CFTブレースによる既存キゾンRC 架構の耐震補強法に関する実験的研究 [ PDF
4
0
0
全文
(2) 図1(d)の局部破壊も観測され,さらなる接合部詳細の. 09RCF-3 及び試験体 09RCF-3T 試験体は,正側加力時. 検討が必要であることがわかった.2009 年度は,復元. において,風上側柱が引張降伏するメカニズムとなり. 力特性の改善を目指し,引張力を負担できるブレース. 最大耐力を発揮した.小さい変形から,大変形に至るま. を用いた試験体を作成した.. で安定した耐力を保持していることが分かる.変形性 CL. 図3に 2009 年度の実験試験体の立面図,配筋図,断. 柱 21 104. St φ6 @100. 250. 3. 実験. 150 150100. 4-D13 2-D13. 104. 250. 2-D13 4-D13. 体の既存骨組部分の形状は図3と同一である.実験試. 10-D10 Hoop 6φ @75. 21. 1200. 3-D10 2-D10 2-D10 3-D10. Hoop 6φ @75. 1500. 面詳細図を示す.表1の試験体における 07 及び 08 試験. 21 69. 70. 69 21. 250. St 4-D10 @150. 40. 4-D13 2-D13 St 4φ @100. 254. 4-D19. 300. 層 1 スパン部分を取り出して 1/2 に縮小したモデルとし. 400. 4-D19. 550. D19 @100 l=500mm 4-D13. 23. 150 150. 梁. 験体は,3 層多スパンの既存不適格 RC 造学校校舎の 1. 2-D13 40. た.また,1971 年から 1981 年の間に建設された建物の. 125125 300. 425. 300 125125. 425. 1400. 配筋を模擬した.. 425. 300. 4-D13. 23. 300. 寸法単位: mm. 32 36 35 36 32. 425. 170. 3100 CL. 図4に加力装置及び加力プログラムを示す.試験体. 図3 試験体詳細. には,鉛直軸力 180kN(軸力比約 14%)をそれぞれの柱. カウンターバランス. に載荷し,実験中一定に保持した.水平方向の加力は,. ジャッキ(500kN). ロ型フレーム. 水平変位によって制御した.載荷プログラムは漸増変. 2. 層間変形角(×10-2rad). 1.5. 1.25. ロードセル(500kN). 1.0. 1. 位振幅として,層間変形角 R= 0.25/100rad ずつ R=2.0/. 0.5. ロードセル(1000KN) W. 100rad (R=1.5/100rad )まで各変位振幅で 3 回の繰返し載. -0.5. 試験体 PC鋼棒 16-φ19. 荷を行った.. 0.75 0.5 0.25. 0. PC鋼棒 4-φ19. ジャッキ(2MN). 2.0 1.75 1.5. -1 -1.5. 図5に代表的な6つの実験試験体における水平力−. -2 W. 層間変形角関係のグラフを示す.図には,文献1) ,2). 図4 加力装置及び加力プログラム. に示された水平耐力の計算値 calQ も示している.各試験. 800. 体の破壊性状を以下に示す.. 800. 07NCS. 最大耐力は柱の曲げ破壊によって決定した.最大耐力. 400. 400. 発揮後も荷重−変形関係は安定した履歴ループを描い ており,実験終了時まで柱のせん断破壊等の脆性破壊. Q (kN). 600. Q (kN). 07NCS 試験体は,補強を行っていない試験体である.. 600. 最大耐力発揮点 200. calQ. 07RCB calQ 最大耐力発揮点. 200. 0. 0. は発生しなかった.他の5つの試験体は CFT ブレース -200. -2. によって補強されているものであり,グラフの第1象 限と第4象限の比較によって,その補強効果が確認で. 800. きる.. 600. 07RCB 試験体は,最大耐力発揮時にブレースの曲げ. 400. -1. 0 1 R (×10 -2rad). -200. 2. -2. 07RCP. 2. 08RCJ-W. 600 最大耐力発揮点 400 Q (kN). Q (kN). 0 1 R (×10 -2rad). calQ. calQ 最大耐力発揮点. 座屈が確認された.ブレース座屈後は,徐々に水平耐力. -1. 800. 200. 200. 0. 0. が小さくなるが,大変形に至っても07NCS試験体の3倍 以上の水平耐力を保持することが示された. -200. 07RCP 試験体は,最大耐力時に風上側柱の上部にお. -2. -1. 0 1 R (×10 -2rad). -200. 2. -1. 0 1 R (×10 -2rad). 800. 800. けるパンチングシア破壊が確認された.パンチングシ. -2. 09RCF-3T. 09RCF-3 calQ. 600 calQ. ア 破壊発生後,水平耐力は漸減するものの大幅な耐力. 600 最大耐力発揮点. 最大耐力発揮点. 低下は見られなかった.. 400. 200. ンクリートの局所的な支圧破壊が生じ,最大耐力を発. 0. 揮した.耐力発揮後は接合部コンクリートが圧壊し剥. -200. 落したため,ブレースが軸力を負担しなくなり,大幅に. Q (kN). Q (kN). 400. 08RCJ-W 試験体は,ブレース上部接合部で接合部コ. -2. 200 0. -200 -1. 0 R (×10 -2rad). 水平耐力が低下した.. 1. 2. -2. -1. 0 R (×10 -2rad). 図5 水平力 - 層間変形角関係 48-2. 2. 1. 2.
(3) 能の保持という観点からは,この破壊形式を選択する. 接合用鋼板は溶接している.すなわち,接合部鋼板は応. ことが望ましいと考えられる.. 力を負担する.09RCF-3T 試験体はブレースの断面とブ. 09RCF-3T 試験体はブレース内部に引張抵抗する丸鋼. レース内部の丸鋼を設置している点で異なるが,接合. が内蔵されており,負側載荷時の耐力の向上のみでな. 部詳細は 09RCF-3 と同じである.. く,正側における早期の剛性回復など,エネルギー吸収. 図7に接合部耐力の確保の算定フローを示す.まず,. の改善効果が見られた.. 1節で示したように,風上柱の引張降伏もしくは補強. 表2に実験試験体の初期剛性及び最大耐力を示す.. ブレースの座屈破壊を選択し,ブレースの負担軸力 Nd. いずれの崩壊メカニズムを呈した場合でも,剛性は大. に対して,ブレース断面を決定する.そのブレース軸力. 幅な向上が見られ,耐力は補強前の4倍以上の性能が. をエンドプレートを介して,接合部コンクリートに伝. 確認できた.. えるため,エンドプレート部の設計を行う.図6(c)の 場合 , エンドプレートが曲げ破壊したため,接合部コン. 4. 接合部の検討. クリートの支圧破壊に至った.そこで,図6(d)のよう. 図6に接合部の詳細を示す.本報では,接合部耐力の. にスチフナを設けることで,エンドプレートの曲げ耐. 比較のため,07RCB,07RCP,08RCJ-W,09RCF-3 試験. 力を向上させた.次に,接合部耐力は図6(a)∼(c)の場. 体について述べる.. 合 , 柱及び接合部のパンチングシア耐力のみで算定され. 07RCB,07RCP 試験体は,ブレース端部のエンドプ. る.しかし,図7に示すように,ブレース軸力の水平成. レートを柱とともに2枚の接合部鋼板で挟み込み,こ. 分が柱及び接合部のパンチングシア耐力 Qpu を上回って. のときに出来る,RC フレームと接合部鋼板との空隙. いると,接合部耐力を他の機構で補わなければならな. に,高流動コンクリートを流し込みブレースを設置し. い.そこで,図6(d)のように,ブレースの軸力を接合. ている.08RCJ-W 試験体も同様に施工するが,ブレー. 部コンクリートだけでなく.接合部鋼板を介して,力を. スの断面が異なる.つまり,接合部鋼板は応力を負担し. 伝達させる,接合部耐力は以下に示す P1 ∼ P3 の合計と. ない.. した.. 09RCF-3 試験体は,PL-6 の鋼板に,40 × 20 × 5 のア ングルを片面 3 箇所ずつ溶接して,ブレース接合用の枠 材にあたるものを作成する.これらのアングルは通常 の間接接合におけるスタッドアンカーを模擬している. 次に,既存のフレームの上下の梁に,13 φのあと施工 アンカーを片面に 3 本ずつ計 6 本打設する.接合用鋼板. 高流動コンクリート. 高流動コンクリート. 接合部鋼板 PL-6. 接合部鋼板 PL-6 鋼板止め 寸切りボルト孔. 鋼板止め 寸切りボルト孔. のアングルと,あと施工アンカーが互い違いになるよ. 変位計止め ボルト孔. 変位計止め ボルト孔. うに接合用鋼板を配置する.この時にできる梁と鋼板. CFTブレース □150*150*6. CFTブレース □100*100*3.2. の隙間に高流動コンクリートを流し込むことで接合部. エンドプレート 150*250*9. エンドプレート 150*250*9. を一体化する.なお,ブレース上端のエンドプレートと. (a)07RCB (b)07RCP 表2 初期剛性と最大耐力 最 大 耐 力 試験体名. 正 側. 負 側. (kN). (kN). あと施工アンカー13φ. 初 期 剛 性. 正/負. 正 側. 負 側. (kN). (kN). 正/負. 破壊モード. 06Pilot. 450. 108. 4.2. 145. 32. 4.5. 風上柱の引張降伏. 07NCS. 135. 123. -. 20. 19. -. 柱の曲げ破壊. 07RCB. 574. 132. 4.3. 117. 36. 3.3. ブレースの座屈. 07RCP. 634. 128. 5.0. 208. 34. 6.2. パンチングシア破壊. 08RCF-1. 734. 100. 7.3. 295. 26. 11.3. 757. 109. 6.9. 261. 29. 9.0. 662. 149. 4.4. 213. 34. 6.3. ブレース接合部の. 08RCJ-D. 643. 156. -. 108. 38. -. 支圧破壊. 08REF-C. 731. 135. 5.4. 249. 31. 8.1. 08REF-E. 735. 130. 5.7. 270. 52. 5.2. 662. 107. 6.2. 280. 44. 6.3. 09RCF-6T. 685. 258. -. 508. 116. -. 09RCF-3. 699. 119. 5.9. 271. 66. 4.1. 09RCF-3( 280kN). 819. 156. 5.3. −. −. −. 09RCF-3T. 725. 286. -. 570. 146. -. 高流動コンクリート 接合部鋼板 PL-6. あと施工アンカー 13φ. アングル 40*20*5. 風上柱の引張降伏. 08RCF-2 08RCJ-W. 09RCF-6. 高流動コンクリート 接合部鋼板 PL-6. 寸切りボルト 10φ. 寸切りボルト 10φ. CFTブレース □100*100*6. CFTブレース □150*75*3.2 エンドプレート 100*262*9. エンドプレート 130*250*9. ブレーススチフナ 75*262*6. 風上柱の引張降伏. (c)08RCJ-W (d)09RCF-3 図6 ブレース接合部詳細 48-3.
(4) Qa = min (Qa1 , Qa 2 ) Qa1 = 0.7 × s ae × s y Qa 2 = 0.4 Ec × Fc1 × s ae. ブレースの断面決定. 支圧耐力の検討. NG. OK. 図6 (c). エンドプレート ( スチフナ) の設計. 図6 (b). (8). および規格降伏点強度,E c は既存架構のコンクリート のヤング係数である.本試験体の P3 は,あと施工アン カーのせん断耐力(7)式により決定されている.図7 における P2 と P3 の累加が可能となるには,P2 と P3 を加. OK 接合部鋼板の設計. (7). ここに,sae,σ y はそれぞれあと施工アンカーの断面積. 柱・ 接合部 パンチングシア耐力Qpuの検討 αcosθ・ Nd >P1+Psw. NG. (6). END. えた力が接合部鋼板のせん断耐力以下であることを確 認する必要がある.. 側面支圧耐力P2. 5. まとめ. あと施工アンカー耐力P3. 本研究から,以下の結論を得た. 接合部耐力の検討 P1+P2+P3 >αcosθ・Nd 図6 (d). NG. (1) 同一の RC フレームの補強に際して,補強ブレース の寸法とブレースの接合詳細を変化させることで, 風上柱の軸引張降伏,ブレースの座屈,パンチング. OK. シア 破壊,接合部コンクリートの支圧破壊の4通. END. りの崩壊メカニズムを実現させることができた. (2) 上記のいずれの崩壊メカニズムを呈した場合でも,. 図7 接合部耐力の算定フロー. 剛性は大幅な向上が見られ,耐力は補強前の4倍 以上の性能が確認できた.. P 1 は柱のパンチングシア耐力で,式(1)∼(4)により. (3) 接合部での局部破壊耐力を柱のパンチングシア耐. 求めた.. P1 = QAC × kav QAc = Ac × (0.493s1 + 0.254 Fc1 ). kav = 0.72 /(0.76 + a / D) × f s1 = N ( Ac + Asw ) + A s × s s y Ac. 力と側面支圧耐力,さらにあと施工アンカーのせ (1). ん断耐力を足し合わせることで設計する算定フ. (2). ローを示した.. (3). <参考文献>. (4). 1). 北島幸一郎,宮西紀彰,下畠啓志,永瀬慎治,中原浩 之,崎野健治:圧縮抵抗ブレースによる既存 RC 造架. ここに,Ac 及び Asw はそれぞれ柱断面積及び接合部高. 構の耐震補強法の開発研究(その1)∼(その4) ,日. 流動コンクリートの断面積,Fc1 は既存躯体コンクリー. 本建築学会大会学術講演梗概集,C-2,pp.781-788,. トの強度,N は柱頭における載荷軸力,As,s s y はそれ. 2008.9. ぞれ柱主筋の全断面積と降伏強度,k av はせん断スパン. 2). 北島幸一郎,宮西紀彰,平紙裕文,中原浩之,崎野健. 比(a/D)による強度低減係数で,a = 0 とし,繰返し載. 治:圧縮抵抗ブレースによる既存 RC 造架構の耐震補. 荷による低減係数φ= 0.8 で計算した 5).また,PSW は接. 強法の開発研究(その1)∼(その3),日本建築学 会大会学術講演梗概集,C-2,pp.13-18,2009.9. 合部コンクリートのパンチングシア耐力で,同様の計. 3). 算式で求めた. P 2 は,柱と梁の断面幅の違いによってできた既存の. 的研究,日本建築学会構造系論文集第 621 号,pp.127-. 柱部分の支圧耐力で , 式(5)から得られる.. P2 = bp × hp × Fc1. 塩屋晋一,大川光雄,幸加木宏亮:圧縮ブレースを用 いる既存RC造ピロティ架構の耐震補強に関する実験 134,2007.11. 4). (5). 松田拓己,渡邉史夫,河野進,高尾和弘:自己圧着ブ レースで補強した RC 造架構が全体曲げ崩壊型となる. ここに,bp 及び hp は支圧破壊面の幅と高さとした.. 場 合 の 耐 震 性 能 ,コ ン ク リ ー ト 工 学 年 次 論 文 集 , vol.28,No.2,pp.1087-1092,2006. P3 は間接接合耐力で,ブレースの応力を,ブレースが 5). 溶接された接合部鋼板のアングルと高流動コンクリー. 山本泰稔,横浜茂之,浜田大蔵,梅村魁:シアスパン の短い鉄筋コンクリート梁,柱の終局強度推定法,芝. トを介し,あと施工アンカーによって梁に負担させる ものである.アンカーのせん断耐力は改修指針 6)より, 式(6)∼(8)で計算した .. 浦工業大学研究報告理工系偏,第 26 巻第 2 号,1982.7. 6). 日本建築防災協会:2001 年改訂版既存鉄筋コンク リート造建築物の耐震改修設計指針・同解説,2005.2. 48-4.
(5)
関連したドキュメント
[r]
行列の標準形に関する研究は、既に多数発表されているが、行列の標準形と標準形への変 換行列の構成的算法に関しては、 Jordan
東海道新幹線では,大規模地震対策として,兵庫
1.はじめに
本試験装置ではフィードバック機構を有する完全閉ループ 方式の電気・油圧サーボシステムであり,載荷条件はコンピ
ここで,図 8 において震度 5 強・5 弱について見 ると,ともに被害が生じていないことがわかる.4 章のライフライン被害の項を見ると震度 5
例えば,金沢市へのヒアリングによると,木造住宅の 耐震診断・設計・改修工事の件数は,補助制度を拡充し た 2008 年度以降において 120
(J ETRO )のデータによると,2017年における日本の中国および米国へのFDI はそれぞれ111億ドルと496億ドルにのぼり 1)