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国際政治のトリレンマ

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Academic year: 2022

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国際政治のトリレンマ

著者 藤原 憲二

雑誌名 エコノフォーラム21 : 学生と教職員のインターコ

ミュニケーション誌 

号 25

ページ 37‑37

発行年 2019‑03‑14

URL http://hdl.handle.net/10236/00027837

(2)

Econo Forum 21/No.25 37

シリーズチャペル<経済と人間>

  保護主義が再び台頭している︒その根拠としてしばしば引用されるのがダニ・ロドリックの国際政治のトリレンマである ︒その主張とはグローバリゼーション︑国家主権︑民主主義の3つは両立できず︑どれか

2つを選べばもう1つは必ず諦めなければならないというものである︒彼の主張には頷ける点もあるが︑以下の点で疑問があるので本稿で問題提起する︒

  1.トリレンマは叙述的に述べられるにとどまり理論的にも実証的にも証明されていない︒彼は自由な国際資本移動︑独立な金融政策︑固定相場制の3つは両立しないという国際金融のトリレンマからの類推で国際政治のトリレンマが成立するというがそれは大きな飛躍である︒国際金融のトリレンマの自由な国際資本移動と独立な金融政策が彼のトリレ ンマのグローバリゼーションと国家主権に一応対応すると考えられ︑これらの類似は分からなくもない︒だがそうすると国際金融のトリレンマの固定相場制が彼のトリレンマの民主主義に対応するが︑固定相場制と民主主義がどういう点で類似するのか︒為替相場制度と民主主義には何の関係もない︒また国際金融のトリレンマは﹁国際金融﹂に関するものであり︑それを貿易や直接投資を含むグローバリゼーション全般に拡大解釈していいのか︒以上より現時点では仮説の域を出ておらず︑理論的・実証的に立証されないうちは砂上の楼閣との批判は免れない︒  2.関税によって財貿易を規制したところで直接投資という代替的な方法で海外進出されるのではないか︒

  3.消費者の受ける貿易利益への 言及がなく︑圧倒的に不利益が強調されている︒貿易自由化の最大の利益は全ての国民が以前よりも安く商品を買えることである︒また消費者の選択肢が増える︑企業がより安い価格で売る︑より生産性の高い企業の割合が増えるといった近年の研究成果が無視されている︒  4.保護貿易や資本規制が必要だというが︑一国がそのような近隣窮乏化政策を行えば他国も報復措置をとり全ての国が不幸になるという囚人のジレンマになるのではないか︒  5.貿易自由化や資本移動が今よりもはるかに緩かったブレトン=ウッズ体制の時代は高成長だったというが︑経済活動が制限されていたことが高成長の原因だったかについて成長会計や厳密な実証分析による検証がない︒

  6.貿易自由化で所得の減る人が いるとき︑最も小さなコストでそれを解消するのは所得再分配政策であり保護貿易ではない︒ロドリックはこれに対して﹁Fine, in principle︵原則はそうだ︶﹂と認めながらも﹁適切な補償でこれらの人も貿易自由化の利益を受けられるのだというのはweird way of selling free trade︵自由貿易を売り込む奇妙な方法︶だ﹂というがその根拠が分からない︒以上思いつくままにグローバリゼーション・パラドックスへの疑問を並べた︒経済学を学ぶ皆さんに一度考えてほしい︒ ■1ロドリックは国際経済学での優れた研究業績を持つ経済学者であり、経済学の理解のない単なる評論家ではないことは明記しておく。

藤原   憲二   教授︵国際経済学︶ 国際政治のトリレンマ

2018年

6 月 4 日

月曜日

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