ENAA GEC 2006-P2
平成18年度
I T 技 術 を 活 用 し た 災 害 時 の 救 援 オペレーションシステムに関する調査研究
報 告 書
平成19年3月
財団法人 エンジニアリング振興協会 地 下 開 発 利 用 研 究 セ ン タ ー
こ の 事 業 は 、 競 輪 の 補 助 金 を 受 け て 実 施 し た も の で す 。
序
本 報 告 書 は 、 財 団 法 人 エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 が 日 本 自 転 車 振 興 会 か ら 機 械 工 業 振 興 資 金 の 補 助 を 受 け 、同 協 会・地 下 開 発 利 用 研 究 セ ン タ ー が 実 施 し た「 平 成 18 年 度 IT技 術 を 活 用 し た 災 害 時 の 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム に 関 す る 調 査 研 究 」 の 成 果 を 取 り ま と め た も の で あ り ま す 。
1995年 1 月 に 発 生 し た 阪 神・淡 路 大 震 災 で は 、神 戸・阪 神 間 の 諸 都 市 を 中 心 に 壊 滅 的 な 打 撃 を 被 り 、 甚 大 な 人 的 ・ 物 的 被 害 を 受 け ま し た が 、 そ の 際 、 緊 急 ・ 復 旧 活 動 の 遅 延 等 、 社 会 的 に 大 き な 混 乱 も 経 験 し ま し た 。 高 度 の 情 報 通 信 社 会 が 発 展 し つ つ あ る 現 在 、 大 都 市 で の 地 震 災 害 は 物 的 被 害 だ け に 留 ま ら ず 、 地 震 に よ る 情 報 遮 断 に 起 因 す る 企 業 活 動 の 停 止 な ど 、 わ が 国 の 経 済 ・ 社 会 活 動 全 般 に 対 し て も 甚 大 な 被 害 を 生 じ さ せ る こ と が 懸 念 さ れ て お り ま す 。復 旧・復 興 活 動 に お け る 道 路 交 通 の 主 な 障 害 事 項 と し て は 、「 時 々 刻 々 と 変 わ る 道 路 事 情 の 把 握 の 困 難 性 」、「 道 路 混 雑 に よ る 資 機 材 運 搬 ・ 後 方 支 援 等 の 支 障 」、「 倒 壊 家 屋 に よ る 道 路 の 閉 塞 や が れ き に よ る 作 業 の 困 難 」 等 が あ り 、 道 路 交 通 に 関 す る 情 報 不 足 が 大 き な 要 因 と な っ て お り ま す 。 し か し な が ら 、 大 都 市 圏 で の 大 規 模 災 害 時 の 復 旧 ・ 復 興 に 対 し て の マ ネ ジ メ ン ト 戦 略 は 依 然 と し て 大 き な 課 題 と し て 残 さ れ た ま ま で す 。
こ の よ う な 背 景 の も と 、 本 調 査 研 究 は 、 大 地 震 の 発 生 が 指 摘 さ れ る 東 海 地 震 や 、 大 規 模 な 被 害 が 広 範 囲 に わ た る と 想 定 さ れ る 東 南 海 地 震 等 の 巨 大 災 害 に 対 し て 、 周 辺 都 市 の み な ら ず 都 道 府 県 界 を ま た い だ 広 域 的 な 協 調 関 係 に よ る 災 害 時 の 迅 速 か つ 的 確 な 復 旧 ・ 復 興 を 実 施 す る た め の マ ネ ジ メ ン ト 戦 略 に つ い て 方 法 論 を 提 起 す る と と も に 、 広 域 応 援 の エ ン ジ ニ ア リ ン グ の あ り 方 に つ い て 検 討 を 行 っ た も の で あ り ま す 。
平 成 18 年 度 は 、 ま ず 、 民 間 企 業 お よ び 行 政 機 関 へ の ヒ ア リ ン グ を 実 施 し 、 緊 急 時 の 道 路 状 況 や 物 資 調 達 ・ 供 給 に 求 め ら れ る 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム の 課 題 な ら び に 具 備 す べ き 情 報 ・ シ ス テ ム に つ い て 整 理 ・ 検 討 を 行 い ま し た 。 次 に 、 そ の 結 果 を 踏 ま え た 上 で 、 官 民 が 連 携 し た 災 害 時 の 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム に つ い て の 開 発 コ ン セ プ ト や そ の ス キ ー ム 、 情 報 収 集 面 で の 民 間 企 業 や 住 民 と の 協 働 、 官 民 で の 情 報 収 集 の あ り 方 等 へ の 仕 組 み に つ い て 取 り ま と め ま し た 。
本 調 査 研 究 は 学 識 経 験 者 、 官 庁 お よ び 企 業 の 専 門 家 か ら な る 委 員 会 ( 委 員 長 山 本 幸 司 名 古 屋 工 業 大 学 大 学 院 教 授 )と 作 業 部 会 を 編 成 し て 実 施 し ま し た 。取 り ま と め に あ た っ て は 、 株 式 会 社 熊 谷 組 が 中 心 と な っ て 行 い ま し た 。
本 事 業 に ご 協 力 い た だ い た 関 係 各 位 に 対 し て 心 か ら 謝 意 を 表 す る と と も に 、 本 報 告 書 の 成 果 が 各 方 面 で 有 効 に 利 用 さ れ る こ と を 切 望 す る 次 第 で あ り ま す 。
平 成 19 年 3月
財 団 法 人 エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 会 長 増 田 信 行
平 成 18 年 度
「IT技 術 を 活 用 し た 災 害 時 の 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム に 関 す る 調 査 研 究 」 委 員 会 委 員 名 簿
( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )
委 員 長 山 本 幸 司 名 古 屋 工 業 大 学 大 学 院 教 授 社 会 工 学 専 攻 都 市 社 会 工 学 科 委 員 西 田 幸 夫 東 京 理 科 大 学 総 合 研 究 所 COE技 術 者
委 員 石 坂 幸 平 (財)国 土 技 術 研 究 セ ン タ ー 研 究 第 二 部 首 席 研 究 員 委 員 小 林 誠 (株)イ ン タ ー リ ス ク 総 研 総 合 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト 部 長
主 席 研 究 員
委 員 勝 沼 清 (株)コ マ ツ 営 業 本 部 直 轄 事 業 部 直 轄 営 業 部 部 長 委 員 礒 部 猛 也 (株)建 設 技 術 研 究 所 東 京 本 社 情 報 部 部 長
委 員 高 瀬 博 敏 (株)博 報 堂 企 画 業 務 局 企 画 営 業 一 部 ア カ ウ ン ト デ ィ レ ク タ ー 委 員 奥 村 忠 彦 (財)エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 地 下 開 発 利 用 研 究 セ ン タ ー
研 究 理 事
委 員 岸 研 司 (株)熊 谷 組 土 木 事 業 本 部 土 木 部 土 木 グ ル ー プ 部 長 委 員 永 田 尚 人 (株)熊 谷 組 プ ロ ジ ェ ク ト エ ン ジ ニ ア リ ン グ 室
交 通 イ ン フ ラ グ ル ー プ 部 長 オ ブ ザ ー バ ー
大 隅 恵 枝 経 済 産 業 省 製 造 産 業 局 産 業 機 械 課 国 際 プ ラ ン ト 推 進 室 課 長 補 佐
井 上 裕 章 経 済 産 業 省 経 済 産 業 政 策 局 地 域 経 済 産 業 グ ル ー プ 産 業 施 設 課 課 長 補 佐
事 務 局 橋 本 励 (財)エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 地 下 開 発 利 用 研 究 セ ン タ ー 技 術 開 発 第 一 部 主 任 研 究 員
平 成 18 年 度
「IT技 術 を 活 用 し た 災 害 時 の 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム に 関 す る 調 査 研 究 」 委 員 会 作 業 部 会 名 簿
( 順 不 同 ・ 敬 称 略 ) 部 会 長 永 田 尚 人 (株)熊 谷 組 プ ロ ジ ェ ク ト エ ン ジ ニ ア リ ン グ 室
交 通 イ ン フ ラ グ ル ー プ 部 長
部 会 員 勝 沼 清 (株)コ マ ツ 営 業 本 部 直 轄 事 業 部 直 轄 営 業 部 部 長
部 会 員 高 瀬 博 敏 (株)博 報 堂 企 画 業 務 局 企 画 営 業 一 部 ア カ ウ ン ト デ ィ レ ク タ ー 部 会 員 伊 藤 誠 敏 (株) イ ン タ ー ネ ッ ト イ ニ シ ア テ ィ ブ
ネ ッ ト ワ ー ク イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 部 シ ニ ア コ ン サ ル タ ン ト 部 会 員 秋 本 達 哉 (株)建 設 技 術 研 究 所 東 京 本 社 情 報 部 主 任 技 師
部 会 員 森 康 雄 (株)熊 谷 組 土 木 事 業 本 部 土 木 技 術 部 土 木 技 術 グ ル ー プ 副 部 長 部 会 員 中 出 剛 (株)熊 谷 組 土 木 事 業 本 部 土 木 設 計 部 地 質 ・ 基 礎 グ ル ー プ 副 長 部 会 員 辻 賢 之 (株)熊 谷 組 プ ロ ジ ェ ク ト エ ン ジ ニ ア リ ン グ 室
交 通 イ ン フ ラ グ ル ー プ 副 部 長
事 務 局 橋 本 励 (財)エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 地 下 開 発 利 用 研 究 セ ン タ ー 技 術 開 発 第 一 部 主 任 研 究 員
事 務 局 矢 沢 成 尚 (株)熊 谷 組 プ ロ ジ ェ ク ト エ ン ジ ニ ア リ ン グ 室 環 境 グ ル ー プ 課 長
事 務 局 吉 村 丈 晴 (株)熊 谷 組 プ ロ ジ ェ ク ト エ ン ジ ニ ア リ ン グ 室
IT 技 術 を 活 用 し た 災 害 時 の 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム に 関 す る 研 究
目 次 序
委 員 会 委 員 名 簿 ・ 作 業 部 会 名 簿
第 1 章 調 査 の 背 景 と 目 的 1
1.1 我 が 国 の 防 災 対 策 1
1.2 自 治 体 に お け る 地 震 防 災 の 現 況 5
1.3 調 査 の 方 向 性 7
1.4 調 査 研 究 の 進 め 方 9
第 2 章 既 往 研 究 ・ 地 域 防 災 計 画 の レ ビ ュ ー 12
2.1 既 往 研 究 の 分 類 と 問 題 点 の 抽 出 12
2.2 情 報 収 集 ・ 発 信 に お け る 問 題 点 18
2.3 地 域 防 災 計 画 に お け る 課 題 18
第 3 章 緊 急 輸 送 ・ 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク の 現 状 22
3.1 危 機 管 理 の た め の 情 報 の あ り 方 22
3.2 現 在 の 防 災 情 報 体 系 に つ い て 26
3.3 道 路 構 造 物 の 被 害 情 報 収 集 の あ り 方 31
3.4 民 間 企 業 の 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク の 現 状 39
第 4 章 物 資 輸 送 戦 略 の 必 要 性 と 提 案 43
4.1 災 害 支 援 に 必 要 と さ れ る 情 報 と そ の 流 れ 45
4.2 物 資 輸 送 の 基 本 概 念 47
4.3 物 資 輸 送 オ ペ レ ー シ ョ ン の 提 案 50
第 5 章 民 間 企 業 お よ び 行 政 ヒ ア リ ン グ 54
5.1 緊 急 物 資 輸 送 に 係 る 国 や 地 方 自 治 体 の 役 割 に つ い て 54 5.2 民 間 企 業 へ の ヒ ア リ ン グ の ま と め 56
5.3 行 政 機 関 へ の ヒ ア リ ン グ の ま と め 60 5.4 ヒ ア リ ン グ を 通 し て 明 ら か に な っ た 課 題 67 第 6 章 シ ス テ ム の 検 討 と 課 題 71
6.1 民 間 に よ る 物 資 輸 送 の た め の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 提 案 71 6.2 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム に 関 す る ス キ ー ム の 検 討 77 6.3 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム 実 現 の た め の 要 件 83 6.4 ガレキ輸送オペレーションシステムとしての活用の方向性 100 6.5 救 援 オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム 構 築 へ の 課 題 102
第 7 章 阪 神 ・淡 路 大 震 災 の 整 理 と 法 制 度 の 検 討 105 7.1 現 行 法 制 度 と の 関 連 、 課 題 の 整 理 105
7.2 大 震 災 を 想 定 し た 法 制 度 の あ り 方 113 第 8 章 最 終 報 告 の ま と め 120
巻 末 : 参 考 資 料 122
第 1 章 調査の背景と目的
21 世紀をむかえ高度情報通信社会が発展しつつある現在、大都市部での地震災害はその物的な被 害だけでなく、地震による情報の遮断による企業活動の停止など、我が国の経済・社会活動全般に対 して甚大な被害を生じさせることが想定されている。このため、市民の生命と社会的な財を守るため の防災対策は適切な防災方針に基づき計画され、確実に運用される必要がある。
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、大都市を襲った直下型の地震であったため、神 戸・阪神間の諸都市を中心に壊滅的な打撃を被り、ストックの被害だけでも約10 兆円に及ぶという 多大な人的・物的被害を受けた。ライフラインである水道・電気・ガス・電話等は寸断され都市生活 は麻痺し、それに加えて、鉄道、道路、港湾等の都市インフラにも甚大な被害が発生するなど、構造 物の被害やそれに伴う緊急・復旧活動の遅延等社会的に大きな混乱を経験した1)。さらには、高度情 報通信社会が発展しつつある現在、大都市部での地震災害はその物的な被害だけでなく、地震による 情報の遮断による企業活動の停止など、我が国の経済・社会活動全般に対して甚大な被害を生じさせ ることが想定されている。阪神・淡路大震災時の復旧・復興活動における道路交通に起因する主な障 害事項としては、「時々刻々と変わる道路事情の把握の困難性」、「道路混雑による資機材運搬・後方 支援等の支障」、「倒壊家屋による道路の閉塞やガレキによる作業の困難」等が挙げられている。これ らの事項に共通していることは、道路交通に関する情報不足が大きな障害になっていることである。
木造密集市街地が残置され都市の再生が喫緊の課題である大都市部においては、大規模災害時の復 旧・復興に対してのマネジメント戦略は依然として大きな課題のままである2)。
このような背景のもと、本調査研究では、切迫性が指摘される東海地震や大規模な被害が広範囲に わたると想定される東南海地震等の巨大災害に対して、周辺都市のみならず都道府県界を跨いだ広域 的な協調関係による災害時の迅速かつ的確な復旧・復興対応を実施するためのマネジメント戦略につ いて方法論を提起するとともに、広域応援のエンジニアリングとしてのあり方について検討を行うこ とを目的とする。
1.1 我が国の防災対策
災害は、自然現象によって引き起こされる自然災害と、人間の諸活動が原因となって起きる人為災 害に大別されるが、その概念は非常に広範である。我が国の災害対策を講じていく上で最も基本とな る法律である災害対策基本法では、災害とは「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火そ の他の異常な自然現象または大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれ らに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。」と定義される。我が国における防災の現状 をまとめると表 1.1-1~1.1-3に示すとおりである。
表 1.1-1 「 防 災 」 の 現 状 3),4)
項目(課題) 間題点の所在 現状(これまでの対応や施策) 行 政 に お
け る 防 災 組 織 と 防 災計画
災害対策は、国、地方 公共団体、公共機関、
住民等の協力の下、総 合的、統一的に実施さ れる必要がある。
国:
• 内閣府に防災担当大臣が置かれ、防災に関する基本的な政策に 関する事項及び大規模災害発生時等の当該災害への対処に関 する事項について、企画立案・総合調整等を所掌
• 中央防災会議が基本計画を策定する。防災基本計画に基づき、
指定行政機関(24 府省庁)及び指定公共機関*(61 機関)は防災 業務計画を、地方公共団体は地域防災計画を作成
都道府県:
• 都道府県防災会議が定める都道府県地域防災計画等に基づき 災害対策を実施
市町村:
• 市町村防災会議または市町村長が定める市町村地域防災計画 等に基づき災害対策を実施
*:災害対策基本法に基づき内閣総理大臣が指定する独立行政 法人、認可法人特殊法人及び民間会杜(平成 15 年 4 月現在) 危 機 管 理
体 制 お よ び 応 急 対 策 活 動 体 制
発災直後の情報の収 集・連絡、活動体制の 確立
人命の救助・救急、医 療、消火等の迅速な活 動
災害対策本部:市町村長または都道府県知事を本部長として、
地方公共団体レベルに置かれる。
非常災害対策本部:防災担当大臣を本部長とする。
緊急災害対策本部:内閣総理大臣を本部長とする一首相官邸危 機管理センター(平成 14 年 4 月運用開始)
国交省:国土交通省防災センター(平成 13 年 6 月運用開始)
「災害救助法」(昭和 22 年法律第 118 号)
「日本赤十字社法」(昭和 27 年法律第 305 号)
「自衛隊法」(昭和 29 年法律第 165 号)
「警察法」(昭和 29 年法律第 162 号)
「警察官職務執行法」(昭和 23 年法律第 136 号)
「消防組織法」:地方公共団体の対応能力を超える場合、実働部 隊を広域的に派遣する。
自衛隊:陸上、海上、航空の各自衛官の定員合計約 26 万人(都 道府県知事等の要請で派遣)
警 察:警察官の定員約 24 万人
都道府県の枠を越えた広域的な災害対策の専門部隊で ある広域緊急援助隊約 4 千人
消 防:消防職員約 15 万人、消防団員約 94 万人、
緊急消防援助隊(2,028 部隊、約 2 万 9 千人) 海上保安庁:定員約 1 万 1 千人
災 害 一 般 共 通 事 項
自 助 ・ 共 助・公助の 役割分担
「自らの身は自らが 守る」基本
発災時には地域住民 の連携が必要 ボランティアの活動 環境の整備
防災意識の風化 都市化・過疎化の進行 高齢化杜会への対応 近年の災害での犠牲 者の多くが高齢者 杜会インフラや公共 サービスヘの過度の 依存
自主防災組織は全国 3,241 市区町村のうち 2,525 市区町村で設 置され、その数は約 10 万、組織率は約 60%(平成 14 年 4 月) 過疎地域の集落約 48,000 のうち約 10%において、人口減少や高 齢化の進行等により、地域住民相互の助け合いや農林地等の維 持・管理等が困難な状況。
災害時のボランティア活動の代表事例
• 阪神・淡路大震災
• ナホトカ号海難・流出油災害
• 平成 12 年東海豪雨災害
• 芸予地震(広島県呉市ほか)
平成 7 年 12 月「災害対策基本法」、「防災基本計画」でボランテ ィアの防災活動環境整備について明文化された。
「防災とボランティアの日」(1 月 17 日)、「防災とボランティ ア週間」(1 月 15 日~1 月 21 日)の制定
表 1.1-2 「 防 災 」 の 現 状(2)
項目(課題) 間題点の所在 現状(これまでの対応や施策) 行 政 ・ 地
域・住民の 連携
目常生活における人 の絆の重要性
防災情報の提供
• 地震発生の長期評価
• 地震被害想定(46 都道府県で作成)
• 各種ハザードマップ 情報・通信
体制
気象、地象、水象の観 測・監視とこれら情報 の提供
予報・警報の伝達 災害発生時の迅速・的 確な情報収集 時々刻々変化する状 況の把握、情報整理 災害情報の提供・共有 化
「気象業務法」(昭和 27 年法律第 165 号)
「公衆電気通信法」(昭和 28 年法律第 97 号)
「有線電気通信法」(昭和 28 年法律第 96 号)
「電波法」(昭和 25 年法律第工 31 号)
「放送法」(昭和 25 牛法律第 132 号)
中央防災無線網:一般公衆回線が途絶・輻輳した場合において も、非常災害対策本部、総理大臣官邸、指定行政機関、
指定公共機関等との間で災害情報の収集・伝達が行え るようにすることを目的として整備している。
消防防災無線網:消防庁と都道府県との間を結ぶ無線網。電 話、ファクシミリによる一斉通報が行えるほか、個別 通信による災害情報の収集・伝達が可能。
都道府県防災行政無線網:都道府県と市町村、防災関係機関等 との間を結ぶ無線通信網。
市町村防災行政無線網:市町村が災害情報を収集し、また、地 域住民に災害情報を周知させるために整傭している 無線網。
建設省多重無線通信回線:全国 800 余の出先機関を網羅する。
画像情報通信システム:ヘリコプター等による災害魏地の映 像情報を伝送できるシステムの充実・強化を進めてい る。
安否情報の提供:NTT は全国で約 800 万件の安否情報の蓄積が 可能な「災害用伝言ダイヤル」サービスを用意してい る。
地 域 避 難 体制 避難行動
避難勧告・指不の決定 と伝達
避難施設等の整備 避難誘導と移送体制 災害弱者の避難誘導
避難勧告・指不の法的権限(災害対策基本法ほか):市町村長、
警察官、海上保安官、知事又はその命を受けた職員、自衛官 都市防災構造化対策事業計画
• 三大都市圏、政令指定市、県庁所在の市、地震防災対策強 化地域内の都市ほか
計画対象施設等:避難地、避難路、避難施設周辺の耐震不燃化、
防災空き地、防災緩衝地帯、浸水対策施設 災
害 一 般 共 通 事 項
防災拠点 防災活動のための拠 点 救 護 や 復 旧 な ど 様々な防災活動二一 ズに応えられるよう に装備化された拠点 施設
防災センター
• 全国で 428 施設が整備されている。
• 地域的な偏りや各施設聞の連携不足等が指摘されている。
厚生労働省:全国 10 箇所の防災拠点国立病院の整備、広域災 害・救急医療情報システムの整備、杜会福祉施設にお ける防災施設整備等への補助
農水省:災害対策用乾パン及び乾燥米飯計約 26 万食を政府倉 庫等に備蓄
表 1.1-3 「 防 災 」 の 現 状(3)
項目(課題) 間題点の所在 現状(これまでの対応や施策)
災 害 一 般 共 通 事 項
防 災 ま ち づくり
災害に強いまち 地震が起きても建物 その他が壊れないま ち
火災が発生しないま ち
火災が延焼しないま ち
死傷者が発生しない まち
迅速に復旧・復興する まち
「建築基準法」、「都市計函法」、「都市公園法」、「都市再開発 法」、「土地区画整理法」、「宅地造成等規制法」、「住宅地区改 良法」、「防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の 特別措置等に関する法律」(昭和 47 年法律第 132 号)
「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」
平成 9 年 5 月制定
都市再生プロジェクト第 3 次決定(平成 13 年 12 月)
• 道路・公園整備等による連続した骨格軸の形成
• 火災危険度の高い市街地(全国で約 8,000ha)を重点地区と して、空き地確保、建物の砥震不燃化等の整備
• 「全国都市再生のための緊急措置~稚内から石垣まで」(都 市再生本部報告平成 14 年 10 月 4 目)
• 「安全で安心なまちづくり」で「防災まちづくり」の推進:
密集市街地、都市水害、震災時の帰宅困難者対策等 災 害 教 育
訓練
一人ひとりが防災に 関する意識を高め、防 災に関する正しい知 識や技術を身に付け ることが重要
「防災の目」(9 月 1 目)、「防災週間」(8 月 30 目~9 月 5 目) の制定(昭和 57 年 5 月 11 目閣議決定)
災害対策基本法第 48 条に訓練実施義務の規定 中央防災会議による「総合防災訓練大綱」の決定
科 学 技 術 研究
災害対策を効果的に 講じるための研究開 発
「防災に関する研究開発基本計画」
(昭和 56 年 7 月決定、平成 5 年 12 月改訂) 災
害 一 般 共 通 事 項
国 際 防 災 協力
財政・経済の貧困、対 策技術の整備の遅れ が災害を招き、災害に よる打撃が財政・経済 の貧困、対策技術の整 備の遅れに繋がる、と いう悪循環を断ち切 るため、災害の多い発 展途上国に協力する。
国際的な防災協力は国連機関、各国政府、国際赤十字、NG0 等によって進められている。
目本の国際防災協力は、外務省国際協力事業団(JICA)、国際 協力銀行(JBIC)、日本赤十字杜などが中心。
• 技術協力(開発途上国からの研修員の受け入れ、JICA によ る第三国研修、専門家・青年海外鴇力隊の派遺、国際緊急 援助隊 (JDR)の派遣)
• 無償資金協力、有償資金協力
• 国連機関、国際機関等への出資、拠出
1990 年~1999 年国連「国際防災の 10 年」の活動 2000 年から「国際防災戦略(ISDR)」活動開始。目的は、
• 災害対応力の強いコミュニティの形成
• 災害後の対応中心から災害の予防・管理への進化
1.2 自治体における地震防災の現況
阪神・淡路大震災を契機として、各地域で阪神・淡路大震災レベルの都市直下型の大規模地震を想 定した被害想定調査などが実施され、それを踏まえた地域防災計画の見直しが進められてきている。
自治体が策定する地域防災計画は、災害による住民の被害軽減を目的として策定されるものであり、
災害対策基本法により、策定が義務づけられている。
地域防災計画は、都道府県や市町村の地域について、地域の実情に即して、地域の防災機関が防災 のために処理すべき業務などを具体的に定める計画であり、各地方防災会議または市町村長が防災基 本計画に基づき作成することになっている。すなわち、都道府県および市町村では、防災会議が地域 防災計画を策定し、それに基づいて、防災担当部局が減災のための施策を推進している。
地域防災計画には、災害の発生や拡大を未然に防ぐ方法(災害予防)、災害時に発生した事項に対 処する方法(応急対応)、災害後の問題解決し平常状態への復帰の方法(復旧・復興)等の内容が記 載されている。加えて、地震防災対策強化区域に指定される自治体では、東海地震への対応について も記載されている。
図 1.2-1に、名古屋市の地域防災計画5)の目次を示す。
図 1.2-1 地域防災計画における主な記載事項(名古屋市のものを参照)
東海地震や首都直下地震など大規模地震災害の危険性が指摘される中、災害発生時あるいは復興業 務に必要な情報を管理するシステムとしてGIS(地理情報システム)を使った災害情報システムを構 築する自治体が増えている。
以下に先進的に整備されてきた静岡県の事例について取りまとめる。
第1章 総 則 第17節 区防災調整会議 第22節 ライフライン施設の応急復旧
第1節 計画の目的 第18節 震災対策の推進 【給水及び水道施設等応急対策】
第2節 計画の性格等 第3章 災害応急対策計画 【下水道施設応急対策】
第3節 各機関の実施責任 第1節 災害警戒本部の設置及び運営 【電信電話施設応急復旧計画(NTT西日本)】
第4節 各機関の処理すべき事務又は 第2節 災害対策本部の設置及び運営 【ガス施設応急復旧計画(東邦ガス㈱)】
業務の大綱 第3節 初動活動体制 【電力施設応急復旧計画(中部電力㈱)】
第5節 市民等の基本的責務 第4節 情報連絡活動 第23節 交通施設の応急対策
第6節 本市の概況 第5節 広報・広聴活動 第24節 事業所等の安全対策
第7節 地震及び被害の想定 第6節 災害救助法の適用 第25節 二次災害の防止
第2章 災害予防計画 第7節 応援要請 第26節 金融対策計画
第1節 都市の防災構造強化 第8節 消防・水防活動 第4章 災害復旧計画
第2節 公共施設の整備 第9節 避 難 第1節 民生安定のための緊急措置
第3節 ライフラインの整備 第10節 医療救護・保健衛生 第2節 災害復旧 第4節 交通施設の整備 第11節 輸送・緊急輸送道路 第3節 災害復興計画
第5節 防災拠点の整備 【輸 送】 第5章 地震防災強化計画
第6節 輸送体制の整備 【緊急輸送道路】 第1節 総則
第7節 防災情報網の整備 第12節 食品・生活必需品等の供給 第2節 地震災害警戒本部の設置等 第8節 救護・救援体制の整備 第13節 災害弱者対策 第3節 地震防災応急対策要員の参集 第9節 避難体制の整備 第14節 遺体の捜索、処理及び火葬 第4節 地震防災応急対策に係る措置に 第10節 災害弱者対策 第15節 ごみ・し尿・災害廃棄物 関する事項
第11節 防災意識の啓発及び防災訓練 第16節 住宅等応急対策 第5節 地震防災上緊急に整備すべき施設等
第12節 地域防災力の向上 第17節 文教対策 の整備計画
第13節 事業所等への安全指導 第18節 ボランティアとの連携 第6節 大規模な地震に係る防災訓練計画 第14節 交通安全施設等の整備 第19節 労務供給 第7節 地震防災上必要な教育及び広報に 第15節 重要データの管理 第20節 区の応急対策活動 関する計画
第16節 津波対策 第21節 警察活動
◇ 静岡県の事例
想定される東海地震のような激甚な被害が広域に発生する災害に対応するためには、被害状況や災 害応急対策に関する情報を防災関係機関が効率的に共有し、迅速な対策を実施することが必要である。
このため、静岡県では防災行政無線などの通信ネットワークを活用し、情報共有のためのシステム構 築を行っている6)。
さらに、被災直後の情報が輻輳し混乱する災害対策本部の災害時情報共有システムとして、クライ アント・サーバー方式により各機関が情報を共有する「静岡県総合防災情報支援システム;ASSIST-
Ⅱ」として運用している。機能面ではGISを活用した被害情報収集や、GPS情報付きのヘリテレ映 像を静止画に取り込み電子地図上に貼り付ける機能が付加されるなど GIS 機能の充実を図っている システムである。
また、被害想定をパンフレット等の紙ベースによる防災情報の提供から、IT 技術の進歩普及を受 け、インターネットを介したWeb-GIS化により地震被害想定被害結果や防災に関する各種情報の提 供を行っている。図 1.2-2に示すように、静岡県のHPを通じ2001年6月より「静岡県防災情報イ ンターネットGIS」として提供を行っている7)。
図 1.2-2 静岡県防災情報インターネット GIS の画面8)
出典:静岡県HP、http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/rdd/gis/to13.Htm
1.3 調査の方向性
危機管理の視点に立脚すると、地震発生後の被害を最小限に抑えるためには道路の役割は非常に重 要である。このため、発災直後の情報が輻輳する初動段階でのIT を活用したセンシング技術の導入 は、今後の都市型災害に対応するために必要不可欠となってきている。
本調査研究では、切迫性が指摘される東海地震や大規模な被害が広範囲にわたると想定される東南 海地震等の巨大災害に対して、周辺都市のみならず都道府県界を跨いだ広域的な協調関係による災害 時の迅速かつ的確な復旧・復興対応を実施するためのマネジメント戦略について方法論を提起すると ともに、広域応援のエンジニアリングとしてのあり方について検討を行う。
本研究が対象とする範囲としては、図 1.3-1に示すように大規模震災から復旧期・復興期における 緊急物資やガレキ輸送にしぼって論を進める方針とする。
図 1.3-1 本研究において対象とする活動範囲
平成 17 年度は、以下の事項を研究の対象として、次年度以降にシステムの概念の検討が行われた。
① ITを活用した大規模災害に対応したセンシング技術の検討 a)阪神大震災・新潟県中越地震等における事例調査
阪神・淡路大震災、新潟県中越地震を事例として、道路交通の被害状況の確認状況と緊急輸送 情報システムに係る課題について、被災地での情報ニーズを明らかにし、情報通信技術(IT)を活 用した支援方策をレビューする。
地震 津波
ゆれ 液状化
崖崩れ 土石流
救出者 の発生 建物被害
延焼 自動車被災
鉄道被災
一般火気出火
消火活動
被災者救 援活動
交通被害・支障 ライフライン被害・支障 危険物漏洩
危険物出火
がれき処理
住宅供給 避難所避難者
帰宅困難者
がれき発生 孤立地区
医療救護 活動 死 者 救出活動
負傷者
被害
復旧復興活動情報収集 伝達 広域応援
地域の オペレーション 初動~数日
初動~数日
3日目以降
復旧~復興 上水,電気,ガス,電話
道路,鉄道,港湾
地震 津波
ゆれ 液状化
崖崩れ 土石流
救出者 の発生 建物被害
延焼 自動車被災
鉄道被災
一般火気出火
消火活動
被災者救 援活動
交通被害・支障 ライフライン被害・支障 危険物漏洩
危険物出火
がれき処理
住宅供給 避難所避難者
帰宅困難者
がれき発生 孤立地区
医療救護 活動 死 者 救出活動
負傷者 死 者 負傷者
被害
被害
復旧復興活動復旧復興活動情報収集 伝達 広域応援
地域の オペレーション 初動~数日
初動~数日
3日目以降
復旧~復興 上水,電気,ガス,電話
道路,鉄道,港湾
b)インフラ構造物へのモニタリングシステム導入事例の調査
道路管理者などが整備しているCCDカメラやITVによる道路管理について、現在導入されて いるシステムの事例を調査する。民間サイドで提供しているWEBカメラによる映像などを結び つけたITを活用したモニタリングシステムについても調査を行う。
c)ITを活用したモニタリングシステムについての概念設計
現状の個別システムの課題と GIS システムを組み合わせたシステムについて、総合的な緊急 輸送ネットワークに資するシステムの概略の検討を行う。
② 民間による交通基盤情報を活用した物資輸送のためのプラットフォームの概念整理
阪神・淡路大震災において顕在化したような援助物資の偏在、代替ルートが認識できない等の状 況に対して、
• 行政で対応できない民間企業による災害救援体制の構築
• 官民協調で災害に対応するシステム
• 道路被害を反映した物資の輸送に絞った形の輸送マネジメントに活用できるシステム を目指して、IT を活用した大規模災害に対応できるセンシング技術を組み合わせた『民間による 交通基盤情報を活用した物資輸送のためのプラットフォーム』の概念整理を行う。
本年度は、災害対策を考えていく上での減災対策サイクル(減災・準備・対応・復旧)を理解した 上で、災害発生後の行政機関の抱える課題の原因を行政機関へのヒアリング等により災害対策本部の 対応計画、その準備体制、さらに実際の災害対応事例を題材として探ることを目的とする。具体的に は、新潟中越地震における新潟県の初動時の緊急物資輸送対応業務を対象として、県の資料や職員へ のヒアリングによってその課題を明らかにし、災害対応の課題解決のための「知識」の共有策と今後 の災害対応に有効に活用されるシステムの構築について明らかにする。
調査項目は、以下のとおりとする。
(1)進めてきたネットワーク構想における未調査の箇所の整理
① 新潟県中越地震における問題点の把握(行政へのヒアリングを実施)
阪神・淡路大震災のレビューの他、新潟県中越地震を事例として、道路交通の被害状況の確認 状況と緊急輸送情報システムに係る課題について、被災地でのヒアリングを通して情報ニーズを 明らかにする。
新潟県担当部局等に対してのヒアリング調査を実施する
② 緊急物資輸送について輸送業界のニーズの把握
緊急物資輸送のニーズについて、コンビニ業界、輸送団体等にヒアリング調査を実施し、緊急 物資輸送に関して民間企業の役割の重要性について検討を行う。
コンビニ業界および物流業界へのヒアリングの実施
ヒアリング内容:発災時の体制や検討システムの活用可能性など
③ 東海地震を対象とした行政ニーズの把握
東海地震を対象として、愛知県等における行政ニーズ、物資輸送に関して行政が最も必要とす る事項を把握するとともに、行政で対応できない事項について民間サイドにおける協力のあり方 を検討する。
東海地震の被災想定地域における行政ニーズについて愛知県等のヒアリングを実施する。
④ 交通情報の提供システムの現状に関する調査
交通情報の提供システムの現状について、その実態について把握を行い、現状の個別システム の課題を取りまとめる。
調査は、民間の交通情報提供会社を対象に実施する。
(2)民間サイドにおける情報ネットワークに関する概念の構築
ICTを活用した総合的な災害時の緊急輸送ネットワークシステムの概略検討を行う。具体的な 事項は以下に示すとおりであり、自治体へのヒアリングを通してシステムの利点を明確化し、プ ロトシステムの概念構築を目標とする。
a)システム内容・範囲の比較検討等、情報ネットワーク構築に関する精査の実施 b)避難所での入力情報の収集インターフェイスやアプリケーションの概念整理 c)プロトシステム構築に向けての課題整理
(3)法制度面からの課題の抽出
災害時の緊急物資輸送を支援するシステムの構築上、現行法制度面の問題点について明らかにする。
1.4 調査研究の進め方
本調査研究では、委員会のもとに作業部会を設置し、表 1.4-1に示す項目について検討を行った。
表 1.4-1 調査の実施項目とスケジュール
① ② ④ ⑤ ⑥ ⑦
5/22 9/27 12/4 2/5 2/20 3/15
委員会
(1)新潟県中越地震の事例調査・行政ヒアリング -ヒアリング・現地調査の実施
(2)緊急輸送に関する輸送業界のニーズの把握 -コンビニ業界のニーズ把握
-物流業界のニーズ把握
(3)東海地震を対象とした行政ニーズ把握 -愛知県・静岡県等のニーズ把握(ヒアリング)
(4)交通情報提供システムの現状に関する調査 -日本道路交通情報センター等の交通運用の 現状についての調査
(5)情報ネットワークに関する精査と概念の構築 -システム内容・範囲の比較検討等 -情報ネットワーク構築に関する精査の実施 -インターフェイスやアプリケーションの概念整理 (6)課題の抽出・整理
(7)最終報告書のまとめ 検討項目
作業部会 第1回
委員会 8/9 コンビニ等
ヒアリング 新潟県等
ヒアリング 7/20,21
交通情報 会社等ヒ アリング 10/12
第2回 委員会
11/21
第3回 委員会
2/27
③及び 愛知県等
ヒアリング 11/13,14
▼
▼
本調査研究においては、3回の委員会とともに、作業部会を7回開催し、上記した内容の検討およ び最終報告書のとりまとめを行った。また、行政機関や民間企業へのヒアリングも精力的に実施して いる。
下記に平成18年度の委員会および作業部会、行政機関等へのヒアリングの開催経過を示す。
【 平成18年度に開催した委員会 】
平成 18 年 8月 9日 第1回 平成 18 年 11 月 21 日 第2回 平成 19 年 2月 27 日 第3回
【 平成18年度に開催した作業部会 】
平成 18 年 5月 22 日 第1回 平成 18 年 9月 27 日 第2回 平成 18 年 11 月 13 日 第3回 平成 18 年 12 月 4日 第4回 平成 19 年 2月 5日 第5回 平成 19 年 2月 20 日 第6回 平成 19 年 3月 15 日 第7回
【 平成18年度に実施したヒアリング 】
平成 18 年 6月 9日 物流企業ヒアリング
平成 18 年 6月 14 日 第1回コンビニチェーンヒアリング 平成 18 年 6月 23 日 第2回コンビニチェーンヒアリング
平成 18 年 7月 20~21 第1回行政機関ヒアリング(他に輸送業団体へも実施)
平成 18 年 10 月 12 日 交通情報提供会社ヒアリング 平成 18 年 11 月 13~14 日 第2回行政機関等ヒアリング
参考文献
1) 永田尚人・山本幸司:地震被害支援システムの構築とコンビニ活用を考慮した震災時の救援 物資輸送オペレーションに関する一考察、土木学会 2004 年度土木情報利用技術論文集,
vol.10,pp.109-116,2004.10
2) (財)セコム科学時術振興財団:広域地震災害時における都市住民の防災対策に関する研究報
告書,2000.1
3) 内閣府:平成15年版防災白書,http://www.bousai.go.jp/
4) 内閣府:平成16 年版防災白書の概要,http://www.bousai.go.jp/名古屋市:名古屋市地域防 災計画 震災対策編,2003
5) 名古屋市:名古屋市地域防災計画 ②地震災害対策編 (平成15年度)
6) 岩田孝仁ほか:静岡県における防災情報共有化の取り組み,土木学会第6回地震災害マネジ メントセミナー,pp.55-58,2005.3
7) (財)日本建設情報総合センター:JACIC情報Vol.18 No.1,2003 8) 静岡県HP,http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/rdd/gis/to13.Htm
第2章 既往研究・地域防災計画のレビュー
阪神・淡路大震災を契機として、地震被害や地域防災計画に関する問題点や課題が整理されてきて いる。各地域で阪神・淡路大震災レベルの都市直下型の大規模地震を想定した被害想定調査などが実 施されてきており、それを踏まえた地域防災計画の見直しが進められている。地震による被害は、そ の規模や震源位置などの外的要因、その地域が持つ社会・経済的側面など、様々な要因が複雑に絡み 合うため同一事象の再現性はほとんどなく、地震ごとに異なる様相を示すものである。このため、被 害の想定は、各地域の現状に即した災害対策を考慮したものでなければならない1)。
一般に災害発生時においては、各行政機関、企業等は災害への対応を行うが、切迫性が指摘されて いる東海地震のように被害が広範囲にわたると想定される災害では、周辺都市のみならず都道府県界 をまたいだ、より広域的な協調関係により災害への対応を行う必要がある。例えば、各地方自治体が 策定・公表している防災計画では、「災害予防計画」、「応急対策」、「災害復旧と復興計画」を定めて いる。この中では、被害想定に基づき主要資機材・支援物資の備蓄、避難所整備の計画等を定めると ともに、部局毎の事務分掌について規程し、国をはじめとする各防災関係機関や周辺都市との相互応 援に関する協定の締結を行っている。しかし、これらの計画書においては、被災者の支援や被災地へ の広域的な物資搬入についての具体的な計画が示されているものが少ないのが現状である2)~7)。
阪神・淡路大震災における貴重な経験を生かしていくためには、大規模地震における広域的な支援 態勢の構築を考慮した計画を事前に整備策定する必要があるものと考えられる。
ここでは、まず、阪神・淡路大震災における道路の被害状況と物資輸送の課題、被害情報が輻輳す る中での情報収集・発信における問題点について既往研究からその問題点を抽出するとともに、阪 神・淡路大震災の教訓をもとに改定・増強されてきた地域防災計画が内包する問題点の把握を行う。
さらには、地震災害における危機管理と緊急時対応の現状について概観する。
2.1 既往研究の分類と問題点の抽出
本節では、本研究の目的と位置付けを明確にするために、まず交通インフラの被害と緊急物資輸送 という側面から見た阪神・淡路大震災に関する既往の研究成果を概括する。
阪神・淡路大震災では、交通混乱の発生と非常時交通管理の欠陥が露呈した背景に関して、多くの 問題点が指摘されている。第1点として、被害状態を迅速かつ正確に把握する情報収集体制が取られ ていないことである。第2点として、発災時の混乱状況では、停電や管制機器の直接被害などにより 交通データの収集が困難であることである。第3点として交通システムは独自に管理されており総合 的な交通管理システムになっておらず、発災時のような時間経過とともに状況が変化していく危機的 状況への対応ができないことである。第4点としては、道路システムと結合した緊急道路、物流拠点、
避難所の指定や配置の事前計画が検討されていないことである。地域防災計画では緊急交通路等の指 定されているものの、平常時から一般市民への情報提供が十分になされておらず、災害時の交通混雑 が避けられないことも想定される。第5点として、緊急道路が被害を受けた場合に直ちに代替路が指 定される必要があることである8)。
震災時における交通の機能低下を極力抑制するためには、災害時の時間軸上で複合的に交通運用を 行うマネジメントシステムを構築することが望ましい。このような論点から、阪神・淡路大震災に関 する既往の研究成果を概括する。
【 震災後の道路交通の状況について 】
街路の機能障害は、各種の緊急活動に大きな支障をもたらしており、例えば、街路閉塞により、消 防活動や緊急物資輸送が阻害されている。街路閉塞状況について塚口9)は、道路被害の特徴としては、
高架構造物の倒壊、路面破壊、沿道建物等の倒壊、港湾等の交通結節点の機能低下を指摘するととも に、神戸市灘区東部における道路閉塞が崩壊家屋にその最大の原因があることや電柱の倒壊、ビルか らの構造物の一部落下などをあげている。
また、街路閉塞に関する要因分析を行うことによって、狭幅員の道路についての通行不能例の多さ を指摘している。幅員 12m以上の場合はほとんど車の通行が可能であったが、8m以下になると通 行不能がさらに増加し、4m未満では車は通行不可の割合が急増し 35%にも達していることが明ら かになっている10)。
震災による交通需要には大きな変化をもたらしており、この震災の特徴として、防災関係機関によ る公的な交通だけでなく、一般市民・被災者による避難、物資輸送、支援などの交通が多かったこと をあげ、これらの交通が重要度・緊急性および総量の点から無視できない状況となったことが今後の 防災交通対策における最大の課題であるとしている11)。
このように、阪神・淡路大震災では交通状況の把握や物資輸送のマネジメント力不足が激しい渋滞 につながっており、交通管制機器ハードの耐震性不足もその一因と理解される。
図 2.1-1に、阪神・淡路大震災における物資輸送の隘路となった主要幹線道路の被災状況図を示す。
(国土交通省資料)
図 2.1-1 阪神・淡路大震災における主要道路被災図 出典:中央防災会議首都直下地震対策専門調査会、国土交通省資料
【 物資輸送関連 】
交通渋滞の発生が、配送拠点への物資到着、配送拠点から避難所までの物資配送の遅れをもたらし たことや、発災当初の配送現場では必要量の把握、どこで何が必要とされているかも不明のまま、何 が届いているのかもわからない状況での物資配送がなされており、震災後の混乱状況下での物資輸送 の体制とその情報管理のあり方も大きな課題であることが理解され、IT を活用した輸送ネットワー ク構築の要請が高いと考えられる。
また、直接輸送に際して、大型トラックによる直接輸送では物資が幹線道路沿いの大規模な避難所 に偏ったことも指摘しており、緊急物資輸送マネジメントの重要性が理解され、行政の職員だけでは、
人員不足とロジスティクス関連ノウハウの欠如を補完する支援のあり方も大きな課題である。その一 方で、被災地内のスーパー、コンビニエンスストア等は、被災しながらも開店したところも数多くあ り、渋滞を避けるためオートバイ輸送を行うなどの工夫もするなど、物資輸送に関する民間企業の活 用が上記の課題を解決する方策であることが理解できる12)。
飯田恭敬他による「阪神・淡路大震災の実態調査に基づいた震災時の道路交通マネージメントの研 究、(財)国際交通安全学会,1998.3」8)に阪神・淡路大震災における道路交通の課題がまとめられて おり、その要約を以下にとりまとめる。
表 2.1-1 阪神・淡路大震災の実態調査に基づいた道路交通マネージメントの課題(1)
ページ 記載内容(要約) 課題など
1~2
研究の背景と目的
阪神・淡路大震災における交通混乱の発 生と非常時の交通管理が欠如の背景と 問題点を概括している
♦ 情報収集の体制が作られていないこと
(一箇所での集中管理の必要性)
♦ 発災時の交通行動特性が不明である
♦ 発災後の交通データの収集が困難
♦ 交通管理システムの一元化が進んでい ないこと(道路と鉄道が別々の管理)
♦ 突発事象時の交通管理システムは複雑 で高度であること、交通は時系列で変化
♦ する モード結節施設を有する交通ネットワ ークの整備が不十分である(代替路の確
♦ 保) 道路システムと結合した緊急道路、救援 物流基地等の指定や配置の事前計画が十 分に検討されていない
7~18
震災直後の道路交通の実態
発災後72時間の交通流動状況の把握は 困難であり、客観的資料としての空中写 真を活用した道路交通状況の分析につ いて述べている。
♦ 被災地外からの車両の流入より、被災地 内での自動車の流動が多かった。
♦ 発災後、速やかな写真撮影とそれを分析 するシステムの構築が必要。
♦ 交通管理上問題となる地点の明確化に は、空中写真を用いた道路被害や道路交 通状況を表す基本図を作成し、現場から の詳細なデータで修正を行う方法も考え られる。
19~65
震災直後の地区道路の閉塞状況の分 析
阪神・淡路大震災では、道路の被害は幹 線道路だけにとどまらず地区内街路に まで及び、沿道建築物の倒壊等により完 全に閉塞された道路も少なくなかった。
この結果、避難、救助・救援活動に多大 な影響を及ぼした。今後の街づくりで は、災害時にも機能する道路もの整備が 不可欠である。
♦ 街路閉塞により重機が現場に到達でき ないなど、重機の使用が困難となるケー スが生じている。
♦ 街路閉塞により迂回が困難な場合、給 食・炊き出しの要請時間が守られない等、
救援活動にも支障をきたし、通行機能の 低下が諸活動に及ぼす影響は大きかっ
♦ た。 沿道建築物の被災程度にもよるが、街路 幅員が通行可能性に強く影響し、車道幅
員で10~12m以上の街路では通行が概ね
可能である。
♦ 街路網の状況把握は各機関に共通な情 報であるが、各機関で独自に体系的とは いえない方法で情報を収集していた。迅 速な把握と関係機関への即時提供が重要 である。
♦ 孤立ノードが密集して発生する箇所は、
道路網が 4m 未満の狭幅員街路のみで構 成され、かつ沿道に老朽家屋が立地して いる。
表 2.1-2 阪神・淡路大震災の実態調査に基づいた道路交通マネージメントの課題(2)
ページ 記載内容(要約) 課題など
125~139
震災後の交通対策の状況
発災直後から2月末くらいまでの緊急輸 送路と広域の迂回路についての記載、一 般道路の菱状況と交通規制箇所の時間 的な推移について記載されている
♦ マンパワー不足への対応 → 発災直度 は、警察等の機関では人命救助、状況把 握、規制に大量に人員をさくため、緊急 輸送路を事前に設定し、その確保のため に必要な人員、資機材を用意しておくこ とが重要
♦ 合理的かつ公正性の高い交通規制 → 緊急標章の大量発行やコピーによる発行 で公正性を損ない、渋滞を助長した面が ある。事前登録の厳格な運用が必要であ る。
141~161
緊急・救援物資の輸送
ピーク時で30 万人の人々が避難所生活 を余儀なくされた。交通網が寸断、人手 不足に加え、行政も想定していなかった 事態のため十分な対応が出来なかった こと等もあり、救援物資の輸送は困難を 極めている。
この結果、市民生活を支える救援物資輸 送の重要性が再認識されることとなっ た。
ここでは、神戸市における配送拠点やそ の分布、救援基地の運営状況等が記載さ れ、救援物資輸送の実態とその問題点を 考察している。
救援物資輸送上の問題点
♦ 交通渋滞による物資配送の遅延の多発、
早朝・深夜に物資が到達し、これに対応 する人員配置の必要性があった。
♦ 物資の一時的な大量到着への対応が困
♦ 難 物資の在庫管理の困難さ
♦ 交通事情の悪化、建物倒壊、湾岸部の液 状化により配送拠点の適地が限定され、
適切な場所への拠点設置が出来なかっ
♦ た。 行政マンは物流の専門家ではないため、
作業効率が悪い。→ 業者に委託
♦ トラック協会から加盟事業者に緊急輸 送の出動要請を行ったが、協会本部の被 災、業者の被災など、緊急時に備えた体 制のあり方が問題となった。
♦ 輸送に際しては、渋滞情報や迂回路情報 の入手が困難。また、他府県のドライバ ーは土地感が無く、長時間運転と労務状 況が悪かった。また、デポでの荷役設備 の不備もあり、運転手の負担が大きかっ
♦ た。 宅配便は、交通事情の悪化、臨海部に設 置されたターミナルの被災による使用不 能で2月中旬までサービスを中止。
♦ 被災地内の輸送拠点に替えて、代替の配 送拠点を被災地外に確保する体制の必要
♦ 性 代替輸送ルートの確保(海路、空路等)
♦ 平常時からの配送拠点施設整備の必要 性
表 2.1-3 阪神・淡路大震災の実態調査に基づいた道路交通マネージメントの課題(3)
ページ 記載内容(要約) 課題など
171~242
震災時の道路交通マネージメント 道路交通における施設の被害と交通流 動状況の把握の問題点、道路交通状況の 検出システムについての検討や道路交 通の管理システムにていての検討を行 っている。
♦ 発災直後の施設被害の状況把握は、巡視 に依存するため、人員の確保、現地への 交通、報告のための通信手段が隘路であ る。
♦ 車両感知器は停電により大部分が機能 停止、欠損率は14~20%であった。
♦ 信号機等の交通制御機器の修復が優先 され、車両感知器等の交通状況を「定量的 に把握機器の有効活用が出来ない。
♦ 情報を効率よく集約し、分りやすく表現 する情報システムの必要性。
♦ 正確で総合的な災害情報の把握の必要 性
♦ 生活道路等の機能支障は、緊急活動やラ イフラインの復旧に大きな影響を与え た。このため街路網の面的状況把握が必 要である
♦ 平常時からの交通流動観測体制の整備 が、緊急時の交通マネージメントに役立 つ
305~314
震災時交通マネージメントの体系化と 課題
震災時の交通マネージメントに関する 全体システムに関して、研究のまとめ、
事前対策から事後対策に向かって時間 軸上での動きについて記載されている。
♦ 被災状況の早期把握
♦ 道路復旧順位の決定
♦ 物流輸送基地の指定
♦ 緊急交通路の指定と修正
♦ 地上交通データの収集と補完
♦ 交通混乱期の交通管理システム
♦ 交通沈静期の交通管理システム
♦ エリア規制、時間規制の実施方法
♦ 経路誘導と交通量抑制
♦ 道路網の階層構造化
♦ 道路網の信頼性向上
♦ 緊急時対応のための道路余裕スペース
♦ 交通モードの相互連携
♦ 平常時からの災害時対応
2.2 情報収集・発信における問題点
【災害情報系】
阪神・淡路大震災では、発災当初、情報システムの輻輳など大きな課題が指摘されている。この反 省のもと、各自治体では防災情報システムの構築が進められている。
発災当初の災害情報に係わる課題として大きなものは、災害情報を集約すべき自治体の被災がある。
具体的には、兵庫県が導入していた「兵庫衛星通信ネットワーク」や防災行政無線が、停電や設備被 害のために当初は使用できなかったことがあげられる。行政機関相互の緊急連絡も停電により大きく 阻害され、停電時の非常用発電装置も作動はしたが容量の限界でダウンし、自家発電機も故障したた めに動力を完全に喪失する事態を招いている。これにより、復旧までの6時間、衛星通信は不通とな り各市町村や消防本部との連絡が取れない事態となった。この他にも、電話や通信システムは、輻輳 や施設被害などの影響だけでなく、問い合わせ電話の殺到などにより、防災関係機関相互の情報連絡 に最も重要な電話がほとんど使えない状況となっている13)。
消防関係も、応援出動した消防隊が地理不案内なために、地元の消防本部が先導役を務めるなど消 火作業を行う部隊を割いて対応しなければならないなど、道路交通の被災状況に関する情報を集約し、
代替経路などの経路情報を差配する交通マネジメントを構築するプラットフォームの必要性が理解 される。
また、警察、消防、自衛隊など、情報の水平展開もスムーズではなく、また、連絡手段となる電話 の輻輳などによって直後の要請は困難であり、情報系のダブルループ化の必要性が理解される。
一方、神戸市内の生活情報については、比較的数多く放送されていたが、地域によって生活情報は きわめて少ないなど、生活情報の過疎地域の出現により救援物資やボランティアが放送された地域だ けに集中するという弊害も出ている。災害報道や情報発信の面でのCATVの活用などリージョナル化 の必要性も明らかになっている13)。
阪神・淡路大震災以降、情報通信技術は飛躍的に技術革新が進んでおり、GISの活用や道路交通情 報を含めた高度化(ITS)等により、その情報基盤の整備が進められてきているが、デジタル情報を 共有化する仕組みは整っておらず、この面からも情報プラットフォーム構築の必要性が高いことが理 解される。
2.3 地域防災計画における課題
【 地域防災計画関連 】
震災前の神戸市地域防災計画では、緊急道路の確保については、わずかに『家屋密集地の場合、家 屋倒壊による道路の閉塞も考えられるが、極力歩行者の通路を確保するために障害物を除去する。付 近に使用可能な重機があればこれらを使用する。』と述べられているのみであった。自治体において は、大規模地震災害における街路閉塞の可能性が検討されていなかったことを示す事例である。
阪神・淡路大震災を経て改訂された地域防災計画では、市街地における都市基盤の重要性が明らか になったと捉え、市街地の道路ネットワークを積極的に確保する方向へと転換して来ている。他の自 治体でも、同様の地域防災計画の見直しが進められ、東京都では『骨格幹線道路の整備を促進して、
道路網の多重化を図るとともに、救援・消防活動にも有効な地域幹線道路の整備を進めていく。特に、
延焼遮断帯としての機能をもつ道路を重点に新設・拡幅を行う。また、避難道路に指定されている道
路についても、拡幅等、一層の整備促進を図る。』とされ、木造密集地での防災性向上の推進とも相 俟って『交通規制、道路啓開体制の抜本的強化』がうたわれている。
一方で、阪神・淡路大震災以降改訂が行われた多くの自治体の地域防災計画で、「他都道府県被災 時の応援」等の相互応援や「食料・生活必需品の輸送方法等の物資供給に関する事項の内容が深まっ ていない」ことを指摘している15)。これについては、多くの被災自治体が地域防災計画により協定先 へ物資調達の連絡の際、電話輻輳などにより連絡が取れない、調達先業者も被災しており調達先の変 更を余儀なくされるケースや動員職員に限度があり円滑な調達が困難だったことも一因と考えられ る。広域的な災害となった場合には、物資調達が困難になることが予測され、現状でも防災計画の大 きな課題である。
膨大な廃棄物処理関連では、震災ごみの処理スキームが地域防災計画の中で依然として明確となっ ておらず、大きな課題となっている。特に、仮置き場の選定と確保が、廃棄物処理上非常に重要であ り、事前に選定しておくことが早期復旧に資すると考えられる。
本調査研究では、阪神・淡路大震災で激甚な災害を受け地域防災計画の改訂を行った神戸市のほか、
首都直下地震が懸念される東京都および横浜市、東海地震の被害が想定される静岡県、静岡市、名古 屋市、の計6自治体における最新の地域防災計画について、本論文で対象とする災害応急対策計画の うち、広域連携、緊急物資輸送、ガレキ処理等の記載内容の比較検証を行った。この比較資料を参考 資料として巻末に示す。
また、地域防災計画のレビュー、国土交通省、東京都、静岡県等の自治体防災担当部局へのヒアリ ングを実施し、そのヒアリング結果を踏まえて、①防災の協力体制、②緊急時の情報システム、③緊 急物資輸送の課題、④ガレキの処理体系、の各項目で現状の策定済みの計画と地域防災計画上の課題 についてとりまとめた。この結果を表 2.3-1に示す。