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編集   日本地震工学会 情報コミュニケーション委員会 委員長  小檜山 雅之

副委員長 久田 嘉章

委員   久保 智弘 佐伯 琢磨 多幾山 法子 富田 孝史 皆川 佳祐 畑山 健    

公益社団法人 日本地震工学会

〒108-0014 東京都港区芝 5-26-20 建築会館4F TEL 03-5730-2831

FAX 03-5730-2830 Website: http://www.jaee.gr.jp/jp/ 

第 8 号

JAEE NEWSLETTER

2014 年 7 月 30日 発行

特集 各賞の受賞者から

原子力サイトにおける2011東北地震津波の検証

(掲載巻号:Vol. 13(2013年)、No. 2(特集号「2011年東日本大震災」その3))

公益社団法人

日本地震工学会

Japan Association for Earthquake Engineering

杉野 英治((独)原子力安全基盤機構)、呉 長江(同)、是永 眞理子(伊藤忠テクノソリューションズ(株))、

根本 信(応用地質(株))、岩渕 洋子((独)原子力安全基盤機構)、蛯沢 勝三(同)

 この度は、2013年度日本地震工学会論文賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究は、東北地方太平洋沖地震津波(以下、東北地震津波)

による福島第一原子力発電所事故を踏まえて実施した、旧原子力安全基盤機構(JNES)の緊急プロジェクトの成果をまとめたもの です。JNES の地震動・津波ハザード検討会の委員各位より貴重なご意見を頂き、心より御礼申し上げます。また、本研究の実施に 当たり、観測津波波形や観測地殻変動等の公開データを利用させていただきました。この紙面をお借りして深く御礼を申し上げます。

 2011 年 3 月 11 日に発生した東北地震津波は、福島第一原子力発電所に重大な事故をもたらしました。また、福島第二、女川、東 海第二の各原子力発電所にも被害を及ぼしました。著者らは、福島第一原子力発電所の事故等を教訓とし、今後の原子力発電所の 津波対策強化と安全性向上に生かすため、東北地震津波の波源を推定し、各原子力発電所に襲来した津波の再現及び各原子力発電 所間の津波高の差異に関する分析を行いました。その主な結果は、次の通りです。

(1) 東北地震津波の推定波源モデルは、上記 の4ヶ所の原子力発電所の痕跡高及び、

広域の観測記録(津波波形と地殻変動 量)を良好に再現することができまし た。特に、津波波源モデルのパラメー タとしてすべり分布の経時変化を考慮 したことにより、観測津波波形に見ら れた特徴的な波形を再現することがで きました。

(2) 20 秒を超える長周期地震動から推定さ れた震源断層モデルと上記の津波波源 モデルを比較したところ、それぞれ異 なる観測記録から得られたものである が、いずれも大きなすべりが日本海溝 付近の浅い部分に集中する点で一致す ることから、津波発生要因となる地殻 変動は長周期地震動と強い相関がある ことを示しました。

(3) 原子力発電所の津波高に大きな影響を及 ぼす波源の領域は、各原子力発電所で

 5 月 22 日に開催された本会第 2 回社員総会のあと、平成 25 年度功績賞・功労賞の贈呈式、ならびに論文賞・論文奨励賞の贈呈式・

記念講演が行われました。今号の JAEE Newsletter では、受賞者の方々から業績・研究の紹介をしていただきます。

異なるものの、いずれも波源全体の一部に集中 し、日本海溝付近のいわゆる津波地震型の地震 発生域であることを明らかにしました。

(4) 福島第一と福島第二の両原子力発電所における 津波高に差が生じた要因は、発電所近傍の浅部 海域における津波の屈折・反射の影響よりもむ しろ、遠方の波源と両原子力発電所の位置関係 に基づく津波伝播経路の違いに起因して、複数 の小断層(波源の一部)から発生する波形の重 なるタイミングの違いであることを明らかにし ました。

 東北地震津波の規模は我が国の数百年程度の歴史 記録には見られない巨大なものでした。これは、原 子力発電所の設計やリスク評価の分野にとって重要 な教訓です。今後、受賞論文の知見を活かしてこれ らの分野に取り組んでいきます。

(( 独 ) 原子力安全基盤機構(現、原子力規制庁   技術基盤グループ) ・杉野英治)

論文賞

図 1 津波波源モデルのすべり分布の経時変化

(2)

 この度は、2013年度日本地震工学会論文賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究は、東北地方太平洋沖地震津波(以下、東北地震津波)

による福島第一原子力発電所事故を踏まえて実施した、旧原子力安全基盤機構(JNES)の緊急プロジェクトの成果をまとめたもの です。JNES の地震動・津波ハザード検討会の委員各位より貴重なご意見を頂き、心より御礼申し上げます。また、本研究の実施に 当たり、観測津波波形や観測地殻変動等の公開データを利用させていただきました。この紙面をお借りして深く御礼を申し上げます。

 2011 年 3 月 11 日に発生した東北地震津波は、福島第一原子力発電所に重大な事故をもたらしました。また、福島第二、女川、東 海第二の各原子力発電所にも被害を及ぼしました。著者らは、福島第一原子力発電所の事故等を教訓とし、今後の原子力発電所の 津波対策強化と安全性向上に生かすため、東北地震津波の波源を推定し、各原子力発電所に襲来した津波の再現及び各原子力発電 所間の津波高の差異に関する分析を行いました。その主な結果は、次の通りです。

(1) 東北地震津波の推定波源モデルは、上記 の4ヶ所の原子力発電所の痕跡高及び、

広域の観測記録(津波波形と地殻変動 量)を良好に再現することができまし た。特に、津波波源モデルのパラメー タとしてすべり分布の経時変化を考慮 したことにより、観測津波波形に見ら れた特徴的な波形を再現することがで きました。

(2) 20 秒を超える長周期地震動から推定さ れた震源断層モデルと上記の津波波源 モデルを比較したところ、それぞれ異 なる観測記録から得られたものである が、いずれも大きなすべりが日本海溝 付近の浅い部分に集中する点で一致す ることから、津波発生要因となる地殻 変動は長周期地震動と強い相関がある ことを示しました。

(3) 原子力発電所の津波高に大きな影響を及 ぼす波源の領域は、各原子力発電所で

異なるものの、いずれも波源全体の一部に集中 し、日本海溝付近のいわゆる津波地震型の地震 発生域であることを明らかにしました。

(4) 福島第一と福島第二の両原子力発電所における 津波高に差が生じた要因は、発電所近傍の浅部 海域における津波の屈折・反射の影響よりもむ しろ、遠方の波源と両原子力発電所の位置関係 に基づく津波伝播経路の違いに起因して、複数 の小断層(波源の一部)から発生する波形の重 なるタイミングの違いであることを明らかにし ました。

 東北地震津波の規模は我が国の数百年程度の歴史 記録には見られない巨大なものでした。これは、原 子力発電所の設計やリスク評価の分野にとって重要 な教訓です。今後、受賞論文の知見を活かしてこれ らの分野に取り組んでいきます。

(( 独 ) 原子力安全基盤機構(現、原子力規制庁

  技術基盤グループ) ・杉野英治) 図 2 原子力発電所の観測津波波形と解析波形

功労賞

 2011 年 6 月~ 2013 年 5 月に総務理事として理事会の企画・

運営全般を担当され、公益社団法人化に貢献された矢部正明 氏(( 株 ) 長大)、ならびに長年にわたり事務局長として本会 全般の運営に多大な貢献をされた鴫原毅氏(( 公社 ) 日本地 震工学会)のお二人が功労賞を受賞されました。

論文賞を受賞された方々と安田進会長(左から根本信氏、是永眞理子氏、安田進会長、杉野英治氏、呉長江氏、岩渕洋子氏)

功労賞を受賞された鴫原毅氏(左)と矢部正明氏(右)

SPECIAL TOPICS - 特集 各賞の受賞者から -

(3)

SPECIAL TOPICS - 特集 各賞の受賞者から - 創刊号

 この度は日本地震工学会功績賞を賜り、大変光栄に存じます。表彰いただきました「SUPREME」は、大地震における都市ガスに よる二次災害防止のため、約 4,000 箇所の地震計(SI センサー)の情報を収集し、必要に応じて地域のガスの供給を停止すること のできる“リアルタイム地震防災システム”です。

 「SUPREME」の特徴は、地震計の密度と独自に整備した地盤データに基づく被害推定機能にあります。

 「SUPREME」で用いる地震計は、主に輸送に用いる中圧のガスから一般需要に供する低圧ガスに整圧する地区ガバナと呼ばれる施 設の全て(約 4,000 箇所)に設置され、その密度は約 1km2に 1 箇所となり、非

常に高密度な観測を実現しています。さらに地区ガバナには感震自動遮断機能 を備え、一定以上の SI 値を観測すると安全のため自動でガスを遮断します。

 また、このように超高密度に観測した地震情報(SI 値)を元に、6 万のボー リングデータから整備した 50m メッシュ単位での SI 値増幅度・管網データを利 用して、発災直後に迅速な被害推定を行うことができます。

 これら地震情報・被害推定情報を元に、必要に応じてコントロールセンター から地域のガス供給を遠隔操作にて遮断することも可能となっています。

 この「SUPREME」システムは 2001 年より運用を開始し、先の東日本大震災に おいても約 5 分間で地震の情報を収集、発災 15 分後には被害推定結果を出力し、

供給停止の要否に関する迅速な意思決定を支援しました。

 このような地震防災に対する取り組みと、東日本大震災における実績が評価 され、このような栄誉ある賞を頂けたと認識しております。これからも地震に

よるガス事故防止・早期復旧のため、さらなる努力を重ねて参る所存です。 東日本大震災における SUPREME 観測図

功績賞

超高密度リアルタイム地震防災システム「SUPREME」の開発と運用

東京ガス株式会社

 この度は、平成 25 年度日本地震工学会功績賞を賜り、大変光栄に存じます。

受賞対象となりました地形・地盤分類 250m メッシュマップの構築には、多く の方のご協力とご支援を頂きました。この紙面をお借りして厚く御礼を申し 上げます。

 地形・地盤分類 250m メッシュマップとは、日本全国の地形・地盤条件を 24 種類の微地形区分に統一的に分類し、4 分の 1 地域メッシュに属性を持たせた 総メッシュ数約 600 万個の GIS データベースです(右図)。地震災害などの地 盤条件に起因するハザードを全国統一的に評価することを目的として構築し ました。このデータベース構築の経緯は、先に構築した基準地域メッシュ(約 1km 四方)のマップに遡ります。1995 年の阪神・淡路大震災の後に、全国的 な地震計ネットワークや全国規模の地震防災システムが構築され、いわゆる リアルタイム地震防災システム整備の機運が急激に高まっていました。これ らのシステムの構築に不可欠な統一的かつ全国的な地盤データは未整備でそ の開発は喫緊の課題でした。このような背景から、地形・地盤分類メッシュマッ プを 5 年がかりで構築しました。その後、より空間解像度が高いハザード評 価への利用という社会的要請に応えて構築したのが、地形・地盤分類250mメッ シュマップです。データは 2009 年より防災科学技術研究所の web サイトから 公開されており、文部科学省地震調査研究推進本部が公表する全国地震動予 測地図や、内閣府中央防災会議、都道府県の地震被害想定調査など多方面で 利用して頂いております。今後は地震災害以外の自然災害のハザード評価や 土地利用適正評価の基礎データなどとして、より幅広い用途への利用の推進 も図っていきたいと考えています。

全国統一基準による地形・地盤分類250mメッシュマップの構築と 提供に対する貢献

若松 加寿江(関東学院大学)・松岡 昌志(東京工業大学)

地形・地盤分類250mメッシュマップ 松岡昌志氏(左)と若松加寿江氏(右)

(4)

SPECIAL TOPICS - 特集 各賞の受賞者から - 創刊号

 この度は 2013 年度日本地震工学会論文奨励賞を頂き、大変光栄に存じます。ご 選考いただきました先生方に御礼申し上げます。また、原稿を丁寧に見てくださ いました編集者・査読者の皆様に深く感謝いたします。

 本研究は、広帯域地震動予測のために高周波数地震動を合成する新しい手法を 提案したものです。広帯域地震動予測において、およそ 1 Hz 程度よりも低周波数 側(周期 1 秒程度よりも長周期側)では、震源モデルと地下構造モデルに基づい て決定論的に地震動を計算することができます。それよりも高周波数側では、そ れとは全く独立に統計的手法等を用いて計算し、接続周波数帯でそれぞれを足し 合わせることが一般的です。しかし、自然現象としては低周波数と高周波数の地 震動は互いに独立ではないはずです。本論文では、まず、低周波数と高周波数の 観測地震動(加速度エンベロープ)が S 波立ち上がり部において互いによく似て いることを示しました(図)。これは、低周波数地震動が与えられた場合に、それ 自体を利用して高周波数地震動を合成することができる可能性を示唆しています。

そこで、観測記録から得られた周波数帯間の地震動特性の関係をサイトごとに抽 出し、あらかじめ決定論的手法で計算しておいた低周波数地震動と掛け合わせる ことにより高周波数地震動を合成する手法を提案しました。

 この手法では、M8, 9 クラスの地震への対応や、震源のごく近傍、あるいは遠 く離れた地震動への対応など、取り組むべき課題も多くあります。今回の受賞を 励みとして、手法の拡張・改善のための研究を続け、広帯域地震動予測手法の高 度化に寄与することを目指していきたいと思います。

K-NET IBR011(つくば)観測点における 地震動加速度記録とオクターブ周波数帯

域ごとのRMSエンベロープの例

論文奨励賞

低周波数地震動の情報を用いた高周波数地震動合成の試み−関東地 域における検討−  (掲載巻号:Vol. 13(2013年)、No. 4)

岩城 麻子((独)防災科学技術研究所)

 この度、2013年度日本地震工学会論文奨励賞を賜り、大変光栄に存じます。また、

五十田博先生 ( 当時信州大学教授、現京都大学教授 ) には、大学在学中からこれま でご指導頂き、この紙面をお借りして深く御礼申し上げます。

 本論文では、木造建物、特に住宅を対象に等価線形化法を適用し、地震時の最 大応答変形を求め、時刻歴応答解析や実大振動台実験の結果との比較によって、

その追跡精度を確認するとともに精度向上や簡易化を図る可能性について述べた ものです。具体的には、地震入力を決定づける周期を最大応答変形の関数として 表現する検討や等価粘性減衰定数に関する検討を実施し、求めた周期や等価粘性 減衰定数を用いて応答変形を追跡しました。その際、既往の研究で用いている手 法との精度比較も実施しています。

 比較検討の結果、個別の地震動のバラツキもありますが、最大変形を変数とす る有効周期を定義することによって非線形系のエネルギー入力を表現できること、

等価粘性減衰定数についてはその振幅履歴によって変化するためスリップ型に対 して関数化は難しいことが明らかになりましたが、本研究で用いた手法により既 往の研究と同等以上の精度で応答変形が追跡できることを示しました。今後は、

地震エネルギーを適切に表現できる有効周期と地震波の継続時間に相関性を見出 し、応答手法の精度向上と簡易化の確立を目指す予定です。

等価線形化法による木造住宅の地震時応答推定とその精度

(掲載巻号:Vol. 13(2013年)、No. 3))

長岡 修(清水建設(株))

長岡修氏(左)と岩城麻子氏(右)

a) 等価線形化法   b) 時刻歴応答解析 最大応答変位の比較による精度検証

(5)

 2014 年 4 月 1 日 20:47 分頃(現地時間)にチリ北部のイキケから北西約 100km 沖合を震源とする Mw8.2 の地震が発生し、津波が沿岸 に来襲した。津波の実態を把握するために、SATREPS チリ津波防災プロジェクト(会誌 19 号、2013 年 6 月において紹介)が現地調査 を実施した。イキケは SATREPS プロジェクトにおいてパイロットサイトの一つにした地域であり、港湾 BCP や防災教育手法などの研 究開発とともに、避難の重要性など東日本大震災から得た教訓を防災担当者や市民に伝えてきた地域である。

 下図は検潮所で観測された最大津波高 (× 印)、現地調査で測量された津波の遡上高 (◆印 ) および浸水高 (▲印 ) である。観測記録 よりも高い津波が沿岸に来襲したこと、しかしチリ北部では海面から 3m 程度以上の所に住家などがあるために甚大な浸水被害に至 らなかったことが現地調査から明らかになった。調査過程で話を聞いた住民は、地震の揺れ、津波警報・避難命令のサイレンおよび 過去の津波被害の知識による危機意識によって津波来襲前に逃げていた。さらに、それまでに参加した避難訓練が実際の避難に役立っ たと語る人もいた。避難行動について

は引き続き調査を実施している。

 一方、地震被害は大きく、構造的な 被害の発生した多数の住家や倉庫、本 震だけでなく余震によっても被害が拡 大しているイキケ港の未耐震対策の埠 頭(右写真)などがあった。また、イ キケ市内ではレストランを火元とする 火災が 3 箇所で発生した。しかし、そ の周囲はコンクリート造の建物で囲ま れていたことから延焼は極めて限定的 であった。

 現地調査の詳細に加え、震源域の推 定など現地調査報告会の報告資料が参 考になる。

(港湾空港技術研究所・富田孝史)

現地調査

NEWS WATCH

2014年4月1日チリ・イキケ沖の地震および津波の現地調査

被害の把握

- 最新の研究・開発情報 -

耐震工学研修

中南米地震工学研修

 中南米(ラテンアメリカ)諸国は地震が頻発する地域であるが、耐震建築の技 術普及が遅れており、地震による建物倒壊でこれまで多くの人的・物的被害が発 生している。独立行政法人建築研究所は、これまでメキシコ、ペルー、チリ、エ ルサルバドル、ニカラグア等で、独立行政法人国際協力機構 (JICA) の技術協力プ ロジェクトに関与すること等により、耐震工学関係の技術協力を実施してきた。

また、国際地震工学センターでは、それらの国々以外の中南米諸国からも大勢の 研修生を受け入れてきた。このような状況と、中南米地域が元々英語圏ではない ことを考慮し、建築研究所と JICA では、平成 26 年度から「中南米 建物耐震技 術の向上・普及」研修 ( 使用言語:スペイン語 ) を実施している。

 本研修は、研修生が耐震設計・施工・診断・補強の技術と制度を、講義・構造実験・

現場見学から学ぶことにより、自国での耐震建築の普及や、将来の地震被害の軽 減に貢献することを、目的としている。平成 26 年度には、ドミニカ共和国、エル サルバドル、ニカラグアおよびペルーの 4 か国から 14 名の研修生が参加した。研 修生は皆熱心に講義を受けた。研修終盤には、エルサルバドルに移動して、在外 研修が実施された。

(建築研究所国際地震工学センター・犬飼瑞郎)

ラテンアメリカの人材育成

平成26年度研修の集合写真

津波の遡上高(◆)、浸水高(▲)および観測高(☓) イキケ港の埠頭の地震被害 SATREPS チリ津波防災プロジェクト http://www.pari.go.jp/special/special3/

イキケ沖地震津波の現地調査報告会 http://www.pari.go.jp/special/special3/activities/

中南米地震工学研修 http://iisee.kenken.go.jp/japanese/?p=latin

在外研修(エルサルバドル中米大学実験施設に おける壁実験)

(6)

 新潟地震が起きたとき、私はシドニー(オーストラリア)の大学でティーチング・フェロー兼博士課程の学生だった。だから 直後のことは知らない。新潟地震を研究の対象として考え始めたのは、70 年代の終わりごろのことだ。78 年に宮城県沖地震が起 きて、仙台市のライフラインに支障をきたした。今から考えれば、決して大被害ではなかったが、それまでモノが壊れることを 主な対象にしていたエンジニアにとっては、新しい形の都市型の地震災害だった。

 宮城県沖地震の被害調査をしていたとき、「そう言えば、64 年新潟地震のライフライン被害はまだ誰も調べていない」というこ とに気付いた。地震発生から、すでに 15 年が経っていたから、資料も散逸していて、調査は簡単ではなかった。

 だが、色々なことがわかってきた。水道やガスの供給停止は長く続いた。断水は、多くのところで 3 週間から 4 週間、東新潟で は 6 週間続いたところもあった。被害を受けたパイプをいちいち掘り出し、修理して埋め戻すのでは、いくら時間があっても足り ない。そこで、道端に仮の水道管を浅く埋めて、50 メートル程度ごとに共用の水道栓をつけた。はじめは、パイプを道端に転が していたが、車の出入りの邪魔になるということで、浅い埋設に変更した。地震が起こったのは 6 月 16 日、ほぼ全世帯に水が行 きわたったという 7 月 30 日の段階で、新潟市の半分の人たちはまだ道端の水道栓を使っていた。それでも水道はいい方だった。

ガスの復旧は、10 月、11 月、12 月までずれ込んだところが少なくない。冬になる前には復旧するという突貫工事にもかかわらず、

6 ヶ月を要したところがあったわけだ。新潟市にはまだ下水道はなかった。

 こういった都市供給施設の被害で命を落とされる方はなかろう。しかし、半世紀前と今では、これらライフラインに依存する 度合いも、依存の仕方もまるで違う。また、新潟地震当時の新潟市の人口は 50 万人強といったところだから、首都圏での問題を 検討するときにどこまで役に立つかは疑問だ。地方都市は地方都市なりの課題を抱えている。64 年に 50 万人程度だった新潟市の 人口は、広域合併によって今は 80 万人を突破したが、今後増加し続けることはないだろう。そんな中で、2020 年には、65 歳以上 の高齢者が 30% 近くに達するという予測がある。

 新潟地震は、たいへんな災害だった。だが、日本という国全体から見れば局所的な災害であり、しかも、日本が右肩上がりの 成長を始めた時点の災害だったことをよく考えておく必要がある。

SPECIAL TOPICS -新潟地震から50周年-

新潟地震とライフラインと私

      リアルタイム地震・防災情報利用協議会 顧問 片山 恒雄

防災科学技術研究所の1964年新潟地震オープンデータ特設サイト

 防災科学技術研究所は、1964 年新潟地震の発生 50 年の節目に、所蔵する空中写真とスナップ写真をオープンデータ として公開している。http://ecom-plat.jp/19640616-niigata-eq/

日本地震工学会「1964年新潟地震直後に撮影された写真に基づく液状化被害の状況」

 日本地震工学会は、「1964 年新潟地震直後に撮影された写真に基づく液状化被害の状況」を公開している。

http://www.jaee.gr.jp/jp/2014/06/09/4771/

(IC 委員会・佐伯琢磨)

新潟地震を見て学ぶサイトの紹介

写真 1 県営アパート 写真 2 昭和大橋と新潟市街

左 の 2 枚 の 写 真 は、

防災科学技術研究所 の 1964 年 新 潟 地 震 オープンデータ特設 サイトより引用。

(7)

 2014 年 6 月 13 日に東京の専売会館ホールで行われた標記シンポジウムに参加しました。今回刊行されたのは、日本地震工学会、

土木学会、日本建築学会、地盤工学会、日本機械学会、日本都市計画学会、日本地震学会、日本原子力学会の 8 学会が合同編集委 員会を設置して作成を進めている東日本大震災合同報告書のうちの共通編 1「地震・地震動」(日本地震工学会)、共通編 2「津波の 特性と被害」(土木学会)、共通編 3「地盤災害」(地盤工学会)の 3 編で、それぞれの中心となった 3 学会の主催で開催されました。

 梅雨らしい日が続いていた東京ですが、この日は久々に朝から夏のような陽射しの照りつけるなか、会場には多くの聴衆が詰め かけ、開始時には空席を見つけるのに苦労するくらい大入り満員の状態でした(写真 1)。後から聞いたところによると、当日の参 加者は約 140 名だったそうです。

 合同調査報告書編集委員会委員長の和田章先生(東京工業大学名誉教授)による開会のご挨拶(写真 2)の後、前半は発刊された 報告書の内容について 6 名の先生方からご講演がありました。1 冊について 1 時間、というかなり厳しい時間の制約があるなかで、

どの先生方も要点をわかりやすくまとめてご発表いただき、専門外の事項についてもより理解を深めることができたように思いま した。後半は、前半ご講演いただいた 6 名の方々をパネリストに迎え、「ファンダメンタルをふまえた巨大災害対策」というテーマ でパネルディスカッションによる討議が行われました(写真 3)。この震災で顕在化した長周期地震動や複合災害に関する課題、さ らには対策による便益をどう考えるかという難しい問題まで、進行役を務める本田利器先生(東京大学教授)から時折繰り出され る鋭いジャブ(?)のような問題提起も功を奏して、大変活発で有意義な議論が繰り広げられました。予定された 90 分はあっとい う間に過ぎ去り、合同調査報告書編集委員会副委員長の川島一彦先生(東京工業大学名誉教授)の閉会のご挨拶ののち、シンポジ ウムは盛況のうちに終了しました。なお、日本地震工学会誌 No.23(10 月刊行予定)では、本シンポジウムで議論された内容が詳 しく紹介される予定とのことですので、ご興味のある方はそちらもぜひご覧ください。

 震災から 3 年が経ちますが、パネルディスカッションでの討議を拝聴して、諸問題の解決には専門を超えた連携が重要であるこ とを改めて痛感しました。その点で、異分野の専門家が集まり、お互いに自由闊達に意見を交わすことのできる当学会の存在意義 は大きいのではないかと思います。今後も、当学会の活動を通じて地震災害の軽減に貢献できることを願っています。

(大林組・副島紀代、写真は鴫原毅氏撮影)

EVENT REPORT

「東日本大震災合同報告 共通編3編」刊行記念シンポジウム

「地震災害再考.ファンダメンタルをふまえて」開催報告

東日本大震災合同調査報告 共通編2「津波の特性と被害」、 共通編3「地盤災害」

日本地震工学会をはじめとする8学会合同で編集している東日本大震災合同調査 報告のうち、最新刊(平成26年4月および6月刊行)についてご紹介します。

 共通編 2「津波の特性と被害」には、東北地方の津波災害の歴史や東北地方太平 洋沖地震における津波の発生機構、観測状況、被害状況、シミュレーション、海 岸堤防などの被災メカニズム、復旧・復興など、重要な知見がまとめられています。

 共通編3「地盤災害」には、被災地域の地形・地質・地盤、地表地震断層の発生、

造成宅地・液状化・斜面・地盤環境の復旧と被害について、重要な知見がまとめ られています。

 合同報告書は全 29 巻刊行予定(すでに 4 巻刊行)です。セット割引価格や関係 学会会員価格でも入手可能です。        (IC委員会・皆川佳祐)

ブックマーク 地震工学を知るための書籍の紹介

写真1 写真2 写真3

(8)

連載コラム、「鯰おやじのおせっかい。」武村雅之先生(名古屋大学)の連載コラム第3号をお届けします。

 去る5月18日日曜日、私の住む名古屋市千種区の猫が洞通り周辺で、「新緑ピクニック」という催しをやりました。私は長 年、様々な観点から関東大震災を研究してきましたが、一昨年名古屋大学減災連携研究センターに赴任し、それ以来東海地方 に残る過去の地震の慰霊碑や復興碑や遺構を調べてきました。

 その結果、意外にも名古屋に関東大震災の犠牲者を弔う慰霊堂と慰霊碑があることを知りました。それも一つや二つではな く、慰霊碑については三つも確認できました。一つを除いてすべてが近くの日泰寺にあります。日泰寺は明治の終わりころシ ャム(今のタイ)の国王から日本国民に日泰友好の証として下賜された仏舎利を奉安するために生まれた全国でも珍しい超宗 派の寺院です。誘致を希望する多くの地域がある中で、当時の名古屋市民が一致協力して誘致に成功した名古屋の誇りともい うべきお寺です。名古屋での避難者救済の様子や日泰寺の慰霊堂や慰霊碑のことは前回も紹介しましたが、当時の人々の優し さを今の市民にも知って欲しいと昨年に引き続き企画したのが「新緑ピクニック」です。

 主催は、猫が洞通りのMittE(ミッテ)というレストランで、シェフの松井りえさんが、10種類もの野菜をちりばめた春の お弁当を作ってくれ、デザートにはこれも近所にあるパティスリーグラムさんの焼き菓子が付きました。私の先導で午前中、

上記の慰霊堂や慰霊碑の外に、これも関東大震災の際のいわゆる甘粕事件で犠牲となった橘宗一のお墓や、東南海地震や濃尾 地震に関連するものを日泰寺で見学、さらに近くの猫が洞池で池の成り立ちや変遷を勉強して、最後に新緑まばゆい池畔の広 場において参加者全員でお弁当とデザート、そしてビールに舌鼓をうちました。

 参加者は近所に住む方々を中心に私と同じ職場のメンバーも含め、女性16名、男性12名、子供5名の総勢33名でした。家族づ れの外に、友達同士や娘とお母さんなど、日ごろ地震や防災・減災とは無縁と思われる方々に集まっていただけました。私の

JAEE COMMUNICATION

連載コラム 鯰おやじのおせっかい

その3 新緑ピクニック

見学会の後はみんなでおいしいお弁当!

そして最後に、防災マップの説明会(猫が洞池の芝生にて)

妻も東京から手伝いに来てくれました。お弁当を食べなが らの自己紹介を伺うと、ミッテのお弁当に釣られて来られ た方が多くいました。中には瀬戸内寂聴の「美は乱調にあ り」を読んで橘宗一のお墓に是非行きたいと来られた女性 もおられました。

 今回の企画には、愛知県防災局の山本さんがスタッフと して、また名古屋市の防災マップ担当の山田さんが、各戸 に配布されているハザードマップの説明に駆け付けてくれ ました。私も含めてすべてが個人としてのボランティアで す。

 東日本大震災のあと、各地で減災のための企画が模索さ れ、まさに減災維新の様相を呈しています。主流にはなら ないまでも、今回は、鯰おやじのおせっかいの一つとして、

わが町でみんなが楽しめる減災企画の試みを紹介させてい ただきました。

(名古屋大学減災連携研究センター・武村雅之)

(9)

日本地震工学会イベント情報

JAEE CALENDAR

第5回震災対策技術展(仙台)セミナー

「次の津波からどう逃げるか

〜渋滞リスクを減らす作戦を考える〜」

日程:2014年8月7日(木) 14:45 〜 16:15

場所:AERビル D会場(仙台市青葉区中央1丁目3番1号)

詳細:http://www.exhibitiontech.com/etec̲miyagi/

   access.html

関連学協会の行事等

The 12th International Conference on Motion Vibration Control

主催:日本機械学会

日程:2014年8月4日(月) 〜 6日(水) 場所:札幌コンベンションセンター    (札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)

詳細:http://www.jsme.or.jp/conference/MOVIC2014/index.html

2014年 環境工学国際ワークショップ

主催:一般社団法人日本機械学会

日程:2014年11月19日(水) 〜 20日(木) 場所:つくば国際会議場(茨城県つくば市)

詳細:http://iwee-2014.net/

学術フォーラム「東日本大震災・阪神淡路大震災 等の経験を国際的にどう活かすか」

主催:日本学術会議 土木工学・建築学委員会ほか 日程:2014年11月29日(土) 10:00 〜 17:30 場所:日本学術会議講堂(東京都港区六本木) 詳細:http://jeqnet.org/sympo/

PDには当会を代表して安田会長が参加されます。

5th Asia Conference on Earthquake Engineering  (ACEE 2014)

主催:National Center for Research on Earthquake    Engineering (NCREE)

   National Taiwan University (NTU) 日程:2014年10月17日(木) 〜 18日(金) 場所:台北市,台湾

詳細:http://ACEE2014.ncree.org.tw 関連学協会の行事等

 JAEE Newsletterは、日本地震工学会の学会誌を補完するように、3カ月に1回の頻度(3、7、9、および12月)で発行されます。

地震工学に関するトピックスや研究動向等について紹介してまいります。会員の皆さまからの記事の投稿を歓迎いたします。

「ブックマーク」では、自薦・他薦を問わず書籍の紹介をお待ちしております。

 連絡先:[email protected]

 なお、JAEE Newsletter は以下でご覧いただけます。

 http://www.jaee.gr.jp/jp/stack/1925-2/

第14回日本地震工学シンポジウム(2014)

主催:日本地震工学会(幹事学会)ほか 日程:2014年12月4日(木) 〜 6日(土)

場所:幕張メッセ国際会議場  (千葉市美浜区中瀬2-1) 詳細:http://www.14jees.jp

土木学会による実務者のための耐震設計入門:基礎編

主催:土木学会

日程:2014年8月7日(木)

場所:土木学会 講堂(新宿区四谷一丁目外濠公園内)

詳細:http://www.jsce.or.jp/event/active/information.asp

Second European Conference on Earthquake Engineering and Seismology

主催:European Association of Earthquake Engineering,    European Seismological Commission

日程:2014年8月24日(日) 〜 29日(金) 場所:Istanbul, Turkey

詳細:http://www.2eceesistanbul.org/

第63回理論応用力学講演会

主催:日本学術会議 「機械工学委員会,土木工学・建築学    委員会合同IUTAM分科会」

日程:2014年9月26日(金) 〜 28日(日) 場所:東京工業大学大岡山キャンパス 詳細:http://news-sv.aij.or.jp/nctam/63/

国際構造工学会(IABSE)2015年春季大会

主催:IABSE日本グループ(本会他、後援) 日程:2015年5月13日(水) 〜 15日(金) 場所:奈良県新公会堂(奈良市)

詳細:http://www.iabse.org/

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編集後記

 今号の JAEE Newsletter の刊行直前の 6 月には 1964 年新潟地震から 50 年の節目を迎えました。そして 10 月に は 2004 年新潟県中越地震から 10 年の節目を迎えます。地震災害の軽減には、防災への高い関心の持続と、力を 合わせた取り組み、努力の継続が必要です。次号の JAEE Newsletter では 2004 年新潟県中越地震の特集を予定 しています。また、日本地震工学会誌においても日本海東縁部の地震の特集を予定しており、連携して市民な らびに会員の皆様に向けた情報の発信を行い、コミュニケーションを活発化させたいと考えています。皆様か らのご意見やご提案などをお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。

第 8 号編集担当 小檜山雅之

公益社団法人

日本地震工学会

Japan Association for Earthquake Engineering 〒108-0014 東京都港区芝 5-26-20 建築会館4F TEL 03-5730-2831

FAX 03-5730-2830 Website: http://www.jaee.gr.jp/jp/ 

 Copyright (C)2014 Japan Association for Earthquake Engineering All Rights Reserved.

<本ニュースレターの内容を許可なく転載することを禁じます。>

訃報

Sheldon Cherry 先生

Sheldon Cherry 先生が 2014 年 3 月 23 日にカナダ・バンクーバーにてご逝去されました。

 元 IAEE 会長であり、ブリティッシュ・コロンビア大学・シビルエンジニアリング名誉教授であった Sheldon Cherry 先生は、建 築研究所の地震工学コースにも貢献される等、日本にもなじみの深い方であられました。謹んで哀悼の意を表します。

参照

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