第4章では、信頼度監視制御の一つである電圧無効電力制御の手法について の検討を行う。電圧無効電力制御の問題は、目的関数および制約条件が非線形 方程式で表されるため、従来非線形計画法が用いられてきた。しかし、電圧無 効電力制御をオンラインで実施するためには、非線形計画法の解と同等の高精 度な解を高速で解く必要がある。非線形計画法は計算時間を要し、当時研究・
開発されていた線形計画法を用いた手法は高速ではあるが計算誤差を含むとい う難点があった。本章では、線形計画法の優位点を活かし、かつ高精度の解を 求めるために、線形計画法を用いた新しい手法を開発したのでそれを紹介する。
まず、電圧無効電力制御の目的関数、制約条件を定式し、それを直角座標を用 いて線形化することにより、線形計画法を反復して解くことで高精度の解が得 られることを示す。さらに、線形計画法を高速に解くためには、線形計画問題 の主問題の反復による解法より双対問題による反復による解法が優位であるこ とを述べる。例題系統に対して、双対問題による反復による解法を実施した結 果、非線形計画法と同等の精度の解が得られ、かつ計算時間が高速であること を確認した。提案法はオンライン無効電力制御に適した手法である。
4.1 電圧無効電力制御手法の開発の背景
電力系統における電圧無効電力制御の最適化問題は、制約条件および評価関数 とも非線形関数となるため、従来非線形計画法を用いて解決されてきた[4-1]-[4-6]。 またこれに加えて、問題を線形化し線形計画法(LP)を用いる手法が研究さ
れている[4-8]-[4-13]。LPは収束性、計算速度の点で非線形計画法より優れた利点
をもち、オンライン電圧無効電力制御に適しているが、非線形計画法に比べて 線形化の誤差を含むという難点がある。
本章では、LPの優位点を活かし、かつ非線形計画法と同等の高精度な解を求 めるための、反復LPを用いた新しい手法を提案する。提案法は、線形化の誤 差を含むという従来のLPの難点を解消し、しかも収束特性、計算速度に優れ たLPの利点を活かした手法である。つまり、直角座標を用いた定式化を行う ことによって非線形の制約条件を厳密に満足すること、更に計算速度において
優れていることが提案法の特徴である。
本章の概要は、まず4.2において提案法の定式化を行い、4.3では提案法 の高速アルゴリズムを紹介する。4.4のシミュレーション結果において、提 案法の計算精度、計算速度について報告する。
提案法はシミュレーションにおいて良好な結果を得られたので、オンライン電 圧無効電力制御に適した手法であると考えられる。
4.2 電圧無効電力制御問題の定式化
電力系統に注入される有効・無効電力には以下の制約がある。発電機が母線 iに接続しているとき、有効電力および無効電力の注入量Pgi、Qgi について は、
Pgimin ≦ Pgi ≦ Pgimax …(4-1)
Qgimin ≦ Qgi ≦ Qgimax …(4-2)
i=1,2, …,NG NG:発電機数 ただし、max、minは上限、下限を示す。
また、電力用コンデンサ、分路リアクトル、同期調相機などの無効電力制御 機器が母線iに接続しているとき、制御装置の特性により無効電力の注入量Q qiは、
Qqimin ≦ Qqi ≦ Qqimax …(4-3)
i=1,2, …,NQ NQ:無効電力制御装置数
である。ただし、Qqi は(4-3)式の範囲内で連続的に変化できるものとす る。
母線iで負荷が消費する有効電力、および無効電力をPli、Qliとすると、母 線有効電力および母線無効電力Pi、Qiに関して次式が成立する。
Pi =Pgi -Pli …(4-4)
Qi =Qgi +Qqi -Qli …(4-5)
i=1, 2, …,N N:母線数
(4-4)、(4-5)式は(4-1)、(4-2)、(4-3)式より次式のよう に表現される。
Pmin ≦ P ≦ Pmax …(4-6)
Qmin ≦ Q ≦ Qmax …(4-7)
ただし、
P = [ P1, P2, …, PN] t, Q = [ Q1, Q2, …, QN] t また、母線電圧は適正な範囲内になければならない。
Vimin ≦ Vi ≦ Vimax …(4-8)
i=1, 2, …,NV
ただし、NVは母線電圧が適正な範囲内になければならない母線数である。
また、(4-8)式は以下のように表現される。
Vmin ≦ V ≦ Vmax …(4-9)
ただし、
V = [ V1, V2, …, VNV] t
ここで、状態変数をXとすると、(4-6)、(4-7)、(4-9)式は(4-
10)式となる。
Fsmin ≦ F (X) ≦ Fsmax …(4-10)
ただし、
F:XのPQVに対する関数(潮流方程式)
Fsmin = [ Pmin, Qmin, Vmin ] t, Fsmax = [ Pmax, Qmax, Vmax ] t 最小にすべき評価関数を(4-11)式とする。
G = G (X) …(4-11)
(4-10)式を満足し、かつ(4-11)式を最小にするXが最適解である。
ここで、F (X) の非線形性を考慮し、X=Xe+ΔXとして、直角座標を用いて XeでF (X) を展開すると次式となる[4-7]。
F (X) = F (Xe) + JΔX + F (ΔX) …(4-12)
ただし、
J:FのXeにおけるヤコビアン(定数行列)
(4-12)式の展開によって潮流方程式が線形化の誤差を含まずに記述でき ることは文献[4-7]で述べられている。
本章は、(4-12)式の展開を(4-10)式の非線形制約に適用すること により、非線形制約を線形化の誤差を含まずに取り扱うものである。つまり、
(4-10)式は(4-12)式より次式となる。
Fsmin ≦ F (Xe) + JΔX + F (ΔX) ≦ Fsmax …(4-13)
(4-13)式より(4-14)式となる。
Fsmin -F (Xe) -F (ΔX) ≦ JΔX
≦ Fsmax -F (Xe) -F (ΔX) …(4-14)
(4-14)式を反復計算で解くために(4-15)式とする。
Fsmin -F (Xe) -F (ΔX (r)) ≦ JΔX (r+1)
≦ Fsmax -F (Xe) -F (ΔX (r)) …(4-15)
ただし、r, r+1:反復回数
(4-15)式は次式のように表現される。
J’ ΔX (r+1) ≧ B (r) …(4-16)
ただし、
J’ = [ J, -J ] t
B (r) = [Fsmin -F (Xe) -F (ΔX (r)), -Fsmax +F (Xe) +F (ΔX (r)) ] t
…(4-17)
また、(4-11)式より最小にすべき目的関数を(4-18)式とする。
C = K t ・ΔX (r+1) …(4-18)
ただし、
K:GのXeにおけるヤコビアン =定数ベクトル
つまり、(4-10)、(4-11)式は(4-16)、(4-18)式のLP問 題として定式化できる。本章で提案する手法は、(4-10)、(4-11)式の 最適化問題の解を、(4-16)、(4-18)式のLP問題を反復毎に解くこと によって求める手法である。本手法のアルゴリズムの概要を図4-1に示す。
初期推定値Xeより
J(定数行列)、K(定数ベクトル)
を作成する
r =1
B (r)を計算する( (4-17)式 ) r = r + 1
LP問題:
MinimizeC = Kt ・ΔX (r+1) J’ΔX (r+1) ≧ B (r) を解く
X (r+1)= Xe + ΔX (r+1)
│G( X (r+1))-G( X (r)) │<ε
解 Xs = Xe + ΔX (r+1)
LP計算
YES NO
図4-1 本手法のアルゴリズム
本手法から得られた解Xsより以下のようにして発電機および無効電力制御装 置を作動させればよい。つまり、F (Xs) [(4-10)式]を計算し、母線有効電 力Pおよび無効電力Qを求めることによって、(4-4)、(4-5)式より必要 有効・無効電力注入量Pgi、Qgi およびQqi がわかるので、発電機および無効 電力制御装置をそれらの値に設定させればよい。
前述したように、本手法の特徴は(4-12)式の展開を非線形制約に適用 することにより、F (X)の制約[(4-10)式]を厳密に扱うものである。した がって、(4-16)、(4-18)式両式を解くことによって得られる解Xsは、
(4-10)式つまり(4-6)、(4-7)、(4-9)式の制約を厳密に満足 する。つまり、本手法から得られる解Xsは、発電機および無効電力制御装置の 容量制約(4-1)、(4-2)、(4-3)式および母線電圧の制約(4-8)
式を厳密に満足する。
図4-1に示したように、本手法のアルゴリズム中において収束判定には(4
-11)式の評価関数を用いた。本手法では(4-11)式を線形化した目的 関数(4-18)式を用い、各反復においてはその目的関数を最小にする解を LP計算により求めるので、各反復において目的関数の値は最小になる。しか し反復毎に(4-16)式右辺は変化する。つまり、目的関数は変化しないが、
制約不等式が変化するので、目的関数の値は反復毎に減少するとは限らない。
そこで、本手法では収束の有無を判定するために、線形化前の評価関数(4-
11)式を用いた。
また、本手法では初期値Xeの選定には十分な注意が必要である。本手法では LP計算の目的関数(4-18)式の係数ベクトルKは初期値 Xe に左右され、
Kの要素の値はLP計算にかなり影響を与える。特にKはなるべく0要素を含 まないように初期値Xeを選ぶ必要がある。なぜならば、ある状態変数に対応す るKの要素が0のとき、その状態変数はLP計算の中の目的関数最小化の部分 に反映されないからである。
本手法の計算時間は、図4-1の反復計算における破線内のLP計算の計算 時間に依ることは明らかである。そこで4.3では本定式化によって計算の高 速化が可能であることを説明し、提案法の高速アルゴリズムを紹介する。
4.3 提案法の高速アルゴリズム
本定式ではJ’ およびKは定数行列および定数ベクトルであり、この定式化に より高速化が可能となる。つまり、図4-1のLP計算において、(4-16)、
(4-18)式を主問題とするときその双対問題を用いると、後述の理由から 提案法は高速な手法となる。
双対問題を用いると高速化が可能となることを説明するために、まず主問題
を用いる方法(以後それを主問題の反復による解法と呼ぶ)を説明し、次に双 対問題を用いる方法(以後これを双対問題の反復による解法と呼ぶ)を説明し、
主問題の場合と比較する。
4.3.1 主問題の反復による解法
図4-1の破線内のLP計算において2段階法を用いると、主問題の反復に よる解法のアルゴリズムは図4-2(a)となる。
初期推定値Xeより
J(定数行列)、K(定数ベクトル)
を作成する
r =1
B (r)を計算する r = r + 1
B (r)の要素が全て非負になるように 処理を行い、スラック変数、人為変数 を加えて実行可能解を求める
(段階Ⅰ)
X (r+1)= Xe + ΔX (r+1)
│G( X (r+1))-G( X (r)) │<ε
解 Xs = Xe + ΔX (r+1) YES NO
最適解 ΔX (r+1)を求める
(段階Ⅱ)
図4-2(a) 主問題を用いるアルゴリズム
2段解法を用いる理由は、LP問題において2段解法は精度が良く、一般的 であるからである。図4-2(a)の段階Ⅰにおいて、(4-16)式を次の操作に よって(4-21)式の正準形に変換する[4-15]。
まず、B i(r)(B (r)のi番目の要素)が負の場合、B i(r)を正にするために、J’ お よび B (r)の第i番目の要素を全て逆符号にし不等号の向きを変えると(4-1 6)式は次式となる。
J’’ ΔX (r+1) ≧ あるいは ≦ B (r)’ …(4-19)
次にi番目の不等号の向きによって次のようにスラック変数Si あるいは人為 変数λiをi番目の不等式に加える。
≦ の場合 +Si
= の場合 +λi …(4-20)
≧ の場合 -Si+λi ただし、
Si ≧0、λi ≧0
いま、(4-6)、(4-7)、(4-9)式より不等式数は(4×N+2×NV)
個あるので、全部の不等式に対して(4-19)、(4-20)式の操作を行う。
加えられたスラック変数Sおよび人為変数λとΔX (r+1)を状態変数とすると、次 式の正準形となる。
J’’’ Y = B (r)’ …(4-21)
ただし、
Y=[ΔX (r+1), S1, S2, ‥, λ1, λ2, ‥]t
段階Ⅰでは(4-18)式を(4-21)式の正準形に変換した後、実行可 能解を求める。通常のLP問題の実行可能解を求める場合、スラック変数およ び人為変数を最初の基底変数に選ぶが、人為変数を含む場合には全ての人為変
数を基底変数から追い出して実行可能解を求めなければならない。そして段階
Ⅱにおいて最適解ΔX (r+1)を求める。
主問題の反復による解法では、反復毎に(4-16)式右辺の B (r)が変化す るために、実行可能解も反復毎に異なってくるので、反復毎に(4-19)、(4
-21)式の操作を行い新しい実行可能解を求めなければならない。つまり、
主問題の反復による解法では反復毎に段階Ⅰ、段階Ⅱを解かなければならず、
これは反復毎に全く新しいLP問題を解くのと同様であり、かなりの計算時間 を必要とする。
4.3.2 双対問題の反復による解法
(4-16)、(4-18)式を主問題とすると、その双対問題は次式のよう に定義される[4-15]。
A・W(r+1) ≦ K …(4-22)
Z = B(r)t ・W(r+1) → 最大化 …(4-23)
ただし、
A =J’t
W(r+1) :ΔX (r+1)の双対変数
双対問題の反復による解法では、前述の主問題の反復による解法と同様に(4
-22)式を、スラック変数および人為変数を加えることによって正準形に変 換しLP計算を行う。
主問題の反復による解法では(4-6)、(4-7)、(4-9)式より(4-
16)式の制約不等式数は(4×N+2×NV)個、状態変数の数はスラック 母線を含めると(2×N)個であり、
(制約不等式数)>(状態変数の数)
である。この場合にはよく知られているように、双対問題の反復による解法を 用いると主問題の場合より制約不等式数が少なくてすみ、1回の反復における LP計算の計算時間をいくらか短縮できる。
双対問題の反復による解法を用いる大きな利点は、それよりはむしろ、本定 式化の特徴により図4-1の反復計算の計算時間を大幅に短縮できることであ る。本定式化により(4-22)式のAおよびKは一定であるので、1回の反 復で得られた最適解は次の反復の実行可能解でもある。つまり双対問題の反復 による解法では、反復毎に(4-19)~(4-21)式の操作を行い実行可 能解を求める必要はなく、主問題の場合より計算時間が短縮されることである。
結論的に言うと、主問題の反復による解法では、段階Ⅰおよび段階Ⅱの反復過 程を計算しなければならないが、双対問題の反復による解法では、段階Ⅱだけ の反復過程を計算すればよく計算時間が短縮される。
双対問題の反復による解法のアルゴリズムを図4-2(b)に示す。
初期推定値Xeより
J(定数行列)、K(定数ベクトル)
を作成する
r =2
B (r)を計算する r = r + 1
Kの要素が全て非負になるように 処理を行い、スラック変数、人為変数 を加えて実行可能解を求める
(段階Ⅰ)
X (r+1)= Xe + ΔX (r+1)
│G( X (r+1))-G( X (r)) │<ε
解 Xs = Xe + ΔX (r+1) YES NO
最適解 ΔX (r+1)を求める
(段階Ⅱ)
最適解 ΔX (2) を求める
(段階Ⅱ)
B (1) を計算する
図4-2(b) 双対問題を用いるアルゴリズム
図4-2(b)からわかるように、特に前回反復で得られた最適解(次の実行可 能解)が次の反復の最適解とほとんど変わらない場合、この利点は更に有効な ものとなる。
以上より、J’ およびKは定数行列および定数ベクトルであるという本定式化 の特徴を活かした双対問題の反復による解法が、主問題の反復による解法より 計算速度の点で優れていることがわかる。
4.4 シミュレーションによる検証
4.2において本章で述べる提案する手法は制約式を厳密に満足することを 述べ、4.3においては計算速度向上のために、LP計算において双対問題を 用いることを提案した。
本節では、例題系統に提案法を適用し、提案法の有効性を検証する。また、
提案法の計算精度を非線形計画法[4-14]と比較し、提案法の計算精度は十分優れて いることを示す。電圧無効電力制御の評価関数には運用方針や運用状況により 様々な評価関数があるが、本シミュレーションでは、最小にすべき評価関数は 一般的な運用に用いられている系統全体の有効電力損失を用いた。
対象系統として 30 母線系統を用いた。30 母線系統の母線アドミタンス値お よび負荷の有効、無効電力を表4-1および表4-2に示す。
表4-1 母線アドミタンスデータ
実部 虚部 実部 虚部
k m Gkm Bkm k m Gkm Bkm
1 1 6.468 -20.696 12 16 -1.952 4.104
1 2 -5.225 15.647 13 13 0.000 -7.143
1 3 -1.244 5.096 14 14 4.018 -5.424
2 2 9.752 -30.649 14 15 -2.491 2.251
2 4 -1.706 5.197 15 15 9.362 -16.016
2 5 -1.136 4.772 15 18 -1.808 3.691
2 6 -1.686 5.116 15 23 -1.968 3.976
3 3 9.439 -28.602 16 16 3.835 -8.498
3 4 -8.195 23.531 16 17 -1.883 4.394
4 4 16.314 -55.510 17 17 5.839 -14.711
4 6 -6.413 22.311 18 18 4.883 -9.910
4 12 0.000 4.191 18 19 -3.076 6.219
5 5 4.090 -12.191 19 19 8.958 -17.983
5 7 -2.954 7.449 19 20 -5.882 11.765
6 6 22.342 -128.067 20 20 7.667 -15.750
6 7 -3.590 11.062 21 21 21.876 -45.108
6 8 -6.289 22.013 21 22 -16.775 34.128
6 9 0.000 49.159 22 22 21.934 -43.483
6 10 0.000 1.856 22 24 -2.541 3.954
6 28 -4.369 15.462 23 23 3.430 -6.965
7 7 6.544 -18.457 23 24 -1.461 2.989
8 8 7.733 -26.527 24 24 5.312 -9.188
8 28 -1.444 4.541 24 25 -1.310 2.288
9 9 0.000 -61.976 25 25 4.496 -7.865
9 10 0.000 9.091 25 26 -1.217 1.817
9 11 0.000 4.808 25 27 -1.969 3.760
10 10 13.462 -41.384 26 26 1.217 -1.817
10 17 -3.956 10.317 27 27 3.652 -9.301
10 20 -1.785 3.985 27 28 0.000 2.444
10 21 -5.102 10.981 27 29 -0.996 1.881
10 22 -2.619 5.401 27 30 -0.687 1.294
11 11 0.000 -4.808 28 28 5.807 -22.502
12 12 6.574 -24.424 29 29 1.908 -3.604
12 13 0.000 7.143 29 30 -0.912 1.723
12 14 -1.527 3.173 30 30 1.600 -3.017
12 15 -3.095 6.097
母線間 母線間
数値は全てp.u.値
表4-2 負荷データ
母線 有効電力 無効電力 母線 有効電力 無効電力
1 0.000 0.000 16 0.035 0.018
2 0.217 0.127 17 0.090 0.058
3 0.024 0.012 18 0.032 0.009
4 0.076 0.016 19 0.095 0.034
5 0.942 0.190 20 0.022 0.007
6 0.000 0.000 21 0.175 0.112
7 0.228 0.109 22 0.000 0.000
8 0.300 0.300 23 0.032 0.016
9 0.000 0.000 24 0.087 0.067
10 0.058 0.020 25 0.000 0.000
11 0.000 0.000 26 0.035 0.023
12 0.112 0.075 27 0.000 0.000
13 0.000 0.000 28 0.000 0.000
14 0.062 0.016 29 0.024 0.009
15 0.082 0.025 30 0.106 0.019
数値は全てp.u.値
発電機および無効電力制御装置は、母線1、2、5、8、11、13に接続して おり、その有効電力注入量、無効電力注入量の上下限を表4-3に示す。また、
母線1,2,5,8、11、12、13の電圧の上限を1.1 p.u.、下限を0.95 p.u.と し、その他の母線に関しては、上下限値を1.05 p.u.、0.95 p.u.とした。つまり、
主問題[(4-16)式]において制約不等式は132個(そのうちの制約等式数は 48個、状態変数の数は60個)であり、双対問題[(4-22)式]においては制 約不等式数は60個である。
表4-3 発電機と制御装置の容量
下限 上限 下限 上限
1 1.100 1.600 -0.002 0.002 2 0.200 0.450 0.250 0.350 5 0.150 0.450 -0.150 0.200 8 0.100 0.300 -0.100 0.200 11 0.100 0.250 0.150 0.300 13 0.100 0.300 0.050 0.300
母線 有効電力注入量 無効電力注入量
数値は全てp.u.値
また、LP計算には積行列形式の改訂シンプレックス法[4-16]を用いた。その理 由は、積行列形式の改訂シンプレックス法は、種々のLP計算方法の中で記憶 容量、計算精度、計算速度いずれの面においても優れているからである。更に、
本シミュレーションではLP計算において、基底変数の入れ換えが 100 回以上 行われるため、計算誤差を少なくするために倍精度計算を用いた。収束判定基 準はε=0.00001(図4-1、図4-2参照)とした。
Kがなるべく0要素を含まないように初期値Xe を選ぶことが重要であるこ とは4.2で述べたとおりである。本シミュレーションのように有効電力損失 の評価関数においては、初期値Xeにフラットスタートを用いると、Kのほとん どの要素は0となってしまうので、初期値Xeは潮流計算により求めた。その指 定値は、母線1,2,5,8、11、13に関してはPV指定(母線1はスラック 母線とする)とした。有効電力の指定値については、表4-4に示すように、
まず発電機の有効電力注入量を定め、次にそれから負荷を考慮した母線有効電 力を指定値とした。電圧の大きさの指定値も表4-4に示す。その他の母線は PQ指定とした(表4-2参照)。
表4-4 初期値データ
母線 有効電力注入量 母線有効電力 電圧
1 - - 1
2 0.417 0.200 1.045
5 0.342 -0.600 1.010
8 0.200 -0.100 1.010
11 0.200 0.200 1.080
13 0.260 0.260 1.070
.060
数値は全てp.u.値
提案法は収束までを反復3回を要した。提案法から得られる解Xsより、発電 機および無効電力制御装置の有効、無効電力注入量を求めると表4-5となる。
表4-5より有効、無効電力注入量は、表4-3で示した上下限値制約を厳密 に満足していることがわかる。
表4-5 提案法より得られる制御量
母線 有効電力 無効電力
1 1.135 -0.002
2 0.450 0.274
5 0.450 0.200
8 0.300 0.200
11 0.250 0.150
13 0.300 0.050
数値は全てp.u.値
表4-6は提案法の解Xs から得られる電圧、位相角および評価関数の値を、
非線形計画法の解から得られる結果と比較したものである。また、表4-7は、
非線形計画法、主問題の反復による解法および双対問題の反復による解法(提 案法)の計算時間の比較を示す。
表4-6 提案法と非線形計画法の比較
電圧 位相角 電圧 位相角
1 1.062 0.000 1.060 0.000 2 1.050 -2.250 1.048 -2.250 3 1.034 -3.500 1.033 -3.530 4 1.028 -4.170 1.026 -4.200 5 1.022 -6.780 1.020 -6.800 6 1.025 -4.950 1.024 -4.980 7 1.016 -6.220 1.015 -6.250 8 1.022 -4.970 1.021 -5.000 9 1.051 -5.080 1.050 -5.110 10 1.049 -7.170 1.048 -7.210 11 1.079 -2.440 1.082 -2.490 12 1.064 -6.260 1.063 -6.290 13 1.069 -4.140 1.069 -4.170 14 1.049 -7.190 1.048 -7.220 15 1.044 -7.330 1.043 -7.360 16 1.050 -6.910 1.049 -6.950 17 1.044 -7.300 1.043 -7.330 18 1.034 -7.960 1.033 -8.000 19 1.031 -8.150 1.030 -8.180 20 1.035 -7.960 1.034 -8.000 21 1.037 -7.670 1.036 -7.710 22 1.038 -7.680 1.037 -7.710 23 1.033 -7.890 1.032 -7.930 24 1.027 -8.310 1.026 -8.340 25 1.023 -8.660 1.022 -8.690 26 1.005 -9.080 1.005 -9.110 27 1.030 -8.620 1.029 -8.660 28 1.021 -5.300 1.020 -5.340 29 1.010 -9.840 1.009 -9.870 30 0.998 -10.710 0.997 -10.750
母線 提案法 非線形計画法
電圧の数値はp.u.値、位相角の数値は度
表4-7 計算時間の比較
非線形計画法 約 1020 秒
主問題の反復による解法 1.9 秒
双対問題の反復による解法 0.9 秒
計算時間は、1982年当時の早稲田大学理工学部のIBMメインフレーム計算機による 計算実行時間である。
表4-6において提案法は非線形計画法とほとんど同一解が得られているこ とより、提案法は計算精度の面で十分満足できるものである。提案法の計算時 間は表4-7より、非線形計画法は問題外であり、主問題の反復による解法の 計算時間の約1/2であることがわかる。
本シミュレーションにおいては、提案法の反復回数1回目の最適解は反復2 回目および3回目の最適解でもあった。つまり提案法は、反復1回目にLP計 算を行った後、反復2回目以降では基底変数の入れ換え計算を必要としなく、
4.3で説明したように、このことが主問題の反復による解法よりかなり計算 時間を短縮させている。主問題の反復による解法はLP計算を3回行い(反復 1回目、2回目、3回目)、提案法はLP計算を1回しか行っていない(反復1 回目)のに等しいので、提案法の計算時間は主問題の反復による解法の約 1/3 になるはずである。しかし本シユレーションでは、反復におけるKの更新にお いて0要素が現れ、退化[4-16]が生じ、退化の処理に計算時間が費やされた。
また、本シミュレーションにおいて変圧器のタップ比を考慮しなかったが、
提案法はタップ比についても厳密に表現でき、制約不等式に含むことができる
(付録3参照)。
4.5 第4章の結論
本章では、信頼度監視制御の一つである電圧無効電力制御の手法についての 検討を行った。電圧無効電力制御の問題は、目的関数および制約条件が非線形 方程式で表されるため、従来非線形計画法が用いられてきた。しかし、電圧無 効電力制御をオンラインで実施するためには、非線形計画法の解と同等の高精 度な解を高速で解く必要がある。しかし、非線形計画法は計算時間を要し、当 時研究・開発されていた線形計画法を用いた手法は高速ではあるが計算誤差を 含むという難点があった。本章では、線形計画法の優位点を活かし、かつ高精 度の解を求めるために、線形計画法を用いた新しい手法を開発したのでそれを 紹介した。
以下、第4章の主な結果を述べる。
(1)電圧無効電力制御問題の定式化
電圧無効電力制御の目的関数、制約条件を定式化し、それを直角座標を用い て線形化することにより線形化の誤差なしに定式化でき、線形計画法を反復し て解くことで高精度の解が得られることを示した。
(2)アルゴリズムの計算の高速化
(1)で定式化した線形計画法を解く方法として、主問題の反復による解法 と双対問題の反復による解法の2種類が考えられる。本章では、双対問題の反 復による解法を提案した。その理由は、双対問題の反復による解法は、(1)の 定式化の利点を活かすことにより、主問題の反復による解法に比べ、計算の反 復過程を省略でき、計算時間が短縮されるからであることを述べた。
(3)シミュレーションによる検証
例題系統に対して、提案法を実施した結果、非線形計画法と同等の精度の解 が得られ、かつ計算時間が高速であることを確認した。提案法はオンライン電 圧無効電力制御に適した手法であることを検証した。
提案法は、初期値が最適解と非常に離れている場合、LPの目的関数は初期 値に依り一定であることおよび制約条件が反復毎に大幅に変化することを考え ると、解が振動したり、あるいは本シミュレーションのように高精度な解が得 られない恐れがある。つまり、提案法には限界があると考えられる。しかし、
その場合には、潮流計算を行い、初期値を変更して提案法を用いることを検討 している。
提案法は、オンライン電圧無効電力制御だけでなく、オフラインの無効電力 源の最適配置問題などのオフラインの機能にも適用できる。また、電圧・無効 電力以外の他の最適化問題に対して、提案法の有効性を確認することが今後の 研究課題である。
本研究は、現在のオンライン電圧無効電力制御の研究の基盤となっている。
第4章の参考文献
[4-1] H. W. Dommel & W. F. Tinney, “Optimal Power Flow Solutions “, IEEE Trans. PAS-87, 1866, 1968.
[4-2] A. M. Sasson, “Nonlinear Programming Solutions for Load-flow, Minimum-loss, and Economic Dispatching Problems “, IEEE Trans.
PAS-88, 399, 1969.
[4-3] A. M. Sasson & H. M. Merrill, “Some Applications of Optimization Techniques to Power Systems Problems “, Proc. IEEE, 62, 7, 959, 1974.
[4-4] N. P. Kohli, J. Sharma, and L. M. Ray, “Optimal Reactive Power Allocation “, PICA, 9th Conf., 216, 1975.
[4-5] 青木、錦織、巻幡、「2次近似による最適潮流計算」、電気学会電力技術研
究会資料、PE-82-48、昭和57年
[4-6] 羽根田、他、「電力系統のINA法による感度解析法」、電気学会電力技術
研究会資料、PE-82-8、昭和57年
[4-7] 岩本、田村、「非線形性を保存した高速潮流計算法」、電気学会論文誌B、
98、192、昭和53年
[4-8] K. R. C. Mamandur & R. D. Chenoweth, “Optimal Control of Reactive Power Flow for Improvement in Voltage Profiles and for Real Power Loss Minimization “, IEEE Trans. PAS-100, 3185, 1981.
[4-9] B. Stott, J. L. Marinho, and O. Alsac, “Review of Linear Programming Applied to Power System Rescheduling “, PICA, 11th Conf., 142, 1979.
[4-10] S. Stott & J. L. Marinho, “Linear Programming for Power System Network Security Applications “, IEEE Trans. PAS-98, 837, 1979.
[4-11] E. Hobson, “Network Constrained Reactive Power Control using Linear Programming “, IEEE Trans. PAS-99, 868, 1980.
[4-12] 青木、藤川、「無効電力計画と非凸二次計画」、電気学会論文誌B、100、
305、昭和55年
[4-13] 土井、「線形計画法を用いた電圧無効電力の総合制御」、システム制御研
究会資料、SC-82-37、昭和57年
[4-14] J. L. Kuester & J. H. Mize, “Optimization Techniques with Fortran “, Mcgraw-Hill book company, 1973.
[4-15] 例えば、杉山、「線形計画」朝倉書店
[4-16] 例えば、平本、長谷、「線形計画法」培風館