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短材の積層とだぼで構成した木造壁パネルの力学特性 [ PDF

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Academic year: 2021

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短材の積層とだぼで構成した木造壁パネルの力学特性

白浜 京子 1. 研究の背景と目的 今現在,地球上の限られた資源や環境を守るために, 先進国を筆頭に様々な試みや研究が行われている.エ ネルギー問題を解決するシェールガスの発掘や,省資 源で長寿命な LED 照明の開発など,次世代の私たちの 生活を一変させるようなものが次々と生まれてきてい る.建設産業においては,使用する資源や産業廃棄物 排出量が他の業種より非常に多いからこそ,小さな開 発が大きな省資源・省エネルギーに繋がる可能性があ ると言えるだろう. 日本では古来より木造建築が主流であり,木を多く 消費してきた.建設リサイクル法でリサイクルが推進 されているが,木材に関しては縮減やサーマルリサイ クルが多いのが現状である.木造建築の解体で得られ る木材は,表面の劣化や欠損があり,短材として再利 用できる方法が求められる.短材であっても構造材と して有効活用できたら,木材の再利用の幅が広がると 考えられる.このような観点から,本研究では,木造 建築の解体等で得られた材を短材として再利用し,だ ぼで補強をした耐力壁を提案することで,省資源で地 震に強い木造建築物を作る一助になること目指してい る. 2. 既報で提案した耐力壁 建築の解体等で得られる材を短材として再利用する ことを想定し,80×80×240mm と 80×80×80mm の木片 を主に用いた.排出される建築解体材の,使用できな い部分を切除した後の小さくなった木片を再利用でき るように工夫した.まずは試験体 181(写真 1)を提案し た.文献 1)に基づき,静的水平載荷実験を行った.そ の結果を踏まえ,施工性を改善するために枠材を追加 したものが試験体 182(写真 2)である.これら 2 つの試 験体の力学特性値を比較したものが表 1 で,包絡線を 比較したものが図 1 である.試験体 182 の力学特性値 は,変形角が 1/75rad.を超える領域では水平耐力が試 験体 181 の値を下回ったが,初期剛性にはやや増加が 見られた. 3. 本研究で提案する耐力壁 3.1 本研究で提案する耐力壁 既報の結果から,提案する耐力壁には剛性が十分で ないことがわかった.本研究では,剛性と壁倍率を上 げるために,ビスとボルトの数をパラメータとして要 素実験を行い,どの機構がどのような効果を壁にもた らすかを検証した.既報から引き続き,構造材として は利用しにくい短材を使用することを想定した. 3.2 既報で提案した耐力壁からの改良点 大きな改良点は,だぼを使用した点である.本研究 で提案する耐力壁は,短材である木材(90×90×720mm) を , そ の 内 部 に だ ぼ ( 断 面 30 × 30mm , 圧 縮 強 度 80.8N/mm2)を挿入しながら積層し構成する.だぼは一 つの試験体につき,長さ 115mm,270mm,295mm の ものを 2 本ずつ使用する.それに加え,周囲に固定す るビスの数や軸ボルトの有無の組み合わせが耐力壁の 強度や剛性に及ぼす影響を調べた.そのため試験体は それらをパラメータとする 3 体(WE1,WE2,WE3)を 写真 2 試験体 182 写真 1 試験体 181 図 1 試験体 181 と 182 の包絡線比較 表 1 試験体 181 と 182 の力学特性値比較

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63-2 表 2 各試験体のパラメータ 用意した. 今回提案する耐力壁は,外力が加わると,木片同士 の間に摩擦力や潰しあう力が生じる.これらの力によ る滑りやめり込みによって,地震による外力のエネル ギーを壁全体で吸収することを想定している. 4.実験の概要 4.1 試験体の概要 パラメータを設定(表 2)し,4 種類の試験体を用意 して施工性の確認と基本的な力学特性を調べた.試験 体となる耐力壁の形状としては,以下のようにした. (1)軸組寸法:幅 ― 825mm,高さ ― 825mm (2)木材:樹種 ― スギ(圧縮強度 30.3N/mm2) 断面寸法 ― 柱,土台:105mm×105mm 梁:幅 105mm×せい 105mm. (3)仕口:ほぞとし,ほぞに 2 本の N90 打ち. WEH4 のみ,梁せいは 180mm とした. WE3 と WEH4 のパラメータは同じである. 4.2 試験体の製作 最初に,壁体内部を組み上げ(写真 3),軸組にビスで 固定した.耐力壁 WE3 と WEH4 に使用したボルトは M12 であり,そのボルトを通すために,部材には直径 16mm の穴を空けた.柱と梁,柱と土台は引き寄せ金 物で固定した.使用したのは「性能認定 S10A01-2 短 期許容引張耐力 28.7kN(財)日本住宅・木材技術センタ ー/ビスどめホールダウン U25」(株式会社タナカ製)で ある.対角圧縮試験をした WE1,WE2,WE3 は,載 荷する際に,試験体の一部を斜め 45 度方向に切り落と している為(図 3),その部分には引寄せ金物は設置して いない.WEH4 のみ,土台を試験機に固定するボルト (M16)を通すために 3 箇所直径 18mm の穴を空けた. 4.3 試験方法 提案する耐力壁の力学的挙動を把握するため,WE1, WE2,WE3 には対角圧縮試験を行った. WEH4 は, 既報と同様に文献1)に基づいて,静的水平載荷試験(無 載荷式の柱脚固定式)を行った. (1)加力方法 ①対角圧縮試験では,加力は正方向のみの載荷と除荷 の繰り返しとした.静的水平載荷試験では,正負交番 繰り返し加力とした. ②見かけのせん断変形角が 1/450,1/300,1/200,1/150, 1/100,1/75,1/50,1/30,1/20rad.になるまで加力した. ③繰り返し回数は,対角圧縮試験では履歴の同一変形 段階で 2 回とし,静的水平載荷試験では 3 回とした. (2)変形の測定 (a)対角圧縮試験 図 3 に示すように片面 6 箇所ずつ,両面で計 12 箇所 に相対変位計を取り付けた.変位計はすべて軸心に取 り付けた.2 本の引寄せボルトのひずみも計測した. WE3 には軸ボルトの張力を計測するためにロードセル を設置した. 試験体 ビス(本) 軸ボルト(本) WE 1(図 2) 32 0 WE 2(図 2) 64 0 WE 3(図 3) 32 1 WEH4(図 4) 32 1 図 3 対角圧縮試験の概要図(試験体 WE3) 図 4 静的水平載荷試験の概要図(試験体 WEH4) 写真 4 試験体 WE1 の載荷中の様子 写真 5 試験体 WEH4 の載荷中の様子 写真 3 壁体内部のだぼの様子 図 2 試験体 WE1,WE2

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63-3 図 5 WE3 の荷重と変形角の関係 図 6 WEH4 の荷重と変形角の関係 図 9 WEH4 の曲げ変形の割合 図 10 WHE4 の曲げ剛性の変化 図 8 各試験体の最大曲げ変形比較 図 7 3 試験体の包絡線比較 表 3 各試験体の力学特性値 (b)静的水平載荷試験 変位測定は,図 4 に示すように,変位計 H1 で梁材の 水平方向変位を,変位計 H2 で土台の水平方向変位を, 変位計 V3,V4 で柱の脚部の鉛直方向変位をそれぞれ 測定した.それらは試験体の手前側と裏側の両面に変 位計を設置し,2 箇所ずつ計測した.変位計は部材の軸 心に取り付けた.それに加え,試験体の裏側には対角 圧縮試験と同様に,相対変位計を 6 箇所取り付けた. 軸ボルトの張力と,壁脚部の引寄せボルト 2 本のひず みも計測した. (3)試験装置 静的水平載荷実験には,油圧ジャッキ,ロードセル, 試験体の水平移動を防止するためのストッパー,試験 体の横倒れを防ぐ倒れ止めサポート等を用いた. 引寄せ金物のボルトは,最初レンチで締めつけて馴 染ませた後に緩め,試験時には手で締めることでボル トに大きな拘束力を与えないこととした.実験中の試 験体の様子を写真 4,5 に示す. 5.実験結果及び考察 5.1 変形角とその他計測値の相関関係 実験により得られた計測値の相関関係を示す.図 5 は,WE3 に与えた鉛直荷重と変形角の関係,図 6 は, WEH4 に 与 え た 水 平 荷 重 と 変 形 角 の 関 係 で あ る . WEH4 は試験中,1/30rad.の正方向載荷から負方向へ移 行する際に,荷重が 0 付近を移動した.図 7 は,対角 圧縮試験をした 3 試験体の包絡線比較である.初期の せん断剛性の値は WE2>WE1>WE3 という順であり, ビスの数が初期のせん断剛性に大きな影響を与えるこ とが分かった.WE1 の方が WE3 よりも初期のせん断 剛性が高かったが,変形角が 1/30rad.を超えると WE3 の方が水平耐力は上回った.また,いずれの試験体も, 変形角が 1/20rad.に至っても剛性低下が小さかった. 図 8 は,全ての試験体の最大曲げ変形の比較である. ビスやボルトの拘束の少ない WE1 が一番曲げ変形が 小さい結果となった.WEH4 は,土台を固定している 為に試験体が大きく拘束されたため,曲げ変形が増大 したと考えられる.図 9 は,その曲げ変形の内訳を示 したものである.土台-梁間(図 4 に示す(A))と土台下 (図 4 に示す(B))の曲げ変形は,同程度の大きさであっ た.また,図 10 は WEH4 の部位別に曲げ剛性の変化 を示したものである.変形角が大きくなった時の剛性 低下は,土台下部分の方が大きいことが観察された. 5.2 壁体の力学特性値 得られた測定値から,壁体の力学特性値を算出した. 各特性値は表 3 の通りである.また,初期のせん断剛 性は,最大せん断耐力の 0.4 倍の荷重を受ける時点で の割線剛性として算出した. 図 5 試験体 we0301 写真 4 内部木片に空けた ボルト用の穴

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63-4 図 12 WEH4 の荷重と各変形の関係 図 14 WE3 の荷重とボルト張力の関係 図 11 WE3 の荷重と各変形の関係 写真 6 WEH4 載荷中の壁体内部の様子 図 15 WEH4 の荷重とボルト張力の関係 図 13 WE3 と WEH4 のせん断変形角の比較 5.3 対角圧縮試験と静的水平載荷試験の関連性 今回,WE3 と WEH4 に同じパラメータを与えるこ とで,各試験においてどのような関連性が見られるか を検証した.図 11 と図 12 は,2 つの試験体の荷重と 全変形,曲げ変形,せん断変形の関係を示したもので ある.WE3 に比べ,土台に拘束されている WEH4 は, 曲げ変形の割合が大きい分,せん断変形の割合が小さ いことが分かった.また,表 3 からもわかるように, WE3 の方が最大荷重が 1.5 倍以上も大きくなった.こ れは,直角圧縮試験だと試験体の軸方向にも分力が加 わり,かつ今回はせん断耐力に長けるだぼを活用した ためと考察される. 試験体 WE3 及び WEH4 の荷重とボルト張力の関係 を図 14,15 に示す.WEH4 では,変形角が 0 付近を 通過する際にはボルト張力が低下するが,変形角が増 すにつれて最初に与えた張力と同程度まで回復した. WE3 では,変形角 3%rad.までボルト張力は低下を見 せたが,それ以降は徐々に増大していった. 5.4 載荷中と載荷後の試験体の状況 試験体 WEH4 の載荷中,写真 6 のように壁体内部の 木片がずれながら水平力に耐えているのが観察された. 変形角が 2%rad.を超えたあたりから,壁体から木同士 がこすれ合う音が増え,次第に破裂音のような音も聞 こえた.5%を超える大きな変形角を与えたものの,い ずれの試験体もほぼ原形を保ったままであり,大きな 破損などは見られなかった. 5.5 試験体のせん断変形に関する考察 WE3 と WEH4 のせん断変形角を比較したものが図 13 である.WE3 の方には軸力がかかっているが,せ ん断変形角にはその影響はあまり見られず,どちらの 試験体も同様の挙動を示した.このことから,この種 の試験体に対角圧縮試験をすることで,静的水平載荷 試験を行った場合のせん断剛性を概ね評価できると 考えられる. 6.まとめ 本研究で得られた知見を以下に記す. (1) ビスの数は,木造壁パネルの初期剛性と水平耐力, せん断変形に大きく影響する.軸ボルトは初期剛性に はあまり影響を与えないが,大変形時に水平力に対す る抵抗力を発揮する. (2)対角圧縮試験で得られたせん断力―せん断変形角 関係は,同じ仕様の試験体の静的水平載荷試験で得ら れたせん断力―せん断変形角関係に近く,対角圧縮試 験でかかる軸方向力の影響はあまり見られなかった. (3)提案する試験体の曲げ剛性とせん断剛性の,載荷の 進行に伴う変化を把握することができた. 謝辞 本研究の遂行にあたり,文部科学省科学研究費補助金 (基盤研究(B),課題番号:23360249,研究者代表:山口謙 太郎)の助成を受けました.また,冨士産業株式会社代表 取締役の塚本要二郎氏には多大なるご助力を賜りまし た.末尾ながら記して御礼申し上げます. 参考文献 1)財団法人日本住宅・木材技術センター:木造軸組工法住 宅の許容応力度設計 2008 年度版

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