• 検索結果がありません。

中国進出日系企業の産業財市場における 顧客インターフェイスの研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中国進出日系企業の産業財市場における 顧客インターフェイスの研究"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 研究の背景と目的

日本国内市場の成熟化を受け,日本企業の海 外展開は拡がりを見せ,特に中国を中心とした 新興国市場開拓に対する取り組みは,加速する 一方である。中国では,労働・地価が高騰する 事で,労働集約的な輸出産業への依存が減り,

内需志向型へ移りつつある。日系企業も中国の 内需で稼ぐ色彩が濃くなっている。

これまで中国市場開拓における研究は BtoC に関するものが中心であった。産業財市場の マーケティングは BtoB であり,広告よりも人 的販売としての営業が重視される傾向がある。

中国の人的販売としての営業は,個人の人脈,

人間関係を中心とした「中国関係重視型営業」

が大きな影響を持っている。この「中国関係重

視型営業」の実態を明らかにし,どのように取 り組んでいけばよいのかという事,つまり顧客 とのインターフェイスについて考察する事が第 一の目的である。

さらに中国市場開拓において中心的な役割を 担う営業部隊をどのように構築し,マネジメン トするかは業績に大きな影響を与える重要な課 題である。営業マネジメントには現地化の問 題,採用・育成・処遇・配置といった人材マネ ジメントにかかわる問題など様々な問題が含ま れる。中国市場開拓における有効な営業マネジ メントについて考察する事が第二の目的であ る。

2 先行研究 中国関係主義の研究 中国での商取引における関係性重視の考え方

中国進出日系企業の産業財市場における 顧客インターフェイスの研究

〜中国市場開拓における有効な営業行動に関する一考察〜

Strategy for Managing Customer Interface taken by Japanese BtoB Marketers in China

~Effective Business Activities in Developing Customer-Supplier Relationship in China~

安藤 雅旺

ANDO, Masaaki

本研究は,中国進出日系企業の産業財市場における顧客インターフェイスに関する研究であ る。日系企業にとっては中国のプレゼンスが年々高まっており,中国市場開拓が重要な経営課題 となっている。一方,日系企業の中国市場開拓を対象とした研究は多く存在するが,産業財市場 の営業を取り上げた研究はこれまで少なかった。そうした背景から,本研究では産業財(BtoB)

市場を中心にして,顧客インターフェイスについて考察を深め,中国市場開拓における有効な営 業行動を明らかにする事に焦点を当てている。

11 名の中国人営業パーソンに対するインタビューと 75 名の中国人営業パーソンに対するアン ケートから,中国産業財市場において大きな影響力を持つ「中国関係重視型営業」の実態を明ら かにした。また中国進出日系企業 20 社の経営トップへのインタビュー調査から中国市場開拓に おける有効な営業マネジメント,営業行動について分析した。

キーワード: 中国市場開拓,産業財市場,営業マネジメント,中国関係主義,営業行動

(2)

は,関係性マーケティングでいうところの関係 性とは対象や意味を異にする。関係性マーケ ティングの関係性が売り手企業と買い手企業の 信頼関係を中心に営業の役割を論じ,顧客の問 題解決を帰着としているのに対して,中国での 商取引における関係性とは個人と個人との信頼 関係,つまりこの場合では営業担当者と購買担 当者との関係を指し,両者の個人的利益が帰着 となって商取引が成立するケースを指す。こう したケースは実際の中国の産業財市場の取引に おいて多く見られるものである。中国関係主義 について小室(1996)1)は,ギブ&テイクとい う個人間の付き合い(結合)の鉄則が,一般社 会のルールよりも優先するという事であると述 べている。また同時に個人結合の鉄則は,時に は職権を濫用してまで遵守されなければならな い。中国では特定集団(a special group)内の 規範が社会の普遍的規範(universal norm)よ りも優先する(ことがある)と述べている。ま た園田(2001)2)はこの関係について日本との 違いを三つの視点から説明している。第一には 関係を通じて流れる資源の量が日本と比べて圧 倒的に多い事に触れている。第二には個人間の 関係が物質的な基盤によって支えられている点 を指摘している。これは抽象的な理念や友情を 共有するだけでなく,具体的な物質,食事や贈 り物,バックマージンなどのやりとりによって 関係は確立され維持されているのであると指摘 している。第三には関係を持つ者の間に相対的 に強い親密感が生じている点を挙げている。こ れらの点が日本と違い,中国において個人と個 人の関係が商取引において大きな影響を及ぼす 要因になっていると理解できる。

それでは中国における個人間の関係の深さは どのように定義されているのであろうか。関 係を深めるためにはどのような行動が求めら れるのであろうか。これらの点について園田

(2001)3)は中国人の関係を 3 段階に分けて説明 している。最も深い関係を示すのが自己人であ る。これは「私とあなたとの間には分け隔てる

ものがないくらい親しい」とする関係段階を指 す。最も浅い関係を指すのが外人である。外人 の間では「不請人情」(人情を語らない)のが 一般的で,ゼロサム的状況の中でお互いに自ら の効用を最大化しようとする関係とされる。こ の二つの中間は自己人ほど親しくはなく,外人 ほど無関係ではない知人の事で,熟人と呼ぶと している。中国においてはいかにビジネス相手 と自己人の関係を構築するかが重要なものとな る。

中国ビジネスにおける関係(Guanxi)がもた らすメリットについて,David K. Tse(2008)4)

は中国内陸市場に参入する場合に特に重要とし ている。地方市場においては,保護主義や参入 障壁が高い場合が多く,関係を活用して,マー ケティング市場,バリューチェーン企業群,そ して政府役人といった環境を上手く管理できた 場合の経済的価値は計り知れないとしている。

いかにして地元企業や政府にアクセスするか,

独自情報や,相手の意図を把握して臨機応変に 対応できるかが,市場開拓の成否を分ける上で 非常に重要であり,その中心を担うのが関係

(Guanxi)となる。

し か し メ リ ッ ト が あ る 反 面 同 時 に 関 係

(Guanxi)がもたらすデメリットも考えなけ ればならない。中国市場を開拓する上で関係

(Guanxi)は重要な要素であるが,上手く管理 できなければ,企業にとって大きなリスクとな る。David K. Tse(2011)5)はこの点について,

4 点指摘している。1 点目は破壊的効果の側面 である。これは関係(Guanxi)が支配的な状 況下では高品質の製品を作っても売れず,製品 が不良品だったとしても商売が成立する事例を 挙げて,真面目に仕事をする意欲を削ぐ事を懸 念している。2 点目は集団的盲目である。関係

(Guanxi)に依存する事で,企業のセンシティ ビティが鈍り,目を閉じてしまう点を指摘して いる。3 点目はドミノ倒しである。これは腐敗 が連鎖して,他の社員にも影響するという事で ある。4 点目は企業の不安定さについてである。

(3)

関係(Guanxi)を持つ特定の人材が転職する 事になれば,コネクションがなくなってしまう 点を指摘している。個人が移動すれば,その個 人が所有する人脈も企業は失う。場合によって は顧客そのものを失う事も考えられるのであ る。これらのデメリットは,コンプライアンス を重視する多くの日系企業においては,難しい 問題である。中国市場開拓を進める場合,関係

(Guanxi)は重要であるが,この管理を間違え れば,社員の不正の温床となり,企業イメージ の悪化,ひいては業績低下につながりかねな い。日系企業にとって中国市場開拓を進めてい く上で関係(Guanxi)をどう捉えていけばよ いのかは大きな課題である。

3  中国関係主義がもたらす中国関係  重視型営業に関する実証研究

日系企業が中国市場開拓を進める上で,中国 特有の文化・商習慣について理解を深める事 が重要である。中国の商取引においては,先 行研究にも見られるように関係(Guanxi)が 非常に重要視される。前述したように,この 関係(Guanxi)をどう捉えていくかは日系企 業にとって非常に重要な課題である。具体的 には,日系企業の中国市場開拓に有効な営業マ ネジメントや営業行動を考えるために,中国関 係主義とは何か,中国関係重視型営業の実態と はどのようなものかをしっかり把握する事が重 要である。そこでまず中国の関係主義がもたら す中国関係重視型営業の実態を以下の点から明 らかにしていく事にした。第一は,購買担当者 がサプライヤー選定の意思決定において,関係

(Guanxi)をどの程度重視するのかという点で ある。第二は,関係(Guanxi)を重視する場合,

礼物のやりとりや,バックマージンなどを必要 とするものであるか否かという点である。第三 は,中国の購買担当者の所属企業が日系企業の 場合と,中国系企業の場合とでは,意思決定す る上で判断基準の優先順位に違いが見られるか 否かという点である。

今回その実態を調査するため営業視点から の調査と,購買視点からの調査を行った。ま ず,営業視点の調査では,中国人に対するイン タビュー調査を実施した。インタビューは産業 財営業に携わる中国人営業担当者(総経理を含 む)11 名を対象として匿名を前提とするヒア リングを実施した。次に,購買視点の調査とし て,アンケート調査を実施した。アンケートに 関しては購買担当者に直接礼物の授受の有無な どを聞いても正確な回答は得られない可能性が 高いと考え,中国において日系企業,中国企業,

欧米企業などに所属する産業財の中国人営業担 当者を対象として,購買担当者のサプライヤー 選定における評価基準についてアンケート調査 を実施した。留意した点は下記の三つである。

①産業財の分野で業種が偏らない事,②所属企 業が偏らない事,③顧客企業が偏らない事の 3 点である。有効回答は合計で 75 ケースであっ た。

分析するにあたり,結果を三つのグループに 分類した。営業担当者が対象とする顧客の属性 に応じて,顧客が日系企業のみのグループを A グループ,顧客が中国系企業のみを B グルー プ,顧客が中国系企業+その他欧米系,韓国系,

台湾系(日系を含まず)を C グループとした。

顧客が中国系と日系を対象としているケース は,中国系と日系の比較ができないため除外し た。また日系,中国系を顧客としないケースも 今回の調査では対象外のため除外した。その結 果 N 数は A グループが 18,B グループが 16,

C グループが 20 となった。

本調査により,中国関係主義がもたらす中 国関係重視型営業について様々な点が明らか になった。インタビューからは,中国関係重 視型営業は個人間の信頼関係で成り立っている ものであり,BtoB の営業においては営業担当 者と購買担当者の関係の深さが非常に重要であ る点が明らかになった。そしてその関係には多 くの場合,金品や礼物のやりとりが発生してい て,これは「潜規則」と呼ばれ,口には出さな

(4)

表 1 中国人営業担当者インタビュー 調査内容

証言 1

中国関係重視型営業は BtoB のマーケティングに多く見られます。BtoC は消費者が選択するため,BtoB ほど関係 重視型営業の影響は受けないと思います。中国人は商売をする前に,相手と友達になります。信頼関係を非常に重 要視しています。中国人は実利的であり,そこには必ずお互いの利益のためのやりとりがあります。非常に巧妙な やり方をしている人もいます。バックマージンが本給より多い場合もよくあります。中国人の考えは「このお客様 は私の関係で持ってきたお客様であり,得た利益の中からマージンを取るのは当たり前だ」というものです。悪い 事と思っていないのです。企業に勤めていてもこのように考えます。社会にそういう風潮があります。この利益配 分が上手くいかなかった時に密告が起こり,社会に表出し問題となります。(2011 年 6 月 22 日 日系企業 化学品 関連 中国人総経理)

証言 2

中国国営企業と民営企業は,特に人と人との関係が重要です。相手の興味を知り,共通の興味を作る事が重要です。

また購買担当者のレベルを見る事も必要です。まとめますと重要な点は三つになります。①その人に権限があるか どうか,②キーマンか否かを見極める,③プレゼントやお金を渡す,ライバル他社と同じレベルの商品の場合は,

関係が特に重要です。ライバル他社に比べ商品が劣っていても関係がよければ受注できるケースもあります。(2011 年 8 月 25 日 日系企業 ポンプメーカー 中国人営業担当者)

証言 3

中国は昔から関係が大事です。新規開拓営業においても関係のよいところから考えます。まずは家族の知り合いな どつながりを中心に考えます。その次に友達や同僚のつながり,そして三つ目が自己開拓になります。プレゼント を用意するのは皆がやっている事です。お金のやりとりも当然あります。これは外国人にはわかりませんが中国人 ならだれもがわかる見えないルールです。これを潜規則といいます。(2011 年 8 月 25 日 中国民営 IT 企業 中国 人営業担当者)

証言 4

中国では個人と個人の関係と利益は非常に重要です。政府のかかわる大型工事などは,政府関係者の会社が受注し ます。政府関係者の会社とは,政府の人間の息子や,兄弟などが経営する会社です。血縁の企業に発注する例は非 常に多くあります。このような事は水面下でいろいろと行われており,日本人管理者の立場からは実態は把握でき ないと思います。(2011 年 7 月 21 日 日系企業 商社 中国人営業担当者)

証言 5 まず営業において大切な事は,相手の要望を聞く事です。「相手の興味は何か」「商品の発注の意思決定を下してい ただいた後,何が欲しいか」をはっきり聞きます。そこでその要望を満たし,まず信用を作る事が大切です。(2011 年 8 月 22 日 中国系民営企業 家具販売 中国人総経理)

証言 6

私の営業はまず打ち合わせの際,相手がどのような雰囲気の人物かを掴む事を重視しています。相手の態度・様子 をよく見ます。そしてバックマージン要求の有無を探ります。この点については直接話をします。「何が欲しいか」

「何に興味があるか」その上でお互いの間でルールをつくります。毎回現金のバックとは限らず 1000 元の交通カー ドで対応する場合もあります。(2011 年 8 月 22 日 中国系民営企業 内装 中国人総経理)

証言 7

営業のプロセスであるアプローチ → リサーチ → プレゼンテーション → クロージングの順番は中国の営業も同じ です。ただし中国の場合は窓口担当者と友達になる事が極めて重要です。仕事以外の話をできない営業が成績を上 げる事は難しいです。関係を作るために購買担当者の興味などを聞き,一緒に遊びに行ったりする事で親密になっ ていくのです。通常商談では仕事の話は全体の 3 分の 1 で,あとは個人的な趣味の話などをして関係づくりをして います。(2011 年 7 月 23 日 日系企業 電子部品関連 中国人営業担当者)

証言 8

中国では人脈は確かに大事ですが,関係重視型営業の重要度はそんなに高くありません。関係重視型営業に力を入 れすぎると,リスクになります。例えば関係を構築した担当者が変われば次からその会社からの売上がゼロになる 事もあります。またコンプライアンスの問題で,会社に対する危険性もあります。あくまでコンプライアンスの範 囲内で関係構築をします。顧客が重視するものは品質,コスト,関係の順番です。これは中国民営企業でも同じで す。(2011 年 8 月 16 日 日系企業 自動部品関連 中国人副総経理)

証言 9

顧客は品質,コスト重視であり,営業もこの点を中心に訴求しています。関係重視型営業は,最初は有効でも長期 的に取引関係をつくっていくためには結果的に商品の優位性が非常に重要になります。人間関係だけでは当然顧客 と長くつきあう事はできません。1,2 回はよくてもその後必ず見放されます。そのため中国関係重視型営業には力 を入れるよりも,お客様の問題解決のお手伝いをする事に注力する事が大切です。(2011 年 8 月 15 日 日系企業 繊 維関連 中国人営業担当者)

証言 10

中国において関係重視型営業は非常に重要です。これがないと商売は上手くいきません。中国人同士の仕事の関係 は純粋な人間関係というものはありません。必ず背後に金銭的なやりとりがあります。この関係はお互いにお願い する事がある場合に成立します。一方がお願いするばかりでは成立しません。バックマージンを禁止するとなると 様々な問題が発生します。例えば一例として与信管理の問題があります。購買担当者へのバックマージンがあれば,

支払いも購買担当者の口添えで予定通り入金がされますが,バックマージンがない場合中国の悪しき習慣でなるべ く支払いを遅らせるという方向に力が働き料金回収が難しくなるケースがあります。また値下げ要求をしてくるな ど,商売が円滑に進まなくなります。バックマージンをやめる事で現金回収に苦労したり,利益率が低下したりす るのです。(2011 年 8 月 22 日 日系企業との合弁企業 貿易 中国人総経理)

証言 11

中国進出の日系企業相手の営業から,中国民営,国営企業の営業にシフトしました。日本は QCDS が中心,中国は 関係が中心であり,この点で日本とやり方が違います。弊社は日本では有名なブランドですが中国では全く知られ ていません。現在競争が激しく苦戦しています。オフィス家具の品質はお客様が見ただけではわかりません。時間 が経てばわかりますが最初はほとんど変わらなく見えます。そのためコストと関係の勝負になります。関係重視の 営業は,弊社は日系企業ですからコンプライアンスの問題もありできるだけやりたくないのです。しかしある程度 やらなければ仕事がとれないという状況にあります。(2011 年 7 月 23 日 日系企業 オフィス家具販売 C 氏)

出所:筆者作成

(5)

図 1  アンケート調査結果:人間関係の深さ「自己人(深い友人になる)」に関して設問 1 にて 

「F-1 自己人」が「とても重要」と答えた人の人数と割合

出所:筆者作成

0%      20%         40%      60%         80%       100%

Cグループ Bグループ Aグループ グループ 顧客企業 総数 「F-1 自己人」が

「とても重要」

と答えた人数

割合

(小数点以下第 2 位を四捨五入)

A 日系企業のみ 18 33.3%

B 中系企業のみ 16 11 68.8%

C 中系企業+その他*

(日系企業含まず) 20 15 75.0%

*欧米企業・台湾企業・韓国企業など

図 2  アンケート調査結果:人間関係の深さ「自己人(深い友人になる)」に関して設問 1 にて 

「F-1 自己人」が「とても重要」または「重要」と答えた人の人数と割合

出所:筆者作成

0%      20%         40%      60%         80%       100%

Cグループ Bグループ Aグループ

グループ 顧客企業 総数

「F-1 自己人」が

「とても重要」

または「重要」と 答えた人数

割合

(小数点以下第 2 位を四捨五入)

A 日系企業のみ 18 16 88.9%

B 中系企業のみ 16 16 100.0%

C 中系企業+その他*

(日系企業含まず) 20 20 100.0%

*欧米企業・台湾企業・韓国企業など

図 3  アンケート調査結果:リベート「礼物のやりとり」に関して設問 1 にて 

「G-1 礼物」が「とても重要」と答えた人の人数と割合

出所:筆者作成

0%      20%         40%      60%         80%       100%

Cグループ Bグループ Aグループ グループ 顧客企業 総数 「G- 1 礼物」が

「とても重要」と 答えた人数

割合

(小数点以下第 2 位を四捨五入)

A 日系企業のみ 18 0.0%

B 中系企業のみ 16 37.5%

C 中系企業+その他*

(日系企業含まず) 20 35.0%

*欧米企業・台湾企業・韓国企業など

図 4  アンケート調査結果:リベート「礼物のやりとり」に関して設問 1 にて 

「G-1 礼物」が「とても重要」または「重要」と答えた人の人数と割合

出所:筆者作成

0%      20%         40%      60%         80%       100%

Cグループ Bグループ Aグループ

グループ 顧客企業 総数

「G-1 礼物」が

「とても重要」

または「重要」

と答えた人数

割合

(小数点以下第 2 位を四捨五入)

A 日系企業のみ 18  27.8% 

B 中系企業のみ 16  10  62.5% 

C 中系企業+その他*

(日系企業含まず) 20  12  60.0% 

*欧米企業・台湾企業・韓国企業など

(6)

いが中国人間では当たり前の商取引のルールで ある事もわかった。このためこの営業スタイル は,相手企業のニーズを把握する事もさること ながら,まずは購買担当者の個人的ニーズを把 握し,それを満たす事が重要である事がわかっ た。また同時に宗族を中心とした関係重視の商 取引も根強く存在している事もうかがえた。ま た,一方で証言 8,9 に見られるように関係重 視型営業がもたらす負の側面や中長期的視点に 立った際の有効性に疑問を呈し,関係重視型営 業に否定的な意見も一部存在した。

アンケート調査においては,顧客対象が日系 企業よりも,中国系企業を相手にした場合に,

より中国関係重視型営業の必要性が高い事が明 らかになった。礼物のやりとりについては,デ リケートな問題であり,アンケートによって明 確化する事は難しかったものの,購買担当者と 営業担当者が自己人(親しい友人)になる事の 重要性は明らかに日系企業より中国系企業にお いて高いという事が確認された。

4  中国進出日系企業の営業マネジメント に関する実証研究

(1)調査概要と仮説

中国の産業財市場において,中国進出日系企 業が顧客開拓のために現在採っている営業マネ ジメントについて調査・分析を行った。顧客イ ンターフェイスを司る営業行動がどのような形 になっているのか,そこに違いはあるのか,中

国市場開拓における有効な営業行動は何かと いった点についても詳細を明らかにした。加え て中国市場開拓に有効な営業行動の一つである 中国関係重視型営業に対しての対応も考察した。

また,本調査における問題意識を下記のよう に要約した。

  仮説的考察 1:

  『 中国市場開拓を進める上では,環境適 応をするために現地化を促進し,現地 法人への権限委譲,中国人社員への権 限委譲を推進し,意思決定のスピード を速める事が有効である』

  仮説的考察 2:

  『 中国企業(国営・民営),政府機関,各 種機関を対象として中国市場開拓を進 める場合は,中国関係重視型営業に対 して関与を高める事が有効である』

この二つの仮説的考察を基に調査を行い,実 態を明らかにするアプローチを採用した。本調 査は非常に複雑な事象に対して,インタビュー 手法を用いてその実態を明らかにする事を狙い としている。そのため仮説検証のアプローチを する形ではなく,仮説的考察を基にして調査を 進め,新たな事実を探索,発見していく,いわ ば,仮説形成のアプローチを採る事とした。

本調査にあたって筆者は 2011 年に 3 回訪中 し,上海地区日系企業の総経理クラスを中心に インタビューを実施した。インタビュー調査に 際し以下の 4 点を留意した。①産業財市場の中 図 5  アンケート調査結果:グループ別 購買担当者がサプライヤーを選定する場合の重要視する項目

の割合

出所:筆者作成

A-1 パフォーマンス

の高さ38.9%

C-1 イニシャルコスト 16.7%

その他44.4% A-1

パフォーマンス の高さ43.8%

F-1 自己人

(友人になる)

31.3%

その他25.0%

その他25.0%

F-1 自己人

(友人になる)

30.0%

A-1 パフォーマンス

の高さ45.0%

A グループ:顧客日系企業のみ B グループ:顧客中系企業のみ C グループ:顧客中系企業+その他

(欧米企業・台湾企業・韓国企業など)

日系企業含まず

(7)

でも業種・業態が偏らない事,②日本本社の企 業規模に偏りがない事,③経営全体を見渡せる 総経理・副総経理クラスを対象とする事(最低 でも部長クラスまで),④最低 1 時間はインタ ビュー時間を確保してもらう事,の4点である。

結果として 31 社の企業とコンタクトを取り,

20 社に対して上記 4 条件に当てはまるインタ ビューを実施する事ができた。その結果につい て述べる。

(2)調査結果

当初設定した仮説的考察である『中国市場開 拓を進める上では,環境適応をするために現地 化を促進し,現地法人への権限委譲,中国人社 員への権限委譲を推進し,意思決定のスピード を速める事が有効である』と『中国企業(国営・

民営),政府機関,各種機関を対象として中国 市場開拓を進める場合は,中国関係重視型営業 に対して関与を高める事が有効である』の二つ については,その傾向を確認する事ができた。

中国関係重視型営業に対しては,市場開拓段

階に応じて「回避」「共存」「アウトソーシング」

の三つに対応が分かれた。

(3)研究結果に基づく提言

中国進出日系企業 20 社に対する調査を基に 二つの仮説的考察を設定して傾向を明らかにし た。結果『中国市場開拓を進める上では,環境 適応をするために現地化を促進し,現地法人へ の権限委譲,中国人社員への権限委譲を推進 し,意思決定のスピードを速める事が有効であ る』と『中国企業(国営・民営),政府機関,

各種機関を対象として中国市場開拓を進める場 合は,中国関係重視型営業に対して関与を高め る事が有効である』の二つについてはその傾向 を確認する事ができた。しかしながら,実際に は各企業の中国市場開拓の実状や,その戦略的 意思によって,求められる現地化や権限委譲,

意思決定に関しては違いが見られ,中国関係重 視型営業に関しても有効な対応は異なるため,

さらに詳細に論じる必要性が生じた。そこでこ れまでの調査結果を基にして,日系企業の中国 表 2 中国関係重視型営業への対応

「回避」 中国関係重視型営業を否定。取り入れない。

「共存」 中国関係重視型営業を肯定。市場開拓に有効な人脈を持つ中国人の積極登用。

「アウトソーシング」 中国関係重視型営業を中国代理商へ委託。

出所:筆者作成

図 6 中国ビジネス進化モデル

出所:筆者作成 Strategic Intent

戦略的意思 Type

類型

中国企業 中国各種機関 中国政府機関 日系企業

(不特定)

日系企業

(特定)

中国日系市場開拓型

中国市場開拓型 シフトビジネス型

日系市場固定

標準化 既存顧客維持

中系市場移行

適応化 新規顧客開拓 自社

顧客

(中国市場)

①シフトビジネス型

日本の取引先企業のフォロー。

日本本社の取引先の中国進出に伴い中国進出し,取引先を 現地でフォローする。

日本本社で決まったビジネスを中国でフォロー。

日本本社関連ビジネスのフォローが売上全体の 6 割以上 を占める。

②中国日系市場開拓型

中国現地法人が独自に中国市場で顧客を開拓(顧客は日 系企業が中心で売上全体の 6 割以上を占める)。

③中国市場開拓型

中国企業(国営・民営),政府機関,各種機関(病院・学 校etc.)の開拓が中心。

日系企業顧客が売上の 6 割未満。

(8)

市場開拓の段階に応じ六つに分類したモデルを

『中国ビジネス進化モデル』(図 6)とした。こ のモデルに従って,求められる営業マネジメン トや,顧客インターフェイスを司る営業行動に ついて解説する。

中国ビジネス進化モデルは,顧客対象により 三つに分類できる。顧客が日系企業(特定)中 心の企業群であるシフトビジネス型,日系企業

(不特定)が中心の企業群である中国日系市場 開拓型,中国企業(政府機関,各種機関含む)

が中心の企業群である中国市場開拓型の三つで ある。さらに各企業群における市場開拓の方向 性,その戦略的意思(Strategic Intent)によっ て三つの類型から六つのグループに分類した。

シフトビジネス型においては,現在の日本本社 と取引のある特定顧客の維持を目的にする企業 群「既存顧客維持グループ」と,特定顧客依存 のリスクを回避するために新たな日系企業開拓 や中国企業(政府機関,各種機関含む)開拓を 志向する企業群「新規顧客開拓グループ」に分 けられる。中国日系市場開拓型においては,新 規開拓を積極的に行うものの対象は中国進出日 系企業に限る「日系市場固定グループ」と,中 国企業(政府機関,各種機関含む)に拡げる事 を志向する「中系市場移行グループ」に分けら れる。中国市場開拓型では,日本の商品・サー ビスをそのまま中国に持ち込んでいる「標準化 グループ」と中国市場に合わせて新たに構築し ている「適応化グループ」に分けられる。

対象顧客が,日系企業 → 中国企業(政府機関,

各種機関含む)と移行するにつれて中国市場へ の関与の度合は高まる。市場規模も拡大し,売 上目標なども大きくなる傾向にある。また同時 にコンペチターの存在も増加する。シフトビジ ネス型や中国日系市場開拓型では,日系企業や 中国企業がコンペチターの中心であるのに対し て,中国市場開拓型では,欧米企業を中心とし たグローバル企業もコンペチターとなり,世界 戦の様相を呈す。そのため異文化対応力を高め る事と同時にグローバル競争にも勝っていく事

が求められる。よってシフトビジネス型と中国 日系市場開拓型そして中国市場開拓型では求め られる経営スタイルが変わって当然であり,よ り異文化対応の必要性や競争が高まる点におい て,中国市場開拓型はこの三つの類型の中で最 も経営の難易度が高い事が推察される。

1)シフトビジネス型・既存顧客維持グループ

「シフトビジネス型・既存顧客維持グループ」

では,顧客が日系企業の特定企業中心のため,

日本本社の取引の延長線上のビジネスのフォ ローが中心である。仕事のコアとなる部分は日 本本社や日本人駐在員が中心となって行う。日 本本社とのやりとりを重要視するため総経理職 は必ず日本人が担う必要がある。中国人は日本 人が始めたビジネスのフォロー,メンテナンス を引き継ぐ業務が中心となる。日本本社から現 地法人への権限委譲は進んでいる反面,現地中 国人社員への権限委譲度は低い。業績面では,

日本本社からの確実な紹介という点では堅い面 もあるが,特定業界の不況や特定顧客企業の業 績不振の影響を大きく受け安定性に欠ける面も ある。

顧客インターフェイスに関しては,営業は直 販で特定顧客へのルート営業が中心である。中 国人営業担当者は顧客の要求をしっかりと聞き 出す力と日本語力が必須となる。顧客が QCDS に関して何を求めているかをしっかり把握し,

顧客の期待に応えていく能力が求められる。新 規案件は基本的に本社からの案件が中心であ る。中国関係重視型営業に対しては,その必要 性は低く「回避」の選択が中心となる。日本人 駐在員が中国人営業担当者にマナーやヒアリン グなど日本的営業の基本を教えていく事が重要 であり,必須である。

このグループの課題は,中国人社員の育成と モチベーション向上である。日本人主導のビジ ネスの中でともすると中国人社員を指示待ち人 材にしてしまう恐れがあるため,いかに主体性 を持たせるかは重要な課題である。同様にビジ ネス全体に守りの側面が強く,堅実である反面

(9)

大きな発展性が望めない事から,中国人社員の モチベーションをいかに向上させていくかも大 きな課題である。解決策としては,権限委譲や 福利厚生策などを通じて,仕事に主体的に取り 組む意識とチームワーク意識を醸成する必要が ある。戦略については,中国法人のミッション が日本本社にとっての重要顧客への対応のみと いう位置づけの企業であれば問題はないが,今 後の中国法人独自の発展を望むならば,既存顧 客維持グループの領域を脱皮し,新規顧客開拓 グループへ転換していく必要性があると考えら れる。

2)シフトビジネス型・新規顧客開拓グループ

「シフトビジネス型・新規顧客開拓グループ」

では,顧客は日系企業の特定企業が中心とな り,日本本社の取引の延長線上のビジネスの フォローが中心である。ただし特定企業に依存 している現状をリスクと捉え,新たな顧客獲得 へ中国現地法人主導で動き始めている企業であ る。顧客対象は日系企業の特定顧客が中心で,

今後の開拓先として不特定の日系企業や中国企 業など,企業によりその方向性は分かれる。現 地法人への権限委譲は進んでいる反面,現地中 国人への権限委譲は遅れている傾向が見られ る。これまで待ちの姿勢で仕事をしてきた企業 文化を攻めの姿勢にいかに転換するかが大きな 課題である。そのためには中国人社員への権限 委譲を進め,日本人主導の営業体制から,中国 人主導の営業体制にシフトする必要がある。ま た日本人主導のビジネスで成り立ってきた経緯 から,中国人の営業要員の数と質両面が不十分 である企業が多く,人員補強も求められる。

顧客インターフェイスの点では,既存の営 業は基本的に直販で特定顧客へのルート営業 が中心である。中国人営業担当者は顧客の要 求をしっかりと聞き出す力と日本語力が必須と なる。新規の営業は,日系企業の開拓や,中国 企業への開拓が求められる。ゆえに,これまで の営業担当者が守りの営業から開拓型の営業へ シフトする事が困難な場合は,新たな人材の補

強が必要となる。日系企業向けの新規開拓は日 本人主導で実施するのが現実的である。また日 本人駐在員による中国人社員の育成も必要であ る。中国企業開拓を志向した場合,中国関係重 視型営業に対する対応は日本人駐在員では難し いため,この部分をどうするかが問題となる。

対応策としては強い人脈を持つ中国人人材を採 用し,幹部に登用,中国関係重視型営業を任せ るといった「共存」の選択と,パートナーの代 理商に任せる「アウトソーシング」の選択があ る。

同時に,新規開拓型人材を採用,定着させて いくために,人事制度も成果主義の色彩を強め ていく必要がある。さらに既存の特定顧客維持 担当の営業担当者と新規顧客開拓担当の営業担 当者との役割の違いの明確化や評価の区分け,

チームとしての連携なども考えていく事が求め られる。

戦略としては新規顧客開拓先を日系企業とす るのか,中国企業とするのか,両方とするのか によっても強化するポイントは変わってくる。

現実的には守りの営業から攻めの営業への転換 が大きな課題であり,まずは新規の日系企業へ その販路を拡げ,攻めの営業体制確立後,中国 企業を中心とした中国市場開拓に着手するとい う路線が現実的とも考えられる。

3)中国日系市場開拓型・日系市場固定グループ

「中国日系市場開拓型・日系市場固定グルー プ」は,顧客が不特定の日系企業中心であり,

中国において日系企業の顧客開拓を積極的に 行っている企業群である。顧客対象が日本企業 のため,中国人社員には日本語力を求め,仕事 や営業の手法も日本の手法を中心にしている ケースが多い。日本式の営業の手法を教え,段 階的に中国人社員に仕事を任せていくスタイル である。シフトビジネス型と大きく異なり,中 国人社員への権限委譲を加速させている。中国 市場での開拓においては顧客が日系企業といえ ども日本人主導では物理的にも限界があり,中 国人主導の体制を作る事が求められる。そうし

(10)

た背景から権限委譲が進んでいると考えられ る。評価制度に関しては,個人別の業績評価で はなくチームワーク重視の評価をしている企業 や,成果主義を実施している企業など同グルー プ内でも各社により違いが見られるが,中国人 社員に権限委譲をして,主体性を高める事でモ チベーションを高める体制を構築していこうと している点は共通している。

顧客インターフェイスに関しては,日本式の 提案型営業を重視する営業スタイルである。日 本語力や日本の文化について造詣の深い人材を 採用し,いかにして日本的な営業を実行できる 人材を育成するかが重要な課題である。中国関 係重視型営業についてはコンプライアンス重視 もあり,基本的には「回避」となる。顧客が日 系企業のため中国関係重視型営業はさほど必要 とされない。

このグループの特徴としては,中国で事業活 動をしていても日本流の仕事の進め方で事業を 推進する事から,日本人駐在員が,自らの経験 知を活かせる側面が多い事が挙げられる。また 日本本社とのやりとりも大きなギャップが発生 する事なくコンプライアンスも遵守でき,日本 本社から理解を得られやすいと考えられる。

課題としては日系企業を顧客として限定して いるため,市場拡大に限界があり,売上がある 一定の水準に達すると,その後の伸びが難しく なる点が挙げられる。また日系企業全体が低迷 した場合は,その影響を大きく受けるリスクも ある。目の前に中国系企業という大きな需要が ありながら,それを見過ごし,成長の機会を逃 すという選択をする可能性が高い事も,機会損 失という側面から考えると大きな課題であると いえる。

4)中国日系市場開拓型・中系市場移行グループ

「中国日系市場開拓型・中系市場移行グルー プ」は,顧客が不特定の日系企業中心であり,

中国において日系企業の顧客開拓を積極的に 行っている企業群である。ただし日系市場の領 域の狭さに限界を感じ,さらに大きな市場領域

である中国企業(政府機関・各種機関含む)を 新たな顧客対象と捉え,その獲得へ動き始めて いる企業である。市場領域を拡げる事でさらな る売上拡大を目指している。

そうした状況から中国市場開拓のための適応 を進めるため,日本本社からのより大きな権限 委譲が必要とされる。また中国人社員への権限 委譲も必要とされる。中国人総経理の可能性も あり,現地化を進めている。そのためにも中国 人幹部社員の育成が急務となっており,これま での日系企業が顧客の中心であった現状から,

中国企業(政府機関・各種機関含む)へ顧客対 象をシフトするために営業の手法も変化させて いく必要がある。日系市場固定型は日本人が中 国人社員に仕事を教え育てるスタイルが中心で あるのに対して,中系市場移行型は日本人では 対応できない領域を,中国人社員に教えてもら い進めていく必要性が強くなる。そうした点に おいては,現地法人において中国人社員への権 限委譲や,日本本社主導から,現地法人主導の 体制へ切り替えていく必要がある。

顧客インターフェイスに関しては,日系市場 向けの営業と中国市場向けの営業とに分かれ る。日系市場向けには QCDS を提案する事が 中心の営業スタイルに対して,中国市場向けに は中国関係重視型営業が必要となる。強力な人 脈を持つ人材を採用する事や,よい中国人パー トナーを持つ事に積極的に取り組む事が求めら れる。中国関係重視型営業に関しては「共存」

や「アウトソーシング」対応となる。中国市場 に顧客対象をシフトする場合は,ノウハウ不足 や人材不足がネックとなる。その場合,日本人 社員が対応できないため,中国人社員に任せる 事が重要であるが,安易な権限委譲は逆にコン プライアンス上の問題を引き起こす可能性もは らんでいる。そのため信頼できる人材を営業幹 部にした上で,権限委譲していく必要がある。

重要な点は,日本人総経理では対応が難しい中 国市場開拓を,会社の方針をよく理解した上で 率先垂範してくれる営業幹部をいかに創り上げ

(11)

るかである。

5)中国市場開拓型・標準化グループ

「中国市場開拓型・標準化グループ」は,顧 客が中国企業(政府機関・各種機関含む)中心 であり,日本本社と同じ製品・サービスを中国 市場に提供している企業群である。差別化され た製品の特性を生かして,中国市場を開拓して いる面で共通している。顧客が日系企業中心の シフトビジネス型,日系市場開拓型に比べ,は るかに市場規模も売上目標も大きくなるのが特 徴である。製品・サービスは標準化という点に おいては日本主導の流れがあり,日本人駐在員 や日本のスタッフが製品・サービス・技術面で 中国人社員などの教育を担っている。現地化を 促進させ中国人社員の登用などを進めていく方 向性にあるが,日本人主導の体制が強いと,中 国人社員の育成が上手く進まず,権限委譲は進 んでいないケースもある。評価制度においても 日本本社と同じ形で年功中心の色彩を強く出し ている企業と,成果主義を導入している企業と に分かれる。

顧客インターフェイスに関しては,中国関係 重視型営業は代理商に任せる「アウトソーシン グ」の対応が中心である。そのため代理商の力 によって売上が大きく左右される事もある。代 理商中心ながら直販部隊を持っている企業は,

直販は中国関係重視型営業のスタイルを採ら ず,対欧米企業や日系企業を中心に提案型営業 を実践させている。そのため営業担当者向けの 研修には力を入れているケースも少なくない。

欧米企業や中国関係重視型営業の必要性の低い 企業では顧客開拓に大いに有効である。

このグループの課題としては,第一に戦略面 の不安定さが挙げられる。標準化を選択して進 出したというよりは,まずは日本と同じ製品・

サービスで市場の状況を見るという発想で進出 しているケースもある。そのため製品・サービ スのコモディティ化が進む中国市場の今日で は,グループの各社が中国市場への適応の必要 性を感じている。しかし日本本社との関係も含

め,中国市場へ適応化する製品・サービスを生 み出す体制になっていない点は大きな問題であ る。標準化を貫くのか,中国市場に適応化した 製品・サービスを生み出す経営にしていくの か,戦略を明確化する必要がある。第二は中国 代理商への依存体質にある。中国関係重視型営 業を完全に「アウトソーシング」対応としてい る面はコンプライアンス上の問題はなく安全策 といえるが,反面代理商に販売を依存する事と なり,代理商支配が強くなる恐れがある点と,

顧客ニーズが掴みづらくなる点などがマイナス 面として挙げられる。代理商へ丸投げ的な販売 依存は,短期では売上を上げる事に有効であっ ても長期的に売上を上げていく事に対しては,

必ずしもプラスとならず,むしろマイナスにな る。自社主導で売上を上げていく仕組みを構築 していく事が重要である。

6)中国市場開拓型・適応化グループ

「中国市場開拓型・適応化グループ」は,顧 客が中国企業(政府機関・各種機関含む)中心 であり,中国市場に適応した製品・サービスを 提供している企業群である。顧客が日系企業中 心のシフトビジネス型,日系市場開拓型に比 べ,はるかに市場規模も売上目標も大きくなる のが特徴である。日本本社から現地法人への権 限委譲は大きく,現地法人の総経理を含め,現 地化を求められるグループである。製品・サー ビスを適応化するため中国市場のニーズを常に 正確に掴む必要性があり,日本人社員の枠を超 え,中国人社員の力を最大限引き出す事が求め られる。評価制度においても成果主義中心で,

中国人の発展空間を拡げる体制を構築している ケースが多い。また R&D の機能を中国で充実 させるなど,ものづくりにおいて迅速に市場適 応できる体制も構築している。

経営方針は,中国流に適応をより強める企業 と,日本流,中国流といった文化差を超え,企 業理念・文化をコアにして,マネジメントをす る企業とに分かれる。それに伴い顧客インター フェイスに関しても,中国関係重視型営業を積

(12)

極的に自社に取り込んでいく「共存」の対応と 代理商に任せる「アウトソーシング」の対応の 二つに分かれる。「共存」対応は積極的に人脈 を強みとする人材を揃え,中国関係重視型営業 を武器にしていく経営である。「アウトソーシ ング」対応は,「中国市場開拓型・標準化グルー プ」の「アウトソーシング」対応とは性質が異 なる協働型の「アウトソーシング」対応である。

「中国市場開拓型・標準化グループ」に見られ た有力な代理商の力に頼るというよりは,有力 な代理商を育て共に発展するという発想であ る。そのため代理商の教育に力を入れ,製品知 識だけでなく,提案型営業の手法・企業理念な どを徹底的に共有している。中国代理商が得意 とする中国関係重視型営業に単に依存するので はなく,企業が長年培ってきた価値を提供し,

相互の強みを合わせたハイブリッド型で市場開 拓を実現させていく方法である。代理商との協 働関係を強め,情報の双方向性を高める事で中 国市場への適応力を高めていくのである。協働 型「アウトソーシング」対応は,コンプライア ンスの問題も回避する事ができ,自社の理念 や,価値観,強みも伝承できる点において,中 国進出日系企業の中国市場開拓において有効な 手法であるといえる。

このグループの課題としては,トップの強い リーダーシップが必要不可欠である点が挙げら れる。本社主導ではなく,現地法人主導で,中 国市場に適応するために日本本社も含めたあら ゆる経営資源を活用し,有効な戦略行動を採っ ていく必要がある。そのためには強いリーダー シップを持ったトップの存在が必要である。ま た中国での経営は本国での経営と性質が大きく 異なる点が多い。様々な制約条件があり,異文 化環境で商習慣も異なる上,自社のブランドや 認知度も本国と比べれば低いなど,様々な変数 がある中で,成果を上げる事が求められる。こ のような難易度の高い環境を乗り越えられる強 いリーダーシップを発揮できる人材の選定や育 成,加えて中国市場適応化のための日本本社か

らの権限委譲をはじめとした経営体制を作る事 が重要なポイントとなる。

顧客インターフェイスに関する課題として

「共存」対応についてはコンプライアンスの問 題や顧客情報などの顧客との関係にかかわる経 営資源の属人化の問題がある。「アウトソーシ ング」対応に関しては,協働型「アウトソーシ ング」は短期ではできないため,長期的な投資 を覚悟し取り組んでいく必要がある。その上代 理商を導いていくだけの製品力や,確固たる企 業理念などがベースになければ実行が難しい。

以上三つの類型 6 グループに関して,顧客イ ンターフェイスとして有効な営業行動及びそれ を支える営業マネジメントについて述べた。

5 結 論

本論文の結論は,以下の二つである。第一に,

中国進出日系企業の営業マネジメントは,中国 市場開拓におけるその企業の現在の段階や,今 後どうしたいかという戦略的意思(Strategic  Intent)によって異なるという事である。一般 論として,中国進出日系企業の問題点は,「現 地化が進んでいない」「中国人社員への権限委 譲が進んでいない」「日本語重視の人材採用に 問題がある」「評価制度が年功中心で優秀な人 材が定着しない」「日本本社主導で意思決定が 遅い」など,これまで多くの指摘がされてきた。

しかし状況は企業ごとに異なり,その戦略的意 思も異なる。一般論に左右されるべきではな く,その企業の個別の状況に応じた最適解の選 択をすべきである。産業財市場においては,中 国ビジネス進化モデルを基にして,自社のポジ ションを確認し,基本方向を検討していく事を 提言したい。

第二に,顧客インターフェイスとしての有効 な営業行動についての提言である。これまで中 国市場開拓に関しては多くの提言がされてき た。しかしその多くは BtoC マーケティングの 内容が中心であった。BtoB を中心とした産業 財市場においては営業担当者の役割は非常に大

表 1 中国人営業担当者インタビュー 調査内容
図 1  アンケート調査結果:人間関係の深さ「自己人(深い友人になる)」に関して設問 1 にて  「F-1 自己人」が「とても重要」と答えた人の人数と割合 出所:筆者作成0%          20%         40%          60%         80%       100%CグループBグループAグループグループ顧客企業総数「F-1 自己人」が「とても重要」と答えた人数割合(小数点以下第 2位を四捨五入)A日系企業のみ186 33.3%B中系企業のみ161168.8%C中系企業+その他*

参照

関連したドキュメント

日本企業の問題点 てきた。 これはつまり、 既存の経営資源を 活用し総合 まず、 日本企業の持つ 構造的問題点を 確認して い き 力

アンケート評価」で満足度90点以上と評価され、JTB(2013b)から『JTBセレクト』商品と

日本中小企業の経営管理よ町中国中小企業経営強化

逆に顧客の声を過信して新商品開発が企業破綻につながる場合も見られる。

現地法人企業数を見てみると,中国本土に関して言えば,12年度から13年度にかけての増加

書 評 130

- 1 -  企業や産業の集積や立地に関わる問題は、 80 年代から

消費財中小企業の海外市場開拓