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衛星観測とモデリングによる地球放射線帯の研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 小 松 研 吾

学 位 論 文 題 名

衛星観測とモデリングによる地球放射線帯の研究 学位論文内容の要旨

  高 度 数100 kmか ら50,000 km以 上 に 渡 っ て , 数100 keVか ら 数10 MeVの 高 工 ネルギーの荷電粒子が地球磁場に捕らわれており,その領域を放射線帯と呼ぶ.特に電子 で構成される電子放射線帯は地磁気の活動に伴って電子フラックスが時間的・空間的に激 しく変動することが知られており,その変動に関して,これまでに理論・観測の両面にお いて精力的に研究がなされてきた,古典的には電子フラックス変動は電磁場擾乱によって 生じる動径拡散による外側境界からの流入とそれに伴う加速で説明されてきたが,近年,

外帯中心域での電子加速メカニズムとして波 動粒子相互作用による直接加速の存在が示 唆されている.しかし,未だ詳細な変動機構は明らかになっていない.また,内帯は外帯 に比べ電子フラックスの変動が小さく安定に存在しており.これまであまり注目されてこ なかった.

  外帯中心域での 直接加速が存在したとしても,その後の電子フラックスの再配置に動 径拡散の機構が重要な役割を果たしていると考えられる.特にス口ット領域や内帯では電 子フラックスの時間的・空間的構造は動径拡散によって支配されていると考えられる.し たがって,放射線帯全体のダイナミクスを理解するためには動径拡散係数の動径分布を知 ることが重要であ る.

  本研究では動径拡散モデルを構築し,外側境界フラックス,消失の効果,動径拡散係数 の各パラメタによって,放射線帯電子の空間構造や電子フラックスの変動がどのような影 響を受けるのかについて調べた,また,2002年に宇宙航空研究開発機構によって打ち上げ られた衛星っばさ(MDS‑1)による放射線帯粒子の観測データを用いて,異なるエネルギー における各粒子種の空間分布について解析した,また,地磁気の変動に伴う放射線帯電子 フラックスの変動の様子も解析した.

  時 間変化を考慮した動径拡散モデルではBrautigam and Albert (2000)によ り定式化 され たKp依 存の 動径 拡散 係数 が慣習的によく用いられる.この動径拡散係数 は磁場擾 乱とサプストームに伴う対流電場擾乱の概念を基にした理論と,外帯における電場や磁場 の観測とを併せた経験的な係数であるが,この動径拡散係数をス口ット領域・内帯まで外 挿してシミュレーションを行うとス口ッ卜領域・内帯での電子フラックスが極めて過大に なり,観測結果を再現することができない.ス口ット領域を形成する消失の効果を強めた     ―233―

(2)

場合でも,ス口ット領域への電子の過剰な流入は避けられず,動径拡散係数が不適切であ ることがわかる.

  この 動径拡散 係数は,ス口ット領域や内帯では磁場擾乱よりもむしろ静電場擾乱によ る効果が大きい.そこで本研究では,まず,対流電場擾乱の大きさを小さく見積もったシ ミュレーションを行った.その結果.ス口ット領域・内帯への電子の過剰な流入が起こら ないが,観測結果と異なり,ス口ット領域での動径拡散が弱く大きな磁気嵐時にス口ット 領域 に流入し た電子が その場 で消失し ていき ,内帯と 一体に ならないことがわかる.

  こ れまで動 径拡散を 引き起こす対流電場擾乱の大きさは磁気圏全体に渡って一様であ ると考えられてきた,しかし,本研究の結果から,そのような条件では観測で得られる電 子放射線帯のス口ット領域・内帯をシミュレーションによって再現することができないこ とがわかった.したがって,対流電場擾乱の大きさは磁気圏内で一様ではないと考える必 要がある.そこでっ対流電場擾乱の大きさをプラズマ圏境界面で階段状に小さくするモデ ルとエの1次関数として地球へ近づくほど小さくなるモデルを仮定し,シミュレーション を行 った. その結果 ,対流 電場擾乱 の大き さが己の1次関数とした場合に,ス口ット領 域・内帯を形成し、磁気嵐時にスロット領域に流入した電子が,その後,内側へ流入し内 帯と一体となる様子を再現することができた.

  観 測で見 られるよ うな内帯での動径拡散を再現しつつ電子フラックスが過大とならな いためには,静電場擾乱の大きさが己に依存し,地球に近づくにっれて小さくなっていく 必要があることがわかる,このことは,動径拡散を引き起こすサブストームに伴う対流電 場の振動の大きさが磁気圏全体で一様には伝わらず,地球に近づくにっれて減衰すること を示唆する,

  また,っばさによる電子フラックスの観測値から動径拡散係数を求め,2.7く 4.0の範 囲(外帯の内側境界)では理論値にほぼ一致するという結果を得ることができた.しかし,

」択2.5では高い精度での電子フラックスの空間分布や時間変化と消失の時定数が必要とな るため、今回用いたデータと手法では動径拡散係数の厳密な特徴を捉えることは困難であ る.

  更に、 比較的 静穏な期 間での0.40‑0.91 MeVの 電子フラックスの観測値から電子の消 失の時定数(寿命)を求めた.ム=2.7,L=3.0,LF:3.3におけるこのェネルギーの電子の寿命は 数日か ら数10日 程度であ り,これはプラズマ圏ヒスについて理論的に得られる値とほぼ 一致する.

234 ‑

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

衛星観測とモデリングによる地球放射線帯の研究

数lOOkeVか ら 数 lOMeVの 高 工 ネ ル ギ ー 荷 電 粒 子 か ら な る 地 球 放 射 線 帯 は 高 度 数 100kmか ら50.OOOkm付 近 に ま で 存 在 し , 太 陽 風 や 地 球 磁 場 の 変 動 に よ り そ の フ ラ ッ ク ス は 大 き く 変 動 す る . 放 射 線 帯 粒 子 フ ラ ッ ク ス の 研 究 と そ の 変 動 予 測 は 人 類 の 宇 宙 活 動 に 欠 か せ な い 重 要 な 研 究 テ ー マ と し て 近 年 活 発 な 議 論 が 行 わ れ て い る .   著 者 は , 未 だ 完 成 し て い な い 地 球 放 射 線 帯 モ デ ル の 構 築 に 取 り 組 み , 放 射 線 帯 外 側 境 界 フ ラ ッ ク ス , 消 失 の 効 果 , 動 径 拡 散 係 数 の 各 パ ラ ヌ タ が , 放 射 線 帯 電 子 の 空 間 構 造 や 電 子 フ ラ ッ ク ス の 変 動 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る の か に つ い て 調 べ た . ま た ,2002年 に 宇 宙 航 空 研 究 開 発 機 構 に よ っ て 打 ち 上 げ ら れ た 衛 星 っ ば さ(MDS―1) に よ る 放 射 線 帯 粒 子 の 観 測 デ ー タ を 用 い て , 異 な る ェ ネ ル ギ ー に お け る 各 粒 子 種 の 空 間 分 布 や 地 磁 気 の 変 動 に 伴 う 放 射 線 帯 電 子 フ ラ ッ ク ス の 変 動 の 様 子 も 解 析 し た .

  比 較 的 静 穏 な 期 間 で の0. 40―0.91MeVの 電 子 フ ラ ッ ク ス の 観 測 値 か ら 電 子 の 消 失 の 時 定 数 ( 寿 命 ) を 求 め た . 寿 命 は 数 日 か ら 数10日 程 度 で あ り , こ れ は プ ラ ズ マ 圏 ヒ ス に よ る 理 論 的 な 寿 命 と ほ ぽ 一 致 す る . さ ら に , 衛 星 っ ば さ に よ る 電 子 フ ラ ッ ク ス の 観 測 か ら 得 た 動 径 拡 散 係 数 は 地 球 に 近 づ く と 共 に 急 速 に 減 少 し て い る こ と も 発 見 し た .

  こ れ ら の 知 見 や 磁 場 擾 乱 と サ ブ ス ト ー ム に 伴 う 対 流 電 場 擾 乱 の 概 念 を 基 に 構 築 し た 地 球 放 射 線 帯 モ デ ル は , 外 帯 ・ ス 口 ッ ト 領 域 ・ 内 帯 を 統 一 的 に 扱 え る こ と を 示 し た , 動 径 拡 散 を 引 き 起 こ , す 対 流 電 場 擾 乱 の 大 き さ は 磁 気 圏 内 で 一 様 で は な く , か っ そ の 大 き さ も 地 球 方 向 に 伝 播 す る と 共 に 減 少 し , 従 来 の 磁 場 擾 乱 も 過 大 に 評 価 し て い る こ と を 発 見 し た , 以 上 の 結 果 は , 地 球 放 射 線 帯 粒 子 の 加 速 機 構 ・ 変 動 機 構 , さ ら に 地 球 磁 気 圏 形 成 過 程 に 大 き な 修 正 を 加 え る も の で あ り , 当 該 分 野 に 大 き な 貢 献 を し た .

  よ っ て , 著 者 は 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る .

235

十 圭

司 行

樹 輝

重  

  隆

正 正

授 授

授 授

授 師

   

   

査 査

査 査

査 査

主 副

副 副

副 副

参照

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