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トリップチェイン選択を内生化したネットワーク均衡モデル*

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Academic year: 2022

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(1)

トリップチェイン選択を内生化したネットワーク均衡モデル*

Incorporating Trip Chaining Behavior in Network Equilibrium Analysis*

Version, 2004/5/6, 8:13 PM 計画学春大会草々稿& PTRC日本語原稿 円山 琢也**

By Takuya MARUYAMA**

1. はじめに

都 市 圏 レ ベ ル の 中 長 期 の 交 通 需 要 予 測 に 適 し た 手法として,マルチクラス統合需要型ネットワーク 均衡モデルの研究が進められている(e.g. Boyce and Bar-Gera1 ))が,その多くはトリップを分析単位とし ている.このことは,例えば,

問題 1) 目的地選択モデルを内生化したモデルで,

勤務地が変化した場合に帰宅トリップも変化す る構造になっていない

問題 2) 手段選択モデルを内生化したモデルで,通 勤手段が変更した場合に,帰宅トリップの手段も 変化する構造になっていない

という課題があり,需要予測・便益評価に系統的な バイアスを生じさせる恐れがある.これらの問題意 識のもと,本研究はトリップチェイン選択の概念を 導入した最も基本的と考えられるネットワーク均衡 モデルを提案する.このモデルは,等価最適化問題 に変換可能で,実都市圏への適用性も高いことが示 される.また,そのモデルの拡張形式を提示する.

提案するモデルは,シンプルで操作性も高いモデル であるが,筆者の知る限り,既存研究での展開例は 見当たらない.

2. 問題意識

ネットワーク均衡モデルの構築・拡張においては,

モデルの論理整合性が強く意識されてきた.モデル 内部の整合性の欠如は,便益評価,政策感度などに 影響を与えうることが,既存研究2 )で実証的に示さ れており,特に都市圏の中長期の将来交通需要予測 モデルの構築では,システム全体の整合性を意識す ることが重要と考えられる.

さて,ネットワーク均衡モデルの一種である分布 配分統合モデルには,両側制約型と片側制約型の 2 種類がある.表1は,これらの特徴をまとめている.

Boyce and Bar-Gera1)による統合モデルのレビューで は,両側制約型の適用事例が多いが,このモデルは 行動論的根拠が明快でないという問題がある.片側 制約型の場合は,目的地選択モデルとして解釈が可 能で,行動論的整合性の面で望ましいと考えられる.

ただし,この場合,帰宅トリップをどのように扱う のかが問題となる.帰宅目的の目的地選択モデルと いうのは,奇妙なモデルといえよう.

最近,PT 調査における都市圏交通需要予測モデ ルで分布レベルに目的地選択モデルを用いる場合も 多い.この場合,帰宅トリップについては,通勤等 のトリップの裏返しとして設定する,あるいは,ト リップ目的別に帰宅率を設定する例が見られる.こ の設定では,帰宅目的の経路選択行動によって所要 時間が変化するという現象の影響の表現が完全とは いえない.

また,観光地の周遊行動のモデル化などでは,逐 次型の意思決定構造を仮定し,目的地選択モデルを 連続的に適用する例も数多く見られるが,この場合 もモデル全体の整合性が完全とはいえない.

本稿ではトリップチェインの概念を導入し,整合 的なモデルの構築を目指す.トリップチェイン選択 モデルの適用は,行動分析の文脈では数多い.しか し混雑現象との整合性を意識したネットワーク均衡 分析の枠組みでの適用は見当たらない.

表1 分布配分統合モデルの分類と特徴 両側制約型 片側制約型 行動論的根拠 解釈は困難 目的地選択モデル パラメータの推定 容易 ゾーン数によって

は困難 既存の適用例が多

いトリップ目的

勤務-帰宅 トリップ

非業務目的 トリップ モデル構造 安定的 不安定 発生選択モデルと

の統合 困難 容易

*キーワード: ネットワーク交通流, 帰宅トリップ

** 正会員, , 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 (113-8656 東京都文京区本郷7-3-1,

Tel 03-5841-6234, Fax03-5841-8527)

(2)

3. 分布配分統合型モデル

理 解 の 容 易 の た め 最 も 単 純 な モ デ ル か ら 示 し て いこう.まず,問題1)の解決を意図したピストン型 トリップチェイン分布配分統合モデルを提示しよう.

各 ゾ ー ン か ら の 発 生 交 通 量 の み が 与 え ら れ て い るとする.そして,これらの発生交通はすべて単一 手段ネットワーク上でピストン型のトリップチェイ ンを形成しているとしよう.この場合,利用者は,

起点から中継地を経由して起点に戻ってくる往復の 交通費用を基にトリップチェインの選択行動をとる.

また,ネットワーク上では混雑が発生し,往路,復 路 そ れ ぞ れ で 利 用 者 均 衡 状 態 が 成 立 す る と 考 え る (図1).利用者は,ピストン型のトリップチェインの 選択と往路・復路それぞれの経路の選択の3次元の 選択行動を行うことになる.

(1) 定式化

ここで,次のような最適化問題を考えてみよう.

0

min. ( ( ), , ) xa a( ) 1 rsln

a rs

rs r

Z t ω ωd h h O

=

∑ ∫

x f q h (1)

subject to

(2)

rs r,

s

h =O

r

s s

(3)

, ,

rs rs sr

q =h +hr

(4) , ,

rs

k rs

k

f =qr

, , ,

rs rs,

a a k k

r s k

x =

δ f a (5) (6)

0, rs 0, 0, 0

a k rs rs

xfqh ≥ where

Or : ゾーンrからの発生交通量 qrs : ODペアrs間OD交通量

hrs : ピストン型トリップチェイン rs交通量

rs

fk : ODペアrsk番目経路交通量 xa : リンクaの交通量

a( )a

t x : リンクaのリンクコスト関数

, rs

δa k : リンク経路接続行列 θ : パラメータ

ここで,トリップチェインrsとは,起点rを発し,

sを中継するものと定義する.また,点rsペアを起 点・中継点ペアとする交通量のうち,r から s に向 かうものを rs 間 OD 交通量 と定義している.こ の は,具体的には,式(3)で,トリップチェイン rsの往路交通量とトリップチェインsrの復路交通量 の和で与えられる(図2).

qrs

qrs

さて,この問題のLagrange関数を

(7)

{

( )

}

r r rs

r s

rs

rs rs rs sr rs rs k

rs rs k

L Z O h

q h h q f

λ

µ γ

⎛ ⎞

= + ⎜ − ⎟+

⎝ ⎠

⎛ ⎞

− + + ⎜ − ⎟

⎝ ⎠

∑ ∑

∑ ∑ ∑

とおくと,

rs rs

rs

L

q µ γ

∂ = +

∂ (8)

{ }

1 1 ln( rs r) r rs sr

rs

L h O

h λ µ µ

θ

∂ = + − − −

∂ (9)

rs

k rs

rs k

L c

f γ

∂ = −

krs a( )a a krs,

a

c =

t x δ

, (10)

となる.c をODペアrsk番目経路コストとする.

とすると,一階条件は,

rs k

0, 0

rs rs

h > q >

0, 0, krs rs 0, rs 0

rs rs k k

L L f L L

q h f f

∂ = ∂ = ∂ = ∂

∂ ∂ ∂ ∂ ≥

0

(11) であり,これらから,

( ) 0,

rs rs rs

k k rs k rs

f cc = cc ≥ (12) exp{ ( )}

exp{ ( )}

rs sr

rs r

rs sr

s

c c

h O

c c

θ θ

− +

=

− + (13)

が導ける.ここで,crs(=µrs)をODペアrs間の最小 経路コストとする.式(12)は,トリップチェイン rs の往路およびトリップチェイン sr の復路の利用者 均衡条件である.式(13)は,起点rから中継地sを経 由して起点 rに戻ってくる往復の交通費用を基に,

トリップチェインの選択がロジットモデルで表現さ れることを意味している.従って,式(1)-(6)の問題 は,以上のようなトリップチェイン選択内生型のネ ットワーク均衡モデルと等価であることが証明され

起点 中継点 た.

中継点の代替案

均衡

リンク交通量 リンク所要時間 利 用 者 の ト リ ッ プ チ ェ

インと経路の選択行動

ネ ッ ト ワ ー ク 上 での混雑現象

図1 モデルの全体構造

r

s

図2 変数間の関係 hrs

hsr

(3)

既存の分布配分統合モデルと比較すると,目的関 数 式(1)の第2項と,制約条件 式(3)がわずかに変更 されているのみであることがわかる.また,中継地 に固有の魅力度Msを考慮する場合は,目的関数の第 3項として, s rs

sM h

を付加すればよい.

また,エントロピー関数の性質から の一意性が 証明できる. であるから, も一意にな る.また,通常の利用者均衡モデルと同様に

hrs

rs rs sr

q =h +h qrs

rs

fk は必 ずしも一意でないが,xaは一意になる.

(2) 解法

通 常 の 分 布 配 分 統 合 モ デ ル と 同 様 に 部 分 線 形 化 法が有効である.以下,簡単に記述する.

Step 0: 初期許容解の設定.X(1)={x(1), q(1), h(1)} Step 1: リンクコストの更新ta =t xa( a( )n), a Step 2: 方向探索

(a) { }をもとに OD ペア間の最小経路を探索し,

最小コスト{ }を求める.

ta

crs

(b) 式(13)よりトリップ チェイン交 通量の補助 変 数{hsub}を求め,式(3)よりOD交通量の補助変数 {qsub }を求める.

(c) {qsub }を(1)で求めた最小経路に流し,リンク交 通量の補助変数{xsub}を得る.

Step 3: 以下の1次元探索によりステップサイズαを 求める.ここでY={xsub, qsub, hsub}とする.

1 0 . . )), (

( .

min Z X(n)YX(n) st ≤α ≤ Step 3: 解の更新.X(n+1) =X(n)+α(YX(n))

Step 4: 収束していれば終了.そうでなければ,n=n+1 としてStep1へ.

既 存 の 統 合 需 要 型 モ デ ル の 解 法 を わ ず か に 修 正 するだけで利用でき,大規模都市圏にも適用可能で ある.なお,最近発表されたBar-Gera and Boyce3 )に よるOrigin-basedアルゴリズムも有効と考えられる.

4. 分担配分統合型モデル

次に問題2)の解決を意図したピストン型トリップ チェイン分担配分統合モデルを提示しよう.ここで は,手段合計のピストン型トリップチェイン交通量 が所与とする.mを手段を示す添え字として,次の

最適化問題を考えてみよう.

0 ,

min . ( , , ) ( ) 1 ln

am

x m m

a rs

a rs m

m

rs rs

Z t ω ωd h h h

=

∑ ∫

x q h (14)

subject to

, ,

m

rs rs

m

h =hr s

(15)

(16) , , ,

m m m

rs rs sr

q =h +hr s m

, , , ,

rs m

m k rs

k

f =qr s m

(17)

, , ,

, ,

, ,

m rs rs

a m a k m k

r s k

x =

δ fma (18) (19) 0, , 0, 0, 0

m rs m

a m k rs rs

xfhh

前章と同様に一階条件を求めると,手段別の利用者 均衡条件と,手段選択ロジットモデル

exp{ ( )}

exp{ ( )}

m m

m rs sr

rs rs m m

rs sr

m

c c

h h

c c

θ θ

− +

=

− + (20)

が導け,トリップチェイン型分担配分統合モデルと の等価性が証明できる.

以上のモデルは,マルチクラス型への展開,経路 選択の確率化,分布分担配分統合型への拡張,トリ ップチェインそのものの発生選択との統合,時間帯 別のモデル化などの拡張も容易である.居住地選択 と組み合わせた立地均衡モデルなどへの応用も有効 であろう.

ト リ ッ プ チ ェ イ ン の 種 類 を ピ ス ト ン 型 の み と 限 定している点についての拡張を以下に示す.ただ,

都市圏の日常的交通はピストン型行動が大多数であ り,以上で示したピストン型基本モデルの価値は高 いと考える.

5. 拡張

ピストン型のみならず,一般のトリップチェイン 選択を考慮することを考えよう.単一手段ネットワ ークで各ゾーンからの発生交通量のみが与えられて いるとする.そして,これらの発生交通はすべてト リップチェインを形成しているとしよう.

トリップチェイン を,それに含まれる起点c c0, 中 継 点c1,c2,…,cnと し て , 訪 問 順 序 に 従 い ,

と表現して区別しよう.これらト リップチェインの選択肢集合は既に抽出されている ものと考える.そして,以下の最適化問題を考える.

0 1 2 0

{ , , , n, } c= c c c "c c

0

min. ( , , ) xa a( ) 1 pcln

a pc pc p

Z t ω ωd h h O

=

∑ ∫

x q h (21)

(4)

subject to

p (22)

rs

rs pc pc

pc

q =

h η ∀r

s (24)

pc p,

c

h =O

,s (23)

, , ,

rs

k rs

k

f =qr

, , ,

rs rs,

a a k k

r s k

x =

δ fa

rs

a k rs pc

xfqh

ここで, は起点p発のトリップチェインcの交通 と定義しなおしている.また,

(25)

≥0 (26)

0, 0, 0, hpc

量 ηrspc

ェインの総交

表現される.この問題のLagran

⎧ − ⎫+ ⎛ − ⎞

⎨ ⎬ ⎜ ⎟

⎝ ⎠

⎩ ⎭

∑ ∑

∑ ∑ ∑ ∑

(28)

とおくと,

,起点p発の トリップチェインcに,ODペアrsが含まれるとき (つまりc={ , , , }" r s" であるとき) 1 それ以外では,

0 をとる行列である.この接続行列を用いると,ト リップチ 通費用は,

, ,

rs

pc rs pc

rs

c =

c η ∀r s (27)

と ge関数を

p p pc

pc

⎝ ⎠

rs rs

rs rs pc pc rs rs k

rs pc rs k

L Z O h

q h q f

λ

µ η γ

⎛ ⎞

= + − +

rs rs

rs

L

q µ γ

∂ = +

∂ (29)

{ }

1 1 ln( pc p) rs

pc

L h O

h p rs rs pc

λ −

µ η (30) θ

∂ = + −

rs

k r

rs k

L c

f γ s

∂ = −

∂ (31)

なる. したがって,hpc > q 条件は,

rs

k k rs = ckcrs

と 0, rs >0とすると,一階

( ) 0

rs rs

f cc 0, (32)

exp( )

exp( )

pc

pc p

pc c

h O c

c θ

θ

= −

(33)

なる.ここで

crs(=µrs)をODペア

コストとして,式(27)を用いている.したがって,

,利用

ことはないと考えている.こ の

rs間の最小経路

前章までと同様に 者均衡条件と,トリップチ ェイン選択ロジットモデルを統合したモデルとの等 価性が証明できる.

なお,以上では,あるトリップチェインで,同一 地点へ複数回訪問する

仮定を緩和し,Cyclic なトリップチェインの存在 を考慮する場合には,ηrspcの定義を,起点 p発のトリ ップチェインcに,ODペアrsn回含まれるとき n,それ以外では,0をとると変更すれば対応できる.

また,

rs 1 if pc rs or pc sr

η = = = (34)

pc 0

otherwise

⎨⎩

3.のモデルと等しくな 3.の一般形となっている とおけば,以上のモデルは,

るから,本章のモデルは,

こともわかる.

ちなみに,θ→ ∞とおき,すべての中継点を 1回 通過するトリップチェインを全て抽出することを想

モ デ

本研究は,トリップチェイン選択を内生化したネ ットワーク均衡モデルをいくつか提案した.ピスト

最適コードンプライシング設定や,

謝辞: 東京大学大学院 原田昇教授のご助言に感謝いたします.

課題番号 6760421]の補助を受けています.

ulticlass combined models for urban travel forecasting, Networks and Spatial Economics,

1, pp. 115-124, 2004.

2003.

Part B, Vol. 37, No. 5, pp. 405–422, 2003.

定 す る と , 本 ル は 巡 回 セ ー ル ス マ ン 問 題 (Traveling Salesman Problem)に類似した問題になる.

本 モ デ ル に つ い て 実 都 市 圏 で の パ ラ メ ー タ の 推 定,トリップチェインの抽出法などは,今後の課題 なる.その際,同一の中継点を含むトリップチェ イン選択肢間の効用には強い相関が生じると考えら れ,それらを考慮する GEV モデル系への展開も望 ましいであろう.この場合でも,最適化問題の変換 可能性に問題は生じないと予想される.

6. 結語

ン型のモデルは,既存のモデルをわずかに変更する ことで導かれ,シンプルでかつ論理整合性・操作性 が高く,実都市圏への適用において威力を発揮する と考えられる.また,ランダム効用理論の枠内での モデル化であるので,整合的な便益評価への展開が 可能である.

本モデルの特徴を生かすことにより,復路の交通 量の影響も考えた

手段補完性を考慮した交通市場分析などが可能と予 想され,研究の発展性も高いと思われる.

また,本研究は,文部科学省科学研究費 若手研究(B)[

1

1) Boyce, D. and Bar-Gera, H.: M 参考文献

Vol. 4, No.

2) 円山琢 也, 原田 昇, 太田 勝敏: 誘発 交 通を 考慮 した 混 雑地域における道路整備の利用者便益推定, 土木学会論 文集, No. 744/IV-61, pp. 123-137,

3) Bar-Gera, H. and Boyce, D.: Origin-based algorithms for combined travel forecasting models, Transportation Research

参照

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