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数列の収束

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Academic year: 2021

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(1)

数列の収束

前節で、有理数の体系から実数が定義されました。もっとも本質的だったのは「実数の 連続性」でした。実数の連続性がきちんと定義できたので、数列の収束や関数の連続性に ついても厳密に議論できるようになりました。

高校時代に、数列の収束について勉強しました。ある数列{an}n=1n→ ∞のときα に収束するとは、

「数列anにおいて、nを限りなく大きくするとき、anが一定の値αに限りなく近づく」

ことだと、高校の教科書で説明されています。しかし、nを限りなく大きくする」とか、

anが一定の値αに限りなく近づく」というのはどういうことでしょうか? 実は、ニュー トンとライプニッツが17世紀の終わりごろに微分積分学を発見して以来100年以上の間、

この言葉の意味は曖昧でした。この言葉の意味が現在理解されているように厳密に定義 されたのは、微分積分学の発見から150年ほどたった19世紀の前半から半ばにかけてで す。19世紀になって、現在でも使われているε-δ論法という技法が開発され、数列の収束 や関数の連続性が厳密に議論できるようになりました。さらに20世紀の中頃に、無限大 や無限小を直接扱えるような超準解析(nonstandard analysis)という枠組みも発見されま した。この節では、19世紀以来微分積分の分野で標準となっているε-δ論法について説明 します。

高校時代に、「n→ ∞のとき1/n→0である」、つまり

n→∞lim 1 n = 0

であることを学びました。このことをもう少しきちんと考えてみましょう。すぐわかる ことは、どんな正の数、例えば0.01を持って来ても、nがある数以上ならば1/n < 0.01 を満たすということです。この場合は、n ≥ 101であれば、1/n < 0.01となります。さ らに、0.00001を考えても、n≥ 100001ならば、1/n < 0.00001となります。任意の正数

ε > 0が与えられても、前節やったアルキメデスの原理より正整数N0を十分大きくとれ

1< N0εとなります。よって、n ≥N0ならば1/n < εが成り立ちます。これを踏まえ て、 数列{an}n=1の収束を次のように定義します。

定義 1 任意の正数ε > 0に対して、ある正整数N0が存在し、n ≥ N0 ならば

|an−α| < ε となるとき、数列{an}n=1α ∈Rに収束する (converge)といい、

αをその極限 (limit)という。

この定義の「気持ち」を理解するために、高校数学の数列の収束の定義を次のように書 き換えてみましょう:

「正数ε >0をどんなに小さくとっても、

nを十分大きくとれば|an−α|< εが成り立つ」

(2)

これで、だいぶ定義1に近づいてきましたが、まだ「nを十分大きくとれば」の部分が曖 昧です。そこでその部分を、「あるN0 ∈Nが存在し、nn≥N0となるぐらい大きけれ ば」と思うわけです。まとめると、定義1の「気持ち」は次のようになります。

「正数ε >0をどんなに小さくとっても、あるN0 ∈Nが存在し nn≥N0となるぐらい大きくとれば、|an−α|< εが成り立つ」

この定義は、なかなか分かりにくいと思いますが、練習問題を解くことでなれるようにし てください。

さて、高校で習った通り、n → ∞とき数列anα に収束するということを、

n→∞lim an

と表します。また、収束の定義を論理記号を用いて

(∀ε >0)(∃N0 ∈N)(∀n∈N) [n≥N0 =⇒ |an−α|< ε]

などと書きます。よって、この否定、つまり「数列anαに収束しない」ということを 論理記号で書くと、

(∃ε >0)(∀N0 ∈N)(∃n∈N) [n≥N0 かつ |an−α| ≥ε]

になります。これを通常の日本語に直すと、

ある正数ε >0が存在して、任意の正整数N0に対し ある整数n ≥N0があり、|an−α| ≥εとなる

のようになります。日本語の方は、自分の好みやセンスにしたがって書き直してください。

演習問題:(1)命題「数列{1/n}n=1n→ ∞のとき0に収束する」が成り立つことを 定義1に従って証明する際に、アルキメデスの原理が使われていることを確認しなさい。

(2)命題「数列{1/n}n=1n→ ∞のとき0に収束する」が真であることを仮定すれば、

アルキメデスの原理が証明できることを示しなさい。(ヒント:与えられた正実数a, b 対して、ε:=a/bとおく。)

この演習問題から、命題「limn→∞1/n = 0」とアルキメデスの原理は同値であること がわかります。さて、収束の定義になれるためには、つぎのような問題を数多くこなすこ とが必要です。

演習問題: 以下のことを、数列の収束の定義に従って示しなさい。ただし、数列{an}, {bn} ⊂Rはそれぞれα, β ∈Rに収束するとします。

(1) lim 1

n+ 1 = 0 (2) lim 1

2n = 0 (3) lim(an+bn) =α+β

(3)

(4) lim

n→∞(can) =cα, c∈R (5) lim

n→∞(anbn) =αβ (6) lim

n→∞(an/bn) =α/β ただし、bn, β0でないものとする。

(7) ある自然数N0が存在し、全ての自然数n≥N0についてan ≤bnならば、α≤β ある。

(8) (挟み撃ちの原理)さらに数列cnを考える。ある自然数がN0が存在し、全ての自然

n≥N0についてan≤cn ≤bnであり、かつα=β ならば、cnαに収束する。

ここで、数列の収束について基礎となることを述べます。まず、数列{an}が単調増加 (monotone increasing)であるとは、全てのn ∈Nについてan ≤ an+1が成り立つことで す。また、数列{an}が上に有界 (bounded from above)であるとは、ある実数M ∈R 存在し、全てのn ∈ Nについてan ≤ Mが成り立つことです。次の定理が、非常に重要 です。

定理 2 上に有界で単調増加な数列{an}n=1は、収束する。

証明:仮定により、集合X :={an}n=1 ⊂R は上に有界なので、上限supXが存在する。

上限の定義より、すべてのn ∈Nに対してan ≤supXである。また、任意のε > 0に対 してaN0 ∈Xが存在し、supX−ε < aN0 ≤ supXとなる。すると、数列{an}の単調性 より、全てのn≥N0について

supX−ε < aN0 ≤an≤supX つまり supX−an < ε が成り立ちます。これは、まさに

n→∞lim an= supX

であることを意味します。

さらに、数列{an}が、単調減少(monotone decreasing)である、下に有界(bounded from

below)であるということも同様に定義できます。次の系が成り立ちます。

3 下に有界で単調減少な数列{an}n=1は、収束する。

数列が上にも下にも有界であるとき、単に有界 (bounded)であるといいます。さて、数 {an}n=1の部分集合Y ⊂ {an}が無限個の要素を持つとき、Y をもとの数列の部分列 (subsequence)といいます。しばしば、Y {ank}のように書きます。次の定理が成り立 ちます。

(4)

定理 4 数列{an}n=1が有界ならば、収束する部分列{ank} ⊂ {an}が存在する。

証明: 数列{an}が有界なので、有界閉区間1, β1]が存在して、全てのn∈Nについて an ∈ [α1, β1]が成り立ちます。ここで、部分区間1,(α11)/2], [(α11)/2, β1]を考 えると、少なくともどちらかの閉区間には{an}の無限個の点が含まれているはずです。

そのような部分区間を2, β2]とします。明らかに、2, β2] ⊂ [α1, β1]となっています。

さらに、部分区間2,(α22)/2], [(α22)/2, β2]のうち無限個の{an}の点を含む方 を、3, β3]とします。このようにして閉区間k, βk]を定義していきます。つまり、全て k∈Nについて、

(i) 閉区間k, βk]内には、{an}の要素が無限個含まれる。

(ii) [αk, βk]⊂[αk−1, βk−1]⊂[α1, β1]、かつβk−αk= (αk−1−βk−1)/2 = (α1−β1)/2k−1. となっているとします。このとき、数列k}は上に有界な単調増加列であり、数列k} は下に有界な単調減少列なので、どちらも収束列であることがわかります。さらに、上の (ii)より、2つの数列の極限は一致することもわかります。その極限をγ と書くことにし ます:γ := limk→∞αk = limk→∞βk. ここで、数列{an}の部分列を、次のように選びま す。まず1, β1]からは、a1を選びます。さらに、k > 1については、閉区間k, βk] 含まれる無限個のanの中で、添字nn > nk−1を満たす最も小さいものをnkとしま す。するとnk > nk−1であり、またank ∈ [αk, βk]、つまりαk ≤ ank ≤ βkが成り立ちま す。よって、挟み撃ちの原理から{ank}も収束列でその極限はγであることがわかります:

limnk→∞ank =γ. つまり、{ank}が求める収束部分列でした。

この節の最後に、数列の収束に関してもっとも重要な概念であるCauchy列について考 えてみましょう。

定義 5 数列{an}n=1Cauchy (Cauchy sequence) であるとは、

(∀ε >0)(∃N0 ∈N)(∀n, m∈N) [n, m≥N0 =⇒ |an−am|< ε]

が成り立つことである。

Cauchy列の定義を日本語に翻訳すると、

「任意の正数ε >0 に対してある自然数N0が存在し、

自然数n, mn, m≥N0 を満たすならば|an−am|< εとなる」

のようになります。日本語の方は、自分のセンスと好みに合わせて書き換えてください。

この定義は少し分かりにくいかもしれませんが、要するに

「正整数n,mが大きくなるにつれて、anamはいくらでも近くなるよ」

(5)

ということです。次の定理が、数列の収束に関してもっとも重要なものです。

定理 6 数列{an}n=1が収束列であるための必要十分条件は、{an}Cauchy であることである。

証明: (十分性) 数列{an}n=1Cauchy列であると仮定します。そのとき、{an}が有界 であることを示しましょう。定義より、ある自然数N0 ∈Nが存在し、n, m≥N0ならば

|an−am| <1となります。特にm =N0として、

|an−aN0|<1 つまり aN0 −1< an< aN0 + 1, ∀n≥N0

がわかるので、

M := max{a1,· · · , aN0−1, aN0 + 1}, m:= min{a1,· · · , aN0−1, aN0 −1}

と定義すると、すべてのn∈Nについてm ≤an≤M がなりたつことがわかり、{an} 有界であることが示せました。

数列{an}が有界なので、収束部分列{ank} ⊂ {an} が存在します。その極限をγとし ましょう。以下、数列{an}自身がγに収束することを示します。今仮定されていること、

分かっていることは、{an}Cauchy列であるということと{ank}γに収束するという ことです。つまり、「任意のε >0に対して、

あるN0 ∈Nが存在し、n, m≥N0ならば|an−am|< εが成り立ち、かつ あるN1 ∈Nが存在し、nk ≥N1ならば|ank −γ|< εが成り立つ」

ということです。よって、N2 := max{N0, N1}とおくと、n, nk ≥N2ならば

|an−γ| ≤ |an−ank|+|ank−γ|<2ε

がわかります。これは、{an}γに収束することを意味します。以上で、{an}が収束列 であることが示されました。

(必要性) 数列{an}が収束列であれば、Cauchy列であることを示すのは、そんなに難し くありません。演習問題にします。

演習問題: 数列{an}が収束列であれば、Cauchy列であることを示しなさい。

参照

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