Title
イソオキサゾールおよびイソチアゾール系鎮痛剤の合成
研究( Abstract_要旨 )
Author(s)
淺井, 篤
Citation
Kyoto University (京都大学)
Issue Date
1962-12-18
URL
http://hdl.handle.net/2433/211008
Right
Type
Thesis or Dissertation
Textversion
none
氏 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与 の 日付 学位授与の要件 研究科 ・ 専 攻 学 位 論 文 題 目 博 井 い 学 浅 緑 薬
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あっ し コ二 薬 博 第3
1
号 昭 和37
年12
月18
日 学 位 規 則 第5
条 第1
項 該 当 薬 学 研 究 科 薬 学 専 攻 イ ソオ キ サ ゾー ル お よび イ ソ チ ア ゾー ル系鎮 痛 剤 の 合 成研究 (主 査) 論 文 調 査 委員 教 授 上 尾 庄 次郎 教 授 富 田 英 雄 教 授 岡 田毒 太 郎 トー I I , 論 文 内 容 の 要 旨視丘性鎮痛剤 と してのpyrazolone 系薬剤 の研究 は am inopyrine, saridon , osadorin 等 のす ぐれた薬品 を生んだ, 一方局所麻酔薬 と して Ⅹylocain が現われ るにおよびその有効側鎖 と して dialk ylam inoacylam -ido 基が注 目を浴びた。 高橋等 は antipyrine に この dialk ylam inoacylam -ido 基を導入 して遂 に独特の作 用機序 を有す る4-(2-dlm ethylam inopropionam ido) antipyrine を得, またcam phor に本基を導入 して す ぐれ た鎮痛効果を有す る化合物を多数合成 した。
この ことか ら著者 は適 当な母核を選んで, これ にdialk ylam inoacylam ido 基を導入すれば有望 な鎮痛剤 を得 る可能性 のあることに着眼 して, 母核 と して pyrazolone 核 の窒素 の 1 個を他 のへテ ロ原子で置換 し た複素五員環が好 ま しいものではないか と考 えた。 たまたま新抗生物質 cycloserine および新サル フ ァ剤 3,4-dim ethyl-5-sulfan ilam idoisoxazole, 3-stllfan ilam id0-5-m ethylisoxazole な らびに 3-m ethyト5-sulfan iト m idoisoth iazole が副作用が きわめて少 な くす ぐれた効果を有す る薬剤 と して登場 したが, これ らの薬 剤
の毒性 の少 ない ことは母核であるisoxazole な らびに isothiazole 核 自身がきわめて 毒性 の少 ない 証拠 と 思 われ る。
ここにおいて著者 はイソオキサゾールおよびイソチアゾールを母核 と して前述 の有効側鎖dialk ylam ino-acylam ido 基を導入すれば pyrazolone 系薬剤 において避 け得 られなか った 副作用を全 く認めずかつす ぐ れた鎮痛効果 を有す る鎮痛剤を得 るのではないか と考 えて一連 の鎮痛剤 の合成を行 ない, あわせて化学構 造 と薬理作用\との関係を も考察 したのである。
(Ⅰ) 3,4-D im ethyト5-(2-alkam inoacylam ido) isoxazoles.
3,4-dim ethy1-51am inoisoxazole に 2-haloacyl halide を作用 させて得 られ る 3,4-dim ethyト5-(2-haloac-ylam ido) isoxazole 類 の halogen を dim ethethyト5-(2-haloac-ylam ine, diethethyト5-(2-haloac-ylam in e, piperidine および m orpholine で置換
して 3,4-dim ethyト5-(2-alkami noacylam ido) isoxazole 類20 種を合成 した。 ここに得 た化合物の多 くは am inopyrine にま さる L D5。/E D5。 を示 した。 鎮痛効果 に対す る一般的傾 向 と してはdim ethylam ino 基を
有 す るもののほ うが diethylam ino 基 を有す るものよ りも鎮痛 作用が大 で毒性 は弱 い。 また m orpholino
塞, piperidino 基 とす るに従 い鎮痛 作用 および毒性 を増す。
・(ⅠⅠ) 3,41D im ethyl-5-p-(2-alkam inoacylam ido) benzam idoisoxazoles.
3,4-dim ethyl15-am inoisoxazole にp-nitrobenzoyl chloride を反応 させて 3,4-dim ethyl151p-nitrobenz・ A m idoisoxazole を得, これを P d-C 存在下 に常圧接触還元 して 3,4-dim ethyl-5-p-am inobenzam
idoisoxa-zole に導 き, つ いで これ に ( Ⅰ) と同様 に して 2-haloacyl halide を作用 させて 3,4-dim
elhyl-5-p-(2-h-aloacylam ido) benzam idoisoxazole 類 と し, これ に前述 の am ine 類 を反応 させて 3,4-dim ethyト5-p-(2-・alkami noacylami do) benzam idoisoxazole 類11種 を合成 した。 上記接触還元 の際 3m ole の水素 を吸収後生 成 物を取 り出す ことな く, さらに還元 を続行すれば新 化合 物が得 られ たが これ につ いて は (Ⅶ) において
述 べ る。 また上記 の haloacyl体 にO-phenetidineを反応 させて3,4-dim ethyl-5-p-(2-0-ethoxyanilinoacyl
am ido) benam idoisoxazole 類2種 を合成 した。 ここに得 た化合 物 の多 くの ものは am inopyrine にま さる
L D 50/E D 50 を示 したが, 毒性 および鎮痛作用 と化学構造 との間 には明瞭な関係を見 出 し得 なか った。
(H I) 3-M ethyト4-(2-alkoxyethyl)-5-(2-alkam inoacylam ido) isoxazoles.
M ohr の方法 に したがい acetonitrile, 金属 N a および 2-alkoxyethyl brom ide 類 を反応 して 2-(2-alk-・oxyethyl)-3-im inobutyronitrile 類 を合成 し, ついで N H 20 H ・H C l と縮合 させて文献未知 の3lm
ethyl-4-(21alkoxyethyl)-5-ami noisoxazole類 に至 らしめた。 ここに得 た3-m ethyl-4-(2-alkoxyethly)15-am inoiso・
Ⅹazole 類 を原料 と して (Ⅰ) の合成法 に準 じて反応 を進 めて3-m ethyl-4-(21alkoxyethyl)15-(2-haloacyla・ m ido) isoxazole 類 と し, ついで 3-m ethyト4-(2-alkoxyethyl)-5-(2-alkam inoacylam ido) isoxazole 類
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種 を合成 した。 ここに得 た化合物 は顕著 な鎮痛効果 を示 さないが, 一般 的傾 向 と して dim ethylam ino 型
が diethylam ino 型 にまさ り, 4-alkoxyethyl 基 のalkoxy の炭素数 の増加 に伴 って毒性, 鎮痛 作用が と
もに強 くな る傾 向を認めた。 またイソオキサ ゾール核 の4-位 の m ethyl基 を alkoxyethyl基 に置換 して も
毒性, 鎮痛作用 の効果 に著 明な影響 を与 えない。
(ⅠⅤ) 3-M ethyl141(21alkoxyethyl)-5-p-am inobenzam idoisoxazoles.
3-m ethy1-41(2-alkoxyethyl)-5-am inoisoxazole 類 にp-nitrobenzoyl chloride を反応 させて 3-m ethyl -4-(2-alkoxyethyl)-5-p-nitrobenzam idoisoxazole類 を得, これをP d-C 存在下 に常圧接触還元 して3-m e・ thyト4-(2-alkoxyethyl)-5-p-am inobenzam idoisoxazole 類3種 を合成 した。 ここに得 た化合 物 は見 るべ き
鎮痛効果 は認め られなか った。
(V ) 3-M ethyl-5-(2-alkam inoacylam ido) isothiazoles.
31m ethyl-5-am inoisothiazole に 2-haloacyl halide を 反 応 させて 3-m ethyl-5-(2-haloacylam ido) isot hiazole 類を得, これ らに dim ethylam ine, diethylam ine, piperidine, m orpholine および pyrrolidine を
縮合 させて 31m ethyト5-(21alkam inoacylam ido) isothiazole 類9種 を合成 した。 ここに得 た化合 物 のほ
とん どの ものが am inopyrine にま さるL D 5。/E D 5。 を示 し, 特 に m orpholino および piperidino 誘導体が
鎮 痛 作用 もやや増加 し毒性 が著 しく減少 してい るので, この うち二, 三 の もの につ いて さ らに詳細 な薬理 試験 を行 な った結果配合性鎮痛剤 と して きわめて適 当で あることが認 め られ た。 また薬理試験 の結果 か ら 化学構造 と鎮痛 作用問 に一般 的傾 向は見 出 し得 なか った0
(ⅤⅠ) 3-M ethyl-5-(2-alkam inoacylam ido) isoxazoles.
31m ethyト5-ami noisoxazole に (Ⅴ) と同様 に して 21haloacyl halide を反応 させて, 3-m ethyl-5-(2-haレ Oacylam ido) isoxazole 類 と し, これ に前述 の am ine 類を縮合-させて 3-m ethyl15-(21alkam inoacylam ido) isoxazole 類 9 種を合成 した。 ここに得 た化合物の鎮痛作用は am inopyrine に劣 らず, しか も毒性がそれ.
よ りもはるかに弱 いので L D 5。/E D 5。 か らは am inopyrin e にま さるが (V ) のイソチア ゾール誘導体 に比 べればやや劣 る。 さらに二 三 の誘導体 について詳細な薬理試験を行な_? た結果, (V ) とともに鎮痛剤
と して優秀 であることを見 出 した。
(V II) 2,41D im ethyl15-p-n itrobenzam ido isoxazole の P d-C 触媒 による常圧接触還元成績体 について。 前述 のよ うに3,4-dim ethyト5-p-n itrobenzam idoisoxazole を P d-C 存在下 に常圧接触還元 して 3-m ole の水素を吸収せ しめた後 3,4-dim ethyト5-p-am inobenzam idoisoxazole を取 り出す ことな くさらに還元を 続行すればなお 1m ole の水素 を吸収 して C 12H 150 2N 3 な る新 しい化合物がえ られた。 この成績体の構造ー
と してはisoxazole 核 が水素化 された isoxazoline 体 と isoxazole 環が開裂 した閉環成績体 とが考 え られた のであるが, まず赤外 吸収スペ ク トルおよび紫外 吸収 スペ ク トルか ら閉環生成物であることの可能性が大 であることが分 った。 そ こで これを化学的に実証す るため次の反応を行な った。 すなわちE tO H 性 K O H ,. N H40 H , N H 2N H 2・H 20 ,A cO H 等 による加熱反応を試み,21p-am inopheny1-4,5-dim ethyト6-hydroxypyrim ト
din e, N H 3, C O 2, p-am inobenzam ide および m ethylethylk etone をそれぞれ単離確認 した。 また L iA IH4 に
よる還元成績体 と して トp-am inobenzylam in0-2-m ethylbutan-3101 を得, これ も別途合成 によって同定 した。
以上の結果か ら分光学的および化学的に3,4-dim ethyト5-p-n itrobenzam idoisoxazole の徹底 的還元成績 体が 21m ethyl13-im inobutyro-N -p-am inoben zam ide であると結論 したものであるO
(ⅤⅠⅠⅠ) 2-p-A m inophenyト4,5-dim ethyl161hydroxypyrim idine および 1-p-A m inobenzylam in0-2-m ethy・ lbutan -3-ol の合成。
前項 (ⅤⅠⅠ) において得 た 2-p-am inophenyト4,5-dim ethyト6-hydroxypyrim idine の別途合成法 は p- ni-trobenzam idine に ethyl m ethylacetoacetate を縮合 させて 2-p-n itrophenyト4,5-dim
ethy1-6-hydroxypy-rim idin e を得, これを P d-C 存在下 に接触還元 して得 た。
また 1-p-am inobenzylam in0-2-m ethylbutan-3-01 の別途合成法 は3-Cyanobutan-2-one を N aB H4 で還
元 して 3-Cyanobutan -2-01 に導 き, これを R aney N i あるいは L iA IH4 によ って還元 して トam
in0-2-m ethylbutan 3-01 と し, ついで これ に p-n itrobenzoyl chloride を反応 させて トp-n itrobenzain0-2-m id0-2-in0-2-m ・ ethyl-3-p-n itrobenzoyloxybu taneを得, これを P d-C 存在下 に接触還元 して トp -am inobenzam id0-2-m e-thyl-3-p-am inobenzoyloxybutane に導 き, これを L iA IH4 によって還元 して 目的 とす る トp-am
inobenz-ylam in0-2-m ethylbutan -3-ol を得 た。
以上合成 した二種 の化合物はそれぞれ前述 の分解産物 と一致 し同定の 目的を達 した。
(ⅠⅩ) 3-M ethy1-41 (21alkoxyethyl)-5-p-n itrobenzam idoisoxazole 類 の P d-C 触媒 による常圧接触還元成 績体。
触還元 して 3-m ethyl-4-(2-alkoxyethyl)15-p-am inobenzam idoisoxazole 類を得 たが, この還元を さらに 続行すれば (ⅤⅠⅠ) の場合 と同様 に新 しい化合 物 に到達す る。 これ らの化学構造 は (ⅤⅠⅠ) の場合 か ら類推 して 2-(2-alkoxyethyl)-3-im inobutyro-N -p-am inobenzam ide 類 であると推定 した。 事実 これ らを E tO H 性 K O H と加熱 す ることによってそれぞれ対応す る 2-p-am inophenyト4-m ethyl-5-(2-alkoxyethyl)-6-h・ ydroxypyrim idine 類 および p-am inobenzam ide と K 2C 03 を捕捉す ることがで きた。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 本論文 は新 しい型式 の鎮痛剤 の創製を 目的 とす るイソオキサ ゾールおよびイ ソチア ゾ- ルを母核 とす る 一連 の塩基性化合物の合成研究 に関す るものである。 この 目的を達せん と して本研究 において合成 された 新化合物の数 は最終産物のみで6 群62種 に達す るが, その中で少 な くとも 5 種 は毒性が少 な くしか も鎮痛 性が大で配合性鎮痛剤 と して充分実用化の可能性があると思 われ る。 さらに著者 はイソオキサ ゾール誘導 体特 に3, 4- ジメチル-5-パ ラニ トロベ ンズ ア ミ ドイソオキサ ゾールのパ ラジウム炭 を触媒 とす る接触還元 におけ る環 の開裂反応 について研究 し, その生成物の化学構造 を分解的な らびに合成 的に証明す ることに よ って この反応 が触媒の種類 に関係な く常 にN -0 結合 の水素化的開裂 の方 向に進行す ることを 証 明 した。 本論文 は薬学博士 の学位論文 と して価値 あるもの と認定す る。