
コウノトリの野生復帰は、2005 年の放鳥をきっかけとして全国的に有名になった。それ に伴い、コウノトリをモチーフとした看板や広告等が、市内随所に現れるようになってきた。このような景観上の変化は、旧豊岡市域に留まらず、伝統的な町並みを観光資源とす る出石地域や、有名な温泉地である城崎にも広がりつつある。 本章では、地域シンボルであるコウノトリをアイコンとして用いた景観要素の分布状況、 種類等を調査し、そのことの意味及び地域景観に与える影響について考察する。
3.1 景観要素調査
コウノトリ野生復帰政策によって、景観上に現れる変化は以下のような 2 点に整理する ことができる。 第一に、コウノトリの郷公園、コウノトリ文化館などの関連施設・構造物や、ビオトー プ、コウノトリ育む農法が行われる田んぼ、湿地など、地域にコウノトリの棲息地を想起 させる景観要素が生まれてきたことである。 第二に、都市環境デザインとしてコウノトリの姿を用いた景観要素が出現していること である。それは標識や看板、構造物のデザイン、モニュメントなど多岐に渡る。例えば、 豊岡市の目抜き通りである大開通り商店街は、2006 年のアーケード全面改修の際、その デザインにコウノトリを取り入れた。それと同時に「サンストーク商店街」と改名し、コ ウノトリを商店街のマスコットキャラクターとした。これらの改変の理由として、「豊岡 にコウノトリというイメージがついてきたこと」が挙げられた2。 このように変化が塗り重ねられることで地域景観は変容している。本研究では、市内主 要道路及びコウノトリ関連施設へのルート上における、コウノトリをアイコンとする景観 要素について、①視認性すなわち目につきやすさと、②忠実度すなわちコウノトリの形態 や色彩の写実性との二つの指標による分類を行った。 視認性は、アイコンの周辺環境との対比によって評価することができると考え、設置さ れる高さが周辺から著しく高いもの、景観要素の大きさを 3 段階で分けることとした。 忠実度は、「コウノトリのまち」という印象を与える強さを評価するものとして、彩色 がなされているか、平面的な絵から立体的なオブジェなど、形状に着目した。 以上の項目から、景観要素として表れるコウノトリイメージの整理を行った。 2 豊岡駅通商店街振興組合へのヒアリング調査より。調査は 2008 年 10 月 2 日に行った。調査範囲:調査範囲は図 1 のルート上である。 図 1. 調査範囲 調査期間:調査は、2008 年 5 月 23 日、7 月 31 日、8 月 1 日、10 月 13 日、10 月 14 日、 20 日、11 月 10 日に行った。 調査例:図 2 のように調査データをまとめた。 図 2. 調査データ例
3.2
形態分析
今回の調査で得られた結果は、総数 39 件であった。 それぞれの形態的特徴からは、建物壁面に絵やイラスト、写真としてコウノトリが描か れる平面型、モニュメントなどのモチーフとして使われる立体型、壁面レリーフなどの半立体型の景観要素を見出すことができた。平面型の中には、「コウノトリ育む農法3」を 行っている田んぼに設置される普及啓発目的のものも含まれる。 視認性、忠実度によって分類を行い、それぞれの類型の特徴は以下のようになった。 図 3. 景観要素分類 39 件のうち[視認性:大、忠実度:小]に分類できるものが 5 件、[視認性:大、忠 実度:中]のものが 11 件と最も多く、[視認性:大、忠実度:大]のものが 4 件、[視 認性:中、忠実度:小]のものが 2 件、[視認性:中、忠実度:中]のものが 9 件、[視 認性:小、忠実度:小]のものが 4 件、[視認性:小、忠実度:中]のものが 3 件であっ た。[視認性:中、忠実度:大]及び[視認性:小、忠実度:大]のものを発見すること はできなかった。 [視認性:中、忠実度:大]及び[視認性:小、忠実度:大]に該当する景観要素はな かった。視認性が大に分類される 20 件のうち、忠実度の低いものはモニュメントや記念 碑などの長期的に設置するものが多いが、忠実度の高いものは、大きさ、設置場所が目立 つよう作られており視認性が高い。その中でも特に、色・形、大きさ共に実物のコウノト リに近い姿で再現したモニュメントが存在している。これらを「擬似剥製型」の景観要素 とする。 3コウノトリのえさとなる田んぼの生物を多く育てるため、冬季の湛水や農薬散布回数などを豊岡市が 独自に定めた農法。この農法については、兵庫県但馬県民局地域振興部豊岡農業改良普及センター (2008)に詳しい。
擬似剥製型の景観要素は、建物の屋根に取り付けられていることが多い。民家、事務所 建物、飲食店など設置されている建物の用途は様々であり、観光施設の看板のように商業 的目的で設置されているものだけではないことが判明した。
3.3 景観要素の立地
擬似剥製型景観要素を含む調査結果の立地場所を示したものが図 4 である。 図 4. 景観調査結果(2008 年 11 月現在) 景観要素は JR 豊岡駅を中心とした市街地や但馬空港近辺に多い。擬似剥製型景観要素 は、コウノトリの生息地域内にも設置されている。そのため、周囲の景観に沿ったもので あるということもできる。しかし、擬似剥製型モニュメントを設置することでコウノトリ が着地できなくなることが予想される。 大小様々なコウノトリを地域シンボルとした景観要素の設置は、企業や団体、個人と いった地域市民の「コウノトリ野生復帰」に対する支持や参加の表現である。コウノトリ 育む農法を実践できる農業者や、コウノトリのモニター活動等のボランティアでなくとも 参加できるものが景観要素の設置である。4. 人工巣塔の広がりと景観
前章ではコウノトリの姿をアイコンとして活用する例を取り上げた。本章では観光客や 地域住民が写真に収める「コウノトリのいる景観」を形成する「人工巣塔」を取り上げる。4.1 人工巣塔の現状
2008 年現在、豊岡市内には 18 基の「人工巣塔 す と う 」と呼ばれる塔が立っている。これら は、名前のとおりコウノトリが巣を作るための塔である。茶色に着色された 10∼12m 程 の鉄筋コンクリート製の柱に、円盤状の土台を乗せた構造である。台上に枝や藁を敷いて コウノトリが留まったり、子育てを行ったりして利用している。図 5 は人工巣塔の一例で ある。 図 5. 人工巣塔 出所:豊岡市森津地区にて筆者撮影(2008 年 10 月 2 日) 人工巣塔にはコウノトリの絵が描かれているわけでは無いため、コウノトリを用いた 景観要素ではない。また、人工物の設置は自然環境の整備ともいえない。この人工巣塔に ついて、設置年、設置者、出資者、様式について整理を行った。その結果をまとめたもの が表 2 である。表 2. 人工巣塔設置年表 年度 西暦 人工巣塔関連出来事 設置者 出資者 様式 S34 1959 百合地 人工巣塔・餌場の設置 但馬コウノトリ保存会 H14 2002 祥雲寺 人工巣塔設置 豊岡市 豊岡ロータリークラブ、豊岡円山川ロータリー(寄付) 擬木型 百合地 人工巣塔設置 兵庫県 コウノトリファンクラブ 擬木型 三江 人工巣塔設置 豊岡市 但馬銀行(寄付) 擬木型 河谷 人工巣塔設置 兵庫県 コウノトリファンクラブ 擬木型 三木 人工巣塔設置 兵庫県 コウノトリファンクラブ 地上12m、地下3m(木材) 赤石 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 山本 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 小坂 人工巣塔設置 豊岡市 小坂地区区長会・小坂小学校PTA(巣台)、関西電力(寄付) 無装飾型 田鶴野 人工巣塔設置 豊岡市 第一生命(寄付) 擬木型 福田 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 袴狭 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 中川 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 戸島 人工巣塔設置 豊岡市 城崎町商工会青年部OB会(寄付) 擬木型 香住 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 伊豆 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 唐川 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 擬木型 来日 人工巣塔設置 兵庫県 兵庫県 立木使用型 H17 2006 H18 2007 H19 2008 出所:豊岡市コウノトリ共生課内部資料を元に筆者作成。 18 基のうち 16 基は、コウノトリが放鳥された 2005 年以降に設置されたものである。 その中でも特に 2007 年、2008 年に集中している。設置者は豊岡市、兵庫県のいずれかだ が、設置資金は行政の出資だけではなく、市民団体や民間企業の寄付金によるものもある。 寄付が行われると新聞や豊岡市のウェブページを通じて報道されている。また、人工巣塔 の設置は、巣台に載せる枝などの材料を用意し、設置を手伝う地域イベントになっている。 イベントには周辺住民やコウノトリ愛好家が参加している。 このように人工巣塔の設置は、設置資金の寄付や、設置時のイベントをもたらすため 話題性がある。 こうした人工巣塔の設置場所は、推進計画において参照されてきた絶滅以前の営巣場 所とは異なっている(図 6)。絶滅以前の営巣場所は山縁部である。その一方で、人工巣 塔の多くは平地、特に水田の中に設置されている。平地に建てられた人工巣塔によって、 広い範囲からコウノトリが営巣する様子を見ることができるようになった。これは「コウ ノトリのいる景観」を創出していると言えるだろう。 山縁部に人工巣塔が設置されていない理由は、設置時に必要なクレーンの進入ができ ないためであるという4。 4豊岡市役所コウノトリ共生課へのヒアリング調査。調査は 2008 年 11 月 10 日に行った。
図 6. 人工巣塔立地場所と明治期の営巣場所比較(2008 年 11 月現在) 出所:コウノトリ野生復帰推進協議会(2003)を元に筆者作成。
4.2 人工巣塔増加の背景
人工巣塔の設置が野生復帰政策上どのように位置づけられているのかを計画書から考 察する。以下は「コウノトリの郷公園地区整備構想調査報告書」の中で、コウノトリの営 巣地確保に関する記述部分である。 第 4 章 整備方向の検討 4−2(2) 野生復帰コウノトリの「営巣地の確保」については、郷公園隣接エリア 内の林縁部を中心に集落部を含め、赤松の高木の個々の状況を把握する。 [……] なお、アカマツへの営巣を期待しつつ、初期の段階においては、念のた め人工巣塔をコウノトリの郷公園ないで北側の水田地区に面した里山の 林縁部などに、いくつか設置することの検討が必要であろう。[……] 「郷の風景の保全・修景」については、地元地域でこのことの意義と方 法についてよく話し合い、理解とコンセンサス形成を図ることが一番大 切である。この場合、適切なアドバイザーの派遣や、基礎的な調査・研 究を行うことも望ましい。 景観保全のための住民の努力とともに、それを支える地域の景観保全 に関する協定締結システム(建築協定等)の導入や、必要な規制や誘導 の検討など、景観行政の強化を進めることが望ましい。 〔豊岡市教育委員会(1997)より引用。〕 営巣場所の整備計画を記載した環境整備の項目では、「人工巣塔」という用語は記載 されていない。赤松林の再生などを主眼した里山林の整備が挙げられ、以下のような記述 がみられる。 (5)保護及び被害対策 ①支障物対策 美しい景観づくりと併せて、障害物としての送電線や電柱、電 線類などに対し、標識等の装着による視認性の向上や電柱の移 設・擬木化、電線の地中化・低層単線化などを図る。 〔コウノトリ野生復帰推進協議会(2003)、34 頁より引用。〕 「人工巣塔」という用語が出てくるのは「コウノトリ野生復帰推進計画骨子に対する意 見・提案と対応方針」の中である。 意見・提案:人工巣塔を設置しビデオカメラや巣の温度湿度計の設置を 行う。 対応方針:営巣木の整備を原則とし、補完的な人工巣塔の設置の必要性 について検討する。 意見・提案:餌場や、人工巣塔を設置した場所は宅地化することを制限 するための一定の環境保護をする必要有り。 対応方針:住民、活動団体、行政等が連携を図る野生復帰推進委員会 (仮称)で協議し、運動展開を図っていく。 〔コウノトリ野生復帰推進協議会(2003)、66 頁より引用。〕 人工巣塔は補完的な役割であり原則は里山林の整備とされていたことが明らかである。 人工巣塔の設置は、過渡的、対処療法的な施策であり、抜本的な問題解決のための施策と しては位置づけられていない。
コウノトリの放鳥開始から 2 年後の 2007 年 2 月に、コウノトリの感電死とみられる事 故が発生する。この出来事は新聞でも報じられ、多くの人々の耳目を集めることとなっ た。 人工巣塔が地域の人々に受け入れられ多く設置されている理由は、以下のようにまとめ ることができる。 まず、人工巣塔は視覚的であることが理由として考えられる。人工巣塔が設置されるこ とは、コウノトリのいる景観を創出することにつながる。この視覚的効果と、人工巣塔の 設置に企業やコウノトリファンクラブが寄付を行うことは無関係ではないだろう。 次に、人工巣塔設置が、環境共生を促進するイベントとして認識されていることである。 さらに、一過性のイベントと異なり、人工巣塔とそこに営巣するコウノトリの姿は持続 的である。日常生活の中でその姿を目にすることができる。 それに加え、コウノトリの感電死を契機として、コウノトリの感電死を防ぐため必要不 可欠なものと認識されていることである。 しかしながら、コウノトリが営巣できる松等の大木が存在しないこと、人間の生活とコ ウノトリに代表される自然が調和していないことの証明ともいえる人工的な巣塔が、以上 のような理由から「コウノトリとの共生」という意味づけに変化していた。
5. おわりに
擬似剥製型の景観要素、人工巣塔は共にコウノトリ野生復帰を支持したいという善意 の結果として景観に現れたものである。しかし、「コウノトリの野生復帰」に象徴される 自然との共生、そしてそれを地域の活力にしようと行われる活動が文化的景観の創出に寄 与するには、人と近い環境でコウノトリが生息している姿が求められるだろう。それは例 えば、コウノトリの生息空間の一部となるような、留まることのできる屋根や建物が設置 されることであるかもしれない。そして、コウノトリの野生復帰に係る一連の、豊岡での 多種にわたる活動が豊岡市固有の文化的景観につながることを地域の人々が認識するべき である。【参考文献】 池田啓 菊地直樹(2002)「コウノトリの野生復帰とその課題(特集 自然環境の再生)」『環境と公 害』 Vol.31、 No.4。 菊地直樹(1999)「エコ・ツーリズムの分析視角に向けて:エコ・ツーリズムにおける『地域住民』と 『自然』の検討を通して」 『環境社会学研究』通 5 号。 菊地直樹(2003)「兵庫県但馬地方における人とコウノトリの関係論:コウノトリをめぐる『ツル』と 『コウノトリ』という語りとのかかわり」 『環境社会学研究』 Vol.9。 菊地直樹(2004)「多元的現実としての生き物:兵庫県但馬地方におけるコウノトリをめぐる『語り』 から」 『ビオストーリー』 Vol.1。 菊地直樹(2005)「コウノトリ野生復帰とエコミュージアム (特集 エコミュージアム)」 『地理』 Vol.50、 No.12 。 菊地直樹(2006)「コウノトリの野生復帰を支える新たな農業の展開 (生物多様性と 21 世紀の日本農 業):(生物多様性と共存する今後のわが国農業)」 『農業と経済』Vol.72、No.14。 コウノトリ野生復帰推進協議会(2003)『コウノトリ野生復帰推進計画「コウノトリと共生する地域づ くりをめざして」』。 国土交通省 国土交通政策研究所(2005)「ソーシャル・キャピタルは地域の経済成長を高めるか?:都 道府県データによる実証分析」 『国土交通政策研究』 第 61 号。 滝波章弘(2005)『遠い風景:ツーリズムの視線』京都大学学術出版会。 但馬県民局(2008)『コウノトリファンクラブ 春の号』 Vol.14。 豊岡市(2007)「豊岡市環境基本計画」。 豊岡市教育委員会(1997)「コウノトリの郷公園地区整備構想(素案)調査報告書」。 豊岡市史編纂委員会(1981)『豊岡市史』 上下巻 資料編上下巻。 内藤和明 菊地直樹 池田啓(2004) 「コウノトリの野生化に向けた取り組みと施策の展開」 『農村計 画学会誌 』Vol.23、 No.3。 内藤和明 (2004)「自然と共存する農業 コウノトリを支える農業」『農業と経済』 Vol.70、No.1。 中嶋奈緒(2007)「コウノトリを利用したエコツーリズムが観光客の自然保護意識と地域経済に与える 影響」 コウノトリ野生復帰学術研究補助制度平成 19 年度報告書。 兵庫県但馬県民局地域振興部豊岡農業改良普及センター(2008)『おいしく安全なお米と生きものを同 時に育むコウノトリ育む農法:コシヒカリ編』 兵庫県立コウノトリの郷公園(2003)「コウノトリ歴史資料収集整理等事業報告書」。 本田裕子 山路 永司(2006)「農業者の視点からみた野生生物保護 :豊岡市コウノトリの野生復帰を事 例に」 『農村計画学会誌』 Vol.24、No.4。 本田裕子(2006)「農業従事別によるコウノトリ放鳥の捉え方の違い:兵庫県豊岡市における放鳥直後 のアンケート調査から」 『農村計画学会誌』 Vol.25。 本田裕子(2008)『野生復帰されるコウノトリとの共生を考える:『強いられた共生』から『地域のも の』へ』 原人舎。 松原隆一郎(2002)『失われた景観:戦後日本が築いたもの』 PHP 新書。 松原隆一郎 荒山正彦 佐藤健二 若林幹夫 安彦一恵(2004)『〈景観〉を再考する』 青弓社。
The Effect of Rare Species Protection Policy on Local Landscape
A Case Study in Stork, Toyooka City
Maiko KISHINO
Graduate School of Policy Studies Kwansei Gakuin University
Abstract:
Recently it has been said that biodiversity is important for the sustainability of humanity and the ecosystem. That is why, there are more policies about protections of wild animals as in Japan.
This study is focused on Toyooka City, which has promoted The Reintroduction of the Oriental White Stork Plan. It aimed to return the stork to the wild and create an environment in which storks can live together with humans. It brought out various policies: industrial, tourism, and agriculture.
This study aims to analyze appearance effects on landscape and urban design, when those policies, such as the wild animals’ protection and artificial breeding, have been proceeded. Since the movements of reintroduction have been famous, increased the number of not only facilities for wild storks, biotope paddy fields, artificial nest towers, but also the number of icons stork in the landscape has increased. This study will reveal that the artificial nest towers were not planned in the
Reintroduction plan. The artificial nest towers colored brown has the nest holder with its top. From the viewpoint of landscape design, telegraph poles should be hidden to make for a beautiful rural
landscape. However, the towers were accepted, because they have roles for the activities for the reintroduction by citizens, which made several factors. The first is that those are made by a
contribution from citizens and fans. The second is that building towers was needed to prevent storks form being electrocuted.